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Vol.36 古楽器との出会いで発見した“音楽の自由さ” 2011年6月号 PDF
NJP メンバーの宝物 ―メンバーが大切にしている秘蔵の品、それにまつわる思い出を紹介するコーナー Vol.36 古楽器との出会いで発見した“音楽の自由さ”-宮下宣子(トロンボーン) サクバット、テナーホルン、バスフリューゲル、そして奈良・吉野山のお土産物屋さんで買っ たほら貝― 我が家にある、トロンボーンの前身、親戚にあたる古楽器たちです。コレクターとい うわけではまったくなく、音楽を追求し、アンサンブルを楽しんでいるうちに、次から次へと欲 しくなって集めてきました。 サクバットを買ったのが約10 年前。バロック音楽が当時どのような楽器で演奏されていたのか、 という興味からでした。最初は吹きにくいな、という印象で挫折しました。 しかし、音が出しにくい、音程の悪さがもろに出てしまうといった不自由さを体験したことが、 いろいろ考えるきっかけとなり大切なことに気付いたのです。忘れていた“音楽の自 由さ”、“音 楽の根源的エネルギー”の発見といったらいいでしょうか。それまで私は、モダンの楽器をオー ケストラで吹くときには、どのような音域でも常に均一のいい音色で鳴らすことが求められてい る、と思っていたのですが、古楽器では、音色の均一さは目的でないどころか、逆に「均一でな い」ところが表現の良さに通じるのです。古楽器を体験したことで、オーケストラでも、歯車と して部分をこなすだけではなく、それぞれの立場でもっと自分なりの音楽を表現しなければとい う意識が生まれたように思います。古楽器でのフレーズの作り方の勉強は、ト ロンボーンを吹く とき、レッスンで教えるときにも、とても役立っています。 アドリブの勉強のためにジャズや民族音楽を聴いたり、バロック以前のレパートリーを勉強し たり、いろいろな方向に興味が広がってとても楽しいです。“第二の青春”でしょうかね?思え ばサクバットを始めたのも、「50 歳になったら自分の好きなことをやりたい!」という気持ちが 高まったことがきっかけかもしれません。この夏は、勤続 30 年のリフレッシュ休暇を使って、 フランスとイタリアの古楽器講習会を受けに行きます。知らないことをたくさん勉強できると思 いますので、帰ってきたらそれを生かして活動していきたいです。 (2011 年 6 月号)