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「円戻り売り」持続性焦点 米議会選、日本決算、原油

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「円戻り売り」持続性焦点 米議会選、日本決算、原油
Forex
株式会社 ジャパン
エコノミックパルス
Market Insight
平成28年11月7日(月)
〒107-0052
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米大統領選にらみ「円戻り売り」持続性焦点
米議会選、日本決算、原油、中国指標など含め波乱余地
今週の為替相場は、ドル/円、クロス円での円の戻り売り(外貨の押し目買
い)地 合 い の 持 続 性 を 見極 め る 展 開 が 想 定 さ れ よう。週 間 予 想 は ド ル / 円が
100.80-106.20円、ユーロ/円が113.70-117.10円。最大の注目は日本時間9日に
かけての米大統領選であり、直前までの世論調査や開票速報に一喜一憂の不安定
さが警戒される。週明けからはクリントン候補の私的メール再捜査が一段落と
なっており、最終的にクリントン勝利なら一旦は円安・ドル高や株高のリスク選
好相場が予想される。
米国の平均時給が改善、ドル下支え
「実際の投票結果が報じられるのは、インディアナ州やケンタッキー州の一部
で投票が締め切られる東部標準時の午後6時(日本時間9日午前8時)からとな
る。同午後7時にはフロリダ州、バージニア州、インディアナ州西部、ケンタッ
キー州で投票が締め切られる。そうした投票速報は選挙の方向性について重要な
ヒントを提供する可能性がある」――。
米ウォールストリート・ジャーナル紙は4日、このような解説コラムを掲載し
た。開票速報の初期段階では、「両党への投票が2012年からどう変わったかが注
目される」とし、「インディアナ州とケンタッキー州ではトランプ氏が勝利する
可能性が高いが、得票差を前回のロムニー共和党候補の時と比較することで、全
国的に何が起きているのか読めるかもしれない」としている。
為替市場では出口調査を含めて、9日の東京市場早朝段階から速報ニュースに
一喜一憂の乱高下が警戒されよう。初期反応としては、クリントン民主党候補が
優勢となればリスク選好の円全面安、トランプ共和党候補が健闘を見せるような
らリスク回避の円全面高やドル安の波乱余地をはらむ。7日時点ではクリントン
候補の私的メール再捜査で訴追リスクが後退しており、改めてクリントン辛勝の
見通しが高まってきた。
クリントン勝利となれば米FRBによる12月の利上げ観測が一段と高まり、ドル
が下支えされていく。前週末4日の米10月雇用統計は予想を下回ったものの、8月
分と9月分が大きく上方修正された。さらに利上げの障害となってきた平均時給
も前年比+2.8%となり、予想の+2.6%や前回改定値の+2.7%を上回る改善と
なっている。
平均時給は昨年12月に+2.6%と2009年6月以来の高い伸び率まで回復したあ
と、今年3月には+2.3%、8月には+2.5%に減速するなど頭打ちとなってきた。
連動する形でドル/円も、ドルの下押し圧力が強まっている。しかし、10月の賃金
改善に続き、今後も米大統領選が終了すると「不透明リスクのアク抜け」によっ
て、米国企業による雇用・賃金への前向き姿勢が再開される可能性がある。12月
にかけては、年末商戦向けの臨時雇用が労働市場のプラス材料として残される。
いずれもFRBによる12月利上げを後押しさせるもので、ドル/円ではドルの下限切
り上がりが支援されやすい。
1
Market Insight
その中でドル/円の週足テクニカルでは、ドルの上値メドとして、一目均衡表の
基準線105.19円前後、40週(約200日)移動平均線106.31円前後などが視界に入っ
ている(いずれも先行きは切り下がり)。先行き先行スパンの雲の下限は、12月
16日週から来年1月20日週にかけて107.70-90円前後で横這い化しており、雲下限
トライのエネルギーも蓄積され始めた。
反対 にドルの 下値メド は、転換線102.81円 前後、260週 移動平均 線101.81円 前
後、520週線99.53円前後などが意識される。その他の注目ポイントは以下の通り。
<米大統領選と議会選のリスク>
米大統領選については、サプライズ的なトランプ候補の勝利リスクも無視でき
ない。その場合は一次反応として世界株の暴落とリスク回避の円全面高が加速。
ドル/円は瞬間的に101円割れや100円割れのドル安・円高が警戒される。
また、クリントン民主党候補が勝利しても、議会選で上下院ともに共和党が勝
利したり、上下院で民主党と共和党が勝利を分け合うといった複合的な「ネジ
レ」リスクが残されている。その場合、クリントン新大統領は高齢問題や複数の
疑惑残存もあって、就任早々からレームダック化となってしまう。為替相場で
は、1)米国の経済政策停滞、2)「弱い米大統領」によるロシア・中国・北朝鮮の軍
事的な攻勢激化と地政学リスク、3)米議会主導による保護主義の高まり――といっ
たネガティブ材料が警戒される。そのためクリントン勝利でも、二次反応として
はドル安やリスク回避の円高に振れる波乱余地も残されている。僅差でのクリン
トン勝利となれば、トランプ陣営による異議申し立ての政治混迷リスクも消えて
いない。
<日本企業の決算発表>
日本株市場では今週も企業の決算発表が相次ぐ。8日のトヨタ自動車を始めとし
て、「懸念ほどには悪くない」という結果や、「自社株買いなど株主還元策の強
化」が注目される。米大統領選でのクリントン勝利シナリオを含めて、リスク選
好による日本の株高と円安を支援するものだ。
米国の平均時給・前年比
6カ月移動平均線
ドル/の月足・一目均衡表
2.8
2.7
2.6
2.5
2.4
2.3
2.2
2.1
2.0
1.9
1.8
1.7
1.6
↑賃金改善
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
雲
ドル/円は
雲上限攻防
Aug-18
Mar-18
Oct-17
May-17
Dec-16
Jul-16
Feb-16
Sep-15
Apr-15
Nov-14
Jun-14
Jan-14
Aug-13
Mar-13
Oct-12
May-12
Dec-11
Jul-11
Feb-11
Sep-10
Apr-10
Nov-09
Jun-09
%
平均時給(左軸)
6カ月平均
ドル/円(右軸)
先行スパン1=100.72
先行スパン1=93.93
ドル実効指数の週足・一目均衡表
ドル/円
転換線や
雲を上抜け
99
98
97
96
雲
95
※ドル指数は
インターコンチネンタル
取引所
94
93
92
91
Apr-17
Mar-17
Jan-17
Dec-16
Oct-16
Sep-16
Aug-16
Jun-16
May-16
Apr-16
Feb-16
Jan-16
Nov-15
Oct-15
Sep-15
Jul-15
Jun-15
May-15
Mar-15
Feb-15
Dec-14
禁無断転載・転送
ドル指数(左軸)
転換線
先行スパン1
先行スパン2
ドル/円(右軸)
円
122
120
118
116
114
112
110
108
106
104
102
100
98
円
2
Market Insight
さらに輸出企業の決算発表では、想定為替レートを実勢レートに接近させるド
ル安・円高方向への修正が焦点となる。想定レートのドル安修正が進捗すると、
1)輸出企業による為替差損リスク拡大を憂慮した狼狽的なドル売り下がりの減
退、2)企業業績の下方修正リスク一服、3)業績下方修正の歯止めによる来春の春
闘での賃上げ支援(デフレ抑止)――といったプラス効果が期待される。いずれ
も円安・株高の要因となりやすい。
<原油相場と中国の経済指標>
今週の為替相場は、原油相場の動向も注視されよう。WTI原油価格は10月19日
に1バレル=51ドルと2015年7月以来の高値を回復したあと、11月4日には43ドル
と9月20日以来の安値に反落してきた。11月30日のOPEC(石油輸出国機構)総会
に向けて減産合意に不透明感が広がっているほか、米国での原油在庫増加や生産
再開などが需給悪化を再燃させている。原油反落は米国債金利の上昇抑制(債券価
格は下げ渋り)やリスク回避、オイル・マネーの投資余力減退といった材料とな
り、10月28日以降は円高やドル安、産油国通貨であるカナダ・ドル安の材料と
なってきた。
一方で世界の産油国は2014年以降の原油急落で財政や経済が疲弊しており、
「40ドルを大きく下回るような原油安は許容しない」という見方が少なくない。
さらに今週は中国で8日に10月貿易収支、9日に物価指標が予定されている。中国
経済は人民元安や不動産の再過熱などで減速に歯止めが掛かっており、「輸入の
下げ止まり」や「過剰供給による物価下落(デフレ)圧力の緩和」が示される
と、原油などの資源相場や資源国通貨(豪ドル、NZドル、カナダ・ドル、南アフ
リカ・ランドなど)には下支えの要因となる。
<世界的な金融緩和競争の休止>
前週は英国中銀がポンド安や資源下げ止まりなどによるインフレ昂進に警戒感
を示し、金融緩和バイアスを後退させた。ユーロ圏でも物価指標の上昇が目立っ
ており、欧州中銀(ECB)の大規模な追加緩和の可能性が影を潜めつつある。米
大統領選が終了すると、世界経済にとっても不透明材料が一つ払拭されることに
なり、少なくとも年末にかけては「世界緩和競争の休止」が維持される。ポンド
やユーロの反発を支援することで、円全面高の圧力が拡散されそうだ。
今週については、10日にNZ中銀が政策会合を開催する。市場予想は-0.25%の
利下げであり、会合まではイベント警戒によるNZドルの下落リスクをはらむ。し
かし、実際に利下げとなれば、当面の利下げ打ち止め思惑が高まるほか、利下げ
見送りでも当座の利下げリスクが後退となる。その意味で、いずれにしてもNZド
ルの押し目買い地合いが支援されやすい。
ちょうどNZドル/円の週足テクニカルでは、一目均衡表チャートの雲の下限
76.67円前後の上抜け攻防に直面してきた。すでに南アフリカ・ランド/円は先行
して雲の下限7.3510円前後を上抜け突破しており、NZドル/円も複数回の上抜けト
ライ後の雲下限クリアが注視されよう。豪ドル/円も豪中銀の当面の利下げ様子見
などもあり、先行き雲の下限攻防が視界に入り始めた。
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