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1 おーきな輪に参加して 東京学芸大学総合社会システム専攻 N09

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1 おーきな輪に参加して 東京学芸大学総合社会システム専攻 N09
おーきな輪に参加して
東京学芸大学総合社会システム専攻
N09-5242 山口芙実
6 月 30 日と 7 月 1 日の 2 日間、全国難病の子供支援ネットワーク主催の「おーきな輪」
に、ボランティアとして参加しました。キャンプが始まる前は、どのような子をどのよう
にして支援したらよいかもわからず、また重い障害を持った子たちの介助の経験もない状
態だったので不安がたくさんありました。1 番心配だったのは重い障害を持った子どもたち
への接し方やコミュニケーションの取り方で、ボランティアとして支援をする以前に、自
分が子どもたちとのキャンプを楽しめるかどうかでした。しかし終わってみると、
「来年、
またこのキャンプでキャンパーに会いたい!」と思っている自分がいました。2 日間という
短い間で、キャンパーのことをこんなにも好きになれた自分に、自分が一番驚いています。
1 日目、キャンパーやご家族が到着する前に、ボランティアやスタッフの皆さんだけでの
事前説明がありました。キャンプはどのような雰囲気なのだろうと、とても不安でしたが、
その不安はキャンプが始まる前の事前説明の段階で、もう吹っ飛んでいました。ドクター、
看護師、保健師、福祉に関係のない会社員の方、学生さんなど、さまざまな立場の方が集
まっていましたが、皆さんの「子供たちと一緒にキャンプを楽しみたい」という気持ちが
とても伝わってきました。
「子供たちを楽しませなくてはいけない」というプレッシャーや
義務感は一切なく、
「スタッフの皆さん自身がこのキャンプを楽しんでください。」とのド
クターの言葉で、緊張が一気に解けた気がします。キャンパーへどのように関わったらよ
いか、自分に何ができるか、そういったことばかり考えていましたが、肩の力を抜いて純
粋にキャンプを楽しもうと思いました。
いよいよキャンパーとご家族とのご対面の時間がきました。私のキャンパーは、重症心
身障害をお持ちの 8 歳の双子ちゃんで、1 人ずつ看護師さんと担当しました。お母さんと 3
人のご参加でしたが、双子ちゃんは 2 人とも全介助であったため、スタッフが 2 人ついて
いても一時も目が離せないという状況でした。
開国式では、2 人が王女様に選ばれたので、皆の前で開国宣言をしました。開国宣言では、
王女様の衣装を着るのですが、キャンパーに初めて会ったばかりの私は正直、キャンパー
に触れることが怖くて、着替えさえしてあげることができませんでした。ケガをさせてし
まったらどうしようという不安が出てきていました。しかし、私の心配をよそにキャンパ
ーはとても元気でした。
「触ったくらいじゃ怪我しないよ!」と言っているように、車イス
から降ろしてあげると、バタバタととても元気に動き回っていました。キャンパーの元気
さに驚くとともに、キャンパーのことを「障害をもっている」というだけで、頭のどこか
で「弱い」と思っていた自分がいたことに気が付くことができました。医療的ケアが必要
な重い障害を持っているキャンパーも、純粋な 8 歳の女の子なんだなと感じました。重い
1
障害を持っているために護られるべきところはもちろんありますが、それはどの子供でも
同じで、受けるべき刺激からも護られる“過保護”はいけないことなのだなと体感しまし
た。重度の障害を持った子たちは特に、その受けるべき刺激を周りの人たちによって奪わ
れてきたのではと思います。1 日目の活動は海水浴でしたが、「海に行くよー!」というと
途端に笑顔になって、
「きゃーきゃー」と大変でした。キャンパーの元気で、沖縄の暑さも
忘れるくらい私が元気をもらっていたと思います。さっきまで、触れるのが怖いと思って
いた私ですが、その頃にはもうキャンパーを抱えて海に一緒に入っていました。海に入っ
たキャンパーは、
「とても気持ちがいい。でも太陽がまぶしい!」という顔をしていました。
海に入ると気持ちがよくて太陽がこんなにまぶしいということを、障害のない子供であれ
ば普通に体験できたことかもしれません。キャンパーにとっては、専門家がたくさんつい
ていないと実現できない体験かもしれませんが、それでも今はそれを可能にし、そうする
ことを心から楽しんでいる専門家たちがたくさんいることを体感できました。
1 日目の活動が終わり、キャンパーたちも寝静まった頃、お母さんはお風呂へと行きまし
た。お母さんは「お風呂につかれるなんて、何年ぶりだろう!」と言ってお風呂へ行きま
したが、それくらいお母さんの自分の時間がないということだろうと思います。きっと毎
日の生活がとても大変なのだろうと思いますが、双子ちゃんのお母さんからは、それが「辛
い」と思っているようには感じられませんでした。子育てを頑張っているタフなお母さん
という印象がとても強かったです。
大荷物を抱えてキャンプに参加して、帰ったらたくさんの洗濯物があって、キャンプに
参加することはお母さんにとって大変なことではないのかな、着替えやおむつを替えたり
しかできない私がついて、お母さんは気が休まったかなと心配になったこともありました。
しかし、閉国式でスタッフのメッセージ入りの写真を渡したとき、お母さんが少し涙ぐん
でおられるのを見て、私はキャンパーの担当で良かった、キャンプに参加してくださった
キャンパーとお母さんに本当に感謝したいと思いました。
2 日間というとても短い間でしたが、ボランティアも夜まで一緒にいさせていただくこと
ができるというのはめったにない機会なのではないかなと思います。キャンパーとみっち
りと付き添うことができたため、少しばかりですがキャンパーがどんな生活をしているの
かを理解することができました。キャンパーやご家族が楽しむためのキャンプですが、こ
うしたボランティアにとってもとても楽しく、そしてとても勉強になるプログラムとなっ
ていると思います。短い間でしたが、その間に学んだことはたくさんあります。本当に参
加してよかったなと思いました。来年もまた、キャンパーに会いに行きたいと思います!
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