...

Insight2006-2007

by user

on
Category: Documents
96

views

Report

Comments

Transcript

Insight2006-2007
時代を解くキーワード
2006-2007
環境の世紀への視点
安田喜憲 国際日本文化研究センター教授
文明は崩壊する。文明は人間がつくるものであり、死を抱えた
人間がつくるものには、必ず死が訪れる。メソポタミア文明然り、
ローマ文明然り。だから現代文明にも終わりが来ることは間違い
られない。日本人をはじめ稲作漁労民は、コメを食べ、魚を捕り、
サスティナブルな文明をつくってきた。
また、
畑作牧畜社会では、
天から降る雨を利用する
「天水農業」。
ない。第1の危機は2020年から2030年。これはローマクラブが
だから、他人のことを考えなくても、自分の農耕地を拡げ、羊や山
1971年に警鐘を鳴らし、既に危機は現実化。豊かさの限界点を
羊の頭数を増やすほど、豊かになれる。それで畑作牧畜社会で
突破し、地域間の貧富の差が拡大、資源・食糧を巡る対立が起
は個人主義が発達した。
き始めた。そして2050年から2070年、地球の人口が100億になり、
一方、水を循環させないと維持できない稲作漁労社会では、上
熱帯雨林は限りなくゼロに近づき、現代文明は崩壊するだろう。
流、中流、下流は運命共同体。上流で水を使い切ると、下流では
それを前提に、今から新しい文明の潮流をつくることが大事だ。
水田をつくれず、絶えず他者の幸せを考えることが基本になる。
文明というのは不思議なもので、文明を発展させる要因が衰亡
しかも川に魚がいる環境を維持するには、ヤゴやゲンゴロウ、多様
の要因になる。例えばメソポタミア文明は、ギルガメッシュ叙事詩に
な生き物の命が輝く世界を維持しないといけない。自分以外の他
よれば、森の神を殺し──つまり森を破壊して、森の資源を使っ
者、人間以外の生命に対する畏敬の念と慈悲の心。それがない
て文明を発展させたが、森の資源を収奪し尽くした結果、崩壊し
と生きられない。個人主義を貫くより、常に他者を意識しないと生
た。同様に、森に代わって化石資源に手をつけたのが現代文明。
きられない稲作漁労社会の価値──21世紀に学ぶべき、新しい
17世紀の科学革命を機に、化石燃料を使用して産業革命を起こ
文明のライフスタイルは、稲作漁労社会にあると思っている。
し、発展したが、地球温暖化が起き、今、危機に直面している。
そしてエネルギー。文明はエネルギーと深い関係がある。化石
文明を発展させる要因が、文明を衰亡させる──その定理が
燃料を使い、より便利な社会を追求した結果、現代人は豊かさに
あてはまる文明には、実は共通点がある。メソポタミア文明もインダ
慣れすぎて、弱くなった。今エアコンがないと、誰が猛暑の中で過
ス文明も「畑作牧畜型」、パンやチーズや肉を食べる文明で、いわ
ごせるか? ほんの少し停電しただけで、
パニックになって大騒動。
ば「要素還元型」の文明。AをBに変え、BをCに、CをDに変えて
そういうことが社会崩壊の原因になる。しかし途上国では、今も
いく。例えば森の資源を使うとき、森の下草を羊や山羊に食わし、
電気は文明の光──温暖化が深刻さを増すなか、これ以上化石
その肉を人間が食べる。人間が肉を食べてしまうと何も残らない。
燃料に頼ることなく、CO2を出さない原子力と、太陽光・風力・バイ
同様に水を利用する場合も、石炭で水を沸騰させて蒸気に変え、
オマスなど自然循環型のエネルギーを組み合わせて使う。
蒸気機関車を動かす。すると、水はなくなる。
一方、それとは異なる文明がある。自然と人間が循環的に
我々は今一度、電気が文明の光であったことを思い起こし、稲
作漁労社会に学びながら、循環型文明を築く必要がある。■
営々と生きている文明──それが「稲作漁労型」の文明であり、
いわば「要素循環型」の文明。川を流れる水を田に引き込んで稲
をつくり、その水はまた川に流して、海に還り、蒸発して雨として
田に降り注ぐ。水はいつまでも水として循環する。
文明の基本は、何を食べるか、から始まる。それが文明の質を
大きく変える。畑作牧畜民は肉を食べ、稲作漁労民はコメと魚を
食べた。肉を食べると自然を一方的に搾取するだけだが、コメや
魚を食べるには、川に水が流れていないといけない。水のために
は森が必要で、森と水の循環系を護っていないとコメも魚も食べ
CONTENTS
環境の世紀への視点
鼎談 環境の世紀――新しい社会を構想する…………………………… 01
オピニオン
……………………………………………………………… 10
Insight 095-118
Close upエナジー ………………………………………………………………………… 14
News Clip関西電力 …………………………………………………………………… 20
ダイジェスト
やすだ よしのり
国際日本文化研究センター教授
(環境考古学;地理学)
1946年三重県生まれ。東北大学大学院理学研
究科修士課程修了。理学博士。広島大学助手
だった80年「環境考古学」を提唱。世界各地の
文明の盛衰を気候変動との関わりで調査・研
究。88年国際日本文化研究センター助教授、
のち教授。著書「環境考古学事始」
「気候変動
の文明史」
「世界史のなかの縄文文化」
「文明
の環境史観」
「長江文明の謎」
「日本よ森の環
境国家たれ」
「講座・文明と環境」など。2006年
よりスウェーデン王立科学アカデミー会員。
鼎談 環境の世紀――
新しい社会を構想する
松下 和夫・京都大学大学院地球環境学堂教授(環境政策)
玉岡かおる・作家
郡嶌 孝・同志社大学経済学部教授(公共経済学;環境経済学)
●温暖化問題の現状をどう視ているか
「気候安全保障」──
国際社会の政治課題として深刻化する温暖化問題
郡嶌 21世紀は「環境の世紀」と言われますが、科学的な知見が蓄積されるにつれ、大変
な世紀になることが予想されています。きょうは、この大変な環境問題にどう立ち向かい、文
[IPCC]
気候変動に関する政府間パネル。地
球温暖化に関し各国政府を代表する
世界の研究者が集まり、科学的な調
査・研究の評価を行う組織。地球温暖
化の科学的知見・影響・対策などの評
価を行い、報告書を公表。2007年2月
に第4次報告書第1作業部会報告書
(自然科学的根拠)を公表した。
明や社会の転換を図っていくか、について考えたい。
先頃IPCCから、温暖化は人為的問題であり、その進行スピードが速いとの報告が改めて
出され、またCOP/MOP2の前には、ニコラス・スターンが、このまま温暖化を放置すれば大
恐慌と同程度の経済的ダメージを受けるので、早目に取り組み、今なら世界のGDPの1%を
対策に充てれば何とか回避できるのではというスターン・レビューを出した。アル・ゴアも
『不都
合な真実』で環境問題を語り、本も映画もかなり評判を呼んでアカデミー賞最優秀長編ドキ
ュメンタリー賞を受賞。それから、ジェームズ・ラブロックが『ガイアの復讐』
という本で、今から
は持続可能な発展でなく持続可能な撤退だという言い方をしている。
このように立て続けに報告書や著作が出され、現実にも北極グマが死滅する問題とか、
グリーンランドの氷河が融け始めているとか、ハリケーン「カトリーナ」も温暖化のせいではな
いかとか、かなりこの問題の深刻さが現れています。
環境の世紀の社会像を考えるにあたり、まず、どういう着眼点でこの世紀を考えていけば
いいか。最初に、国連や日本で長く環境政策に関わってこられた、松下さんから。
松下 温暖化に対する国際的取り組みとして、京都議定書が10年前に採択され、2年前に
発効した。しかし京都議定書だけでは気候変動を人間が適応できるレベルには抑えられな
いことが、科学者の間では共通認識になっています。IPCCレポートのポイントは、温暖化は
現実に起きていて、しかも従来考えられていたより速いスピードで、人間活動によって起きて
松下 和夫
まつした かずお
京都大学大学院地球環境学堂教授
(環境政策)
1948年徳島県生まれ。東京大学経済
学部卒、ジョンズ・ホプキンズ大学大学
院修了。環境庁入庁。OECD、UNCED
事務局、環境庁大気規制課長、環境
保全対策課長、環境事業団地球環境
基金部長、地球環境戦略研究機関副
所長などを経て、2001年より京都大学
教授。国連大学客員教授、国際協力
銀行環境ガイドライン審査役なども兼
ねる。著書「環境ガバナンス」
「地球温
暖化読本」
「環境政治入門」など。
http://www.users.kudpc.kyotou.ac.jp/~q52535/
いることが確実になった、という点にあります。
そういう事態も受け、例えば京都議定書に否定的で温暖化対策に消極的であったアメリ
カも変わってきた。今年1月にブッシュ大統領が一般教書演説で初めて温暖化問題に言及
し、エネルギー消費を今後10年間で予想消費量より20%削減すると言っている。連邦議会
でも2050年頃にCO2を50%∼60%削減しようという提案が出されたし、各州の動きを見ても、
カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事が2050年頃に80%削減という大胆な目標を発
表。次の大統領候補と目される人も、いずれも温暖化対策に積極的だと言われており、アメ
リカも変わるのではないかと、期待を抱いています。
一方、EUは京都議定書以降の枠組みについて既に着々と布石を打っていて、最近の
EUサミットでは、2020年に温室効果ガスを1990年比で先進国と協調して30%、単独でも
Insight
2006-2007
01
玉岡かおる
たまおか かおる
作家
1956年兵庫県生まれ。神戸女学院大
学文学部社会学科卒。中学教諭を務
めた後、87年「夢食い魚のブルー・グ
ッドバイ」
(新潮社)で作家デビュー。
他の作品に「なみだ蟹のムーンライト・
チアーズ」
「クォーター・ムーン」
「サイレ
ント・ラブ」
「ラスト・ラヴ」
「天涯の船」
「ティアドロップ・プラネット」
「をんな紋」
「蒼のなかに」
「水晶婚」など多数。テ
レビのコメンテーターとしても活躍。い
なみ野パールプロジェクト推進実行委
員会会長。
http://kaoru-t.com
20%削減するとしている。従来は先進国と協調できればと言っていたが、今回はEUだけで
も独自にやると決意を示した。EUの共通認識として、人類が気候変動を抑制するには、産
業革命前と比べ気温上昇幅を2℃以内に収める必要があると。既に0.6℃∼0.7℃上がってい
るが、それぐらいに抑えないと、経済的にも自然生態系の面でも深刻な影響が出る。
EUではもう、総量を規制して各国に割り当て、排出量取引を行うキャップ・アンド・
トレード
システムができていて、CO 2マーケットを世界中に広げようとしている。中国やインドも、温暖
化対策を無視して経済発展しようというのではなく、それぞれの立場で省エネルギー推進な
どに取り組んでいる。今後、京都議定書の目標を達成すると同時に、その先を見通して、
地球全体で公平な負担のもとで温室効果ガスを減らし、なおかつ人々の豊かな生活を維持
することが課題になってくると思いますね。
郡嶌 アメリカの動きは本物でしょうかね。と言うのは、海外の論評では、危険地域からの石
油依存をなくすため、むしろ安全保障の観点からしか考えておらず、温暖化は二の次では
ないかという批評もなされていますが。
松下 確かにブッシュ大統領の一般教書演説も、エネルギー政策が結果として温暖化防止
に寄与するという言い方をしています。エネルギー使用量20%削減目標も、現在から20%
削減ではなく、10年後の増加予測から20%だから、実際どの程度減るかわからない。あと、
エタノールなどバイオエネルギーの拡大を言っているが、それをすると、食糧需要とエネルギ
ー需要が競合し、食糧としてのトウモロコシなどが高騰し、貧しい国の人たちが影響を受け
るのではないかという心配もある。
しかし、全体としては地球温暖化問題も視野に入れ、
「気候安全保障」という観点で国家
安全保障を考えている。逆に、それだけ気候変動問題が政治的課題としてより高いレベル
に上がってきたのかなと考えています。
「帰り
なん
いざ
田園まさに荒れなんとす」
「帰りなん
いざ 田園ま
さに荒れなんとす」
ふるさと
を守る
ことから始めたい
ふる
さ
とを守る
ことから始めたい
郡嶌 なるほど。ラブロックなどは温暖化問題が非常に脅威になっていると言っている。そう
[COP/MOP2]
京都議定書第2回締約国会合。2006
年11月ナイロビで開催された。
いう意味では、世界的な認識でも温暖化が極めて政治的プライオリティの高い問題になって
いるんですね。
玉岡さんは、ふだん生活されているなかで温暖化問題をどう考えておられますか。
[スターン・レビュー]
世界銀行・元チーフ・エコノミストで、現
在は英国政府気候変動・開発における
経済担当政府特別顧問であるニコラ
ス・スターンがまとめた、気候変動と経
済に関する包括的レビュー。2006年10
月30日に発表。
“STERN REVIEW: The Economics
of Climate Change”
「気候変動の経
済学」日本語版要旨・概要>>
http://www.uknow.or.jp/be/environ
ment/environment/07.htm
[不都合な真実]
多くの政治家たちが耳を貸そうとしない
“ 不都合な真実 ” An Inconvenient
Truth.──地球温暖化の脅威と対策
を訴え、世界中を講演して回るアル・ゴ
ア元アメリカ副大統領を追ったドキュメ
ンタリー・フィルム。アル・ゴア著の書
籍版『不都合な真実』
(枝廣淳子 訳;
ランダムハウス講談社 2007)も出版
されている。
http://www.futsugou.jp/
http://www.randomhousekodansha.co.jp/futsugo/
02
2006-2007
Insight
玉岡 確かにアメリカなどを旅行すると、未だにガソリンスタンドで、ばかでかい車に70リッタ
ーぐらい入れて、しかも燃費が悪い車に乗っている。一体、彼らに温暖化への認識があるの
か。世界地図で見たら、アメリカみたいな大国が温暖化対策をやらず、日本みたいな小さな
国に住む我々がコツコツやって、市民の努力でどれくらいカットできるかはいつも疑問に思っ
ているところです。
先日、私が出ているニュース番組で温暖化特集をしたとき、市民にできる一番身近なこと
がスーパーのビニール袋だったんです。こんなものを減らしてCO2を削減できるか疑問でした
が、化石燃料である石油からつくられるビニール袋を有料化したり、エコバッグを持っていく
だけで、驚くほど削減できるというデータが出ました。
小さな努力でも積み重ねが大事ですが、残念ながら日本の市民全員が地球温暖化を人
類の危機として捉えているかというと、ニュースでやるからこそ大変かなと思う程度。かとい
って逆に、南極の氷が融けて水位が上がり東京や大阪が水没するかもしれない、というよう
に危機感だけ煽るのもいけない。専門家は、市民をパニックに陥らせることなく正確な情報
を伝えてほしいけど、大きな数字はピンとこないのが庶民感覚です。
じゃ、どうするかを考えたとき、私たちの国の豊かな資源である身近な森に着目するだけ
でも大きな違いが見えてきます。私は、小説の取材で先頃、台湾に行きましたが、台湾では
日本統治時代に阿里山という山に森林鉄道を敷き、大量のヒノキを伐採しました。自然破
壊と非難されると、日本は卑屈に謝りますが、台湾では、ヒノキを伐採した後にちゃんとスギ
を植えているんです。日本人は捕鯨でも欧米人に批判されますが、実は何一つムダにせず
新しい命に代えて循環させる思想を持っている珍しい国民だったんですね。
思うにこれは日本人が農耕民族だったから。私は今、地元で「いなみ野パールプロジェク
ト」に取り組んでいます。都市化が進んで放置されたため池を、真珠が育つほどのきれいな
水に戻し、何とか守っていこうという運動です。農耕民族だった我々の祖先は、ため池をつ
くって天の恵みの水を溜め、水を田んぼに引いて米を収穫し、その後、また川に流して天に
返す、というリサイクルをやっていました。こういう活動をやり出すと、農耕民族として、田を耕
し水を引き、営々とやってきた日本人の暮らしが、いかに地球環境に配慮して、ささやかな
[ガイアの復讐]
英国の生物物理学者ジェームズ・ラブ
ロックが著した、人類の手による温暖化
で壊されていく地球再生への処方箋。
“The REVENGE of GAIA”
(2006)
『ガイアの復讐』
(秋元勇巳監修/竹
村健一訳;中央公論新社 2006)
[キャップ・アンド・トレードシステム]
排出量取引のシステム。温室効果ガス
の総排出量をあらかじめ設定したうえ
で、個々の主体(国や企業)に排出枠
を配分し、それぞれ割り当てられた排出
枠の一部を取引するというもの。
がら温暖化にも貢献してきたものだったかをすごく学ばされます。別に、みんな農耕民族に
還れというような極論を言うつもりはなく、今ある資源・環境を守ることが市民にできる対策じ
ゃないかと思うわけです。
中国の古い詩に「帰りなん いざ 田園まさに荒れなんとす」というフレーズがありますが、ま
さにこれですね。荒れようとしている私たちのふるさと、荒れようとしている地球、荒れようとし
ている人類の文明をまず意識して、警告を素直に聞いて、大地に戻っていく。一市民として
できるのはその辺かなと思っています。
環境をビジネスチャンスにする企業、
自ら動くNPOも現れてきた
自ら動くNPOも現れてきた
[いなみ野パールプロジェクト]
兵庫県・東播磨地域のため池に棲息す
る「ぬばたま貝」を使って、淡水真珠
「いなみ野パール」を育てるプロジェク
ト。1個体で1日にドラム缶1本分の水
を浄化すると言われ、また生物多様性
をはかる指標ともなっている「ぬばたま
貝」をシンボルとして、水辺環境の保
全と再生をめざすもの。
http://www.inamino-tameikemuseum.com/4/
環境をビジネスチャンスにする企業、
[CSR]
Corporate Social Responsibility
企業の社会的責任。
郡嶌 今、松下さんから国際的な動き、玉岡さんから生活者の視点で話をいただきましたが、
私は企業や地域社会の観点から視てみたい。
今までの環境政策は行政が政策主体になり、企業や消費者は政策客体として対応して
いた。ところが、最近は政策客体のニーズや選択も多様化し、意識も温度差があって、なか
なか政策が前提にした行動を、とってくれない。例えばレジ袋やゴミ回収を有料化したらゴミ
が減るかといった場合、住民側は、まず、ゴミが有料になるならゴミを家に持ち込まないように
する人。次に、ついついゴミを持ち込んでもリサイクルする人。これらは結果的にゴミを減らす。
しかし一方では、不法投棄をする人も出てくる。つまり、どの行動がとられるかで政策の有
効性が左右される。行政の熱意がそれぞれの政策客体の利益と結びつかなければ、必ず
しも期待した結果にはならないわけで、企業や市民が受身でなく自らの問題として対応する
方策を考えないといけない。
幸い近年、企業でCSR、社会的責任が言われ始め、企業も温暖化を自分たちの問題とし
て考え始めた。従来は温暖化問題をビジネスの制約条件として捉えていたが、今はむしろビ
ジネスチャンス。アメリカが熱心になり得たのも、行政の対策遅れで自分たちのビジネスチャン
スが失われるのは困ると、企業が政府に働きかけた面がある。
それに対し市民社会はなかなか動かないが、玉岡さんがやってるNPO活動。NPOが自
ら取り組むということで、市民資本としてファンド化しながら風力や太陽光発電を建設する動
郡嶌 孝 ぐんじま たかし
同志社大学経済学部教授(公共経済
学;環境経済学)
1947年福岡県生まれ。同志社大学大
学院経済学研究科博士課程修了。同
志社大学助教授を経て、84年教授。
94∼96年経済学部長。循環経済にお
けるインダストリアル・メタボリズム、持
続可能な発展へのライフスタイル・アプ
ローチなど研究。著書「文明と環境」
「ポイ捨て文化への挑戦」
「次代を拓く
経済政策」
「リサイクル時代のごみ行
政」など。
「京都府地球温暖化防止活
動推進センター」理事長なども務める。
きも出てきたし、環境に優しい産業を支援する形での責任ある社会的投資とか、自らが環
境に優しいグリーンコンシューマーになったり、事業者としてコミュニティビジネスを行う。そうい
う動きがやっと萌芽として出始めた。
●環境の世紀、どのような社会・文明が望ましいか?
●環境の世紀、どのような社会・文明が望ましいか?
自分の庭を掃除するように自分のまちを美しくする
自分の庭を掃除するように自分のまちを美しくする
郡嶌 1990年代は環境問題への理解や意識は高まったが、行動は出てこなかった。それ
が次第に行動につながる萌芽が出てきた。新しい社会へ、玉岡さんは日本的なライフスタイ
ルの見直しにヒントがあると言われたが、松下さんはどうですか。
Insight
2006-2007
03
[コミュニティビジネス]
地域の人々が、地域資源を生かしなが
ら地域課題の解決を「ビジネス」の手
法で取り組むもの。地域の人材や技
術・ノウハウ、施設、資金を活用するこ
とで、地域における新たな雇用の創出、
働きがい、生きがいを生み出し、地域コ
ミュニティの活性化に寄与すると見ら
れている。
[新町川を守る会]
徳島市にあるNPO法人。
「市民の汚し
た川は市民の手できれいに再生しよう」
と、1990年に発足。川の清掃をはじめ、
現在は徳島市のひょうたん島周遊船の
運航、花植え、植樹活動など、多彩な
活動を行っている。
松下 私も先日、四国に行く機会があり、NPOで活動されている方と話をしました。徳島市
に「新町川を守る会」があり、汚れた川を市民が掃除をして甦らせた。その活動のリーダー
は率先垂範型。ゴミを拾っていると、横でごみを捨てる人がいるが、怒らず、黙々と拾う──
日本には掃除という良き伝統があるんですね。ヨーロッパのような階層社会だと、掃除は外
国人労働者の仕事だったりするが、日本では掃除で道を究める。禅寺の修行でも、相撲部
屋でも、学校でも、自ら掃除をすることが、すべてに通じると。その人に、ボランティアは大変
ではないかと訊くと、
「いや、町は自分の庭みたいなもので、自分の庭を掃除することはボラ
ンティアとは言わない。自分は年金を貰っているから、国家公務員のようなものであり、社会
に貢献するのが当たり前だ」と。
確かにアメリカ人がエネルギーをムダ遣いして、なぜ日本人がコツコツやるのかという気も
しますが、
「情けは人のためならず」。自分が率先して自らを高めることで周囲を変えていく。
その意識がまずは大事。ただ、普通の人は心がけだけでは続かないので、例えばゴミを減ら
[ニホンバラタナゴ]
日本の在来種の淡水魚。タナゴ。
すと家計の節約になるようなしくみづくりが必要です。人々は、きっかけがあれば動く。アメリ
カでも、石油価格の上昇で一般消費者にハイブリッドカーを買う動きが出ている。環境行動
が経済的にも社会的にも評価されるしくみができると動き出すんです。
現実に、世界の産業界や政治家が集まるダボス会議では、今年は温暖化問題のセッショ
ンが一番注目を集めた。社会を変えるのは市民や企業だが、市民や企業が温暖化対策を
我慢や心がけでやるのではなく、やることが自分の生活の快適性や利便性、企業で言うと収
益にもつながるしくみをつくっていくのが行政や政治の役割です。
玉岡 行政はサポーター役なんですね。明治の頃は、中央政府がリーダーシップを発揮し、
全国津々浦々にまで教育令だの学制だのと重要な国策を行き渡らせる号令をかけ、人々の
意識を高めたのですが、今はそんな時代ではない。
パールプロジェクトは、兵庫県がやっている活動ですが、号令ではないんです。播磨という
土地に住むいろんな立場の人が、自分たちの財産としてため池を保全していく。私もやっぱ
り自分の庭、自分のふるさとだからやっていけるんですね。自分のふるさとだからというのは、
「愛国心」。愛国心というのは、別に無理やり国を愛せというのではなく、君が生まれ育った
ふるさとの野山を見てごらん、美しいだろう、ここが好きだろうと。人間の素直な視覚、聴覚、
触覚に触れる原風景としてのふるさと。ふるさとが美しければ、誰もが好きになるし、誇りに
思うし、愛するようになる。その意味で、私は、播磨というふるさとを美しいふるさととして次
の世代にバトンタッチできればと思っています。
松下 ため池といえば、香川で、ニホンバラタナゴという絶滅危惧種がため池に棲んでいて、
それを地元の高校の先生が一種のNPOをつくって守っている。ただ地元では、そのバラタ
ナゴが貴重な絶滅危惧種ということは知られてない。だから、パールプロジェクトのように、地
元で象徴的な宝をつくって、シンボルにしていくのは非常に大事ですね。
日本古来の「循環と共生」
をキーワードに をキーワードに
日本古来の
「循環と共生」
中間組織の底力に期待したい
中間組織の底力に期待したい
玉岡 絶滅させたらもうそこでストップなんです。私はこれからの社会のキーワードは命の
「循環」だと思います。
『ラスト・ラヴ』
という作品を書いたとき、ネパール、チベットに取材に行
きましたが、ヒマラヤのふもとの広漠たる砂漠の中に大寺院が建っている。でも、どこにも
木はない。寺院を建てるとき山の木を伐ったがために、広漠たる砂漠になったんですね。
文明の象徴としての大寺院を建てたがために文明が崩壊した。これは命が循環しなかっ
たからです。
日本も大陸や西洋の文明の影響を受け、この140年、西洋に追いつけ追い越せでやって
きて、今、曲がり角に来ていますが、それは大陸、西洋の文明がすべてではなかったという
岐路に立っていることでもあるような気がします。
04
2006-2007
Insight
西洋以前の日本民族が持っていた文明の偉大な思想は「循環」。回さないとだめなんで
すよね。私たちがやっているパールプロジェクトは、池の中の小さな「ぬばたま貝」を母貝にし
ますが、貝は自分に必要なプランクトンしか摂らないので、余剰のものを吐き出す。すると、
それに虫が集まり、魚が集まり、鳥がやってきて、さらに貝を生かすがために水がきれいにな
って、その水の周りに人間が集まる。これは回っているわけです。生物たちの食物連鎖の周
りに人間がふるさとの原風景を求めて集まってくる。この循環を何とか成功させたいんです
ねえ。森の整備が海の浄化につながるという話もあり、循環というのはいろんな場で使える考
え方ではないかと思います。
また全く別の観点で循環について言えば、今、個人投資家が増え、主婦や一般層にもフ
ァンドが簡単に買える時代になりましたが、人気が高いのがエコファンド。企業の環境努力に
投資するというもので、私も1種類、持っています。長く持っていると、環境に熱心でなくなっ
た企業が淘汰されていたりして、ファンド1つ持っているだけで、企業努力がよくわかる。市民
は決して経済的な収益だけではなく、そういう面も見ていて、これだけ環境対策に力を注い
でいる企業なら、我々市民もサポーターとなって、ファンドを買って応援しようと、これも循環で
回っていく。
人間が生きるところ、すべてキーワードは「循環」で、環境の中にも、経済の中にも、社会
の中にも、人間の心の中にもこれを取り入れることが、時代を変えることになるのではないで
しょうか。
松下 「循環」
もエネルギーや水を循環させるだけでなく、人や資源をその地元でぐるぐる回
す。佐渡では、
トキを自然に帰すトキプロジェクト──日本産のトキは絶滅したが、中国から
貰ったトキを人工増殖し、2015年までに放鳥して、佐渡の自然の中で棲めるしくみをつくろ
うとしています。トキを放鳥するには、周辺の山や農村をトキが棲んでいた状態に戻す必要
がある。現在は、田んぼが休耕田になったり、用排水路がコンクリートになり、
トキの餌である
ドジョウやカエルがいなくなっている。中国産のドジョウを東京の築地市場から買っているが、
結構農薬が入っていて、体の小さなトキには大問題。だから、地元農家が休耕田をビオトー
プにして低農薬で安全なドジョウを養殖すると、
トキセンターが買い上げ、地元でお金が回る
しくみをつくった。地元農家はトキ米というネーミングの低農薬の米をつくっていて、結構高
いが、ファンがいて売れている。また新潟市から小学生が修学旅行でやってきてビオトープ
づくりに参加するなど、地元と都会の交流も実現。地元のシンボルをつくり、金や人を循環さ
せるしくみができているんです。
玉岡 兵庫県豊岡市ではそういう努力をすべて行い、絶滅寸前だったコウノトリを自然に帰
す活動が真っ先に成功していますよ。それを先例に全国に広がっているのは、これも循環か
なと思います。
郡嶌 「循環」に加えたいキーワードがあります。世界人権デーのとき、京都のお寺に「ばら
ばらで一緒」
と書かれた垂れ幕が張られていた。ばらばらというのは、無秩序でなく、多様性。
多様なものが許容しながら秩序を持って共存する。その意味で「共生」がもう1つのキーワー
ド。日本が昔から試みてきた「循環と共生」を、どう生かすかが重要です。
そしてその担い手は誰か。私はここ数年、国の容器包装リサイクル法の改正に関わって
いて、スーパーのレジ袋の有料化の議論が出たが、業界の中でも温度差があり、見送られ
た。しかし行政がやらなくても、我々は京都で環境団体と事業者が自主協定という形をつく
った。つまり環境と経済活動を見た場合、どうしても我々は国による公共経済と企業活動に
よる市場経済だけを考えがちだが、実際にはかなりの中間組織が経済活動をしている。
古い中間組織では家族やコミュニティ、ここでやれる活動がある。私が好きな番組は、
NHKの『ご近所の底力』。行政でも企業でもない、ご近所で解決できる問題は、自らの底力
で解決していこうと。新しい形としては、ファンドとか、NPO。公共経済でも市場経済でもない、
もう1つの社会経済なりコミュニティ経済の底力。そこに解決能力を持たせないといけない。
環境を捉える上での「循環と共生」。それを解決する中での、NPOを含めたご近所の底
[ぬばたま貝]
日本、兵庫県播磨地方在来種の貝。
ドブ貝、カラス貝など呼称がまちまちな
ため、その形状の黒色から新たに命名、
呼称を統一。
[エコファンド]
環境対策に積極的に取り組んでいる企
業の株式に重点的に投資する投資信
託であり、社 会 的 責 任 投 資( S R I:
Socially Responsible Investment)
の1つ。
[コウノトリ]
国の特別天然記念物・コウノトリの日
本最後の生息地となった但馬地域・豊
岡市で1965年から人工飼育を開始。
「兵庫県立コウノトリの郷公園」で、コ
ウノトリの保護・飼育・増殖、野生化に
向けての研究、環境づくりなどを進め、
既に2005年から放鳥を行っている。
Insight
2006-2007
05
力と言われる中間組織の活躍が、経営学の大家ドラッガーも言うように、21世紀の新しい流
れじゃないか。今まで中間組織は、インフォーマルセクター、日陰の存在だったが、おっとどっ
こい、これは結構、解決能力を持っているのではないかという気がします。
●脱温暖化へ、実現を阻む壁と、見えている新しい兆しは何か?
●脱温暖化へ、実現を阻む壁と、見えている新しい兆しは何か?
長期戦略の苦手な日本人、
長期戦略の苦手な日本人、
バッッ
クキ
ャステ
ィングで未来を選び取れ
バ
ク
キャステ
ィングで未来を選び取れ
郡嶌 キーワードと解決主体が見えてきましたが、立ち向かうにもバリアがある。温暖化問題
解決に向けて何が活動を阻み、新しい社会を実現する上で何が欠けていると思いますか。
松下 最近だとクールビズとかMOTTAINAIとか、身近なことを心がけてやることは、多分
日本国民は世界でもトップクラスだと思います。ただ、逆に長期的展望を持って、戦略的に
物事を進めていくことは欠けている印象がある。
IPCCのレポートなどで、このまま行くとどうなるかは明確に出ている。それに対して、例えば
2050年頃にはこういう社会にしようと長期的ビジョンを描き、バックキャスティング、逆算して、
今からどういう投資をするか、どういうまちづくり、家づくり、交通システムづくりをするか──
到達すべき社会ビジョンを描き、そこに行くための道筋を具体化する仕事が必要ではないか。
ヨーロッパは温暖化の気温上昇を産業革命前と比べ2℃以内に抑える目標から逆算して、
いろんな対策を立てている。日本でも私も関わっている「脱温暖化2050」という研究プロジェ
クトでは、2050年までに日本が1990年比でCO2を70%削減する社会を描き、対策を立てた。
エネルギーの供給側はより効率的でCO2の少ないエネルギーを供給し、需要側はエネルギー
消費を効率化する。そして多様な技術を組み合わせ段階的に導入することで、環境負荷の
少ない交通、住宅、都市を実現する。都市のインフラ整備や電源開発には長期の時間がか
かるから、今から2050年を見通してやっていく。その道筋を描き、経済的にもGDPの1%程
度を計画的に使うことで達成できると。
これは新しいタイプの政策。これまでは役所も企業も単年度で考えがちだったが、長期的
メッセージを出し、社会全体のしくみを徐々にそっちへ向けていくことが重要ではないか。
郡嶌 将来こうあるだろうというフォアキャスティングは、予測するだけで、未来を選択するわ
けじゃない。むしろこういう社会を選びとろうという選択をまず行い、バックキャスティングで立
ち向かう形を決める。ヨーロッパのそれは1世代、30年、我々が生きている間に実現させよう
という計画ですが、長期戦略は日本人は苦手かもしれない。
目に見えないCO 、可視化する工夫が必要だ
目に見えないCO2、可視化する工夫が必要だ
2
郡嶌 環境問題というのは、CO 2が見えないことも問題ではないかと思います。見えないか
ら、自分の問題にできない面があるのでは?
玉岡 確かに見えないから身近に感じられないのは事実です。だけど、例えば花粉予報の
ように、気温上昇についてもCO2の量で知らせるとか、いろんなしかけはできる。それは情報
の送り手側であるマスコミの仕事だと思います。
郡嶌 この前、上海に行ったとき、天気予報の中で微小汚染情報が出ていた。中国でも汚
[脱温暖化2050プロジェクト]
日本における中長期脱温暖化対策シ
ナリオを構築するために、技術・社会イ
ノベーション統合研究を行い、2050年
までを見越した日本の温室効果ガス削
減のシナリオとそれに至る環境政策の
方向性を提示する研究プロジェクト。
2007年2月に中間報告書『2050日本
低 炭 素 社 会シナリオ:温 室 効 果ガス
70%削減可能性検討』を公表した。
06
2006-2007
Insight
染を気にし始めたようで、汚染指数みたいな形で情報を流していた。またオゾン層が破壊さ
れているとき、オーストラリアのテレビでは、天気予報の中で「バーンタイム」、日焼け時間とい
うのを出していた。明日は快晴で、かなり紫外線が降り注ぐから、木陰で何時間しか日光
浴ができないという、日焼け時間指数。日本でも最近は花粉指数や洗濯指数を出していま
すが、このように何かCO2を可視化するしくみが必要です。
玉岡 「CO2予報」ですね。例えば、排気ガスなど身体に悪いものに人間はすごく敏感で防
御しようとするから、台湾ではマスクが大流行。だけどCO2は別に身体に悪くないからいいと
対策が緩くなっている気がします。だからCO2予報を出すときに「これで南極の氷が融けて
海面が何センチ上がる」という、身に迫る危機感として伝える工夫も必要でしょうね。
松下 おそらく農業や漁業に携わる人など、環境変化を体感として知っている。だけど全体
像が見えてこない。温暖化問題は従来の環境問題と違い、人間の想像力と、論理的に物
事をつなぐ力が必要な難しい問題です。
ただ逆に、見えてくると動きやすい。小さな工夫として、家電製品に貼る「省エネラベル」
や、岩手県の課長さんが開発した、日常生活でのCO2排出量が簡単にわかる「環境尺」な
ど、そういったものを広げていけばいい。
郡嶌 そうですね。環境省のNGO/NPO・企業環境政策提言推進事業でも、買い物時の
レシートにCO2量を書き込めばいいとか、面白い提案があった。またゴミの減量化もなかなか
見えないが、カロリーダイエット同様、各製品にゴミにしたときの数値をつけておけば、それを
[省エネラベル]
省エネラベリング制度。エアコン、テレ
ビ、冷蔵庫など家庭で使用される製品
を中心に国の省エネルギー基準を達成
しているかどうか、達成率をラベルに
表示するもの。省エネ性能が高い製品
を選ぶ際の性能比較などに役立つ。
[環境尺]
人間の行動が環境に与える負荷を計
測する物差し。生ゴミを焼却したときの
負荷や車を使ったときの負荷など、日
常生活でのCO 2排出量が簡単にわか
る。岩手県が考案し、公表している。
http://www.pref.iwate.jp/~hp0315/k
ankyosyaku/kannkyosyaku.htm
目安に進められる。そもそもダイエットは、減量効果が見えると病みつきになるが、気を抜くと
リバウンドしてしまうので私はいつも失敗しています(笑)。いずれにしても、それぞれの身に
迫る形で工夫しないといけない。
国益より地球益、
地域固有の価値を認め合い共生する民際外交を
地域固有の価値を認め合い共生する民際外交を
国益より地球益、
玉岡
自分さえ良ければ、という考えも問題です。農耕社会では、水を引くのも収穫も共同
作業でしたが、西洋の個人主義が発達すると、自分さえこの時代を生き延びれば構わないと
いう考えが蔓延しました。だけど温暖化は、自分だけが閉じられた環境で快適な気候で過ご
せるわけではないのですから、地球全体に関わる問題。自分だけというのは通じない。そこ
の意識の叩き直しが必要で、それは、もっと全地球的な呼びかけをしないとだめですよね。
例えば日本に差し迫った問題で、中国の水温上昇で巨大化したエチゼンクラゲが押し寄
せるなどの例があります。日本だけ一生懸命やっても、隣近所、共同体でやらないと解決で
きないわけですよね。地球規模で広げるにはどうすればいいんでしょうね。
松下 地球環境問題は、地球全体でルールをつくって進めることと、地域の、国でいうとお
隣さんが集まって解決していくことがある。その点で東アジア──中国、韓国、日本は海を
隔ててはいるが環境的には1つのまとまりだから、環境共同体をつくり、協力する。日本のた
めということもあるが、周辺国の環境と生活が豊かになることで日本にも利益があるから、そ
れはいわば共通の利益。日本のイニシアチブで周辺地域を美しくすることに、国を挙げて取
り組みたい。
郡嶌 確かに地球環境問題は、ある意味で地球益にみんなが立つ必要がある。今の限界
は、環境外交が国益を中心とした国と国の間で行われていること。そのレベルの話し合いも
大事だが、民間レベル、民と民の民際的な交流の方が地球益に立ちやすい。NGOを国の
代表にするとか、企業、民間レベルの交流を多層的につくっていく必要がありますね。
松下 先日、京都で世界の都市が集まって温暖化防止に取り組む都市会議を開いたが、
そういう形で都市同士が、共通目標をつくって協力するしくみも大事です。
玉岡 そうですね。多層的という点で少し明るい兆しが見える。国レベルでやっていても、ア
メリカは京都議定書に判を押さないわけですから、民間レベルで何とかしていかないと。
郡嶌 民際外交を考えたとき、シンク・グローバリー アクト・ローカリー、グローカリゼーションと
いう形があるが、私は、むしろ民と民の協力を考えた場合、それぞれ地域固有のバナキュラ
ーな価値で動いているから、それを前提に互いに助け合って共生する──早稲田大学の田
村正勝先生の言葉で言えば「バナキュラー・ユニバーサリゼーション」の形が大事ではないか
と思っています。国と国のグローバルな外交と同時に、民と民の関係で互いの交流が地球
益に合った形で組織されていくのが望ましく、そういう形ができてくれば、解決への新しい兆
しが出てくるだろう。
Insight
2006-2007
07
[CDM]
Clean Development Mechanism
「クリーン開発メカニズム」。京都議定
書の柔軟性措置(京都メカニズム)
とし
て盛り込まれた制度で、先進国の資
金・技術支援により開発途上国におい
て温室効果ガスの排出削減等につな
がる事業を実施し、その事業により生
じる削減量の全部または一部に相当す
る量を先進国が排出枠として獲得でき
るというもの。京都メカニズムにはほか
に、先進国同士での「共同実施」
(JI:
Joint Implementation)、
「排出量取
引」
(Emissions Trading)がある。
●新しい社会を どうやって実現すればいいか?
●新しい社会を どうやって実現すればいいか?
文明にくるまれ脆弱になった日本人、
文明に
く
るまれ脆弱になった日本人、心に響くメ
意識変革を促す、
ッセージを
意識変革を促す、心に響くメッセージを
郡嶌 では、その兆しを本流にするにはどうすればいいか。その課題を解決する覚悟という
か、方策を考えたい。
松下 温室効果ガスを減らすことを基本に、脱温暖化社会の目標をきちんとつくり、できるだ
け透明性があるルールをつくることが重要です。
現実に、好むと好まざるとにかかわらず、EUを中心にCO2排出量取引の市場ができてい
[赤道原則]
民間金融機関が、ダムや発電所、天然
資源開発など大型のプロジェクトファイ
ナンスを行う際の方針を定めたイニシ
アティブ。世界銀行の民間投融資部門
の基準が参照されており、環境影響の
大きいプロジェクトを行う際には、環境
アセスメントレポートや環境緩和計画の
策定・公開が求められる。2002年にス
タートし、全世界で約50の民間金融機
関が採択している。
て、ヨーロッパで活動する企業はそれに従い、世界に広がっていく。先進国からの技術移転
を求める中国も、CO2クレジットと引き換えに技術移転を実現するなど、排出量取引と技術移
転を組み合わせるCDMという形の事業が世界的に広がっている。
一定のルールでCO2を減らせばメリットがあり、多く出せば対価を払う。それは環境税や排
出量取引などの立法措置もあるし、市場ルールも、自主的努力もあるが、そういうしくみを広
げていくことが必要です。企業にとって短期的にはコストがかかるが、新しいビジネスチャン
スも生まれるわけで、自らのビジネスモデルを一から見直してもいい。例えば自動車メーカー
は、単に自動車をつくるだけではなく、輸送というサービスを提供する。エネルギー産業もエ
[彩都 さいと]
大阪都心から北へ18km、茨木市と箕
面市にまたがる丘陵地に拡がる国際文
化公園都市。豊かな緑のなかで、国際
交流や学術文化・研究開発等の未来
型の都市機能と、自然と調和したアメ
ニティ豊かな住環境を併せ持つまちと
して、2004年春にまちびらきが行われ
た。
ネルギーのサービスを提供する。そのサービスを、環境負荷が少なく快適でコストも安いしく
みで行う。生活者も物を所有するよりサービスを活用する。例えば大きな自動車を所有する
よりも、歩けるときには歩き、自転車を使い、自動車もレンタルで共用で使う。既にコピー機な
ど所有でなくレンタルのしくみができている。レンタルシステムのような新しいビジネスモデルが
広がっていくのではないでしょうか。
郡嶌 そういった環境負荷の少ない社会構造づくりとともに、
やっぱり金の流れを変えないと。
ようやくエコファンドなどで、自分の金の使われ方を気にするようになり、金が環境に優しい方
向へ流れるきっかけができたが、なかなか日本ではそういう動きは鈍かった。
松下 海外に投資して資源開発を行う資源金融などで、環境影響をあらかじめ評価して対
策をとる「赤道原則」を守る金融機関が世界に広がっているし、木材も持続可能な方法で森
林経営したところから証書のついたものを買うとか、乱獲につながらない持続可能な方法で
とってきた魚だけを買うしくみもできているが、日本ではまだ限られていますね。
玉岡 結局、文明に守られ脆弱になった日本人の体力に問題があるのでは? 38℃とかの
猛暑のなかで、停電でエアコンがとまると大パニックになる。あるいは原稿をパソコンで書いて
いる私など、たちまち何もできなくなる。それだけ文明にくるまって赤子のようになっているん
です。私は阪神・淡路大震災でエネルギーがとまった瞬間を体験していますが、ライフライン
がとまったとき、自分たち人間が何て弱い存在かを身をもって実感しました。でも12年経つと、
あの日のエネルギーに対するありがたさはどうしても薄れがちになっている。
野生に戻れとまでは言わないが、私たちはもう少し文明を解いても生きていける力を持た
ないと、環境問題はいつまでたっても遠いままではないでしょうか。
環境負荷の少ない暮らし方として、今、茨木・箕面で「彩都」という日本最後の大規模住
宅開発が進んでいます。それは日本最後の開発というだけあって、徹底的に環境に配慮し
たまちづくり。道路をコンクリートで固める方法ではなく、雨水がしみこむペーブメントを使った
り、各家庭に雨水タンクを置いたり、リビング一室程度に対応する冷房定格能力で、住宅1
棟全体の空調を賄うとか。車にしても、日本人は車を所有するのがステータスの時代が続き
ましたが、カーシェアリング、レンタルでなく共同で所有して、管理は事務所に任せるのです。
そういう思想が普及すれば暮らし方も変わる。
やっぱり人間は考える生き物なので、意識を変えることからでないと対策は立てられない。
日本人は今まで、例えば近代化という目的があるときには「富国強兵」というたった4文字の
08
2006-2007
Insight
言葉で、僅か30年余りで大国ロシアに討ち勝つというようなことをやってのけたわけだから、
温暖化対策も、目標を達成するには人間の精神に響く、意思統一を図る言葉でつないでい
くべきではないでしょうか。甘いかもしれないが、それが物書きとしての私の結論です。
温暖化の切り札として原子力を位置づけ、
安心への対話を続けていく
安心への対話を続けていく
温暖化の切り札として原子力を位置づけ、
郡嶌 最後に、温暖化防止のために電力会社に何を期待しますか。
松下 電力会社はエネルギーサービスを提供する会社だから、安全でクリーンな電力を安
定して供給することが一番の課題。できる限りCO 2の負荷が少ない電力を開発し、供給す
る。それと、ユーザーとの対話。いろんな問題についてきちんと情報公開してコミュニケーシ
ョンを図っていくことが必要です。国際的には、日本の発電所は非常に効率がいいので、そ
ういった技術を生かし中国など海外との協力にも力を注いでほしい。
玉岡 震災時に実感したように、電気なしに私たちの生活は立ち行かない。だから、安全
で、しかもCO2を出さない電気を提供しているというメッセージをもっと発信していく。CO2を出
さない電気と言えば原子力で、私も福井県の発電所を見学し、安全への配慮が細心の注
意でなされていることを目の当たりにしました。今後も安全最優先との自覚を持ち、高い志で
電気を供給をしてほしいですね。
郡嶌 原子力について言えば、CO2を減らす観点で再評価し、温暖化対策の切り札として
位置づけてはどうか。ただ、幾ら科学者が安全だと言っても安心はできないという住民の声
がある。さまざまな情報をわかりやすく提供していくことが重要でしょう。
温暖化は、我々世代の後に来る問題で、ついつい後の世代のことを忘れがちですが、豊
かさを享受した我々が責任を持たなけらばならない。21世紀前半に何らかの解決策を見出
さないと、21世紀後半は大変な世紀になる。それに対し我々は絶望的になることはなく、解
決策があることもわかってきた。それを踏まえて、今後それぞれの知恵を出し合い、みんなで
方向性を探りながらやっていくのが重要なのだと思います。
きょうは、貴重な提言をありがとうございました。■
編集/田窪由美子
Insight
2006-2007
09
Insight 095-118
ダイジェスト
シ
リ
ー
ズ
環
境
の
世
紀
10
いま地球環境問題の論点は?
──COP/MOP1後の
世界の課題
松下和夫・京都大学大学院
地球環境学堂教授
2006.01.01・第95号
明日の地球へ、エネルギー
環境教育の課題は何か
長洲南海男・日本エネルギー環境教育学会
会長
2006.02.15・第98号
流れとしては、温暖化対策を地域発展戦略として取り組む動き
エネルギー問題は、次世代、そして世界の人類の生存に関わ
が、途上国も含めて出てきている。日本は温暖化対策では必
る点でまさしく教育の問題だ。エネルギーや環境イシューズに対
ずしも先進国ではない。個々の企業はかなり努力しているが、
しては、工学、理学、環境や教育等さまざまな分野が「次世代
社会システムとして、CO2を減らせば経済的に評価される仕組
への現世代の責務」という共通認識のもと総合的、学際的な
みをつくらないといけない。単に犠牲的精神でなく、企業収益
取り組みが不可欠で、従来の知識記憶型、唯一正解追求の
にも繋がる仕組みをつくるべき。
学校教育からの根本的転換が求められる。
*資料室:
「地球温暖化」の周辺
*資料室:
「エネルギー環境教育」の周辺
*読書室:
「地球温暖化」を読み解く11冊
*読書室:
「エネルギー環境教育」を読み解く11冊
温暖化防止に向けた、
世界のエネルギー事情
異常気象と体調・気分──
温暖化の影響を予報する
神田啓治・エネルギー政策研究所所長;
京都大学名誉教授
2006.01.15・第96号
河合 薫・健康社会学/博士;気象予報士
2006.03.01・第99号
世界のエネルギー・環境問題の焦点は中国とインド。京都議定
温暖化って、単に気温が上昇するのではない。暑くて暑くて急
書の第2ピリオドの焦点は環境問題に目覚めた中国だが、第3
に冬になる。冬がずっと長くて急に夏になるという、両極端の現
ピリオドはインドが焦点。インドはまだ環境を考えてないが、もう
象が日常となり、日本の良さである「四季」がなくなってしまうこ
すぐ人口で中国を抜き、世界一の大国となり、エネルギー消費
とでもある。趣深い奥ゆかしさが失われ、すごく暑いか寒いと
も急増する国が環境問題にいつ目覚めるか。インドがどう動く
いう、気性が荒いだけで、アンニュイな現象、はかなさを感じる
かは世界の環境問題を左右する。
季節がどこかにいってしまうのだ。
*資料室:
「温暖化とエネルギー」の周辺
*資料室:
「気象・気候」の周辺
*読書室:
「温暖化とエネルギー」を読み解く11冊
*読書室:
「気象・気候と暮らし」を読み解く12冊
社会的責任としての環境経営
──議定書目標達成へ
企業の役割と課題
美しい日本へ──地球生態系
保全の模範を示すガーデン
アイランズを構想する
國部克彦・神戸大学大学院
経営学研究科教授
2006.02.01・第97号
川勝平太・国際日本文化研究センター教授
2006.03.15・第100号
環境経営を進めるためには、環境保全のしくみと経済活動の
日本は6,852の島々からなる島国であり、南北に長い日本列島
しくみをうまく結びつけることが重要である。京都議定書が発
自体、北は亜寒帯から南は亜熱帯まで広がっているので、ある
効し、温室効果ガスの削減目標達成への取り組みを一段と進
意味、地球生態系のミニチュアと見立てることができる。これを
めざるを得ない状況下、その必要性は非常に高まっている。課
生かせば、
「ガーデンアイランズ」という国土像が浮かび上がっ
題は2つ。1つは企業経営のしくみ自体の変革と、もう1つは、そ
てくる。生命の星で、地球を、そして美の文明を体現する日本
れを促す市場や社会の変化と力が要るということだ。
でありたいと願う。
*資料室:
「環境経営」の周辺
*資料室:
「美の国」日本を知る
*読書室:
「環境経営」を読み解く10冊
*読書室:
「文明と環境」を読み解く11冊
2006-2007
Insight
21世紀の新しい秩序・構造づくりに向け、独自の視点・論点を発信するメインコラム。
多様な分野から、気鋭の論客が登場し、時代を読み解く。
*全文>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/column_top.html
里山の春を愛でる──
緑の生態系からのメッセージ
柴田昌三・京都大学
フィールド科学教育研究センター教授
2006.04.01・第101号
温暖化防止へ──
望ましいエネルギー・経済・
環境モデルとは
森 俊介・東京理科大学
理工学部経営工学科教授
2006.05.15・第104号
「地産地消」的に、村単位のサイクルで、自然資源の利用を考
温暖化対策は何か一つ行えばすべて解決するものではない。
えれば、里山を取り戻すこともできる。日本の里山には、竹をは
発電時にCO 2を出さない風力、太陽光、原子力。それぞれの
じめ豊かな資源がある。これを放っておくのは「もったいない」。
役割を見極めて使うことが健全なやり方であり、この健全という
竹が暴れるなら、山に入って筍を掘ってくればいい。里山の春
のが正しい考え方で長持ちする。新しさを追う考え方は古びる
の味覚、筍を食し、緑を愛で、失われつつある原風景を取り戻
が、正しさを追う考え方はなかなか古びない。持続可能なエネ
すべく、動くことが大事だ。
ルギー・経済・環境モデル開発には、その視点が不可欠だ。
*資料室:
「緑と環境」の周辺
*資料室:
「温暖化対策評価モデル」の周辺
*読書室:
「緑と環境」を読み解く11冊
*読書室:
「エネルギーと環境」を読み解く11冊
ラムサール条約登録、
三方五湖に見る湖・湿地の
自然誌
気候変動が
食と農に与える影響
永長幸雄・福井大学大学院
工学研究科教授
2006.04.15・第102号
岡本勝男・独立行政法人農業環境技術研
究所生態系計測研究領域上席研究員
2006.06.01・第105号
三方五湖の生物多様性を支えているのは、水環境との絶妙な
温暖化が進んでも、食糧生産が直ちに深刻な事態に陥ること
バランス。今や世界の共有財産となった三方五湖。魚たちが
はないだろう。とりわけ温暖な気候を好む作物にとっては悪いこ
陽光に鱗をきらめかせ、水鳥たちのさえずりが聞こえる「にぎや
とではないが、作物によっては、受精期に気温が高すぎると受
かな春」へ、私たち一人ひとりが、水環境のバランスの維持とと
精しなくなったり、品質が落ちたりするから手放しで喜ぶわけに
もに、この素晴らしい生態系の維持・活用を考えていかなけれ
はいかない。今後はできるだけムダなCO 2を出さない努力、化
ばならない。
石燃料に頼らない努力が必要だ。
*資料室:写真で見る「三方五湖」
*資料室:温暖化で変わる、世界の穀物地図
*読書室:
「水と環境」を読み解く10冊
*読書室:
「食と農」を読み解く12冊
種の起源と進化──
昆虫科学が示唆する
地球環境の未来像
環境考古学が示唆する
気候変動と
人類の歴史・文明の興亡
藤崎憲治・京都大学大学院
農学研究科教授
2006.05.01・第103号
安田喜憲・国際日本文化研究センター教授
2006.06.15・第106号
我々は物事を人間の視点でばかり見がちだが、人間中心主義
過去の歴史を見ても、気候変動をクリアできた文明は存在しな
では環境問題や食料問題は解決できない。小さな昆虫の視点
い。私は2050∼2070年頃に、現代文明は崩壊すると見ている。
で見ると、新しい自然観、世界観を構築できる。人類のフロン
但し、文明は崩壊しても、人類が絶滅するわけではない。我々
ティアは宇宙だという人もいるが、本当のフロンティアは地球上
に叡智があるなら、文明のシステムを根本的に変え、化石燃料
の生命にある。自分たちの足元を見つめ直し、サスティナブル
に頼らない新しい文明を、今から50年かけて築くことが重要
な昆虫の「智」に学ぶ姿勢を持ちたい。
だ。
*資料室:
「昆虫科学が拓く未来型食料環境学」の概要
*資料室:
「気候変動と文明」
*読書室:
「昆虫と環境」を読み解く13冊
*読書室:
「気候変動と文明」を読み解く12冊
Insight
2006-2007
11
*全文>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/column/column_top.html
和の伝統──
若旦那のエコな日常
谷川 恵・
「たに川」若旦那
2006.07.01・第107号
伏木 亨・京都大学大学院
農学研究科食品生物科学専攻教授
2006.08.15・第110号
着物は日本の気候に合っていますが、近頃は温暖化で少し変
温暖化で変わるのは味覚、舌の機能ではなく、
「生理的必要性」
わってきました。衣更えの決まりを、とても守っていられません。
の変化であり、それに伴う
「食文化」の変化。今でもアイスクリ
暑くて薄物を着たいけれど、着物の世界の約束では、まだ早か
ームやビールなど、気温が1℃変わると売れ行きが変わるが、温
ったり。逆に寒くなるのも遅くなっていて、単衣の時季になって
暖化が進めば、ソフトクリームが4月に売れたり、身体を冷やす
も、まだ薄物を着ていたかったり。温暖化は伝統的な着物の文
ために冷たいものがブームになるなど、食文化が変わることは
化にも影響を与えています。
考えられる。
*資料室:お茶屋「島之内たに川」探訪
*資料室:
「おいしさ」の周辺
*読書室:
「お座敷文化」を読み解く12冊
*読書室:
「おいしさ」を読み解く10冊
サスティナブルな住まい方
──ストック×リノベーション
季節を愛で、
年中行事を楽しむ──
日本人の自然観と暮らし方
中谷ノボル・ストックリノベーター;
アートアンドクラフト代表
2006.07.15・第108号
白幡洋三郎・
国際日本文化研究センター教授
2006.09.01・第111号
「ストック×リノベーション」。既にある建物を、改修して再利用す
衣更えや行楽など、暮らしの知恵を「楽しみ」に転化させた先
る。良質の社会ストックを残していくことで、愛着が生まれ、結
人に学び、
「年中行事」を楽しもう。地球環境時代の生き方とし
果的にロングライフになる。大切なのは、次世代に「残したくな
ては、季節や天候に合わせる暮らし、自然を楽しめる「余裕」
る建築物」をつくることであり、それを実現する社会風土として
が出てくる方が望ましい。長い間の吟味を経て残った年中行
「使い続ける美徳」を復活させる──それがサスティナブルな社
会につながっていく。
事は、人間が生命体であり、生物という自然の存在であること
を教えてくれる、日本固有の文化だ。
*資料室:アートアンドクラフトの「ストック×リノベーション」
*資料室:
「年中行事」の基礎知識
*読書室:
「住まい」を読み解く10冊
*読書室:
「年中行事」を読み解く11冊
地球環境時代の
ライフデザインとエネルギー
お得で楽しく美しく──
エコ・コンシャスな暮らしと
社会をつくる
槇村久子・京都女子大学
現代社会学部教授
2006.08.01・第109号
12
温暖化で食文化が変わる?
──おいしさのワケと
現代人の食
花田眞理子・大阪産業大学大学院
人間環境学研究科助教授
2006.09.15・第112号
エネルギー・マキシマイザーでもタイム・ミニマイザーでもなく、2つ
動機づけのキーワードは「お得で楽しく美しく」。多くの人は何
の間のどの辺で生き方を設計するか。エネルギー消費は抑え
かを買うとき、価格が大きな誘因になる。これが「お得」。そし
つつも、自分が楽しめる生活。例えば自宅の近くで季節を感じ、
て同じやるなら「楽しく」やりたいし、楽しいことなら続けられる。
歴史を感じ、美しいもの、お洒落なものを発見することが豊か
もともと地球に優しい行動は気高く
「美しい」。だから自分も気
だという暮らし方。それが地球時代のライフデザインであり環境
持ちいいし、それで周りも変えていければますます心地いい。
デザインだ。
上手に動機づけて暮らしと社会を変えていこう。
*資料室:
「エネルギーと環境」の周辺
*資料室:
「コミュニティと環境」の周辺
*読書室:
「暮らしと環境・エネルギー」を読み解く11冊
*読書室:
「コミュニティと環境」を読み解く12冊
2006-2007
Insight
Insight 095-118
ダイジェスト
エコツーリズム──
世界に誇る歴史観光と
議定書のまち・京都から考える
持続可能なコミュニティ、
琵琶湖畔に
「エコ村」をつくる
宗田好史・京都府立大学
人間環境学部助教授
2006.10.01・第113号
仁連孝昭・滋賀県立大学環境科学部教授;
エコ村ネットワーキング理事長
2006.11.15・第116号
大自然観光とは異なる「京都発のエコツーリズム」。日本人は
今の暮らしを振り返ると、ものすごく大きなシステムを動かさない
世界のどこにもない繊細な感性で、自然を取り込んでいる。な
と生活できなくなっている。
「地産地消」のしくみが壊れ、
「人と
かでも長い歴史の中で自然を文化にしてきた京都は、自然を
人」との結びつきは希薄になり、
「人と自然」の結びつきも見え
愛でる高い能力ゆえに、日本の四季を司ってきた。日本人の
なくなった。人間と自然の本来あるべき関係を取り戻し、その
美意識の根底を形成する自然との調和──日本人の心が失
関係性を自覚できる暮らし方のモデルをつくろうと着手したの
うべきでないエコロジーの源流は、京都にある。
が「小舟木エコ村」だ。
*資料室:
「エコツーリズム」の基礎知識
*資料室:
「エコ村」の基礎知識
*読書室:
「環境と観光」を読み解く10冊
*読書室:
「環境とまちづくり」を読み解く13冊
水と緑と風の流れる都市へ
──Stop the ヒートアイランド
大阪
森林の保護と再生へ、
温暖化のなかで人間活動の
あり方を考える
水野 稔・大阪大学大学院
工学研究科環境・エネルギー工学専攻教授
2006.10.15・第114号
古川昭雄・奈良女子大学
共生科学研究センター長;教授
2006.12.01・第117号
ヒートアイランド問題の根本は、熱の流れと水の流れを断ち切っ
共生科学研究センターでは、大学の屋上と東吉野村の森林内
た都市づくりをしてきたことにある。自然は熱の代謝系と水の
に設置した観測塔で、CO2濃度などを1分ごとに24時間365日
代謝系がリンクしているが、人間がつくった都市は2つの流れ
計測。経年変化を見ると、ほとんど直線的に上がっており、今
を分断。水と熱の代謝をリンクさせることを基本に、都市の中
や東吉野で370ppm以上、奈良の市街地では450ppmを超え
の風通しを良くし、緑を増やす。ヒートアイランド対策は、大阪
ることもたびたびある。こうしたCO 2濃度の上昇、温暖化の植
が世界に貢献すべきテーマだ。
物への影響を注意深く見ていく必要がある。
*資料室:
「ヒートアイランド」の基礎知識
*資料室:
「温暖化と森林」の周辺
*読書室:
「ヒートアイランドと環境」を読み解く12冊
*読書室:
「温暖化と森林」を読み解く11冊
海洋生物と地球環境──
黒潮文化圏・南紀から考える
21世紀、
「安全と共生」の
都市空間デザイン戦略を
考える
森 拓也・すさみ町立エビとカニの水族館
館長
2006.11.01・第115号
重村 力・神戸大学
工学部建設学科生活環境計画研究室教授
2006.12.15・第118号
ちょっと前まで南方系の魚は、日本で冬を越せなかった。ところ
20世紀は個々の目的に熱心であるが故に、総合的な人間社
が今、冬を越してなおヒラヒラ泳ぐ色鮮やかな魚の姿が見られ
会とか地域環境、自然環境が持つ本質的なものを犠牲にして
るようになった。なぜなら、水温が下がらなくなったからで、地
きた。
「安全と共生」という観点でもう一度チェックすることによ
球温暖化の影響が海にも及んでいるのかもしれない。陸上より
り、21世紀の都市がつくれるのではないか。
「安全と共生」を
も遙かに温度変化の少ない海では、わずかな水温変化が海洋
モデルにまで高め、より持続的な環境と豊かな地域社会を回復
生物に大きな影響を与える。
することが、21世紀の都市の目標だ。
*資料室:写真で見る「エビとカニの水族館」
*資料室:
「安全と共生の都市空間」の周辺
*読書室:
「海洋と環境」を読み解く11冊
*読書室:
「都市」を読み解く14冊
Insight
2006-2007
13
Close up エナジー
ニュー・エディション
安全を最優先に──
美浜発電所3号機、
2年半ぶり運転再開
子力保全改革検証委員会」を設置した。この原子力保全改
革検証委員会の評価を経て、06年2月、再発防止対策の実
施状況をとりまとめた報告書を、原子力安全・保安院と福井
県、美浜町などに提出。3月には国の事故調査委員会から再
発防止対策について「一連の活動が自律的に行われつつあ
る」との評価を、また4月には第4回原子力保全改革検証委
員会において「継続的改善が自律的に進む程度の段階に至
っている」
との評価を得た。
「再開了承」への道のり
2007年2月7日、美浜発電所3号機が本格運転を再開した。
これらを踏まえて関西電力は、5月10日、福井県、美浜町
に対し、美浜発電所3号機の運転再開に係る協議の申し入
死傷者11人を出した2004年8月9日の事故以来、2年半ぶり
れを行い、その後5月26日に、福井県および美浜町から運転
のことだ。
再開について了承を得た。
何よりも安全を最優先する組織風土、企業文化の構築へ
──関西電力は、事故発生直後から原因究明と再発防止対
策に取り組んできた。05年3月には、
「安全を守る。それは私
「安全の誓い」を胸に
再発防止対策に取り組む
の使命、我が社の使命」という社長宣言とともに、5つの基本
再発防止対策に終わりはない──事故から丸2年の2006
行動方針からなる「美浜発電所3号機事故再発防止に係る
年夏、関西電力が「安全の誓い」の日と定めた8月9日には、
行動計画」を発表。同年6月には、全29項目にわたる具体的
森社長が美浜発電所構内の「安全の誓い」の石碑の前で、
な実施計画を策定し、順次実施に移した。そのひとつとして、
改めて安全を誓うとともに、事故が起きた15時22分には全職
発電所の実態に即した直接的・積極的な支援ができる体制
場で一斉に黙祷を捧げ、一人ひとりが決意を新たにした。
を構築するため、翌7月、原子力事業本部を若狭支社と統合
再発防止へ、関西電力は引き続き、労働安全活動の充実、
し、大阪市から福井県美浜町に移転。地元に軸足を置いた、
安全最優先の工程策定、発電所保守管理体制の増強、メー
安全で確実な発電所運営に向け、新たなスタートを切った。
カ・協力会社との協業体制の構築等の対策を実施。06年7月
また、こうした再発防止対策を着実に推進するため、社内
に開催された第5回原子力保全改革検証委員会では、労働
委員会「原子力保全改革委員会」を設置。さらに、再発防止
安全衛生マネジメントシステムの発電所への浸透、定期検査
対策の確実な実施について、客観的かつ総合的な監視・評
工事における再発防止対策の現場第一線までの浸透などが
価を行うため、地元有識者を含む社外委員を中心とする「原
確認された。また、10月の第6回原子力保全改革検証委員
再発防止に向け、メーカ・協力
会社との協業を推進
福井県美浜町に移転した原子力事業本部
14
2006-2007
Insight
社外の目で検証、
原子力保全改革検
証委員会
2004年8月の事故から2年半、全社を挙げて再発防止対策の着実な実施と安全文化の再構築に取り組んできた関西電力は、
07年2月、美浜発電所3号機の本格運転を再開した。
この2年半の歩みや、温暖化防止に向けた環境対策、お客さま満足No.1をめざす営業活動など、
2006年の動きをクローズアップ。
*関連サイト>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
*肩書、役職名は配信・発行当時のものです
会では、保守管理全体の継続的な改善や、メーカ・協力会社
行われる定期検査のほか、10年ごとの定期安全レビューが
と一体となった改善への取り組みも確認された。
あるが、加えて運転開始から長期間を経た発電プラントに対
しては、運転開始後30年までに「高経年化技術評価」を行
そして、本格運転再開
うことが法律で義務づけられている。
「関電は事故で信用を失ったが、その後の社員の頑張りを
こうした高経年化対策は1996年から実施に移されており、
見ると、もう一度信用しようと思う。この思いを裏切らないよう
関西電力では既に、美浜発電所1号機・2号機、高浜発電所
に」
「美浜町は原子力発電所がある地域だと胸を張れるよう
1号機・2号機が技術評価を受けている。そして美浜発電所3
にしてほしい」──2006年10月11日に開かれた「原子力懇
号機についても、関西電力は運転開始30年に先立ち、法律
談会」での地元の声だ。美浜町内の各団体の代表者と関西
に基づく高経年化技術評価と長期保全計画を報告書として
電力・森社長以下幹部が一堂に会するこの懇談会は、経営
まとめ、国に提出。06年7月、国から報告書の内容が妥当
層と地元の人との直接対話を充実させたもので、05年に続く2
であるとの審査結果が出された。
度目の開催。もちろん関西電力は日頃から、各戸訪問を含
め、地元の人と直接話す機会を増やしてきた。
関西電力は、今後、日常的な保全活動に加え、長期保全
計画を適切に実施することで、機器と構造物の健全性は維
こうした声を真摯に受け止めながら、運転再開への準備を
持できるものと評価している。ただし、それを過信することな
慎重に進めていった。秋には、長期間停止していることを踏
く、今後も産学官の連携により高経年化対策の充実を図っ
まえ、美浜発電所3号機を試験的に運転。9月21日に起動し、
ていく。
10月3日に停止した。その後、入念に発電設備全体の健全
性などを確認した。そして年が明けた2007年1月10日、美浜
これからも安全を最優先に
発電所3号機の原子炉を起動し、11日には定期検査の最終
美浜発電所3号機が本格運転を再開した今、関西電力
段階である調整運転を開始。約1カ月にわたる調整運転のの
は、より一層気持ちを引き締めて、安全・安定運転の継続に
ち、2月7日15時00分、国の最終検査に合格し、本格運転を
努めることが、何よりも大切だと考えている。全役員、全従業
再開した。
員が安全最優先を改めて心に誓い、事故の反省と教訓を決
して風化させることなく、再発防止対策を継続的に改善しな
運転開始後30年が経過した
美浜発電所3号機
がら着実に実施し、安全の実績を一つひとつ積み重ねてい
くよう全力を尽くしていく――安全を、なによりの使命に。■
1976年の運転開始以来、30年を経過した美浜発電所3
号機──原子力発電所の保守管理対策には、約1年ごとに
原子力懇談会
地元の信頼回復へ、
各戸訪問を実施
美浜発電所
Insight
2006-2007
15
*関連サイト>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
STOP!温暖化──
地域で、海外で進む
CO2削減対策
排出量削減につながるため、環境負荷低減効果は非常に大き
い。また、熱効率が向上する分、発電コストの削減にもつながる。
「堺港発電所設備更新計画では、環境負荷の低減と低廉
な電力供給という2つの課題を同時達成できたという意味で非
常に意義深い」。環境室の泉正博部長が言うように、火力発
電所でもCO2削減策は着実に進んでいる。
議定書発祥の地でバイオマス混焼に挑む
環境負荷低減へ、古参火力が生まれ変わる
CO2削減に取り組んでいるのは、古参の発電所ばかりでは
2006年の世界の年平均気温は、平年差+0.31℃──。近
ない。2004年、関西電力で30年ぶりの石炭火力発電所とし
年頻発する異常気象も相まって、温暖化問題への関心が高
て運転を開始した舞鶴発電所1号機では、国内最大規模の
まるなか、関西電力は1995年以来、総合的な温室効果ガス
石炭・バイオマス混焼計画が進行中だ。
削減対策「ニューERA戦略」を推進。CO2排出量削減に大き
バイオマス燃料は、生ごみや紙屑、木屑、廃食用油、下水汚
く寄与するのは、発電時にCO 2を出さない「原子力発電」だ
泥など多岐にわたるが、舞鶴発電所で使用するのは「木質ペレ
が、それ以外にも多方面から施策を進めており、06年にもいく
ット」
と呼ばれる木屑からつくった固形燃料。100%生物由来の、
つかの新たなプロジェクトが始動した。
このバイオマス燃料を用いることで、石炭の使用量を抑制しCO2
そのひとつが、堺港発電所の設備更新計画だ。堺・泉北臨
削減につなげるのが狙いだ。今回の計画では、石炭の削減量
海工業地帯の一角にある堺港発電所は、東京オリンピックが
は年間約4万t、CO2排出量に換算すると約9.2万t-CO2になる。
開催された1964年に運転を開始。以来40余年、都市部に位
「関西電力の事業全体でのCO2排出量が約5000万t-CO2
置する電源として重要な役割を担ってきたが、関西電力の
だから、削減効果は0.2%程度。決して多くはないが、新しい
“現役”火力発電所としては2番目に古く、熱効率は約41%。
方策を積極的に採用する姿勢が大事だと考えている」と、企
当時としては最新鋭であったが、最近の約55%を超える発電
画室設備グループの櫟真夏チーフマネジャー。本格運用開始
設備と比較すると高い値ではない。
は2008年。さらに2010年に運転開始予定の舞鶴発電所2号
このため関西電力では、堺港発電所を最新鋭のコンバイン
ドサイクル発電方式(天然ガス+蒸気の複合サイクル発電)
に
機でもバイオマス混焼を検討している。
また舞鶴市内には、同じく関西電力が04年、
「舞鶴CO2竹
更新する方針を決定し、04年1月から環境アセスメントを実施。
炭固定・有効利用実験センター」を開設し、森林生態系への
06年6月に国の審査に合格し、10月に設備更新工事に着工
影響が深刻化する竹の活用研究に着手。06年には舞鶴市
した。1号機は2009年4月運転開始の予定だ。
内の河川で、炭化した竹を用いた水質浄化の実証試験も開
コンバインドサイクル化が実現すると、堺港発電所の熱効率は
約57%と世界トップクラスになる。熱効率の向上は、そのままCO2
始した。
「京都議定書発祥の地」で、関西電力は地域とともに
新たな挑戦を続けている。
舞鶴発電所
堺港発電所のコンバインドサイクル化 完成予想図
16
2006-2007
Insight
木質ペレット
Close up エナジー
ニュー・エディション
*肩書、役職名は配信・発行当時のものです
CDMプロジェクト、舞台は黄河
たりのCO2排出量は、90年度時点で0.353kg-CO2/kWh。その
そして世界へ──地域での取り組みと並行し、関西電力
後一貫して下回り、2002年度0.260、2003年度0.261と、全国の
が効果的なCO 2削減対策と位置づけているのが、地球規模
電気事業者で抜きん出て低い数値を達成してきた。ところが
での温暖化対策に実効がある海外でのCDMプロジェクトだ。
2004年の美浜発電所3号機事故に伴う原子力発電設備利用
CDM(クリーン開発メカニズム)
とは、京都議定書で認めら
率の低下などにより、04年度は0.356と90年度の値を初めて超
れた「京都メカニズム」の一つで、先進国の企業などが途上
え、05年度も0.35程度にとどまっている。これでも全電力会社
国でCO2排出量の削減事業を行うと、その削減分を排出権と
の中で最も低い値であるが、社会全体におけるCO2削減によ
して獲得でき、自国の削減分にカウントできるというもの。関西
り貢 献するために、目標をこれまでの0.34から0.282kg-
電力は既に、ブータン王国における小規模水力発電プロジェ
CO2/kWh程度へ大幅に高め最大限の努力を行う考えだ。
クトで、e8(世界の主要な電力会社のNGO)
のリーダーとして、
目標達成には環境負荷の少ない電気を届けるだけでなく、
日本の電力会社初のCDMプロジェクトに参画しているが、06
ユーザー側でもそれを選択するという行動が不可欠だ。2006
年、新たに中国の水力発電会社2社がそれぞれ実施する水
年4月施行の改正温暖化対策推進法で、CO2等排出量の届
力発電CDMプロジェクトへの参画を決定した。
出・公表制が導入され、関西電力としてはユーザーがCO2の
いずれも中国甘粛省の南部を流れる黄河支流に自流流れ
少ないエネルギーにシフトすることに期待を寄せる。
「そのとき
込み式の水力発電所を建設し、地元の電力会社へ売電する
に、コージェネさえ入れればCO2が削減できるというのは間違
もので、CO2を排出しない水力発電所の建設によって、2012
い。効果をきちんと算定すべきでむしろ電気の方が削減効果
年末までに合計約56万トンのCO2が排出削減される見込み。
が高いケースが多い」と、環境室地球環境グループ井上祐一
関西電力はこのCO2クレジットを全量購入することとし、既に日
チーフマネジャーは言う。
中両政府の承認を得て、国連によるCDMプロジェクトの登録
さらに産業分野に比べ対策が遅れている一般家庭に対し
ては、空気の熱を使ってお湯を沸かす省エネ給湯機「エコキ
手続きを完了している。
自ら現地へ足を運び、同プロジェクト参画を決めた環境室
ュート」などによるオール電化提案を進めるほか、関西電力の
地球環境グループの砥山浩司マネジャーは言う。
「CDMのよ
社員が地域の小学校などで、環境・エネルギー教育を行う
「出
うな仕組みは、地球温暖化に対して実効性があり、コスト効
前教室」や、関西地域の小学5・6年生を対象として2006年7
果も高い。今後も必要に応じて積極的に活用していきたい」
月に発足させた体験を通して環境問題を学ぶことのできるク
ラブ組織「かんでんeキッズクラブ」など、子どもたちが楽しみな
環境負荷の低い電気を選ぶ
がら環境意識を身につける機会を提供している。
「2008∼2012年度の5ヵ年平均で使用(販売)電力量あた
脱CO2社会へ、地域で、海外で、自らの責務を果たすとと
りのCO2排出量を0.282kg-CO2/kWh程度にまで低減する」─
もに、次代層も含めた社会全体へのアプローチまで、地道に
─これが関西電力の新たなCO2削減目標だ。
息長く、関西電力の取り組みは続く。■
、つまり使用電力量1kWh当
関西電力の「CO2排出原単位」
中国水力発電CDM
プロジェクト
関西電力の販売電力量とCO2排出量の推移
使用(販売)電力量(単位:億kWh) CO2排出量(単位:万t-CO2)
使用端CO2排出原単位(単位:kg-CO2/kWh)
1,319
1,233
1,206 1,227 1,226
0.353
0.331
4,261 4,068
0.306
0.275
1,449
1,404 1,429 1,398 1,418 1,402
1,374 1,388
1,338 1,364
0.260 0.253
91
92
93
5,159
0.280 0.277 0.264
0.260 0.261
94
95
96
5,200
程度
3,926 3,954
3,688 3,684 3,656
3,569 3,516
3,388
90
0.35
0.356 程度
0.327 0.313
0.301
4,316 4,191
4,103
3,755
1,471
97
98
99
00
01
02
03
04 05(年度)
Insight
2006-2007
17
Close up エナジー
ニュー・エディション
お客さま満足No.1へ──
「はぴe」な暮らしを提案する
田窪宏一チーフマネジャー。
「ただ、関西電力を選んでいただ
くポイントは価格だけではない。それ以上に、お客さまの多様
なニーズにスピーディに対応し、グループ事業も含めたサービ
スでトータルソリューションを提供することが大切。安全を大前
提に効率化努力は今後も緩めず進めていくが、同時にサー
ビスも充実させ、
『お客さま満足No.1企業』
をめざしたい」
2年連続、電気料金を値下げ
「オール電化」から「はぴeライフ」へ
2006年4月1日、関西電力は電気料金を平均2.91%引き下
「オール電化にすれば標準家庭で光熱費は年間約78,000
げた。標準家庭の場合、年間約2,500円の値下げとなり、05
円も安くなる。おトクなローン制度なども充実させており、
『オ
年に引き続き2年連続での値下げとなった。
ール電化が高い』
というのは今や幻想だ」と言うのは、お客さ
2年連続値下げの背景には、2005年10月に「バックエンド
ま本部リビング営業グループの鯉淵正部長。テレビCMなどで
新法」
(原子力発電における使用済燃料の再処理等のため
「安心・快適・経済的」イメージが浸透したことや、機器の低
の積立金の積立及び管理に関する法律)が施行されたこと
価格化も相まって、オール電化の採用件数は急上昇。今や
を受け、原子力発電の「バックエンド費用」に関する新しい制
関西地域では新築住宅の4軒に1軒以上、新築超高層マン
度を電気料金に反映させるということがあった。加えて、05年
ション
(21階以上)に限れば約6割がオール電化となり、オー
4月の料金値下げ以降の、安全の確保と安定供給を大前提
ル電化割引「はぴeプラン」の契約口数も36万口を突破する
とした経営効率化成果、総額約400億円を織り込み、値下げ
など、他地域と比べてもトップクラスの伸びを示している。
原資とした。
こうしたオール電化人気を好機とみた関西電力は、推奨活
電気料金と言えば、かつて内外価格差が指摘され、それ
動も従来以上にパワーアップさせている。活動の重点を「機
が電力自由化の契機にもなった。しかし、第2次石油ショック
器の推奨」から「オール電化による豊かな暮らし提案」へと移
以降、日本の電気料金はずっと値下げ傾向にある。関西電
し、1989年から毎年秋に実施してきた「オール電化キャンペ
力の場合、2000年以降だけで、4回の本格的な料金値下げ
ーン」も、06年から「はぴeライフキャンペーン」と名前を変え、
を実施しており、石油ショック直後の80年と比べると3割近くも
春秋2回実施。販売促進拠点となる各支店のオール電化PR
安くなっている。逆に諸外国では値上げしているケースもあり、
施設も「はぴeライフスクエア」として順次リニューアルオープン
格差は確実に解消しているようだ。
させた。
「通信のように目覚ましい技術革新もないなかで、料金値
また環境意識の高まりを受け、
「環境への優しさ」もアピー
下げを続けているのは電気だけ」と、企画室原価グループの
ル。大気の熱でお湯を沸かすしくみで、1のエネルギーを投
電気料金の推移(1カ月あたり)
公共料金水準の推移('80年=100)
9,000
(円)
*標準家庭モデル(従量電灯A 300kWh)
金額には消費税等相当額を含む
8,603
8,500
水道
200
7,924
8,000
7,663
7,500
7,000
6,500
7,491
消費税率アップに
よる影響
↓
7,231 7,151 7,142
6,956 7,028
6,766
バス
JR
郵便
150
147.6
消費者物価指数
6,599
6,371 6,355
ガス
100
6,000
203.5
194.2
190.8
130.1
98.7
78.0
電気
50
0
0
18
2006-2007
'80/7 '86/6 '87/1 '88/1 '89/4 '93/11 '95/7 '96/1 '98/2 '00/10 '02/10 '05/4 '06/4(年月)
Insight
'80
'85
'90
'95
'00
'05 (年)
総務省「消費者物価指数年報」より作成
*関連サイト>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/closeup_top.html
*肩書、役職名は配信・発行当時のものです
省エネ・快適な「エコ住宅」誕生
入すると、3∼4.9倍の熱が得られるという、省エネ・省CO 2を
安全・快適・経済的で、環境にやさしい。そんなオール電
実現するヒートポンプ式給湯機「エコキュート」を戦略商品に
据え、普及拡大に挑んでいる。
「エコキュートを強力に推奨し、
化の特性を生かす新しい住宅開発も進んでいる。北大阪の
オール電化の普及が上向きの今、この流れを本物にしてい
丘陵地に広がる国際文化公園都市「彩都」に、2006年11
きたい」、鯉淵部長は力強く語った。
月、関西電力、三菱電機、阪急電鉄、三菱地所ホームの4
社共同開発による「エコ住宅」の実証住宅が竣工した。
電気のポイントを貯めて電車に乗ろう
エコ住宅(省エネ・快適住宅)は、リビングルーム1室程度
2006年7月、関西電力は、電力会社としては異例のユニ
に対応するエネルギーで40坪程度の家全体の空調を賄え
ークなサービスを開始した。オール電化利用者などを対象と
る、省エネルギー性と快適性を両立させた住宅。これまで主
する「はぴeポイントクラブ」と、関西の私鉄や地下鉄のICカ
に2×4工法で使用されてきたヒートポンプ式ダクトセントラル空
ード決済サービス「PiTaPa」との提携による新サービスだ。
調機器を、日本の在来工法である木造軸組工法の家に導
「はぴeポイントクラブ」は05年、電気を使うとポイントが貯ま
入することで、高い省エネ性を実現。また隙間の多い日本
るという、関西電力が日本で初めてスタートさせたサービス
家屋の弱点を、木造軸組工法に適した高断熱・高気密化技
で、いわばマイレージサービスの電気版。貯まったポイントは
術の開発で補い、通風・換気設計などと組み合わせることで、
景品やANAのマイルと交換できるほか、飲食店などの加盟
快適性も高めている。
店で優待特典を受けられるなど、数々のメリットがある。オー
開発の背景には、戸建て住宅分野での省エネルギーへ
ル電化人気とともに加入者も順調に増え、会員数は約12万
の取り組みの遅れがある。つまり新築戸建てでは地域工務
人以上になっている。
店による木造軸組の家が大半を占めているにもかかわらず、
「オール電化で家の中は安心・快適。だから次は家の外
でもっと便利に快適に暮らしを楽しんでいただきたい」。お客
「次世代省エネルギー基準」を満たす新築住宅は極めて少
ないのが実態だった。
さま本部営業計画グループの杉原尚志マネジャーが言うよう
「CO2削減やヒートアイランド対策、環境に優しいまちづくり
に、PiTaPaとの提携も、こうした想いが生んだ新サービスの
が官民あげたテーマになるなか、まずはこのエコ住宅プロジ
1つ。はぴeポイントクラブで貯めたポイントをPiTaPaの交通
ェクトで成果を出し、工務店と連携して普及に努めるととも
利用代金として使える──つまり、電気のポイントで電車の
に、将来的には、ヒートアイランド防止策や省エネルギー性を
割引が受けられるという、電気と電車の初のカード提携サー
最大限追求したエコタウンづくりにも挑戦したい」。地域開発
ビスだ。
部地域プロジェクト営業グループの板倉正和部長はそう考え
電気だけでなく、暮らし全般の提案へ、関西電力のサー
ている。■
ビスは着実に拡がっている。
はぴeポイントクラブの仕組み
関西電力(株)
(株)ケイ・オプティコム
(株)関電SOS
はぴeポイントクラブ加盟店
電気
インターネット
ホームセキュリティ
飲食店・ホテル・旅行代理店
ポイントを貯める
ポイントを使う
商品への交換
マイレージへの交換
イベントへの参加
加盟店での優待・特典
安心・快適・経済的な「はぴeライフ」
Insight
2006-2007
19
News
Clip
2006
関西電力
*全文>>http://www.kepco.co.jp/insight/content/imadoki/imadoki_top.html
2006.06 ●「関西電力グループ環境月間」を展開
●「堺港発電所設備更新に係る環境影響評価書」確定通知を
受領
●執行役員制を導入
2006.07 ●「はぴeポイントクラブ」
と
「PiTaPa」が連携し、
新サービスを開始
●ケイ
・オプティコム、法人専用サービスの新ブランド
「BUSINESS光」立ち上げ
●中国の水力発電CDMプロジェクトからの
CO2クレジット
(排出権)購入
2006.01 ●堺LNGセンターが営業運転を開始
自前のLNG基地、始動
関西電力グループの堺LNGが、堺泉北臨海工業地帯で建設を進
2006.08 ●「安全の誓い」の日(8月9日)
●日高港新エネルギーパーク建設開始
光も風も……港のそばの新エネパーク
めていた「堺LNGセンター」が、2006年1月、営業運転を開始した。
関西電力御坊発電所近くの日高港で、
「日高港新エネルギーパー
14万klのLNGタンク3基を備え、年間取扱量は約270万トン。南港
ク」の建設が進んでいる。和歌山県と御坊市、関西電力が、日高
発電所、堺港発電所向けにLNG燃料を供給するほか、ガス供給
港を県内外に広く発信するとともに、新エネルギーの研究・普及促
や冷熱供給など事業領域の拡大にも取り組んでいく。
進を目的として設置を決めたもので、太陽光・小型風力・バイオマ
ス発電の実証研究を行う研究施設や、PR施設に加え、見学者や
2006.01 ●滋賀県甲賀市における天然ガス供給事業実施を発表
●カザフスタン共和国における新規ウラン鉱山の
地域住民の憩いの場となる公園施設が併設される。完成は2007
年9月の予定。
開発プロジェクトへの参画を発表
●100kVA級SiC製高耐圧インバータ装置、開発
2006.02 ●ヒートポンプ式蒸気・温水製造装置を開発
●インバーター付き小型スクリューモジュラーチラーを開発
2006.03 ●久美浜町における原子力発電所計画の中止を決定
●初の「はぴeライフキャンペーン」実施(3/18∼6/30)
●西オーストラリアにおけるプルートLNGプロジェクトに関する
基本合意書を締結
●2006年度関西電力グループ経営計画を策定・発表
持続的成長に向け、新たなステージへ
2006.09 ●「関西電力グループ CSRレポート2006」発行
●ケイ
・オプティコム、天満天神繁昌亭「ライブ繁昌亭」配信開始
●「気候変動リーダーシップインデックス」
トップ50企業に選出
2006.10 ●「はぴeライフキャンペーン」実施(10/1∼12/31)
●京都府舞鶴市で竹炭による水質浄化実証試験を開始
●福井県嶺南地域における医師確保支援制度創設を発表
2006.11 ●ケイ
・オプティコム、テレビ向けVODサービス
『EntaMirel』
提供開始
●遠隔集中管理装置
「エネルータ」開発
「2006年度関西電力グループ経営計画」は、CSRを軸とした組織
風土改革に一段と力を入れ、安全最優先の事業基盤のもと、お客
さま価値の創造に努めようとの視点から ①安全最優先の組織風
システム構築費を約50%削減
土の醸成 ②グループ一体となったお客さま価値の創造 ③人の
関西電力が東芝と共同開発した「エネルータ」は、各種設備管理
成長、技術の向上 という3つのアクションプランを策定。中長期的
用コンピュータシステムを簡易なしくみで遠隔集中管理できる装置。
な視点に立った施策を進め、
「お客さま満足No.1企業」の実現をめ
従来、複数地点のシステムを遠隔集中管理する場合、それぞれの
ざしていく。
システムは同一メーカーに限られるという問題があったが、
「エネル
ータ」はメーカーや仕様を選ばないため、既存システムの改修を行
2006.04 ●電気料金、平均2.91%値下げ
う場合に比べ、システム構築費を約半分に抑えることができる。
●かんでんジョイライフ、一般マンション入居者向け会員制
医療・介護サービスの提供を発表
2006.05 ●2006年3月期決算発表
●福井県と美浜町が美浜発電所3号機の運転再開を了承
●労使連携で「こども110番」運動参画を決定
20
2006-2007
Insight
2006.11 ●ケイ
・オプティコム、新コーポレートスローガン策定
2006.12 ●水力発電所リフレッシュ工事が地球温暖化防止活動環境
大臣賞を受賞
『Insight』登場者一覧(2002∼2006年)
50音順/肩書、役職名は配信・発行当時のものです
浅野史郎・宮城県知事
國部克彦・神戸大学大学院教授
伴 金美・大阪大学大学院教授
麻生圭子・エッセイスト
小島冨佐江・京町家再生研究会 理事・事務局長
伏木 亨・京都大学大学院教授
足達英一郎・日本総合研究所創発戦略センター上席主任研究員
輿水精一・サントリー(株)
ブレンダー室長;チーフブレンダー
藤崎憲治・京都大学大学院教授
新井光雄・ジャーナリスト
(元・読売新聞編集委員)
後藤康浩・日本経済新聞社 編集委員 兼 論説委員
藤沢久美・シンクタンク・ソフィアバンク副代表;社会起業家フォーラム副代表
五百籏頭眞・神戸大学大学院教授
紺谷典子・日本証券経済研究所主任研究員
古川昭雄・奈良女子大学教授
井上章一・国際日本文化研究センター教授
佐伯啓思・京都大学大学院教授
古田隆彦・現代社会研究所所長
石川九楊・書家
佐伯順子・同志社大学大学院教授
本間正明・大阪大学大学院教授
五十棲剛史・船井総合研究所執行役員経営支援統轄本部副本部長
榊原清則・慶應義塾大学教授
前田 昇・高知工科大学大学院教授
一條和生・一橋大学大学院教授
阪本順治・映画監督
槇村久子・京都女子大学教授
猪木武徳・大阪大学大学院教授
佐倉 統・東京大学大学院助教授
町田宗鳳・東京外国語大学教授
今村英明・ボストンコンサルティンググループ ヴァイスプレジデント
佐藤 寛・アジア経済研究所主任研究員
松岡正剛・編集工学研究所所長
植草一秀・野村総合研究所主席エコノミスト
澤口俊之・北海道大学大学院教授
松下和夫・京都大学大学院教授
植田浩史・大阪市立大学助教授
重村 力・神戸大学教授
松原隆一郎・東京大学大学院教授
上山信一・米ジョージタウン大学&大阪市立大学大学院教授
柴田昌三・京都大学教授
圓尾雅則・ドイツ証券 株式調査部ディレクター
内田 樹・神戸女学院大学教授
白幡洋三郎・国際日本文化研究センター教授
水野 稔・大阪大学大学院教授
大澤真幸・京都大学大学院助教授
千住 博・日本画家;京都造形芸術大学副学長
宮崎哲弥・評論家
太田 肇・同志社大学教授
高市早苗・元・衆院議員;前・経済産業副大臣
宗田好史・京都府立大学助教授
大橋良介・大阪大学大学院教授
高嶋克義・神戸大学大学院教授
村澤博人・顔・化粧文化研究所所長
岡本勝男・独立行政法人農業環境技術研究所上席研究員
高橋 潔・南山大学助教授
村田晃嗣・同志社大学助教授
小川 進・神戸大学大学院教授
高橋伸彰・立命館大学教授
森 俊介・東京理科大学教授
奥出直人・慶應義塾大学教授
竹山 聖・建築家;京都大学大学院助教授
森 拓也・すさみ町立エビとカニの水族館館長
奥野卓司・関西学院大学大学院教授
田中辰巳・危機管理コンサルタント;リスクヘッジ代表
森岡正博・大阪府立大学教授
表 博耀・運動家;日本文化伝統産業近代化促進協議会会長
谷川 恵・
「たに川」若旦那
森永卓郎・UFJ総合研究所主席研究員
嘉田由紀子・滋賀県立琵琶湖博物館研究顧問;京都精華大学教授
玉岡かおる・作家
薬師寺泰蔵・慶應義塾大学教授
金井一頼・大阪大学大学院教授
筒井紘一・裏千家茶道資料館副館長;今日庵文庫長
山内直人・大阪大学大学院教授
金井壽宏・神戸大学大学院教授
土井善晴・料理研究家
山内昌之・東京大学大学院教授
金子熊夫・外交評論家
鳥井弘之・東京工業大学教授;日本経済新聞社論説委員
山家公雄・日本政策投資銀行 ロサンゼルス事務所 首席駐在員
香山リカ・精神科医;神戸芸術工科大学助教授
内藤正久・日本エネルギー経済研究所理事長
山名 元・京都大学教授;原子力長計策定会議委員
苅谷剛彦・東京大学大学院教授
永長幸雄・福井大学大学院教授
山本昭二・関西学院大学教授
河合 薫・健康社会学/博士;気象予報士
長洲南海男・日本エネルギー環境教育学会会長
山本容子・銅版画家
川合知二・大阪大学教授;産業科学ナノテクノロジーセンター長
中谷ノボル・ストックリノベーター;アートアンドクラフト代表
山下宏文・京都教育大学教授
河合幹雄・桐蔭横浜大学教授
中西輝政・京都大学教授
八幡和郎・評論家
川勝平太・国際日本文化研究センター教授
中西 寛・京都大学大学院教授
安田 雪・東京大学大学院特任助教授
河田惠昭・京都大学防災研究所巨大災害研究センター長
名越康文・精神科医
安田喜憲・国際日本文化研究センター教授
神崎宣武・旅の文化研究所所長
仁連孝昭・滋賀県立大学教授;エコ村ネットワーキング理事長
吉川宏一・建築家;空間プロデューサー
神田啓治・エネルギー政策研究所所長;京都大学名誉教授
野村宗訓・関西学院大学教授
吉田和男・京都大学大学院教授
窪山哲雄・
(株)ザ・ウィンザー・ホテルズ インターナショナル社長
橋爪紳也・大阪市立大学教授
四方哲也・大阪大学大学院助教授
黒崎 緑・ミステリ作家
橋本大二郎・高知県知事
わかぎゑふ・女優;演出家;エッセイスト
郡嶌 孝・同志社大学教授
畑中鐵丸・弁護士
鷲田清一・大阪大学教授
玄侑宗久・作家;福聚寺副住職
花田眞理子・大阪産業大学大学院助教授
和田秀樹・精神科医
メールマガジン『時代を解くキーワード・Insight』
http://www.kepco.co.jp/insight/
*バックナンバーはこちらから。配信申込、随時受付
誌 名●『時代を解くキーワード・Insight』
(いんさいと)
配 信 対 象●全国のオピニオンリーダー
(学者・研究者、
マスコミ・ジャーナリスト、政治・行政関係者、企業人など)
仕様・体裁●ノーマルテキスト
配 信 日●月2回(1日と15日) 創刊:2002年1月1日 *無料配信
発 行●関西電力株式会社 地域共生・広報室 広報宣伝グループ
発行人/多田恭之 編集人/西山正博;盛 真一郎
〒530-8270 大阪市北区中之島3丁目6番16号 電話06-7501-0240
編 集●株式会社エム・シー・アンド・ピー Insight編集室
時代を解くキーワード
この冊子は再生紙を使用しています
2007.03
Fly UP