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便失禁に対する仙骨神経刺激療法 便失禁とは、自らの意志に反して便が

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便失禁に対する仙骨神経刺激療法 便失禁とは、自らの意志に反して便が
便失禁に対する仙骨神経刺激療法
便失禁とは、自らの意志に反して便が漏れる状態、と定義されていま
す。命にかかわる疾患ではありませんが、生活の質に深くかかわってく
る疾患です。
【1】便失禁の原因疾患
原因疾患は様々です。直腸肛門の外傷性機能不全と支配神経の障害に
よる非外傷性機能不全に分類されます。外傷性機能不全の原因としては
分 時会陰損傷や直腸肛門手術が挙げられます。非外傷性機能不全の原
因としては脊髄疾患、脊髄損傷、多発性硬化症、糖尿病による末梢神経
や自律神経の障害が挙げられます。明らかな原因疾患が特定できない場
合は特発性と呼ばれ、その多くは高齢者です。65歳以上における便失禁
の有症率は、男性8.7%、女性6.6%とされています。一方小児期において
も鎖肛やHIrschsprung病術後の便失禁を認めます。
【2】便失禁の治療
1)治療ガイドライン
ガイドラインではまず保存的療法を行い、十分な効果が得られない場
合は外科的療法を推奨しています。
2)保存的療法
①「食事・生活・排便指導」
線維成分の多い食事、アルコール摂取制限、カフェイン制限、そして規
則的な排便習慣、以上の実践を指導いたします。
②「骨盤底筋体操」
おしりをしめたりゆるめたりする運動ですが、朝昼晩の実践を指導いた
します。
③「薬物療法」
便をゲル化させるポリカルボフィルや、下痢止めであるロペラミドを処
方します。
3)外科的療法
現在国内で承認されているのは、括約筋修復術、順行性洗腸、人工肛
門造設、そして仙骨神経刺激療法の四療法です。仙骨神経刺激療法は多
くのケースに対して第一選択肢となる外科的療法です。
【3】仙骨神経刺激療法
1)どんな治療か
仙骨神経刺激療法は排便に関連した神経を心臓ペースメーカーに似た小
型の刺激装置(図1)で継続的に電気刺激し、症状の改善を図る治療方
法です。本治療は尿失禁に対する治療として始まりましたが、便失禁症状も
改善することが明らかとなりました。アメリカで1997年に尿失禁、2011
年に便失禁に対して承認を受け、我が国でも2014年便失禁に対して保険
収載されております(尿失禁に対しては国内未承認)。世界における実
施件数は、尿失禁、便失禁の合算になりますが20万件を超えております。
国内では現在150件以上に実施されております。
刺激装置
リード線
サイズ:幅 51 高さ 44 奥行 7.7mm
(図1)
2)治療の進め方
仙骨神経刺激療法はリード線植込み、試験刺激、刺激装置植込み、治
療継続の四つのステップから成り立ちます(図2)。
①「リード線植込み」
レントゲンをガイドに第3仙骨孔からリード線を挿入します。1∼2時間の
手術で、1週間程度の入院が目安です。
②「試験刺激」
リード線を体外刺激装置に接続します。約2週間試験刺激を行い、効果が
得られた方のみ刺激装置植込みに進みます。
③「刺激装置植込み」
リード線を刺激装置に付け替え、臀部皮下に植込みます。約30分の手術
で、2∼3日の入院が目安です。
④「治療継続」 基本的に24時間365日刺激を行い、刺激装置内のバッテリー残量がなく
なると交換が必要となります。使用する電圧にもよりますが、5年以降が
目安です。
症状観察
試験刺激
リード線挿入
経過観察・調整
2週間∼ 刺激装置植込み
体外刺激装置による試験刺激
治療継続
5年∼ 刺激装置交換 刺激装置植込み後
(図2)
3)適応・注意事項
保存的治療が無効な便失禁患者、かつ試験刺激で症状の改善が得られ
た方のみ刺激装置植込み術の適応となります。電磁干渉の問題からMR
I検査は併用禁忌となるため(頭部は条件付きで可)、患者手帳の携帯
や他科・他院受診時には仙骨神経刺激療法についての申告をお願いして
おります。本治療には高額療養費制度が適応されます。年齢、収入にも
よりますが、約10万円前後の自己負担となります。
4)治療成績
2012年実施の国内臨床試験の結果でも植込み実施患者さんの86%で便
失禁回数が50%以上減少し、この結果を受け2014年に保険収載されまし
た。
【4】まとめ
仙骨神経刺激療法は、
1)低侵襲かつ有効性の高い治療である、
2)試験刺激による有効症例の選別及び元の状態に戻すことが可能な治
療である、
3)保存療法が無効な便失禁患者への第一選択肢となる治療である、
とまとめさせていただきます。
当院は本治療の長野県唯一の認定施設です。便失禁でお悩みの方、お
気軽に当院外科外来(担当:富岡)までご相談下さい。
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