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建国60周年を迎えた中国経済の動向および 進出企業にかかわる最新の

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建国60周年を迎えた中国経済の動向および 進出企業にかかわる最新の
海 外 情 報
企業※1による協力の下、原材料を国外から保税
す。しかし、こうした金融危機対策は、あくま
で供給し、郷鎮企業に委託加工(以下、来料加
で一時的な措置と考えられ、06年度の第11次
※2
工 )させ、加工された製品を輸出してきまし
建国60周年を迎えた中国経済の動向および
進出企業にかかわる最新の政策について
JBS 中国ビジネスグループ 福井 修
5カ年計画には変更がないものと思われます。
た。この方式が発展した背景には、中国の安価
また、09年1月には増値税暫定条例が施行
な労働力を活用し、品質管理を自ら行い、多額
され、固定資産の仕入税額の控除が認められる
の投資を避けたい外国企業側のニーズと、外資
改正が行われました。これに伴い、来料加工を
企業の誘致や雇用の創出をもくろむ地元政府の
行うために国外から設備を輸入する際、従来は
ニーズが合致したことがあります。
輸入増値税が免除されましたが、課税対象とな
ところが、06年度に発表された、中国の経済
りました。来料加工の場合、加工賃の受け払い
と社会を発展させるための要綱「第11次5カ年
しか行わず、売上が計上されないため、この輸
計画」では、国家戦略としてハイテク企業を中
入増値税が売上増値税から控除できず、大きな
心とした高度な産業を誘致し、経済をさらに発
コスト増になりました。政府が来料加工を望ん
展させる方向性が示されました。単純な加工の
ではいないという姿勢の表れといえます。今ま
みを行う典型的な労働集約的形態と見なされる
で様子見でいた企業においても、今後、来料加
来料加工は、自国の技術を発展させるものでは
工工場から現地法人設立、あるいは撤退などへ
なく、中国の目指す方向と逆のものとなりま
の動きが進むと思われます。
す。また、来料加工には次のようなマイナス面
があると考えられます。
海外と中国との間で加工賃のみの受け払いが
行われ、この加工賃には増値税が免除となる
けん いん
Ⅰ はじめに
牽引役ともいわれるようになった中国ですが、
前倒しで行ってきた公共投資に息切れの懸念が
中国の郷鎮企業による協力の下で加工する
が、郷鎮企業による工場を規定した法令など
09年前半から経済が落ち着きを取り戻して
きた中で、7月7日に広東省工商行政管理局よ
り、
「三来一補」
(=来料加工、来様加工、来件
加工および補償貿易)企業の転換を促進するた
め、法人化の手続きを簡略化する文書が発行さ
中国政府主導の総額4兆元(約53兆円)の
出てきていることと、積極的な貸出増による銀
経済対策により、2009年度第1四半期のGDP
行の不良債権増加懸念から、金融引き締め、あ
成長率は前年度比で6.1 %成長、第2四半期は
るいは、それに近い政策への移行が予想されま
7.9%と、09年度の目標値である8%近くまで
す。こうした経済情勢は、進出企業をめぐる政
回復しています。意外に思われるかもしれません
策にも大きく影響します。本稿では、最新の動
こうした理由から、来料加工を含めた加工貿
また、7月16日付で国家税務総局より「来
が、現在の中国のGDP成長率のうち輸出の占
きの中から進出企業に影響を及ぼしそうなテー
易に逆風となる制限・禁止類(加工貿易が制
料加工工場の法人化に伴う輸入設備の税収問題
める割合は2割程度まで減少し、8割程度が固
マを三つピックアップして紹介します。
限・禁止される品目)の増加措置が07年、08年
に関する通知」が公布され、無償貸与していた
度に次々と打ち出されました。
設備を現物出資する場合の、輸入にかかわる関
定資産投資といわれています。09年度の固定
資産投資は年率で30 %超の伸びを記録してい
ますが、その中でも代表的な公共投資を中心と
したインフラ整備関連を前倒しで進めてきたこ
とが経済回復の要因として挙げられます。経済
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ため、税務当局にとってはメリットがない。
2. 新たな政策
業態変更を迫られる来料加工の
Ⅱ
行方
1. 来料加工の推移
はなく、違法行為も行われているといううわ
さが絶えず、コンプライアンス上、問題だと
指摘されることがある。
しかしながら、08年9月に発生した金融危
機による急激な輸出環境の悪化で、失業者の急
れました。これは、来料加工工場から外商投資
企業、あるいは類型企業への転換を促すため、
営業許可証取得手続きを簡略化するというもの
です。
税と増値税の取扱いについて、以下のように明
確にしました。
増や景気後退が生じたため、政府は06年度か
ら行ってきた政策とは百八十度転換し、制限・
(1)輸入関税と輸入増値税が免除されるケース
対策の恩恵は国有の大手企業に集中していると
従来、中国の経済成長は輸出主導型といわれ
禁止類の削減措置を矢継ぎ早に採用し、輸出産
09年7月1日 か ら11年6月30日 ま で に 来 料
いわれていますが、日系の進出企業でも、自動
てきました。政府は沿海部に企業所得税を優遇
業への支援を行ってきました。政府の迅速な対
加工工場の輸入設備を現物出資して外商投資企
車、家電、農業関連などで、税金の削減や補助
する経済特別区を設立し、外資企業を誘致する
応により、輸出額は前年度比でマイナスが続い
業を設立する場合、08年12月31日以前に加
金政策により、その効果が出ているようです。
一方、加工貿易を行う労働集約型の産業が中心
ているものの、減少幅は少なくなってきていま
工貿易手帳を届出済み、かつ09年6月30日以
09年10月に建国60周年の記念式典が終わ
となり、製品を輸出し、外貨を稼ぐことにより
り、国内でのビッグイベントは10年5月に始
発展してきた経緯があります。日本を含めた外
まる上海万博へと引き継がれます。世界経済の
国企業は、広東省などの華南地区で中国の郷鎮
ごうちん
※1 中国の郷(=村)や鎮(=町)における中小企業
※2 外国企業から無償で原材料を輸入し、加工後に製品を輸出して加工賃を受け取る方式
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海外情報
前に輸入申告している設備について、追加徴収
は免除されます。
2. 人民元国際化に向けた政策
09年7月、対外貿易取引に関する人民元決
済が試験的に開始され、いよいよ中国は人民元
(2)輸入関税が課されるケース
09年1月1日以降、新たに届出をした設備や、
08年12月31日以前に届出をしたが、09年7月
1日以降に輸入申告した設備をもって出資し、
外商投資企業を設立する場合は、その外商投資
企業が従事するプロジェクトが、国家奨励類産
業条目あるいは中西部地区外商投資の優勢産業
プロジェクトに属するときを除いて、一律に関
税が追加徴収されます。
3. 対象企業に望まれる対応
こうした通達が次々と公表される意味は、来
料加工形態からの転換への方向性を示し、期間
取引の資金をコントロールしているような場
して自己調査を行い、納付不足の税金を追加で
合、今後の人民元国際化戦略を十分に注視し、
申告納税することを求めました。その後、ほか
財務戦略を構築していく必要があります。
の60社の大型企業まで拡大しました。納税者
が誠実に自己調査を完了することを確保するた
の国際化に向けて歩みだしたとして注目されて
います。人民元決済を行うメリットは、次の2点
です。
中国の輸出企業は為替リスクを軽減できる。
輸出企業は輸出時に面倒な手続きである外貨
の入金照合が不要となる。
Ⅳ 徴税強化の動き
めに、その調査に対して主管税務機関が監督と
審査を行います。
1. 背景
08年に発生した世界的な金融危機への対応
として、冒頭で述べたとおり、中国政府は総額
(3)非居住者企業への課税強化
前記
(1)の特定税務調査では、非居住者企業
4兆元にも及ぶ大規模な経済対策を取り決め、
も初めて国家税務総局から調査の対象とされま
ただ、中国政府の動きに対して、実際の人民
09年と10年の時限措置として、インフラ整備
した。中国の居住者企業が非居住者企業に対価
元決済の動向は非常に低調です。その理由は、
を中心に積極的な経済の活性化を図ってきまし
を支払うときに、源泉所得税を納付しているか
次のようなものです。
た。一方、景気対策の財源は、中央(約1.1兆
どうかが調査の重点となります。
対外貿易で人民元決済が可能な企業と対象国
(ASEAN連合、香港、マカオ)が限定された、
試験的な運用である。
元)と地方(約2.9兆元)で負担することにな
りましたが、折からの経済危機の影響で、国内
経済も09年前半は落ち込みが激しかったため、
3. 進出企業に求められる対応
中国子会社など中国で経営を行っている、す
税支出が収入を上回る状況が続いていました。
べての企業は、今現在および過年度の納税義務
その対応策として、徴税強化の動きが出て
の履行状況に対して、速やかにレビューするこ
きています。09年度のGDP成長率の目標値と
とが求められます。その結果、過少納付となっ
して8%を掲げており、景気動向次第では、追
ている税金について追加納付を行い、可能な限
加の経済対策も辞さない方針を打ち出していま
り延滞金と罰金を減らすよう努力する必要があ
す。そのための財源はいくらでも欲しいという
ります。また、主管税務機関から各種情報と資
政府は、人民元決済が広がらないことへの対
のが実情です。幸い、世界よりいち早く株式市
料の提出を求められた場合、短期間で準備する
策の一つとして、人民元建て国債(2年、3年、
場や不動産マーケットが回復してきており、税
ことは困難を伴います。あらかじめ、個別取引
メージを持っているでしょうか。国際的な取引
5年)を香港で発行すると発表しました。これ
収には改善傾向が見られます。しかし、09年
の性質、あるいは不明確な税務申告情報を説明
に利用される通貨は、米ドル、ユーロ、円が一
まで国内で限定的に発行されてきましたが、人
に入り、徴税強化などの徴収管理に関する通達
できる資料をそろえておくことが重要です。
般的ですが、今や世界一の外貨準備高を持ち、
民元決済により人民元を得ることになる国外の
は、すでに10通以上も公布されており、税務
世界経済の牽引役ともいわれる人民元の流通量
企業や個人にとっての運用先ができたことにな
当局の強い意気込みに変化はありません。
は極めて限定的です。しかし、意外と知られて
ります。人民元の国際化に向けた布石を打って
いないことですが、中国周辺国では人民元取引
いるといえます。ただ、当初は人民元建て取引
が最も一般的となってきており、われわれの想
に積極的な香港での発行にとどめており、国債
像以上に人民元のハードカレンシー化が進んで
の規模も大きなものではなく、状況を見ながら
います。
拡大していくものと思われます。
内の完了を促していると思われます。対象とな
る業務を行っている場合には、早期の意思決定
と行動が望まれます。
人民元が他通貨に対して上昇する局面では、
人民元建てで決済すると輸入者側で為替差損
が生じるデメリットがある。
国外での人民元の流通性が低く、運用先に困
Ⅲ 人民元国際化への助走
1. 現状
人民元というと、われわれはどのようなイ
窮する。
<お問い合わせ先>
2. 国家税務総局の求める主な徴税強化に関する
通達の内容
では、国家税務総局がどのような要求をして
いるのかを見てみましょう。
JBS 中国ビジネスグループ
Te l:03 3503 1420
Fax:03 3503 1869
E-mail:[email protected]
ただし、中国政府は過去より、対外開放につ
いては小出しの緩和策を採用することが一般的
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3. 進出企業に求められる対応
(1)特定税務調査
で、国外の要因で国内経済がかき乱されること
中国との貿易取引を行う日本の進出企業に
毎年、全国的に実施される税務調査で、特定
を極端に嫌ってきました。金融を見ても、国外
とって、現状では米ドルや円が一般的な取引通
の業種と企業を調査対象とし、細かく調査を行
では1990年代から広く取り扱われているデリ
貨ですが、今後、中国の企業が成長すると、当
います。
バティブ取引でも、人民元金利・通貨スワップ
事者の力関係によっては人民元での決済を要求
が銀行間市場で認められている程度で、金融機
されるケースも出てくると思われます。当面、
関の取引は伝統的な融資、保証、預金業務が主
運用先も用意されている香港を中心に取引量が
当初、大型企業集団(外商投資企業10社を
体となっています。
増加すると予想されます。香港で中国を含めた
含む)90社に、各自の納税義務履行状況に対
(2)税務自己調査
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