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1 子どもが運動に夢中になる姿が見たい!
68 No. [企画]みんなの体育編集委員会 子どもが運動に夢中になる姿が見たい! 東京・山梨「動きづくり研究会」事務局 眞砂野 裕 シリーズ 20 基本の運動で使える楽しい運動遊び 跳の運動遊びについて考える⑵ 信州大学教育学部准教授 渡辺 敏明 平成24年度供給保健教科書 訂正のお知らせ 子どもが運動に夢中になる姿が見たい! − 山梨と東京の教師が思いを一つにした研究会 − 東京・山梨「動きづくり研究会」事務局 眞砂野 裕 東京・山梨「動きづくり研究会」は,東京・山梨の小学校教師と山梨大学・中村和彦教授を中心に活動 する研究団体。「体つくり運動−多様な動きをつくる運動遊び・運動−」の指導法や,子どもが夢中にな れる楽しい運動遊び・運動で動きをつくる教材づくりについて,実践・研究を行っている。定期研修会には, 小学校教員をはじめ,中学,高校,大学,企業など幅広い層から参加者がある。 (編集部) 1 はじめに 「小学校体育は変わったか?」 ります。もう少し具体的な視点を挙げるならば,① 教師自身が,運動(動き)そのものを段階的に知っ 学習指導要領が改訂され,小学校での完全実施か ており,目の前の子どもの動きを的確に判断できる ら 1 年が過ぎました。どうでしょう,体育は変わり こと ②子どもにとってなぜその運動がおもしろい ましたか? もちろん,全学年に渡る体つくり運動 のかがわかっていること,の両面が必要なのです。 の実施やボール運動の類型の変容,中学校との連携 ①を熟知している教師は運動が苦手な子どもやもっ など,新規内容には体育人の一人として大いに研究 と上手になりたいと思っている子どもに適切な支援 意欲をかきたてられます。しかし,日々の学校体育, をすることができるでしょう。②を熟知している教 特に体つくり運動が質的に変容(願わくば向上)し 師は,どの運動(動き)内容でも,子どもたちを夢 たとは思えないのです。これはなぜでしょう。なぜ, 中にさせることができるでしょうし,新しい運動(動 子どもの意欲や表情,動きの質に大きな変化が見ら き)づくりにも一定の視点をもって創意工夫するこ れないのでしょうか。 とができるでしょう。 それは,運動(動き)を「子どもの側から」捉え ていないからではないでしょうか? 学習指導要領 換言すれば,「動きとおもしろさを切り離さない」 確固たる視点が求められているのです。 解説の例示にあるからその運動(動き)を順次取り 上げるのではなく,子どもの「おもしろい!」を大 切にしてその運動を見つめ,子どもにのめり込ませ ることで結果的に運動(動き)の質を向上させるこ とが今,必要とされています。 2 紹介します!「動きづくり研究会」 そんな必要感を抱いていたとき,体育の大先輩か ら研究会立ち上げの話をいただきました。山梨県に 子どもは「おもしろい!」と思うから夢中になっ も同じ思いを抱いている先生方がいらっしゃること て運動にのめり込みます。プレイ論に代表される, を知り,連携して発足したのが「東京・山梨『動き この当たり前の事実を具現化するには,今改めて運 づくり研究会』」です。本会は山梨大学教育人間科 動(動き)そのものに研究の焦点を当てる必要があ 学部教授 中村和彦先生を中心にした会です。ご存 知のように中村先生は現行の学習指導要領解説体育 が活動内容の一翼となっています。まだまだ精度は 編作成協力者であり,特に「体つくり運動」に代表 低いものですが,参加者の方々にもご意見をいただ される子どもの「動きづくり」の専門家としても大 きながら少しずつ共有できるポイントが増えてきま 変著名な先生です。その中村先生から直接ご指導を した。この内容は後述します。 いただけることの他にも,次のような特長をもった ●実技研修 研究会です。 「講義・動きの評価」と「おもしろい運動(動き) ① 研修内容がおもしろい! となるためのポイント」を共有した後には,参加者 本会は,定期的な研修会ごとに一つの動きに焦点 によるワークショップを開きます。少人数となるグ を当て,主に次の3部構成で研修を実施しています。 ループ内で意見を交流し,実際に運動(動き)づく ●中村和彦先生による講義 りに挑戦します。その後,各グループの中でも特に 毎回のテーマ(例えば「投げる」 「跳ぶ」 「走る」 おもしろかった 運動(動き) を互いに発表し合い, など)に沿って,その運動の発育・発達的段階から 全員が体験します。若手教員にとっては,明日の授 講義が始まります。例えば「ヒトはいつ,どの条件 業に活用できる内容が満載の時間です。 から「跳ぶ」ということを始めるのか?」など参加 ② 参加者がおもしろい! 者から「へぇ!」が連発する興味深い話の後は, 「動 子どもの健全な発育・発達を念頭に置いた会です きの評価」を共有します。まず,テーマとなる動き ので,さまざまな職種の方が参会します。小学校や の 「5段階評価」 をレクチャーしていただきます。 (循 中学校,高校の教師をはじめ,大学関係者,企業, 環系の動き(繰り返しの動き)である「走る」は評 シンクタンク関連など実に多くの立場からご意見を 価が難しく,実際の指導場面を想定した3段階で評 いただけるのも本会の特長です。また,この多岐に 価しました。 )そして,実際に子どもたちの動画(図 渡る人材のご縁で,福島県郡山市の幼稚園・保育園・ 1)を見ながら 10 ~ 15 名ほどの動きを評価するの 小学校の先生方と定期的に交流する機会も生まれて です。 います。(平成 24 年 3 月現在で5回実施。) 図1 ③ 研究がおもしろい! 繰り返しになりますが,本会では子どもたちの「お もしろい!」を保障するために,運動(動き)その パターン1 典型的な動作フォーム ものの評価を大切にしています。そこで,山梨大学 中村研究室の研究に協力し,学習指導要領解説にあ る基本的な動きの評価づくりも進めています。 パターン2 典型的な動作フォーム パターン3 典型的な動作フォーム 現在は,「短なわ(連続両足跳び)」などの 5 段階 評価づくりに協力しています。 3 新刊書の発刊 こうした取り組みをまとめたものとして,新刊書 (下記)を発刊することができました。 パターン4 典型的な動作フォーム (中村和彦による) ※本会はあくまで「子どもがおもしろい!と思う運 動(動き)づくり」を活動趣旨としています。こ の5段階評価も,おもしろい運動(動き)づくり 『体つくり運動』 〈多様な動 きをつくる運動遊び・運動〉 の授業がすぐできる! 子どもが夢中になる ! 楽しい 運動遊び のための一環と捉えてください。 ●「おもしろい運動(動き)となるためのポイント (要点) 」を共有 子どもたちが「おもしろい!」と思うのはどんな 条件のときなのか? そのポイント(要点)の精選 監修・編著:中村 和彦 編著:東京・山梨 「動きづくり研究会」 (学研教育みらい,2011 年 11 月) この新刊書の特長は,次の5点です。 〈1〉36 の基本的な動き 低・中学年で身に付けていくべき 36 の動きを, 「バ の動きづくりの中で抽出されたポイントを 14 にま とめ,掲載しました(下図はその一部)。まだ,発 展途上の内容ですが,動きづくりの視点に活用でき ランス」 「移動」 「力試し」 「用具操作」 に分けて掲 ると思います。 載しています。これらの動きが学習指導要領の体つ ◉運動遊びをおもしろくするコツ くり運動にも反映されているのです。(下図はその うちの「体のバランスをとる動き」(平衡系動作)。) p.29 ◉ 36 の基本的な動き p.18 p.33 〈5〉授業で使える「人数」・「用具」・「場所」一覧 巻末には運動(遊び)別に人数・用具・場所がす ぐわかる一覧表を掲載しました。実際の授業を考え るときの参考にしてもらうためです。 ◉「運動遊び」を行うための「人数」 ・ 「用具」 ・ 「場所」一覧 p.94 〜 95 〈2〉学習指導案例 本書の事例をもとに,低学年・中学年別に授業展 開例を掲載しました。 〈3〉約 150 種類の運動(遊び)を紹介 「バランス」 「移動」 「力試し」 「用具操作」「動き の組み合わせ」の項目別に章を構成し,対象学年・ 指導ポイント・運動の評価・動きのバリエーション を各ページにまとめて掲載しています(下図参照)。 ◉この本の使い方 p.24 4 まとめ 学校教育が社会的な機能を果たしている中,体育 も時代のニーズに応える内容で発展してきました。 今,どの教科においても学習指導要領は知識基盤社 会を背景にしています。体育科では「楽しく明るい 生活を営む態度を育てる」ことが目標です。子ども たちが主体的に運動に取り組み,体育におけるキー・ コンピテンシーを獲得するためにも,教師は子ども たちが「おもしろい!」と思う運動の世界をまず保 障しながら,動きの質を向上させていくべきです。 「動きとおもしろさを離さない」体育の学習が求 められているのです。 〈4〉動きをおもしろくする 14 のポイント 先述してきたように本会は子どもたちの「おもし ろい!」を前提に動きづくりを進めています。多く ★東京・山梨「動きづくり研究会」編著, 発売中 中村和彦監修・編著の単行本 『子どもが夢中になる! 楽しい運動遊び』の 購入・お問い合わせは下記まで。 ・㈱学研教育みらい 学校教育事業部(p.8 参照) ・ショップ . 学研 http://shop.gakken.co.jp/shop/ シリーズ 20 基本の運動で使える楽しい運動遊び 跳の運動遊びについて考える⑵ 体育館 でも 行えます ! 信州大学教育学部准教授 渡辺 敏明 と,教材づくり(ケンパー跳び遊び・幅跳び遊び) 2 について考えました。紹介した教材は,いずれも運 ゴム跳び遊びでは,前号で紹介した跳の運動遊び 動遊びになじませながら,後々の動きの学習につな の学習指導ポイント(①「利き足」を見つけよう, がる技能の芽生えを保障しようとするものでした。 ②走と跳の「結び目」を大切にしよう,③足を合わ 前号では,跳の運動遊びの学習指導上のポイント 8) ゴム跳び遊びの学習指導ポイント 今号でも,引き続いて「ゴム跳び遊び」を取り上げ せる「先読みの力」を育てよう,④新しい動き方の ながら,跳の運動遊びの学習指導のあり方について 紹介の仕方を工夫しよう)に加えて,大切にしたい 考えていくことにします。 内容がいくつかあります。 1 ゴム跳び遊びの楽しさはどこにあるのか ゴム跳び遊びの楽しさは,張られた「ゴムひも」 ①足の引き上げ感覚をつかませよう 高い位置にあるゴムひもを跳び越すには,振り上 げ足をすばやく上げる動きの要領(足の引き上げ感 をうまく跳び越すところにあります。シンプルな運 覚)が欠かせません。特に助走からの跳び越しでは, 動遊びですが,子どもたち自身で新たな跳び方を発 踏み切り足で行うジャンプだけでなく,腕を振り上 明したり,ルールを工夫したりすることもできます げる動きや,振り上げ足をすばやく上げる動きで上 から,多彩なチャレンジの可能性を蔵しているとい 昇の勢いを生み出すことが大切になるからです。 学習指導では,その場で片足を上げて足首にタッ えるでしょう。 発展的なゴム跳び遊びの動き方は,走運動(助走) チしたり,低く張られたゴムひもを(すばやく)ま と跳運動の「組み合わせ形態」になっていますから, たぎ越すことで動き方(足の引き上げ感覚)になじ 足を合わせて踏み切るための「カンの学習」と,ゴ ませます。慣れてきたら,踏み切り足を1歩踏み出 ムひもに引っ掛からずに跳び越すための「コツの学 して踏み切る「いち・ジャンプ」や,2歩目で踏み 習」 を絡み合わせて行う必要があります。ところが, 切る「いち・にい・ジャンプ」のリズムで台や跳び 5) カンとコツは同時に意識できません(相互隠蔽関係) 箱(2〜3段)に跳び乗らせることで,助走から足 から,すんなりと跳べる子どもよりも,跳ぼうとし を引き上げる感覚をつかませてあげることが大切に ても立ち止まってしまったり,ゴムの高さを上げた なります。 とたんに動きがバラバラになって跳べなくなったり ②バー感覚をつかませよう してしまう子どものほうが多いのです。 そのため,ゴム跳び遊びの学習活動では,子ども うまく跳び越すには,目で見ていなくても身体感 覚として「ゴムひも(バー)」の位置がわかること, が今持っている運動能力で楽しめる内容はもちろん つまり「バー感覚」を持っていることが大切になり ですが, 「うまくできない」という悩みを自分の身 ます。「バー感覚」は,意識させようとしてもすぐ 体と対話しながら解決していく学習,つまりカンと に育つという類いの能力ではありませんから,低学 コツの絡み合い現象に立ち向かいながら「動ける身 年のうちから芽生えを促していくことが大切になり 体」に出会うという,体育独自の楽しさの経験をさ ます。 せてあげる内容が大切になるのです。 学習指導では,低く張られたゴムひもを歩きなが 低学年のうちに,こうした動きの学習を豊富にさ ら踏み越したり,その場でジャンプして踏ませたり せてあげることで,将来取り組む高跳びや,走り高 することから始めます。慣れてきたら,ゴムひもの 跳びの学習にもスムーズにつながっていくことはい 高さを上げて,その場でまたぎ越したり,跳び越し うまでもありません。 たりすることで自分の身体感覚を拡大して,周りの (注):シリーズ名の「基本の運動」は,旧学習指導要領における運動領域名です。 情況(ゴムひもの位置)を自分の身体に取り込む感 目で踏み切る「いち・にい・ジャンプ」で斜め方向 覚をつかませてあげることが大切になります。 から踏み込んで跳び越えさせます。その際,ゴムひ ③カンとコツの絡み合いになじませよう もに近いほうの足が振り上げ足になる側から踏み込 助走から行うゴム跳び遊びの「動きの学習」は, んでいくことを確認しておきます。まずは,ゆっく 見本を見せて取り組ませたとしても,低学年の子ど りしたリズムで踏み込んで「踏み切りから着地する もにとって難易度の高い内容です。ゴム跳び遊びは, までの動き方」を身に付けさせることが,助走で足 単純に「足合わせのカン(先読み)」が働けば取り組 を合わせる「先読み能力(カン)」を働かせる前提 める「幅跳び遊び」の延長ではなく,むしろ踏み切 として大切になります。 り後の「動き方 (コツ)」を呼び込みながら適切に助 走を行う (カンを働かせる)ことが必要となる動きの 学習として捉えられるからです。 3 ゴム跳び遊びの教材づくりの工夫 学習指導では,まず初めに「踏み切りから着地ま ゴム跳び遊びでは,「片足や両足で連続して上方 での動き方」を身に付けさせたうえで,助走を加え に跳ぶこと」や,「助走を付けて片足で踏み切って て「足を合わせる努力性」を求めていくことで, 「コ 上方に跳ぶこと」を中心とした運動遊びを行います。 ツとカンの絡み合い」の学習を促すことが大切にな 「ゴムひも」があれば場所を選ぶことなく行えて, 8) 8) ります。 高学年で取り組む陸上運動(走り高跳び)にもつな ④発展的な学習では「またぎ跳び」を紹介しよう がる有意味な動きの経験をさせることができます。 ゴム跳び遊びの発展的な学習では,「またぎ跳び」 まずは基本の跳び方でゴム跳び遊びになじませるこ の原型となる動き方を身に付けさせることが大切に とから始め,慣れてきたら,子ども自身で跳び方や なります。 「またぎ跳び」とは,「ゴムひもに対して ルールの発明ができるように「遊び方の工夫」を促 遠い側の足で踏み切り,振り上げ足からまたぐよう していきましょう。 に越えて,足で安全に着地する跳躍フォーム」のこ とで,陸上運動(走り高跳び)で学習される代表的 な跳び方の1つです。 【1】ゴム跳び遊びになじませよう ゴム跳び遊びでは,張られた「ゴムひも」をいろ いろな跳び方で跳び越します。ゴムひもを用いるこ ゴム跳び遊びの授業では,子どもが日常的に経験 とで,引っ掛かっても痛くなく,短時間で繰り返し することのない「跳び方」の学習を行っています。 取り組むことができます。子どもをゴム跳び遊びに 子どもの発想で自由に跳ばせながら, 「引っ掛から なじませるには,誰もが引っ掛からずに跳べる高さ ないように工夫して跳ぼう」とか「いろいろな跳び から跳び始めることが大切になります。 方を考えよう」と促してみても,子どもになじみの ここでは,そのための最適な教材として,いわゆ ある正面からの跳び越し(ハードル型)や,低い軌 」と呼ばれる「伝承遊び」を紹 る「ゴムだん(段) 跡での跳び越し(幅跳び型)になってしまうことが 介しておきたいと思います。両足跳びが中心の運動 多くあります。低学年であっても,これらの跳び方 遊びですから,ジャンプを助ける身のこなし(腕の の学習だけでは,単元としての学習成果や,学んだ 使い方や,足をすばやく引き上げる動き方の要領) 動き方がどのように「走・跳の運動」や「陸上運動」 がつかみやすくなっています。さらに,ゴムひもを へつながっていくのかという,後々の発展可能性を 意識しながら繰り返し跳べるので,バー感覚の芽生 考えた場合,あまり望ましいことではないように思 えを促すことができます。 4) われます。 そのため発展的な学習においては,子どもにとっ て可塑性のある「またぎ跳び」を紹介することが大 切になってくるのです。 学習指導では,太ももの高さに張られたゴムひも を,その場で横方向にまたぎ越すことで動き方の要 領をつかませます。慣れてきたら,踏み切り足を1 歩踏み出して踏み切る「いち・ジャンプ」や,2歩 ●ゴムひもの作り方 図のように,カラー輪ゴムを編んで「ゴムひも」を作 ります。ゴムひもの長さは,3m 程度で,両端を結ん でループ状(輪)にします。平ゴムで作成してもよいで すが,子どもはカラー輪ゴムを用いて自分が作成したカ ラフルなゴムひもで遊ぶことを好みます。 輪ゴム 【ゴムだん(段)の行い方】 ①3〜4人のグループを作る(身長順)。 ②ジャンケンなどで,ゴムひもを持つ子ども(持ち手)を2人決 める。最初にゴムひもを張る高さは,1段目(足首)にするこ とを伝える。 ③モデルのグループの見本を見せながら,行い方を説明する。ゴ ムひもを持つ子どもは両足の外側にゴムひもを掛けてたるまな い位置に立つこと,1人ずつ跳ぶこと,全員が跳び終えるまで 段(高さ)を上げないことを約束する。 ④各グループに分かれて順番に跳ぶ。1巡ごとにゴムひもを持つ 子どもを交替することを約束する。 ⑤グループ全員が跳び終えたら,1段ずつゴムひもの高さを上げ る。 ⑥ゴムひもを張る高さは,子どもの体格や運動能力に応じて決め る。低学年では,「へその高さ(6段目)」まで上げることがで きれば十分。 ⑦ゴムひもの位置が高くなれば必ず引っ掛かるため, 「同じ段(高 さ)をもう一度跳ぶ」とか,「高い位置のゴムひもは,足や体 で引き下げて跳び越えてもよい」というように,グループで遊 びのルールを工夫することを促す。 ①基本となる跳び方 基本となる跳び方は,両足ジャンプで行う「ぐー・ ぱー・ぐー・ふみ・ぐー・ぱー」(図1)です。低 い段から始めることで,運動が得意でない子どもに も引っ掛からずに跳ぶ経験を繰り返しさせてあげる ことができます。低い段で動き方の要領(コツ)と 基本的なリズムをつかませておくことで,ゴムひも の位置が高くなっても対応(移調)できるようにな ります。教師が口伴奏で“ぐー・ぱー・ぐー・ふみ・ ぐー・ぱー”と,リズムを送ったり,子ども同士で 動きに合わせて口ずさむことで,場の雰囲気がよく なるとともに,動きの学習を促すことができます。 ②いろいろな跳び方の工夫の行い方 基本となる跳び方に続けて,「ねじって・ぴょん」 「またぎー」「おしまい」(図2)を行います。いず れも,基本となる跳び方で身に付けた動き方に加え て,ゴムひもの高さや位置を身体感覚としてつかむ 6段:へそ 5段:腰 4段:またの付け根 ことや,引っ掛からずに跳ぶための身のこなしが求 3段:ひざ 2段:すね 1段:地面すれすれ(足首) められる跳び方です。 こうした一連の跳び方に慣れてくると,方向を変 図1 ①ぐー ②ぱー ゴムの横に立ち, ジャンプしてゴ ムの間に入る。 ジャンプして,足 を開いて,2本の ゴムをまたぐ。 図2 ①ねじって ②ぴょん ③ぐー ジャンプして, ゴムの間に立つ。 ④ふみ ジャンプして,足 を開いて,2本の ゴムを踏む。 ⑤ぐー ⑥ぱー ジャンプして, ゴムの間に立つ。 ③またぎー ジャンプして,足 を開いて,2本の ゴムをまたぐ。 ④おしまい ゴムを1本 ずつ踏んで 外へ出る。 ゴムひもを高く した場合 2本のゴムをまたい だ体勢から体をね じって,ゴムを足で 挟んだ後ろ向きとな る。 ジャンプして, ゴムを足から 外す。 ゴムをまたぐように越えて外に出る。正面からハー ドルのように越えるのではなく,横方向にまたい で越える動き方の要領をつかむ。ゴムの位置が高 くなると,ジャンプしながらまたぐ要領が必要に なる(またぎ跳びの原型といえるもの)。 ⇩ えながら跳び越したり,ゴムひもを足で引き下げな ●初めの段階(ゴムひも1本を跳ぶ) がら跳び越えたりする多彩な遊び方(跳び方)の工 夫ができるようになります。 「ゴムだん」には,紹 介した跳び方の他にも,わらべ歌やCMソングと結 び付いたおもしろい跳び方がたくさんあります。皆 さんの地域に伝わっている遊び方を探してアレンジ することで,教師も子どもも一緒になって楽しく取 り組める実践がつくれると思います。 【2】発展的なゴム跳び遊び ※先頭の子どもは,全員が跳び越すまで次のスタートを待ちます。 ●慣れてきた段階(ゴムひも2本を跳ぶ) これまで身に付けてきた跳び方の要領を発展させ たゴム跳び遊びとして,数歩の踏み込みから行う「8 の字跳び」と,短い助走から行う「ゴム高跳び」が あります。 「ゴムだん」で使ったゴムひもを用いる ことで,前の学習からの移行がスムーズになるとと もに,クリアする楽しさをたくさん味わわせること ができます。 「8の字跳び」では,ゴムひもに近い側の足でま たぎ越すと跳びやすいという技術観や,自分の得意 な側は左右どちらなのかという側性への気づきを得 させる学習指導が大切になります(コントラスト差 による学習指導)。さらに「ゴム高跳び」では,踏 み切るまでの助走をリズム化できる力を芽生えさせ る学習指導が大切になります。リズム化とは, 「いち・ にい・じゃんぷ」とか「いち・にい・のお・じゃんぷ」, 助走を延ばして「いち・にい・さん・しい・ゴー(じゃ んぷ) 」 ,というように自分なりの動きのリズムを生 み出している状態のことです。動きのリズムは,運 動共感を通して伝わる力が強くありますから,教師 の側から口伴奏などでリズムを送ったり,よい動き をしている子どもと一緒に学習活動に取り組ませた りすることで,リズム化を促すことが大切になりま す(リズム化による学習指導)。 ①8の字跳び 【行い方】 ①6〜8人のグループを作る(身長順グループ)。 ②ジャンケンなどで,ゴムひもを持つ子ども(持ち手)を2人決 める。ゴムひもを張る高さは,グループ内でいちばん小さな子 どもの膝ぐらいにするように伝える。また,ゴムひもは片足に 付けて,たるまない位置に立つことを約束する。活動内容に応 じて, ゴムひもの付け方や, 持ち手の向きなどの変更を許容する。 ③モデルのグループの見本を見せながら,行い方を説明する。数 字の「8」の字になるような道順で跳ぶこと,先頭はみんなが 跳び終えるまで次のスタートをしないこと,先に跳んだ友達や 周りの様子を確認して跳ぶと安全である(ぶつからない)こと を理解させる。 ④各グループに分かれて順番に跳ぶ。初めの段階では,バーの幅 が狭い状態(ゴムひも1本)にして跳ぶ。2〜3巡跳んだら, ゴムを持つ子どもを交替するように約束する。 ⑤慣れてきたら,バーの幅が広い状態(ゴムひも2本)にして跳ぶ。 ※先頭の子どもは,全員が跳び越すまで次のスタートを待ちます。 〔活動のポイント〕 ①誰でも跳べる高さにゴムひもを張るため,ケンケンやカン ガルー跳び(両足ジャンプ)など,どんな跳び方でも跳び 越すことができる。最初は子どもの発想で自由に跳ばせる。 いろいろな動きが出てくる中で,「またぎ越し(またぎ跳 び)」で行っている子どもをよい跳び方のモデルとして見 せて,その跳び方にチャレンジするように促す。 ②8の字跳びでは,ゴムひもを自分の左右両方の側から跳ぶ。 そのため踏み切り足が定まっている子どもでは,「またぎ 越し(またぎ跳び)」を行おうとすると,跳び越しやすい 側(振り上げ足がゴムひもに近い側)になる場合と,跳び 越しにくい側(振り上げ足がゴムひもから遠い側)が生じ てくる。学習指導では,自分の踏み切り足(利き足)に応 じた「跳び越しやすい側」を見つけさせるように促す。 ③バーの幅を広い状態(ゴムひも2本)にして跳ばせること で,同じ高さでも難易度が上がり,「バー感覚」を意識し やすくなる。学習指導では,ゴムひもに触れずに跳べたら 「やったね(セーフ)」,ゴムひもに引っ掛かったら「どん まい(アウト)」のルールを伝え,仲間同士で判定しなが ら繰り返し跳ぶことを促す。ルールの基準は子どもの実態 に応じて決め,足や尻がゴムひもに触れても跳び越せたら 「おしい(セーフ)」を加えたりする。 ②ゴム高跳び 【行い方】 ①6〜8人のグループを作る(身長順グループ)。 ②ジャンケンなどで,ゴムひもを持つ子ども(持ち手)を2人決 める。ゴムひもを張る高さは,太ももの辺りにするように伝え る。ゴムひもは片足に付けて,たるまない位置に立つことを約 束する。活動内容に応じて,ゴムひもの付け方や,持ち手の向 きなどの変更を許容する。 ③教師が「またぎ跳び」の見本を見せて,「ゴム高跳び」の行い 方について説明する。自分の得意な側(ゴムひもに近いほうが 振り上げ足になる方向)から「またぎ跳び」で跳び越すとよい こと,踏み切りまでの助走は3〜6歩程度にすること,先に跳 んだ友達や周りの様子を確認して跳ぶと安全である(ぶつから ない)ことを理解させる。 ④各グループに分かれて,自分の得意な側から順番に跳ぶ。初め の段階では,自分の得意な側がわからない子どもが多いので, 左右両側から跳んで決めるように促す。2〜3巡跳んだら,ゴ ムひもを持つ子どもを交替するように約束する。 ⑤慣れてきた段階では,自分の得意な側が定まっているので,子 どもの実態に合わせてゴムひもの位置を高くしていく。 ●初めの段階(左右両側から跳んで,得意な側を決める) 【引用参考文献】 1)天野義裕・細江文利・岡野進『体育科教育別冊⑦ 跳・投運動の授業』大修館書店, 1991 2)髙橋健夫・林恒明・藤井喜一・大貫耕一『体育科教育別冊⑧ 基本の運動の授業』大修 館書店,1992 3)木下光正『写真で見る運動と指導のポイント 6 陸上』日本書籍,1997 4)嶋野道弘監修『みんなであそぼう校内あそび3 なわとび・ゴムとび』ポプラ社,2000 5)金子明友『わざの伝承』明和出版,2002 6)三木四郎『新しい体育授業の運動学』明和出版,2005 7)清水由『小学校体育 写真でわかる運動と指導のポイント 陸上』大修館書店,2008 8)文部科学省『小学校学習指導要領解説 体育編』東洋館出版社,2008 9)清水由『とってもビジュアル ! 筑波の体育授業(中学年編) 』明治図書出版,2008 10)木下光正『とってもビジュアル ! 筑波の体育授業(低学年編) 』明治図書出版,2009 11)髙橋健夫監修『小学校体育科教師用指導書 1 〜 6 年』学研教育みらい,2010 12)髙橋健夫・松本格之祐ほか『すべての子どもが必ずできる体育の基本』学研教育みら い,2010 13)木下光正「4 年生の走・跳の運動 リレー・ゴム高跳び(小学校に体育の教科書を 連 載 12) 」 『体育科教育』第 59 巻第 3 号,大修館書店,2011 ※次に跳ぶ子どもは,前に跳んだ友 達が戻るまでスタートを待ちます。 ●慣れてきた段階(助走のリズム化を促す) 平成 24 年度供給保健教科書 「みんなのほけん 3・4 年」 「みんなの保健 5・6 年」 訂正のお知らせ 平素より,小社発行の保健教科書ならびに関連 副読本におきましては格別のご高配を賜り,厚く 御礼申しあげます。 さて,平成 24 年度供給の教科書「みんなのほ コート ライン けん3・4年」(保健 305), 「みんなの保健5・6年」 (保健 505)では,以下のような訂正が施されてお ※次に跳ぶ子どもは,前に跳んだ友 ります。ご指導にあたっては,ご配慮くださいま 達が戻るまでスタートを待ちます。 すようお願い申しあげます。 〔活動のポイント〕 ①子どもの立つ位置や,助走距離(角度)の目安となる「補 助ライン(3m 程度)」を引いたり,目印を置いたりする ことで学習活動がスムーズになる。体育館で行う場合は, 床に引かれているコートラインの4隅(コーナー)の部分 を使って行うとよい。ラインは,あくまでも助走の目安だ ということを理解させる。 ②助走や踏み切りのぎこちない子どもには,「ゴムひもの真 ん中辺りを跳ぶこと」,「遠くから助走しても足が合わない こと」,「助走スピードが速すぎると上手な踏み切りができ ないこと」を伝える。また,助走にリズムが生まれるよう に「いち・にい・のお・じゃんぷ」「いち・にい・さん・ しい・ゴー(じゃんぷ)」「ぱ・い・な・つ・ぷ・る(ジャンプ) 」 というように,口伴奏で動き(助走)のリズム化を促す。 ③助走のリズム化ができると,力強く踏み切れるようになる。 学習指導では,ゴムひもに触れずに跳べたら「やったね (セーフ)」,ゴムひもに引っ掛かったら「どんまい(アウト)」 のルールを伝え,仲間同士で判定しながら繰り返し跳ぶこ とを促す。2回続けて跳べたら,少しゴムひもの位置を高 くして,取り組んでもよいことを約束する。ルールの基準 は子どもの実態に応じて決め,足や尻がゴムひもに触れて も跳び越せたら「おしい(セーフ)」を加えたりする。 小学校体育ジャーナル 68号 ●企 画 みんなの体育編集委員会 ●発行人 石津 正文 ●編集人 近藤 茂 ●発行所 株式会社 学研教育みらい 平成24(2012)年4月発行 ※この冊子は,環境に配慮した紙,インキ,CTP方式で製作しています。 学研教育みらい ●みんなのほけん 3・4 年(保健 305) p.22 脚注「食事バランスガイド」 《訂正後》 → 削除 ●みんなの保健 5・6 年(保健 505) p.41「保健所だよりの発行や配布」の画像 《訂正後》 ※教科書では,カラー で掲載。 ※小社HP「学研学校 教育ネット」 (http:// gakkokyoiku.gakken. co.jp/)をご覧くだ さい。 ◎お問い合わせは,「学校教育事業部」へ 〒141-8416 東京都品川区西五反田2-11-8 学研ビル内 内容については, TEL03-6431-1568(編集) それ以外のことは,TEL03-6431-1151(販売) URL:http://gakkokyoiku.gakken.co.jp/ ◎「小学校体育ジャーナル」は,上記ホームページでもご覧いただけます。 9300003633