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事業名 「地域の中でいのちを育み、いのちを食する」
事業名 「地域の中でいのちを育み、いのちを食する」 (実施団体名:NPO法人 とら太の会) 1. 現状 NPO法人とら太の会は、地域に根ざし、年齢や性別、障がいの有無にかかわ らず、いろんな活動や取り組みを通して互いに学び合い、育ち合う活動を目指し ています。サークルなかま、みのり(就労継続支援B型、自立訓練、生活介護)、 認可外保育所ありんこ園、学童保育とら太、高齢者・ひきこもり等一時預かり事 業ひだまり、ふれあいホーム(緊急一時預かり事業)、ふれあい農園の事業があり、 子どもから大人までいろんな方々が集い、それぞれの違いを受け入れ合う豊かさ、 人と人がつながり合う関わりを大切にしています。 2010 年 3 月に耕作放棄地を利用した「ふれあい農園」がオープンし、野菜や果 物を栽培、収穫することによって、子どもたち、仲間たちがより身近に「いのち」 を感じ、育て収穫する喜び、食する大切さを学び合っています。地域の方々とは、 ふれあいホーム運営委員会を通して話し合いの場を持ち、地域の保育園、小学校、 中学校、更生保護女性会などの団体が参加しておられます。収穫や試食会など決 定したことは手紙を作成し配布したり、回覧板等を利用して地域の方々や保護者 の方々へお知らせしています。 2. 事業の目的 とら太ふれあい農園や畑での種まき、苗植え、草取り、水まき、収穫等の 活動を通して、ありんこ園の子どもたちや作業所みのりの仲間たち、学童保育の 子どもたち、地域の方々と共にいのちを育て、収穫に感謝し、いのちを食します。 共に育てたものを食する喜びや楽しさを共有し、健康を維持することの大切さを 感じ合います。いのちを頂き生かされているという感謝の気持ちを育み、健康な 体を作ることに意欲を持ちます。又、地域の方々との交流を大切にし、共に食育 の大切さを感じ合います。 3. 実施内容 ・農園活動を通して、食する喜び、いのちの大切さを感じる。 ・料理を作る楽しさ、喜びを知る。 ・命を育むことにより、作物に愛着を持ち、偏食を防ぐ。 ・ 食育講演会を通して、保護者の方々と共に食育の大切さを感じ、健康な体つ くりを目指す。 38 活動内容 時 期 活 動 内 容 9月 ・オクラ、ナス、ピーマン → 給食やおやつで食べる ・いちじくの収穫 → いちじくジャム作り ・落花生の収穫 → 落花生を塩茹でして食べる 講師:南田恵子氏 10月 ・食育講演会 『「子どもたちの食とからだ」について考えてみましょう!』 ・八代第八中学校3年生との交流 ・落花生の袋詰め ・農園作業(草取り・石拾い・サツマイモのつるあげ等) ・近くの田んぼへ稲刈り見学 → 新米を頂く ・いちごの苗植え ・大根の種まき → 間引き菜販売 ・里芋の収穫 → 茹でて塩で食べる ・自分たちで作ろう!収穫した野菜を使ったお料理 献立:具だくさん豚汁、ピーナッツ豆腐、みかんゼリー ・サツマイモの収穫 11月 ・地域の方々と一緒に焼き芋パーティー:参加者250名 焼き芋、里芋のホイル焼き、ぜんざい ・サツマイモを使ったおやつ作り(茶巾しぼり) ・大根の収穫 ・大根1本でどんな料理ができるのか? → 8品の料理を食べる ・かぼちゃを使ったおやつ → かぼちゃクリームのカナッペ 12月 ・子どもと作るクリスマスケーキ → さつまいもでクリーム作り ・元気な体づくり → バランス良く食べるお話 ・切干大根作り 1月 ・ピーナッツバター作り → 宮地更生保護女性会の方と一緒に ・土壌作り → 穴を掘って、堆肥作り ・食育講演会 講師:吉野啓子氏 2月 『今、なぜ「食育」なのか!?』 ・レシピ集、DVDの監修 3月 ・レシピ集、DVD完成・発送 39 4. 参加者の感想 【南田恵子さん食育講演会】 10 月 12 日、やつしろハーモニーホールの会議室にて食育の講演会を行いました。 講師は、学校栄養士の南田恵子氏。参加者は18名と予想外に参加が少なくとても 残念でした。食育に対する保護者の方の意識を高めるために、この取り組みをもっ と保護者の方に伝えていく必要性を感じました。 講演会を聞かれた保護者の方々は、自分の家庭の食卓を振り返られたり、ちょっ としたことでも聞きたいと質問をされたり、自分の不安や心配を解消されるように 意見を出されました。みんなで食育に対して考え合う時間が持てました。保護者の 方の感想や質問は、 ・肉中心の献立になっていたし、子どもが好きなもの、自分が食べたいものしか 作っていなかった。バランスが大事ですね。野菜を取り入れるように工夫して いきます。 ・バランスの対比、主食:主菜:副菜=3:1:2だということに驚きまし た。ご飯はいっぱい食べていいんですね。 ・和食は考えられて作られてるんですね。家でも和食を取り入れてみます。 ・気づくことが大事ということで、今日はその気付きがわかってよかったです。 ・先生のお話がとてもわかりやすかったので、参加者が少なかったことがとても 残念でした。是非、たくさんの方に聞いて欲しかったです。 ・話が聞けて、よかったです。来てよかったです。ありがとうございました。 ・我が子の卵・乳アレルギーに対する質問。 ・我が子の便秘に対する質問。 ・放射能は味噌で解毒されるのかという質問。 などいろんな声をみんなで共有し、学び合うことができました。 食育の講演会を通して、日頃保育で行っていることが改めて大事だということ、 自信を持って取り組んでいいということを感じさせられました。苦手な野菜が食べ られたことを喜びあったり、食べることの大切さや食べたものが自分の体になって いくことを伝えたりしながら、子どもたちと食事を楽しくとっていけたらと思わさ れました。 【1年間の取り組みの中で、学童の子どもたちが学んだこと】 自分たちが育てていた枝豆が大きくならず、もっと育つよう待っている間に、 イノシシに掘り起こされてしまいました。なぜ、育たなかったのか?お世話はちゃ んとできていたのか?自分たちの行動を振り返ると共に、いい作物を育てるために は、よりいい土壌作りが必要だということを知りました。また、愛情をかけて育て なければ育たないということを感じ、土壌作りを始めました。 畑に穴を掘り、給食の残飯、おやつで出た晩白柚の皮などを毎日土の中へ入 れて、堆肥を作りました。学童の子どもたちが始めた取り組みが、ありんこ園の 子どもたちにも広がり、堆肥作りのお手伝いをするようになりました。 40 みのりの仕事である堆肥(牛の糞)、段ボール堆肥も大切な仕事であることを知り ました。みのりの堆肥は「よく育つ」と地域の方に好評だということ、段ボール堆 肥は、エコ活動につながることもみんなで感じ合ういい機会となりました。片づけ の際、ゴミの分別に気をつけるようになりました。なによりも、土を作ることが、 いのちを育み愛情を注ぐことにつながることを学んだ子どもたちだったように思い ます。 5. 成果及び考察 ① 農園での活動を通して、子どもたちが野菜を育てることを楽しみ、収穫する ことを喜び、野菜そのものの味を堪能し、苦手だった野菜も抵抗なく食べられ るようになりました。玉ねぎの薄皮1枚をむきラップしてレンジで温め、少し の醤油をつけて食べ、玉ねぎの甘さを知った子どもたちや、掘りたての大根を 生でそのままかじる事で甘さを知った子どもたちは、畑で甘さや味が変わるこ とも知りました。また、畑で作物を育てる経験をしたことで、給食の残飯も減 り、健康な体づくりを共に考え取り組めるようになりました。 子どもたちばかりではなく、子どもたちに関わるスタッフの食に対する意識、 作物を育てることに対する知識も深まりました。 41 ② 学童保育の子どもたちは、学校から帰ってきてから自分たちでおやつを作るこ とを楽しみにしたり、今まで気付かなかった野菜の甘さ、辛さを知り、味覚の 範囲が広がりました。また、自分たちが育てていた枝豆が不作だった経験から、 おいしい野菜を上手に育てるにはよい土壌が必要だと感じ、おやつで出た晩白 柚の皮などを畑へ毎日持っていき、堆肥づくりを行っています。猪に2度、畑 を荒らされましたが、そのことで作物が不足している自然界の課題も教えられ ました。それでも、春には種まきができると楽しみに待っています。 ③子どもたちが野菜を食べられるようになったことを保護者の方々が心から喜ば れています。 「家庭でもピーマンを育てることにしました。」 「一緒に料理をする ことにしました。」「今までお弁当に嫌いなものは入れなかったけれど、なるべ く野菜を入れるようにしました。」という声が聞かれるようになりました。栄養 バランスを考えたお弁当を作られるようになったり、八代市主催の親子クッキ ング教室へ行かれ、親子で楽しんで料理をされたり、偏食を防ぐおいしい離乳 食の作り方を学び実践される方などがおられたりと、保護者の方々も食育に対 しての意識が高まりました。 6 事業の成立要因、成功要因 ふれあい農園の活動も地域の方のご理解やご協力、ご支援がないとこのよう に取り組むことはできません。地域の中で共に取り組んでいこうという方向性が 同じでなければ取り組みは成功しないと思われます。常に、地域の方との交流を 深め、日頃の状況を話し合い、助言を頂きながら、よりいい活動へと高まりを 見せたと思われます。おかげさまで農園も昨年よりも豊作で、おいしい野菜や果 物を収穫することができたし、子どもたちも新鮮な野菜をそのまま食べられる ようになりました。 又、いろんな方との出会い、つながりの中で、大切に子どもを育てておられ る保護者の方々の食育に対する意識が高まり、我が家の食卓を振り返り、気付 き、考える機会を与えられたことが、子どもたちの食に対する意欲に変化をもた らしたのではと思います。 7 今後の方向性(継続していくための課題等) 今後もふれあい農園の活動を通して、地域の方々に助言を頂きながら共にい ろんな作物を育て、収穫し、共に食しながら、食育活動がもっと深まっていけ ばと思います。また、保護者の方ともより連携を取りながら、子どもたちの食に対 する意識を高めていきたいと思います。農園活動にもっと保護者の方の参加を呼 び掛け、親子で楽しむ機会を増やしていけたらと思います。 障がい児にとっての農園活動(プランターのような箱庭を車椅子の高さに合 わせるなどをして、土に触れ、いのちを育む作業、収穫の喜び、食する喜び) も充実させていき、当たり前のことだが、障がいの有る無しに関わらず、誰で も参加できる食育を推進させたいと思います。 42 8 他の地域等に広げるためのポイント等 ・ふれあい農園を通しての 1 年間の活動、取り組みをまとめたDVD、レシピ集 を八代市やその他の団体及び公共の場に置いて頂くことにより、食育活動を実 践していることをより多くの方に知ってもらい、食育に対する意識を高め、み なさんが日頃取り組んでおられる食育と比較したりしながら、なお一層の活発 な取り組みとなるような動機づけになればと思います。 ・作物を育てることにより「いのち」を感じ、より愛着がわき、収穫する喜び、 食べる喜びを感じます。野菜そのものの味や季節感を知るように機会あるごと に伝えていきたいです。 43 野菜そのものの味を堪能!! 人参 玉ねぎ オクラ いちじく 柿 かぶ 大根 収穫に感謝し、作る喜び、食べる楽しさを味わう!! 44 自分たちで作る料理:豚汁、ピーナッツ豆腐作り サツマイモを洗って、濡らした新聞紙で包み、ホイルを巻いて焼き芋の準備 大根1本でどんな料理ができるのか!? 8品完成 大根もちは大好評!! 殻を割って出して炒ったピーナッツ。ピーナッツバターに変身!! 45 子どもたちに人気だった野菜のおやつ・レシピ ゴーヤのおかか和え <作り方> ① 半分に切って、ワタを取り、薄く切る。 ② 沸騰したお湯に少し塩を入れて、サッと湯がく。 ③ 水気を切ったゴーヤに鰹節とめんつゆを和えたらできあがり。 ピーマンときくらげのめんつゆ炒め <作り方> ① ピーマンときくらげを細切りにする。 ② フライパンに油をひいて炒める。 ③ 本だしとめんつゆで味付けをして、できあがり。 ※ 子どもたちが、ピーマンの苦みを感じることなく、「おいしい!!」と食べま した。「ピーマンが食べれた!!」と自信につながった 1 品です。 今まで給食の酢豚は残飯が多く困っていましたが、食育の活動を始めてから、 酢豚の残飯が激減しました。 46 レンジでチンした玉ねぎ <作り方> 皮をむいた玉ねぎに切り目を入れて、ラップで包み、3分チンするだ け。お醤油をちょっとたらして食べました。 大根もち <作り方> 大根をおろし、お醤油、鰹節を入れたものに、やわらかくしたお餅 を入れて、できあがり!! ピーナッツバター <作り方> ① 落花生の殻を割り、ピーナッツを取り出し、炒って薄皮を剥く。 ② 剥いたピーナッツをすり鉢で潰す。 ③ 砂糖を入れて混ぜ、無塩マーガリンを分け入れて混ぜていく。 ④ 塩を入れ、全体の味を調える。 47