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「吉田源治郎・幸の世界」(29)

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「吉田源治郎・幸の世界」(29)
KAGAWA
GALAXY
「吉田源治郎・幸の世界」(29)
内村鑑三『聖書之研究』第 235 号(「日々の生涯」1920 年 1 月 6 日~15 日「星覗き」)
第 29 回
『肉眼に見える星の研究』(9)
源治郎は若き日、明治学院に学んでいた頃、内村鑑三との関わりを持ち、「柏木教友会」
の会員になるほどの深い関係にあったことや、妹・なつゑの急逝の時には、内村によって
彼女の告別式が執り行われたことなどについて、第5回と第6回において触れて置いた。
そしてそのときにも、
『内村鑑三研究』第35号別刷り(2001年)所収の椚山義次「内
村鑑三と天文学」と同36号(2002年)に入った高木謙次「資料・内村鑑三と吉田源
治郎」のことにも少し言及した。
これまで長々と、源治郎の初期の作品『肉眼に見える星の研究』に触れて、諸資料を紹
介して来たが、今回はもうひとつ、源治郎が生涯にわたって「肉眼天文学」に打ち込むこ
とになる契機となったのは、源治郎が学生時代の強い影響を受けた内村鑑三であり、当時
内村は、時を見つけては「星覗き」をする「星道楽」であったという、椚山・高木両氏の
論稿を、取り出して置きたいと思う。
くぬぎやまよしつぐ
椚 山 義次「内村鑑三と天文学」(2001年)
椚山義次は、内村鑑三や宮澤賢治の研究などで知られる方であるが、10年前(200
0年)12月2日の「朝日新聞」夕刊で、次の記事が掲載され、大きな話題を呼んだ。
今年の星空は、「星の王子様」と同じ星空~
星座に深い知識のあったフランスの作家、サンテグジュペリの生誕から百年の今年、
木星、土星、おうし座の1等星アルデバランが接近してつくる、60年に一度の天体
ショーが冬の夜空を飾っている。
サンテグジュペリが著書「星の王子様」(岩波書店)の表紙などに描いた絵は、東
の空に明るく輝くこの珍しい星の配置だったという説を、福島県三春町の文学研究家
が発表した。
三つの星は、夜の八時から九時ごろにかけて真東の45度ぐらいの高さに見られる。
その配置と絵の一致に気づいたのは宮沢賢治や内村鑑三の研究者でもある椚山義次
さん。天文ファンでもあり、喫茶店を経営する傍ら、夜ごと星を眺めスケッチをする
うちに気づいた。
絵はサンテグジュペリ自ら描いた。
一見、適当に描いたように見える星の絵だが、他の星と区別するように、星形では
なく丸く描かれた三つの星の配置が、11月の初旬ごろの木星、土星、アルデバラン
の位置関係と一致したという。
何だかとっても、夢のある出来事でしょう~~~
星空が大好きな私には凄く魅力的な出来事で、今年と同じ三つの星の接近が見られ
たのは1940年で、サンテグジュペリが「星の王子様」を書いたとされる、194
2~43年の直ぐ前にあたるそうです。
だから、この星空の三角形は、60年に一度の星の形なのです。
そして、この三つの星の接近は来年の四月ごろまで楽しむ事が出来るそうです。
この冬は、暫く振りに「星の王子様」を、思い出しながら星空を眺めたいと思いま
す。
今から紹介する椚山論文は真にユニークである。
今回の冒頭に掲げたものは、内村鑑三の『聖書之研究』にある「星覗き」に熱中する「日
記」の一部をつないだものであるが、ここに紹介する論文は、12頁にわたる論文のはじ
めの4頁分である。
論文の書き出しは、はじめに掲げた「日記」の直ぐ後のことである。
高木謙次「内村鑑三と吉田源治郎」(2002年)
高木のこの論文の初出は『内村鑑三研究』第36号(2002年)であるが、ここでは
『高木謙次選集』第1巻所収分から「星の研究について」の部分を収める。
この項『肉眼に見える星の研究』は、後一回で一区切りとする。
(2010年7月8日記す。鳥飼慶陽)
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