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台風被害木の安全な処理方法

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台風被害木の安全な処理方法
台風被害木の安全な処理方法
台風 15 号の影響により、各地で様々な被害が出ました。林業の現場でも被害木の
処理作業が行われると思いますが、被害木処理作業では、通常の伐倒作業での注意事
項に加え、対象木の被害状況に応じた対策が必要になります。本紙では、安全な処理
作業のために注意していただきたい点を解説します。
●災害事例
上向きに倒れた被害木の根が地上に浮き
気味に出ている状態にあった。被災者はその
幹の根元に乗り、チェーンソーで幹を切って
いたが、切り離された瞬間根株が飛び起き、
その反動で 20m 下の斜面に転落した。
台風により傾斜・湾曲した偏心木を伐倒中
に、追い口から裂け上がり、先端部が接地し
た。湾曲が戻る反動で樹幹が落下し、退避し
ようとしていた被災者を直撃した。
【原因】
①根株に乗って作業をしたこと
②転倒している木の根株をいきなり切り離
したこと(幹を切るときに根株が動かない
ようにワイヤーロープや支柱で固定して
いなかったこと)
【原因】
①重心が著しく偏っている立木を重心方向
に伐倒しようとしたこと
②受け口の水平切りを切り込みすぎていた
ため、つるが十分機能しなかったこと
③追い口切りで受け口水平面との高低差を
より大きく確保する配慮に欠けたこと
[林材安全 2014・10 月号]
[上級チェーンソー作業者の安全ガイド 林災防]
被害木の処理作業は通常の伐倒作業以上に難しく危険が伴います。初心者だけでの作業は避け、
熟練者であっても、いつも以上に安全に留意して作業を行ってください。
作業の前に確認
●作業の着手前に、必ず被害現場の事前調査を行う
・現場の地盤の状態
・被害木の形状、傾き、他の被害木との接触状態の確認 等
●事前調査の結果をもとに、作業者間で十分な打ち合わせを行う
・山割り、作業手順、作業者の配置(一人作業、上下作業、近
接作業は禁止!!)
・注意を要する箇所、安全上必要な措置の確認
・注意を要する被害木の確認とその処理方法
・準備する機械、用具、作業の合図 等
(機械はできる限りプロセッサ、スイングヤーダ、グラップル等を使用する)
●作業実施の前には、安全に作業ができるよう作業場所や作業条件を整備する
・できるだけ斜面上部から作業する
・重なっている被害木は、上側または外側から順に処理する
【退避路の確保】
・落下のおそれや作業の支障となる枝や末木は事前に取り除く
・材の滑落、転動による危険を少なくして安全に作業する
・足場を整備する
・退避路を事前に確保してから作業を始める
傾き木の処理方法
傾き木・弓なりの木は、強い内部応力が働き、鋸断時に跳ね返りや裂けが起きやすくなってい
ます。被害木に働く力を見極め、細心の注意を払うことが必要です。特に著しい傾き木は、幹の
裂けを防ぐために次のような対策を講じます。
重心方向(傾いている方向)に伐倒すると
幹が避けやすいため、30~45°程度左右い
ずれかの方向に伐倒する。
重心方向
30~45°
受け口の上部をロープ等で 3~4 回強く
巻きつけてから伐倒する。
30~45°
中・大径木は追いづる切り、
小径木は受け口を大きく作り
追い口を高い位置から切り込
んで伐倒する
【追いづる切り】
折損木・欠頂木の処理方法
●折損木
折損木は折れている先端部が落下して作業者に激突する危険があります。できる限りグラップ
ル等の機械で処理し、グラップル等が使えない場合は、折損部の落下の恐れがない場所で作業を
行ってください。
<グラップル等が使える場合>
グラップル等で引き落として欠頂木とし
て処理する。
欠頂木として
処理する
<グラップル等が使えない場合>
つり下がっている側の横または重心の左
右 30~45°程度のいずれかの方向に伐倒
する。
つり下がっている側
重心方向
30~45°
横方向
●欠頂木
欠頂木は重心が材の中心にあり、重心を移動させにくいという特徴があるため、伐倒は次のこ
とに留意します。
受け口は大きめにとり、
追い口を低めに入れ、
クサビで重心を移動させて倒す。
受け口は
大きく →
追い口は
低め
転倒木の処理方法
●ヤガラ状の転倒木の処理
重なり合っている木は、切り離したときに予想外の方向に動くことがあります。処理作業はで
きる限り機械等で安定した場所まで引き出し、安定した場所で作業を行ってください。
<グラップル等が使える場合>
グラップル・ウインチ等で、ヤガラ状にな
った手前または上側から 1 本ずつ引き出し
てから処理する。
<グラップル等が使えない場合>
作業は斜面上部から行い、重なっている上
の材から処理し、切り離した材を牽引具で順
次引き出しながら作業する。
③
⑤
①
②
④
●曲がっている幹の切断
曲がっている幹の外側には大きな引っ張り応力がかかっているため、切断の際に跳ね返る恐れ
があります。一方、内側には圧縮応力がかかっており、切れ目を入れる際にチェーンソーが挟ま
れやすくなります。
そのため、曲がりの内側(圧縮側)から切れ込みを入れ、次に外側(引っ張り側)の順に切り
離します。
<上に曲がっている場合>
<下に曲がっている場合>
●幹と根株の切り離し
根株が起きている伐倒木は、根株と幹を切り離した時に根株等が動くことが多く、転動等を防
ぐ措置を講じることが必要です。
根株の倒れる方向を見極め、倒れる方向に
支柱を立てる。
※根が地面についている程度が大きいほど、
根の方向に引かれる力が強い。
急な斜面の下方向に倒れている場合は、作
業中に木が動き出さないようにワイヤーロ
ープ等で固定してから切り離す。
熊本県 林業振興課 林業担い手育成班
出典:林材安全 2014 年 10 月号、上級チェーンソー作業者の安全ガイド(林災防発行)
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