...

チューリッヒ留学 第二報 / 大吉 達樹

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

チューリッヒ留学 第二報 / 大吉 達樹
チューリッヒ留学 第2報
チューリッヒ大学脳神経外科 大吉達樹
年 ⽉からのスイスでの留学⽣活もあっと⾔う間に半年以上が経過しました
2009 4
。
先に報告した第1報に引き続き、近況報告をしたいと思います。4 月にスイスに着いた頃に比べるとチューリッヒの生活にもだいぶ慣
れて、文化の違いを感じる余裕も持てるようになりました。チューリッヒ日本人会に入会して身近な生活情報を得たり、日本人会の
企画する様々なイベントにも参加させて頂き、こちらの文化に触れています。なかでも楽しかったのは6月にドイツ南部シュトゥットガ
ルトのワインツアーでした。ネッカー川に広がるワイン畑で実際のワイン作りの現場を詳しく⾒せて頂きました。ツアーガイドはドイツで
ソムリエをされている⽇本⼈⼥性、ワイン畑ではそこを管理するワイナリーのドイツ⼈⼥性に案内してもらいました。⼀目みて、ローマ
の円形コロッセオを思わせるような⻑楕円形の傾斜地にブドウ畑が広がり、太陽の直射光、⽯灰岩からの反射熱、ネッカー川から
の反射、と三度の太陽の恵みを受けたブドウは美味しい⾚ワインになるそうです。この畑からはトロリンガーという品種で、明るい⾊
のキリッとした軽い辛口のワインが生まれるとのこと。
ローマの円形コロッセオを思わせるような⻑楕円形傾斜地のブドウ畑(左側の写真)
急斜面の大地にブドウ畑が広がる(右側の写真)
左の写真の右の⼥性がツアーガイド、左の⼥性がワイナリーのドイツ人明るい色のキリッとした軽い辛口のワインでした。
海外留学と⾔うとなんといっても⾔葉の壁ですが、これは常に感じています。病院内の⽇常では、簡単なスイスドイツ語で会話は
可能ですが、やはりちょっと気を許すと英語での会話へ。病院内では相手も英語で話してくれるので、問題ありませんが、街中では
4つの言語が存在し、ジュネーブではフラン
ス語、イタリアの国境に近いルガーノ地方はイタリア語、私の住むチューリッヒは標準ドイツ語と違うスイスドイツ語が使用されています。
またスイスにある26の州のうち、18州がスイスドイツ語を基本言語にしています。さらにスイスの人口は170人、そのうち10%が外
英語は通じないことが多く、その際は得意のジェスチャーで切り抜けています。スイスには
国籍です。私が⽇常に使う電⾞やバスなどに乗っている時もほんとに世界各国の⾔語が⾶び交います。はじめの頃は単なる雑⾳
でしかありませんでした。しかし最近は⾔葉全体は聞き取れなくても、僅かに聞こえる単語をもとにその場の状況や雰囲気で理解
するようになりました。本来、言語というものは互いにコミュニケーションをする1つの要素で、その国の⾔葉を知らなくても通じ合えな
いことはないと実感しました。でも会話をしたいと思う気持ちが大事で、この気持ちが語学を上達させるのだなあと痛感しています。
年
〜
2009 7月23 26日、Swiss-Japanese Neurosurgical JointMeeting がチューリッヒで開催され、多くのスイスと日本の
脳外科医が集まりました。
Swiss-Japanese Neurosurgical Joint meeting のプログラム表紙と集まった多くの先生方
スイスと日本の学会の共同開催は初めてのことで今回の主催者側であるチューリッヒ大学脳神 経外科では多くの日本人脳外科
医を迎え入れるべく、たくさんの企画を用意しました
チューリッヒ湖で遊覧船によるCheese fondue 付きのクルーズ
学会期間中のGala Dinner。マジックショーなどもあり楽しかった。
我々⿅児島⼤学からは有⽥教授、⽻⽣先⽣、花⽥先⽣の3人が発表され、活発な質疑応答がなされ、実りのある素晴らしい
学会となりました。
お疲れ様でした。
発表
終わ
H
v
計
機
7 月の りにはチューリッヒ脳神経外科が主催する3 つの ands-on cada er course 9日間に参加する 会を得ました。
1 Microsurgical dissection of the human white matter
2 Microsurgical approaches to the s ull ase dissection
3 ndoscopic transsphenoidal approaches to the central s ull a
.
.
k b
.E
k b
いずれも非常に興味深く、ヨーロッパ内の脳外科医が毎日、講師として午前に講演し、午後から 実際のcadaver を用いてレク
チャーがありました。このとき後述するイスタンブールのYeditepe University Hospital のUgur Ture 脳外科教授にお会いし
ました(第3報に掲載)。
v
各テーブルに顕微鏡と高速ドリルが装備(skull base コース)
1 つのcada er head に2 人。
v
視鏡コース(左側の写真)。有田先生はWhite matter dissection を⾒学に来られました。
Cada er による内
H kU v y
H
H
教授の⼿術⾒学
ィ
訪問しました。ヘルシンキ⼤学脳外科は年間⼿術件数 例を
研修
ヨ パ
有数
施設
特
床
床 IU
OPE 室
麻酔
術場看護師
数 約5 ⽇と⾔う驚異的数字です。その中で先⽣はヨーロ パ 屈
指 卒 ペ ャ 特 動脈瘤 術 素晴
術 技
ゃ
ピ お
例、AV
例。未破裂 A 動脈瘤 k
k 最短 5分 記録
最 僕 嘘
半信半
実際に教授に数例の破裂、未破裂脳動脈瘤クリッピング術を⾒せてもらいましたが、感銘し
周
パ メディカ
鍛
教授 何 わ 次 順番 通 必要 器具 出 ほ
術
使⽤せず、⾼倍率で正確、スマートで 無駄 顕微鏡 術
訪 世界各
書 記
一 忘
週
例近くの⼿術を⾒る事ができました。
8 月には elsin i ni ersit Central ospital の脳外科Juha ernesniemi
のためにフ ンランドに
3200
12 人の 脳外科医と6 人の
医でこなす、 ーロッ の中
でも
の脳外科
です。脳外科に 化し た100 のベッドと16 の C 、4 つの
と6 人の
科医、32 人の
。すべ てが脳外科のためにあります。在院日 は
ッ では
の脳 中のス シ リストで に脳
手 は
らしい手 手 を持ってい らっし います。これまでのクリッ ングは よそ
3000
M が460
MC の脳
でs in-to-s inで
2 の
があるそうです。 初は は か
なと
疑でした。
ま した。 りの
ラ
ルのスタッフも えられていて、
が も言 なくても 々に
りに
な
を します。 とんどの手 で脳
べらは
のない
手 をなされます。ここを れた
国の先生が いた日
があり、その中 の 文が れられません。“ここから始めよ、脳卒中!”
1 間でしたが、20
ヘルシンキ⼤学総合病院とは離れたToolon 地区にあるこの病院は脳外科専用で意外と古い建物。 でも中はすごく綺麗で清
潔感がありました。これはOPE 室前のホール(右側の写真)。
教授は世界各地の来客の先生の国に押しピンをさしていました。顕微鏡はマウスロックで自由に 動かせるCarl Zeiss 社製で、
Yasargil 教授が開発したもの。Yasargil 教授は2001 年と2002 年 に施設⾒学に来ていて、記念プレートが術場に掛けら
れていました(右側の写真)。この施設を ⾒たYasargil 教授はGo-go surgery と言い、
またUNIVERSITY OF ARKANSAS MEDICAL SCIENCES (UAMS)の脳外科Ossama Al-Mefty教授はGood-good
surgeryと言ったそうです。
遠くに⾒える建物がヘルシンキ⼤学総合病院。⼣⽅、病院近くの海辺のカフェで教授から
軽食を 頂きました。中央の写真、右側がHernesniemi 教授
⽉に⼊り、スイスは本格的なウィンターシーズンの到来です。遠くに⾒えていたアルプス もすっかり真っ白な雪山となりました。
⼭々を近くで⾒たいと思い、ユングフラウヨッホに⾏き ました。
11
Top of Europe と呼ばれるもっとも標高の高い展望台があるユングフラウヨッホは富士山と同じ 位の高さにあります。酸素も薄く、
フラフラしながら(軽い高山病?)、一番高い展望のフロア ーに登りました(左から2番目の写真)。ここから始まるアレッチ氷
河は20km に達し、ヨーロ ッパ⼤陸の主要な⽔源となっています(左から3番の写真)。展望内には氷河をくり抜いて作っ た
氷河宮殿がありました(右側の写真)。
師走!
オ ナメ 溢
賑
WAROV KI
モ
変わ
デパ
商店
12 月、もう
11 月からスイスはクリスマス ードに っていましたが、 ート、
街ではクリスマスのイルミネーションや
ー ントで れてとても やかです。クリスマスは ドイツ語で eihnacht と言いますが、チューリッヒのクリスマス
は中
内にある S
S のクリスタルクリスマスツリーです( )。
下
W
名物 央駅
欠
駅構内で売られる暖かいGluhwein(グリューワイン)です。赤ワインに オレンジピールやシナモン、クローブ
などの⾹⾟料、砂糖やシロップを加えて⽕にかけ温めたも ので、寒空の下で飲むと格別に美味しくいただけます。
この季節、朝は9 時ごろに明るくなったかと思うと昼過ぎの4 時ごろにはもう暗くなり、夕方 5 時は真っ暗です。灰⾊の空と冷た
い風が吹き付ける毎日なので、気分も鬱になります。クリス マスが2 カ⽉間も⼤々的に⾏われるのは、このような鬱な気持ちを少
しでもはねのけようとする ヨーロッパ人の知恵なのだろうと思いました。ドイツでも各地で大きなクリスマスマーケットが 開催され、ヨー
ロッパを中心に世界各地からこの時期に合わせて観光客が押し寄せるそうです。
それと かせないのは
私達はドイツのシュトゥットガルトのマーケットを⾒に⾏きました(上)。
こちらのクリスマスは⽇本と違い、キリストの誕⽣祝う宗教⾊の強い⾏事です。聖書にもキリ ストの正確な誕生日は記されていま
せん。キリストは、暗い闇の世を照らす命の光としてこられ たので、冬⾄を過ぎ、昼間の時間が⻑くなり始めるこの時期を、5世紀
頃からクリスマスとした ということです。そのため各家ではオーナメントで飾ったもみの木と一緒にキリストに関する過 去の出来事を表
す人形を飾りつけます。
チューリッヒの留学もあと3ケ⽉となりました。ヨーロッパの⽂化、医療、社会など、⽇本と 異なる様々なことに驚く毎⽇です。このよ
うな留学⽣活ができたのは、私の家族、医局の先⽣⽅、 関連病院の先⽣⽅のご協⼒のお陰だと実感しております。ありがとうご
ざいます。3⽉には留学 ⽣活最後となる第3報を、1年の締めくくりとして報告したいと思います。
チューリッヒ大学脳神経外科 大吉達樹
Fly UP