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Insight2004-2005

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Insight2004-2005
時代を解くキーワード
2004-2005
「日本と日本人」への問題提起
坂の上の日本――シビリアンパワーとしての輝きを
五百籏頭 眞・神戸大学大学院教授
司馬遼太郎『坂の上の雲』になぞらえば、麓から尾根筋まで登
るとき、日本は素晴らしい力を発揮する。つまりゼロからの出発。
そういうなかでどこに突破口を見出すか。
「近頃の日本人は覇気がない。もう一度、松下村塾を」とは、
外部文明を猛然と学びながら自立性を保ち、自国の文化水準を
ハーバード大学東アジア研究所長エズラ・ヴォーゲル博士の指摘だ
高めるのが、日本の伝統的な型、得意芸だった。古くは唐天竺モ
が、実際、日本にはもう一度この国をつくるんだという
「志」が要る。
デルに遡り、中華文明全盛期にも辺境の島国であることが幸いし、
なのに安閑と胡座をかいてるから、韓国にも中国にも抜かれっぱ
自立性を保ちながら学び、独自の文明を築いてきた。そして明治
なし。日本は、激しい競争が渦巻く国際的な先端部分に飛び込
の『坂の上の雲』──長い鎖国の間に、産業革命・市民革命を成
み、まだまだ学ばなきゃいけない。アテネ五輪の金メダルラッシュが
し遂げ人類史上初のグローバル文明を築いた近代西洋に驚いた
示唆するように、先進社会には能力水準を押し上げるインフラが
日本は、再び猛然と学び、開国後僅か50年で日露戦争に勝利す
整っており、志さえ持てば世界水準は遠くない。だから、志ある若
るという世界史の大番狂わせを演じた。
者を世界最先端の大学院に留学させる。国際競争に耐え、
トップ
ところが坂の上に登り詰めたとき、日本は乱れやすい。
コミュニティの一員として21世紀を担う人材づくりこそ、日本の長期
非西洋唯一の近代国家となったのに、情緒不安定に陥り、第1
戦略、国家百年の計だ。
次大戦後、民族自決・脱植民地が叫ばれていたにもかかわらず、
一方、短期的に懸念されるのは、内向きのナショナリズムの高ま
国盗り物語的感覚でアジアの領土拡大に走り、世界を敵に回して
りだ。失われた10年の中で日本は情緒不安定になっているが、日
しまった。日本は国際認識が乏しかった。坂の上に登ったとき、
本を潰す能力を持つ国はどこかと考えれば、国際社会がリアルに
成熟した国際感覚を持てず、太平洋に大転落したのが60年前だ。
見える。一つはアメリカだが、日本は日米安保により世界一の猛獣
戦後はまたゼロからの出発。吉田ドクトリンで「安全と繁栄」を
を番犬にした。これは非常に賢いやり方だが、虎の威を借りて、も
戦後日本の国家目標と定め、安全は日米安保でアメリカに委ね、
う一つの大国、中国に対決姿勢で迫るのは良くない。情動に陥
繁栄もアメリカ主導の自由貿易システムに参加。世界に類のない
らず、協調して東アジアの共同体を築くよう求めたい。
成功を収めた。戦前、官僚主導で軍事大国をめざし成功しつつ
シビリアンパワー──人材以外資源を持たない日本は、経済国
も挫折した日本は、戦後、世界の通商国家をめざすという民間的
家として歩んだ戦後日本の輝きを胸を張って引き継ぎ、今こそ、開
ロマンで再生。2つの国家目標は80年代に完全に達成された。
かれた国益、共同利益を提示する時期に来ている。■
日本は再び坂の上に立ったわけで、国家目標の再定義こそが
80年代日本の課題だった。ところがここでも日本は失敗する。繁
栄を掲げ続け、バブルを貪る間にバブルが弾けて輝きを失った。
遅ればせながら今、日本がやるべきは、
「民の自律・充実」と
「国際的役割の充実」だ。坂の上の雲をめざして登るときは官僚
主導でいいが、尾根筋を行くときは民が一人ひとり自分で判断し
て進まないといけない。そして世界第2位の経済大国になれば、
自国の安全や繁栄だけでなく、
「ノブレス・オブリージュ」──みんな
の世話役を務める必要がある。余裕のある間にそれをせず、どん
底の中でやらざるを得ないのが、2005年の日本の状況だ。
いおきべ まこと
神戸大学大学院法学研究科教授
(日本政治外交史・日米関係)
1943年兵庫県生まれ。京都大学法学部
卒、同大学院法学研究科博士課程修了。
広島大学助教授、ハーバード大学日本研
究所客員研究員を経て、81年神戸大学
教授。著書『米国の日本占領政策』
『戦
後日本外交史』
『秩序変革期の日本の選
択』
『占領期』
『「官」から「民」へのパワ
ー・シフト』など。小渕内閣「21世紀日本
の構想懇談会」第1分科会「世界に生き
る日本」座長、小泉内閣「安全保障と防
衛力に関する懇談会」メンバーなど歴任。
CONTENTS
坂の上の日本――シビリアンパワーとしての輝きを
鼎談「日本人の心」
のあり方 ………………………………………………………… 01
オピニオン
……………………………………………………………… 10
Insight 049-070
Close upエナジー ………………………………………………………………………… 14
News Clip関西電力 …………………………………………………………………… 20
ダイジェスト
鼎談「日本人の心」のあり方
大橋 良介・大阪大学大学院文学研究科教授
白幡洋三郎・国際日本文化研究センター教授
佐伯 啓思・京都大学大学院人間・環境学研究科教授
●「日本人の心」の現状をどう視るか
西洋起源のものを「つまみ食い」するなかで、
日本人の精神の「核」が崩壊しつつある
[ハイデッガー]1889∼1976
Martin Heidegger 20世紀を代表す
るドイツの哲学者。現象学の創始者フ
ッサール(1859∼1938)の影響を受け、
1927年『存在と時間』を刊行、現象学
を存在論へ発展させた。
佐伯 きょうのテーマは「日本人の心」です。ここまで単刀直入に銘打つのは、逆に言えば、
日本人の心というのがそれほどわかりにくくなっている。
私自身、今、日本人の心が気になるんです。少し前までは日本に対しあまり関心がなかっ
た。西洋の思想なり学問なりをモデルに勉強し、日本に持ち込み、日本の中で論じるのが、
戦後日本の知識人の典型的なスタイルで、私もそういうやり方で西洋社会思想を勉強してき
た。ところが、そのうちいろんなことが気になりだした。
1つは、西洋思想はどこまでいっても西洋でつくられたものだということ。西洋の自由や民
主主義、市場倫理の背景にはキリスト教があるし、古代共和制などのモデルがある。西洋
のものを勉強して日本に持ち込んでも、正確には理解しにくい。戦後日本の社会科学は、
西洋近代を優れたものと見なし、
そこから外れた日本的なものは後れているという位置づけ。
だけどそういう見方自体、どうもうまくいかない。さらに言えば、我々が西洋から受けとめた
ものは、西洋の社会科学なり思想のほんの一部。西洋には、日本の先人たちがほとんど無
視してきた思想もあり、それらは日本に紹介されなかった。だから、西洋をモデルにしたと言
いながら、適当なところだけを「つまみ食い」。日本という文脈の中で我々はどういう形で社
会や思想を育てる芽をつくるべきか。改めてゼロからスタートすべきではないかという気分が、
40歳頃から濃厚になってきた。
もう1つ、現代日本の状況は、日増しに一種の社会秩序の崩壊というか、社会の規律が
深いところで急速に崩壊している印象が強い。この規律の崩壊は、社会が転換期にあり旧
来の秩序が機能しなくなったという、そんな簡単な話ではない。もっと全面的な意味で「日
本人の精神的な核」が崩壊している。それがいつからかを考えると、さしあたりは「戦後」
ではないか。戦後日本の辿ってきた経路が、日本人の精神のバランスを急速に失わせる方
大橋 良介
おおはし りょうすけ
大阪大学大学院文学研究科教授
(美学・哲学・現象学)
1944年京都府生まれ。京都大学文学
部哲学科卒、ミュンヘン大学大学院で
哲学科博士学位。滋賀医科大学助教
授、京都工芸繊維大学教授を経て現
職。83年ヴュルツブルク大学で、ドイツ
大学教授資格取得。ドイツ大統領から
ジーボルト賞を授与される。著書『放
下・瞬間・場所』
『時はいつ美となるか』
『「切れ」の構造─日本美と現代世界』
『日本的なもの、ヨーロッパ的なもの』
『内なる異国、外なる日本─加速する
インターカルチャー世界』など。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/
madaago
向に向かっている。そこで、日本人の心のあり方を、戦後の文化・思想との対比の中で改
めて問うてみたいという気が、この数年強い。
私はそういう問題意識を持っていますが、どうでしょう。年長者の大橋先生から。
大橋 年長ということで感じるんですが、日本人の心というテーマは多分、40代では、まだ
喋れない。そういう年齢になったかと思いました。
(笑)
佐伯さんの話を共感をもって聞きました。同じ問題意識を持っています。
私にとって「日本」というテーマは、大学院時代をドイツで過ごしたときに始まり、その意味
で若いときからのものです。海の向こうから眺めた日本は、日本にいたときとまったく違って
いたからです。留学の初めの頃、ハイデッガーに会いました。彼の思想は卒論で扱ったので、
ある程度わかっていると思い込んでいました。ところが、実は基本的なところがわかっていな
Insight
2004-2005
01
白幡洋三郎 しらはた ようざぶろう
国際日本文化研究センター教授
(都市文化論・庭園史)
1949年大阪府生まれ。京都大学農学
部卒、同大学院博士課程単位取得退
学。旧西独ハノーファー工科大学留学。
京都大学農学部助手を経て、87年国
際日本文化研究センター助教授、のち
教授。屋外レクリエーションの比較文
化研究、日本の生活文化の通文化性
など研究。著書『知らなきゃ恥ずかしい
日本文化』
『花見と桜』
『カラオケ・アニ
メが世界をめぐる』
『旅行ノススメ』、分
担執筆『個人の探求』など。
http://www.nichibun.ac.jp/researc
h/staff1/shirahata_yozaburo1.html
かったということが、そのときおぼろにわかってきました。簡単に言えば、テキストの脈絡は一
応理解していたつもりですが、なぜ彼がそう思索したのか、というところがわかっていなかっ
た。思想の土壌ですね。
これは私の個人的な能力の問題もあるけれど、一般的な問題でもあることに気づき始め
ました。例えば日本人は印象派の絵画が好きですが、印象派が出現するまでのヨーロッパ
の美術史、精神史は切り離されて、作品だけが受容された。ああ、良いなと感じることはあ
っても、伝統的なアカデミーの画壇の絵との相剋とか、キリスト教の伝統のなかでの芸術の
自立とかといった大きな背景が理解されたわけではなかった。佐伯さんが言われた「つまみ
食い」は、文化の受容の構造的な問題だったわけで、それを自分の哲学の勉強にも感じた
わけです。そこから西洋理解と日本理解の出直しを自分の中で始めたわけです。
それを含めて佐伯さんの問題意識は共有するんですが、1点だけそうかなと思ったのは、
日本人の精神構造の問題が「戦後に始まった」のか、という点です。私は「高度成長の時
代」じゃないかと思う。太平洋戦争の敗北は、たしかに日本の政治・経済体制がボキンと背
骨を折られた出来事だけれど、当時の人々にはまだ戦前の精神力のようなものが残ってい
て、奇跡的なスピードで復興をなし遂げた。日本人の「心」が全体的におかしくなり始めた
のは、
「モノ」があふれ始めた高度成長期ではないか、という気がしています。
同じ敗戦国なのに、
同じ敗戦国なのに、
心をなくした日本人、
心を残すドイ
ツ人
心を残す
ドイツ人、
心が見えない日本人
佐伯 それは後でもう少し話したい気がしますが、その前に、白幡さんから。
白幡 きょうのテーマは、私なんかは日々頭を悩ましてるテーマ、日本にとって欧米の考え
方や価値観が良い意味でも悪い意味でも「鏡」であり続けたことへ問題意識です。
私がドイツに最初に行ったのは1975年、西洋の都市計画史を学ぶためですが、都市計
画なるものがドイツは全く違っていた。日本の都市計画は、交通・住宅・水や電力といった生
活インフラの3つ。ところが彼らは、公園や緑地の問題を大きく取りあげる。ドイツでは、緑地
や休日の暮らし方が都市計画問題。それがすごく新鮮でした。
同じ敗戦国で、戦後復興も似た形でやってきたのに、何か違う。食生活では、既に高度
成長期に入っていた日本の方がバラエティ豊か。基幹食品より嗜好品に目が向いていたの
に、彼らはパンとミルクと肉があればいいという、まだ戦後生活みたいな状況。ところが住ま
いになると、日本人にとって緑、公園は一種の嗜好品だけど、彼らには都市の基幹的なも
のだと。この違いが非常に印象的でした。
そのとき日本を振り返って、今まで取り入れようとしたものは何か、これから何が必要か、
を考えた。そもそも取り入れるという発想自体が問題で、むしろ我々の中に既に何かあっ
たのでは、と考えて、江戸時代に思い至ったわけです。ドイツに行くと、江戸時代を感じる。
のんびりして、基幹的なものしかないけど、エコノミーに生活を楽しむ。比較してみたら、日
本の方がずっと早くそういうものを実現していたのに、なぜ気づかなかったんだという思いも
あって、私は日本文化研究を始めたわけです。
[印象派]
モネ、ルノアール、セザンヌ、ドガ、ピサ
ロなど、19世紀の西洋絵画に現れた自
然主義的動きを起源とする「印象主義」
を掲げた画 家たちの総 称 。語 源は、
1874年、パリの写真家ナダールのアト
リエで開かれたグループ展に出品したモ
ネの作品『印象、日の出』に由来する。
室内で宗教画や風俗画を描く従来の
絵画と異なり、戸外に出て太陽の光を
受けて輝く水面や木々の煌めき、空気
の動き、また通りのテラスで楽しむ都市
生活者などを絵の対象とし、刻々と変
化する印象を点描によって絵画化した。
02
2004-2005
Insight
大橋 ドイツと日本は、確かに戦後復興は似ているが、よく見ると少しずつ違います。日本
は戦後すぐ、にょきにょきと新制大学ができた。戦後日本は工学部のサクセスストーリーだと
思いますが、
ドイツはエレクトロニクスで後れを取った。それに追いつくことも含めて新制大学
をつくり始めたのが70年前後。私が行った69年頃、大学教授の給料はドイツの方がよかっ
たが、今や日本の方がいい。日本に経済的に追い越されたのが70年代初頭。ドイツ人は
非常に誇りを傷つけられた。その後、80年代はパックス・ジャポニカみたいな感じで日本が
急上昇し、格差は広がる一方。あれよあれよという感じでドイツ人は自信喪失、経済的にも
思想文化的にも目を覆わんばかりです。
佐伯 ドイツと日本を対比すると、どちらも敗戦で精神的なものが相当ズタズタになった。
そして確かにドイツからは戦後西洋をリードする哲学も音楽も、何も出てこない。ドイツの文
化的な力は歴然と落ちていますが、日本はもっとひどい。
落ちてしまうと、もともと堆積されたものだけが残る。あるいは戦後というものの理解の仕
方なのか、ここで日独の違いが現れる。多くのドイツ人は未だに反アメリカ的心情が強い。
つまり、確かに我々は戦争に負けた。かといってアメリカが正しかったわけでもないし、アメ
リカ文明なんて軽薄なものでドイツ文化がだめにされるのは以ての外という意識が強い。し
かし日本では、戦争に負けたのは日本が悪かったから。戦争自体、日本には義がなくア
メリカが正しかったという理解。だからアメリカ経由の西洋的近代化を率先して受け入れな
ければ、立ち直れないという話になる。この精神パターンの違いは決定的に大きい。きょう
のテーマの「心」ということでは、
ドイツ人にはまだしも心が残っている。日本人はそれがな
くなったかどうか、少なくとも表面的には見えない。
大橋 それは自分の国の歴史をどう見るかという問題と密接に絡む気がします。ドイツ人に
はナチス問題というトゲが深く刺さって、事あるごとにそのトゲを押し込まれるという精神状況
を、背負うようになった。日本の場合、太平洋戦争そのものが全体としてアジアへの侵略戦
争という側面だけがクローズアップされて、太平洋を隔てた米日の力の対立とか、ヨーロッパ
列強との競争とかといった側面は、顧慮されなかった。占領政策のなかで、それはできな
かった。そして「義のない戦いだった」という全面否定がずっとなされて、
「国」という意識も
すぐにナショナリズムと結びつけられ、しゃきっと立つ背骨を、か細いものにされてきた。
若い人の世論調査で、アメリカのティーンエイジャーには、立身出世の意欲がある。日本
は、そういうのはもうシラけてしまう。立身出世がいいとは思わないが、ある種の「気概」がな
いと、国のエネルギーも衰えてしまうという感じがしてしようがない。
宗教的倫理や権威ある秩序構造に支えられた
宗教的倫理や権威ある秩序構造に支え
られた
社会的通念が規範を担保する
社会的通念が規範を担保する
白幡 ドイツの場合、年寄りの世代は、ナチスの後遺症から戦争中のことを堂々と説明で
きないので、発言する自信がない。だけど子供の躾や社会秩序を伝えるにあたり、キリスト
教倫理みたいなものは、それとは別に強く残っているのではないか。一方、日本は戦後民
主主義を一からやる中で宗教教育も全部否定したから、全く軸がない。
80年代後半ドイツに行ったとき、日本ではまだいなかったピアスの若者がいた。感動した
のは、そんな若者の電車での振る舞いが傍若無人でなかったこと。お母さんが乳母車を電
車に乗せるとき、率先して降りて手伝った場面にも出くわした。若者たちが世界的によく似
た格好をしていても、その背景にある「心」は大分違うなと。
佐伯 例えば教育を考えると、僕らは戦後民主主義教育を受けたけど、先生は戦前だか
ら、口では人権だ平等だと言っても、やることは厳しい。平気で怒鳴るし、バケツ持って廊
下に立ってろとか(笑)。それが日常の規範だという意識は、我々はいつの間にか叩き込ま
れた。ところがある時期から、先生は子供を叱ってはならない、先生と生徒は対等だという
佐伯 啓思 さえき けいし
京都大学大学院人間・環境学研究科
教授(共生文明学・現代文明論・現代
社会論)
1949年奈良県生まれ。東京大学経済
学部卒、同大学院経済学研究科博士
課程修了。滋賀大学教授などを経て
現職。政治、文化、宗教など幅広い見
識で市場経済や大衆社会を分析、文
明批評も展開。著書『国家についての
考察』
『現代日本のイデオロギー』
『市
民とは誰か』
『現代日本のリベラリズム』
『アメリカニズムの終焉』
『欲望と資本
主義』
『隠された思考』
『時間の身振り
学』
『偽装された文明』など。
http://www.h.kyoto-u.ac.jp/staff/
212_saeki_k_0_j.html
話になった。そこまで戦後民主主義が拡大解釈されてしまうと、教育は成り立たない。まし
て徳育は成り立たない。家庭でも親子は対等、あるいは別の価値観で生きているという話
が出てくるから、権威なり道徳、規律を教える場がなくなってしまう。
向こうは違う。仮に学校教育が崩壊しても、最終的には宗教に支えられた徳なり、社会
の中に権威を持った秩序構造がある。子供は大人になる途上の未成熟な存在だという共
通理解が、社会的通念として残っていて、その社会的通念が規範を担保する。
大橋 確かに思い当たることがあって、私はアメリカ体験は皆無に近く、数年前ロサンジェ
ルスに行ったとき、いろんなカルチャーショックを受けました。驚いたのは、家庭の中で父親と、
2∼3歳でも女の子と一緒に風呂に入っちゃいけないと。まさかと思いましたが、本当に罰せ
られた例があるとか。それは背後にピューリタンの厳格な倫理がある。さらに遡ると、そこま
Insight
2004-2005
03
で厳格にしないといけない民族だと言うんですね。背景にある宗教的真情、民族的な違い
──日本はそれを抜きにして、アメリカンデモクラシーのシステムだけ取り入れてアメリカナイズ
された面が大きいんじゃないか。
●「日本人の心」とは?
●「日本人の心」とは?
武士道──
精神の修養を通して無の境地をめざす
精神の修養を通して無の境地をめざす
武士道──
佐伯 戦後日本では日本人の心がなくなったみたいな話ばかりなので、少し前向きな、じ
ゃあ何かないのか、日本人の心とは何か、という話にしたいんですが。
白幡 例えば印象派の絵を日本人が好むのは、技法とか「切り取られた美」としてであり、
なぜこういう絵画が生まれたかという背景には迫らない。逆に浮世絵がフランスに入ったと
き、フランス人が感心したのはやっぱり技法と美。にもかかわらず、彼らはその背景にも迫
っていく。日本の文化的特徴として、型の美しさや高度な技巧を尊ぶ気配があり、その背
後の精神を知るより、受け入れに終始するという問題がある。
ただ、日本を弁護すれば、取捨選択せず全部取り入れるのは日本の良い面。多種多様
なものを取り入れる中で、その思想的背景にまで迫らない欠点を補えば──私はその点は、
これほど国際交流が増えたなかでは、何とかなるのではないかと。多様な人が多様な関心
でアプローチするようになっているから、意外と乗り越えられる気がする。
大橋 取り入れるときの姿勢なり方法が、日本とヨーロッパは恐らく違う。印象派の出現は、
信仰が過去のものになり、例えば光を見ても、もう神の光じゃなく自然の光だという大きな精
神史的転換があった。ヨーロッパ精神史という中心軸が1本あり、その動きが創作活動に
反映されている。日本の場合、確かに何でも取り入れて、不思議なことに何も変わらない
(笑)。外来語をどんどん取り入れて言葉が乱れると言っても、日本語の構造は変わらない。
日本文化が中国を取り入れヨーロッパを取り入れアメリカを取り入れて、じゃあ日本人が欧
米人になったかというと全然ならず、日本人であり続ける。
受け入れる基本構造が全然違うとき、いい場合は大きな自信というか、何を取り入れても
平気で消化して国風化してしまう。それは生命力豊かな元気な時代。逆に取り入れたもの
に同化したり、何か魂を抜き取られるのは、非常に悪い側面ですね。
佐伯 文明は普遍化して伝達できるが、文化は本質的に伝達が難しい。恐らく我々はドイ
ツ人がベートーベンやワーグナーを聴くのと違う聴き方をしている。そして自由や民主主義、
産業技術などの文明が入ってきたとき、それを我々の歴史的に堆積された文化の中で解
釈するが、そこに大きな「葛藤」が生じる。その葛藤をどこまで自覚的に引き受けるか。明
治時代、文明開化こそ日本の独立だと言って積極的に西洋文明を受け入れた福沢諭吉で
[福沢諭吉]1835∼1901
ふくざわゆきち 思想家、教育者。大
阪堂島の中津藩(現大分県)蔵屋敷に
生まれ、緒方洪庵の適塾で蘭学を、江
戸に出て英学を学び、築地に英学塾を
開く
(後の慶應義塾)。勝海舟らととも
に咸臨丸で渡米したのをはじめ、幕府
の遣外使節団に随行して3度洋行、文
明開化を牽引する。著書『西洋事情』
『学問のすゝめ』
『文明論之概略』など。
さえ、晩年は「日本人の魂を失ってはならない」と、危機感を持つようになる。もう少し後の
世代だと、夏目漱石は西洋文明と日本文化の相克で神経衰弱になっていく。これはどうに
も解決し得ないけど、葛藤があるかないかはやっぱり大きい。
大橋 福沢が「失っちゃいけない」と言ったときの「日本人の心」とは、どの辺を指していた
のでしょうね。
佐伯 福沢は明らかに「武士の精神」、武士的な魂だと思います。
白幡 武士が持っていた倫理や凛とした日常の振る舞い、
「武士暮らし」というか、
「葉隠
[葉隠思想]
江戸時代、佐賀・鍋島藩の山本常朝の
談話をまとめた『葉隠』が伝える武士の
心得、武士の処世哲学。
「武士道とい
ふは死ぬ事と見付たり」や「武士たる
者は死に狂ひの覚悟が肝要なり」とい
う言葉が有名だが、
「非常の武士道」
というよりむしろ「平常の奉公道」を説
いている。
04
2004-2005
Insight
思想」。これが多分、福沢が思っていたものではないか。
私は「福沢諭吉の運動会」という論文で、福沢が晩年、身体運動にどんな関心を持った
つ
かを書いた。彼の運動とは、まず米搗き。食うために身体を動かすのが1つ。もう1つは居合
抜き。毎日刀を振る。で、若干散歩する。その間に西洋の文献や日本の新聞を読みながら、
武士のように暮らす。日々の暮らしから滲み出る生活態度を「武士」と見てたんじゃないか。
大橋 武士道は江戸時代の「日本人の心」。平安、鎌倉、室町、明治、それぞれの時代
に失っちゃいけない日本人の心があるように思いますが、どの辺が一番日本人的かな。
佐伯 日本人は、武士道もそうだけど、華道、茶道など何でも「道」にしてしまう。様式化し
て、居合道にしても、一人で刀を振るのは、別に戦術として機能を求めているわけじゃない。
つまり、現実に戦って役に立つことを求めているのではなく、あるスタイル、型をつくる。それ
が自分の精神の修養になり、体を鍛え、人間倫理を与え、自分自身の現世的な利益、利
得、私(わたくし)
を超えた何かに近づいていく。
[宮本武蔵]1584∼1645
みやもとむさし 二天一流(二刀流)の
剣豪。剣を通して人生を探求、集大成
とも言うべき『五輪書』を著す。剣術だ
けでなく、絵や書、彫刻など諸芸に通
じ、空に向かって細く真っ直ぐに伸びた
枯枝にとまった鵙(もず)を描いた「枯
木鳴鵙図(こぼくめいげきず)」はじめ
優れた作品を数多く残している。
宮本武蔵が型を突き詰めていくわけです。最終的には、斬らずに相手を倒すのが究極
の剣の道。剣であれ書であれ、最終的には無心の状態をめざす。そういう独特の感覚が
ずっと日本にある。それがいろんな形で、仏教にも、武士にも、華道にも表れる。
大橋 そうですね。本居宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日ににほふ山桜花」。外国
文化を何でも取り入れるけど、山桜的にいつも無地で真っ白。ヨーロッパ精神史のようにキ
リスト教という核の上で持つ自信ではなく、頼る軸を持たず――無という言葉を使えば、何
もないところに自信を持つという基本が日本には昔からあったんじゃないか。
禅に関心を持つドイツの哲学者が20年ほど前に日本に来たとき伊勢神宮を見て、これは
禅より以前からあり、禅を取り入れた受け皿ではないか、と。受け皿として神道のような、要
するに無地の白地のままで何でも取り入れる面が、時代的な性格を越えて日本にはずっと
あったんですね。
造形性の高い縄文の地下水脈を
造形性の高い縄文の地下水脈を
無地の弥生で押さえ込む
無地の弥生で押さ
え込む
佐伯 神道の基礎にあるのは一種の純粋性。それを突き詰めると透明になっていく感じ。
日本の精神文化の核にあるものについて、白幡さんはどう見ていますか。
白幡 無地というか生地のままというのはありますね。時代ごとの芸術や美を考えたとき、
室町中期には禅の思想がいろんな芸術をつくりだす。水墨、そして石庭は日本の発明と
言っていい。中国には石だけの庭はあるが、素材を減らす発想はない。中国は素材をつけ
加え、饒舌に語らせたい。日本は語らず「引き算」で作品をつくり上げる。武蔵のモズの絵
なんか一筆書き。媒介を置かない方がピュアな美という発想がベースにある。
ただ、室町後期から桃山期はロココに似てるんです。金と緑と白、あるいはバロックだっ
たら赤を使う。人間の精神性が爆発しそうなとき、沸き立つときに表現する色が、金と緑と
白と赤──この色使いが西洋と同じというのは、驚きです。国旗にもそれはあって、イタリア
は赤、白、緑。バロックとロココが入ってる。
日本の場合、ロココ・バロック調と、ピュアな無地、両方あると思うんです。
大橋 こんな仮説はどうでしょう。桃山や江戸には非常にバロック的な造形性というか、色
彩感覚がある。私は、無地とか真っ白というときには、弥生文化的な感じがするんですよ。
あっさりして、淡白で、イメージとしては白。ところが縄文というやつは、最初から濃密な造形
性がある。単なる弥生的なものは、淡泊すぎて造形的でない。ところが縄文的なものが文
[本居宣長]1730∼1801
もとおりのりなが 国(古)学者。医業
で生計を立てながら古典を研究、賀茂
真淵に学ぶ。著書『古事記伝』
『玉勝
間』など。儒教や仏教を基礎とした考
えを批判し、人間の素直な心情を表し
ていることを評価しないと古代文学は
理解できないとする文学論「もののあ
はれ論」などを展開。
「しき嶋のやまと
こゝろを人とはゝ朝日ににほふ山さくら
花」の句は、宣長61歳の自画像に書か
れており、
「山桜の自然で素直な美しさ
のように素直に生きるのを信条としよ
う」という解釈のほか、第二次大戦中は
愛国の句としても解釈された。
[禅]
4∼5世紀頃、中国で始まった実践を強
調する仏教の宗派。言葉や文字に信
頼を置かず、ドグマ(教義)を持たず、言
葉を超えた本質、つまりブッダの教えの
原点へ、座禅などの修行を通して直接
的アプローチを試みようとするもの。
[バロックとロココ]
バロック
(baroque)
とは、ポルトガル語
のバロッコ(ゆがんだ真珠)を語源とし、
17∼18世紀、ルネッサンス後のヨーロ
ッパに流行した壮大な構想と細部にわ
たる過剰な装飾技巧が特徴の美術様
式。ロココ(rococo)は、ロカイユ(貝
殻装飾)を語源とする18世紀の美術様
式。 バロックが「豪壮・華麗」であるの
に対し、ロココは「優美・繊細」。
「猫脚」
など微妙な曲線使いも特徴。
[アポロンとディオニュソス]
アポロン(Apollon)はギリシア神話の
太陽神。光明と理性の神であり、芸
術・医術・弓術の守護神。一方、ディオ
ニュソス(Dionysus)は酒と酔いを司
る酒神。ニーチェの『悲劇の誕生』で
は、ギリシア芸術におけるアポロン的な
もの(明晰さや夢と理想)とディオニュ
ソス的なもの(陶酔、混乱、熱狂)を対
比させながら悲劇について述べている。
化史のなかで地下水となって流れていて、それが時々噴出する。その造形力と弥生的な感
性とが結合するところに、日本の思想や芸術として見るべきものが生まれる。桃山時代も、
キリシタンなどの触媒の働きと、群雄割拠のエネルギーのなかで、そういった結合が生じた
という感じがする。
白幡 隙あらば爆発しようというのが日本の通奏低音で、その上に文明化された精神、弥
生的なもので抑えてるイメージですかね。これは初めて聞いたなあ。
佐伯 アポロンとディオニュソス、あるいは形にならない混沌としたものと、造形を明瞭につ
くる構成的なもの。それは西洋にもあるんじゃないか。西洋はディオニュソス的なものをまと
めてアポロンに仕立てあげようという意思が常に働いている気がする。
白幡 日本はどっちが生地かは難しいですよ。アポロン的静謐さが生地なのか、ディオニュ
Insight
2004-2005
05
[心の教育]
2002年4月からの新学習指導要領策
定にあたり、文部科学省が教育改革の
特に重要なポイントとしたのが「心の教
育」の充実と「確かな学力」の向上。
新学習指導要領は、個に応じた指導の
充実に努めることにより、基礎・基本を
確実に定着し、それをもとに自ら学び
自ら考える力など、21世紀に通用する
「生きる力」の育成をめざしている。
[鎌倉新仏教]
平安末期から広まった末法思想(釈迦
入滅後二千年∼一万年間は仏教は省
みられず修行する者もなく、仏教に背
く行為が行われ、戦争や天変地異が横
行するという終末観)により民衆が不安
に陥るなか、鎌倉初期に誕生した庶民
のための新仏教。法然の浄土宗、親
鸞の浄土真宗、一遍の時宗といった浄
土系、栄西の臨済宗、道元の曹洞宗
といった禅系、日蓮による日蓮宗など。
[鈴木大拙]1870∼1966
すずきだいせつ 仏教哲学者;禅思想
家;宗教家。石川県出身。東京帝大文
科大学選科修了。鎌倉・円覚寺の今
北洪川、釈宗演に師事、大拙の道号
を受ける。学習院大学教授、大谷大学
教授を務めるとともに、国際的に活躍。
ハワイ大学などの講師として仏教哲学
を講じ、仏教思想を欧米に広める。著
書『禅思想史研究』
『浄土系思想論』
『日本的霊性』
『禅と日本文化』など。
[西田幾多郎]1870∼1945
にしだきたろう 哲学者;京都帝国大
学名誉教授。石川県出身。京都帝大
助教授時代の1911年『善の研究』で
「純粋経験」を提示。その後、
『自覚に
於ける直観と反省』など西洋哲学に禅
をとり入れて発展させた「無の論理」
「場所の論理」を展開、独創的な「西
田哲学」の体系を築いた。他の著書
『働くものから見るものへ』
『一般者の
自覚的体系』
『哲学の根本問題』
『哲
学論文集』など。
[ホッブズ]1588∼1679
Thomas Hobbes イギリスの哲学
者、政治学者。著書『リヴァイアサン』
で、人間は自己保存の欲望
(コナトゥス)
によって動かされる利己的存在であり、
社会の自然状態を「万人の万人に対
する闘い」と設定。この無秩序状態を
脱するため契約によって国家がつくられ
るという「国家契約説」を説いた。
ソス的喧噪が生地なのか。
大橋 アポロンは非常に自我的、自意識的、理性の象徴みたいな面がありますが、無地と
いう場合は、むしろ無心というか、理性までも消してしまう方向がある。
本能を抑制する知恵を持つ
穏やかな協調性が日本人の本質だ
穏やかな協調性が日本人の本質だ
本能を抑制する知恵を持つ
佐伯 私は「心」という言葉こそが一番日本的という感じがしています。タイの留学生が、心
という言葉を研究したいと。心という言葉はタイにはなく、恐らく世界で日本にしかない。
spiritでもsoulでもmindでもない。心は微妙な概念です。単に肉体と精神を分け、精神を
言ってるわけでも抽象的な人間の思いでもない。もちろん心臓のことでもない。心と言ったと
き、
「まこと」とか純粋さ、無私とか、若干の価値が入ってくるんです。
大橋 禅ではそのニュアンスを「心」と表すときもあれば、
「無心」と表すときもある。心を無
くすことが心。無心の方が心に近いという理解があって、面白い。
「心」とくれば、
「身」。身
を入れるとか、人の身になるとか、あれも肉体とは訳せない。
佐伯 無私、無の境地、純粋さという価値観は、西洋近代の価値観とはかなり違う。西洋
近代の自由主義は、
「私」を表現しろ、自分の権利を主張しろ、自分の欲望を実現しろと
いう発想でしょう。日本人の「心」の概念とは最初から対立する。そこに、今の時代に改め
て日本人の心とは何か、気になる理由があるんですね。
白幡 私は、心なんかわからないと思うんですね。
「形」ならわかる。心は形に表れるから、
表れない部分は放っておいていい。だから、形。人間の「形」で言えば、身体技法の研究
を深めていくことなどで、心の本質に迫れるように思うんです。
もう1つ、大橋先生の提起された話、つまり素質的なものがベースにあり、それが例えば
子供の犯罪とか暴力事件の形で噴出していると見ると、個性尊重の議論はどう考えればい
いのか。これまでは画一的によい子を育てるため物質的なものは平等に豊かに与え、その
結果、心に対する配慮が希薄になった。だから心の教育とは、個性の発揮を自由化する
発想。だけど日本の底流が個性主義なら、むしろ個性や我を出さず、無私になるような心
の世界へ戻るべき。となると個性化教育とは一体何か。
私自身は、いま「個性強迫症の時代」ではないかと思う。人間、個性は放っておいても出
るもので、教育や社会は、個性をどうやって丸くするかが大事な役割。放っておいても自然
に育つものこそ個性であり、そんなもの助長してどうするんだ(笑)
という気がある。これは、
日本人の底流を上手に抑えてコントロールするやり方がいいのか。もし底流が逆転して静か
だったら、やっぱり個性は教育せないかん。どう考えたらいいのか。
大橋 縄文的な造形力、生命力のマグマが噴出するのは、だいたい時代の変革期です
ね。平穏無事なときは、地下に潜っている。空海や最澄は遣唐使が中国文化を日本に持
ち帰る時代、日蓮、法然、親鸞、道元などの出現は、鎌倉という新時代、また明治になって
鈴木大拙や西田幾多郎が出たときも、西洋文明が日本に押し寄せた時代。いずれも精神
史的にはダイナミックな時代です。今はアスファルトで地面を覆うように、グローバリズムとかア
メリカニズムで覆い、のっぺらぼうにしている。アスファルトをもう一回突き破るような土壌の生
命の噴出力がないと困る。それにはアスファルトをちょっと取り去って、土肌の地面を出すこ
とが必要だと思う。
佐伯 社会秩序が規律から成り立っているとすれば、規律が崩壊すると、社会秩序が壊
れ、人間の自然性がもろに出てくる。ところが、戦後の個性化とか自由化、能力主義は、
それ自体が秩序破壊です。人間の自然性をそのまま噴出させる運動というか、価値観。そ
ういうことを続けていくと、規律が壊れ、人間の自然本能がそのまま出てきて、人を殺した
りしてしまう。だけどこの発想自体、非常に西洋的。つまり、社会秩序を一遍崩壊させると、
ホッブズが言ったように人間は欲望のまま好きなことをやる自然状態に戻る。西洋はそれが
06
2004-2005
Insight
あるから、常に社会秩序、規律を言い続けてきた。
日本は自然の理解が違う。人間の自然本能の中に協調精神とか、もう少し穏やかなも
のが入っていたり、自然性と社会性が完全に分かれてなくて、中間に人間の本能を抑制す
る何かがあった。恐らくそれは歴史的な知恵として蓄えられたもので、そういう知恵を文化
として継承していけば、多少規律が緩んでも一気に人間の自然本能が露呈するわけでは
ない。ところが戦後の問題は、本能を抑制する伝統的な知恵を崩壊させてしまったから、
いきなり自然状態に戻ってしまった。そんな感じがしますね。
「貴賤群集」
──花の下の社会に
「貴賤群集」──花の下の社会に
日本人の統合力と組織化力を見る
日本人の統合力と組織化力を見る
白幡 日本人の個性とか個人ということで、私は10年ぐらい、花見のことばかり考えていま
す(笑)。先日もイタリアに行き、花見があるかを確認してきた。シチリアのギリシャ文明遺跡
が残る街一帯にアーモンドの木が植わっていて、2月に花が咲く。それを見に集まると聞い
たので行ってみたが、結局花見は、私の定義で言えば、なかった。
花見のときに使われる言葉で、鎌倉期から「貴賤群集(きせんくんじゅ)」という言い方が
あります。花見の場所では貴賤はともに群集する。千年ほど前からそれが日本の社交の理
想状態と考えられている。社交はヨーロッパでは階層別のコミュニケーション。一方、日本の
花見は貴族も賤もない。
「個人」とは、日本の場合、集団の中に存在する1人のことであり、
集団から飛び出すのを「個人」と言うわけではなかったのではないか。日本の個人は、貴
賤群集的な集団の中で安定的に存在するのをよしとする。個性の尊重とは、貴賤群集か
ら飛び出るんじゃなく、その中にあっての個性じゃないかと。
佐伯 その中で面白い和歌、句を詠むとか、そういう感じでしょうね。
白幡 ええ。それで花見は20∼30人のグループで、上野公園にはその集団が 100ぐらい
集まる。小集団を単位とした大集団、いわば一時的にでき上がる「花の下の社会」。これは
西洋では見られない。こういう歴史的に続いてきた人間関係と秩序のあり方を一度きちんと
取り上げて、次の例えば個人なら個人の生かし方に反映させないといけない。
大橋 貴賤群集というのは、貴賤はあるけれども、桜の下で集うときは、貴賤を一回取り払
い、それ以前の本来の自然に戻ってみんな交わる、ということでしょうね。先ほど自然の捉
え方がヨーロッパと日本で違うと言われたけれど、本来の自然性というときの自然は、人間
のもつ本性としての自然です。そのレベルで、日本人とヨーロッパ人の感性の違いなどもあ
るような気がする。ヨーロッパでは自然と人工が対立させられ、自然とは人間の手が入る以
前のものです。キリスト教的な枠のなかで、その自然観が洗練されていくと、宇宙観のような
規模でも、ヒエラルキーというか階層構造が考えられてくる。でも「貴賤群集」というときは、
現実にいろんな階級はあることは承認しながら、同時に、それを取り払った状態が現前して
いる。人工以前であるとともに人工以後の新しい自然の状態でもある。そういった自然観
念は、期せずして花見にも現れるという感じですかね。
佐伯 私も花見の話を聞いて、2つの意味で非常に日本的という感じがしました。1つは、
いろんなものを統合する場なんですね。桜は儚さも華やかさも表し、その下で人間が一瞬
だけど浮世を楽しもうと、自然の摂理の中に人間の快楽や生活をうまく統合させる面があ
る。それに貴族も商人も階層を超えて統合した人間のあり方も示す。だから日本人の自然
観は、人間対自然じゃなく、人間が自然の中に溶け込む形。本質的に物事を統合する方
向に向かっている。私は日本人の能力は「統合する能力」だと思います。ヨーロッパ人の分
解・分析的な考え方とは違うやり方が、日本人の特質としてある。
もう1つは、自然と社会の間に、人間の社交の場というか、20∼30人規模の集まり、コミュ
ニティなり組織をうまくつくる知恵が日本にある。これは日本のかなり重要な特質でね。ごく
自然に普通の人が集まり、互いに何となくコミュニケーションがとれて信頼ができ、特に約束
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したり契約をしなくても、うまく組織をつくってしまうのは、日本人の能力です。少なくとも戦
後の日本的経営の核心は、
「組織づくり」の能力。組織の中で人間をうまく使う、あるいは
互いに連携させる力だと思うんです。
大橋 その場合に、リーダーシップという観念がヨーロッパとは違う。
佐伯 違いますね。日本の場合は、組織をうまくまとめる人がリーダーなんですね。
白幡 ただ、日本では物事の決定プロセスが変わってきた。以前は何となくまとまっていた
のに、最近は方向をまず打ち出し、何が何でも決めていく。
貴賤群集型の日本と個性発揮型の西洋。日本は対立があっても穏やかに溶解させて
物事を進めていたのに、今は一旦決まると了解がなくても進む感じ。政治家対官僚、個性
対集団、それらが妙にギリギリと対立している。貴賤群集型こそ他にない日本のベースだと
思うので、もっと協調を考えることが大事だと思います。
●「日本人の心」再生と創造へ、課題と方策は何か
●「日本人の心」再生と創造へ、課題と方策は何か
インターカルチャー、
グローバル化の中で多様なナシ
ョナルの共存を
グローバル化の中で多様なナシ
ョナルの共存を
インターカルチャー、
佐伯 では日本人の心の再生へ、今後の課題とか方向性はどういうものでしょう。
大橋 グローバリズムの中で、改めて自国の歴史が持つアイデンティティと独立性を見直そう
という動きが活発ですが、課題は、ナショナリズムに陥らず、グローバルな視野を保持しながら
独自性を自覚することですね。グローバリズムの中で、カルチャーの独自性を見出す動きがナ
ショナリズムに陥ると、ちょっと時代錯誤。そうじゃなく、インターカルチャーというか、グローバル
な政治経済の網の目が地球上を何重にも覆う中で、独自な生き方をめざしながら共存する。
佐伯 以前『Insight』の鼎談で、松原隆一郎さんらが相撲と柔道は違うという話をしてい
た。柔道は完全に国際化して、国際的競技になった途端につまらなくなったと。相撲は国
際化しないんです。もちろん外国人力士は入ってきているけど、国際化しない。
白幡 確かに、メンバーの国際化とルールや本質的なものの国際化、大分違いますね。
佐伯 そうそう。相撲は、外国人も日本のルールに従ってやってくれという話。極めてオー
プンな形で、しかし非常にナショナルな文化を守っている。本当の意味での国際化、グロー
バル化というのは、相撲のような形だと思うんです。
白幡 日本でナショナリズムは保守主義や国家主義に結びつけられるから、ナショナリズム
と言われると怯む。そうではなくて、例えばドイツにとってナショナルなものとは、隣接する8カ
国はじめ非常に多様な他の文化がある中で、自国文化をどう見るかというもの。日本の場
合は「内」と「外」、
「ナショナリズム」対「世界普遍」。こういう見方をすると、自己主張は全
部ナショナリズムで、しかも唯我独尊と誤解しかねない。多様なナショナリズムがあることをど
うやって我々が理解できるかは、非常に大事です。
大橋 ヨーロッパの国境は、車や徒歩で行って、検問所を通過すると別の国になる。その
感覚と、海に囲まれている日本人の感覚とでは、全然違いますからね。
白幡 だから、多様なナショナルな考えがあって、その一つとして日本も主張していいという
自信、安心感はまだまだ少ない。それをどうやってつくるかを考えないと。
日本型の「生活文化」
と
「釣書」の一体化へ
純化された美意識の持つ造形力を見直したい
純化された美意識の持つ造形力を見直したい
日本型の「生活文化」と「釣書」の一体化へ
佐伯 その突破口はどこにありますかね。最後に、日本が世界に誇るべき日本人の心、あ
るいは我々は何に対して自信を持つべきか、をまとめていただきたい。
白幡 今、日本が誇ろうと思わなくても、世界が注目しているのはサブカルチャーです。ヨー
ロッパでは子供向けのアニメチャンネルまでできていて、日本の作品がたくさん放映されて
08
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Insight
いる。かつてのアニメは極めて単純なファンタジーの世界として描かれていたが、日本のアニ
メや漫画には、子供を主人公にしながら深い友情や憎しみ、親に対する反発とか、教育的
には問題があるものも包み隠さず真情を出した作品がある。これは欧米のサブカルチャーに
はない、いわば日本型の生活文化――サブカルチャーというより「ライフカルチャー」。それが
世界に受け入れられている。暴力的な面もあれば心優しい面、反感、憎悪もあれば愛情も
ある。人間の思いを正直に表現する。それが日本の生活文化の特徴であり、今世界じゅう
で受け入れられる生活文化じゃないかと思うんです。
[ラスト サムライ]
2003年アメリカ映画。舞台は明治維新
直後の日本、テーマは武士道精神。政
府軍に西洋式の戦術を教えるため来
日した米国将校が、時代に抗い自らの
名誉に生きるサムライに感銘を受け、彼
らと運命を共にしていく姿を、壮大なス
ケールで描いたもの。主演トム・クルー
ズ。アカデミー賞最優秀助演男優賞に
渡辺謙。
一時は、もっと高度な芸術や思想を輸出すべき。国際化の中で俗な文化ばかり輸出して
たらだめだと言われたが、日本文化とは美しい歌舞伎や芸術的な華道、茶道ばかりではな
い。
「釣書」とか「よそ行き」はやめ、あるがままの日本を正直に伝える生活文化の提供にこ
そ意味がある。他の文化を侵略したり破壊することもなく、むしろ自主的に選択してもらう。
これを日本の姿勢、関西の姿勢として続けていくべきだと思いますね。
大橋 釣書と素顔、なるほど。美意識という点では、両方が明確に分けられるかどうか、
ちょっとわからないな。いずれにしても、日本がグローバルな時代に発信できるものは「美意
識」だという気がします。美意識は、上等なものにも日常的なものにも及ぶ。どの国もどの
人間も持っているが、不思議なことに一つのまとまりを持つ社会とか時代とかでは、そこでの
一つの傾向が現れる。日本人の美意識も、時代によって傾向がちがうわけですが、ただ、
通観するとき、高度な芸術感覚と日常の生活との結びつきは特徴的ですね。芸道と呼ばれ
る諸分野、特にお茶とかお花とかに、それが見られる。恐らくその美意識は、清潔感、純
粋性とも関係するし、また企業や組織の倫理意識にまで及ぶようなものがあると思います。
佐伯 じゃ、私も一言。釣書とライフカルチャーは今は分離しているんですね。釣書としての
美や道は伝統工芸になってしまったが、本来は我々の日常生活の中に入っていた。日常生
活の中で花を飾るなど、具体的な形で美や純粋さを持ち込んだり、静かに座禅を組み瞑想
したりということがあった。それは生活文化と一体だったことを、忘れている。
来日した外国の知人が、
日本で一番印象に残ったのはホスピタリティ精神だと言っていた。
お金を使った豪華なもてなしじゃなく、質素だけれども心のこもったもてなし。そういう文化
こそが本当は一番大事だという気がするんです。
遅ればせながら先頃「ラスト サムライ」という映画を観ました。あれは、きちっと日本の武
士道を理解している上等な映画だとは思わないが、例えばああいう形で外国人が、本当は
日本人はこんなものを持っていただろうと言ってくる。それを観た多くの日本人が、確かにあ
ったなあと思い出す。我々が今、声高に叫ばなくても、一人ひとりが忘れていたものを再び
日常生活の中に埋め込んでいくことが重要だという気がしています。
きょうはありがとうございました。■
編集/田窪由美子
Insight
2004-2005
09
Insight 049-070
ダイジェスト
シリーズ・サービスの本質
茶道に見る、もてなしの心
文
化
・
文
明
筒井紘一・裏千家茶道資料館副館長;
今日庵文庫長;京都学園大学教授
2004.10.15・第65号
茶の湯とは、4時間を使った2幕のドラマと同様のシチュエーショ
ンである。茶道では、亭主が客をもてなすうえでの精神性のあ
り方を「和敬清寂」という言葉で表す。互いに心を開いて和み
合い(和)、敬い合い(敬)、清らかな心で(清)、何事にも動じ
ず落ち着いて(寂)、もてなす。茶道におけるもてなしとは、人に
対する思いの深さ。21世紀、人への思いを深くするものが再び
重要になっている。
*資料室:
「茶道ともてなし」の周辺
*読書室:
「茶道ともてなし」を読み解く11冊
シリーズ・リスク社会
政
治
・
外
交
国家リスクへの視点――
情緒論に流されず毅然とした
政治の勇気を
高市早苗・元・衆院議員;
前・経済産業副大臣
2004.02.01・第51号
政治の最大の役割は「国民の生命と財産、国家の主権と名誉
を守ること」であり、国家リスクとは、これらを脅かすもの、損ね
るものすべてだ。ところが政策の必然性について国民への広
報が不足したまま、世論が情緒論に流れ、政治は世論に媚び
て、毅然とした対処ができない。そうした政治の勇気のなさが、
日本の一番大きなリスクかもしれない。
*資料室:
「国家リスク」の周辺
*読書室:
「国家リスク」を読み解く12冊
シリーズ・リスク社会
経
済
・
経
営
企業リスクへの視点――
何もしないことが
罪になる時代
田中辰巳・危機管理コンサルタント;
リスク・ヘッジ代表
2004.01.15・第50号
クライシス・マネジメントの第一歩は、犯した罪にしっかり気づくこ
と。それには「反省」、つまり過去を否定的に振り返ることが必
要だ。次に、起こしてしまった罪を深く
「後悔」する。そして罪の
ざんげ
しょくざい
告白、
「懺悔」を行い、最後に「贖罪」、罪の所在を明らかにし
て処分なり賠償をする。反省、後悔、懺悔、贖罪という4ステッ
プをきちんと踏むことが、クライシス・マネジメントの基本だ。
*資料室:
「企業リスク」の周辺
*読書室:
「企業リスク」を読み解く12冊
10
2004-2005
Insight
21世紀の新しい秩序・構造づくりに向け、独自の視点・論点を発信するメインコラム。
多様な分野から、気鋭の論客が登場し、時代を読み解く。
*全文>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/column_top.html
シリーズ・関係性の時代
シリーズ・サービスの本質
経済・産業活性化と
ソーシャル・キャピタル
顧客満足と
サービス・マーケティング
藤沢久美・シンクタンク・ソフィアバンク
副代表;社会起業家フォーラム副代表
2004.04.15・第56号
山本昭二・関西学院大学商学部教授
2004.08.01・第63号
地域の産業活性化にあたっての問題は、多くの小さな企業に
顧客さえ満足させれば企業は安泰かと言えば、そんなわけはな
発信力がないことだ。だからリレーションもトラストも生まれない。
く、当然、利益を上げなければ成り立たない。単にアウトプットと
大企業の下請け時代には、ただただ受け身でいればよかった
しての顧客満足を金科玉条にするのではなく、それを生み出
が、今は、どうすれば伝わるかを考えないといけない。外との関
すための品質の管理──プロセスを含めた「サービス・クォリティ」
係性を深める「営業力」と、なるほどと思わせるナレッジを発信
の維持が重要。この「品質と満足のつながり」を経営のなかで
する「企画力」を、回復する時間と修練が必要だ。
意識することが非常に大事だ。
*資料室:
「産業活性化とソーシャル・キャピタル」の周辺
*資料室:
「サービス・マーケティング」の周辺
*読書室:
「産業活性化とSC」を読み解く12冊
*読書室:
「サービス・マーケティング」を読み解く12冊
シリーズ・関係性の時代
シリーズ・サービスの本質
営業革新──関係性を
重視した顧客アプローチ
顧客引力──お客さまを
惹きつけるサービスモデル
高嶋克義・
神戸大学大学院経営学研究科教授
2004.05.15・第58号
五十棲剛史・船井総合研究所執行役員
経営支援統轄本部副本部長
2004.11.15・第67号
「関係性重視」
というと顧客に密着して顧客の喜ぶことをすると
ひと言で言えば、企業もファンづくり。
「生涯顧客」、自社の商品
思いがちだが、それでは従来からの「ご用聞き営業」
と変わらな
やサービス、自社そのもののファンをどれだけつくれるか。ここで
い。顧客の要望に振り回され、価格競争に陥り、利益は出せ
会社のミッションや理念が大事になる。ウチはどういう思いで企
ない。顧客さえも気づいていない潜在ニーズへの提案が大事で
業活動を営んでいるのか。全てのお客さま対応のなかで、ミッシ
あり、そのためには、経験と勘による属人的・個人的な営業スタ
ョンや理念に串刺しされた展開をすれば、共感いただけたお客
イルから情報共有型のチーム営業への転換が求められる。
さまがファン客になる。
*資料室:
「関係性重視の営業改革」の周辺
*資料室:
「顧客引力」の周辺
*読書室:
「顧客との関係性」を読み解く12冊
*読書室:
「顧客サービス」を読み解く12冊
シリーズ・関係性の時代
シリーズ・サービスの本質
関西経済活性化に
生かしたい関係性資産
サービス哲学──顧客満足と
ホスピタリティ精神
後藤康浩・
日本経済新聞社 編集委員 兼 論説委員
2004.06.01・第59号
窪山哲雄・
(株)ザ・ウィンザー・ホテルズ
インターナショナル社長
2004.12.01・第68号
ソーシャル・キャピタル、関係性資産ということでは、関西経済界
「サービス」は、普遍的に誰にでも提供されるものを指し、提供
にはある種の秩序感覚があり、ムダな競争を避け、巧みに棲み
側に都合がいい。
「ホスピタリティ」は、逆にサービスする側が相
分けてきた。しかも関西は大企業と中堅中小企業、あるいは産
手に合わせる。私のサービス哲学は、相手がどうして欲しいの
学の連携がほかの地方にくらべ巧くいっている。官に頼らない
かを考え、それに合わせるところから始まる。ただ、相手に合わ
気風がある分、産学の連携がより密接で、相互補完的、相互
せる対応の原点にはプロ意識が必要。
「心」のサービスには、
依存的なのだ。その良さを今後も大切にすべきだ。
それを支える「技」がないといけない。
*資料室:
「地域経済活性化」の周辺
*資料室:
「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」に見るサービス
*読書室:
「地域経済活性化」を読み解く9冊
*読書室:
「ホスピタリティ」を読み解く13冊
Insight
2004-2005
11
*全文>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/column_top.html
シリーズ・関係性の時代
社
会
・
生
活
新しい「コミュニケーション
回路」を設計する
鷲田清一・
大阪大学大学院文学研究科教授
2004.01.01・第49号
気の合う者が集まるのが社会ではない。互いに違う人間だとい
山内直人・大阪大学大学院
国際公共政策研究科教授
2004.04.01・第55号
「ソーシャル・キャピタル」という新しい概念が、いま世界的な注目
う前提で、馴染みがなくても一緒にやっていくのが社会だ。専
を集めている。社会資本――ハードなインフラのことではない。
門家と非専門家、大人と子供、日本人と外国人──互いにわ
コミュニティなり組織の豊かな人間関係や信頼、ネットワークの
からないという前提で、でも一緒に社会をつくっていく。そういう
濃密さなどのことだ。同様の概念を経営学では、人間関係の
社会づくりに向けて、日本人一人ひとりが新しい「コミュニケー
蓄積・資産という意味で「リレーショナル・アセット」
という言い方を
ション回路」の設計に取り組むことを望みたい。
している。
*資料室:
「コミュニケーション回路」の周辺
*資料室:
「ソーシャル・キャピタル」の基礎知識
*読書室:
「コミュニケーション」を読み解く13冊
*読書室:
「関係性」を読み解く12冊
シリーズ・リスク社会
シリーズ・関係性の時代
防災への視点――災害は
起きるという前提で「減災」
を
コミュナルな知恵と力の再生
――見えなくなった日本の
伝統を見えるようにする
河田惠昭・京都大学防災研究所
巨大災害研究センター長・教授;
人と防災未来センター長
2004.02.15・第52号
12
「ソーシャル・キャピタル」
「リレーショナル・アセット」と
いう概念
嘉田由紀子・滋賀県立琵琶湖博物館研究顧問;
京都精華大学人文学部・環境社会学科教授
2004.05.01・第57号
都市化とも相俟って、日本人はどんどん動物的感覚──「ヤバ
日本の歴史の中で育まれてきた自治の伝統、コミュナルな知恵
い」という危険察知能力を鈍らせてしまった。こんな時代に防
が、今は見えなくなっている。自然が遠くなり、農業を知らない
災を進めるのは非常に難しいが、まずやるべきは、やはり
「災害
人が増え、大地に根ざした暮らし方が見えなくなっている。その
は起きる」
という前提に立った対策。起こさないことは大事だが、
見えなくなった地域社会の仕組み、つながりを、再び見えるよう
万一起きた時の被害を最小限に食い止める「減災」の視点を
にする。それが今を生きる日本人の使命であり、次世代につな
持つことが重要だ。
ぐべき日本の社会的伝統だと思う。
*資料室:
「防災」の周辺
*資料室:
「コミュニティ力」の周辺
*読書室:
「防災」を読み解く13冊
*読書室:
「コミュニティ」を読み解く10冊
シリーズ・リスク社会
シリーズ・関係性の時代
リスクの社会心理学――
怖いと回避するよりも
自分を信じてまず試行
国際協力とソーシャル・
キャピタル──活発化する
NGOアプローチの中で
和田秀樹・精神科医
2004.03.15・第54号
佐藤 寛・アジア経済研究所
開発研究センター主任研究員
2004.06.15・第60号
日本経済は長く右肩上がりが続いたので、リスクに対する認識
グローバルスタンダードに合わせることで、失われるソーシャル・キ
が甘い。これまでうまくいっていただけに、リスク認知を避けた
ャピタルがある。それぞれの国や地域がもともと持っていたSCを
がり、敢えて目を瞑る「認知的不協和」に陥りがち。しかし目を
活用するなど、その国に合わせた形での援助が大事。焼け野
瞑ることが、さらに大きなリスクを招くこともあるわけで、リスクは
原からの戦後復興を経験した日本には、途上国援助に活用で
正しく認知すべき。リスクを取らざるを得なくなった時代に、自分
きるノウハウが山ほどある。その活用こそが、かつて途上国だっ
を信じてまず試行することが、何より重要だ。
た唯一のドナーである日本の役割だ。
*資料室:
「リスク社会」の周辺
*資料室:
「国際協力とソーシャル・キャピタル」の周辺
*読書室:
「不安心理」を読み解く13冊
*読書室:
「国際協力」を読み解く11冊
2004-2005
Insight
Insight 049-070
ダイジェスト
シリーズ・関係性の時代
シリーズ・サービスの本質
ご縁に応じる──竹藪に見る
東洋的関係性モデル
もう一つの幸せ──
自由化時代の生活
ユーティリティサービス
玄侑宗久・作家;福聚寺副住職
2004.07.01・第61号
奥出直人・
慶応義塾大学環境情報学部教授
2004.11.01・第66号
日本人はタケノコに近い。タケノコは、根っこが全部、地下茎で
3年後、僕らの暮らしは大きく変わる。
「情報住宅」が登場する
つながっている。日本では「ご縁」とか「お陰さま」という言葉で
からだ。住宅をプラットフォームに、光ファイバーを通信インフラで
他者とのつながり──竹の地下茎のように目に見えない関係
なく生活インフラとして使う。大事なことはユーティリティという概
性を大切にしてきた。袖振り合うも多生の縁。計り知れない無
念だ。ユーティリティサービスとしての電気事業の延長線上で情
数の縁が今このときの状況をつくっている。ご縁という地下茎を
報サービスを考えると、情報住宅は人間性を阻害するものでな
意識したとき、人生はより豊かに深みを増すに違いない。
く、生活を楽しく豊かにするイメージになる。
*資料室:
「人間関係」の周辺
*資料室:
「情報住宅プロジェクト」の周辺
*読書室:
「人間関係」を読み解く11冊
*読書室:
「暮らしを支える情報サービス」を読み解く10冊
シリーズ・リスク社会
電
力
・
エ
ネ
ル
ギ
ー
米国にみる電気事業者の
リスクとチャンス
山家公雄・日本政策投資銀行
ロサンゼルス事務所首席駐在員
2004.03.01・第53号
核燃料サイクル政策徹底審議、
原子力長計・中間取りまとめの
ポイント
山名 元・京都大学原子炉実験所教授;
原子力長計策定会議委員
2004.12.10・第69号
電気事業者は、
電気という商品の性質や流通の特徴に精通し、
さまざまな視点から核燃料サイクルの総合的な評価を行い、最
また消費者と日々接触している専門家として、一方で政策は必
もメリットが大きいのは「全量再処理」という結論に至った。サ
ずしも完全でなく変わり得るとの前提にたち、自らの知見と判断
スティナブルなエネルギー源の確保、循環型社会をめざす、放射
で、
「競争と供給信頼度維持の両立」という難しい課題を追求
性廃棄物はできる限り減らす、次世代に責任を先送りしない、
していくことが求められる。つまり短期戦略と長期戦略を冷静
等が原子力政策の理念なら、経済的には少々割高でも、再処
に分析することが重要になる。
理リサイクル路線の維持が現実的・合理的と結論した。
*資料室:
「電力自由化」の周辺
*資料室:
「原子力長計・中間取りまとめ」のポイント
*読書室:
「電力自由化」を読み解く14冊
*読書室:
「原子力」を読み解く12冊
どうなる? 原油高騰と
日本のエネルギー戦略
原油高騰は日本経済に
どのような影響を与えるか
内藤正久・財団法人日本エネルギー経済
研究所理事長
2004.07.15・第62号
伴金美・
大阪大学大学院経済学研究科教授
2004.12.20・第70号
石油が政治戦略商品であることを忘れ、金さえ出せば買えるコ
パニックは忘れた頃にやってくる。今回の原油高では、30余年
モディティだと思っている日本人の意識は、問題だ。中東やロシ
前のオイルショックを日本人がまだ記憶しているから、大きな影
アなど産油国の動きをもっと注目する必要がある。そして資源
響を受けずに済んだが、世代を超えて学習効果を持続させて
がない日本としては、安定供給、環境対策、外交カードとしての
いくのは難しい。長期のコミットメントが必要なものに対し、どう
重要性、技術伝承上の重要性という点から、原子力を国のエ
合意形成を行い、守り続けていくかは、国にとっても企業にとっ
ネルギーの中核に位置づけるべき。
ても極めて重要なテーマである。
*資料室:
「原油高騰」の周辺
*資料室:
「原油高騰」の周辺
*読書室:
「エネルギー問題」を読み解く13冊
*読書室:
「エネルギー・環境」を読み解く9冊
Insight
2004-2005
13
Close up エナジー
ニュー・エディション
管理に関する品質保証システムや保守管理システムの整備
が不十分であったため、
美浜発電所3号機
事故について
1. 当該箇所が点検対象箇所から漏れていたこと
2. これが修正されないまま長年にわたり放置されてきたこと
3. 点検漏れが発見された後、関係者への連絡が不十分で
あり、その後の点検計画に適切に反映されなかったこと
にあり、原子力発電所を設置し、運転・管理する者として、
事故の概要
責任を痛感しています。
2004年8月9日15時22分、定格熱出力一定運転中の美
その事故原因の調査過程で、当社の原子力発電所にお
浜発電所3号機で、2次系配管破損事故が発生。同28分、
いて、
「原子力設備2次系配管肉厚の管理指針(PWR)」の
原子炉が自動停止しました。
不適切な運用を行っていたことが判明しました。
「安全が何
事故当時、3号機タービン建屋内では、8月14日から実施
より大切であり、安全があって初めてお客さまや社会のみな
予定の定期検査準備などのため、協力会社の方々が作業
さまの信頼を賜ることができる」ということを、徹底してきたつ
を行っていました。その状況下で、建屋2階天井付近の復水
もりでおりましたが、安全が何より優先することを社内に十分
配管が破損し、約140℃の熱水が蒸気となって噴出し、5人
浸透させることができていなかったことを、深く反省しており
の方が亡くなり、6人の方が重傷を負われました。
ます。
破損したのは、復水配管の流量計
(オリフィス)
の下流部。同配
2005年3月30日に開催された、国の事故調査委員会で、
管は、1976年のプラント運転開始時の厚さが10mm(公称)
、
原子力安全・保安院による最終報告書が取りまとめられ、
設計上の必要肉厚は4.7mmでしたが、事故後の測定では、
「原子炉設置者としての法的・対外的責任に反する不適切
破損箇所のうち最も薄い箇所で約0.4mmとなっていました。
な外注管理、現場の実態を把握・是正できない管理体制は
破損配管は、事故後の調査の結果、水の流れの乱れに
問題であり、原子力安全への信頼を著しく損なうものであっ
より、エロージョン/コロージョン
(金属材料の腐食が物体の
た」と厳しく指摘されました。私どもはこの報告書を重く受け
流れにより加速される現象)が発生し、配管肉厚の減肉が
止めています。
進行したため、内圧により破損したものと考えられます。
再発防止へ、5つの基本行動方針と行動計画
事故の原因
関西電力としては、原子力発電の安全を確実なものにし
今回の事故の直接的な原因は、当社の2次系配管肉厚
ていくことが、最大の使命であり、最重要の経営課題です。
美浜発電所3号機のしくみと復水配管破損箇所(概略系統図)
タービン建屋
蒸気
制御棒
加
圧
器
蒸
気
発
生
器
蒸気
低圧
タービン
低圧
タービン
復水器
復水器
発電機
循環水
ポンプ
高圧タービン
高圧給水加熱器
海水
復水ポンプ
脱気器
放水口
熱
水
海水
復水 グランド蒸気
脱塩装置
復水器
燃料
原子炉容器
主給水ポンプ
第1
第2
冷却材ポンプ
第3
復水配管破損箇所
原子炉格納容器
14
2004-2005
Insight
第4
低圧給水加熱器
1次冷却材
2次冷却材
循環水(海水)
一段と進む電力自由化。2005年4月からは販売電力量の約6割まで自由化範囲が拡大するなか、
将来的な電力安定供給のカギとなる原子力については、今後の開発利用のあり方が問われている。
美浜発電所3号機事故の最終報告とともに、
電力エネルギーを取り巻く2004年の動きと関西電力の取り組みをクローズアップ。
*関連サイト>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
そのため3月25日、
「美浜発電所 3号機事故再発防止に係
(2)コミュニケーションの充実
る行動計画」を発表。社長の宣言と5つの基本行動方針の
(3)地域との共生
もと、初心に帰り安全文化を構築し直し、全社を挙げて事
故の再発防止対策を確実に実施することを約束いたしまし
た。基本行動方針に従い、行動計画を着実に実施して、安
5. 安全への取り組みを客観的に評価し、
広くお知らせします
(1)再発防止対策を確認し、評価する仕組みの構築
全を最優先に原子力事業を運営してまいります。
このたびの美浜発電所3号機事故や管理指針の不適切
〈社長の宣言〉
な運用の反省と教訓、みなさまからのご叱正やご指導を肝
「安全を守る。それは私の使命、我が社の使命」
に銘じ、十分に活かしながら、経営層が率先して、一から出
直すという強い意思を持ち、全役員全従業員一丸となって、
〈基本行動方針〉
原子力の新たな安全文化をしっかりと築きあげてまいります。
1. 安全を何よりも優先します
取り組み状況につきましては、有識者の方々をはじめとし
(1)経営計画における安全最優先の明確化と浸透
た社外委員を主体とする「原子力品質安全委員会(仮称)」
(2)労働安全活動の充実
を設置し、実施状況を定期的に評価するとともに、その結果
2. 安全のために積極的に資源を投入します
(1)発電所保守管理体制の増強等
をホームページ(http://www.kepco.co.jp)等で公表して
まいります。
(2)積極的な資金の投入
(3)安全の確保を基本とした工程の策定
(4)教育の充実
事故の被災者、ご遺族、ご家族のみなさまに、改めて深く
お詫びいたしますとともに、亡くなられた方々のご冥福と、重
3. 安全のために保守管理を継続的に改善し、
メーカー、協力会社との協業体制を構築します
(1)2次系配管肉厚管理システムの充実
傷を負われました方々の一日も早いご快復を心からお祈り
申しあげます。
また、協力会社のみなさま、美浜町、地元の自治体、福
(2)計画、実施、評価等の保守管理を継続的に改善
井県、隣接の府県のみなさま、ならびに国をはじめ各方面の
(3)監査の充実
みなさまに多大なご迷惑をおかけするとともに、広く国民の
(4)メーカー、協力会社との協業
みなさまにご不安を与え、
ご心配をおかけいたしましたことを、
4. 地元のみなさまからの信頼の回復に努めます
改めてお詫び申しあげます。■
(1)原子力事業本部の福井移転
事故以降に原子力発電所で実施している対策例
運転中プラントへの立入制限
2次系配管の点検状況を記載した表示札取り付け
地元の声を聴く機会の充実、美浜町内での対話活動
Insight
2004-2005
15
*関連サイト>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
検討された4つのシナリオ
策定会議では、政策検討のため、以下の4つの「基本シ
日本にとって
「原子燃料サイクル」の
意義とは?
ナリオ」を想定し、あらかじめ定めた10の「評価の視点」に
沿って評価を行った。
【基本シナリオ】
シナリオ1 全 量 再 処 理 。六ヶ所 再 処 理 工 場の処 理 容 量
800t/年を超える使用済燃料は中間貯蔵後に再
処理する。
「一からの見直し」
シナリオ2 部分再処理。六ヶ所再処理工場の処理容量を超
える分は再処理せず直接処分(地中埋設)する。
再処理リサイクル路線を継続──。2004年11月、原子力
委員会の新計画策定会議は、新たな原子力長計に盛り込
シナリオ3 全量直接処分。
む「核燃料サイクル政策についての中間取りまとめ案」を発
シナリオ4 当面貯蔵。当面は再処理も直接処分もせず、貯
めておき、政策決定を先送りする。
表した。
【評価の視点】
原子力長計(原子力の研究、開発及び利用に関する長
期計画)は、日本の原子力利用の長期的・基本的方針を定
1 安全の確保 2 エネルギーセキュリティ
めたもの。1956年の第1回策定以来、数年ごとに見直されて
3 環境適合性 4 経済性 5 核不拡散性
おり、2004年6月から始まった第10回長計策定にあたっては、
6 技術的成立性 7 社会的受容性 8 選択肢の確保
まず「核燃料サイクル政策」を議論。長計ではこれまで一貫
9 政策変更に伴う課題 10 海外の動向
して「再処理リサイクル路線」──使用済燃料からウランやプ
再処理は本当に割高か?
ルトニウムを回収し再利用、特にプルトニウムについては短期
とりわけ「経済性」については、別途小委員会を設置し、
的には軽水炉でのプルサーマル利用、長期的には高速増殖
炉での利用──をめざしてきたが、今回、この路線そのもの
日本で初めて直接処分場の概念検討を実施、シナリオごと
を「一から見直し」ての検討だった。
の経済性評価を行った。
その背景には、ウラン価格の低位安定などにより、リサイク
結果は、原子燃料サイクルコストで見ると、全量再処理(シ
ルの必要性に疑問が呈せられたこと。また2003年末に電気
ナリオ1)は直接処分(シナリオ3)の1.7倍だが、発電コスト全
事業連合会が出した、18.8兆円というバックエンドコスト試算
体で見れば、その差は約10%。標準世帯あたりの年間電気
から、
「再処理は高くつく」という風潮が広まったことがある。
代にすると600∼800円、約1%の増加に過ぎない。
シナリオ毎の試算結果
天然
ウラン
原子燃料サイクル
ウラン採鉱
精錬・転換
●発電コスト:割引率2%
ウラン・プルトニウム
高速増殖炉
燃料サイクル
プルトニウム
燃料加工
再処理
MOX
燃料
使用済
燃料
リサイクル
燃料
リサイクル燃料
貯蔵センター
(中間貯蔵施設)
リサイクル
燃料
リサイクル
燃料
高速増殖炉
高レベル
放射性廃棄物
軽水炉
燃料サイクル
回収ウラン
ウラン
プルトニウム
MOX燃料
(プルサーマル)
(円/kwh)
濃縮ウラン
転換
劣化ウラン
高速増殖炉
燃料再処理
8
ウラン濃縮
原子力発電所
(軽水炉)
政策変更コスト
(六ケ所再処理関連+代替火力)
7
5.4-6.2
5.2
ウラン
燃料加工
5
地層処分施設
(最終処分)
16
2004-2005
Insight
低レベル放射性
廃棄物埋設施設
5.0-5.1
4.5-4.7
4.7-4.8
4
3
2
1.6
1
低レベル放射性
廃棄物
5.6-6.3
6
1.4-1.5
0
シナリオ1
シナリオ2
0.9-1.1
1.1-1.2
原子燃料
サイクル
コスト
シナリオ3
シナリオ4
*原子力委員会の資料をもとに作成
Close up エナジー
ニュー・エディション
さらに直接処分とした場合、使用済燃料の中間貯蔵施設
の受け入れ自治体探しが困難になることから、原子力発電
貴重な権利であり、自ら放棄すれば二度と戻ってこない可能
性もある。
こうした将来の不確実性要素への対応も考えると、
所が運転停止に追い込まれたときの代替火力費用をはじ
「選択肢の確保」策として再処理の技術基盤や人材の維持
め、六ヶ所再処理工場への既投資額やその廃止措置費用
は重要であり、もちろん現時点でも再処理は課題が少なく
など「政策変更コスト」を考えると、コストが逆転、再処理の
「技術的成立性」は高い。
こうして全ての項目で総合的・多面的に評価を行い、策定
方が安くなる可能性もある。
会議は「再処理リサイクル路線」を日本の核燃料政策の基
セキュリティや環境はどうする?
本方針として結論づけた。
「経済性」は必ずしも決め手にならないとは言え、それ以
資源小国・技術立国日本の選択
外、再処理を選ぶ価値はどこにあるのか。
策定会議メンバーの山名元・京都大学教授によれば──
2004年12月、サイクルの中核施設とされる青森県六ヶ所
例えば「エネルギーセキュリティ」。確かに現時点でウランは安
村の再処理工場では、2007年操業をめざし、ウラン試験を
いが、このままアジア各国でエネルギー需要が急増し、原子
開始。2005年2月からは立地協力要請中のプルサーマル用
力開発が進めば、数十年先には価格高騰や資源枯渇を招
MOX燃料加工工場の説明会も青森県内で開催され、4月
きかねない。エネルギー自給率4%の日本にとって、長期的
には青森県が建設に同意、立地基本協定が結ばれた。ま
観点からウランやプルトニウムという
「準国産エネルギー」を確
た同2月、福井県では高速増殖炉「もんじゅ」が10年ぶりの
保しておくことは、安全保障上、極めて重要だ。そして「環
再開に向けて前進、3月には改造準備工事に入った。
境適合性」。直接処分ではプルトニウムを日本の地下にその
2005年、原子力基本法が公布されて50年、決して平坦で
まま貯め込むのに対し、再処理してリサイクル利用すれば、
はなかったにせよ、原子燃料サイクル確立への動きは着実に
最終的に高レベル放射性廃棄物の潜在的有害度は1/8程
進展。資源小国・技術立国の日本が改めて選択した再処
度に減少し、処分場の面積も半分程度で済む──という。
理リサイクル路線──安全確保を大前提に、いま輪の完結に
さらに直接処分への「政策変更に伴う課題」はコストだけ
挑む。■
に止まらず、これまで再処理を前提に進めていた地元との信
頼関係を損なうことにもなり、
「社会的受容性」という点でも
問題が大きい。一方、グローバルな観点から見ると、
「核不
拡散性」は再処理も直接処分も有為な差はないが、日本の
再処理は非核保有国の中で唯一国際的に認められている
エネルギー自給率
(%)
150
エネルギー自給率(原子力含む)
154
エネルギー自給率(原子力除く)
114
100
73
146
51
50
104
39
15
4
0
イタリア
64
19
日本
27
ドイツ
8
フランス アメリカ イギリス
カナダ
*100%を超えている部分は、輸出を示す
「IEA/Energy Balances of OECD Countries 2001−2002」をもとに作成
六ケ所再処理工場
Insight
2004-2005
17
*関連サイト>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
線を借りる「託送制度」も改革された。制度の公平性・透明
性をより厳格に担保するため、電力会社、PPS、学識経験
電力自由化拡大、
そのとき電力会社はどう動く?
者などで構成する「中立機関(電力系統利用協議会)」を新
設。流通設備形成や系統アクセス等に関するルールの策
定・監視、事業者間の紛争処理などにあたることになった。
また電力会社がPPSに不利な措置をしないよう、従来のガイ
ドラインによる規制に加え、電気事業法に禁止行為を明文
「日本型自由化モデル」の始動
化、違反した場合の罰則も設けた。
「電力自由化の『日本型モデル』
と呼べるものができた」
さらに、従来PPSが遠隔地のユーザーに売電する場合、
──2005年4月に施行された改正電気事業法。これに伴い
通過地点の電力会社に支払っていた送電線利用料(通過
スタートした新しい電力自由化制度を、関西電力企画室企
料金)
を事実上廃止(パンケーキの解消)。同一ユーザーに
画グループチーフマネジャーの八嶋康博は、こう評価する。
対しては、
どこから送電しても同じ託送料金で競争できるよう、
日本における電力小売自由化は2000年3月に始動。大
工場や大規模商業施設など大口ユーザーに対し、電力会
全国を「ひとつの市場」にしたわけで、全国規模の電力流
通の活性化が期待されている。
社以外の新規参入事業者(PPS)
も直接電気を小売できる
自由化範囲も拡大された。2000年時点では大規模工場
ようになった。その進捗を見ながら、01年11月から総合資源
など大口ユーザーのみだったが、04年に中規模工場、05年
エネルギー調査会電気事業分科会で、次の制度改革を検
4月からは小規模工場やビルまで拡大され、販売電力量の
討。
「電力の安定供給を確保しつつ、事業者間の公平な競
約6割が自由化。関西電力管内では、10万軒以上のユー
争を促進、お客さまの利益を増進する」ことを理念に、いくつ
ザーが自由化対象となった。
かの新制度が設けられた。
こうした一連の制度改革における最大の特徴は、
「民間
そのひとつが「卸電力取引所」の創設。PPSの電源調達の
ベース」の制度づくりを基本としたことだ。実際、新設された
補完を主目的に、PPSや発電事業者、電力会社も参加して、ス
卸電力取引所も中立機関も民間。諸外国ではこれら機関に
ポット
(前日)市場と先渡市場の2銘柄を扱う。電力会社も顧客
国が強力に関与するケースも多いというが、日本は自由化始
への安定供給を損なわない範囲で取引に参加していく方針だ。
動以来の基本理念である「経営自主性の最大限確保と行
政介入の最小化」を踏襲。その上で、発送一貫体制のもと
公平性・透明性を担保するために
で、お客さま利益を考え、安定供給と公平な競争の両立を
PPSが自らの顧客に電気を送るため電力会社の送配電
実現。八嶋が「日本型自由化モデル」と呼ぶ所以だ。
電力供給システムイメージ(2005年4月∼)
電力小売自由化スケジュールと自由化範囲の拡大
発送配電一貫の
電力会社
2000年3月自由化
大工場、大規模ビル、
デパート、病院など
(一般電気事業者)
特別高圧
高
電力量26%
圧
2,000kW
全
2004年4月自由化
高圧(500kW以上)
面 中規模工場、
自 中規模ビルなど
電力量14%
500kW
由
化 2005年4月自由化
中小工場、
高圧(50kW以上)
20,000V
26%
電力量23%
PPS
40%
6,000V
63%
200V
以下
低圧
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
︵
送
電
・
配
電
︶
自家発電
設置者
(特定規模
電気事業者)
相対取引
PPS
中立機関
送電網
ネットワーク
託送(接続供給)
●送配電に関する
ルール策定
●監視
●紛争処理
18
2004-2005
Insight
自
己
の
送
電
線
に
て
供
給
自
己
の
送
電
線
に
て
供
給
小
売
電力量37%
*電力量(%)は、全販売量に占める自由化範囲の割合
(資源エネルギー庁ホームページ記載のデータをもとに作成)
特定
電気事業者
卸電力取引所
他電力
2007年4月頃に全面自由化の検討開始
一般家庭、
商店など
発
電
他電力会社
(一般電気事業者)
相対取引
事務所ビルなど
50kW
IPP等
(卸電気事業者・
卸供給事業者)
自由化対象外の
お客さま
(200V以下の低圧で受電)
自由化対象のお客さま
(6,000Vの高圧で受電され、
契約電力が50kW以上)
自家消費
特定地区の
お客さま
Close up エナジー
ニュー・エディション
備を直に見て、個々のニーズに応じた提案ができる体制を
競争し得る料金水準を実現
確立した。
ともあれこの新制度のスタートで、PPSの市場参入は一層
提案材料も豊富になった。初期費用を抑えたいユーザー
容易になった。既に04年11月末時点で参入したPPSは17
には機器のリース制度、ランニングコストの低減ニーズには蓄
社、届出出力の合計は548万kW。関西電力管内だけでも
熱調整契約などの料金メニュー。設備管理費抑制の支援な
約140件、計40万kWのユーザーが、関西電力を離れPPS
ら、ESCO事業を行うグループ会社もあるし、ファシリティマネジ
からの供給を受けている
(04年10月1日時点)が、自由化拡
メントの専門会社もある。電気だけでなくガス需要に応えるこ
大とともに、この数字がさらに膨らむ可能性は高い。
ともできるうえ、光ファイバーをはじめとする通信インフラもある。
電力会社にとってはまさに正念場だが、
「既に自由化拡大を
これまでの電気事業で培った多種多様な経営資源を、顧
にらんだ『器づくり』は済んでいる」と、関西電力お客さま本部
客のソリューションに活用、その課題解決力によって、お客さ
エネルギー営業グループ部長の小谷弘明は自信を覗かせる。
まに選んでいただく──それが関西電力の進めてきた「器づ
自由化といえば、まず価格競争。従来、電力会社の電気
くり」のようだ。
料金はPPSに比べ割高とされてきたが、近年は電力会社も
経営効率化努力などで、より低廉な料金を実現。関西電力
も、顧客ニーズに合致した料金メニューを拡充してきたほか、
疾風に勁草を知る
地域独占時代の「申込があって初めて動く」受け身の営
05年 4月1日には2年半ぶりの料金改定で、平均4.53%(電
業から、顧客のもとへ自ら足を運び課題を解決するソリュー
灯・電力計)の引き下げを実施。PPSや他電力会社にも対
ション営業へ──変わり始めた関西電力の営業姿勢は、ユ
抗し得る料金水準を実現した。
ーザーにも徐々に浸透し、評価も高まりつつある。
「電気は『売れば終わり』ではなく、1年365日継続する取
課題解決力で選ばれる会社へ
引。単に価格だけ提示し、お客さまが勝手に選択すればい
関西電力は営業体制も既に「自由化モード」だ。03年の
い、というものではない。対話を通じてより良い使い方を提案
組織改正時、自由化分野を担当する「エネルギー営業」と
することが本当のお客さま利益につながる。協働で課題を
規制分野を担当する「リビング営業」に再編。それぞれ人員
解決するパートナーとして信頼していただくことが、PPSへの
を増強すると同時に、顧客への提案活動から契約まで一貫
何よりの対抗策」と小谷は言う。
して行う体制を整えた。
「疾風に勁草を知る」。自由化拡大を前に心境を訊いた
またエネルギー営業と協調して顧客対応を行う「エンジニ
とき、小谷はこう答えた。強い風が吹いたとき強い草がわか
アリンググループ」には、発電や送配電部門など、電気や熱の
る──勁草たるや否や、自由化拡大という疾風の中で関西
ハンドリングノウハウを持つ技術者を多数配置。ユーザー設
電力はいよいよ真価を問われることになる。■
蓄熱調整契約口数
電気料金の推移(関西電力)
7,000
(口数)
6,400
6,000
5,600
5,000
(円)
9,000
8,500
8,000
4,700
7,500
4,000
3,800
7,000
1,000
800 900
1,100
'94
'95
'96
7,795
7,519 7,435 7,426
消費税率アップに
よる影響
↓
7,235 7,309
7,040
'05年4月
改定
6,861 ↓
6,620
1,400
0
0
7,986
6,000
1,900
2,000
8,259
6,500
2,800
3,000
8,953
'97
'98
'99
'00
'01
'02
'03
(年度末)
'80/7 '86/6 '87/1 '88/1 '89/4 '93/11 '95/7 '96/1 '98/2 '00/10 '02/10 '05/4(年月)
*標準家庭モデル1カ月あたり
(従量電灯A 310kWh)
金額には消費税等相当額を含む
Insight
2004-2005
19
News
Clip
2004
関西電力
*全文>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/imadoki/imadoki_top.html
2004.06 ●30年目の環境月間(∼6.30)
●ケイ
・オプティコム、IP電話サービス無料通話接続開始
情報通信事業、拡大
ケイ
・オプティコムは、各地の電力系通信事業者とIP電話の相互
接続を実施、地域間通話の無料化を開始した。以後、他のIP
電話事業者との相互接続も推進し、無料相互通話を拡大。
また、
8月には光ファイバーを使いNTT回線不要で、固定電話の使い
2004.01 ●04年4月からの自由化拡大へ、高圧料金メニュー公表
●冬季最大電力、記録更新
●柱上変圧器資源リサイクルセンター、竣工
●設備総合管理会社「関電ファシリティマネジメント」設立
勝手・品質の良さとIP電話の安さを兼ね備えた未来志向の新電
話サービス「光電話」をスタートさせ、サービス提供エリアも順次
拡大中。PHS音声電話サービス
(アステル)は、2004年9月末に
終了したが、
「関西を光の国へ」
という計画は着実に進んでいる。
2004.02 ●高効率床暖房パネルを開発
●中国で電力線通信機器を受注
「電力線通信」実用化間近
2004.06 ●管理間接業務受託会社「関電オフィスワーク」設立
2004.07 ●MOX燃料調達の品質保証システム監査で適切性確認
●系統電力の「エコリーフ環境ラベル」認証、更新
電気のコンセントさえあればどこでもインターネットやブロードバンド
サービスを楽しめる──諸外国では既に実用化が進む電力線
通信(PLC)。関西電力子会社のラインコムは、きんでん子会社
のプレミネットと組み、中国北京でのPLC実証実験に参加。シス
テムの安定性・高速性を高く評価され、他国の企業グループを抑
2004.08 ●電化厨房専用換気装置「厨房歓喜」開発・販売
●舞鶴発電所1号機営業運転開始
●美浜発電所3号機2次系配管破損事故、発生(p14参照)
2004.09 ●美浜発電所3号機2次系配管破損事故に係る報告、公表
●気象情報サービス会社「気象工学研究所」設立
えてPLC機器を受注、巨大市場参入の足がかりを得た。また、
日本でも電波干渉低減技術の検証実験が認められたのを受け、
気象・防災コンサルティング
2004年1月、実証試験を開始。PLC実用化に向け、今後の電波
局地的な集中豪雨が多発し、防災のため精度の高い降雨予測
法規制緩和に備えている。
など気象情報へのニーズが高まるなか、関西電力の持つ気象関
係の特許技術と、京都大学の学術知見や研究成果、日本気象
2004.02 ●風力発電事業で「エコ・パワー」
と業務提携
2004.03 ●関西電力グループ経営ビジョン、策定・発表
●MOX燃料調達の基本契約締結
●燃料電池、3kW級発電モジュールを開発
協会の専門ノウハウを結集し、社内ベンチャー制度で新会社
「気象工学研究所」を設立。国の機関や地方自治体、企業を対
象に、高精度な予測・加工から情報配信に至る気象情報サービ
スを、11月から開始した。
2004.04 ●ネットワーク型学習管理システム、サービス開始
●自然冷媒・高効率ヒートポンプチラー、開発・販売
2004.05 ●電気機器・設備リースサービス「eパック」開始
●関西国際空港エネルギーセンターの定期事業者検査、
不適切事項判明
コンプライアンス意識の浸透とミス防止へ
2004.09 ●関電ジオレ、汚染土壌浄化プラント稼働
2004.10 ●電力サポート関連のグループ事業再編
●多機能エコキュート、開発
●台風による電気料金などの特別措置実施
2004.11 ●竹の炭化によるCO2固定・有効利用研究、開始
●世界初、重金属検出バイオセンサー開発
関西国際空港エネルギーセンターの定期事業者検査において、
検査記録の不備など不適切事項があり、他の10カ所の火力発
電所も含め追加調査を行ったところ、
「計測値・管理基準値の書
き換え」
というコンプライアンスに関わる不適切事項が他にも判明
した。このほか、一部のお客さまに対し、停電による料金割引の
適用漏れや、電気料金の誤請求など、人為的ミスも発生。関西
電力は、コンプライアンス徹底指導をはじめ、システムの見直し・
適正化、チェック機能強化など、再発防止対策に取り組み、信
頼回復を図っている。
20
2004-2005
Insight
●「opti c@fe」2号店、心斎橋にオープン
●和歌山県から3水力発電所、譲受決定
2004.12 ●はぴeリフォームローン、サービス開始
『Insight』登場者一覧(2002∼2004年)
50音順/肩書、役職名は配信・発行当時のものです
浅野史郎・宮城県知事
黒崎 緑・ミステリ作家
藤沢久美・シンクタンク・ソフィアバンク副代表;社会起業家フォーラム副代表
麻生圭子・エッセイスト
玄侑宗久・作家;福聚寺副住職
古田隆彦・現代社会研究所所長
足達英一郎・日本総合研究所創発戦略センター上席主任研究員
小島冨佐江・京町家再生研究会 理事・事務局長
本間正明・大阪大学大学院教授
新井光雄・ジャーナリスト
(元・読売新聞編集委員)
後藤康浩・日本経済新聞社 編集委員 兼 論説委員
前田 昇・高知工科大学大学院教授
五百籏頭眞・神戸大学大学院教授
紺谷典子・日本証券経済研究所主任研究員
町田宗鳳・東京外国語大学教授
石川九楊・書家
佐伯啓思・京都大学大学院教授
松岡正剛・編集工学研究所所長
五十棲剛史・船井総合研究所執行役員経営支援統轄本部副本部長
榊原清則・慶應義塾大学教授
松原隆一郎・東京大学大学院教授
一條和生・一橋大学大学院教授
佐倉 統・東京大学大学院助教授
圓尾雅則・ドイツ証券 株式調査部ディレクター
猪木武徳・大阪大学大学院教授
佐藤 寛・アジア経済研究所主任研究員
宮崎哲弥・評論家
今村英明・ボストンコンサルティンググループ ヴァイスプレジデント
澤口俊之・北海道大学大学院教授
村澤博人・顔・化粧文化研究所所長
植草一秀・野村総合研究所主席エコノミスト
白幡洋三郎・国際日本文化研究センター教授
村田晃嗣・同志社大学助教授
植田浩史・大阪市立大学助教授
高市早苗・元・衆院議員;前・経済産業副大臣
森岡正博・大阪府立大学教授
上山信一・米ジョージタウン大学&大阪市立大学大学院教授
高嶋克義・神戸大学大学院教授
森永卓郎・UFJ総合研究所主席研究員
内田 樹・神戸女学院大学教授
高橋 潔・南山大学助教授
薬師寺泰蔵・慶應義塾大学教授
大澤真幸・京都大学大学院助教授
高橋伸彰・立命館大学教授
山内直人・大阪大学大学院教授
大橋良介・大阪大学大学院教授
竹山 聖・建築家;京都大学大学院助教授
山内昌之・東京大学大学院教授
小川 進・神戸大学大学院教授
田中辰巳・危機管理コンサルタント;リスクヘッジ代表
山家公雄・日本政策投資銀行 ロサンゼルス事務所 首席駐在員
奥出直人・慶應義塾大学教授
筒井紘一・裏千家茶道資料館副館長;今日庵文庫長
山名 元・京都大学教授;原子力長計策定会議委員
嘉田由紀子・滋賀県立琵琶湖博物館研究顧問;京都精華大学教授
鳥井弘之・東京工業大学教授;日本経済新聞社論説委員
山本昭二・関西学院大学教授
金井壽宏・神戸大学大学院教授
内藤正久・日本エネルギー経済研究所理事長
山本容子・銅版画家
金子熊夫・外交評論家
中西輝政・京都大学教授
八幡和郎・評論家
四方哲也・大阪大学大学院助教授
香山リカ・精神科医;神戸芸術工科大学助教授
中西 寛・京都大学大学院教授
苅谷剛彦・東京大学大学院教授
野村宗訓・関西学院大学教授
わかぎゑふ・女優;演出家;エッセイスト
川合知二・大阪大学教授;産業科学ナノテクノロジーセンター長
橋爪紳也・大阪市立大学大学院助教授
鷲田清一・大阪大学教授;文学部長
河田惠昭・京都大学防災研究所巨大災害研究センター長
橋本大二郎・高知県知事
和田秀樹・精神科医
神崎宣武・旅の文化研究所所長
畑中鐵丸・弁護士
窪山哲雄・
(株)ザ・ウィンザー・ホテルズ インターナショナル社長
伴 金美・大阪大学大学院教授
メールマガジン『時代を解くキーワード・Insight』
http://www.kepco.co.jp/insight/
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誌 名●『時代を解くキーワード・Insight』
(いんさいと)
配 信 対 象●全国のオピニオンリーダー
(学者・研究者、
マスコミ・ジャーナリスト、政治・行政関係者、企業人など)
仕様・体裁●ノーマルテキスト
配 信 日●月2回(1日と15日) 創刊:2002年1月1日 *無料配信
発 行●関西電力株式会社 地域共生・広報室 広報宣伝グループ
発行人/多田恭之 編集人/岡田重樹;亥子卓志
〒530-8270 大阪市北区中之島3丁目6番16号 電話06-7501-0240
編 集●株式会社エム・シー・アンド・ピー Insight編集室
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