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遊亀公園・附属動物園整備計画(原案)(PDF:5491KB)

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遊亀公園・附属動物園整備計画(原案)(PDF:5491KB)
資料
(計画)
平成27年度
甲府市遊⻲公園・附属動物園整備計画(原案)
平成27 年度
甲府市遊⻲公園・附属動物園整備計画(案)
⽬ 次
第1章 序論
1 計画策定の趣旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2 計画の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
3 計画の期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
4 計画の位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第2章 計画策定の背景
1 遊⻲公園・附属動物園の歩み ・・・・・・・・・・・・・・・・3
2 遊⻲公園・附属動物園の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・7
3 遊⻲公園・附属動物園の取り組み
4 遊⻲公園・附属動物園の課題の分析
・・・・・・・・・・・・・13
・・・・・・・・・・・・23
第3章 事業計画
1 基本理念・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
2 コンセプト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
3 基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
4 整備テーマ・取り組み項⽬・・・・・・・・・・・・・・・・・33
第4章 整備基本計画
1 土地利用計画(概略ゾーニング) ・・・・・・・・・・・・・・35
2 具体的な施策・事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
第 1 章 序論
第1章 序論
1 計画策定の趣旨
(1) 動物園を取り巻く環境の変化
地球温暖化による気候変動などによって、動物の生息域が減少し絶滅危惧
種が増加するなど、動物を取り巻く環境が大きく変化しています。
現在、甲府市においては、定住人口を増加させ地域の活力を維持させるこ
とが課題の一つとして重要度を高めています。そのような中で、次世代を担
う子供達に、貴重な動物の生態などに触れる環境教育の場を提供するととも
に、市民に対して憩いの場や子育て環境の充実を図ることは、本市の将来の
あり方にも大きな影響を与えると考えられます。
(2) 甲府市遊亀公園・附属動物園整備計画の策定
大正 8 年に開園した長い歴史を持つ、甲府市遊亀公園附属動物園は、平
成 31 年に 100 周年を迎えます。この間、周辺環境の変化や施設の老朽化
が進み、動物の展示効果などからも改善が必要であるため、利用者のニーズ
に沿った整備計画の策定が求められています。
このような背景のもと、「甲府市遊亀公園・附属動物園整備計画」を策定
することとしました。
2 計画の役割
本計画は、持続可能な遊亀公園・附属動物園を目指し、基本的な方向やあ
り方を明確にした整備を実施するために策定します。また、動物園を支える
市民、企業、団体、大学、NPO などの関係機関、甲府市などの行政が、互
いに協力し、魅力ある動物園に向けた取り組みを実行する上での指針として
の役割も有しています。
1
第 1 章 序論
3 計画の期間
本計画の期間は、平成 28 年度から整備が完了するまでの期間とします。
本計画に基づいた基本設計、実施設計を行い、遊亀公園・附属動物園の整
備に反映します。
また、平成 31 年には開園から 100 周年を迎えますので、整備状況を考
慮したソフト事業を実施していきます。
計画策定
甲府市遊⻲公園・附属動物園整備計画
基本設計
実施設計
整備期間
4 計画の位置づけ
市政の基本方針である第五次甲府市総合計画では、都市像として「人がつ
どい
心がかよう
笑顔あふれるまち・甲府」を掲げ、「次代に引き継ぐ快
適で美しい安らぎのまち」の実現に向け、市民、企業・団体と行政の協働に
より、環境と共生する緑豊かな美しいまちづくりを進め、次代に向けて持続
可能な循環型社会の構築を目指しています。
また、本市では都市計画マスタープランの「まちづくりの方針」や第 2 次
観光振興基本計画の「観光インフラの整備・拡充」への取り組み、緑の基本
計画の「都市公園等の機能拡充」施策など、他計画において、さまざまなア
プローチが示されています。本計画では上位計画および他計画の内容を踏ま
え、都市像の実現に向け公園・附属動物園の整備に関する施策を示します。
第五次甲府市総合計画
・都市計画マスタープラン
・第 2 次観光振興基本計画
・第 2 次環境基本計画
甲府市遊亀公園・附属動物園整備計画
2
・緑の基本計画
・地域防災計画 など
第 2 章 計画策定の背景
第 2 章 計画策定の背景
1 遊亀公園・附属動物園の歩み
(1) 動物園事業の経緯
遊亀公園附属動物園(以下、「本園」という。)は、大正 8 年に公園内で
小動物を展示したことに始まり、その後、施設整備を進め大正13年に名称
を「甲府動物園」として開園しました。
太平洋戦争の戦災により焼失した後、民間により復興されましたが、昭和
27年に再び市立動物園となり、中国の姉妹都市である成都市を中心に動物
の拡充などに努め現在に至っています。
主な経緯は次の表のとおりです。
表 1.1 本園における動物園事業の歩み
3
第 2 章 計画策定の背景
(2) 動物園整備の経緯
昭和47年11月、元上野動物園園長(故古賀忠道氏)の選定により、愛
宕山地区を最有力計画地として動物公園構想を作成しましたが、翌年の第1
次オイルショックなど社会・経済を取り巻く諸情勢の変化により計画を見合
わせることになりました。
再度、昭和53年6月に古賀氏の提言を受け、本市より委託された(財)
世界野生生物基金日本委員会が、「甲府市動物公園(仮称)基本構想」を取
りまとめ、大津地区への移転整備を提唱しましたが、この計画も経済状況の
悪化を受け、現在地での近代化整備を図ることになりました。
平成6年2月には、「甲府市遊亀公園整備構想」が策定され、動物園を含
む遊亀公園全体の大規模な再整備が計画されました。しかし、バブル経済の
崩壊により同公園整備構想を凍結し、既存動物園の改修を先行させることと
しましたが、長引く経済の低迷から、数箇所の改修を実施するに留まってい
ます。
このような経緯を踏まえ、平成13年「新甲府市総合計画後期事業及び第
6次実施計画」において、緊急性の高い小規模な改修を、財政状況を勘案し
ながら年次的に実施する方針とし、現在に至っています。
このような経過の中、平成 31 年には開園 100 周年を迎えることから、
庁内において、平成 25 年度から遊亀公園・附属動物園の整備に向けた検討
を開始しました。
図 1.1 本園整備の経緯
4
第 2 章 計画策定の背景
(3) 動物園の立地環境
本園は、都市計画公園(近隣公園)である遊亀公園の附属動物園として、
甲府市のほぼ中心にあり、JR甲府駅から南に約 1.8km に位置し、中心市
街地にも近接するといった立地環境にあります。
JR甲府駅
甲府市立遊亀公園附属動物
図 1.2 本園位置図
5
第 2 章 計画策定の背景
(4) 動物園の改修状況
平成13年「新甲府市総合計画後期事業及び第6次実施計画」において、
緊急性の高い小規模な改修を、財政状況を勘案しながら年次的に実施する方
針とし、必要に応じた改修工事を実施してきました。
これまで実施した改修工事について、実施時期と改修工事の概要を整理し
ました。
【改修工事履歴】
平成 14 年
3月
園内通路バリアフリ-化(陸橋をスロ-プに)工事完成
平成 15 年
3月
身障者トイレ及び園内通路(スロ-プ周り)安全対策工事完成
平成 16 年
3月
小型サル舎ガラスサッシ設置工事完成
平成 18 年
3月
象舎モート日よけ設置工事、動物病院床排水工事完成
平成 19 年
3月
チンパンジー舎周囲柵設置工事完成
平成 19 年
7月
ふれあい広場完成
平成 23 年
4月
コンドル舎屋根改修完成
平成 23 年
6月
ペンギン舎塗装整備完成
平成 23 年 11 月
ビーバー舎塗装整備完成
平成 23 年 11 月
稲積神社参道沿いの動物園外側フェンスへ動物パネル設置
平成 24 年
8月
園内トイレ便器の洋式化完了
平成 25 年
3月
ポニー乗馬場の改修(アスファルト打ち)工事完成
平成 26 年
3月
ふれあい広場の舗装改修(カラー舗装化)工事完成
平成 26 年
5月
ふれあい広場壁面の子供たちによる絵画完成
ふれあい広場
6
第 2 章 計画策定の背景
2 遊亀公園・附属動物園の現状
(1) 入園者数の推移
過去 35 年間の入園者数の推移は、レッサーパンダの繁殖に成功した昭和
63 年度が最も多く、23 万 5 千人でした。その後、入園者数は減少傾向と
なりましたが、平成 9 年度から現在まで、入園者数は約 11 万人で横ばい
の状況が続いています。
この状況は、昭和 50 年代と比較しても、ほぼ変わらない状況のため、人
口減少時代を向かえた現在においても、本園が市民に親しまれているといえ
ます。なお、顧客吸引率(県人口に対する入園者数の割合)で比較すると、
近年増加傾向にあります。
表 1.2 本園の年次別入園者数
年 度
入園者数
年 度
入園者数
年 度
入園者数
年 度
入園者数
昭和 54 年度
113,681
昭和 63 年度
235,094
平成 9 年度
117,803
平成 18 年度
110,961
昭和 55 年度
144,825
平成元年度
213,891
平成 10 年度
105,632
平成 19 年度
116,810
昭和 56 年度
133,128
平成 2 年度
207,658
平成 11 年度
111,414
平成 20 年度
118,351
昭和 57 年度
117,708
平成 3 年度
183,489
平成 12 年度
103,936
平成 21 年度
123,600
昭和 58 年度
127,819
平成 4 年度
193,785
平成 13 年度
111,722
平成 22 年度
112,430
昭和 59 年度
147,749
平成 5 年度
146,714
平成 14 年度
106,113
平成 23 年度
116,023
昭和 60 年度
145,106
平成 6 年度
124,942
平成 15 年度
107,857
平成 24 年度
114,806
昭和 61 年度
131,867
平成 7 年度
134,001
平成 16 年度
106,331
平成 25 年度
110,372
昭和 62 年度
121,430
平成 8 年度
128,128
平成 17 年度
110,605
平成 26 年度
117,993
(人)
)
顧客吸引率は増加傾向
)
図 1.3 入園者数び顧客吸引率(入園者数/県人口(国勢調査))の推移
)
7
第 2 章 計画策定の背景
(2)利用・開園状況
本園の入園料や開放日などの状況は次のとおりです。
【入園料】
大人
320 円
子供(小中学生)
団体(30 人以上)
※学校教育
30 円
大人 270 円
市内~無料
子供 20 円
市外~半額(大人 160 円
子供 15 円)
※全額免除になるもの
甲府市内の小中学校の生徒および先生、児童相談所、公立の児童館
高齢者福祉施設、障がい福祉施設
※減額になるもの
市外の小中学校の生徒および先生:50%減額
なお、町内会、自治会、私立サークル等の活動については対象外
【開園時間】
4 月~10 月
9:00~17:00(入園は 16:30 まで)
11 月~3 月
9:30~16:30(入園は 16:00 まで)
休園日
毎週月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は翌火曜日)
年末年始 12 月 29 日~1 月 1 日
無料開放日(平成 26 年度):
5月5日~5月11日
児童福祉週間 (対象:小中学生) 3,909 人
9月15日~9月21日
老人福祉週間 (対象:65歳以上)118 人
9月23日(祝)
動物愛護デー
(対象:全員)
1,498 人
10月17日(水)
市制施行記念日(対象:全員)
572 人
11月20日(火)
県民の日
457 人
(対象:全員)
計 6,554 人
8
第 2 章 計画策定の背景
(3)動物の飼育状況
現在、本園では 53 種 251 点を飼育展示しています(平成 27 年 3 月
31 日現在)。哺乳類27種・129 点、鳥類 13 種 48 点、爬虫類 13 種
74 点となっています。
表 1.3 動物園で飼育されている動物等の内訳
種別
動物名
種別
動物名
飼育点数
タイゾウ
1
フクロウ
1
コモンリスザル
2
キバタン
1
ジェフロイクモザル
2
ルリコンゴウインコ
1
シロテテナガザル
2
チリフラミンゴ
エリマキキツネザル
3
アンデスコンドル
2
ワオキツネザル
3
マゼランペンギン
5
クロキツネザル
1
コブハクチョウ
2
チンパンジー
3
ワライカワセミ
1
レッサーパンダ
2
ペキンアヒル
5
ワタボウシパンシェ
4
アオクビアヒル
5
クロミミマーモセット
2
カルガモ
6
6
アイガモ
5
甲州地どり
2
コモンマーモセット
哺乳類
飼育点数
鳥類
テンジクネズミ
54
カイウサギ
14
計 13種
12
48点
シバヤギ
6
ミツユビハコガメ
4
カナダヤマアラシ
1
ケヅメリクガメ
2
ベネットアカクビワラビー
4
アカアシガメ
2
シェットランドポニー
2
アルダブラゾウガメ
2
ミニチュアホース
1
ホルスフィールドリクガメ
2
アフリカタテガミヤマアラシ
3
パンケーキリクガメ
1
アメリカビーバー
3
インドホシガメ
3
マレーグマ
2
カリフォルニアキングスネーク
1
ベンガルトラ
1
コーンスネーク
ライオン
1
クサガメ
10
ブラジルバク
2
ニホンイシガメ
22
ミニブタ
1
ミシシッピーアカミミガメ
22
3
アオダイショウ
フクロモモンガ
計 27種
爬虫類
129点
9
計 13種
1
2
74点
第 2 章 計画策定の背景
次の表は、飼育動物の種別点数がホームページに掲載されている他の動物
園との比較表になります。
動物の種類や個体により一概には比較できませんが、本園は飼育動物1点
あたりの面積が小さく、狭いものになっています。
表 1.4 他の動物園の飼育概要
都道府県
名 称
面積
(ha)
哺乳類
種
鳥類
点
種
爬虫類・両生類
点
種
広島県
広島市安佐動物公園
50.0
62
614
45
539
42
北海道
釧路市動物園
47.8
29
263
31
188
千葉県
千葉市動物公園
34.0
62
533
67
276
7
鹿児島県
平川動物公園
31.4
81
584
41
389
北海道
旭山動物園
15.1
44
258
66
秋田県
大森山動物園
15.0
50
323
長野県
茶臼山動物園
15.0
30
千葉県
市川市動植物園
6.1
山口県
周南市徳山動物園
群馬県
合計
点
種
点
384
149 1537
動物1点あ
たりの面積
(㎡)
(時点)
325
H26.3
60
451
1060
H25.1
33
136
842
404
H26.6
13
26
135
999
314
H26.3
369
8
20
118
647
233
H26.4
39
186
14
41
103
550
273
H26.2
227
18
102
14
31
62
360
417
H25.10
29
280
28
108
6
28
63
416
147
H26.3
5.0
40
169
63
197
16
104
119
470
106
H26.2
桐生が岡動物園
3.7
20
200
32
268
11
36
63
504
73
H26.7
兵庫県
姫路市立動物園
3.0
35
116
60
223
12
26
107
365
82
H27.3
福岡県
久留米市鳥類センター
3.0
7
119
75
370
1
2
83
491
61
H25.3
広島県
福山市立動物園
2.6
30
133
23
181
10
45
63
359
72
H27.5
山梨県
遊亀公園附属動物園
1.3
27
129
13
48
13
74
53
251
52
H27.3
※1:魚類、無脊椎動物は除きます。
部分は、10ha以下の動物園
※2:爬虫類と両生類は混合しています。
10
第 2 章 計画策定の背景
(4)動物の展示スペースの状況
動物園では、動物が極端にストレスを感じることなく飼育され展示される
よう、適切な施設整備が求められます。飼育に必要な施設は動物種によって
異なりますが、一般的には次の図のように、動物舎、放飼場及びバックヤー
ドとしての管理施設から構成されます。
また、動物舎や放飼場の規模は、動物種によって望ましい面積・構造や付
帯施設が求められます。
図 1.4 動物舎と放飼場の構成イメージ
)
本園では施設の整備年次が古いこともあり、ほとんどの動物が展示用のケ
ージの中で飼育されているため、動物舎・放飼場など、望ましい※整備水準
の面積が確保されていない状況にあります。
※整備水準:JAZA 飼育ハンドブック、施設整備の事例などから算出
表 1.5 現行施設規模と望ましい整備水準の比較
)
主な飼育動物
点数
現行施設規模(㎡)
動物舎
タイゾウ
1
チンパンジー
3
ライオン
放飼場
80.0
400.0
望ましい整備水準(㎡)
動物舎
放飼場
78.0
1,000.0
43.0
30.0
200.0
1
48.0
28.0
200.0
アメリカビーバー
3
45.0
36.0
50.0
アンデスコンドル
2
14.0
11
200.0
第 2 章 計画策定の背景
(5)遊亀公園(公園部分)の状況
遊亀公園は、一部に動物園を含む都市計画公園で、公園と動物園の機能は
異なるものの、全体として一体的に整備されています。
遊亀公園は近隣公園として、一般の公園利用者を対象に、園路や駐車場の
ほか、修景施設としての噴水池、休養施設であるあずまや・ベンチや便益施
設であるトイレなどが整備されています。しかし、これらの施設も経年劣化
による損傷の度合いが大きく、また、バリアフリー対策も十分に講じられて
いないため、都市公園として近年求められている整備水準に適合していない
状況にあります。
老朽化したベンチ
縁辺が破損している噴水
錆びついている案内板
遊亀公園には、園内を横断するかたちで、稲積神社の参道が通っており、
動物園を分断するような動線となっています。
また、農業用水を利用した動物園区域に含まれる修景池は、公園からの修
景施設として一部利用されています。
遊亀公園内にある稲積神社の参道の様子
動物園内にある池の様子
12
第 2 章 計画策定の背景
3
遊亀公園・附属動物園の取り組み
動物園が担う役割の整理
(1)動物園の歴史
野生動物の飼育は、古代エジプト王朝時代に遡り、中国では周の文王の時
代に「知識の園」と称して動物を飼育した記録が残されています。古代から
近代における動物コレクションの特徴は、王侯貴族を代表とする特権階級の
富と権力の誇示や趣味として発展してきました。
動物学的研究を目的とした現代的な意味での動物園については、1828 年
にイギリスのロンドン動物園が始まりとされています。このロンドン動物園
の設立を機に、ヨーロッパ各地やアメリカにも次々と動物園が設立されまし
た。日本では、1882 年(明治 15 年)に山下博物館が、東京上野に移転す
る際、附属動物園として開園した上野動物園が、日本で最初の動物園とされ
ています。
(2)動物園の社会的な役割
現代における動物園の社会的な役割は、次の4つの項目が主要な柱とされ
ています。このことは、世界的な潮流でもあり、国内の主要な動物園におい
ても、この「4つの役割」を軸として、事業を展開しています。
「調査研究」と「レクリエーション」は、「種の保存」と「環境教育」を
両側から支え、推進する牽引力となり、4つの役割がバランス良く発揮され
ることによって、「種の保存」と「環境教育」という動物園の活動目的を達
成していきます。また、近年絶滅のおそれのある希少動物の「種の保存」や
「生物多様性保全」、そのための「環境教育」、「普及啓発活動の場」とし
ても、動物園は国際的に重要な役割を担うようになってきました。
1
種の保存
希少な野生動物の保護と繁殖を行う
2
調査研究
動物の生態や繁殖、動物園の諸活動に関する調査・研究を行う
3
環境教育
動物や自然環境について、関心を持つきっかけを社会に提供する
4
レクリエーション
余暇をリラックスして楽しく過ごしていただく場を提供する
13
第 2 章 計画策定の背景
(3)その他
動物園等の事業や活動に関する制度について
現在、動物園等を直接規定した法律は無く、博物館法に基づく登録制度の
対象になっているものの、動物園の役割である「種の保存」、「環境教育」
といった公的役割を担う施設として位置づける法制度は未整備の状況です。
動物園等の事業や活動に関する法律には、次のようなものがあります。
【都市公園法】
都市公園法では、教養施設の一つとして動物園と植物園が位置づけられて
います。実際、地方公共団体等が設置した動物園等は都市公園として整備さ
れているものが多くあります。
【博物館法】
動物園等は、博物館法で規定する事業目的に合致していることから、博物
館の一種別として都道府県の教育委員会に登録する仕組みが設けられてい
ます。
【種の保存法】
この法律では、動物園等における希少野生動植物の展示のための譲渡し等、
保護増殖等を目的とする捕獲に当たっては、基本的には環境大臣の許可を必
要とするなどが規定されています。
【動物愛護管理法】
本法は、動物の愛護と適切な管理を行うことを規定しており、動物等の展
示や譲受飼養などを行う場合の取扱い基準や事業者登録を義務づけていま
す。
また、近年動物園等における動物のための十分な飼育空間や衛生状態など
適切な生活環境を確保できない施設の存在が指摘され、適正な飼育への改善
や動物福祉の充実が求められるようになってきました。
国の動植物園等の公的機能推進方策の検討の動き
前述のとおり、動物園を直接規定した法律がないため、環境省では「動植
物園等の公的機能推進方策のあり方検討会」を設置し、種の保存・生物多様
性保全等にかかる公的機能推進方策のあり方等について検討を進めていま
す。
14
第 2 章 計画策定の背景
動物園の役割に応じた本市の取り組み状況
(1)種の保存・調査研究
本園では、希少な野生動物の保護と繁殖を行い、動物の生態や動物園の諸
活動に関する調査研究に取り組んでいます。主な内容は次のとおりです。
繁殖実績(日本初)【(財)日本動物園水族館協会の繁殖賞受賞】
①平成 12 年 7 月
ケヅメリクガメの人工繁殖成功
②平成 13 年 7 月
ミツユビハコガメの自然繁殖成功
希少種で実績がないか滞っているものの繁殖に向けた取組み
①マレーグマ~繁殖実績:なし
飼育個体:オス 13 才(2002.10 高知県立のいち動物公園より借り受け)
メス 14 才(2005.3 東京都多摩動物公園より借り受け)
<現
状>
2005 夏より同居により交尾行動があった。妊娠を期待し出産準備を行
うが出産はない。放飼場内に遊具などを設置し、様々な行動を発現させる工
夫を行い繁殖に備えて産室用の部屋も確保している。メスの発情期に同居さ
せ、交尾行動も確認されたが、妊娠にはいたっていない。
②レッサーパンダ~繁殖実績:あり(当園飼育個体同士の繁殖はない)
飼育個体:オス 10 才(2014.4 長野市茶臼山動物園より借受)
メス 6 才(2009.4 山口県徳山動物園より借受)
<現
状>
レッサーパンダは冬季に発情期があるため、2015 年 1 月よりオスとメ
スを同居させている。オスには繁殖行動がみられるももの、メスが受け入れ
ず繁殖にいたっていない。
15
第 2 章 計画策定の背景
③チンパンジー~繁殖実績:あり(現飼育固体ではない)
飼育個体:オス 32 才(1992.7 伊豆シャボテン公園より搬入)
メス 37 才(1995.3 伊豆シャボテン公園より借り受け)
メス 31 才(1995.3 伊豆シャボテン公園より借り受け)
<現
状>
メスの発情周期は正常に回帰しているが、個体間の関係からか交尾~妊
娠にはいたっていない。31 才のメスが劣位にあるため、道具を使って餌を
とる遊具などを設置し、個体間の過度な緊張をほぐす工夫をしている。
近年における動物の共同繁殖・交換の主な実績について
(BL:ブリーディングローンとは繁殖を目的とした動物の貸借をいう)
1988 年
アンデスコンドル
BLにて搬入
(その後 2001 年にBL解除により譲り受け)
1994 年
クロキツネザル
BLにて搬入
1996 年
ピグミーマーモセット
2001 年
コモンマーモセット
搬出
2002 年
コモンマーモセット
搬出
2011 年
ピグミーマーモセット
2012 年
テンジクネズミ(モルモット)15
搬出
(親は 1998 年BLにて搬入)
BLにて搬入
16
譲り受け
第 2 章 計画策定の背景
(2)環境教育
本や映像からでは得ることのできない、生き物のにおいや鳴き声を実際に
体験できるのも動物園の特徴です。また、生き物を見ているうちに「この生
き物は、どんなところに住んでいるのかな」「何を食べるのかな」などと思
うでしょう。それに答えてくれるのが動物園です。
本園では、次世代を担う子供達に、貴重な動物の生態などに触れ、動物や
自然環境について、関心を持つきっかけを提供する「環境教育の場」として、
平成 26 年度において、次のような取り組みを行っています。
ア
幼児動物教室
・年長クラス【未就学児】
実施回数:32 回 43 園(平成 25 年度:38 回
40 園)
参加人数:1,052 人(平成 25 年度:1,044 人)
内
容:ゾウの餌やり、モルモット・ウサギとのふれあい、ポニーの
乗馬、鳴き声クイズ(10 時 30 分から 11 時 40 分で実施)
1200
1100
1000
900
800
700
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
図2.1過去10年の参加人数の推移
・年長クラス【小学生】
実 施 日:8 月 1 日(金):高学年、8 月 5 日(火)・7 日(木)
実施時間:9:45~14:25
参加人数:8 月 1 日 30 名、8 月 6 日 39 名、8 月 9 日 33 名
17
H25
H26
第 2 章 計画策定の背景
イ
幼児動物教室
低 学 年
参加者を5班(ゾウ・ウサギ゙・レッサーパンダ・バク・ポニー)にわけ、
職員3名で各班を担当した。午前中は主に飼育実習を行い、同時に動物の
生態や行動・形態などを説明した。午後は班ごとに、ゾウの餌やり・ウサ
ギ・モルモットとのふれあい・ポニーの乗馬をおこない、動物となかよく
なる時間とした。
実施時間:9:45~15:50
高 学 年
参加者を4~6人の6班(ゾウ・レッサーパンダ・ウサギ・ポニー・ラ
イオン・バグ)に分け、職員1~3名で各班を担当した。午前中は主に飼
育実習を行い、同時に動物の生態や行動・形態などを説明した。午後は飼
育実習のあと、クイズ形式のオリエンテーリングを行い、担当以外の動物
への興味と理解を深めた。
ウ
保育園や小学校などの減額及び免除団体の受入状況
実
績:平成26年度
総
数:257 件
9,649 人
表 2.1 参加人数の実績
保育園・幼稚
中学校
高 校
養護学校
108
53
1
0
22
73
5,636
2,698
5
0
405
905
園
件
数
人
数
エ
総合学習およびインターンシップの受入れ
総
数:6 校 25 人(平成 25 年度 10 校 25 人)
内
訳:中学校
5校
高等学校
内
オ
23 人
1校
2人
容:職場体験~飼育実習が中心(9 時~17 時)
実習生の受入れ
総
その他(老人ホ
小 学 校
数:3 校 6 名
(平成 25 年度 3 校
18
4 名)
ームなど)
第 2 章 計画策定の背景
(3)レクリエーション
動物園は、家族や友達と動物を一緒に見て、ふれて、感じる。楽しい時間
を提供しています。その思い出をみんなで共有できるレクリエーションの場
は、動物園にまさるところはないでしょう。
本園では、平成 26 年度において、来園者に余暇をリラックスして楽しく
過ごしていただくために、次のようなイベントなどを実施しています。
ア
幼児動物教室
イベント関係事業について
・ふれあいコーナーの設置
モルモット
毎日
ヤギの餌やり
午前 10:15~11:45
毎日
午後 13:15~15:30
午後 13:45~(なくなり次第終了)
ポニーの餌やり 毎週日曜日・祝日
参加人数:モルモット・ウサギ
午後2:00~2:30
46,478 人
ポニー(人数カウントは未実施)
イ
動物愛護デー
実施日:9 月 23 日(祝) 9:30~15:30
入園者数:1,498 人(平成 25 年度:1,953 人)
内
容:ゾウに餌をあたえるコーナー
動物ふれあい広場(ウサギ・モルモット・ヤギ)
ポニーの乗馬
動物らくがきコーナー、動物慰霊祭
※当日は一日中雨天のため、イベントは全て中止(無料開放のみ実施)
19
第 2 章 計画策定の背景
ウ
クリスマスふれあいデー
実施日:12 月 23 日(祝) 9:30~15:30
入園者数:500 人(平成 25 年度:653 人)
内
容:ゾウに餌をあたえるコーナー(204 人参加)
10:30~10:50 13:30~13:50
動物ふれあい広場(ウサギ・モルモット・ヤギ)
9:30~11:30 13:30~15:30
ポニーの乗馬(93 人参加)
10:45~11:45 14:00~15:00
エ
イベントへの協力
本市のイベントへ職員と動物を派遣し「出張動物ふれあい広場」を実施
しています。
緑化祭り(緑ヶ丘) 4 月20日(日)
南西公民館
8 月 3 日(日)
総合市民会館
8 月 4 日(月)
南公民館
11月15日(土)
20
4 名派遣
2 名派遣
2 名派遣
2 名派遣
ウサギ・モルモット
ウサギ・モルモット
モルモット
ウサギ・モルモット
第 2 章 計画策定の背景
(4)その他
ア
情報発信の取り組み
本園では、ホームページやスタッフブログにおいて、動物園に関する情報
発信を行っています。また、情報発信媒体でありコミュニケーションツール
である Facebook ページにより、利用者との交流促進を図りなど新たな取
り組みもはじめました。
・Facebook ページ(SNS)の開設
・大型ビジョンを活用したイベントの告知
・テレビ・ラジオ・新聞など広報番組を活用した情報発信
・公報誌によるイベントの告知
・甲府旅館協同組合加盟旅館・ホテルへのパンフレットの設置
21
第 2 章 計画策定の背景
イ
関係機関や団体との連携
各種団体や、大学をはじめとする教育機関と連携し、動物園の魅力を高
める取り組みを実施しています。
・「富士湧水の里水族館」との連携
「富士湧水の里水族館」と連携し移動水族館を本園で実施しました。普段
見ることのない、チョウザメ、ニジマス、ガラ・ルファ、絶滅危惧種のカブ
トガニなど淡水魚を中心とした展示に、子供達がとても喜んでいました。
・帝京科学大学との協力
動物や自然の素晴らしさ、動物たちが抱える問題を発信しようと集まった
大学生の活動(ワークショップ、スタンプラリーなどのイベントや動物園シ
ンポジウムなど)に協力しています。
・写生大会への協力
毎年実施される、甲府青年会議所主催の写生大会へ協力しています。
22
第 2 章 計画策定の背景
4 遊亀公園・附属動物園の課題の分析
(1) 動物園を取り巻く環境の変化
ア 動物の保護強化・絶滅危惧種の増加
地球温暖化などにより地球環境が変化し、絶滅危惧種が増加していること
を受け、ワシントン条約(「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引
に関する条約」)により野生動植物保護の動きが加速され、海外からの動物
の輸入取引が困難になっています。
また、国内では動物愛護法が制定され、個人も含めた動物飼育についての
規制が強化されました。このため、動物園といえども動物の飼育においては、
これまで以上に動物の生態に配慮した施設や環境の整備が求められていま
す。
以上のことから、これまで本園では独自の繁殖活動にとどまらず、各地の
動物園との情報交換や動物の貸し借り受けなどの連携の下、交配の取り組み
に努めてきましたが、各種の規制等のはざまで思うような成果を挙げること
が容易ではない状況にあります。
イ
「種の保全」活動を拡大発展し「生物多様性保全」へ
日本動物園水族館協会では、2013(平成 25)年に、動物園・水族館は、い
のちの素晴らしさ、力強さ、はかなさ、大切さ、を実感し、学び、伝える「い
のちの博物館」であることを掲げた「JAZA10 年ビジョン」を策定し、関
連団体や大学・研究機関、行政とのネットワークを構築し、従来の「種の保
全」活動を拡大発展させた「生物多様性保全活動」を推進しています。
「JAZA10 年ビジョン」の方針は次のとおりです。
1
動物園水族館を「いのちの博物館」にします
2「生物多様性の保全」を推進します
3
動物園水族館を包括する制度の確立に向けて努力します
23
第 2 章 計画策定の背景
ウ
動物園利用者のニーズの変化
近年、人々の価値観は多様化・高度化し、娯楽に関する選択肢も増加して
います。そのような中、旭山動物園に端を発した、動物の生態やそれに伴う
能力を、自然に誘発させて観賞者に見せるように工夫した「行動展示」は、
利用者の動物園への関心を高め、多くの来園者が訪れています。
これからの動物園は、利用者が楽しめるとともに、動物たちが幸せに暮ら
せるような飼育環境に適した施設整備の検討が求められています。
動物園は、大人から子どもまで気軽に楽しめる施設です。特に、幼児や児
童にとって、日常的に動物と直接ふれあえる環境は、「生命の尊重」を学ぶ
貴重で絶好の機会となります
24
第 2 章 計画策定の背景
(2) 本園の現状
動物展示施設
展示方法は、動物をケージに入れ個別に展示しているものがほとんどであ
り、分類学的展示※1 は行われているものの、園全体として、動物をどのよう
に見せるかというストーリー性や演出に配慮した動物展示施設の配置は行
われていません。チリフラミンゴやブラジルバクなど一部の動物は、観察し
にくい場所に配置されています。
トイレ
2 箇所のうち、アジアゾウ放飼場横のトイレは老朽化とともに分かりにく
い場所にあります。
管理施設
動物舎の増改築により整備された管理施設は、計画的な配置がなされてお
らず、効率的な管理運営が行いにくい状況にあります。
遊園地
狭い動物園の敷地の中で一定規模の区域を占有しており、動物園の施設配
置の制約となっています。
利用者導線
出入口が 1 箇所であり、園路が 1 本道であることから、利用者は観察し
た後、同じ園路を折り返す必要があります。また、園路の幅員が狭く、混雑
時には移動や、動物の観察が行いにくい状況となっています。
管理者導線
管理者用の導線がなく、利用者導線と同様の導線となっていることから、
管理が行いにくい状況となっています。
利用状況
遊亀公園・附属動物園は、市街地に位置しているため、交通アクセスが良
く、市民の安らぎの場として利用されるとともに、3 世代が交流できる都市
公園となっています。
25
第 2 章 計画策定の背景
(3) 本園の課題
動物園区域の拡大と施設の効率的な配置
現在の動物園区域は約 14,000 ㎡(有効面積約8,500 ㎡)と飼育動物の種
類や個体数に対して狭小であるとともに、池や参道により区域が分断されて
いることから、土地利用の制約が多い状況にあります。動物の飼育環境の改
善や利用者の快適性の確保のためには、動物園区域の拡大及び適切な施設配
置について検討を行う必要があります。
効果的な動物展示施設の配置と展示手法の検討
動物展示施設配置の手法の例としては、野生動物の生息地域ごとに動物を
展示する地理学的展示 ※2 が、また効果的な展示手法の例としては、生態的展
示※3 や行動展示※4 などがあります。動物園の魅力をより高め、集客力を向
上させるためには、現在飼育されている動物の特性を活かした、動物展示施
設の配置と展示手法を検討する必要があります。
円滑な移動と快適な観察のための園路の設定
動物展示施設の配置とあわせた適切な動線配置や観察スペースと園路の
分離、バリアフリーの徹底などを検討し、園内を円滑に移動することができ
るとともに、快適に動物を観察することができる園路の設定を行う必要があ
ります。また、管理用通路やバックヤードなどの施設・設備は、利用者の動
線と分離し、利用者の目に入らないように配慮するとともに、管理が行いや
すい配置を検討する必要があります。利用者が退出の際に、園路を折り返す
必要がないように、動線誘導や専用出口の設置について検討を行う必要があ
ります。
※1
分類学的展示:サル、クマ、トリなど同類の動物を並べて展示し、種の多様性を比較す
る手法。形態的特徴に注目させて解説するため、形態比較展示ともいう。
従来から行われている伝統的な展示手法である。
※2
地理学的展示:アフリカやアジアなど、野生動物の生息地域ごとに動物を展示する手法。
キリンとシマウマ、ヌー、ダチョウなどを同一の放飼場で混合展示する
などの例がある。多摩動物公園やよこはま動物園などで実施されてい
る。
※3
生態的 展 示:野生動物とその生息地の環境を再現し展示する手法。アフリカサバンナ
とライオン、アジア東部のタイガ地域とアムールトラなどの例がある。
アメリカやヨーロッパでは主流となっている展示手法。上野動物園の
「ゴリラとトラの森」、天王寺動物園の「ゾウ舎」などで実施されてい
る。
※4
行 動 展 示:野生動物が本来持っている特徴的な行動や能力を展示する方法。オラ
ンウータンの綱渡りや円筒を上下に泳ぐアザラシなどの例がある。旭
山動物園は徹底した行動展示を取り入れ、国内外の動物園関係者が視
察に訪れるなど注目されている。
26
第 2 章 計画策定の背景
(4) 本園の現状分析と課題の整理
本園の現状に関しては、今後も期待される要素(強み)と今後改善が必要
とされる要素(弱み)の両面が見受けられます。そこで、強みを伸ばしつつ、
必要な改善をしていくということが基本的な方向性となってきます。
【今後も期待される要素】
・遊亀公園は市民の安らぎの場であり自然や命の大切さを学ぶ公園となっている。
・市街地で3世代が交流する場となっている。
・交通アクセスに優れている。
・平成 31 年に開園 100 周年を迎える歴史をもっている。
・中心市街地の活性化に寄与できる。
・山梨県内唯一の動物園である。
【今後改善が必要とされる要素】
・ストーリー性や演出に配慮した展示ではない。
・計画的な施設配置でないため効率的ではない。
・園路が狭く混雑時は観察が行いにくい。
・管理者・利用者動線が同様になっている。
・動物の種類や個体数に対して狭小である。
(池や参道で分断され土地利用が有効ではない)
27
第 2 章 計画策定の背景
(5) 本園の課題整理
動物園を取り巻く社会環境の変化や、現状分析を踏まえた上での遊亀公
園・附属動物園の課題は次のとおりと考えられます。
 動物園が開園から100周年という節目の時期に、安らぎを感じる公
園・動物園となるよう一体的な事業を展開すること。
 人と動物にやさしい適切な施設配置を行い、区域に見合った展示手法
を構築すること。
 動物園の役割である環境教育やレクレーションの場としての受け入れ
態勢を整備すること。
 市民や様々な機関・団体等へ協働の場を提供するとともに、連携した
事業を推進していくこと。
 持続可能な安定した運営を目指していくこと。
28
第 3 章 事業計画
3章
1
事業計画
基本理念
(1) 基本理念の設定
甲府市遊亀公園・附属動物園の整備に向けて、根本的な考え方である基本
理念を次のとおり設定します。
【基本理念】
“甲府市遊亀公園・附属動物園では、動物園に求められる社会的役割の変
化や施設の老朽化などさまざまな課題に直面していることから、平成 31 年
に開園 100 周年を迎えるにあたり、現在の動物園を遊亀公園全体で見直す
ことにより再整備することとなりました。
本整備では、長い歴史の中で気軽に利用でき、動物との距離が近いという
動物園の特徴や、市街地にあり市民の憩い場となっている公園の特性を継承
しつつ、豊かな緑や花に囲まれ、利用者が楽しく快適に、動物たちと接する
ことができる動物園を目指します。
再生した遊亀公園・附属動物園では、これまで以上に、ふれあいなどを通
じて貴重な動物の生態や、命の大切さ、自然環境について関心を持つきっか
けとなる「環境教育」の充実を図り、市民や外部団体などが動物園の運営に
積極的に参加することで、公園・動物園を次世代に誇りをもって引き継ぐ地
域の魅力的な資産として育んでいきます。”
基本理念
「次世代へ いのちつなぐ 懸け橋へ」
29
第 3 章 事業計画
2
コンセプト
遊亀公園(動物園を含む)は「ふれあい」をコンセプトとして新たに生まれ変わりま
す。
○ふれあいとは
言葉の印象から「肌と肌がふれあう」事と考えてしまうかもしれません。ここで
は、人と人の直接的なふれあいや動物とのふれあいだけでなく、人との交流、街や
様々な関係機関、施設との関わり、動物を想い寄り添うことで得られる「生命のかか
わりあい」「人と動物の共生」など、多様な視点からの関わりも含め「ふれあい」と
します。この「ふれあい」をコンセプトに設定し、遊⻲公園は新たに生まれ変わりま
す。
30
第 3 章 事業計画
3 基本方針
遊亀公園は、公園区域(1.4ha)と動物園(有料:1.3ha)で構成され、
「市民に憩いと安らぎを提供する場」「小動物とのふれあいや飼育体験など
を通して自然や命の大切さを学ぶ場」という2つの性質を持つ、唯一の都市
公園で、交通アクセス(バス路線等)が良く、甲府駅から徒歩30分の市街
地に立地していることから、高齢者や障がい者にも気軽に利用されるととも
に、市街地において「3世代が交流できる貴重な公共の場」になっています。
また、遊亀公園は、甲府城敷地内(一条小山)にあった「一蓮寺」が、武
田氏滅亡後、新たな城下町建設に伴って太田町に移築され、明治7年には一
蓮寺境内の一部が県立の公園となり、大正7年に一部が甲府市に移管された
ことが始まりです。動物園については、大正8年に公園内で小動物を展示し
たことが始まりで、大正13年に名称を「甲府動物園」としました。太平洋
戦争の戦災により焼失しましたが復興を遂げ、昭和27年に再び市に移管さ
れ市立動物園となり現在に至っています。
このようなことから、遊亀公園・附属動物園は、先人が築き上げた「未来
を築く子どもたちが命の尊さや自然を学習する場所」「世代を超えた人々が
憩い交流する場所」「甲府市の歴史を知る場所」であると考えられます。
このような歴史的背景や現在地における存在価値を踏まえ、開園から10
0周年及び開府500年を契機に「新たな歴史と交流を育む場所」となるよ
う、魅力ある動物園づくりを計画的に行う必要があります。また、市街地に
おけるにぎわいの創出を図る有効な施設として動物園を活用することも期
待できます。
こうした観点から、現在地において遊亀公園と動物園を、一体的に整備を
行うこととし、甲府市遊亀公園・附属動物園の課題を解決していくために、
本計画では5つの基本方針とします。
31
第 3 章 事業計画
:
○基本方針1:動物園と公園の融合を図る
四季折々の花々や、安らぎを感じる樹木で満ちた空間を創出し、その中に動物園
と公園を再配置する。来て見て楽しい、もう一度行きたいと思える動物園、公園づ
くりを目指します。
○基本方針2:人と動物にやさしい環境をつくる
利用者が安全に快適に利用でき、動物の飼育環境を整え、自然との繋がりを実感
でき、生き物との空間共有を体感できるような施設整備を行います。
○基本方針3:「娯楽」と「学習」の場を提供する
次世代を担う子どもたちが、日常的に動物と直接ふれあえる環境は、「生命の
尊重」を学ぶ絶好の機会となります。動物や自然環境について関心を持つきっか
けを提供する「環境教育の場」として、関連する取り組みの充実を図りながら、
本園の特性を活かした動物展示を行います。
また、子どもたちや大人にも楽しく感動を与えられる動物園、公園となる仕組
みを整えます。
○基本方針4:市民や外部団体との協働を図る場を提供する
動物園や公園が世代を問わず市民に親しまれ愛されるよう、動物園や公園の管
理運営に関して、市民や外部団体等とともに取り組んでいきます。
○基本方針5:安定した運営に向けた施設整備を行う
自主的で安定した遊亀公園及び附属動物園を持続させるため、適正な運営体制
に基づいた健全性の高い施設経営が求められます。このため、民間による連携
支援や、利便性と収益性の改善を視野に入れた施設の整備を行います。
32
第 3 章 事業計画
4
(1)
整備テーマ・取り組み項目
整備テーマの設定
甲府市遊亀公園・附属動物園の整備に向けて、整備テーマを次のとおり設
定します。
公 園 整 備 テ ー マ「新たな歴史と こどもを育む
遊亀公園」
動物園整備テーマ「動物たちとふれあいながら 未来をつくる 動物園」
(2) 取り組み項目の設定
基本方針に基づく施策を体系化し、基本理念「次世代へ いのちつなぐ 懸
け橋へ」となる動物園・公園に向け、具体的な事業を推進していきます。
【1】 動物園と公園の融合した施設整備
・公園は、将来を担うこどもたちが、人との「ふれあい」などから健やかに成長で
き、新たな歴史(思い出)が刻まれるよう再生します。
・動物園の思い出が、いつまでも共有できるような雰囲気を創出します。
・動物園と公園を一体的に整備し、自然環境に配慮した都市景観の形成を図ります。
【2】 特徴を活かした動物展示
・動物が近くで見れる!という特徴や「ふれあい」を活かした動物展示を行います。
【3】 社会的な役割への対応
・動物を素材として環境教育の実践の場としての取り組みを行います。
・種の保存、調査研究・野生動物の保護などに積極的に取り組みます。
【4】 活性化への取り組み
・情報発信や顧客ロイヤリティの向上による活性化に取り組みます。
【5】 安定した運営体制の構築
・持続可能な運営体制に向け、様々な手法を取り入れ関係機関と連携します。
33
第 3 章 事業計画
計画の概念図
34
第 4 章 整備基本計画
第 4 章 整備基本計画
1
土地利用計画(概略ゾーニング)
(1)主要な構成要素の整理
動物園を含む遊亀公園全体の土地利用(概略ゾーニング)を計画するため
の、主要な構成要素や施設の配置の考え方はつぎのとおりです。
・公園は、市街地における景観形成及び遊亀通りへの緑陰提供等、良質な歩行
空間の形成や主要幹線道からの目視による防犯・安全確認を目的に、敷地西側
に配置する。
・動物園は、動物の良好な飼育環境の確保を目的に、遊亀通りからの振動・騒
音等の環境負荷の軽減のため、公園を緩衝帯として敷地東側に配置する。
・公園の空間構成は、こども公園の要素を取り入れた芝生広場や休養の場とし
全体構成
て既存樹木を活用した木陰広場と散策や軽運動ができる機能に大別する。
・主たるアプローチとなる遊亀通り側及び第 1 駐車場付近にエントランス広場
を設け、遊亀公園の顔づくりの場とする。
・修景池は、水質改善及び公園の効果的な土地利用を促進するため、面積を縮
小させつつも、用水路とともに修景要素としての取扱いに配慮する。
・稲積神社への参道を兼ねる園路は、動物園区域を横断することになるため、
有料区域内を通過しないことを原則とする。
エントランス
(コントロールポイント)
主園路・参道
(コントロールポイント)
・市街地からのアプローチを主眼に公園エントランスを遊亀通り側に配置、動物園エ
ントランスは、公園エントランスからの動的な連続性を考慮して構築する。
・一蓮寺へ接続する園路は、第 1 駐車場からの接続を考慮する。
・稲積神社への参道を兼ねる主園路は、既存園路に準じた配置を考慮する。
・動物園が主園路により二分されるため、サービス・学習施設を結ぶ階上歩廊などの
動物園の施
設配置
ブリッジ式及びバリアフリーに配慮した平面交差等で結び、有料区域の連続性を確保
する。(平面交差は特殊ゲートなどを採用)
・管理施設を第 1 駐車場近傍に配置することで、管理車輌等の園内通過を排除す
る。
公園の施設
配置
修景池
・公園区域は縮小されるものの、動物園との一体的な利用やイベントの開催による賑
わいの創出が図られるよう考慮する。
・池の水質改善に配慮して、用水路を最短距離で通過させるため、動物園東側に修
景池を縮小して配置する。
35
第 4 章 整備基本計画
(2)概略ゾーニング
主要な構成要素を整理し、土地利用(概略ゾーニング)を計画すると、
次の図のようになります。
概要:東側に動物園、西側に公園及び公園北側にこども公園を配置、各
導入部にエントランス広場を設け、動物園内に各施設、修景池を
配置する。
36
第 4 章 整備基本計画
2
具体的な施策・事業
基本方針の具体的な施策・事業の体系図
基本方針に基づく具体的な施策・事業を項⽬ごとに整理すると次の体系となります。
1
動物園と公園の融合した施設整備
一体的な整備
公園整備
【重点】 ①動物園区域の拡充とふれあいの創出
①景観への配慮
【重点】 ①一体的なイベントへの対応
②子育て世代や高齢者に配慮した施設整備
②バリアフリー対策
⑤特色をもった施設整備
【重点】③休養や散策、安らぎと賑わいのある公園整備
①歴史的背景を活かした整備
【重点】 ①こども公園・付帯施設の整備
動物園整備
【重点】 ②わくわくする園路とゆとりある動線の確保
①懐かしさが感じられる雰囲気づくり
①都市型動物園としての整備
2
特徴を活かした動物展示
展示手法の確立
【重点】 ③動物展示施設の検討
②適切な動物飼育環境の確保
【重点】 ②動物との繋がりを感じられるスペースの拡充
3
社会的な役割への対応
環境教育の充実
【重点】 ③環境教育への取組みの拡充
③学習施設の整備や歴史文化の保存
④園外活動の充実
【重点】 ②「種の保存」活動と動物の確保
種の保存・調査研究
②調査研究・野生動物の保護
④他の動物園との連携
4
活性化への取り組み
情報発信や顧客ロ
イヤリティの向上
による活性化
【重点】 ④協働の場の整備と各施設との連携
④イベント開催における地域との協働
【重点】 ③リピーターなどへの集客対策
③イベントの充実
【重点】 ④情報発信の強化
5
安定した運営体制の構築
持続可能な運営
手法と連携
⑤高い技術を持った職員の育成
⑤安定的な施設経営
④サポーター制度等の創設
⑤民間による連携支援
⑤駐車場の有料化の検討
37
第 4 章 整備基本計画
具体的な施策・事業の内容
1 動物園と公園の融合した施設整備
一体的な整備
1
一体的な整備の考え方
“原点は「まちなか」
その復活を
促す”
近年、人々の価値観は物質的な豊かさより心の充足を求めるように変化し、将来よりも
現在の生活の充実に重点を置き、安全・安心な生活環境が求められています。このような
中、老朽化により経年劣化が進行している動物園と公園を、一体的利用に適するよう整備
することで、将来を担うこどもたちが健やかに育ち、市民がふれあい、交流が創られる都
市公園へと新たな歴史が刻まれるよう再生し、自然環境に配慮した良好な都市景観の形成
と都市環境の改善を図ります。
2
基本方針に基づく施策・事業
【重点】動物園区域の拡充とふれあいの創出:方針1
修景池の一部を埋め立て、陸地面積を広くすることで動物園を拡充し、公園との一体的な整備を念
頭に、市民がふれあい、交流が創られる都市公園へと生まれ変わるよう施設を配置します。
○景観への配慮:方針1
公園のみならず動物園にも樹木や四季折々の花々を植栽し、景観に配慮した潤いと安らぎの空間づ
くりを創出します。また、修景池については、動物園内の潤い要素として適切に再配置します。
【重点】一体的なイベントへの対応:方針1
動物園と公園を一体的に使用する催しに配慮し可能な限り平面計画による再整備を実施します。
○子育て世代や高齢者に配慮した施設整備:方針2
乳幼児連れや高齢者等が天候に左右されずに利用できるよう、屋根付園路や休息所を整備します。
また、快適に利用できる、多目的機能を備えた明るく清潔なトイレや授乳室などを整備します。
○バリアフリー対策:方針2
公園の施設は経年劣化による損傷が大きいため、動物園と一体的にバリアフリー対策を行います。
○特色をもった施設整備:方針5
安定的な施設運営を目指し、維持管理において人的・財政的負担が少なくなるよう、耐久性があり維
持管理が容易な資材・部材選定、省資源型で効率のよい資器材の選定等により施設を整備します。
38
第 4 章 整備基本計画
3
具体的な取り組み内容
(1)動物園と公園の一体的な空間づくり
【動物園と公園のデザインの統一】
動物園内や公園の施設やフェンス、ベンチ、照明、園路、配色、
デザインに統一感を持たせた景観形成を図ります。
フェンスは蔦などの植物により修景化し統一感を創出します。動
物園を取り囲むフェンスは高さが必要であるため、視覚的に圧迫感
を感じやすくなります。そこで、緑化やデザインにアクセントを付
け効果的に景観的な阻害要因を低減するよう努めます。
また、フェンスについては、動物園内の動物(主に大型獣)が檻
から逃げ出し、動物園外に逃走するのを防ぎつつ、外部から故意に
動物に危害を加えることを防ぐものとします。
フェンスの修景化イメージ
【修景池の再配置】
池は水質改善を図るため、形状を改良し面積を縮小して動物園
の東側に配置し、水がなるべく均等に流れ滞留水が少なくなるよ
う、流入口から流出口までの距離を短くし形状を工夫とします。
これにより、湛水量が入替わるサイクルが早くなり濁度低減の効
果が期待できるため、今後も用水路とともに池を潤い要素として
活用します。
【樹木や四季折々の花々の植栽】
本市や山梨県に関連する(※花桃(観賞用))植物を公園・動物園に植栽し、市民が潤いと安らぎ
の中でふれあえる空間を創出します。また、建物への壁面緑化を行うことで、ヒートアイランド現象
の緩和や二酸化炭素(CO2)軽減など省エネルギー対策を行います。
※花桃について
本市の南部地域は桃の栽培が盛んですが、桃の花を愛で
るスポット(桜は舞鶴城や小瀬スポーツ公園、梅は不老園
など)が中心部にはありません。そこで、花桃の植栽を行
うとともに、大型の鉢植えに花桃を植え、これらを公園・
動物園に置くことで、甲府(山梨)らしさを演出します。
また、イベントの開催時には、大型の鉢植えはフォーク
リフトなどで容易に移動が行えるよう工夫します。
桃の花のスポットなどのイメージ
39
第 4 章 整備基本計画
(2)動物園と公園の一体的利用
【イベント広場の設置と特殊ゲート】
特殊ゲートの採用と併せ1日利用が可能なチケットを採用する事で、有料区域から無料区域へ移動
することや、無料区域から有料区域への移動が円滑に行えるようになり、動物園と公園の一体的な利
用が可能になります。また、公園内にはイベントや各種催しの開催を想定したイベント広場を設置し
ます。
【地域イベントとの一体的利用】
正ノ木祭りや舞鶴城、中心街で行われるイベントと連携し、賑わいの創出による地域活性化を図り
ます。その際、イベント(芝生)広場の活用も検討していきます。
動物園・公園を一体的に利用する動線イメージ
40
第 4 章 整備基本計画
(3)人にやさしい空間づくり
【ユニバーサルデザインと特殊ゲートなどの採用】
年齢や障がいの有無などにかかわらず、最初からできるだけ多くの人が利用可能できるようユニバ
ーサルデザインを取り入れた整備を行い、文字や会話によるコミュニケーションの困難な人が正しく
理解できるようにするための規格である「ピクトグラム」の導入を検討します。
また、動物園が主園路により二分されるため、サービス・学習施設へはエレベーターを導入すると
ともに、ブリッジ式などの階上歩廊や動物園内を平面交差等で結べるよう特殊ゲートの採用を検討し
ます。
階
上 歩
廊
※特殊ゲートのイメージ
主園路(参道)
入口
出口
【屋根付園路や休息所・トイレなどの整備】
動物園・公園に設置する園路や休息所、トイレなどは設
計段階からきめ細かく配慮し、日常管理についても常に清
潔で快適であるよう、その方法について検討していきま
す。また、毎年のように続く猛暑や天候不順が、子育て世
代や高齢者等の活動範囲を狭めているため、このことに対
応できるよう、屋根付園路や休息所の構造を工夫します。
トイレの施設や設備は、施設全体のイメージを左右する
との調査結果もあり、特に乳幼児連れにとっては、行動エ
リアを左右するほど重要な要素となっているため、ユニバ
ーサルデザインに基づいて誰もが使いやすいよう配慮した
施設整備を行います。なお、ベビーカー置き場のスペース
やおむつ交換台などは利用予測に即した導入を検討するこ
ことします。
事例)トイレや動物園内の休息所のイメージ
【県産材・市産材の利用】
耐久性や維持管理について考慮しつつ、可能な限り県内の森林から伐採され加工された木製品であ
る「県産材」の利用に努めるとともに、市産材も有効に活用していきます。
41
第 4 章 整備基本計画
公園整備
公園整備テーマ
「新たな歴史と こどもを育む
1 公園整備の考え方
“せっかくなので 公園No.1を企て
遊亀公園」
地域を変える”
遊亀公園は、市街地における景観形成や遊亀通りへの緑陰提供など、良質な歩行空間の
形成、動物園に対する遊亀通りからの振動・騒音等の環境負荷の軽減のための緩衝帯とし
て役割を併せ持ちます。また、幹線道路からの目視による安全確認や防犯の観点から、公
園を西側に配置することとします。
空間構成については、文化遺産の適正な保全と地域催事に対応可能なものとし、今後と
も地域との関わりを強くすることができる公園として整備します。また、こども公園の要
素を取り入れた芝生広場や休養の場として既存樹木を活用した木陰広場と、散策や軽運動
ができる機能に大別し、アプローチとなる遊亀通り側及び第 1 駐車場付近にエントラン
ス広場を設け、遊亀公園の顔づくりの場とします。
なお、こうふ未来創り重点戦略プロジェクト(計画期間:平成 27 年度~30 年度)に
おいても、重点項目「こども最優先のまち」に、「子育て世代が安らぎと憩いを感じられ
るようなこども公園の要素も付加した公園整備を実施する。」として位置づけられていま
す。次世代を担うこども達や子育て世代に対する環境整備を行うことは、本市の将来のあ
り方に大きな影響を与えると考えられます。
2
基本方針に基づく施策・事業
【重点】休養や散策、安らぎと賑わいのある公園整備:方針3
散策や草花の観賞、木陰や水辺での休養や語らいなど、遊亀公園がこれまで市民に親しまれ、日常
的に利用されてきた公園としての要素を継承しつつ、人々がふれあい賑わう空間づくりを行います。
【重点】こども公園・付帯施設の整備:方針1
将来を担う子どもたちが、安心して健やかに育つよう、こども公園として公園区域を整備するとと
もに、来園者の利便性を高めることができる施設(駐車場・案内板・休憩施設・トイレなど)の再整
備を実施します。
○歴史的背景を活かした整備:方針1
公園内には地域の歴史を物語るさまざまな石碑等が多くみられるため、歴史的な背景が感じられ、
これを継承していける整備を実施します。
42
第 4 章 整備基本計画
3
具体的な取り組みの内容
(1)安らぎと賑わいのある空間づくり
【近隣公園としての機能とイベント広場の活用】
公園は、都市空間の中における安らぎと憩いの場であるとともに、健康づくりの場(体操・散策)と
しても親しまれているため、このような利用形態も想定した整備を行います。
また、イベント広場の活用は、各地で行われているマルシェなどが、若いクラフト作家などのクリエ
イターと市民との交流の場となっていますので、このような利用を想定した(水道、排水、電源、スペ
ースなど)整備を行います。このような整備を実施することにより、様々な世代が集う賑わいのある空
間が提供できます。
散策や正ノ木祭りにおける公園の利用状況
マルシェ(甲府駅北口)
43
第 4 章 整備基本計画
(2)子どもが健やかに成長できる空間づくり
【遊具の導入】
将来を担う子どもたちに、遊びや体験の場を提供し、豊
かな創造力や社会性を身につけ、健やかに成長できる空間
づくりを行います。遊具の導入にあたっては、難しいもの
に挑戦できる遊具はこどもの好奇心を高め、低年齢の子ど
もは、年長の子どもの遊びを見ることで多くの刺激を受
け、年長の子どもは、年下の子どもとふれあうことで、思
いやりや我慢することなどを学ぶことから、様々な年齢の
こどもに対応できるものとします。また、ベンチ等の設置
は多くの大人が、子どもたちを見守れるよう配慮します。
(3)楽しみのある空間づくり
【ミストの導入の検討】
猛暑日が続く夏季は公園利用者が極端に少なくなるため、暑さを和らげる対策や涼を楽しむ場が求
められます。しかし、特に乳幼児連れにとっては、水遊びも安全で清潔な環境が求められていますの
で、暑い甲府市の対策として、既存の噴水(循環式)の代替としてミストの導入を検討します。
なお、ミストは「じゃぶじゃぶ池」に対して危険性が少なく、コスト面においても水道料金(飲料
に供される可能性があるため)や電気料などに限られます。導入の際は、亀をイメージし配置する事
で動物園との一体感の創出を検討します。
事例)ミスト
44
第 4 章 整備基本計画
【室内公園の導入の検討(レクチャールームの併用)】
幼児(2~7 歳)の母親を対象に調査したところ、公園や空き地で健康的に遊ばせたいというニーズ
が高い一方で、「公園は安全・安心だと思わない」という声も多かったとの調査結果があり、親子が安
心して過ごせる“室内公園”がショッピングモールや一部公園で導入されています。
このような安全・安心な遊び場が求められているため、レクチャールームの空き時間は、室内公園
の機能を併用し、スペースを無駄なく活用することを検討します。
室内公園を併設した場合、天候不良時や、猛暑・
厳寒時における市民サービスの向上が図られ、動物
園や遊亀公園への来園の動機付けとなり、さらに、
公園利用時には休憩スペースとなります。また、年
長の兄弟は公園で遊び、幼児は室内で遊ぶなどの利
用が予想され、利用者の利便性の向上とともに、楽
しみがある空間づくりができると考えられます。
(4)歴史を大切にする空間づくり
【石碑の調査と整理】
公園内の様々な石碑の碑文、建碑の由来、建てられた年代、場所、大きさなどを調査します。石碑は、
地域に起った出来事や関係のある人物に由来するものであるため、石碑を調べることで、郷土の歴史を
知ることができます。また、建立の由来など分類ごとに整理し継承するよう整備します。
大正 12 年頃の遊⻲公園内と常夜燈(背景に一蓮寺本堂が見える)
45
第 4 章 整備基本計画
動物園整備
動物園整備テーマ
1
「動物たちとふれあいながら 未来をつくる 動物園」
動物園整備の考え方
“おでかけは まず動物園!と
思われるように”
本園は、平成 31 年に開園から 100 周年を迎えます。この歴史の中で、周辺環境の変
化や施設の老朽化、動物の展示効果などからも改善が必要であるため、利用者のニーズに
沿った施設整備を行い、次世代を担う子供達が、貴重な動物の生態などに触れるなど環境
教育の場を提供します。
施設整備は、入園者数が過去2番目に多かった入園者数と同じ 210,000 人(現状約
11 万人から 10 万人増)を想定した、園路・広場・サービス施設などを配置します。
また、飼育動物の種類や個体数に対して展示施設が狭小でもあることから、動物の飼育
環境の改善や利用者の快適性を確保するため、動物園区域を拡大し適切な施設配置を行い
自然エネルギーの活用や資源のリサイクルなど、環境負荷の軽減に努めます。
なお、動物園の整備にあたっては、工事中の動物たちの精神的・肉体的負荷を軽減する
ため、段階的な施工計画を立案することで、既存の飼育環境を維持しながら工事を進める
ものとします。
2
基本方針に基づく施策・事業
【重点】わくわくする園路とゆとりある動線の確保:方針2
適切な動物展示施設の配置とゆとりのある動線(観察スペース・園路)を構築し、誰もが安全に安心
して利用できる施設整備を行います。
○懐かしさが感じられる雰囲気づくり:方針1
本園では世代を超えて多くの方が訪れていることから、懐かしい思い出がいつまでも共有できるよう
な施設整備を実施します。
○都市型動物園としての整備:方針1
市街地に位置し、交通アクセスに優れた特性を活かした都市型の動物園としての整備を実施しま
す。
46
第 4 章 整備基本計画
3
具体的な取り組みの内容
(1)わくわくする園路の設定
園路は次の動物はなんだろう?と、観察できる動物が樹木な
どで隠れて分からず来園者がドキドキわくわくするような園路
を、できるだけゾーンの地勢に合わせた樹木を植栽するなど工
夫し設定します。
また、動物展示施設の配置とあわせ動線を配置し観察スペー
スと園路の分離を行い、園内を円滑に移動することができるよ
う整備します。
(2)管理用通路やバックヤードなどの施設整備
管理用通路は、管理者と利用者の動線とを分離し利用者の目に入らないよう配置します。また、普段
は入ることのできない動物園の裏側を案内する「バックヤードツアー」の実施も視野に入れた施設の設
計を検討します。
事例:バックヤードツアー
(3)懐かしい雰囲気の創出と施設の有効利用
手作り感あふれる雰囲気が、来園者にとって懐かしさを感じ
られる要素であり、それが本園の特徴でもありますので、現在
の施設で、増改築する事で活用できる施設は、耐震性や強度な
どを考慮し、懐かしさが感じられるよう雰囲気を残すなど、有
効利用に努めます。また、子供達の思い出となるうよう、一部
のパネルや看板などを手作りするような活動も検討します。
47
第 4 章 整備基本計画
(4)周辺環境に配慮した「都市型動物園」としての空間づくり
交通アクセスに優れ気軽に立ち寄れる動物園として、街中の賑わい創出の拠点となるよう施設整備を
行います。
また、都市型の動物園として、動物の展示をガラスで隔離した場合「においを我慢する必要がなく、
ゆっくり見られる」とポジティブな声がある一方、「カメラのフラッシュがガラスに反射するために写
真が撮れない」「動物の声が聞こえにくい」といったネガティブな意見もありますので、動物の種類や
獣舎の配置、近隣の住宅との距離などを個別に考慮し、周辺環境に配慮した空間づくりを行います。
(5)駐車場整備と観光スポットとの連携
約 1 時間30分程度で見学でき、山梨県内の観光スポットと程よい位置関係にあるコンパクトな
「都市型動物園」は、観光バスツアーの立寄り先として最適です。本計画に基づき大型バス駐車場を
整備しますので、旅行会社等へ関係機関と連携したプロモーション活動などの展開を検討します。
また、一般の来園者向けにも駐車場を整備しますので、交通アクセスに優れていることと併せ、中
心街の賑わいの創出のため、関連イベントや施設情報を共有し連携したプロモーション活動を検討し
ます。
・一般駐車場の整備
・大型バス駐車場の整備
・交通アクセスの優位性
48
第 4 章 整備基本計画
■現状の動物園区域
■整備後の動物園区域
49
第 4 章 整備基本計画
2
特徴を活かした動物展示
展示手法の確立
動物園整備テーマ「動物たちとふれあいながら 未来をつくる 動物園」
1
動物展示の考え方
“ゴールは 来園後に…思い出として残ること”
本園は、動物が近くで見れる!という特徴を持った山梨県内唯一の動物園です。現在、
動物の多くが展示用ケージのみで飼育されているため、ねぐらとなる動物舎と活動・展示
の場となる放飼場を適切な規模で整備し、極力動物の生態に近づけるようにします。
具体的には、驚きと感動を体感できるよう、ランドスケープの考えかたを取り入れた生
態的展示や行動展示などを行い、動物の行動を誘発する環境エンリッメントにより、飼育
動物の活動性と行動の多様性を高めます。
また、山梨県など身近に生息する動物の展示を行うことで、普段は会えない野生動物の
存在への気付きから環境保全への意識向上を促します。
2
基本方針に基づく施策・事業
【重点】動物展示施設の検討:方針3
動物をどのように見せるかというストーリー性や演出に配慮した動物展示の工夫や獣舎・放飼場等の
施設配置を検討します。この場合、動物が間近に見られるという動物園の特性を継承します。また、
環境保全への関心に繋げるため、山梨県に生息する身近な野生動物や水辺の動植物の展示を検討しま
す。
【重点】動物との繋がりを感じられる「体感・体験」スペースの拡充:方針2
動物とのふれあいを通じた「環境教育」を実践するため、ふれあいスペースを拡充します。また、動
物との繋がりが「体感・体験」ができるよう、動物の生態が身近に観察できるようにします。
○適切な動物飼育環境の確保:方針2
飼育環境の改善に向け、動物園区域は動物の心的負担を考慮しながら段階的に拡充し、広い獣舎や放
飼場を整備します。また、分かりやすい解説板、適切な飼育空間や衛生状態を維持するための管理施
設を確保し、災害に備えた飼料の備蓄・電源確保など安全対策の充実を図ります。
50
第 4 章 整備基本計画
3
具体的な取り組みの内容
(1)動物展示の手法
動物の展示手法は、動物園区域や動物種、個体の特性を踏まえ※ランドスケープの考え
かたを取り入れた生態的展示や※行動展示などを行い、動物の行動を誘発する※環境エン
リッメントにより、飼育動物の活動性と行動の多様性を高め、動物の生態が身近に観察で
きるようにします。
また、分かりやすい解説板を設置するとともに、ストーリー性や演出に配慮し、来園者
が楽しみながら、動物について学べる展示手法を検討します。
■展示手法と動物の行動を高める取組みとの関係
※ランドスケープ
地形と植栽などで動物の生活を表現するとういう考え方で、土地、植物、水系、陽光、風などの総体をデザインに取り組み、動
物の生息地に入り込んだような生息環境との一体感を醸し出す景観を具現化する。
・周辺の建築物や鉄塔などは、盛土、植栽で隠す。
・日本庭園の折れ曲がりや見え隠れの技法の採用。
・人工構造物(擬岩・擬木)を極力使用しない。
・展示エリアを連続的に見せることを避ける。
・動物を見下ろすことを避け、同等か見上げるように設置する。
・ケージを用いる場合は、植栽や盛土で演出後、ケージの支柱を隠し存在感を薄くする。
植物等自然素材を活用
※行動展示
生態的展示
行動に特化
行動展示
野生動物が本来持ってい
る特徴的な行動や能力に
特化し展示する方法。
オランウータンの綱渡り
や円筒を上下に泳ぐアザ
ラシなどの例がある。
(ランドスケープ)
動物の行動を誘発
※環境エンリッメント
飼育動物の活動性と行動の多様性を高め、野性と同様の行
動を引き出し、望ましくない異常な行動を減らし、環境の肯
定的な利用を増やすことを目指し給餌方法や飼育室の構造、
他個体や人間との関係などが様々に工夫される。
・動物の福祉と健康のために、飼育環境に変化を与える。
・飼育動物に刺激や選択の余地を与え、動物の望ましい
行動を引き出す。
・刺激不足の環境において、種に適切な行動と心的活動
を発現させる刺激を与える。
環境エンリッチメント
51
第 4 章 整備基本計画
(2)動物展示の形状
【基本的な展示形状】
基本的な動物展示の形状として、動物の展示スペースに人が入り込んだり、動物が飛び出したり、動
物に囲まれたり、動物の中を通過するなど、動物が身近に「体感・体験」でき、驚きや発見に繋がるよ
うな演出を行うため、次の展示方法を基本として動物展示の形状を検討します。
人が入り込む
動物が飛び出す
動物に囲まれる
動物の中を通る
【動物に近い!という特徴を継承した動物展示】
展示施設は、放飼場の幅を拡張することで「動物に近い!」という本園の特徴を継承しながら、適正
な規模のスペースの確保に努め、ねぐらとなる動物舎の充実も検討します。
整備後の放飼場
52
第 4 章 整備基本計画
(3)展示施設等の配置
【テーマやストーリーに沿ったゾーンの計画】
ゾーンについては、テーマや生息環境、地域を設定して動物を配置し、動物に「ふれあい」
「楽しく」「わかりやすく」見せる空間の演出を行います。
施設整備については、新たな動物の飼育管理計画※1(動物種ごとにどのように飼育管理してい
くか)に基づいた園内の動物移転計画※2(どの動物をどこに・どのように・いつ移すか)を細心
に検討した後、管理施設との連携などに配慮しながら決定し、動物種ごとの放飼場・寝室や管理
スペースの規模(面積)を確保できるよう、合理的かつ効率良く展示施設を配置します。
本園は、これまで長い歴史の中で増築や改築を繰り返し、修景池や主園路により区分けされた
3区において動物の展示を行ってきましたが、今後は「生息環境」や「地域」を組み合わせ、
「テーマ」に沿ったゾーンにおいて、敷地面積や動物の個体数、生息域を勘案し動物の展示を行
うよう整備します。
※1「飼育管理計画」は、本園の規模や繁殖技術、種の希少性等を考慮しどの種は繁殖させ、どの種は観賞の
みといった選択や、場合により他の動物園への移転等を含め、飼育関係職員等を交えて検討する。
※2「動物移転計画」では、「飼育管理計画」を踏まえ、どの種をどごに、どのように、いつ移すかを検討す
るとともに、放飼場・寝室・附帯施設・管理施設等の仕様を設計技術者とともに計画(リニューアルマ
スタープラン)する。これにより、開園しながらの工事を前提に、動物園の拡張、池の埋立て等を取り
込んだ施工実施計画を策定する。
53
第 4 章 整備基本計画
■現ゾーニング
1区
公園
1区
ゾウ・中型サル・チンパンジー
⻲、ヘビなど
2区
レッサーパンダ、
ふれあいコーナー
家畜、小型サルなど
2区
3区
第 1 駐車場
遊園地
■新たなゾーニングイメージ(案)
54
3区
猛獣、フラミンゴ、
ペンギン、ビーバー、ヤマアラ
シ、コンドル、ワラビー、ポニ
ー、ブラジルバクなど
第 4 章 整備基本計画
(4)ゾーンの設定
ア ふれあいゾーン(小型動物、家畜コーナー)
ふれあいゾーンを拡充し小型動物を増やすことは、こうふ未来創り重点戦略プロジェ
クト「こども最優先のまち」の実現や動物を増やしてほしいという市民のニーズにも沿
っています。また、コンパクトな動物園でもスペースが問題とならず、来園者が、動物
とのふれあいから「命の尊さ」を感じ「環境教育」のきっかけとなります。
1)内容
・かわいい小型動物によるふれあいと、家畜動物を展示します。
・動物の温かみと「命の尊さ」を感じ、思いやる心を育むことができる場を設けます。
ビジターセンターと連携し、教育機関や団体を受け入れ学習の場とします。
人間とかかわりの深い家畜を展示し、環境教育のきっかけとします。
ポニーの乗馬など、人間と動物がともに楽しめる場を設けます。
・幼児でも安心して利用できる安全性と衛生面に配慮した整備を行ないます。
・子どもの目線に合わせた施設整備を行い、子どもたちを見守る保護者へも配慮します。
・
2)展示イメージ
・子供達が目を輝かせて動物に近づく、飼育員の話を聞きながら動物とふれあい温かみを感じる。
・動物は、様々な表情や仕草を見せ、家族や友達と会話が弾む。
・ポニーの乗馬やヤギのえさやりを、少しどきどきしながら行い、次第に楽しくなっていく。
・身近な家畜に興味深々で、見たり、触ったり、匂いを感じ親近感が沸いてくる。
・さわれなくても間近に動物を見ることで、新しい発見や動物への関心を持ちはじめている。
・命の大切さを感じ、学ぶことで、思いやりの心を育むきっかけの場となっている。
55
第 4 章 整備基本計画
イ
ふるさとゾーン・爬虫類館(山梨県内の動物、水辺の生き物、爬虫類)
山梨県は、緑豊かな自然環境に恵まれ多くの野生動物が生息しています。しかし、普段
の日常生活ではめったに野生動物に出会うことはありません。動物園で山梨県に生息する
動物を展示することにより、身近に生息する普段は会えない野生動物の存在に気づきを与
え、環境保全への意識向上を促すことができます。このことは、海外の動物よりも環境教
育として訴えやすいという側面もあります。
1)内容
・山梨県内に生息する生き物を展示します。
・地域に生息する生き物の展示により、環境保全への意識向上を促す仕掛けを行います。
・身近な生き物の習性や食性などが学習できるような仕組みを整えます。
・爬虫類館の隣接に、地域に生息する水辺の淡水魚や水草の展示を行います。
・爬虫類館のヘビや亀(冬季は室内)は、気候によりイベント時にふれあいに活用します。
2)展示イメージ
・地域に、様々な野生動物が住んでいる事を初めて見て、あらめて自然の大切さを考える。
・水辺にも、様々な魚が生息している事に感心する。
・爬虫類館では、爬虫類や両生類の姿や動きに地球上には様々な生き物がいる事を学ぶ。
・普段接することのないヘビや亀に触れて、体感し意外な感触に驚く。
・地域の自然環境を守ることの大切さを考え、そして、自らの生活についても考える場となっている。
展示種の例
哺乳類:ツキノワグマ、ホンドギツネ、タヌキ、ムササビ、モグラ、コウモリ、テン、アナグマ、甲斐犬など
爬虫類:ヘビ最大 5 種、両生類:カエル 5 種、アカハライモリ、サンショウウオなど
山梨県に生息する
動物や水辺の生き物
海外の動物
身近な環境の保全(意識向上)
生態系・自然環境(理解のきっか
動物展示
による
効果
け)
56
環境
教育
第 4 章 整備基本計画
ウ
なつかしさが感じられるゾーン(タイゾウ、チンパンジー)
遊亀公園附属動物園のタイゾウは、入場口から見える場所に展示され、真っ先にゾウに
向かって走る子供達の姿は珍しくありません。また、そのような時代を過ごした父兄や祖
父母が大人になり本園を訪れています。本整備にあたっては、なつかしさを感じていただ
けるように、ゾウやチンパンジーがデリケートな動物であることも踏まえ、現在の場所で
展示を行うこととします。
1)内容
・ゾウ、チンパンジーを現在の位置を基本に展示します。
・施設や設備は、耐用年数などを考慮する中で活用し懐かしい雰囲気を残します。
・チンパンジーは、従来の檻や柵などの遮蔽物を使用した展示ではなく、堀(モート)を使用
したモート式展示により、直接観賞出来るようにし、多様な活動を引き出すよう工夫します。
・イベント時におけるゾウのえさやり体験も継続して実施します。
2)展示イメージ
・昔から変わらないゾウの姿に懐かしさを感じ、親が自分が子供だった頃の話を子供にしている。
・子供達は、ゾウの大きさに圧倒され歓声をあげ、相変わらず動物園の人気者である。
・ゾウの強靭な皮膚を間近に体感したあと、親子は何とか写真を一緒に撮ろうと声を掛けている。
・ゾウが頭を上げ、鼻を伸ばす給餌を観察し、図鑑で見るのと本物は違うと友達と話している。
・アフリカの森の中で暮らす自然な姿に近いチンパンジーを観る。お父さんより強そう!
・チンパンジーは、生活の場である樹上空間を再現したジャングルジムを、力強く動きまわっている。
・知能が高いチンパンジーが持つ特徴的な能力である「知性」「好奇心」「学習意欲」「社会性」を
学べる展示をビジターセンターで行う。
人工物によるチンパンジーの森
57
第 4 章 整備基本計画
エ
水辺ゾーン(水鳥、ペンギンなど)
水辺ゾーンはフラミンゴやペンギン、ビーバーなど水に関係する動物で構成し、修景池
の周辺エリアに整備します。池は植物や水辺の鳥、亀、鯉などの魚が生息し動物園に潤い
の空間を与えてくれる要素となります。整備する際は、池に生息するブラックバスなどの
外来種を駆除し、地域の環境保全に努めることとします。
1)内容
・修景池の周辺に、フラミンゴやペンギン、ビーバーなど水に関係する動物を展示します。
・池は、亀や水鳥、魚の生息地となっているため、自然を大切にし季節の変化が楽しめるよう
整備します。
・来園者がゆっくり楽しめ観察できる場を設けます。
夜行性のビーバーや水の中のペンギンの観察ができるよう工夫します。
2)展示イメージ
・フラミンゴは群れでいることで美しさが強調される。まとまりのある水辺空間と視線を妨げないネ
ットケージ越しに観察する。1本足のと2本足で立つフラミンゴがいるよーと、話す声が聞こえる。
・陸の上のペンギンはユーモラスだけど、水中の泳ぐスピードに驚く。
・陸から海へ集団で餌を取りにいく習性のあるペンギン、ヨチヨチ歩きのペンギンのお散歩を間近に
見て、その行動やしぐさがとてもかわいく思える。
・哺乳類では数少ない一夫一婦で家族を育むビーバー、枝などを集め小川にダムを造り巣を作る。
・ダムによってできた水辺には餌になる魚が集まり、水鳥や水草により自然環境が多様化する。
・ビーバーの活躍はほとんど水中なので、見ていて水の中にいるかのように思える。
・園内の池では、ハクチョウなどの水鳥や、亀や鯉も前より沢山見ることができ、子供達は満足そう
な顔をしている。
・修景池や水辺には季節感のある植物が植えられ、遊亀公園らしさが演出される。
フラミンゴの群れ
水中を泳ぐペンギン
親水性の高いデッキと水鳥
季節感・自然環境豊かな修景池
58
第 4 章 整備基本計画
オ
オセアニア・南米ゾーン
オーストラリアなど地勢的に隔離され個性的な進化をとげた動物たちが見られるオセア
ニア、また、熱帯雨林が多く未開の地がいまだに残り珍しい動物や色鮮やかな鳥たちと出
会える南米、これら個性ある2地域をゾーンとして捉え、そこに生息する動物たちが一緒
に暮らす様を演出します。
1)内容
・オセアニアに生息するワラビー、キバタン、ワライカワセミ、南米に生息するブラジルバク、
ルリコンゴウインコを異なる二つの地理学展示とします。
・ワラビー、キバタン、ワライカワセミは、いずれもオーストラリアに広く分布しており、生
息地域も重なっています。
・ブラジルバク、ルリコンゴウインコも南米に広く分布し、熱帯雨林の水辺は生息地域として
重なっています。
・ワラビー及びブラジルバクは草食獣であり、比較的おとなしい動物であることから、鳥類と
の混合展示を行います。
・オーストラリア及び南米熱帯雨林に近い環境を創出して、来園者がゆっくり楽しみながら観
察できる場を設けます。
2)展示イメージ
・バードケージの中に入ることができ、各地域の特色あるランドスケープで構成された放飼場には動
物が、ケージ上部では鳥類を観察できる。
・オセアニアゾーンのランドスケープは、乾燥した平地と樹林が混ざり合う様を演出していて、ワラ
ビーが跳ねる姿を観察する。
・南米ゾーンでは、熱帯雨林と沼沢地を演出し、泳ぎの得意なバクが得意げに悠々と泳ぐ姿を観察し、
バクの魅力にハマル人もいるかも。
・ワラビー、キバタン、ブラジルバク、ルリコンゴウインコには、ふれあえそうな近さが何とも言え
ない。
・南米ゾーンのブラジルバクとルリコンゴウインコはともに生涯ベアで生活するので、夫婦仲の良さ
が感じられ、来園者の親子は笑顔になる。
バクと鳥類の混合展示例
59
第 4 章 整備基本計画
カ
モンキーゾーン
これまで遊亀公園では多くの種類のサルが飼育され、それぞれを比較できる環境にあっ
たため、これを本園の特徴の一つと捉え継承するものとします。ただし、小型や中型サル
個々の飼育環境は十分ではなかったため、個体種に応じた飼育環境を整え、サルたちの故
郷のランドスケープを再現することで生態をより比較しやすく理解しやすいものとしま
す。
1)内容
・園内に現存するサルの種類が比較的多いこと、また数種については繁殖の取組みが行われて
いることから、それぞれを見比べることができる分類展示とします。
・それぞれの体形・体格から、小型サル・中型サルに大別して展示します。
・小型サルについては、体力・耐性に劣るので室内にて飼育管理及び展示を行います。
・中型サルについては、放飼場は屋外とし生態展示をランドスケープ用いて行います。
・積極的に繁殖を行っていく種については、施設や固体の増加を見越した整備に配慮します。
2)展示イメージ
・小型サルは尾を除くと 20cm足らずの種が多く、放飼場が過大になると発見・観察が困難になる
ので、奥行きより間口を広くとった空間で、どこにいるか分からないようにする。
・小型サルの生息域は南米が中心で、放飼場は熱帯雨林の情緒を醸し出しつつ、屋内施設として適正
にコントロールされた飼育環境の中を動きまわり、なんともかわいらしく思える。
・中型サルは跳躍などの運動能力を持っているので、個体数に見合った棲息空間を確保しつつ、容易
に観察できるよう配慮する。
・中型サルの多くはマダガスカルの落葉樹林帯に棲息しているので、放飼場は観察に支障が生じない
範囲で適正なランドスケープの中で観察でき、マダガスカルに行った気分が少し味わえる。
・ワオキツネザルは、他のキツネザルに比べ地上棲が特徴。地面に降りて疾走する姿を見て、あっち
に行ったよと来園者の声が聞こえる。
中型サルのための樹林地形成
小型サルの屋内展示例
60
第 4 章 整備基本計画
キ
レッサーパンダ・ヤマアラシゾーン
規模の小さな本園でも希少な動物の観察ができます。レッサーパンダやヤマアラシはそ
の代表といえます。
これらの行動範囲は地中から樹上まで広いことから、それぞれの棲息環境にふさわしい
環境を整備するとともに、来園者に多様な観察場所を提供することで生態的特徴を間近に
見られるようにします。
1)内容
・希少動物であるレッサーパンダとヤマアラシを展示します。
・レッサーパンダは夜行性で昼間は樹上で寝たりしているので、観察可能な展示とします。
・本園のヤマアラシ 2 種は別々に進化した独立の系統であり、生活場所も地上性と樹上性で
あるので、異なる生態を同時に比較観察できるようにします。
・いずれも夜行性の動物なので、夜間の行動観察により本来の生態が理解できるナイトツアー
の実施に配慮します。
・希少動物として追加導入や繁殖を促進する方針であり、繁殖に適するスペースを確保しま
す。
2)展示イメージ
・ゾーン内の動物は生息地が混在することになるため、展示については行動展示を主体にそれぞれの
特徴的な行動が観察できるようにする。
・レッサーパンダや樹上性のヤマアラシは木登りが得意なので、高木を植栽したり人工構造物による
施設を設けたりする。
・これらの動物の木登りや樹上睡眠の観察は地上からだけでなく、高台やデッキからより近くで観る
ことができ、みんなの人気者になる。
・いずれのヤマアラシも昼間は岩陰や地中・樹洞に潜んでいるので、昼間の生態観察が可能になるよ
う工夫する。
レッサーパンダ・カナダヤマアラシの行動展示例
61
第 4 章 整備基本計画
ク
猛獣ゾーン
猛獣と言われるライオンやトラなどの大型獣が、今も自然界に棲息していることに驚か
されます。本園で飼育されている猛獣は多くはありませんが、それぞれ迫力のある姿を見
せてくれています。
そこで、これらの猛獣たちを一同に集め、動物巡りの最後に来園者に対して驚きと感動
を与えられるよう演出します。
1)内容
・一般的に動物園といえば「猛獣」といったイメージがあるように、迫力のある大型動物は動
物園の魅力の一つです。
・猛獣とされる動物種は多くはないため、これらを分散して展示するのではなく集約して展示
することで、猛獣を観ることによるインパクトの相乗効果を期待します。
・対象とする動物種は、「トラ」「ライオン」「マレーグマ」の 3 種に、外部から 1 種を取
得予定とします。
・猛獣であるため、普段は堅牢な檻越しにしか観察することができませんが、より近くからの
生態展示を検討します。
2)展示イメージ
・猛獣のため、ふれあうことは困難でもガラス越しに目を合わすことでインパクトがある。
・岩場と草地によるサバンナの景色の中で食事や憩うライオンの姿を観る。
・ライオンが時にはガラスに顔を近づけ威嚇して力強さを誇示する姿は、まさに百獣の王。
・ベンガルトラは、インド・ネパールの樹林帯に生息するアジア最大のネコ科動物、竹林の中から出
現するトラは凄みがある。
・猛獣を間近で観察するには、少し暗い観察小屋からガラス越しに放飼場を観る。
・マレーグマは夜行性で日中はを枝を曲げたり、折ったりして作った木の上のベッドで休むので、少
し高いところからも観察する。
・マレーグマは、鋭く曲がった爪を持っていて木登りが得意、またアリ塚や蜂の巣を壊すときにも役
立つので、これらの特徴的な行動が印象に残る。
ガラス越しのライオン
62
第 4 章 整備基本計画
3
社会的な役割への対応
環境教育の充実
1
環境教育の考え方
“県内唯一の 生きた博物館として”
近年、地球温暖化による気候変動などによって、野生の生き物が住むことができる場所
が少なくなり、絶滅危惧種が増加している現状があります。
1987 年ユネスコの環境と開発に関する国際連合会議の開催後、「生物多様性」「生物
圏」といった考え方が一般的に広がり、さまざまな地球環境問題や、生態系、絶滅危惧種
等に関心が高まっています。
また、国連環境計画(UNEP)が開いた世界環境会議においては、環境教育プログラム
の望まれる成果である※環境リテラシーを、全ての人が身に付ける重要性が示されました。
このような国際的な情勢も鑑み、本園においても、生態系の問題を中心に、生きた動物
を素材として、「環境教育」の担い手としての社会的な役割を果たす施策や事業を実施し
ます。※環境リテラシー:環境問題に関わる人間の資質や能力を示す概念で、北米環境教育協会(NAAEE)
では、環境リテラシーを表す 4 つの要素として、「個人・市民としての責任」「環境問題を理解し、対処す
るための技能」「環境的なプロセスやシステムの知識」「調査し分析する能力」をあげている。
■生きた動物を素材とする「環境教育」を実践する意義
自然と人間の関係を生きた動物を素材とする事により、学習する者の日々の生活が、様々な生物の生
息する世界規模の自然環境に影響を及ぼすことが直接的に実感できることから、動物園を公的機関が整
備する上で、自然と人間のあるべき関係を追求する「環境教育」の実践の場とすることは大きな意義が
あるといえます。
■持続可能な社会に向けた生態系への理解
持続可能な私たちの暮らしに必要な水、食べもの、エ
ネルギーなどは、健全な生態系に支えられています。
生態系は、土、水、大気、太陽光、そこに暮らす多く
太陽
光
の野生生物など、これらの要素が複雑に関わり合って
成り立っています。野生の生き物たちは他の要素すべ
野生
生物
大気
てが健全でなければ生きていけません。
また、捕食をはじめとする生きもの同士の複雑な関
係が、生態系全体のバランスを保っています。 このよ
うな生態系への理解を深めるための取り組みを、動物
園でも推進します。
63
水
土
第 4 章 整備基本計画
2
基本方針に基づく施策・事業
【重点】環境教育への取り組みの拡充:方針3
ふれあいゾーンなどを活用し、直接動物と接する楽しめる企画や教育プログラムを充実させ、校外
実習や体験学習などを通して、教育機関との連携を強化します。
○学習施設の整備や歴史の保存:方針3
飼育動物の生態を学習できる室内展示はもとより、それ以外の生物を学ぶ事ができる博物館的要素
を兼ね備えた学習施設や、動物教室などに使うレクチャールームを整備します。また、公園内の歴史
的な石碑等の保存を図るとともに、動物園と公園の歴史的価値を後世に伝える資料の収集・整理・展
示を行います。
○園外活動の充実:方針4
関係機関と連携し動物園の魅力を伝える出張動物園などの園外活動の充実を図ります。
3
具体的な取り組みの内容
(1)教育プログラムの開発について
動物園は、普段出会うことの出来ない生きた野生動物は、どのような場所に住み、どんな暮らしを
しているのかを動物との「出会い」から思い、「ふれあい」から命の尊さを感じ、来園者の興味・関
心を高め、生態系や生物の多様性、自然環境について理解し、人間がどうすれば環境問題の解決につ
ながるかを考える※環境リテラシーを身に付ける場としての役割を併せ持ちます。
また、第二次甲府市環境基本計画においても、環境の保全と創造に関して「環境教育」の充実を図
る重要性が示されています。
※環境教育の推進イメージ
・行動・・・・・・・・・・・・・・・・・
環境問題に対する行動
・学習(講座など)・・・・・・・・・・・
生態系・自然環境への理解
・ふれあい(温もり、命の尊さを感じる)・
興味・関心
・知る・・・・・・・・・・・・・・・・・
認知(観察)
教育プログラムは、属性(低学年・高学年、大人)に沿ったプログラムを開発し、主に教育機関と連
携して「環境教育」を推進します。また、ふれいあいゾーンでは、小動物の体温やにおいを直接感じ「生
命の尊さ」を思うきっかけとします。
64
第 4 章 整備基本計画
動物園
学習
【教育機関向けのプログラムについて】
学校などの教育機関向けには、学習を「事前」「動物園学習」
「事後学習」の 3 段階のプロセスに分け、それぞれのプロセ
事前
事後
学習
学習
スで子どもたちの着眼に、動物園が柔軟こたえられるようなプ
ログラムを開発し、児童・生徒の学習効果を高めるよう検討し
動物
園
ます。
【来園者向けのプログラムについて】
人々の価値観の多様化に伴い、余暇の過ごし方も「見る・食べる・遊ぶ」から個人の興味やライフ
スタイルに応じた「体験・学ぶ・交流」へ変化しています。来園者向けのプログラムは、これらを踏
まえ、生涯学習型で大人も楽しく学べるようなプログラムを開発するよう検討します。
例)大人向け生涯学習プログラム
1)甲府市遊亀公園附属動物園の歴史や変遷の紹介。
2)動物園が担う社会的な役割(環境教育、種の保存、調査研究など)、獣医師の仕事、野生動物
の自然復帰の難しさなどの講義。
3)動物を素材とした、生態系・自然環境への理解を深めるための講義。
4)餌の管理・保管、取得方法やバックヤードの見学。
5)動物種による管理の相違や特性、環境エンリッチメントの取組みなどの紹介。
65
第 4 章 整備基本計画
(2)複合的な機能を有したビジターセンターの整備
管理事務所にビジターセンターを併設し、動物園や飼育動物に関する情報の提供や、それ以外の生
物を学ぶ事ができる博物館的要素を兼ね備えた学習施設、研究発表や研修・ボランティア活動などに
使えるレクチャールームを整備します。
ビジターセンターには、動物の体のしくみ等を科学的に学
べるよう、本園で飼育していた動物の骨格標本や剝製を展示
し、飼育動物の生態が学習できる展示や、動物園と公園の歴
史的価値を後世に伝える資料室内展示を検討します。
また、レクチャールームは、動物に関する講座や各種研修、
教育機関の休憩スペースなどに活用します。なお、空き時間
は室内公園として併用を検討し、無駄のないスペースの活用
に努めます。
(3)園外活動や各種団体との連携
今後も継続して本市の主催するイベントに出張動物園な
どの園外活動を行います。また、「種の保存」活動や調査・
研究によって得られた成果を、他の研究機関とお互いに情
報の共有を図るとともに、各種団体や、大学をはじめとす
る教育機関と連携しワークショップや動物園シンポジウム
などを通じて、動物園の魅力を伝える取り組みを実施して
いきます。
66
第 4 章 整備基本計画
種の保存・調査研究
1
種の保存・調査研究の考え方
“地域の 自然環境の再生への貢献”
動物園にとっての財産は飼育動物です。この飼育動物の「種の保存」のために、今後も
他の動物園等と繁殖を目的とするブリーディングローンを実施します。
繁殖に必要な展示スペースの確保が課題となるため、長期的な視点に基づいた飼育動物
の維持管理方法の検討や選定を行い、これを踏まえた整備を実施します。
また、※山梨県レッドデータブック(平成 17 年 6 月公開)に記載されている絶滅危惧
種やそれに準ずる要注目種に対して、関係機関と連携し「種の保存」活動と調査研究に取
り組み、地域の生物保護・自然環境の再生に貢献していきます。
※山梨県レッドデータブックの掲載種(生物)
哺乳類:26 種、鳥類:57 種、魚類:11 種
両生類:4 種、爬虫類:4 種
昆虫類:71 種
チョウ類:30 種、
カミキリ類:13 種、
トンボ類:16 種、
その他:12 種
改訂版は 2017 年度の公表を予定
2
基本方針に基づく施策・事業
【重点】「種の保存」活動と動物の確保:方針2
ブリーディングローンなどの取り組みを重視し、動物園の社会的な役割としての「種の保存」活動
に一層取り組み、飼育動物の維持・確保に努めます。
○調査研究・野生動物の保護:方針2
希少動物の保護・繁殖や研究を行うため、飼育動物を対象とした動物病院や研究設備の充実を図り
ます。
○他の動物園との連携:方針4
他の動物園との動物の貸し借りで血統的に離れた個体のペアリングにより繁殖を目指します。ま
た、繁殖するためには動物が健康で心地よく毎日を過ごすことが必要です。これを実現するため飼育
環境や餌の工夫などの飼育技術の研鑽や動物園間で情報交換を行います。
67
第 4 章 整備基本計画
3
具体的な取り組みの内容
(1)種の保存と調査・研究活動の推進
飼育動物の「種の保存」に関する調査研究とともに、園内で動物行動学や※環境エンリッチメント
を実施し、動物福祉に関する調査・研究、環境教育などをへ活かします。
※環境エンリッチメントの定義
飼育動物の活動性と行動の多様性を高め、野性と同様の行動を引き出し、望ましくない異常な行動を減らし、環境の肯
定的な利用を増やすことを目指して行われる。この目的のために、給餌方法や飼育室の構造、他個体や人間との関係など
がさまざまに工夫される。
・動物の福祉と健康のために、飼育環境に変化を与えること
・飼育動物に刺激や選択の余地を与え、動物の望ましい行動を引き出すこと
・刺激不足の環境において、種に適切な行動と心的活動を発現させる刺激を与えること
【調査・研究】
【得られた成果の活用】
① 種の保存
② 環境エンリッチメント
③ 環境教育
動物行動学
動物福祉
※評価:行動観察
■繁殖賞の実績:ケズメリクガメ(人工)
2000 年 7 月 5 日受賞
ミツユビハコガメ(自然)2001 年 7 月 5 日受賞
(2)山梨県に生息する絶滅危惧種の保護や調査・研究
山梨県レッドデータブックに準絶滅危惧種として掲載されているフクロウの保護を、関係機関と連携
する中で継続し、調査・研究を進めます。また、動物病院などの施設を拡充し受入態勢を整え、将来的
には動物園内での繁殖などを行えるよう目指すこととします。
68
第 4 章 整備基本計画
4
活性化への取り組み
情報発信や顧客ロイヤリティの向上による活性化
1
情報発信と顧客ロイヤリティの向上による活性化の考え方
“現場の 1 人 1 人の行動がブランドを築く”
動物園は、非日常的な空間でありますが、多くの市民などが継続して利用されている現
状から、お年寄りから子供までくつろげる空間を用意し、職員は程良い距離感を保ちつつ
適度なおもてなしをする。そして、あらゆる来園者を受け入れた上で、必要に応じてサー
ビスを提供するという受動的な「来園者の日常に溶け込むこと」を意識した関わりも必要
であると考えます。
情報発信については、ターゲットを定め、広報誌などの紙媒体、ホームページや SNS
といった電子媒体など、さまざまな情報メディアを使い分けて、効果的・効率的な情報発
信を行います。また、各種メディアなどの大きな影響力を活用するため、これらに向けた
発信を強く意識し、「新規性」「話題性」「季節性」「時代性」などに考慮した戦略的な
情報発信を行います。
また、ロイヤリティ(信頼・愛着)の向上及び顧客満足度を高めるため、PDCAを発
展させた※PDSAサイクルにより各種事業を発展させ、継続的にトライ&エラーを繰り
返しながら改善を行い、来園者数の増加や動物園の活性化、魅力向上を図ります。
■顧客満足度と顧客ロイヤリティについて
<顧客満足度と顧客ロイヤリティの関係>
顧客満足度が高い人は、他の 5 人に対してその良い経験を
顧客満足度を高めることは顧客ロイヤリティの向上に繋がる。
伝達し、顧客満足度が低い人は、他の 9 人に対して不満足度
合いを伝達すると言われていますので、次の手法により顧客
高
満足度を高め、顧客ロイヤルティの向上を図る必要がありま
す。
「顧客満足度を高める手法」
・顧客の期待を大きく上回ることをする。
・感動を提供し続けるために、従業員の資質を高める。
・過剰な宣伝を避け、過度な期待を持たないようにする。
「顧客ロイヤリティを向上させる手法」
・消費者と商品を共同開発する。
・消費者と企業が一体となる仕組みをつくる。
顧
客
ロ
イ
ヤ
リ
テ
ィ
(
信
頼
・
愛
着
)
×満足していないが、
○良さを人に伝え、
○心移りも早い。
○継続的に利用する。
高
×不満を人に伝え、
○不満は無いが、
×利用を控える事を勧める。
×他に代替が無いから利用。
・顧客の消費体験を重視する。
・次回以降の利用に使える「ポイント」を顧客に与える。
顧客満足度
69
第 4 章 整備基本計画
2
基本方針に基づく施策・事業
【重点】協働の場の整備と各施設との連携:方針4
動物園における環境教育の普及のため、レクチャールームを設置し、一般市民や外部団体等との協
働の場として活用していきます。また、総合市民会館や福祉センターなどと連携した各種事業の企
画・展開により、協働の場を創出します。
○イベント開催における地域との協働:方針4
毎年初夏に開催される正ノ木祭は、遊亀公園における最大の地域催事となっています。遊亀公園や
附属動物園が有する歴史や文化に関連する催し物を、地域との協働により実施する事で、遊亀公園全
体を市民が誇れる共通の資産としていきます。
【重点】リピーターなどへの集客対策:方針3
動物の生態や命の尊さを学び感じられるような、動物の繁殖や冬の動物園の魅力、スタンプラリー
など、子どもや大人が楽しみながら繰り返し動物園を利用できるよう工夫します。また、観光客の誘
致を併せて行います。
○イベントの充実:方針3
動物の生態をより実感できるよう、夜の動物園を開放して動物探検イベントなどを実施します。動物
園や公園内での芸術・創作活動(写生大会など)を実施するなど、ボランティアや各種団体等と連携し
たイベントを企画・実施します。
【重点】情報発信の強化:方針4
動物園や公園に関する情報提供として、広報・ホームページやブログ、SNS などを活用して、イベ
ント情報や動物の素顔・近況、見頃の草花など「遊亀公園の今」を発信していきます。
3
具体的な取り組みの内容
(1)人・まち・イベントとの協働
【市民団体などとの協働】
動物園は、市民活動や企業の社会活動の場として位置づけ、甲府市が取り組むまちづくり施策を広く
紹介する場としても活用します。また、まちづくりを担う「人と人がふれあうコミュニケーションの拠
点」として動物園を積極的に活用することも考えられます。
例)山梨県内に生息する昆虫などを収集しているグループに、協働の場と発表の場を提供する。
70
第 4 章 整備基本計画
【地域に根付いたお祭りやイベントとの協働】
信玄公の命日に行われるこのお祭りは、武田神社の例大祭と併せ、一般参加者による武田 24 将騎
馬行列が武田神社を出発し市内一円をパレードします。遊亀公園は中継地点として利用されていま
す。また、毎年初夏に開催される正ノ木祭は、遊亀公園における最大の地域催事となっています。
武田 24 将騎馬行列・正ノ木祭り
【回遊性を高める取組みとの協働】
動物園のある地域は、住宅街、飲食店、集客施設等が集積している市内有数の魅力的な地域であ
り、相乗効果や回遊性を高めることが、本園のみならず甲府市のまちづくりにおいても重要です。
舞鶴城や中心市街との活性化のための「街歩きモデルコース」などが作成されていますので、この
ような取り組みとの協働も考えられます。
■歴史物語 こうふモデルコース(甲府城下町コース)
舞鶴城~横近習大神宮~柳町大神宮~金山神社~三の堀~中心街…遊亀公園・附属動物園
71
第 4 章 整備基本計画
(2)動物園の魅力を活かした集客対策
【施設整備と繁殖による集客】
整備計画に基づき施設が順次オープンします。これに合わせて集中的に広報・イベント等を行うこと
により集客増を実現します。また、施設の整備によって動物の繁殖環境が大きく向上しますので、たく
さんの赤ちゃんが生まれ、さらに来園者数が増えるという相乗効果を生み出します。
今後は施設整備により繁殖環境が向上するため、職員はより繁殖技術を磨き繁殖による集客増を図り
ます。
【観光客の誘致:宿泊客】
甲府市内に宿泊しているファミリー層をターゲットとして、宿泊施設と連携して観光客を誘致する
ことも考えられます。本園は、街中にある「都市型動物園」としての立地を活かし観光資源として活
用できる可能性を秘めています。特に、こどもにとって動物にふれあえる楽しい空間(ふれあいゾー
ンなど)は、動物園の規模に関係ないからです。
72
第 4 章 整備基本計画
【教育機関と連携しリピート利用による集客】
教育機関の遠足などによる利用は、その後、家族連れで来園される可能性が高いと考えられます。
このことから、教育プログラムの紹介をしながら、教育機関向けに動物園の利用を促進します。
教育機関(遠足)の利用状況
【冬季魅力を活かした集客対策】
冬季は来園者数が減少します。冬季の開園を積極的にPRするとともに冬季ならではの取り組みを
行い、ソフト事業の質を高めていくことが必要です。また、外出機会の多い夏期に更なる来園者を増
やす取組を行うとともに、冬の動物園の魅力を最大限に活かします。
・冬季に、クイズ形式のオリエンテーリングとレクチャールームを活用した動物園講座の開催
・ハローウィン、クリスマス、バレンタインなどと動物を関連付けたイベントの実施など
クリスマスイベントと年賀状の撮影
73
第 4 章 整備基本計画
(3)イベントの企画・充実
【夜間や早朝の動物園体験の実施】
夜行性の動物は、夜間・早朝に活動が活発になります。この動物の生態を探り知識を深めていただ
くようなイベントの実施を検討します。夜行性の動物の生態観察は野生動物の多様性を伝えることや
集客に繋がると考えられます。実施する際には、動物への影響を考慮しテーマを決めターゲットを絞
る中で、夜行性の動物達の生態を伝えるための解説を充実させます。
【イベントによる新たな来園者の獲得】
近年、インターネットの浸透やスマートフォンの普及などにより、ゲームなどの移動を伴わない余暇
活動が増加しています。このようなことから、普段、動物園を利用しない者には、本園をまず“知って
もらう”
(認知)取り組みが必要なため、ゲームとリアルを融合させたコンテンツの活用を検討します。
グーグル社が提供しているスマートフォン向けアプリ「Ingress」は、世界中に 800 万人以上のユー
ザーがおり、GPS 機能を利用し登録された神社や石仏といった拠点を取り合う陣取りゲームです。登
録されたスポットに 20mまで近づく必要がありますので、こうしたリアルな移動が伴うゲームは地域
における飲食などの観光消費により活性化が期待できるため、岩手県や横須賀市は「Ingress」の活用を
始めています。
仮想
現実
現実
【各種団体と連携したイベントの実施】
動物園や公園内での芸術・創作活動を、ボランティア
や各種団体等と連携して企画・実施します。
こどもたちが、動物を素材に豊かな想像力を育めるよ
う、今後も写生大会などで連携します。
74
第 4 章 整備基本計画
(4)情報発信(プロモーション)の取り組み
【インターネット(SNS)やクロスメディア戦略の活用】
プロモーションの取り組みは、良いイベントやプログラムが開発されていることが大前提です。
また、「旅行者の 48%が SNS を利用し、その内 57%が旅先での旅行体験を SNS で発信してい
る」という調査結果があります。この SNS の大きな情報伝達力を活用し、多様なコミュニティーに対
して、動物園の魅力を発信していきます。
なお、近年の動向として、閲覧者はSNSからホームページへに流入する傾向が増えています。この
ような状況に対応した情報発信の手法も取り入れつつ、効果的な情報発信を行う※クロスメディア戦
略を展開することにより更なる集客増を実現します。
※クロスメディア戦略とは、インターネットを含む様々な広告媒体を通じて、消費者行動の多様化の中で効率的に自
社商品を伝える仕組みのことを指します。
例)テレビからインターネットのホームページへ、クーポン雑誌にあるQRコードから携帯サイトなどへ、広告媒体
をスムーズに移動しながら情報を集めていく「クロス(交差する)手法」を、クロスメディア戦略という。
【メディアに向けた情報発信】
メディアに取り上げられる工夫としては、「新たな取り組み」「新サービス」「リニューアル・マイ
ナーチェンジ」など、情報の発信ネタを計画的に創り出すことが大切です。
【企業と連携した情報発信】
企業と連携した広報活動は、企業の顧客に対して情報発信を行うことができます。また、宣伝広告
費などの削減のメリットも生じることから、積極的に連携を図ります。
【ロゴやキャッチコピーの検討】
遊亀動物園の価値をわかりやすく伝えていくため、動物園のロゴやキャッチコピーについて検討を
行っていきます。
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第 4 章 整備基本計画
(5)満足度調査の実施と改善
【満足度調査と PDSA による事業改善】
来園者に、アンケートによる満足度調査を行い PDSA により事業を改善します。なお、アンケー
トは、大変満足とされた場合がリピーターに繋がるため、このことを踏まえ、施設運用や展示手法、
イベント、集客に向けた取組みなど様々な事業の改善を行い、顧客満足度を高め動物園の活性化を行
います。
また、来園者がどこから、どのような目的で、だれと、いつ来園したのかなどのをデータを積極的
に収集しマーケティングの資料として、今後の活動に活かします。
※PDSAサイクルによる事業の改善と発展
Plan(計画)
従来の実績や将来予測などをもとに計画を作成。
Do(実施)
計画に沿って業務を実施。
Study(学ぶ)
計画に沿っているか確認。深い考察を行い学ぶ。
Act(改善)
実施が計画に沿っていない部分を調べて処置。
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第 4 章 整備基本計画
5 安定した運営体制の構築
持続可能な運営手法と連携
(1)持続可能な運営手法と連携の考え方
“支えられる 動物園をめざして”
人生を価値あるものにする要素として、「仕事・人間関係・経済・身体」の幸福があ
り、「地域社会への貢献」は 4 つの要素上に築かれ互いに関連しています。
このようなことから、市民などに動物園が地域と歩んできたこれまでの 100 年におよ
ぶ歴史的価値や、これからの動物園の存在意義を認識していただき、動物園の活動に理解
を深めていただけるよう周知します。
市民などには、動物園の積極的利用を促進し「みんなの動物園」として愛着を育み、動
物園へ社会貢献しやすい仕組みを整えます。また、企業の CSR 活動は、動物園と企業の
相互にメリットのある可能性を秘めているため積極的に企業連携を図り、企業や市民と動
物園が互いに支えあえるよう運営について支援を募ることや、民間事業者のノウハウを活
用して、公共サービスの充実を図る PPP(パブリックプライベートパートナーシップ)
などの官民連携手法の導入について検討し、持続可能な運営体制を築いていきます。
(2)基本方針に基づく施策・事業
○高い技術をもった職員の育成:方針5
動物園を含めた遊亀公園全体の、利用者の安全性・利便性の確保に配慮します。また、来園者を温
かく迎え、各施設を適正に維持管理できる職員を育成するとともに、希少動物の「種の保存」のため
に高い技術を兼ね備えた職員を育成する中で、運営体制を確立していきます。
○サポーター制度等の創設:方針4
動物園の利用環境や動物の飼育に関して、ボランティアを募集し動物園への興味・関心を高めると
ともに、動物の飼料費や獣舎等の改修費を募るサポーター制度の創設を検討します。
○民間による連携支援:方針5
安定的な財源確保による持続可能な施設運営のために、利用者特典のある年間パスポートの販売や
※ネーミングライツの導入等による民間の資源やノウハウ等を活用することで、施設の魅力を高め地
域の活性化を図ります。
※ネーミングライツとは、市と民間団体等との契約により、市の施設等に愛称等を付与させる代わりに、当
該団体からその対価等を得て、施設の持続可能な運営に資する方法です。 ネーミングライツにより市が得
た対価については、基本的に施設の運営・管理に役立てることにします。
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第 4 章 整備基本計画
○安定的な施設経営:方針5
動物の飼育環境の維持には、専門性の高い職員や特殊な設備経費が必要となります。これらにかか
る費用等については、極力低廉な価格を維持した入園料収入のほかグッズ販売や飲食収入など、幅広
く安定的に収益を上げる手法を確立します。また、官民が連携して公共サービスの提供を行う PPP
(パブリック・プライベート・パートナーシップ)を活用し、効率的かつ効果的な公共サービスの提
供ができるよう積極的に検討します。
○駐車場の有料化の検討:方針5
遊亀公園の利用者のために設けている駐車場は、目的外利用も多く見受けられるため、受益者負担
の原則と収益性の改善を目的に、有料化を検討するとともに、駐車台数を増やすことで利便性の確保
に努めます。
3
具体的な取り組みの内容
(1)関連部署との連携と職員の育成
動物園は、市民の憩いの場であり、社会的な役割である「環境教育」や調査・研究などを実践する
場でもあります。このような多岐にわたる役割に柔軟に対応できるよう、関連部署と連携を図りま
す。また、他の動物園や研究機関との交流や連携を図り、研修会などに積極的に参加し意識改革に取
り組みます。来園者に近い存在である飼育職員については、希少動物の「種の保存」のために高い技
術の習得に心がけるとともに、来園者の数の増加や動物園の活性化のため、動物ガイドなどを継続的
にトライ&エラーを繰り返しながら改善を重ね動物園の魅力向上を図ります。
(2)民間活力の導入
【動物園整備基金の創設の検討】
動物園の施設の更新や動物の導入は、持続可能な動物園とするために必要不可欠です。遊亀公園付
属動物園の価値、魅力、取り組みの周知を図り、施設の更新や動物の導入に当てるよう、動物園整備
基金の創設を検討します。また、企業からの協賛や寄附については、本園に多くの来園者があり、企
業の広報活動の場としても有効であることを示し、施設の運営・管理に役立てることにします。
【サポーター制度の創設とボランティアの活用】
動物の飼料費や獣舎等の改修費を募るサポーター制度の創設を検討します。
また、ボランティアとして、イベントやガイド、ふれあい、公園の清掃などの活動に広く関わって
いただけるよう受入態勢を整え、市民参加を募ります。このように市民の参画を得ることは、動物園
の活動に理解を深めていただくとともに、ロイヤリティ(信頼・愛着)の向上にも繋がります。
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第 4 章 整備基本計画
【ロイヤリティ使用料の活用】
民間事業者等が、商標登録したロゴをグッズに使用して販売する場合は、ロイヤリティ使用料を徴
収し施設の更新や動物購入に当てるよう検討していきます。
【官民連携事業の検討】
利用者に対して質の高い公共サービスが、どの程度低コストでどのように提供できるか、先進事例
等を調査する中で、本園での事業手法について検討し PPP(パブリック・プライベート・パートナー
シップ:公民連携、PFI、指定管理者制度、市場化テスト、公設民営(DBO)方式、包括的民間委
託、自治体業務のアウトソーシング等)の活用について模索します。
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