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東京工科大学特別講義 「テレビドラマと時代考証」 NHK ドラマ番組部 シニア・ディレクター 大森洋平 Ⅰ 「時代考証」という仕事とは?大河ドラマを例にすると… ① のっけからクイズです。 いかにも伝統的な日本の野菜みたいですが、絶対に時代劇に出してはいけないもの は何でしょう? ② さて、時代考証とは、そもそも何であるか? ③ NHK 大河ドラマ「軍師官兵衛」制作と考証作業の概要。 ④ そういう作業における、NHK マンたる私の役割 ~医者と救急隊員?~ ⑤ さらにクイズです。 織田信長の部屋においていけない小道具はどれ?「地球儀」「望遠鏡」「オウム」 「細部に神は宿る」細かいことをおろそかにしてはいけない。 ⑥ これまたクイズです。「時代劇で使うべきでない言葉」とは? 次の三つの内時代劇で使ってはならない言葉はどれ?「がめつい」「面子」「牛耳る」 ⑦ ここまで話すとおわかりでしょうが、今重要なのは「言語考証」 : ハードよりソフトの 考証が問題になっている。 ・古文書だけ読めても駄目。その時代の言葉を再現してもさらに駄目。 そのためには何が大事か?「時代らしく」言い換える工夫。 ・方言をどう扱うか? あまり凝りすぎると却って拒否反応が出る。 ・「軍師官兵衛」では、切支丹言葉の問題。「洗礼」「教会」「十字架」等は無かった! ⑧ 即興コーナー 会場のリクエストに応じて、現代語を時代劇台詞にすぐ翻訳します。 われと思わん方は、何でもどうぞ! Ⅱ「考証は時代劇のみにあらず」 ⑨ さて、考証は時代劇だけだと思ったら大間違いです。明治~戦前劇の考証も大切。とく に戦争中の描写。それから、昭和 30 年代も、もはや時代考証の対象となっている。 取材調査のポイントは「当事者に聞く」、今が最後のチャンス。そして 30 年代以降は、 同時代人としての自分の記憶も大事。 ⑩ 時代考証はドキュメンタリーにも有効です。一方で得た知識が他方に役立つ。 ドキュメンタリー考証の要諦 映像解析の問題 Ⅲ「結局時代考証において一番大切なこととは?」 ⑪ 時代考証の極意とは?「○○○○○○を○○○○こと」。ひらがなを入れましょう。 ⑫ 時代劇は歴史の再現にあらず。 ・溝口健二の「元禄忠臣蔵」か?オールスター「赤穂浪士」か? ・歴史的に正しい「水戸黄門」では時代劇にならない。 ・大河ドラマは決して「正しい歴史」ではない。あくまで歴史に仮託したファンタジー です。 ⑬ 時代考証の現状、民放と映画。歴史ブームで困ってしまうこと。 真山青果の「将軍江戸を去る」のト書き。 「知っていて崩す」その選択肢を豊かにするのが時代考証です。 「百も承知でやりました」 が大切。 Ⅳ「これから」 ⑭ 「大河ドラマ、時代劇全体はどうなるのか?」 クリント・イーストウッドの話。NHK の取り組み。皆さんのおかげです! ⑮ 時 代 考 証 自 体 は 、 メ デ ィ ア が い か に 進 化 し よ う と 不 滅 で あ る 、 ということです。 これは時代劇に限ったことではありません。 ⑯ おすすめの「読んで面白く、ためになる時代考証参考書」 お帰りに本屋さんでどうぞ。 1.「日本の歴史 第 5 巻 王朝の貴族」 土田直鎮著 中公文庫 平安貴族の生活・文化・政治・宗教その他一切、これ一冊あれば OK。「源氏物語」 が楽しく読めるようになります。 2.「ヨーロッパ文化と日本文化」 ルイス・フロイス著 岩波文庫 南蛮宣教師の戦国時代観察記。「 我 々 は 馬 で 戦 う が 、 日 本 人 は 戦 う 時 、 馬 か ら 降 り る 」「 我 々 は 、 魚 の 腐 っ た 臓 物 を 忌 避 す る が 、 日 本 人 は 珍 重 す る 」 変な話 満載。 3.「絵解き・戦国武士の合戦心得」「絵解き・雑兵足軽たちの戦い」全 2 冊 東郷隆 講談社文庫 戦国時代の合戦の実像を正確な考証とリアルなイラスト (上田信:田宮模型ボックスアートで有名、ミリタリー・イラストレーションの第 一人者)で再現。陣中の食料、怪我の治療法、陣中トイレのやり方までわかる! 4.「武家の女性」 山川菊栄著 岩波文庫 幕末の武家の女性たちのたたずまいがよくわかる。来年の大河「花燃ゆ」での下 級武士一家の日常生活描写の参考資料になった。(江戸時代考証の本はあまりに沢 山なので省略。) 5.「兵隊たちの陸軍史」 伊藤桂一著 新潮文庫 昭和ドラマ考証の必読書。陸軍の兵士たちの実態を、一兵卒として生還した「戦 場小説」の名手が公平穏健に解説した。陸軍という集団の成り立ち、時代とのか かわりが、戦後育ちにもよくわかる。姉妹編「若き世代に語る日中戦争」(文春新 書)も好著です。 6.「祖父たちの零戦」 神立尚紀著 講談社文庫 上に同じく、名戦闘機「零戦」を軸にして、太平洋戦争史、海軍という集団の興亡 が、綿密な取材により手に取るようにわかる。「零戦・零式艦上戦闘機」という名前 を国民が知ったのはいつだったか?意外な真実も明らかになる。同著者の「特攻の 真意」(文春文庫)もノンフィクション叙述のお手本たる名作です。 ※拙著「考証要集」文春文庫もどうかよろしく! ⑰ 質疑応答 おすすめ映画リスト、その他役に立つか立たないかわからん資料群は、佐々木教授にメー ルで送っておきますので後日頂いて下さい。