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オートデスク ユーザー事例 大槌町

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オートデスク ユーザー事例 大槌町
Autodesk ユーザ事例
岩手県大槌町
会社概要
岩手県大槌町
〒028-1192 岩手県上閉伊郡大槌町上町1番3号
http://www.town.otsuchi.iwate.jp/
いわてデジタルエンジニア育成センター(いわてDEセンター)
事業主体:岩手県、北上市、北上職業訓練協会
〒024-0051 岩手県北上市相去町山田2-18
北上オフィスプラザ
岩手県大槌町
住民説明会から災害復興住宅の
入居者募集まで。復興計画の
3D モデル活用が広がる岩手県大槌町
http://www.iwate-de.jp/
AutoCAD® Civil 3D®
Autodesk® InfraWorks™
(旧称:Autodesk Infrastructure Modeler)
東日本大震災で被災した岩手県大槌町
では、2011年末に東日本大 震 災 津 波
復興計画基本計画(以下、復興計画)を
策 定 。これを受け て、い わてデジタル
エンジニア育成センターでは大槌町を
支援するため、復興計画をオートデスク
の土木インフラ設計ソフト「Autodesk
InfraWorks」で3D モデル化した。この
3D モデルは復興計画の内容が分かり
やすいため、住民説明会での説明に使
われたほか、動画化して町役場のモニ
ターでの上映や、拡張現実感( AR )を
使って災害復興公営住宅の建設予定地
で完成イメージの確認など、幅広く活用
されている。
公営住宅の建設予定地で行った完成イメージの確認。現場には何も建って
いないが、iPadを通して見ると、まるで完成後の公営住宅がそこに建って
いるかのように感じられる
ARで公営住宅の完成予想イメージを確認
「おー、こんな風にできるのか」、
「住宅の中にも入
れたぞ」。2012年12月、岩手県大槌町の屋敷前地
区にある災害復興公営住宅(以下、公営住宅)の
建設予定地で、携帯端末「iPad 」を持った数人が
iPad のカメラを通して建設予定地周辺の景色を見
ると、計画中の公営住宅の3D モデルが重なって見
える。これは現実の風景と仮想の 3D モデルをそ
の場で合成するAR(拡張現実感)という技術の応
用だ。着工前にもかかわらず、公営住宅があたか
歓声を上げながら歩き回った。
もそこに建っているかのように見えるのだ。
当者と、いわてデジタルエンジニア育成センター
感などがよく分かります。そして住宅の中に入って
この日、建設予定地を訪れたのは、公営住宅の建 「iPad の向きを変えると住宅も景色と連動して動
設を担当する大槌町の復興局や地域整備部の担 き、建設予定地の中を歩き回ると建物のスケール
(以下、いわて DE センター)で復興計画の 3D 化を
担当する技術者たちだ。
iPad には公営住宅とその敷地を3D モデル化した
データと、オートデスクが iPad用に開発したフリー
アプリ「Autodesk InfraWorks 360 for Mobile」
(以下、InfraWorks for Mobile)がインストール
されている。
部屋の中を見ることもできました」と、この日の建
設予定地視察に参加した大槌町復興局復興推進
室主事の松橋史人氏は語る。
Autodesk ユーザ事例
Autodesk InfraWorksで復興計画を3D 化
2011年 3月11日に発生した東日本大震災の津波
3Dモデルにお年寄りが身を乗り出した
住民説明会
で、町の中心部が壊滅的な被害を受けた大槌町で
大槌町では、InfraWorksで作成した復興計画の3D
は、翌年12月に「大槌町東日本大震災津波復興計
モデルを、幅広く活用している。まずは、震災から1
画 」を策 定した 。これを 受け て、い わて D E セン
年もたたない2012年1月16日に、大槌町の碇川豊町
ターの黒瀬左千夫センター長と主任講師の榊原
長や職員の前で行われたプレゼンテーションだ。
健 二氏 は、この 復 興 計 画をオートデスクの土 木
いわてDEセンターの黒瀬センター長と榊原氏は、
インフラ設計ソフト「Autodesk InfraWorks 」
スクリーンに防 潮 堤 や 新市街 地 などのリアルな
(以下、InfraWork s )を使って 3D モデル 化する
3D モデルを映し出し、復興計画を地上や上空など
様々な角度から見られることを説明した。3D モデ
支援を行ってきた。
InfraWorks は、様々な形式のデータを読み込ん
で1つの 3D モデルに統合する土木インフラ用の 3
次 元設 計ソフトだ。陸地や海、河川などの 3 次 元
地形をGoogle EarthやGIS(地理情報システム)、
ルを復 興 計 画コン セプトの 確 認 や、複 数のプロ
衛星写真などのデータで読み込み、その上に防潮
がとても分かりやすかった」と語り、復興計画で
堤や造成地、道路、鉄道、そして上下水道やガス管
(ビルディング・インフォメーション・モデリング)
3D モデルを活用していく方針を明らかにした。
そして同年 3月に開催された復興計画の住民説明
会では、初めて地域住民に、3D モデルを基に作ら
モデルをインポートし、復興計画案を1つの 3D モ
れたムービーが公開された。「大槌町では全家屋
デルにまとめることができるのだ。
の約 6 割が被災した。その復興計画を3Dで見せる
InfraWorks は複数の計画案を切り替えて表示で
と、住民はスクリーンにくぎづけになった。『うち
きるほか、様々な視 点や 角度からの 計 画 案 の 検
の家はどこだ』と身を乗り出して探すお年寄りの
証、3D 空 間 の 中を動き回って見る「ウォークス
姿も見られた」と、松橋氏は振り返る。
ルー」も行える。平面図や断面図などの平面的な
翌 4月には、大槌町はホームページにこれらのムー
情報では、土木・建築の専門家以外の人は実物を
ビーを掲載・公開した。また、大槌町には岩手県ほ
イメージしにくいが、こうした 3D モデルだと、誰も
か、様々な自治体から1カ月∼1年程度の期間、派遣
が理解しやすい。
職員が応援に来る。その研修会で行われる復興計
などの 土 木インフラ や 建 物 の 3 D モ デル や B I M
地域整備部(現・復興局)にある公営住宅の情報提供コーナーでは
ノートパソコンでムービーを上映している
ジェクト案の検討、合意形成などに使えることを
大槌町に提案するためだった。
このプレゼンを見た碇川町長は「復興計画の内容
画の説明にも、これらのムービーを活用している。
大槌町内のショッピングセンター2 階に設けられた「大槌町復興
まちづくり情報プラザ」でも、公営住宅の入居希望者向けにムービー
を上映
最新情報を反映し、すぐに情報共有できる
こうして復興が徐々に進み始めると公営住宅や道
路の建設計画なども具体化してくる。大槌町では
3カ月に1回のペースで復興計画の図面を更新して
いる。いわてDEセンターもそのたびに3Dモデルを
更新している。そのため、約1年後の3Dモデルは、
当初のものよりも街並みがよりリアルになった。
東日本大震災の津波で、大槌町は当時の町長や町
の幹部職員も津波の犠牲になった。そのため、一
時は機能不全に陥ったが、国や県からの出向職員
の支援もあり、復興に向けて歩み始めた。岩手県
沿岸広域振興局経営企画部復興推進課課長の菊
池学氏も 2011年 5月から約 1年間、大槌町に派遣
され、復興局長として実務に携わった。復興計画
大槌町のホームページで公開された復興計画のムービー
公営住宅の入居者募集にも3Dモデルを活用
の3D モデル化は、2011年秋にいわてDEセンター
からの提案を受けた菊池氏が、ゴーサインを出し
たのをきっかけに始まった。
「模型だと作ったり、修正したりするのに時間がか
前述の公営住宅の3D モデルは、設計・施工を担当
かる。その点、3D モデルはすぐに更新し、まちづ
する独立行政法人都市再生機構(UR )が作成した
くりのイメージを共有できる」と菊池氏は当時を
設計図を基に、いわてDEセンターが住宅設計用3次
振り返る。「高さ14.6メートルという高い防潮堤
元ソフトで3D モデル化し、さらにInfraWorksに読
の整備計画もある。岩手県内でもこんなに高い防
み込んで復興計画のモデルと一体化したものだ。
潮堤はほとんどないので、実感がわかない。その
InfraWorksによって3D 化された大槌町の復興計画。中心街から
大槌町では 2012 年度に大ケ口地区と屋敷前地区
点、3D モデルは市街地から海や防潮堤がどのよ
の防波堤の見え方や眺望、高台への住宅地移転などが視覚的に分
に、広さ 40 ㎡弱∼ 80 ㎡弱、間取り1DK∼ 4DK の
うに見えるかや、近くで見たときに圧迫感などが
公営住宅計 91戸の建設を始めた。住民説明にも、
よく分かるというメリットがあった」
(菊池氏)。
かりやすい
InfraWorks の3D モデルを活用している。
大槌町役場の地域整備部(現・復興局)には、公
営住宅の入居希望者向けのコーナーが設けられ、
完成予想図や地図などの資料とともに、ノートパ
ソコンを置き、InfraWorks の3D モデルから作っ
たムービーを常時、上映している。
また、町内のショッピングセンターの2階に設けら
れた「大槌町復興まちづくり情報プラザ」でも、公
営住宅の模型とともにムービーを上映。入居希望
者の情報提供サービスとして活用している。
2012 年 2 月、復 興計画の 3D モデルを見ながら検 討する大槌町
復興局の職員
岩手県大槌町
大槌町では復興計画の作成にあたり、地域住民と
東日本大 震 災の被 災地では、三陸 沿岸道 路の建
ともに作るという考え方を持っている。これまで
設など、これまでの設 計・施工のシステムに比べ
のように図面や地図だけによって復興計画の説明
て 2 倍程度のスピードが求められるインフラ整備
を行うと、住民には分かりにくく、ともすれば町や
計画もあり、CIM による建設プロセスの合理化に
企業だけで復興計画づくりが進んでいると感じる
期待が集まっている。
人も出てきやすい。
このほか、東海から関西、四国、九州の各沿岸部
その点、復興計画の内容を3D モデル化し、誰もが
では、近い将来、発生が予想されている東海・東
分かりやすいようにすることで、町と住民との間で
南海・南海地震に対する備えの必要性も指摘され
認識を同じにし、意見のキャッチボールを行いなが
ている。また、戦後の高度成長期に急速に整備が
ら計画を進められる。住民説明会でも、3D モデル
進んだ日本の土木インフラは、今後、本格的な老
のムービーを上映すると、それまで硬い表情を見せ
津波で壊滅的な被害を受けた市街地にはプレハブ事務所も建ち
朽化時代に突入している。
ていた住民も、なごやかな雰囲気になったという。
始め、復興が着々と進み始めている
日本の国土を強靱(きょうじん)化し、老朽化しつ
職員自身が使える3Dツールに
いわてDEセンターでは大学との共同研究も計画
ためにも、CIM の活用が求められているのだ。
大槌町では復興計画の住民説明や公営住宅の入
いわてDEセンターのある北上市も、BIM(ビルディ
こうしたニーズを受けて、
オートデスクはInfraWorks
居者募集など、様々な場面で3D モデルやムービー
ング・インフォメーション・モデリング)に対する関
の機能をさらに強化するとともに、連携するクラウ
を使ってきたため、同町の職員自身がまちづくり
心が高まっている。いわてDEセンターは自動車や
ドコンピュー ティング・サ ービ ス「 A u t o d e s k
計画のツールとして 3D モデルを活用できる可能
機械など製造業系の3次元 CADを扱える人材を育
性を感じている。
成する教育プログラムを実施していたが、最近、製
機能の提供を行っていく予定だ。
造業で製品開発とともに工場の建設なども同時に
InfraWorksの道路設計モジュールでは、3Dモデル
に入れて、行政関 係 者 や 議 員などの 現 地視 察で
計画・設計を進めるニーズが高まっている。
に線形要素を持った道路の配置を行うことができ、
使ったことがある。使い方は 5∼10 分程度、いわて
いわて DE センターでは手始めとして、2012 年に
同時に縦断図から最適な高さの選定ができる。
DE センターに教えてもらっただけで、すぐにマス
建築士向けに住宅設計用 3 次元 C AD の講習会を
ターできた。それほど難しいとは感じない」と松橋
実施した。その結果は好評で、地元の建築士団体
氏は言う。
からビルを対象としたBIM の講習会も開催してほ
2012年10月に東京都武蔵野市から派遣された大
しいという要望が寄せられている。
槌町地 域整備部管理 用地課の技師、伊藤聡氏も
また、いわてDEセンターには、岩手県内の大学から
「図面だとなんとなく完成イメージは分かるが、3D
復興地域の3D 化に関する共同研究も持ちかけられ
を見るとプロの目から見ても分かりやすい」と感想
ている。大槌町の3D 化支援のほか、他の被災地の
を語る。
3D化がテーマとなりそうだ。このほか、いわてDEセ
ンターでは地元にUターンした建設コンサルタント
つある土木インフラを効率的に維持管理していく
「InfraWorksから書き出した 3D モデルをパソコン
InfraWorks 360」で、道路設計などを効率化する
経験者や他大学とも連携して、大槌町や他の被災
地の3D活用を支援する取り組みも行っている。
InfraStructure Design Suite Ultimate の InfraWorksで提供
される道路の設計機能
また、クラウドサービスでは、作成した 3D モデル
データのパブリッシュ機能により、InfraWorksを
持っていなくても、ブラウザやタブレットで確認す
ることができる。また、土木構造物に作用する風
圧などを CFD(数値流体解析)シミュレーション、
Pad上で復興計画の3Dモデルをウォークスルーする大槌町地域整
備部管理用地課の伊藤聡氏
もし、InfraWorksで作成した復興計画などの3D
モデルとiPad、そしてフリーアプリの InfraWorks
for Mobileがあれば、町の職員自身が iPadを現場
で操作し、ARによる復興計画の説明などに活用で
きそうだ。1つの3D モデルを作ることで、必要に応
道路の渋滞解析、ドライビングシミュレーターな
いわてDEセンター
ども行えるという。
国土交通省もCIM の導入を急ぐ
土木インフラの新設や維持管理、そして事前の防
国土交通省は 2010 年に営繕部門で BIM の試行プ
ロジェクトを開始したのに続き、2012年度からは
土木プロジェクトで“土木版BIM ”とも言える「CIM
じて場所や視点を変えることで、活用の場面は大 (コンストラクション・インフォメーション・モデリ
きく広がることになる。
ング)」の導入を開始し、各地方整備局で試行プロ
大槌町の復興計画を3D 化したことは、一般マスコ
ジェクトを始めている。
ミの注目も集め、住民説明会でのムービー上映の
大 槌 町の 復 興 計 画 を 3 D 化 する の に使 わ れ た
シーンなどが全国ネットのニュースで流れたこと
もある。大槌町には他の被災地などから 3D モデ
InfraWorksや土木設計用3次元 CAD「AutoCAD
Civil 3D」は、CIMと同じく、3D による設計の可
ルを作成する方法などについて、6 ∼7件の問い合
視化や、設計・施工の生産性向上を目指して開発
わせがあったという。
されたソフトだ。
災計画まで、幅広い目的のためにCIM を活用する
時代に入りつつある。CIM によって国土の3D モデ
ルが整備されることで、生産性向上、土木インフ
ラの長寿命化、地球環境問題への対応、そして災
害時の防災や素早い復旧・復興計画の作成まで、
幅広い分野で活用されることになるだろう。
Autodesk ユーザ事例
岩手県大槌町
岩手県 大槌町 3D モデル作成方法
大槌町における3Dモデル作成の流れ
岩手県大槌町では、Autodesk InfraWorksを使用
して、復興計画の全体像を3D モデルで表現し、住
民にわかり易く説明する取り組みを行っています。
災害公営住宅の3Dデータに住宅の間取りを属性情
報として付加させたり、施工前に完成イメージをAR
(拡張現実機能)で確認したり、様々な形で活用され
ています。
InfraWorksによる現況データの統合
Autodesk InfraWorksでは様々なデータを統合
させ、簡単に 3D モデルを作成することができま
す。統合できるファイルの種類は、GIS(地理情報
こんなモデルを作りたい
システム)データ、衛星写真などのラスターデー
タ、地形データ、建 築 物の 3D データや、CG オブ
ジェクトまで幅広く取り込みます。
1 地形サーフェスの作成・合成(Civil 3D)
2 地形サーフェスの作成・合成(Civil 3D)
GISデータ
地形データ
3 地図情報の編集(Civil 3D)
ラスターデータ
建物データ
4 各種データの合成(InfraWorks)
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