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ゴミ焼却時における放射性セシウムの排ガスへの漏れ:精密測定法および

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ゴミ焼却時における放射性セシウムの排ガスへの漏れ:精密測定法および
Radioactive cesium leakageⅡ
Iwami et al
5 January 2014
ゴミ焼却時における放射性セシウムの排ガスへの漏れ:
精密測定法およびベイズ統計による回収率の評価
岩見億丈 a、笹井康則 a、永田文夫 b
a 岩手県宮古市
b 岩手県盛岡市
Radioactive cesium leakage through bag filters as the grasses
contaminated by the fallout from Fukushima Daiichi are incinerated:
evaluation with precise measurement and Bayesian statistics.
Okujou IWAMI, Ph.D.a, Yasunori SASAIa and Fumio NAGATAb
a Miyako Japan, b Morioka Japan
Abstract
The leakage of incinerated radioactive cesium through bag filters is
evaluated with the data which were obtained by the precise measurement.
With
Bayesian approaches, the cesium recovery ratio into the ashes is calculated by
regression model.
not recovered.
It is estimated that 16% of the radioactive cesium in the grass was
The data confirmed the previous report which showed about 20%
radioactive cesium leaked into the atmosphere through bag filters.
Reviewing papers
suggests that the poor recovery ratio is due to the existence of the fine particles with a
diameter of less than 0.1μm which are generated in incinerators .
This article is published with open access at “Reprocessing of nuclear fuel, Iwate environment
Radioactive waste”
http://sanriku.my.coocan.jp
&
5 January 2014
要旨
2013 年 2 月に、宮古市が放射性物質に汚染された農林業系副産物の試験焼却を 4 日間行っ
た際に得られた、ゲルマニウム半導体検出器を用いた放射能濃度値から、放射性セシウム
の焼却灰中回収率を算出した。ベイズ統計による直線回帰モデルの傾きから回収率を算出
すると、焼却された牧草に含まれた放射性セシウムの 84%が灰に残り、16%は大気に排出
されていると推定される。この結果は、NaI シンチレーションスペクトロメーターによる
簡易測定法の結果とほぼ一致し、焼却炉で発生した非常に小さい微粒子状態の放射性セシ
ウムをバグフィルターが十分除去できていないことが再確認された。文献的考察から、ゴ
ミ焼却時に発生する粒径 0.1μm 以下の超微小粒子の存在が回収率を低下させる要因であ
る可能性を指摘した。
1
Iwami et al
Radioactive cesium leakageⅡ
5 January 2014
はじめに
笹井らは、宮古市で行っている「放射性物質に汚染された農林業系副産物の焼却処理」に
伴う放射性物質の収支を解析し、19%の放射性セシウムが焼却後の灰に回収されておらず、
この 19%の放射性セシウムはバグフィルターを通り抜け、大気中に漏出したと考えられる
と報告している[1]。これは NaI シンチレーションスペクトロメーターによる簡易測定法の
精度と妥当性を検証し、簡易測定法の放射性物質濃度値から漏出率を求めた報告である。
今回、我々は、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した放射性物質濃度に基づき放射
能に汚染された農林業系副産物焼却に伴う大気への放射能漏出率を評価した。
目的
精密測定法によるデータから放射性物質の収支を解析し、ゴミ焼却施設から排気ガス中に
放出された放射性物質量を評価し、笹井らの報告との整合性を調べる。また、ベイズ統計
により、一般ゴミ中の放射性物質濃度の変動を考慮した回帰モデルを用いて、焼却灰への
放射性物質回収率の確率分布を求める。
方法
宮古市が住民に公開してきた資料、および、情報開示請求により得られた資料に基づき、
焼却前後の放射性物質の収支を計算した。解析に用いたデータは、2013 年 2 月 27 日、宮
古市住民説明会で公表された試験焼却の結果と、宮古地区広域行政組合公表の放射性濃度
等モニタリング結果である[2,3]。焼却物全重量、および、主灰と飛灰の重量のデータは情
報公開請求による[4,5]。測定物重量と放射能濃度を表 1,2 に示す。提示したデータの測
定は、すべてゲルマニウム半導体検出器を用いている。同市ゴミ焼却施設における一日の最大
処理能力は、炉数 1 機の場合には 93ton、炉数 2 機の場合には 186ton である。焼却炉は流
動床式で、焼却温度は 800℃から 850℃となっており、集塵器はバグフィルターを使用し
ている。焼却は週明けの午前 10 時前後から行われ、週末の午前 8 時前後で終了する。1 号
炉および 2 号炉から出た灰は、ともに一箇所の回収容器に集められている。
表1
対象物中放射性セシウム濃度と焼却量
1号炉
2号炉
2013年 Cs134濃度 Cs137濃度 対象物重量 焼却全重量 Cs134濃度 Cs137濃度 対象物重量 焼却全重量
月日
Bq/kg
Bq/kg
kg
ton
Bq/kg
Bq/kg
kg
ton
2月5日
500
860
970
88.27
390
730
1100
97.69
2月6日
520
900
1320
89.86
600
1100
1140
98.25
2月7日
381
694
1760
94.07
400
737
1760
97.90
2月8日
398
687
1760
92.43
395
700
1800
89.71
宮古市 H25 年 2 月 27 日住民説明会資料[2]、および、ごみ焼却施設ごみ処理実績表[4]に基づく。
ゲルマニウム半導体検出器による濃度測定である。
2
Radioactive cesium leakageⅡ
Iwami et al
表2
5 January 2014
焼却後灰中放射性セシウム濃度と灰重量
2013年
月日
2月5日
2月6日
2月7日
2月8日
Cs134濃度Bq/kg
主灰
飛灰
ND
88
ND
93
ND
100
13
110
Cs137濃度Bq/kg
主灰
飛灰
ND
130
13
170
17
200
20
200
重量ton
主灰
5.44
3.29
3.76
5.63
飛灰
12.45
15.11
17.54
15.74
資料[2]、および、焼却灰等運搬業務月報[5]に基づく。ゲルマニウム半導体検出器による濃度測定
である。ND は測定限界以下(10Bq/kg 以下)であることを示す。
笹井らと同様に、一般ゴミ焼却灰中の放射性物質濃度は、2013 年 1 月 25 日から 2013
年 7 月 31 日までデータ 5 組から決定する[1]。セシウム 137 の半減期は 30.1 年、セシウム
134 の半減期は 2.06 年であり、これら 5 組のデータを減衰率:0.5(期間/半減期) により補正
した 2013 年 2 月 6 日における一般ゴミに由来するセシウムの飛灰中濃度を求め、その平
均値、標準誤差、95%信頼区間(t 分布による)を算出し、表 3 に示す。
表3
Cs137濃度 Cs134濃度
2013年1月25日
54.0
23.7
2013年2月1日
57.0
26.9
2013年2月4日
47.0
27.9
2013年5月30日
58.4
33.3
2013年7月31日
65.7
35.3
平均値 Bq/kg
56.4
29.4
標準誤差
3.0
2.1
95%上限値 Bq/kg
64.9
35.3
95%下限値 Bq/kg
48.0
23.5
放射性物質の減衰補正をし、2013 年 2 月 6
日の濃度に換算した一般ゴミ焼却時の飛灰
中放射性セシウム濃度(単位 Bq/kg)
ゲルマニウム半導体検出器を用いたモニタリン
グ結果[3]に基づく。
回収率計算方法は以下である。主灰中の対象物由来放射能量は、飛灰中の対象物由来放
射能量と一般ゴミ由来放射能量の比を使って求める。
A:対象物中放射能量:対象物重量×対象物中放射能濃度
B:飛灰中放射能量:飛灰重量×飛灰中放射能濃度
C:主灰中放射能量:主灰重量×主灰中放射能濃度
D1:焼却ゴミ重量(対象物混合後)
D2:対象物重量
D:(D1-D2)/D1
e:一般ゴミ焼却時飛灰中濃度
E:一般ゴミ由来飛灰中放射能量
F:対象物由来飛灰中放射能量
G:対象物由来主灰中放射能量
R:放射能回収率
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Radioactive cesium leakageⅡ
Iwami et al
5 January 2014
E =飛灰重量×eD
F = B-E
G = C(F/B)
R = (F+G)/A=(B-E)(1+C/B)/A
対象物中放射能量は、1 号炉と 2 号炉に投入された対象物中放射能量の合計である。焼
却ゴミ重量と対象物重量も同様である。表 2 における ND の値は、次のようにして数値を
割り当てた。主灰ならびに飛灰中放射能濃度が測定された 3 日間で 4 つのデータより、主
灰中濃度と飛灰中濃度の比を求め、その平均値 0.095 を得る。この平均値を飛灰中濃度に
乗じて主灰中濃度とする。ただし、算出値が 10Bq/kg 以上の場合には、濃度値 9.9 を当て
る。この方法で得た主灰中濃度を表 4 に示す。表 4 の値を用いて回収率を計算した。
ベイズ統計による MCMC 法は WinBUGS を用いて行った[6]。
2013年
月日
2月5日
2月6日
2月7日
2月8日
Cs134
Bq/kg
8.4
8.8
9.5
13
Cs137 表 4 補正主灰中放射性セシウム濃度
Bq/kg 主灰中濃度と飛灰中濃度の比、0.095 による ND 値の推定値。
9.9
13
17
20
結果
日々の回収率値とその平均値、および、4 日間に焼却された総放射能量に対する回収率値
を表 5 に示す。表 5 の 95%上限下限値は、表 3 の一般ゴミ焼却時の飛灰中放射性セシウム
濃度の下限上限値を用いて算出した値である。セシウム 134 の回収率は 85.9%で、セシウ
ム 137 の回収率は 84.4%、2 つの同位体の対象物中放射能量で加重した平均回収率は 84.9%
である。
表5
放射能量回収率
2013年
Cs134
Cs137
月日
最尤推定値 95%上限 95%下限 最尤推定値 95%上限 95%下限
2月5日
83.6%
91.8%
75.3%
58.3%
64.9%
51.7%
2月6日
72.0%
78.5%
65.4%
71.9%
77.2%
66.7%
2月7日
92.6% 100.2%
85.1%
102.5%
108.4%
96.6%
2月8日
94.3% 101.1%
87.6%
95.5%
101.0%
90.0%
4日間平均
85.6%
92.9%
78.4%
82.1%
87.9%
76.3%
総量回収率
85.9%
93.1%
78.7%
84.4%
90.1%
78.7%
次にベイズ統計を用いて回収率の確率分布を求める。
b を飛灰中放射能濃度と定義すると、R =(B-E)(1+C/B)/A より、
4
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Iwami et al
5 January 2014
b/D = e + R×Ab/[(B+C)D]
という式が得られる。これは、一般ゴミ由来の灰に放射能がすべて移行したと考えて、一
般ゴミの飛灰重量に換算したとき、放射能濃度が対象物を焼却することにより、どれだけ
上昇するかを示した式である。従って、Ab/[(B+C)D]を説明変数、b/D を目的変数にして、
回帰分析を行えば、回帰直線の傾きが回収率 R を、y 切片の値が一般ゴミ焼却時飛灰中放
射能濃度 e を与える。用いたベイズ統計モデルは以下であり、一般ゴミ焼却時飛灰中放射
能濃度 e には、表 3 のデータから求まる確率分布 N(m,α2)を事前分布として与える。
X:Ab/[(B+C)D]
Y:b/D
e ~ N(m, α2)
yi= e+Rxi+δi
δi ~ N(0, σ2)
yi ~ N(μi, σ2)
μi = e+Rxi
WinBUGS による無情報事前分布を用いた MCMC 法の R の事後分布は、セシウム 134
が平均値 0.836、標準偏差 0.114、中央値 0.843、95%信用区間 0.616~1.019 であり、セシ
ウム 137 が平均値 0.784、標準偏差 0.201、中央値 0.808、95%信用区間 0.194~1.093 であ
る。セシウム 134 で得られた R の事後分布を、セシウム 137 の R の事前分布にして、MCMC
法をおこなうと、R の事後分布は平均値 0.834、標準偏差 0.079、中央値 0.833、95%信用
区間 0.677~0.991 である。逆に、セシウム 137 で得られた R の事後分布を、セシウム 134
の R の事前分布にして MCMC 法を行っても結果はほぼ同じで、事後分布は、平均値 0.841、
標準偏差 0.076、中央値 0.843、95%信用区間 0.684~0.989 であり、R の確率分布は図 1
の通りである。したがって、ベイズ統計による回収率の推定値は平均値が 84%であり、そ
の 95%信用区間は 68%~99%である。
図1
4 日間の試験焼却時、放射能回収率の確率分布
R sample: 999001
平均値
6.0
0.841
標準偏差 0.076
中央値
4.0
0.843
95%信用区間 0.684~0.989
2.0
0.0
0.0
0.5
1.0
5
Iwami et al
Radioactive cesium leakageⅡ
5 January 2014
考察
笹井らが報告した本格焼却時の灰中放射能回収率と比べると、4 日間の試験焼却時には
日々の回収率値の変動が小さい。これはサンプリングが丁寧に行われたことと、精密測定
法によって濃度が測定されていることによるものと考えられる。検査日が 4 日と少ないた
めに、MCMC 法で計算された信用区間の幅は大きい。回帰モデルによる回収率の最尤推定
値は 84%であり、代数的に求めた回収率 84.9%とほぼ一致する。
笹井らは本格焼却処理中の主灰中放射能濃度を精密測定値と簡易測定値の結果から推定
した[1]。主灰濃度の飛灰濃度に対する割合、すなわち、方法で算出した 0.095 を用いて、
飛灰濃度から主灰濃度を決定し、笹井らの報告データの放射能回収率を再計算する。総量
で見た回収率はセシウム 137 が 80.5%、セシウム 134 が 84.7%、対象物放射能量での加重
平均値 81.9%となり、笹井らの報告よりやや回収率が高くなっている。これは主灰中放射
能量の評価値が高くなったためで、全灰放射能量に占める主灰放射能量の割合は 2.34%で
ある。
笹井らが最終の集計に用いた簡易測定 27 日分について、同様に MCMC 法を無情報事前
分布で行った R の事後分布は、セシウム 134 が、平均値 0.798、標準偏差 0.0487、中央値
0.798、95%信用区間 0.703~0.895 であり、セシウム 137 が、平均値 0.779、標準偏差 0.0466、
中央値 0.779、95%信用区間 0.688~0.871 である。MCMC 法による e の事後分布の平均値
は、セシウム 134 が 31.0、セシウム 137 が 57.9 となり、事前の平均値 29.4、56.4 より約
1.5 高値であり、確率分布も同様に右方移動している。これは回帰モデルの線形を示す確率
分布により、MCMC 法のサンプリングの影響を受け高値になったものである。直線性を重
視するのであれば、e の事後分布が回帰モデルに適合する一般ゴミ中濃度の確率分布であ
る。また、あくまで e の事前分布が保たれることを重視するのであれば、MCMC 法を行う
ときの e の事前分布の平均値を約 1.5 小さくすればよい。以下では直線性を与える確率分
布を重視する立場で評価を行うが、新たに MCMC 法を行う際には、e の事前分布は N(m, α2)
に再設定する。セシウム 134 で得られた R の事後分布を、セシウム 137 の R の事前分布
にして MCMC 法を行うと、R の事後分布は、平均値 0.789、標準偏差 0.033、中央値 0.789、
95%信用区間 0.724~0.855 である。確率分布を図 2 に示す。逆に、セシウム 137 で得られ
た R の事後分布を、セシウム 134 の R の事前分布にして MCMC 法を行った R の事後分
布は、平均値 0.789、標準偏差 0.033、中央値 0.789、95%信用区間 0.724~0.854 である。
したがって、ベイズ統計による回帰モデルで評価した簡易測定 27 日分の回収率は、最尤推
定値である平均値が 79%であり、95%信用区間は 72%~86%である。4 日分の精密測定法
と 27 日分の簡易測定法の放射能回収率結果は、ほぼ一致し再現性が得られており、宮古市
の焼却施設における放射性セシウムの漏出率は 16%から 21%の間にあると推定される。
6
Radioactive cesium leakageⅡ
Iwami et al
図2
5 January 2014
27 日間の牧草焼却時、放射能回収率の確率分布(簡易測定法による)
R sample: 999001
平均値
0.789
標準偏差 0.033
15.0
中央値
0.789
95%信用区間
0.724~0.855
10.0
5.0
0.0
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
これまで報告されてきた焼却炉におけるバグフィルターの放射性物質除去率について、
その測定法が粒径 0.3μm 以下の粒子中放射能を正確に測定していない問題があることは、
笹井らが既に指摘したとおりである[1]。Linak らは、焼却炉中で一度気体状になった放射
性物質は、しばしば 0.1μm 以下の超微小粒子になり、どんな最新の除去方法を用いても、
効率よく回収することは困難であると述べているが、0.1μm 以下の超微小粒子の具体的な
回収率の記載はない[7]。Roed らはチェルノブイリ原発事故により放射能に汚染されたべ
ラルーシで、バイオマスおよび森林ゴミの焼却実験を行った[8]。焼却温度 1150℃での焼却
時、サイクロンとバグフィルターにより、排ガス中セシウム 137 の 99.5%が除去されたと
要約し報告している。しかし、選別されたデータに基づいて算出したバグフィルターの飛
灰除去率は、集塵ろ紙による測定で 99.2%、カスケードインパクターによる測定で 98.5%、
レーザースペクトロメトリーによる測定で 91.7%とも報告している。彼らの報告には、集
塵ろ紙の性能が記載されておらず、どれくらい小さい粒子まで測定し除去率を算出したの
か不明であり、また、現在、集塵ろ紙によりサンプルできる粒子は 0.1μm 前後が限度で
ある。くわえて、カスケードインパクターによる測定は、その測定原理を考慮すると、密
度が小さい超微小粒子を捕捉検出する信頼性は低い。
非放射性のセシウム 133 を用いて、セシウムの灰中回収率を調べる実験をすれば、バグ
フィルターの性能に関する不要な議論を避けることができるだろう。セシウムは地殻中に
平均およそ 3 ppm の濃度で存在していると考えられているが、ポルサイト鉱山やセシウム
化合物を使う電子産業周辺以外の環境では通常検出されないと考えられている。一般ゴミ
焼却時の灰中セシウム 133 の濃度を原子吸光法で測定し検出されないことを確認し、その
後、焼却ゴミの中に試薬の塩化セシウムを加え、灰中に残存するセシウムを原子吸光法で
測定すれば簡単に回収率を求めることができる。原子吸光法によるセシウムの測定限界は
0.1ppm 前後であるので、回収率 100%を仮定し、その百倍の 10ppm の原子吸光用液体資
料ができるように焼却炉に加えるセシウムの量を決めればよいのである。
7
Radioactive cesium leakageⅡ
Iwami et al
5 January 2014
Roed らのベラルーシにおける焼却実験から排ガス中の粒径分布を考察する。報告中の
appendix E にある table E-1 中の 9:38am~9:53am 間に測定された 11 組のレーザース
ペクトロメトリーによる、サイクロン通過後バグフィルター通過前の粒径分布の平均値の
データ(表 7)から、粒径 1μm 以下のデータで階級幅 0.05μm の粒子分布を求め、粒子
個数を自然対数変換して(表 8)、回帰分析を行う。
表7
レーザースペクトロメトリーによるバグフィルター前、排ガス中粒子分布
粒径μ m
計測数
0.2-0.25
164197
0.25-0.3
52503
0.3-0.4
20140
0.4-0.5
14604
0.5-0.7
2013
0.7-1.0
1080
1.0-2.0
282
Roed らの報告中の TableE-1 の 11 組のデータの平均値[8]
粒径μ m
0.2-0.25
0.25-0.3
0.325-0.375
0.425-0.475
0.575-0.625
0.825-0.875
粒径中央値μ m 計測個数 Ln(個数)
0.225 164197
12.0
0.275
52503
10.9
0.350
10070
9.2
0.450
7302
8.9
0.600
503
6.2
0.850
180
5.2
表8
表 7 の粒径 1μm 以下のデータを階級
幅 0.05μm に換算
表 8 の粒径中央値を説明変数、Ln(個数)を目的変数にすると、相関の有意性:P=0.002、
相関係数 0.96、寄与率 0.93、回帰式 Ln(粒子数) =13.7-10.8×(粒子径μm) である。従
って、粒径 1.0μm 以下の粒子に対し、存在粒子個数は、0.05μm の区間に対して式
粒子数=e [13.7
― 10.8×(粒子径μm)]
により推定でき、この式を用いて算出した階級幅 0.05μm で区分けした粒子径 0~1μm
までの排ガス中粒子の相対体積分布を図 3 に示す。
図3
100
による測定粒子数から算出した、バ
80
相対体積
レーザースペクトロメトリー
グフィルター通過前の排ガス中粒子
60
の体積分布
40
Roed らの報告に基づく[8]
。
20
0
0.01
0.1
1
10
粒径μm(常用対数目盛)
大気中に存在する粒子状物質の研究は、1970 年代、Whitby らにより大きな成果を上げ
た[9]。Whitby は大気中に浮遊する粒子状物質を 3 つの形態に分類している。(A)核形
成モード;粒子径の体積による幾何平均値 0.015~0.04μm。(B)蓄積モード;粒子径の
体積による幾何平均値 0.15~0.5μm。(C)粗大粒子モード;粒子径の体積による幾何平
8
Iwami et al
Radioactive cesium leakageⅡ
5 January 2014
均値 5~30μm。環境省による微小粒子状物質健康影響評価検討会の報告書には、Whitby
らの報告を基に、大気粒子の粒径分布と組成の典型例が図 4 のように記載されている[10]。
図4
大気粒子の粒径分布
環境省 微小粒子状物質健
康影響評価検討会報告書
平成 20 年 4 月より転載[10]
図 3 に示した焼却炉でのサイクロン通過後バグフィルター通過前の排ガスをレーザースペ
クトロメトリーで測定した粒子体積分布と、図 4 の蓄積モードにおける粒子体積分布とは
完全といえるほど一致する。大気粒子の生成過程等は表 9 のように考えられており、放射
性物質を含む対象物を焼却する際にも、同様の機序により粒子分布が決定されると考えて
よい[10,11]。Roed らによる排ガス中粒子のカスケードインパクターによる測定結果の詳
細を調べると、蓄積モードと粗大粒子モードのピークは明らかに認められ、一部のデータ
で核形成モードのピークも認められている。図 4 の基になった Whitby らのデータグラフ
より体積を読み取り集計すると、測定された全粒子の体積のうち、0.1μm 以下の粒子の
体積は約 19%である[9]。この数値は宮古市の焼却炉から漏出している放射性セシウムは、
核形成モードに分布する超微小粒子状の放射性セシウムと、蓄積モードに分布する粒径 0.1
μm 以下の微小粒子状の放射性セシウムとの合計であることを示唆している。また、福島
県鮫川村で行われた環境省による実証事業の確認運転結果の放射性セシウムの回収率が
75%以下と低いのは、実験焼却炉の規模が宮古市の焼却炉の 20 分の1であり、粒子の凝集
が進まないうちに排ガスがバグフィルターを通過したためであると考えられる[12]。
バグフィルター前後の放射性物質濃度で放射性物質除去率を検討するのであれば、エア
ロゾルエレクトロメーター(EAA)や走査式モビリティーパーティクルサイザー(SMPS)
等も用いて、排ガス中粒子の粒径分布測定を行う必要がある。
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Radioactive cesium leakageⅡ
Iwami et al
表9
5 January 2014
微小粒子と粗大粒子の比較
環境省 微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書平成 20 年 4 月より転載[10]
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the source are credited.
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Radioactive cesium leakageⅡ
Iwami et al
5 January 2014
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農林業系副産物等処理実証事業の確認運転結果
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