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ナイトビジョン双眼鏡

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ナイトビジョン双眼鏡
2-2
日食の様々な観測方法
2-2-1
明るさや気温の変化
日食がはじまると、太陽から来る光は月にさえぎられて光量が減少します。その結果、気温が下が
ります。そのゆっくりした変化は人にはわかりにくく、その体感表現も人によってまちまちです。日
食中の照度や気温の時間変化を測定してみましょう。これらの観測は、食の間中ずっと行うことにな
りますので、できれば自動で行えるように工夫してください(データロガー機器が最適です )。
いずれの観測方法も、事前に予備観測を行ってください。観測日の直近の日に、同じ場所(緯度)で
同じ時間帯に、実際に観測に使用する装置で、観測の予行を行ってください。なお、予備観測のデー
タは、観測データの比較・補正に使用できます。
(1)気温の測定
気温と直射温度の時間変化を測定し、両者の違いや食分および照度と比較してみましょう。
① 気温の測定
次の条件下で温度計を設置し、気温変化を記録します。
ア 直射を避ける箱内(※)または日陰で
イ 地上高1.2〜2mにつるす(百葉箱と同様の環境)
※ 白色の段ボール箱にスリットをあけて風が通るようにします。
段ボール箱の底の部分は開放しておく(ただし、アスファルト上の場合は閉じる)
② 直射温度の測定
ア 直射日光が当たる場所で
イ 地上高1.2〜2mにつるす
(2)照度の測定
太陽電池による方法と照度計による方法を紹介します。
太陽電池パネルの出力特性はリニアでなく、高度角の影響
も大きいため、他と比較するには装置や実験データの解析
に工夫が必要です。フォトダイオードを使っている照度計
は出力はリニアですので、値の比較が可能です。両方同時
に 測定 する のもお勧 めです 。でき れば同 時に( 1)「気 温の
測定」も行うとよいでしょう。
① 装置のセッティング( 図1 )
計測機器(太陽電池パネル・照度計)の受光部は、太陽
に対して正対させて追尾します。赤道儀などに同架し、
受光面を鏡筒の軸方向に垂直・鉛直にセットしてくださ
い。計測機器は地上から離して設置してください。
図1 測定機器の設置図
② 太陽電池による方法
[準備するもの]
・太 陽電池 (単結晶 タイ プの もの、 数ボル トの出力 が得
られるものが望ましい)
・テスター
・温度計
[事前観測]
観測日の直近の日に 、同じ場所(緯度)で同じ時間帯に 、
観測に使用する装置で、観測の予行を行ってください。
このデータは、観測データの補正に使用できます。
[観測方法]
太陽 電池 にテス ター を接続 します( 図2)。太陽 電池
には極性があるので、テスター端子もそれにあわせてく
図2 接続図
ださ い。テ スター の測定 レンジ を電圧(V)にして、 気温
とともに出力電圧(V)を測定します。もし出力がマイナスだったら、接続が逆です。測定は一定
時間ごとに行います。測定は食の予定開始前から終了後まで行ってください。観測中に状況の変
化(雲の通過やテスターのレンジ切り替え)があった時には、その時刻を記録します。
[注意と補足]
・使用する太陽電池と食分の組み合せによっては、減光の検出が困難な場合もあります。
・装置の工夫をしてみましょう。太陽電池はその特性の最適動作点で使用すると、出力の変化が
顕著です(図3 )。使用する太陽電池の特性がわかる場合には、最適動作点の電圧・電流値に
なるような値の負荷抵抗を太陽電池につなぎ、抵抗の両端の電圧値を測ってください。
・太陽電池は、その温度によって出力特性が変化します(図4 )。予備観測および観測時の気温
(できれば太陽電池本体の温度)を測定しておくと、補正する資料となります。
図3 太陽電池の出力特性
図4 太陽電池の温度特性
③ 照度計による方法
[準備するもの]
照度計は、素子にフォトダイオードを使用しているものを使用します(光電池素子は不可)。測
定レンジが15万Lux以上のものが必要です。レンジが狭いものを使用する場合は、フィルターで
減光する必要があります。この場合、ノーフィルターでいきなり太陽光にさらさないよう気をつ
けてください。
[注意と補足]
夏季の屋外での直射日光は 10 万 Lux 以上になります。直射日光を直接照度計に当てた場合、
測定レンジを超えて振り切れ、故障の原因になります。予め測定レンジを確認してください。
測定レンジが 10 万 Lux 以下の場合は、減光フィルターなどで、測定部分を覆って減光するな
どの工夫をしてください。なお、照度計は 550nm をピークとする可視光域を測定することにな
っていますので、フィルターは ND フィルターなどのニュートラルなものが適しています。
フィルターが準備できない場合は、壁や地面等に照度計を向けて測定を行なってください。
(3)発電用太陽電池パネルの出力変化
最近は、太陽光発電を利用する家庭が増えてきています。学校に設置してあるところもあるので
はないでしょうか。この巨大な太陽電池パネルを利用して、食分との比較をしてみましょう。
太陽光発電を行っている家庭や施設で、発電量が確認できるモニターを備えている場合、このモ
ニター上のデータを記録して、食分との関係が検出できるか挑戦してみましょう。なお、この時、
太陽電池パネルの設置されている場所と方角、傾斜角度なども確認しておきましょう。果たして、
日食は発電量に影響を与えるのでしょうか?
(4)体感と食分の比較
体験した食分が 、生活の中で感じる太陽の日差しのどんな時に相当したか 、調べてみてください 。
他の日に、いくつかの定点時刻を決めて同じ装置で照度を測定します。定点には、日出から日没
までのいくつかの時刻の他、自分たちが太陽光の明るさ(日差し)の変化を実感できる瞬間を選びま
す。例えば、日没前30分後や、春分・夏至・秋分・冬至の南中時はどうでしょうか。太陽が出てい
ない時刻帯を選んだ時は、天頂を観測場所にします。
(5)観測結果の検討と報告
観測結果を次の点について検討してみましょう。
①気温について、当日の値と予備実験との比較
②太陽電池や照度計の値について、当日の値と予備実験との比較
③太陽電池や照度計の値と気温の比較
④太陽電池と照度計の比較
観測と結果の検討を行なったら、観測項目と結果をデータシートで報告してください。観測デー
タ自体の提出は必要ありません。
【参照】
太陽電池による計測については、国立天文台ひので科学プロジェクトと PAONET ひのでデータ
活用ワーキンググループが発行した DVD を参考にさせていただきました。
2-2-2 日食の電波観測
はじめに
2009年7月22日の日食が待ち遠しいですね。でも、曇ってしまった
らどうしますか?そんな時でも観測できるのが電波による観測です。
雨が降るような天気だと無理ですが、薄曇りの空なら太陽が欠けて
いく様子を電波の強さとして見ることができます。
(1)観測できるもの
① 太陽の欠け具合(食分)の変化
電波観測装置では、太陽全体からやって来る電波強度を観測で
きます。太陽が月に隠されると、その部分の電波は地球へ届かな
いので、食分の変化を電波強度から測ることができます(図1)
。
② 黒点上空で電波を発生するコロナの場所、大きさ
電波観測装置では太陽全体からの電波強度が測れますが、太陽
面の細かな電波強度の様子は測れません。しかし、活発な黒点が
図1 部分日食による太陽電波強度変化。この日
現れて、その黒点を月が隠すと、電波強度に変化が現れることに
は曇っていて光では観測できなかった。詳細は、
なります。例えば、太陽全体の100分の1の強度を持つ活動領域が
http://www.nhao.go.jp/~tokimasa/12GHzRadio/ec
あると、45型のアンテナを使用すれば、日食によってそれを検知
lips.htmlをご覧ください。
できそうです(図2)
。詳細は後述のチェックをご覧ください。
(2)部分日食電波観測に必要な機材
観測に必要な機材は、2008年のAstro-HS観測ガイドブックで詳
しく紹介しています。また次のホームページにも紹介があります。
http://www.nhao.go.jp/~tokimasa/12GHzRadio/12g.html
昨年、紹介した方法では、検波器という電波の強さを電圧に変
える装置を自作する方法を紹介しましたが、以下の検波器などは
購入する事ができます。
・アジレント社 8471D http://www.home.agilent.com/agilent/pro
duct.jspx?pn=8471D&NEWCCLC=JPjpn
・エレクトロデザイン社 RFD-1500 電話:04-7123-9513 3万円程度
<あると便利なもの>
○AD変換器、パソコン
AD変換器は電圧値をデジタル化する機器です。簡単なものに 図2 野辺山太陽電波観測所で観測された2002年6
は、テスターとパソコンを接続し、自動記録が可能な機器が販 月11日の部分日食。月が太陽の活動領域の電波源
売されています。例えば以下のような製品があります。
を隠すと、強度の減少が観測できる可能性がある。
・デジタルマルチメーター SANWA PC20 :1万円程度
・光リンク PC接続用(USB用)
: 6千円程度
・接続用ソフト SANWA PC-Link : 4 千円程度
・電波吸収体 ECE&C CV-3( 30 × 30cm):5千円程度
これらは、上記のエレクトロデザイン社でも入手可能です。
○太陽を追尾できる望遠鏡架台、アンテナ取付金具
手動で追尾しても観測は可能ですが、より安定した良いデー
タを得ようとすると、アンテナを赤道儀式架台に搭載するとよ
いでしょう。
(3)部分日食の様子を計る方法
太陽全体からやって来る電波は、月に太陽が隠されると電波の
図3 BSアンテナ電波望遠鏡の構成
強度が弱くなります(図1)
。その観測方法を紹介します。
①BSアンテナ電波望遠鏡を組み立てます。
②アンテナを太陽に向けます。太陽に向けるには、5センチ角のセロハンテープを3カ所ほどに貼って、そ
れに反射した光が受信部へ集まるところを探すとよいでしょう(図4)。曇っていれば、太陽の方向に向けて、
最も電波強度の強いところを探します。天の赤道付近には、電波を放つ人工衛星がいくつもありますので、
間違えないよう気をつけます。
③太陽の電波強度と時間をメモしたり、パソコンで計測したりして記録を残します。
④時間をおいて②と③の記録を続けます。
(4)活動領域のコロナを検出するために必要なチェック
使用している電波望遠鏡で、(1)の②「黒点上空で電波を発生するコ
ロナの場所、大きさ」の観測が可能かどうかをチェックしておく必要
があります。まず、天頂付近の空の電波強度を約50回測定します。次
に太陽の強度も約50回測定します。天頂付近の空のレベル約50点の平
均値(Vsky)はほぼ機器のノイズによる強度ですので、太陽のレベルの
平均値(Vsun)から差し引いた電圧値が太陽によるものとなります。一
方で太陽のレベルのふらつき(誤差)は、太陽のレベル50回の標準偏差
(σsun)で得られます(図5)
。
用いる電波望遠鏡で検知可能な信号をσsunの3倍として、その値が
図 4:太陽光が集っている様子
太陽のレベルと比べどの程度(Rtel)なのかを調べます。
Rtel = (Vsun - Vsky) / 3σsun
次に観測する前日の野辺山電波ヘリオグラフの右偏波のFITSデータ
http://solar/nro.nao.ac.jp/norh/images/より入手し、活動領域があ
れば画像処理ソフトマカリで、その活動領域の強度 (Tact)が太陽全
面の強度(Ttotal)に対しどの程度の強度なのか(Rsun)を調べます(図
6)。Rsun = Ttotal / Tact
RtelとRsunを比べ、Rtel > Rsunであれば、その活動領域は用いる
電波望遠鏡で検出可能と判断できます。
表は、アンテナと検波器を組み合わせてRtelを計測した例です。
図5:用いる観測装置のノイズレベル
その結果、45型以上の大きさのアンテナに、自作の検波器と市販30
dBのブースターを用いるか、RFD1500でゲインを下げて使用すると、
太陽全体の強度の100分の1程度の強度を持つ活動領域が現れた場合に、
日食によってそれを検出することが可能であると思われます。
(5)活動領域が隠されたり現れたりするのを捉える
この観測には太陽を追尾できる台にアンテナを乗せて、安定して太陽
電波強度を計測できる機材が必要です。
①使用する電波望遠鏡で観測可能な活動領域があるか確かめます。
②アンテナを太陽に向けます。
③太陽を自動追尾させます。
(適宜位置補正は行います。
)
④日食の一部始終を観測し電波強度と時間を記録します。
観測後に、太陽全体からの電波強度の時間変化をグラフにしてみまし
ょう。活動領域が月に隠されたり現れたりする時間に、全体の強度変化
図6 野辺山太陽電波観測所ヘリオグラ
以外の急な強度変化がグラフに見られたら、観測に成功した可能性が高
フによる2002年6月11日の太陽像
いといえます。観測に成功したら、その領域のコロナの温度や大きさを
推測できます。解
析方法などについ
ては、西はりま天
文台の時政までご
連絡ください。
(6)皆既日食でコ
ロナの電波を観
表 : 1行2〜7列の始めの数字はアンテナの大きさ。次がRFDの時は検波器にRFD1500を使用
測する
皆既日食帯へ出 した場合、Mcvの時は自作検波器と30dBのブースターを用いた場合。最後にMがつくものは
RFD1500のゲインを最大にした場合。例:45-RFD_Mは45センチのアンテナにRFD1500を使用
かけて電波観測を
しゲインを最大にして計測。
すると、完全に太
陽が月に隠される電波強度変化の様子を観測できます。皆既中の太陽付近から観測される電波強度は、太陽
周囲のコロナから放射される電波と、月から放射される電波を足し合わせたものとなります。電波観測では、
皆既の中心時刻付近でいったんアンテナの方向を太陽から5度以上外し、空のレベルを計っておきましょう。
この観測は精密な観測が必要ですので、なるべく大きな45型くらいのアンテナを使う方がよいでしょう。こ
の観測も成功しましたら、解析方法についてはお問い合わせください。
参考文献:
「天文教育」2009年5月号p7 天文教育普及研究会
2-2-3
皆既日食の観測
(1)皆既日食観測成功の秘けつ
どんな熟練した日食ハンターでも、皆既前は緊張するといいます。皆既直前になると、あたりは
ぐんぐんと暗くなり、あちこちで歓声が上がると、失敗してはいけないという緊張感も相まって、
思考能力はかなり低下するのです。
そんな中でも観測を成功に導くための、いくつかのこつがあります。
①
タイムテーブルとリハーサル
その場で誰が何をやるかなど、
考える余裕も決める余裕もありま
せん。あらかじめ、個々の役割毎
に、何時何分何秒になったら何を
するのかわかるように、 図1 のよう
なタイムテーブル(観測のシナリ
オ)をつくっておき、それをもと
に何度もリハーサルをする必要が
あります。特に前日や前々日の同
時刻に、観測場所でリハーサルを
しておくことは必須です。それを
もとに、本番の観測計画の細かい
修正を行います。また、タイムキ
ーパーやコマンダー(指令を出す
人)の担当者を決めておくのもい
いですね。
②
皆既中の観測は欲張らない
皆既になるほんの数分間をフル
に使って観測するプランを立てる
のは、危険です。初めての想像を
絶するような経験のなかでは、な
かなか思うように手も頭も動きま
せん。皆既中の観測は、できるだ
け皆既時間の半分の時間で終わり
になるような計画を立て、余った
時間は、コロナやダイアモンドリ
ングの眼視による観察にあてまし
ょう。
③
コロナの明るさは満月程度
コロナのテスト観測をしようと
しても 、そんな機会はありません 。 図1 観測タイムテーブルの例(1998年カリブ海日食)
しかし、コロナの明るさは満月程
※写真とビデオで同時観測
度であることが知られていますの
で、満月で練習することができます。これから日食当日までに何回満月が見られるか計画を立てな
がら、練習しましょう。また、部分食の時、あたりは普段の日中とそれほど変わりのない状況です
が、皆既直前から急に暗くなりますので、ファインダーやモニターで天体の写り具合やピントを確
認しながら撮影するのは至難です。できるだけ直射日光を見ない工夫も必要ですし、あらかじめシ
ャッタースピードや絞り(明るさ補正)をどれほどにすべきか確認しておきましょう。
④
太陽のビデオ観測をしなくてもビデオカメラで録画する
気づいたことや記録したいことを紙に書いている余裕はありません。また、覚えていようにも頭
の中は真っ白です。そこで役立つのはビデオカメラです。遅くとも皆既になる 15 分前から皆既終
了後しばらくまでを連続してビデオに収めておくと、いつ何時何が起こったのかを声の記録として
残しておくことができます。したがって、何でも声に出して表現することが大事です、もちろん感
動の一言も。また、せっかくビデオを回すのですから、地面にむけて設置しシャドウバンドの観測
用にするというのも手です。
⑤
天気は変わりやすいと考えてよい
今回の皆既日食が見られる場所は、普段でもスコールのような雨が降りやすいところです。それ
に加え、日食中は太陽の日射が急に減るのですから、局部的な気象に影響を及ぼす可能性が大きい
と考えても不思議ではありません。皆既直前になって、晴れ上がった空から突然に雨が落ちる(天
気雨)ことも、突風が起こることも考えられます。そのようなときにどのような行動をとるべきか
を、あらかじめ考えておきましょう。
⑥
皆既になるまで裸眼で太陽を見ない
皆既になるまでは、絶対に裸眼で太陽を見てはいけません。特に皆既直前は気をつけましょう。
これは、太陽光から目を守ると言うだけではなく、皆既前に太陽を見ることにより、目がくらんで
しまうことを避けるためです。せっかくコロナを裸眼で見るチャンスです。コロナは内部と外部で
は明るさが大きく異なりますから、コロナの広がりや微細な形状を知るのには裸眼が最も有効であ
り、そのために目を暗順応させておくことが必要なのです。コロナの姿はスケッチブックに記録し
ましょう 。また 、ダイヤモンドリングの観察は 、第 3 接触( 皆既終了時 )までとっておきましょう 。
⑦
持って行くといいと思われるもの
皆既日食に持って行くといいものをまとめてみました。
ア)緯度、経度、偏角データ(あるいは、GPSレシーバー)
観測地にはじめていく人も多いはず 。観測地の緯度 、経度 、地磁気の偏角の値を知っておくと 、
日中に赤道儀をセッティングする場合でも、大まかに極軸の方向を知ることができます。皆既中
だけの望遠鏡観測なら、これで十分。部分食がはじまってから最後までとなると、望遠鏡の視野
の中の太陽のずれを利用した微調整が必要です。
前日あるいは前日夜に晴れていれば、あらかじめ極軸をあわせておき、地面の三脚の位置にマ
ークをしておくと、当日の極軸あわせが楽になります。
イ)クリノメーター
日中に北の方角を知るために使います。正確に北の方角を知るには、地磁気の偏角のデータが
必須です。また、赤道儀の極軸の高度を決めるのにはクリノメーターの傾斜計が有効なことも多
く、単なる方位磁針よりおすすめです。
ウ)惑星及び主な恒星のファインディングチャート
皆既になる数分前から、明るい惑星や恒星が見え出します。あらかじめファインディングチャ
ート(太陽と主な恒星や惑星の位置を示した星図)でどこに何が見えるか知っておくと、皆既中
の太陽から目をそらす時間が少なくなります。
エ)懐中電灯
皆既中はあたりがだいぶ暗くなります。シャッターボタンを押すにも手元がはっきり見えませ
んから、懐中電灯で照らしてもらう必要があります。
オ)スケッチブック
コロナの記録用です。一人で書いただけでは十分な情報量とならないかもしれませんが、たく
さんの人が書いたものを比較することで、すばらしいコロナ観測の記録となります。皆既中はコ
ロナの姿を目に焼き付け、実際に描くのは皆既終了直後でも十分間に合います。
また、スケッチブックに直径5mmほどの穴を好きな形に並べて開けたものをつくると、部分食
の時に、三日月型の太陽の木漏れ日を投影するピンホールカメラになります。
さらには、カメラを太陽の方向に向けていると、カメラのファインダーやモニターが見えにく
いことも多くあります。そんなときには、とっさに紙工作で日よけをつくることもできます。
カ)大型ビニール袋(ゴミ袋)
スコールのような突然の雨でも、すっぽりとかぶせることで、雨から機材を守ることができま
す。降雨 5 分後に皆既になるということも考えられますので、機材を撤収することなく雨から守
る手だてが必要なのです。そのためには、大型のゴミ袋がいちばん適しています。望遠鏡が赤道
儀ごとすっぽりはいるものがいいですね。
キ)弱粘ガムテープ、両面テープ、ビニール袋、カッター、はさみ、ひも
何かと便利です。ビニール袋に砂を詰めて封をして「おもし」をつくることもできます。この
おもしは、赤道儀のバランスウェイトの代わりにもなりますし、風によって三脚が動いてしまわ
ないように固定するのにも有効です。とっさに使いたくなりますので、いつでも手元に持ってい
ましょう。
ケ)かさ
突然の雨にも使えますが、もっぱら直射日光から機材や目を守るために有効です。
(2)皆既日食時のさまざまな現象
皆既日食を追い求めて世界中を飛びまわる人たちがいます。そういった人たちを「日食ハンター」
とか「 日食病にかかった人々 」というようです 。
「 一度は皆既日食を見てみたい 」と思って出かけて 、
実際に皆既日食を見てしまうと 、「もう一度よく見たい」と思ってしまうのでしょう。
これは皆既日食がほんの数分程度の現象であるため、終わった後で夢でも見ていたように思えて現
実感がないことや、あまりにも急激にいろんな現象が起きるので、見損なった(体験し損なった)と
思うことが多くあり、もう一度見たくなるのでしょう。また、カメラやビデオで記録しても実物とは
かけ離れているので、また実物を見たくなるということもあります。
日食時に起きる現象はさまざまで、中には目で見るだけでなく、体で感じたり、耳で聞いたりと五
感をとぎすませる必要があります。すべての現象を感じ取ることは難しいですが、何が起きるのかを
把握してから出かけた方が、後悔は少ないと思います。ここでは、次の現象について紹介します。
① 明るさの変化
② 気温の変化
③ 動物の行動の変化
④ シャドウバンド
⑤ ベイリービーズ
⑥ ダイヤモンドリング
⑦ 彩層
⑧ プロミネンス
⑨ コロナ
⑩ 本影錐
⑪ 日食焼け
⑫ 惑星や一等星
⑬ 皆既中の地球照
■第1~第2接触・第3~第4接触に見られる現象
第1接触、つまり太陽の欠け始めに気付く
ことは難しいです 。望遠鏡で拡大して見ても 、
端の方が平らになってきたことでわかります
が、いつ始まったのかはよくわかりません。
欠け始め(第1接触)から皆既の始まり(第
2接触)までの時間は、奄美大島で観測した
図1 日食の進行状況
場合で約1時間20分。太陽が月に覆われて
いく間にはどのような現象が体感できるのでしょうか。
① 明るさの変化
太陽はあまりにもまぶしく、かつ人間の目には虹彩による絞りがついていて光を調節でき、さら
に明るさの変化がゆっくりであるため 、最初のうちは明るさが変わってもよくわからないでしょう 。
食分が 0.6 を超える(太陽の面積が約 50 %になる)と、さすがにだんだん暗くなっていることが
わかり、食分が 0.8 を超えると夕方のようになってきます。ただし、夕焼けや朝焼けのように赤い
光ではなく、あたりは青一色で染まったように見えてきます。これは青空の光だけで照らされるよ
うになることと、暗いところでは人間の目が赤に感じにくくなるためだと考えられます。
第2接触が近づくと急速に暗くなり、あたりは日没後や夜明けのような明るさになり、太陽の近
第2接触が近づくと急速に暗くなり、あたりは日没後や夜明けのような明るさになり、太陽の近
くの惑星たちが明るさを増します。
くの惑星たちが明るさを増します。
② 気温の変化
日食が起きるのは7月ですから、奄美大島では晴れて
いれば真夏の太陽が強い日差しで照りつけるはずです。
しかし、月によって隠された太陽は徐々に面積を失うた
め、やってくる熱や光が普段より少なくなるために気温
が低下します。過去の観測結果によれば、皆既の時の気
温の低下は、日食がないときに比べ5℃程度低くなるよ
うです。 図2 は 1991 年7月 11 日メキシコでの温度変化
(地表温度)のようすです。皆既中は温度を読むことが
できませんでした。
※明るさと気温の変化については、この後の項目で観
測方法とともに詳しく解説します。
図2 メキシコ日食の気温変化
③ 動物の行動の変化
日食の際にはあたりが暗くなって夕方のようになるため、動物たちは夕方だと勘違いするためか
行動に変化が現れます。例えば、食が進んで暗くなってくると、ニワトリが鳴いたり、鳥が巣に帰
ろうとして一斉に飛び立ったりします。またセミが鳴きやみ、明るくなると再び鳴き出します。夜
行性の動物については皆既になると、犬が遠吠えしたり、カエルやコオロギたちが鳴き出すという
こともあるようです。皆既のときには、目だけでなく、耳も使って感じましょう。
■第2接触と第3接触に見られる現象
第2接触と第3接触のときには劇的な変化が起きます。そのとき空全体を見ていると鳥肌が立つく
らいの急激な変化です。このときの現象をまとめてみましょう。
④ シャドウバンド
第2接触の1~2分前から第2接触までと、第3接触からその1~2分後までのわずかな時間、
太陽が細い線のようになっているときに、地表面をざわざわと淡いさざ波のような縞模様が流れる
ように動くのが見られます。これがシャドウバンドです。細くなった太陽が大気のゆらぎを地表に
投影してできると考えられますが、未だ科学的な証明はされていません。
※このシャドウバンドの観測については、この後の項目で観測方法とともに詳しく解説します。
⑤ ベイリービーズと⑥ダイヤモンドリング
第2接触の直前や第3接触直後には 、
細 く な っ た 太 陽が 月 縁 の 地 形 の 凸 凹に
よ っ て ぶ つ ぶ つに 切 ら れ 、 太 陽 の 光が
ビ ー ズ の よ う にな る 現 象 「 ベ イ リ ービ
ーズ( ベイリーズビーズともいう )」
(図
3 ) が 見 ら れ ます 。 こ の ビ ー ズ が 徐々
に 小 さ く な っ て数 が 減 り 、 最 後 に 残っ
た 光 球 の 光 と 月の 周 り に 見 え 始 め る内
部 コ ロ ナ の リ ング を 併 せ た も の が 「ダ
イ ヤ モ ン ド リ ング 」 で す ( 表 紙 の 画像
参 照 )。 第 3 接 触 時 に は 逆 に ダ イ ヤ モ
図3 ベイリービーズ
ン ド リ ン グ が 現れ て か ら ベ イ リ ー ビー
ズが見られます。
※ 第2接触時にダイヤモンドリングを注視し過ぎると、その後の淡いコロナの明るさに順応しき
れません。ダイヤモンドリングはコロナを見た後の第3接触時に観察することをおすすめします。
⑦ 彩層
第2接触直時に光球の最後の光が隠れたその瞬間、そこには月からはみ出たピンク色の光の層が
見えます。これは太陽の大気層である彩層で、水素の出すHα線で輝いています。厚さがわずかで
あるため、数秒ですぐに月の裏側に隠れて見えなくなってしまいます。望遠鏡でよく見るとガスの
炎が並んだようなスピキュールという構造が見えます。第3接触時には月の逆側からじわじわと出
てきます。望遠鏡で見るのであれば、やがて光球が出てきますので注意しましょう。第2接触時の
方が安全に観察できます。
⑧ プロミネンス
彩層の上に浮かぶプロミネンス(紅炎)は、大きなものならば第2接触が終わって皆既にはいっ
ても、月からはみ出してピンクに輝くため、双眼鏡を使えばよく見えます。小さなものは月に隠さ
れて見えなくなっていますが、プロミネンスはヘルメットストリーマーの基部に存在することが多
いことを利用すれば、皆既終了直前(第3接触直前)に第3接触が起きるところにあるヘルメット
ストリーマの基部を双眼鏡や望遠鏡で注目して見つけることができるかも知れません。ただし、や
がて訪れる第3接触時の強烈な光には十分注意してください。
■皆既中(第2接触~第3接触)に見られる現象
第2接触から第3接触、太陽が完全に月に隠され皆既となります。その時、太陽が見せる幻想的な
その姿を人々はどんな気持ちで眺めるのでしょうか。皆既中の太陽をしっかり観察するためにも皆既
中の諸現象をしっかり予習して、イメージを膨らませておきましょう。
⑨ コロナ
皆既の最大のイベントは真珠色に見えるコロナでしょう。光球面に比べて 100 万分の1の明るさ
しかないコロナは、皆既日食以外では特殊な観測装置を使うか宇宙に出なければ見ることができま
せん。また、太陽の表面温度が 6000 度であるのに対し、コロナは 200 万度もあり、熱源から離れ
ているのになぜこのような高温になるのかというこの問題は「コロナ加熱問題」と呼ばれ、 専門
家を長年悩ませ続けています。神秘的な淡いベールのように見えるコロナ、そして今なお謎の多い
コロナについて紹介します。
ア)コロナの形状
コロナには流線が見られま
すが、これは太陽のまわりの
空間に広がる磁力線の形を反
映しています。コロナの部分
は太陽の大気の最外層部分に
あたり、そこには自由電子が
存在していて、それが磁力線
に沿って分布して光を散乱し
ているためにこのように見え
るわけです。あたかも棒磁石
図4 極小期(1995タイ)
図5 極大期( 2001ジンバブエ )
の周りにできる磁力線のよう
に極の部分から線が流れ出し、赤道部分はループ
状に閉じたように見えますが、この極の部分と実
際の太陽の北極とは必ずしも一致しません。
太陽活動の極大期には、多くの黒点が出て磁力
線が宇宙に広がるために太陽を取り巻くように丸
いコロナが見られ、活動の極小期にはコロナはあ
る方向にのみ広がった形になるとよく言われてい
ます 。図4 ,5 の画像からは確かにそう見えます 。
ただ、コロナは平面にあるわけではなく、太陽
図6 極小期(左)と極大期(右)
全体と立体的にとりまいていることを考えると、
ストリーマーが広がっているのが磁気中性面であるとすれば、極
小期にはその面が水平方向になっていて地球からは平らに見える
ためにストリーマーが1方向にしか見えず、極大期にはその面が
たてになっていて地球から見るとまわり中にストリーマーが見え
ると考えることもできます。だとすれば、極大期でも磁気中性面
がたまたま真横を向いていれば縦方向にのみストリーマーが伸び
るように見えることもあるはずで、実際に 1991 年の極大期にメ
キシコで起きた日食ではストリーマーが縦になっているコロナが
観察されました( 図7)。
図7 極大期の縦になったコロナ
イ)コロナの詳細構造(図8)
1991年メキシコ
・ ス ト リ ー マ ー ( 流 線 ): 太 陽 か ら 宇 宙 空 間 へ 太 陽 視 直 径 の 数
倍程度に伸びる構造です。
・ヘルメットストリーマー :ストリーマーのうち、根元付近にアーチ状に閉じた構造が発達した
ものです。
・ スレ ッド ライ クスト リー マー (糸状 流線 ): 根
元付近にアーチ状構造が見られず、細長く見え
るストリーマーです。
・ ポー ラー プリ ューム (極 域羽 状構造 ): 磁場 の
両極付近に放射状に広がって見える細い線状構
造です。
・キャビティ :明るいアーチ構造の内部にある部
分的に暗い部分で、その中心部にはプロミネン
スが存在することがあります。
・コンデンセーション :小さなアーチ構造が幾重
にも重なる部分の上層部に見られる特に明るい
図8 コロナの構造
部分です。
コロナは裸眼、双眼鏡、望遠鏡のどれでもよく見えます。裸眼では外側の淡く広がった部分まで
見え、双眼鏡では全体の微細構造がわかり、望遠鏡ではアーチやプロミネンス付近のみごとな流線
がよくわかります。双眼鏡では流線の前後の重なりもわかります。皆既中によく観察しましょう。
⑩
本影錐と⑪日食焼け
第2 接触の 数分 前から 皆既 を経 て第3 接触 の数 分後ま では 、「本影 錐(ほ んえいす い )」が見え
ます。月の影の部分のうち、太陽の光を完全に遮断している部分を本影といい、これにはいると皆
既日食が見えるわけです。本影は月から地球に至るまでの長大な円錐形をつくっており、これを本
影錐といいます。この影が地球の上空大気に映ることで本影錐が見えると考えられています。
まず、第2接触前に影がやってくる方向の空(西の方)がやや暗くなります。それがだんだん大
きくなって太陽の西側を覆い、影が太陽にかかると第2接触のダイヤモンドリングが見えます。皆
既中は本影錐は自分の真上にあります。このとき
まわりの地平線付近を見ると、影の向こうの明る
い部分が見え 、夕焼けのように赤くなっています 。
これを俗に「日食焼け」と呼んでいます。やがて
影が東へと動き、西側の空が明るくなって第3接
触のダイヤモンドリングを迎えます。その後は影
は東の方に去ってわからなくなります。
※ 本 影 錐を 見 るに は 、太 陽だ けに 注視 せ ず、
視野を広くもって、周囲を見回してみましょう。
⑫ 惑星や一等星
皆既中は空が暗くなるので惑星が見えます。特
に水星はふだんあまり見ることがないし、夕方や
明け方の低空で暗く見えますから、皆既中に水星
を見ると明るくて驚きます。太陽のやや左下を探
して見てください。金星も右側の離れたところに
見えます。一等星は気づきにくいと思いますが、
太陽と金星の間の低い位置にシリウスが見えるで
し ょう ( 図9)。 今回の 日食 時の 太陽は 冬の 大三
角形のそばにあるので、一等星もまわりに数多く
図9 太陽のそばに水星・木星,右下に金星
あります 。カメラで撮影すれば写ることでしょう 。
1998年 ベネズエラにて
⑬ 皆既中の地球照
地球で反射した太陽光が、月の夜の部分を淡く照らしだす現象です。日食時以外でも三日月程度
の月が細いときに月の影の部分がうっすらと見えるのに気がつくことも多いでしょう。皆既日食の
時には月から地球を見ると満月状態ですので、月の暗い部分が照らされて淡く見えるわけです。皆
既日食中にカメラで露出を多めにして撮影すると月の模様が写ります。双眼鏡で黒い月に注目すれ
ば、月の模様が見えるかもしれません。
■その他
日食のときは下降気流が生じて気圧が高くなると言われ 、俗に「 日食高気圧 」と呼ばれています 。
また、湿度にも変化が現れるということですが、気温の変化によって飽和水蒸気圧が変化するだけ
のことかもしれません。
以上の諸現象を表にまとめておきます。見る(感じる)際の参考にしてください。
(3)皆既日食の撮影
せっかく皆既日食を見に出かけるのですから、カメラやビデオで記録したいと思うのは当然です。
ただ、皆既日食はどんなに優秀なカメラやビデオカメラであっても完全に記録することは困難です。
それは光の強さが大きく変化し、その変化が急速であること、そして変化が空全体にわたるような広
い視野のものから、彩層やプロミネンスといった望遠鏡で拡大する必要のあるものまでさまざまな現
象がいっぺんに起きるからです。ここでは、いろんな現象をどう撮影するかを述べていきます。
一般に、写真やビデオを撮影するときに注意することは、構図(撮影範囲 )・ピント・露出です。
撮影できる範囲はレンズの焦点距離とセンサーサイズで決まります。焦点距離を長くすると望遠に
なり、短くすると広角になります。詳しくは部分食の撮影のところ( P12 )を参照してください。ま
た、赤道儀にのせるときは画面の横が東西方向になるようにします。三脚にのせるのであれば、画面
の横が水平になるようにしましょう。これは、あとで方向を調べるときに役立つからです( 図1)。
ピントは無限遠にして固定します。皆既中の暗い中ではオートフォーカスはきかないと思った方が
いいです。ビデオも画面の大部分が暗い状態ではオートフォーカスは役に立たず、カメラが合わせよ
うとしてピントがどんどんずれ動いてしまいます。なお、フィルターをつけるとピントがずれること
があるので、つけはずししたときには確認するようにした方が失敗がないでしょう。特に望遠レンズ
や望遠鏡ではピントを正確に合わせないと、ボケてしまいます。
露出は現象ごとに大きく異なります。部分食は真っ黒なフィルターをかけましたが、皆既中のコロ
ナは満月と同じくらいの明るさですので、フィルターはまったく必要ありません。また、カメラの露
出計をあてにしたオートはほぼ使えないと思った方がいいです。画面の大部分が黒い状態ですので、
オートにすると目的のものが白くとんでしまいま
す。では、以下に現象ごとに書いていきましょう。
ここで想定しているカメラはレンズ交換ができる
デジタル一眼レフカメラを ISO100 に設定したもの
です。これに広角レンズや望遠レンズ、F8の屈折
望遠鏡(たとえば口径6cm焦点距離 480 mm)を
つけて使います。 口径比がF8ではない機材を使う
場合は露出を変えてください 。たとえば望遠鏡のF
値が 15 であれば、明るさが 1/4 になりますので、
露出を4倍にするというわけです。
ビデオについては、通常のデジタルビデオカメラ
を想定しています。最近のデジタル一眼レフには動
画を撮影できるものがあるので、それを使えばレン
図1 南中時のカメラの方向
ズを交換したり望遠鏡につけたりできます。
①
ベイリービーズ・ダイヤモンドリング(表紙参照)
ダイヤモンドリングは太陽の光球がまだ出ている状態ですから、かなり明るい現象です。かとい
ってフィルターをかけるほどではありませんから、感度を低くし、高速シャッターで対処します。
暗くしすぎると内部コロナのリングが月のまわりに写らないので、ただの「ダイヤモンド」になっ
てしまいます 。逆に明るくしすぎるとダイヤモンドの部分がまぶしすぎて画面が白くなったり 、CCD
センサーであれば「スミア」と呼ばれるすじが縦に入る現象が起きてしまいます。
カメラの露出は 1/500 ~ 1/1000 秒といったところです。現象が 10 秒もないため、露出を変えて
撮ることは難しいです。むしろ、太陽の明るさが変わるので露出を固定してたくさん撮影すれば、
どれかがよく写っていることでしょう。
ビデオでは、部分食中につけていたフィルターをはずすわけですが、あらかじめはずしやすいよ
うに、ねじ止めせずにはずしやすい枠を作成しておくといいでしょう。最近のビデオカメラは高感
度なので、光球が最後のわずかな光になったときにフィルターをはずしましょう。早くはずしてし
まうと画面が真っ白になります。いかに我慢できるかがポイントです。また、フィルターはいっぺ
んにはずさずに1枚残しておいて皆既中にもう一枚はずすのも賢いやりかたです。光が飽和しない
からです。また、明るさが変えられるカメラであれば、暗めにしておいて、皆既中に明るくする方
法もあります。
②
彩層・プロミネンス
これらは望遠鏡にカメラをつけて拡大してねらいたいですが、明るい対象であるためか、太陽全
体が写る程度の拡大率であっても案外よく写りま
す。第2接触直後と第3接触直前にねらいます。カ
メラの露出は 1/250 秒前後ですが、プロミネンスの
明るさは個々に異なるので、露出を変えて撮った方
がいいでしょう。第2・第3接触時は露出を変える
ことは困難ですが、皆既中で余裕があれば露出を変
えて複数撮影しましょう。
ビデオカメラでは、彩層やプロミネンスが明るす
ぎて内部コロナとともに白くとんでしまって写りに
くいため、レンズの絞りを変えて暗くするか、弱め
にフィルターをかける必要があるかと思います。
図2 彩層/1999年ブルガリア
③
コロナ
コロナは意外と大きく太陽半径の数倍まで広がっ
ているので、太陽が大きくなるように撮影するとコ
ロナははみだしてしまいます。焦点距離をよく考え
て おきましょう。 焦点距離 300mm のレンズだと太
陽の直径が3 mm に写りますから、 APS-C サイズの
セ ンサー (約 24 × 16mm )で あれば、 たての長さ
が太陽の5倍程度はいるので充分でしょう。 500mm
だと外側がはみだす感じになると思います。もちろ
ん 35mm フ ル サ イ ズ の カ メ ラ を 使 う の で あ れ ば 、
500mm でも余裕です。
露出は内側( 1/125 ~ 1/30 秒程度)と外側( 1/2 ~
2秒程度)で大きく異なります。太陽に近い内部コ
ロナは明るく、遠い外部コロナは暗くなっていて、
明るさは太陽から離れるにつれ連続的に変化して暗
くなっています。そのため、内部コロナに合わせる
図3 コロナ/1999年ブルガリア
と外部の暗いところが写らず、外部に合わせると内
部コロナの明るいところが白くとんでしまいます。つまり、コロナを1枚の写真に写し込むことは
困難です。人間の目は内側から外側までいっぺんにきちんと見えますから、コロナを見た通りに写
真に残すことはできないというわけです。それだけ人間の目は優秀な撮像素子であるといえます。
ただし、最近のコンピューターソフトによる画像処理をすれば、内側から外側までずべてにわた
って適正な露出にして表現し、かつ流線もあざやかに見られる画像をつくることができます。コロ
ナの撮影は、こうしてあとになっても楽しむ(苦しむ?)ことができるのがいいところです。
以上の理由から、カメラの撮影では露出を変えて多数撮影しておきましょう。露出オーバーにし
て撮れば地球照も写ります。逆にいうと、どんな露出でもコロナはそれなりに写すことができるの
で 、撮影自体は簡単です 。コンパクトデジカメや携帯のズームによる撮影でも意外によく写るので 、
皆既中に携帯カメラやコンパクトデジカメで自分も入れて記念写真などということもできます。皆
既中にストロボが光るのは迷惑になるので 、まわりに人がいるならば発光禁止にしておきましょう 。
ビデオでは、ダイヤモンドリングからコロナへの移り変わりが表現できるといいです。タイミン
グよくフィルターをはずせれば、ダイヤモンドリングの光が数秒で消えてコロナがうかびあがって
きます。このとき露出をオートにしておくと自然にコロナが浮かび上がりますが、マニュアルにし
ておくとダイヤモンドリングに合わせた場合はコロナが暗くて写らないので、皆既に入ってから明
るくします。逆にコロナに合わせて明るくしておくと、フィルターをはずしたときに白く飛んでし
まってダイヤモンドリングが台無しになるので注意しましょう。
ところで 、コロナを記録するには 、双眼鏡で見てスケッチするのが最良と言えるかもしれません 。
スケッチブックに直径5cm程度の円を描いておき 、皆既中に鉛筆で手早くコロナの形を描きます 。
色が見えたら見えた場所に色を書いておき 、皆既が終わってから色鉛筆などで彩色するといいです 。
④
本影錐と日食焼け
カメラでは超広角レンズや魚眼レンズを使って空全体を撮影します。露出はF8で 1/2 秒~4秒
程度にして数多く撮ります。皆既中の空の明るさは場所によって大きく異なっていて時間とともに
変化しますし、かつ明るさは日食ごとに異なりますから、適正な露出はその場になってみないとわ
かりません。魚眼レンズではまわりの人も(自分も)写ります。日食やけを背景に黒く写すことが
できます( P28 参照 )。
ビデオでは、ズームを広角にして撮影します。ワイドコンバージョンレンズをつけるのもいいで
しょう。それでも空全体は入いらないので、地平線が入るようにして撮りましょう。そうすれば日
食焼けからコロナまでを一度に入れることができます。入らない場合は上下に動かして撮ります。
⑤
惑星や一等星
今回 の 日食 で は水 星( -1 等 )・ 金星 (- 4
等 )・火 星・ 土星 があ り ます 。火 星と 土星は 1
等ですから、裸眼では空の明るさにかき消され
てわからないかもしれません。
カメラでは広角レンズや魚眼レンズを使いま
す。 APS-C サイズであれば、 20mm のレンズで
コロナと水星、金星がうまく入るでしょう。魚
眼を使って露出を多めにかけると一等星も写り
ます。
ビデオでは水星や金星、シリウス程度は写り
ますが、他の惑星や一等星は感度が低くて写り
にくいので、どうしても撮影したければズーム
を望遠側にして撮るか、ナイトビジョンなどの
機能を使って明るくして撮影します。それほど
まで努力しても、あまりおもしろい画像は撮れ
ないし、皆既中にそんな操作をするのはどうか
と思うので、おすすめではありません。
図4
皆既中の惑星/ 1995 年タイ
以上の撮影対象について、必要な機材と露出およびその難易度を 表 にまとめました。各自の撮影
機材と比較しながら、短時間に何を狙うのかを綿密に計画を立てておいてください。
皆既の時間はあまりにも短いので、くれぐれも欲張ってはいけません。ゆとりとトラブルからの
復帰のための時間も考えながら、余裕をもった計画を立ててください。健闘を祈ります!
(4)コロナの広がりを観測しよう
太陽コロナは太陽の活動によってその形が変わります。コロナの撮影やスケッチに成功したら、コ
ロナの広がりについて研究してみましょう。
①
コロナはどこまで広がっているか
コロナのスケ ッチ観測か ら、太陽のど
の方向にどれくらいの距離までコロナが
広がっていたかを記録に残します。方位
は太陽の北極を北とし、その反対が南、
見たとき(北半球で)の右側が西 、左が東 、
と し ます 。 太 陽 の北 極 は 、2009年 7月 22
日 に 、 天 の 北 極 方 向 か ら 東 へ 6.7度 傾 い
ています。
距離は太陽半 径を用います。 P27 の 図
8 のように、ポーラープリュームやスト
リーマーと呼ばれるコロナの構造が見ら
れることが予測されますので、それらが
図1:太陽の北極の方向(ステライメージで作成)
どういうふうに広がっているかを記録し
ましょう。広がったコロナがどこまで伸
びて見えるかは 、湿度や雲の具合によって変わります 。天候や気象状況も忘れずに記録しましょう 。
②
コロナの構造はどうなっているか
コロナの撮影やスケッチに成功したら 、その構造がどのようなものなのかを研究してみましょう 。
ア)11年の太陽活動でコロナの形は変わるのか
撮影やスケッチしたコロナの観測画像を、これまでに世界各地で観測されたコロナの画像と比
較してみましょう。コロナの構造や形は、太陽の11年活動周期で変わる事が知られています( P
27参照)。太陽黒点数の変化 を11年周期の指標として、黒点の多 い時期と少ない時期でコロナの
形がどう変わるのかを調べ、その原因を考察してみましょう。
インターネットで公開されている画像を発表会などで利用する場合は、利用してよいかを公開
している方へ尋ねましょう。連絡先の分からない場合は、どなたの観測であるかもしくは引用元
URLを記 述して発表 しましょう 。研究報告や ホームページに他人 の画像を利用する場合には、必
ず了解を得る必要があります。
イ)コロナの構造を探ろう
図2 のように、太陽表面に近いところのコ
ロナの構造の観測に成功したら、その構造が
どのようにして形作られているのか研究して
みましょう。コロナの構造は、太陽内部から
表面へ突き出し、コロナへ続く磁力線に沿っ
て形 作 られ て いま す 。7月 22日の 太陽 表面 の
様子画像を、自分たちで観測したり、AstroHSのメンバーやインターネットから入手した
りしてコロナの画像と比較してみましょう。
※ 図 2 の 例は 2006年3月27日に エジ プトで 見
られた皆既日食の画像と、太陽観測衛星SOHO
の極端紫外線画像(EIT171)を重ねて比較した
ものです。
この時の太陽活動は太陽面の東( 向って左 )
の縁に黒点を伴った活動領域があったようで 図 2 : 石 川 勝 也 氏 撮 影 の コ ロ ナ 画 像 へ SOHO/EIT171の 画
す。この上空のコロナは太陽に近いところで 像を色調反 転して重ねた もの。
は明るく入り組んだ構造をしていますが、あまり遠くまで伸びるようなコロナは無かったようで
す。北西にはストリーマーが見えていますが、太陽面につながるその足元がどこであるかを見る
ことができます 。また 、北極や南極では 、プリュームが太陽面につながっている事も分かります 。
太陽に近い内部コロナから離れた外部コロナは肉眼でもある程度観察できますが、双眼鏡で見
ると、より細かなところまで観察することができます。しかし、短い時間に細かな様子をスケッ
チすることは難しいかもしれません。また露出を変えて、コロナの明るい太陽面に近いところか
ら暗く遠いところまでを写真に収めるのも難しいでしょう。きれいなコロナの写真が撮れたら、
上記のように、衛星画像と比較する事で、観察したコロナがどういう構造であったのかを、観察
後にゆっくりと考える事ができます。また、表面のコロナやプロミネンスの構造とも比較してみ
るとよいでしょう。
③
フラッシュスペクトルの撮影にチャレンジ
フラッシュスペクトル( 図3 )とは、皆既日食の第2接触直後、第3接触直前に太陽の彩層から
の光だけが地球へ届く際に、プリズムや回折格子を使って皆既日食のスペクトル画像を得たもので
す。輝線によって輝く彩層が、どんな元素の輝線によって輝いているのかを調べる事ができます。
一眼レフタイ プのカメラ で撮影する 場合、焦点距離500mm程度の 望遠鏡やレンズを使い、レンズ
の前にプリズムや回折格子を置いて撮影します。回折格子は1ミリに100本程度溝の入ったものがい
いようです 。スペクトルの1次光の像は 、太陽の直接像である0次光と離れた場所にできますので 、
事前に月のスペクトルを取って試験しておくとよいと思われます。
図3:フ ラッシュスペク トル画像( 画像提供 日食情報センター 大越治氏 )
皆 既 日 食 で 太 陽 表 面の 光 が 月 に 隠 さ れ 、 彩 層 だ け が 見 え て いる 時 に 写 し た スペ ク ト ル 画 像 。 円弧 状 に な っ
ているのは太 陽の形で、各 波長における輝 線が並んで写 っているため 。
(5)シャドウバンドの観測 -皆既前後に現れる光のさざ波-
①
皆既の直前直後には 、“光のさざ波”シャドウバンドがみえる
皆既となる直前(第2接触 )、光球からの最後の光が途絶えようとするその時の太陽は、ダイヤ
モンドの指輪のようにも見えることから、ダイヤモンドリングという名前で知られています。同じ
ような光景は、皆既終了直後(第3接触)にも見られます。多くの人がこのダイ ヤ
ヤモンドリングに
見とれている頃、地上では、光が波打って見える現象であるシャドウバンドが発生していることが
あります( 図1)。このシャドウバンドは、皆既日食の度に発生するとは限りません。また、また
発生したとしても、せいぜい皆既の前後 1 、 2 分程度の短い時間ですし、光の波の濃淡の差もあま
り大きいとはいえないことから、従来は写真やビデオの記録に残すことが大変難しい現象でした。
最近のビデオカメラは性能が上がったので、比較的容易に観測することができます。
②
シャドウバンドと水星の瞬き、2つが同調すれば起源が同じ?
シャドウバンドの成因については 、多くの専門家の頭を悩ませてきました 。最近では 、皆既直前 、
あるいは皆既直後の細くなった太陽が大気の密度ムラを地上に投影させているのではないかとの説
が有力ですが、誰も確かめた人はいません。シャドウバンドの解明には、今でもなお多くの観測デ
ータが必要なのです。
さて 、今回の日食では 、太陽の東 9 度のところにマイナス 1.3 等級に輝く水星があります 。もし 、
シャドウバンドが大気の揺らぎによるものなら、この水星の瞬きと同調するはずです。シャドウバ
ンドと水星の同時ビデオ観測を行うことで、二つの関係の有無を調べてみましょう。もし、同調す
ることが明らかになれば、世界初の結果となるかもしれません。
図1
1991 年メキシコ日食時の月の接触位置とシャドウバンドの発生の関係(石川、 1997 )
円は太陽、*印は、月の接触位置を示す。四角は、スクリーン(シーツ)を裏から見
たところ。筆者(石川)の経験から、接触位置とシャドウバンドの発生方向には関係が
あるように見える。移動方向は風の方向と関係があるかもしれない。波は平行な縞模様
なので、実際にはどちらに移動しているのかはよくわからない。図1の移動速度は、あ
くまで波がのびている向きに対して直交する方向に動いていると仮定したときのもので
ある。
③ 観測方法
ア)用意するもの
・シーツあるいは方眼模造紙
シーツ(方眼模造紙)に 20cm 毎に碁盤の目のように線を入れたものを用意します。線はで
きるだけ薄くし、細く描く方がシャドウバンドを見るときに邪魔にならないでしょう。直交す
る線を東西南北の方角にあわせて地面におきます 。これだけで 、シャドウバンドが現れたとき 、
どのくらいの幅でどのような向きで発生し、どのような動きをしたかを知ることができます。
・ビデオカメラ(シャドウバンド撮影用)
ビデオカメラは、細かい光の動きにも対応できるよう、ハイビジョンカメラのほうがベター
です 。ビデオカメラを 、影がシーツ( 模造紙 )に落ちない位置でできるだけ真上に設置します 。
シャドウバンドがでるときはあたりの明るさが急に変化するので、露出モードはオートでいい
です。ただし、ピントはシーツの中心に合わせてからマニュアルにしてあとは変えないように
しましょう。オートにしておくと、暗くなったときにカメラが勝手にピントを合わせようとし
ても合わなくなり、ピンボケになります。
・ビデオカメラ(水星観測用)
水星の瞬きの観測用ですので、 望遠鏡に取り付ける、あるいは高倍率( 10 ~ 20 倍程度)で
観測してください。シャッタースピードが設定できる場合は、 1/100 秒以上が望ましいです。
太陽のすぐそばにある天体の観測ですので、水星を視野に導入する際は、カメラを太陽に向け
ないよう十分注意しましょう。簡単に導入するには、カメラの視線方向と同じになるようにス
トローをカメラボディにつけて、これを簡易ファインダーとして利用するといいでしょう。ピ
ントは、できるだけ遠方の景色を利用するなどして、マニュアルであわせておきましょう。
イ)観測方法
2つのビデオカメラで撮影したシーンの時刻を合わせる必要があります。カメラの内部時計が
正確であればよいのですが、それは難しいことでしょう。そこで、おすすめなのは、デジカメを
用いてタイムスタンプをつける方法です。
・2つのビデオカメラをセッティングし、ピントも合わせておく。
・観測の本番前(第2接触の 15 分前くらい)に、一時的にビデオカメラを 2 つ並べ、録画を開
始。このときはピントが合っていなくても OK。
・デジカメ等で強制的にストロボを発光させる。
・録画したままカメラを元の位置に戻して再度ピントを合わせる
・そのまま撮影を続け本番(第2接触前2分)に突入
・第3接触の数分後まで撮影し、それぞれのカメラで正確な時計( GPS レシーバーなど)を撮影
し、録画終了
ストロボの発光時間 は長くとも 1/1000 秒程度ですので、ビデオの一コマに収まる時間です。
ビデオ再生時にコマ送りしていくと、 1 枚だけ閃光の入ったシーンが出てくるはずなので、これ
を双方のビデオの時間の原点にすればいいのです。観測後に時計を撮影することで、自宅に帰っ
てからゆっくり時刻あわせができます。
ここまで来たらあとは何もする必要がありません。時間があれば露出の補正を試みてもいいで
すが、おそらくそれほどの余裕はないと思います。それだけの時間があれば、むしろ肉眼で観測
して記録をつけるようにしてください。記録のポイントは以下のようです 。、
・発生時刻と継続時間
・光の波の幅(波長)と向き
・光の波の移動方向と移動速度
・波の幅や濃淡の変化の様子
・シャドウバンド自体のひろがり(発生範囲)
・風向・風力・気温などの気象状況
など
④
報告
よい観測ができたら、ぜひデータを共有し合い、水星の瞬きと同調しているか、接触位置とシャ
ドウバンドの方向はあっているか、観測場所や気象条件等による違いがあるか等について比較検討
をしてみましょう。とりあえず、ビデオが撮影できたらメールで報告してみてください。
【引用文献】
石川勝也、 1997 、シャドウバンドの観測について、日食情報 1997 ( 1)、日食情報センター、 P4-8.
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