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企業の取組例(PDF:546KB)

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企業の取組例(PDF:546KB)
Ⅲ.企業の取組例 模倣被害の傾向と対策
模倣被害対策のパターン
参照事例
製造工場の調査・摘発
取組例 ②⑤⑦⑧
税関での輸入差し止め
取組例 ①②③④⑥
警告書を送付
取組例 ③⑤⑧⑨⑩
訴訟の提訴
取組例 ②③④⑦
専門部署による体制
取組例 ①④⑥
調査会社へ依頼
取組例 ①④⑦⑧⑨
インターネット上の対策
取組例 ①④⑤⑥⑧⑨⑩
啓蒙活動
取組例 ①④⑤⑥⑦⑨⑩
業界団体と連携活動
取組例 ①②④⑥⑦⑨⑩
同業他社と連携活動
取組例 ①④⑦⑨
真贋判定セミナーの実施
取組例 ①②④
知財ワーキンググループへの参加
取組例 ②④⑨⑩
海外代理店との役割関係構築
取組例 ①④⑤⑧⑨
知的財産権の早期取得
取組例 ①③④⑨
業種:電気機器等製造
従業員数:約 20,000 人
被害に遭った権利:商標、意匠、特許
内容:デザイン模倣、ブランド偽装、デッドコピー
企業の取組例①
模倣被害の傾向と対策
膨大な中国発ブランド偽装品と困難な水際対策
【模倣被害の状況】
中国における輸出向けで製造された模倣品が中東などフリーポートを経由し、世界中に拡散
当社はグループ会社を含めて多種多様な一般機械・建設機械や電気機器、電子部品等を製造しており、広範な商品
が商標、意匠、特許・実用新案で模倣被害にあっています。そのなかでも最も被害が大きい知的財産権は、商標です。
被害エリアでみると、国内被害は年間数件程度となっており、国外、とりわけ中国における被害が突出しています。
海外における模倣被害ではその製造国として、中国が大半を占め、膨大な数の被害が確認されており、台湾、韓国、
マレーシア、ベトナム、インド等でも発生しています。中国については、広東省と浙江省を中心とした沿岸部における被害
が多いのですが、徐々に内陸部に被害が拡大している状況です。また、中国国内で消費されるよりも輸出向けの模倣品
が多いことから沿岸部が経由地となり、アジア各国や西欧、米国、中東へ流通していることが問題です。中国内で模倣品
を取り締まる AIC(工商行政管理局)等の行政機関でも地域によって協力度が異なり、協力的になっている地域がある一
方で、広東省の一部などでは処罰決定書等の入手が困難なことも過去にあり、その対応に差があります。
経由国としては把握しきれませんが、中東や香港を経由するケースもあります。こうしたフリーポートは実態が把握しき
れず、対策が困難です。こうした模倣品の流通に対する水際対策として可能な限りの税関登録を行っており、中国では一
定の効果が得られていますが、フリーポートを経由するだけでは税関検査が出来ないという根本的問題があります。
また、UAE ドバイなどの中東では水際対策があまり機能していないという問題があります。販売・提供国では、中国や
インドをはじめとしたアジア、欧州、北米、中東など広範囲で確認されていますが、今後は、オリンピックなどを控え、社会
資本の整備が進んでいくブラジルで当社のマーケットが拡大するため、模倣品対策に注力していく必要があります。
多発するブランド偽装、模倣品を取り扱う正規販売店
国・地域によって差があるものの、中国では建設用機械の交換部品、中東では砂漠の影響で摩耗しやすい自動車部品
の模倣被害などがあります。模倣被害の内容もデッドコピーやデザイン模倣など様々なケースがありますが、最も多いの
は当社商標を真似たブランド偽装です。件数は多くないのですが、正規販売店の中には真正品と模倣品を両方扱ってい
る事例もあります。 また、BtoB 向け製品の模倣品となると、特定顧客を相手とするだけに調査会社も容易に調査するこ
とが出来ず、対策が困難という問題があります。
昨今の中国における模倣手口として多いのは、工場地区ではない住居地区など発見しにくい場所で生産、各半製品を
別の場所で製造し、販売時に組み立てる方法や、摘発を警戒して在庫をもたないなどの手口です。発見が出来ても、模
倣品の量が少ないケースなどは、AIC 当局が自らの摘発実績にならないからか、動いてくれないという問題や、住居地
区には AIC 当局も踏み込めず、公安局なども小さな事案では動かないという大きなハードルがあります。
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【模倣被害対策と効果】
模倣品の供給者対策だけでなく、需要者対策への取り組み
模倣被害対策としては、取扱商品が多岐に渡るため、商品毎に真贋判定が出来る専門知識が求められます。模倣手
口の巧妙化などにより、摘発自体が難しいという問題もありますが、模倣品にも需要と供給の両面があります。各国税関
職員向けの真贋判定セミナーや税関への取締申請などの流通ルートを抑えるような供給面への対策だけでなく、需要者
側のニーズという側面もあるため、中国や中東など各国で消費者への啓発活動に注力するなど需給の両面から模倣品
対策を実施しているところです。
中国通販サイト上で出品される模倣品に対し、サイト運営会社へ直接の削除要請
インターネット上の被害についてはタオバオやアリババなどの中国通販サイトによる模倣品の販売取引が多く発生して
います。中国の現地法人では中国の模倣対策担当者を配置しており、代理店や調査会社と協力しながら対策活動を実
施していますが、インターネット上で模倣品を発見した場合は、サイト運営社に直接削除要請をしています。被害の多い
タオバオにおいて以前は通報サイトがあまり機能していませんでしたが、最近は対応に改善がみられます。
同業他社に共同摘発の働きかけ
当社の模倣品のみではなく、他社の模倣品も同時発生することが多いため、建設業界や電動工具など同業他社と共
同摘発のはたらきかけや情報共有といった企業間連携による模倣対策を行っています。
当社の関係企業と誤認惹起させる企業名を自社ホームページ上で注意喚起
国内では当社の社名を商号に入れ、当社やそのグループ会社と紛らわしい商号を使用してサービス提供や勧誘をす
る企業が存在します。こういった場合には消費者が騙されないように実企業名をホームページ上で掲示し、当該企業と当
社は一切関係がないことを周知・注意喚起しています。
各国における登録商標は全ての商品・サービス分類で出願
自社を表示する商標においては各国で、全ての商品・サービスの認められる範囲で権利化を積極的に進めてきたこと
により、商標の冒認出願は最近になって増えてきたということはありませんが、主に中国などで、冒認出願と考えられるも
のがあった場合には異議申し立てを行っています。
模倣被害対策の費用対効果は数値等で推し量れないものです。「費用」はある時点の“点”として表されますが、「効
果」はブランド価値、取引先や消費者からの信頼、営業現場の仕事の進めやすさなど数字で出せないものであり、消費
者に安心して商品を購入し続けていただける永続的な“線”として考えています。
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業種:電子機器・精密機器等製造
従業員数:約 3,000 人
被害に遭った権利:商標、意匠、著作物
内容:デッドコピー
企業の取組例②
模倣被害の傾向と対策
悪質な業者には民事訴訟による損害賠償請求で対応
【模倣被害の状況】
外見で真贋鑑定困難な商品には特殊シールを貼付
当社が被害にあっている知的財産権は、商標、意匠、著作物です。当社では、商号に加えて商品ブランドを商標登録
していますが、デッドコピーの模倣品が中国を中心に世界各地に出回っています。模倣されている商品では、腕時計
などが被害件数も多く深刻です。腕時計などでは、デッドコピー商品が正規品と同程度の価格で販売されていることが
あります。また、真正品と混ぜて模倣品が販売されていることもあります。
各国で調査会社に模倣品の監視をしてもらっていますが、中国では当社の偽物対策部署がありますので、基本的に
はそこが直接監視にあたっています。また、お客様からの情報提供が発見の契機となることもよくあります。
腕時計については、「数字表示の時計」は真正品のデザインや精度が精巧で真似しにくいこともあり、外見で模倣品と
の判別が比較的容易ですので、画像だけでも判断が可能です。しかしながら、「針表示式時計」は、模倣業者も精巧に
製造する技術力を有していますので、外見だけでは判断が困難なケースもあります。そのため被害が大きい商品につい
ては、鑑定用ホログラムシールを商品に貼付して販売しています。このホログラムシールには特殊な加工を施しており、
専用のハンディビューアを通して見ると真正品か否かが簡単に判定できます。外見やパッケージはほぼ真正品に近い
ものが出てきており、ホログラムシールも外見上は模倣することは可能ですが、ホログラムシールに施している特殊加工
は、未だ偽造されていないため、効果的な真贋判定方法となっています。
水際差止めの有効性と今後の課題
海外の模倣品製造地域は主に中国ですので、中国では製造工場の取締や税関での輸出差止めを行っています。
中国からの流入を税関で差止めることができれば市場への拡散が防止できるので中国以外の国でも税関での差止め
効果は大きいと言えます。現に昨年1年間で取り締まった模倣品総数の半分以上が中国及び各国税関での差止めに
よるものです。
中国以外の各国の税関では特に米国、欧州で差止めができている一方で、アジアなどでは当局の制度整備自体が
これからと感じられます。ベトナムの税関では、登録制度はあるものの差止め申請後でないと貨物を開封して侵害疑義
物品の写真を提供してもらえないほか、差止め申請を毎年更新しなければならない、などの不便な点があります。経済
発展しているベトナムやインドネシアなどアジア各国において、当社としても展開するにあたって対策を講じていきたいと
考えていますので、現地当局の法整備、運用改善を期待したいところです。
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【模倣被害対策と効果】
民事訴訟による抑止効果も期待
模倣品に対しては、商標権、意匠権、著作権で対応していきます。まずは商標権で対応をして、それだけでは不十分な
部分を他の権利でカバーしています。意匠権は、特にインターネットオークションサイトにおける出品を削除する際などに
有効に活用できます。その他著作権も含めて案件に応じて根拠とする権利を使い分けています。
中国での模倣品製造は広東省の一部の地域に多いため、行政摘発もこの地域を重点的に行っています。ただし、
時計は部品製造、完成品製造など段階に分かれて製造されることが一般的であるため、部品だけを扱っている業者を
摘発しても部品の単価が低いので、罰金額が低くなってしまうので抑止効果が期待できにくいという問題があります。
そこで摘発の効果を活かすという意味でも同地域の悪質な業者に対しては行政摘発だけでなく商標権や意匠権を根拠と
した民事訴訟も提訴して損害賠償請求を行っています。民事訴訟は半年程度で終了することが多いので時間的には
そんなに負担になっていません。
対象は製造業者ですが、AIC(工商行政管理局)に登録している業者のように住所も特定でき、実体を備えている会社
でなければ、裁判上の原告適格や賠償金不支払いの問題が生じやすいため、訴訟相手の選定は慎重に行います。
行政摘発による罰金は低額ですが、民事訴訟による損害賠償額は行政罰に比べると高額ですので、模倣すると訴訟
まで起こされるという危機感を持たせることで、業者に対する再犯予防、及び近隣地域の他の業者に対する抑止効果も
含め模倣業者対策としては有効と考えています。
業界での取り組み、公的機関等の支援施策の活用
業界団体などの取り組みでは、中国では上海 IPG(知的財産権問題研究グループ)に参加しています。上海 IPG は
参加企業も多く企業間で情報交換もできますし、団体として対策などにも積極的に取り組まれています。上海 IPG を通じ
て AIC(工商行政管理局)、海関(税関)と定期的に意見交換を行っており、政府機関に直接要請できる機会は重要で
あると考えています。その他、上海 IPG にはニーズにあったワーキンググループがありますので有効に活用させてもらっ
ています。
また、中国以外の海外の取締当局においても真贋判定セミナーは有効だと思っています。JETRO主催によるセミナー
の開催国・地域を拡大していただいているので、これから展開を考える際に参考にさせてもらい非常に役に立っていま
す。セミナーでは当局スタッフとの交流もありますので、私企業ではなかなかできない当局とのパイプ作りのきっかけに
なっています。インドやブラジルでは、セミナーを開催してもらったことがきっかけで同国税関が職権で当社の模倣品を
差止めしてくれるようになってきました。セミナーが有効だったと実感している事例です。
今後、強化が望まれる点としては、セミナーの開催内容について、真贋判定にとどまらず、外国政府との直接の対話を
通して、権利者からの制度的な要望点などを伝えることができる機会がいただければ、より有効なものになると考えて
います。
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業種:家庭用生活雑貨製造
従業員数:約 600 人
被害に遭った権利:商標、意匠、特許
内容:デザイン模倣、デッドコピー、技術模倣
企業の取組例③
模倣被害の傾向と対策
対策が困難な海外でのデザイン模倣、商標の冒認出願
【模倣被害の状況】
海外で頻繁に起きるデザイン模倣、デッドコピー
当社は家庭用生活雑貨品を製造しており、海外で商標・意匠、国内で特許についての被害事例がありました。海外の
事例では、台湾での模倣被害があり、台湾の生活雑貨メーカーが、商品名が同じで、パッケージデザイン・容器の形態な
どが非常に似た商品を販売するという事例がありました。インドでは、現在海外のみで展開している商品のデッドコピー
が露店で販売されているのが見つかりました。中国では、3 年前に国内で発売し海外では未発売の商品のデッドコピー
が店頭で販売される事例がありました。
そのほか、商標の冒認出願の被害事例もあり、ロシアでは当社の社名が、中国では当社の商品名が商標出願されて
いました。また、台湾でも当社の商品ロゴマークが出願されていたという被害事例がありました。このような海外での模倣
被害は、1 年に数件は報告があります。直近の売上に大きく響くことはありませんが、模倣品が流通することで正規品を
扱う現地代理店との関係性が悪化してしまう上に、模倣品が流通している事実は代理店と契約をする際に、こちらにとっ
て不利な要因になってしまうこともあります。
模倣品の製造地域は中国ですが、詳しい地域の特定はできていません。インドの小売店で模倣品を見つけた際に、製
造地を確かめるために流通経路について調べましたが、情報を聞き出すことはできませんでした。また、デッドコピーの
場合は製造元として記載されているのは当社の連絡先であり、実際の製造元については何の情報もないため、どこで作
られているかについては調べようがないという現状です。
品質については、様々な模倣品について、細かいところまで検証はしていないものの、消臭芳香機能や耐久性の面で
正規品より模倣品のほうが劣っています。当社では耐久試験を十分行ってから販売するため、使用していて製品にカビ
が生えるようなことはありません。しかし、模倣品は品質が劣るため、正規品なら耐えられる環境であっても、カビが生え
てしまうということがあります。
正確な数字は把握していませんが、模倣品は正規品よりもかなり安い値段で流通しています。小売店では正規品の横
に、正規品よりも少しサイズが小さい模倣品が並べられて販売されていることもあると聞いており、そのような場合は価格
の比較が容易になされて模倣品の流通に拍車をかけているのではと考えています。
国内で起きた特許権の模倣被害
国内の事例では、当社の主力商品で、特許権の模倣被害がありました。当社の製品は容器の構造に特徴があり、特
許権を保有していますが、その構造を模倣した模倣品が海外で製造されました。2 年前に、ある企業のプライベートブラン
ド商品として、商品名やパッケージは異なるものの、容器形状が同じものが製造販売されているのが判明しました。国内
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の被害は、海外の被害に比べ頻度は少ないが、当社は国内販売が売上の多くを占めるため売上に与える影響が深刻に
なりかねません。
【模倣被害対策と効果】
費用対効果を考慮し、警告や輸入差し止めなどの対策の実施
海外での売上は国内に比べて相対的に小さいので、海外での模倣被害対策にはあまり時間とコストをかけられないと
いう現状があります。そのため、模倣被害についての調査や、製造現場の摘発などの大規模な対策は行っていません。
基本的には、海外の場合は製品の海外展開の計画に合わせて当該国での知的財産権の取得を行い、模倣品を発見し
たら販売元へ警告を行うという方法をとっています。模倣品が海外で流通する場合、製造元は中国ですが、製造元を押さ
えるのは困難なので、流通先の国の税関で輸入差し止めをするという対策を行うこともあります。中でも、商標権も意匠
権も有していないパッケージデザインのみの模倣は対策がしづらく、最もやっかいな問題です。その国では著名な製品で
はないということもあって権利主張が困難です。台湾では商標出願中で、登録になればこれをもとに権利主張する予定で
す。今回の事例では中国では、商標に登録性がないので、著作権による権利行使を予定しています。現在パッケージに
記載されている文字の特別な態様に著作性が認められる可能性があることから、著作権を主張することで対策を行うこ
とを検討しています。
経験的には、海外の 1 つの模倣被害に対応するには年単位の期間がかかります。警告を行うまではおよそ 1 年かか
り、税関の手続きを行い輸入差し止めまでの対策を行う場合はさらに期間がかかります。10 年以上前に、中国で製造工
場の摘発を行ったこともありますが、コストがかかる割にはあまり効果がなかったため、現状の対処方法に落ち着いてい
ます。
冒認出願への対策として、現在中国では、著作権を主張することで異議申立を行っているものがありますが、商標の
冒認出願は取り消しが難しいのが現状です。
国内での主力商品の技術模倣に対しては訴訟を行って対処
国内での技術模倣の事例では、被害にあった製品が当社の主力製品であったこと、また会社として毅然とした態度を
示すという意味もあり、当該企業に対して訴訟を行いました。その後、和解となり、現在その製品は当社製品とは容器の
構造を変えて販売されています。
販売計画に合わせ、製品ごとのタイミング・地域での知的財産権取得
模倣被害対策としては知的財産権の取得も対策のひとつとしていますが、国内と海外では展開が異なり、新しい製品
が出る場合は必ず販売側と協議し、権利の内容や取得する地域、取得するタイミングなどについて決めた上で取得して
いるため、製品ごとに権利取得の状況は違っています。商標登録を行うタイミングも販売計画に合わせるので製品によっ
てまちまちです。今後は、海外での対策として、当社の海外での主なマーケットである現地法人のある国に重点を置い
て、権利取得等の対策を行っていきたいと考えています。
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業種:事務用機械器具製造
従業員数:約 2,000 人
被害に遭った権利:商標、意匠、特許、著作物
内容:デザイン模倣、ブランド偽装、デッドコピー
企業の取組例④
模倣被害の傾向と対策
中国製模倣品が世界中に流通、日本では技術の類似した商品を販売
【模倣被害の状況】
中国製の粗悪な模倣品が真正品の半値以下で販売。日本製の類似品も出回る
当社は事務用プリンターの製造販売を行っており、被害にあっている知的財産権は商標、意匠、特許、著作物がありま
す。その中でも中国において主に商標権の被害が大きく、当社の商標をつけた消耗品が中国で生産され全世界で売ら
れています。当社の消耗品は貯蔵安定性に気を配り、2 年間はある程度の温度や湿度にも耐え環境面にも配慮して製
造していますが、模倣品は環境面を配慮しているか判らず品質面で劣るものもあります。
模倣品の価格は当社製品の半値以下で売られており、少し調べれば模倣品だと分かると思うのですが、購入者と使用
者が異なるケースでは、購入者は安いので模倣品と知りつつ購入する場合もあり、クレームは使用者から発生します。
クレームが来た場合には速やかに調査を行い、現地販売代理店から模倣品であった旨を連絡してもらい、当社の製品
を使用するように対応するよう指示しています。
国内においては、特許を侵害していると思われる類似商品が出回ることがありますが、その企業独自の商品として展開
されています。技術分野での模倣は、明らかに模倣だと分かる商標とは異なり、アクションをおこす際には先の先まで想
定して慎重に対応しなければいけません。その企業との関係についても 1 対 1 というわけではなく、取引先などの関係も
複雑であることから簡単には動けないという事情もあります。日本での類似品製造業者は海外にも販売しているようです
が、当社としては全世界で特許を取得しているわけではないので対応が難しいのが現状です。
全世界に模倣品が流通しており、独自の調査は困難
模倣品は、中国の広東省を中心に北京市、河北省、河南省などで製造されています。村ぐるみで分業化し、民家で製
造されています。門番として老人が座っており、年配者を敬う中国では行政も強く出られずに困っているという話を聞きま
す。中国で生産された模倣品は北米、西欧を除く全世界に広がっているようです。特に東南アジアでの被害は大きく、中
南米やインドでの被害も多くなっています。ただし、これらの情報はあくまでも現地販売代理店が仕入れた情報のみにす
ぎず、当社が独自で全て調査をして把握しているわけではありません。
中国で模倣品が製造され各国へ広がるため、中国の税関で商標権を根拠に差止め登録をしています。ただし、商標を
パッケージにつけていない場合の模倣品は基本的に対処してもらえません。これは、行政摘発の際にも同様ですが、悪
質だと認められた場合などは、当社の商標が付された模倣品と一緒に押収してくれる場合もあります。このような摘発を
してくれるかどうかは、現地の職員によりけりですが、当社社員の交渉力も重要です。
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【模倣被害対策と効果】
中国での模倣品対策チームを結成
中国において当社の現地スタッフ数人で模倣被害対策チームを結成しています。現地の調査会社と連携して市場調査
を行ったり、定期的にインターネット上の模倣品を見つけることなどを主な業務としています。インターネット上の模倣品情
報は、行政摘発の際に効果的であるため、これらの情報は蓄積して摘発に繋げるようにしています。
製造業者への調査は主に現地調査会社スタッフに委託しています。国内外での知的財産権の取得について、商標は
販売しているほとんどの国で取得し、意匠と特許は費用対効果を考慮し、主にアジア、北米、西欧で取得しています。
当社はJETRO上海の上海IPGに加盟しており、その中の模倣品水際対策ワーキング・グループに所属しています。
上海IPGでは模倣被害に関する講演や諸外国の税関職員への真贋セミナーなどを実施してきました。
民事訴訟を起こす基準については明確に定めているわけではありませんが、事態の重さ、被害の規模、地域などを相
対的に検討して訴訟を起こすかを判断しています。また、海外の販売代理店とは、模倣品を扱うと当社との契約を打ち切
るというプレッシャーを常に与えるべく、模倣品を扱っていることが判明した場合は直ちに契約の解除ができるよう、前述
の模倣品を扱わない旨の契約を行うようにしています。
業界団体で共同摘発や啓蒙セミナー活動を実施
当社は業界団体の枠組みの中で刑事案件中心の共同摘発に参加しています。活動の中では、共同摘発のためのミー
ティングを行い、問題点を話し合うなど他社との情報交換もしています。その業界団体では共同摘発を行う場合は刑事案
件に特化して活動を行っています。刑事摘発をした後、再犯をしているかの確認までは行えていませんが、一般的に刑
事摘発の抑止力は強いと言われています。 共同摘発以外にも、過去に中国の深圳等で税関への啓蒙セミナーを行っ
たこともあります。
中国での対策強化と、他国での体系的な被害情報の収集が必要
模倣品の製造・出荷国である中国はもっと力を入れていくべきだと考えています。また、模倣品が見つかっている国、特
に東南アジア、インド、中南米、アフリカなどでは情報収集に力を入れ、被害の情報が体系的・定期的にあがってくる仕組
み作りを行いたいと考えています。当社も同業他社もいずれにおいても被害の傾向、比率は変わらないと思います。しか
し、売上規模や利益によって各社の状況は異なり、同じような投資は出来ませんので対策の選択は必要です。
模倣品被害の元を断つ意味で中国現地スタッフと本社スタッフとが協力し中国に力を集中するのが一番効率が良いと
考えています。
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業種:情報機器のサプライ品の企画・製造
従業員数:10 人
被害に遭った権利:商標、意匠、実用新案
内容:商品および商品パッケージ
企業の取組例⑤
模倣被害の傾向と対策
真贋シールによる模倣品対策が効果
【模倣被害の状況】
マーケットの成長とともに模倣被害も増加
パソコンや携帯情報端末、携帯ゲーム機関連のサプライ品の企画・製造を手がけており、現在はスマートフォン市場
の拡大にともない、同商品向けの画面保護フィルムやケースなどアクセサリーの販売が増加していますが、成長するマ
ーケットだけにこれらの商品の模倣が多くなっています。
商標権は各国で取得しているが、その商標権を侵害している模倣品が流通しています。また、当社ではパッケージ
ケースのデザインに特徴がありますが、そのデザイン模倣にとどまらず、パッケージに記載されている品番、バーコー
ド、問い合わせ先の商号、住所、メールアドレス、電話番号などもコピーした模倣品も多いです。
手にとった利用者からの通報で発覚
弊社商品になじみのない顧客にとっては、店頭やネットで購入する際、商品パッケージの外観からは正規品との区別
を付けづらい状況です。ケースの場合だと購入後にパッケージを開封してはじめて、ケースの強度や質感、品質、デザ
インの相違から、画面保護フィルムの場合だと実際に使ってみて画面保護フィルムがきれいに貼れない、貼り直しがで
きないなどの粗悪な品質から模倣品であると気づきます。画面保護フィルムについては特許権を有していますが、その
ような技術の模倣は無く、単に商品の見た目だけをコピーした模倣品が出回っています。
模倣被害の発見経路も、このような模倣品を購入してしまった先から、パッケージに表記されているメールアドレスや
連絡先である弊社に対して苦情や通報が入り、発覚します。
また、模倣品の製造・流通経路をみると、製造地域の大半は中国で、そこから中国国内や日本、韓国、東南アジア、
北米に流れているものが多くなっています。東南アジアでは、販売業者が大量に商品を購入した中に、正規品と模倣品
が混ざっている場合もあるため、販売業者自体も模倣品の存在を把握してないで販売していることもあります。
【模倣被害対策と効果】
大手小売の模倣被害は減少も中小店舗やネット上の模倣被害が課題に
模倣品を発見するために、定期的に国内外で販売店のパトロールを実施していますが、現状、ネットからの購入者が
大半です。中国でも現地の代理店を通じて、定期的に店舗パトロールを依頼しており、大手家電店においては模倣品を
発見することはなくなってきました。しかしながら、中小規模の店舗やネットでの販売までは、押さえきれていない状況に
あります。
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警告文の効果は五分五分
ネット上で模倣品を発見した場合、模倣品を扱う業者に対しては、警告文を書面で送付する方法で対応しています。
ただ、改善されるか否かは五分五分の状況です。警告以外にも、ショッピングサイトでの販売の場合は、ネット運営企
業に店舗の削除を依頼しますが、悪質な業者は、アカウントを変えながら継続して販売を続けるため、対症療法的な対
応になっており、あまり成果がありません。
模倣製造現場の分業化で摘発が困難
製造元をたどるために現地代理店を通じ中国当局に摘発を依頼していますが、中国で製造されている模倣品の多く
は、バッケージ、商品本体、ラベルなどの部材毎に別々の工場において製造された後、完成品としてパッケージされる
ことが多く、分業化が進んでいるため証拠として押さえることが困難です。また、それぞれの部材の在庫もすぐに捌かれ
るため工場に証拠が残らないことが多く、ルートを突き止めることが非常に困難な状況にあります。
真贋判定シールによる対策に期待
これまで、模倣品対策としてケースに使用する素材(紙製の内装台紙から外装プラスチック)を変更しても、悪質業者
もその変更点を模倣して販売を繰り返すという状況にありました。
こうした被害が国内外で後を絶たないこともあり、最近販売する商品のパッケージには、正規品を証明する特殊な真
贋シール(専用のビューアーで見ることで当社のロゴが浮かび上がるシール)を貼り付けて販売することを開始しまし
た。同シールは日本のメーカーが開発し、国内工場でのみ製造しており、その製造技術が模倣されることは、当面の間
ないと判断できたため、使用することを決定しました。海外でこのシール自体を模倣したとしても、専用のビューアーで
見れば、正規品か模倣品かをすぐに判別することが可能であるため、有効な対策となることを期待しています。
真贋判定を販売店や消費者に浸透させ流通管理
現在、このシールについて当社ホームページで周知をしており、ビューアーを各国の代理店や販売店にも配布して、
代理店や販売店が流通経路で模倣品を容易に発見できるようにしています。また、弊社のホームページで商品を購入
した顧客に対しても商品発送時にビューアーも同梱しており、消費者による模倣品の発見頻度も高くなってきています。
このように真贋判定シールの商品への貼付とビューアー配布により、流通における模倣品の発見が容易となり、正規
品の流通経路を管理することも可能となると考えています。
模倣品を撲滅するために
当社の外観ケースなどはすべて日本製ですが、「made in Japan」と記載された模倣品が中国から日本へ輸入される
現実があります。通関業務の難しさはありますが、模倣品対策における水際措置の重要性の観点からも、そのような
明らかに怪しい商品に対しては、チェックをする体制を整えるなど、国内企業、業界だけでなく、国が総力をあげて
大きな枠組みで模倣品対策に乗り出さなければ、模倣品はなくならないと考えています。
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業種:ライセンスビジネス
従業員数:約 450 人
被害に遭った権利:商標、著作権
内容:各種キャラクターのデザイン模倣
企業の取組例⑥
模倣被害の傾向と対策
デジタルコンテンツの違法アップロード対策が急務
【模倣被害の状況】
模倣被害の大きな問題は、冒認商標と違法アップロード
アニメを中心とした各種キャラクターのライセンスビジネスを手がけています。当社が被害にあっている知的財産権は
「商標」「著作物」です。模倣被害にあった商品分野は、アニメを中心とした各種キャラクターのライセンスビジネスを手が
けています。
当社が被害にあっている知的財産権は「商標」「著作権」です。模倣被害にあった商品分野は、ぬいぐるみ、着ぐるみ
から、玩具、文具のほか、デジタルコンテンツに至るまで、ライセンスを管理しているアニメーションの各種キャラクターに
関する模倣被害があります。
また、中国における冒認商標出願もあり、使用していない商品における類での冒認出願も多くなっています。最近で
は、キャラクターのデザインのみでなく、日本語、カタカナ、ローマ字などのキャラクターの名称を文字のみで出願する
事例も増えてきています。
そして、もっとも大きな問題は違法なデジタルコンテンツの複製です。特にデジタルコンテンツの違法アップロードをどう
防ぐかが大きな問題です。最近では、テレビ放送後数時間で英訳まで付いた動画が違法にアップロードされていることも
あり、DVD を制作するには、早くても半年かかることを考えると、DVD などデジタルコンテンツが大きな打撃を受けて
います。
模倣品発見の経緯、模倣品の製造地域、品質
模倣被害を製造地域で見ると、中国が圧倒的に多く、次に韓国が多いです。国内における模倣品に対しては、当社で
警告などをしていますが、海外での場合は、取引国ごとにマスターライセンスを与えている企業(マスターライセンシー)が
あり、その企業が模倣業者に対して警告をしており、当社はそれら模倣品に関する情報の報告を受けています。冒認商
標を発見した場合も、現地のマスターライセンシーに取締りをしてもらっています。ただし、国によっては、シンガポールや
香港の企業にマスターライセンスを与えて、その企業がさらに他の企業にサブライセンスを与えているなど、複雑な場合
もあり、十分に情報を把握することが難しいこともあります。
模倣品の品質は二極化
模倣品の品質については、二極化しています。正規品と区別がつかないぐらいに精巧な模倣品がある一方で、キャラ
クター品は顔や姿が商品の生命線ですが、著作権侵害で訴えられた際の逃げ道として、あきらかに正規品とデザインや
色を変えた模倣品に分かれます。
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中国での模倣品を撲滅しようとする啓蒙活動によって、「中国国内で著作権侵害は悪いこと」、「造ることも買うことも
悪いこと」と考える文化が少しですが増えていると感じることはあります。ただ、模倣を生業にする企業は後を絶たず、
全体の被害件数は増えています。まだ中国は、著作権法があるだけ良いですが、今後、法制度が整備されていない
国に模倣品の製造国が移っていくことが考えられますので、模倣品に関する懸念は減らないと考えています。
日本国内企業は模倣品に厳格に対応
日本の販売店が模倣品と知らずに販売している場合がありますが、購入した消費者などから模倣品ではないかとの訴
えがあり判明することが多いです。ショッピングセンターにテナント入居している場合などは、模倣品を販売していることが
発覚すると信頼が失墜、テナント契約の解除を求められることもあるため、発覚した販売店では、模倣品の廃棄や仕入
先との取引停止など、スピーディに厳格な処分対応をしている企業が多いです。
【模倣被害対策と効果】
自動監視システムの開発で効率的に模倣被害を発見
模倣品対策の基本的な考えは、模倣品を販売させないことであるため、水際対策として、税関へ輸入差止めを申請し
ています。海外では商標権を持っていないと対応してくれない場合もありますが、100 以上のキャラクターを管理していま
すので、すべての国ですべてのキャラクターに関する商標権を取得するコストはありません。そのため、ごく一部のメジャ
ーなキャラクター以外は著作権を根拠に権利主張することしかできず、権利保護が不十分な場合もあります。
インターネット上で模倣品を発見した場合は、プロバイダーへの削除依頼や、販売サイトの管理者には日本語と英語で
警告書を送付します。こうした対策で反応が得られるのは2割程度ですが、日本国内の業者や消費者が購入し事故が
起こった場合、世間一般ではライセンスを管理している側の責任になります。事故を未然に防ぐためにも地道に続けて
います。
模倣品を発見するために専任者を 3 名配置しています。違法動画に対しては、自社で自動監視システムを構築し、
クローリングにより常時監視を続ける体制を確立しています。現在、動画投稿サイトなどを中心に、世界 45 サイトを監視
中で1日 500~2000 件の違法動画を削除しています。この自動監視システムによって、監視負担がかなり減りました。
違法アップロードは、アフィリエイトなどによりマネタイズ化し商売として成り立つようになったという時代背景もあり、
悪質なアップローダーを取り締まることが重要だと考えています。
業界での取り組み
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)やコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)に加盟し、模倣情報の入手・
対策をお願いしています。特に相手国との繋がりをもっている業界団体の影響力を重視しており、その団体を通じて侵害
の取り締まり強化を訴えています。
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業種:精密機器の製造等
従業員数:約 10,000 人
被害に遭った権利:特許、商標
内容:製品および製品パッケージ
企業の取組例⑦
模倣被害の傾向と対策
知的財産権の侵害に毅然とした態度で対応
【模倣被害の状況】
海外シェアの高まりと模倣被害の増加
精密機器の製造等の幅広いビジネスを手がけている弊社は、販売先が国内外で多岐に渡り、現在海外の売上額比
率は 6 割近くとなっています。高度な独自技術に基づく精密機器において、国内・海外でトップシェアの製品が複数ありま
す。
海外売上比率が高まるとともに、模倣被害も増加してきました。主に国内では特許権を侵害する模倣品、国外では
商標権を侵害する模倣品です。
多角的な発見経路
模倣品発見の経路は、同業者からの情報、お客様及び営業現場などからの情報が多く、これらの情報を基礎として実
態を確認します。
インターネット上における海外の販売ページで正規品の外観写真が流用された場合には、模倣業者に加えて、サーバ
ー管理者、サイト運営者に対して弊社の著作権等が侵害されている旨を通報し、当該サイトの削除を実施しています。
また、模倣業者が弊社精密機器に使用する消耗品の模倣品を製造販売している場合、機器を購入したお客様の消耗
品取引量から模倣品の使用が判明することもあります。なぜなら、機械装置をメンテナンスするための消耗品は、お客様
の規模や使用目的などから、使用頻度が予想できるためです。明らかに消耗品の注文頻度が低下した場合は、途中か
ら安価な模倣品を購入していることが考えられます。弊社の製品は高価な精密機器であるため、模倣された消耗品の使
用は本体機器の精度低下、耐用年数の短縮及び故障の原因になる可能性もあります。そのため、消耗品の注文が減少
した場合などは、お客様が弊社製品を正常かつ長期的にご利用頂けるよう、弊社がお客様の現場へ状況確認に伺い、
消耗品の使用に対して適切に対処しています。
【模倣被害対策と効果】
事前調査に基づく粘り強い中国模倣品対策に効果
精密機器製品は数千万円から数億円に至る高額な製品もあるため、模倣品対策は従前より強化してきました。弊社
は、知的財産権を重視しており、弊社の知的財産権を尊重しない他社の行為に対しては、弁護士、弁理士と相談しなが
ら訴訟等も含めた厳しい態度で対応し、自社技術及びブランドを保護しています。
中国での商標権侵害に関しては、現地代理人を通じた証拠収集の上、行政摘発を実施します。行政摘発は簡易対策
として効果的であり、行政庁における摘発実績として登録されるため再犯に対しても効果があります。なお、昨年は弊社
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が申請した摘発案件中、80%以上の案件で摘発に成功しています。
中国では、知的財産権侵害行為が刑事罰対象となるために一定の不法経営額の基準があるため、その基準に至らな
い知的財産権侵害品の摘発の場合には、公安移送に至っていません。しかし、昨年の重点的かつ波状的な行政摘発に
より、弊社が模倣品に対して厳しい企業であるとの情報が模倣業者間で流れたようであり、模倣業者による大規模な模
倣品製造販売活動に対して、現在は大きな抑止効果となっているようです。
なお、摘発を申請する中国国家機関としては、商標法及び反不正当競争法に基づく摘発を実施する国家工商行政管
理総局に加えて、製品品質法に基づき摘発を実施する国家質量監督検験検疫総局も含めて検討しています。また、中
国から海外への模倣品輸出も懸念する案件においては、中国税関への商標権登録も検討し、模倣品拡販の予防措置を
検討しています。
行政摘発をした後は、広告などを用いて模倣品に対する啓発活動も併せて行うことで、模倣対策活動をより効果的な
ものにしています。
模倣被害早期対策と情報交換
模倣被害対策は、各国の知的財産権に関する基本的知識、改正法動向、判例動向、摘発等の運用も含めた具体的
な手続きに関する信頼できる情報が極めて重要であり、これらの情報に基づいて初めて効果的かつ戦略的な知的財産
戦略を立案し、遂行できます。そのため、あらゆる機会を通じて、これらの情報入手に務めています。
また、弊社が所属する業界団体において、模倣品対策のマニュアルを作成したこともあります。同様の被害を受けて
いる業者間で協力して様々な模倣品に関する情報を共有することは、業界全体として模倣品に対する対抗策の拡充、意
識向上につながるためです。
さらに、今後より一層悪質化することが予想される模倣行為に対して早期に対策を検討するため、所属する業界団体
の活動にも積極的に参加し、最新情報の入手とともに模倣活動抑止のための業界全体の活動に貢献しています。
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業種:アパレル
従業員数:約 1,000 人
被害に遭った権利:商標、著作物
内容:ブランド偽装、冒認商標出願、デッドコピー
企業の取組例⑧
模倣被害の傾向と対策
模倣被害が海外で多発
【模倣被害の状況】
海外で横行するブランド偽装と冒認商標問題
当社が被害にあった知的財産権では、商標の冒認出願やブランド偽装などが多く発生しています。海外の冒認商標
出願では、中国、インドネシアで出願されていた事例があります。冒認商標問題は深刻で、当地での販売開始の遅れに
つながってしまいます。
商品では、見た目や商品名を酷似させたものや、当社のブランドロゴ付きのパッケージを模倣したデッドコピーなどが
発見されています。特に機能性衣料品については真正な機能がなく、外見上だけ模倣している商品や、中古品、横流し
品などが多いようです。
国内で製造・販売されている模倣品はほとんどありませんが、中国、韓国など複数の国で模倣品が発見されていま
す。中国では、上海市と浙江省で模倣品が発見されたこともありました。最近、中国当局から当社の模倣品を発見した
との連絡が来ることがあるのですが、悪質な調査会社も存在するため、信用できる情報なのかわからず対応が難しい
場合が多いです。
当社が販売している主力商品は商品名の認知度は高いものの、分かり易さを重視して商品名を設定しているため、
商品名自体には識別力が弱く、商標権を主張して当該模倣品を抑えることができないのが実情です。
著作物の被害では、広告やwebデザインの模倣が多く、小売業者がインターネット通販サイトなどで当社がHPやカタ
ログで使用している写真などを無断で掲載し、あたかも当社が認定している正規ショップであるかのように見せている
事例が確認されています。このようなネット上での販売の方が実際の店舗販売よりも多くなっています。
模倣品発見の契機は、各国の担当者からの情報によるものが多いです。当社職員が普段から注意深く市場を観察し
ていることで模倣品を発見できています。
また、今年になって、中国で当社ブランド名が飲食店名に使用されている案件が見つかりました。
厳格化が望まれる海外審査機関
海外展開をすることが決定した際に、メインブランド名については、販売予定の有無に関わらず世界各国で商標登録
をしましたが、中国においては、当社ブランドの中国語(漢字)表記に類似した文字や発音が似ている文字などが多数
あるため、類似の表示は際限なくあり追い切れない状況です。当局においても、このような類似の商標出願に対しては
厳格に審査して欲しいと思います。
インドネシアでは、類似と思われる商標登録が並存していることがありました。また、当社が企業とコラボレーション
企画として展開している商品をインドネシアでも販売しようとした際、正当なライセンサーではない現地の第三者業者が
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既に商標を取得していたため、販売できなかった事例があります。そうした冒認商標出願を含め商標審査の厳格化、
公平な審判など法制度や環境の整備を望んでいます。
【模倣被害対策と効果】
相次ぐ中国での冒認商標出願
冒認商標出願の発見は、分類を絞って全世界で商標公報のウォッチングを実施しています。当社のメインブランド名
(アルファベット)が出願された場合については、無条件で異議申立、無効審判などの措置を講じています。中国では、
メインブランド名の中国語(漢字)表記については、月2~3件は発見の報告があり、発見した場合には、「特定の分類」
であり、類似性が高い場合には異議申立を申請しています。異議申立に掛かる費用は代理人費用も含めると1件あたり
20~30万円で、拗れた場合などは60万円程度掛かる場合もあります。年に6~7件は異議申立をしているので、それ
だけでけっこうな費用がかかってしまいます。
残念ながら冒認出願を未然に防ぐ対策は難しく、当社が使用する可能性のある分類については事前に登録しておくと
いうことくらいしか対策できないというのが実情です。
模倣品を発見した際には、基本的には、まず当社から直接業者に警告状を発送しています。しかし、比較的高価格帯
の商品や市場規模が大きい商品で深刻な被害が想定される場合のように確実に販売を止めたい場合は、法律事務所に
委託して行政摘発も含め取り組んでいます。また、組織的、継続的に行っている模倣品製造業者に対しては現地調査
会社に依頼して調査した上で警告状を発送しています。インターネットサイトなどで発見した場合には、出店者とサイト
管理業者に対し同時に警告状を発送します。管理業者はすぐに対応し出店者を削除してくれますので警告状は効果が
あると思いますが、すぐに別の店舗など新しい形態で出店してくる業者もいるのが悩みです。
外国行政機関による模倣品摘発
韓国では、警察が模倣品摘発に積極的なのか、取締活動に協力して欲しいとの依頼があったことから、協力をしたこと
があります。しかし、その取締りによってどれほど効果があったのかわからなかったというのが実際のところです。
また、税関登録もしていましたが、正規品も止まってしまうことが多かったため、模倣品を止める利益よりも正規品が
止まる損失の方が大きかったことから、現在は申請を取りやめています。行政機関による取締りは模倣品の対策として
効果が大きいので、権利者側にとっても、より効果的な方法で実施できるようになることを期待しています。
【今後の課題】
新たなブランド展開を視野に入れた模倣被害対策
当社商品は、商品単価が決して高額ではないため、このような商品の模倣品を製造・販売しても模倣業者に大きな
利益にならないと思いますが、今後は、海外での知名度が上がっていくにつれて、模倣被害が増加していく可能性もあり
ますので、模倣被害対策についても、これまで以上に注意して対応していく必要があると考えています。そのために、
海外数カ国に駐在している当社社員との連携を深めていくとともに、特に力を入れていくべき中国とアセアンにおける
情報を十分把握していくことが重要だと感じています。
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業種:食品製造
従業員数:約 12,000 人
被害に遭った権利:商標、意匠
内容:デザイン模倣、ブランド偽装
企業の取組例⑨
模倣被害の傾向と対策
同業者間で模倣被害情報を共有し対応
【模倣被害の状況】
ロゴ、デザインを模倣したパロディ商品の横行
当社が被害にあっている知的財産権は、主に商標と意匠です。
国内では、文房具やアクセサリー、衣料品などの模倣品が挙げられます。食品の模倣品は、購入者にとっても健康上
の危険があることから、当社商品のデッドコピーはなく、当社が手掛けていない非食品分野でロゴ、デザインを模倣した
商品が販売されています。具体的には、当社のロゴに一文字加えて異なる意味を表すロゴや似通った商標を使用した
パロディ商品を販売しているというケースです。模倣品の製造業者は、悪意があって行っているとは思えませんし、
必ずしもブランド価値に大きな損失を与えるものではありませんが、当社は食品製造会社であるため、使用される商品に
よっては悪いイメージを与えかねないので、対応の必要があります。そうした模倣品などを発見した場合には、商標権を
根拠に警告を行い、商標権を根拠とすることができない場合には、著作権や不正競争防止法で対応するなど、可能な
限り何かしらの申し入れをするようにしています。
海外では、当社のアルファベット表記自体はオリジナリティのある文字とはいえないため、当該文字を含む商標出願は
悪意なく発生することがありますが、当社のロゴを真似た明らかに悪意のある表示が出願されていることが判明した場合
には、事業分野以外の分類においても個別に対応しています。
中国では、お菓子などで当社パッケージと類似する商品が店頭で並んで販売されていることもあります。しかし、商標
権を付していないパッケージやキャラクターの態様を変更したパッケージなど、こちらの商標権、著作権の主張ができ
ないものについては、どこまでが類似なのか、どこから模倣として対応すべきなのか、という判断は非常に難しく、内容に
応じて専門家の意見を聞きながら対応しています。
現在懸念していることとしては、飲食関連の真正品の容器がインターネット上で販売されている事実があります。まだ
具体的な事案は把握していませんが、これらの容器に粗悪な偽造品を詰め替えて販売された場合、大きな事故につなが
る危険もあることから、注意して監視しています。万が一このような模倣品が販売された場合には、消費者が被害に遭わ
ないことを第1に、消費者に対して、模倣品販売の事実や真贋識別ポイントを紹介するなどの措置を講じる予定です。
消費者からの報告、同業者間での情報交換により被害を発見
模倣被害の発見については、主に国内を中心に、店頭・インターネット含め消費者からの報告も数多く寄せられます。
模倣業者は当社商品に限らず食品関連の同業者の商品を複数模倣していることが多いため、必然的に自社模倣品だけ
ではなく他社模倣品も発見することがあります。そのため、同業者間で模倣業者についての情報交換を行っています。
ただ最近の傾向として、模倣業者の手口が巧妙化してきており、web上での検索において通常の検索では、ヒットしない
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ような態様で商標を使用するなど、簡単には見つけにくくなってきています。
海外では、現地法人を通じて報告があります。また中国を中心に法律事務所などを通じて現地の模倣品に関する情報
提供を受けるケースもあります。その他、調査会社に当社商標と類似するような商標の出願状況について定期的に調査
を依頼しており、内容によって対応を検討しています。
【模倣被害対策と効果】
国内では内容証明郵便での警告が効果的
国内の模倣被害対策では、模倣品の製造業者・販売業者へ直接警告することが効果的です。特に配達証明付き内容
証明郵便は効果があります。また、常に最初から公的な手段を取る訳ではなく、被害内容に応じて担当者名でのメール
などで牽制しながら警告していくこともあります。明らかに悪意ある模倣業者は年に数件程度ですが、そういった業者に
対しては代表者名による公式な内容証明郵便を発送します。ただし、模倣業者が所在不明で警告状が業者まで辿り着
かないこともあります。インターネットサイト上でも、販売業者・出店業者に通報・警告を行っており、申立や警告状が販売
業者・出店業者まで届けば削除など対応してくれることが多いですが、やはり販売業者まで届かないことがあるのが実情
です。過去に模倣品を販売していた業者については情報を蓄積しており、販売を止めた業者サイトについても定期的に
チェックをして再犯がないかを確認するなど、継続的なインターネット上での監視を強化しています。
当社のロゴについては、今現在商品を輸出していない国でも、将来展開の可能性を考慮して、商標権を取得していま
すが、中国では、商標登録の申請を行っているものの、既登録商標との名義不一致の問題などから、まだ権利化されて
いないものが複数あります。そこで、著作権登録も申請し、ダブルで模倣被害対策の体制を整えております。
海外でも模倣業者に対して警告を行うようにしていますが、どのような方法・内容で行うかについては、検討が必要で、
弁護士・弁理士の鑑定書などがあった方が効果的と判断される場合には法律事務所を通して対応しています。このよう
に当社から直接警告状を発送するのか、若しくは代理人を介して発送するのかを含め、警告方法も相手、国、地域、
案件によってケースバイケースです。
国内・国外どちらにおいても、警告をすることで、知的財産の侵害には厳しい対応をするということを模倣業者に認識さ
せることも警告の目的の一つだと思います。
同業者間での情報共有と連携の強化
同業者間の取り組みでは、前述のとおり模倣被害に関する情報を共有するとともに、連携を強化し、協調しながら模倣
業者に対応しています。また、業界団体の分科会では啓蒙活動なども行われております。
海外の模倣被害情報などについては、食品業界の団体である日本食品・バイオ知的財産センター(JAFBIC)の知財
に関する集まりなどで、お互いに海外での事例紹介などを行いながら情報を共有されております。
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業種:インターネットサービス業
従業員数:約 3,200 人
被害に遭った権利:商標、特許
内容:ブランド偽装、技術模倣
企業の取組例⑩
模倣被害の傾向と対策
電子ショッピングモールの模倣被害と出店者の模倣品販売への対応
【模倣被害の状況】
当社の電子ショッピングモールを模倣したマーケットプレイス被害
当社はインターネット上のショッピングモールを運営しているところ、模倣被害としては、当社商標を使用したショッピン
グサイト模倣があります。ネット上のマーケットプレイスは簡単に構築できるものではないのですが、中国の模倣サイトが
模倣品を売るために、当社の商標を盗用した偽サイトを運営する事例が一般消費者からの情報提供などにより年間10
件以上は発覚します。こうしたケースでは、商標権侵害として偽サイトに警告をすると1度は止めたりしますが、ネット上で
はどの国で誰が侵害行為を行っているか判別が困難であり、加害者を追跡することが難しいため、そうしたサイトは時間
が経つと再度現れることがあります。
当社との提携を装った誤認混同行為
1つ目として、最近問題となっているのが、当社名をドメインに使用しているドメイン名模倣です。そのようなサイトにア
クセスする消費者は当社サイト若しくは当社に関連するサイトと誤認してしまうこともあります。こうした背景にはドメイン
取得のあり方に問題があると考えています。ドメイン名取得は、商標審査のように出所混同の審査がなされず、類似ドメ
インが容易に取得できてしまうためです。また、当社名が含まれるドメインは無限に存在しうるところ、それらすべてを押さ
えることは不可能であり、対策のしようがない状況です。そのため、ドメイン取得の際にも出所混同の要件を必要とすべ
きと考えています。
2つ目の当社との提携を装う態様として、模倣品サイトに当社バナー広告を無断掲載していることがあります。このバ
ナー自体は当社が作成しているものであるため、クリックすると当社ショッピングサイトへジャンプするようになっており、
より誤認混同を生じるおそれがあります。このようなバナーの無断使用は、年間数件~10件程度は発生している状況で
す。バナーに記載されている当社名称は当然商標登録してありますが、バナーの使用自体は商標権侵害を構成すると
は言えず、当社バナー広告を悪用したケースへの取締りは難しいという実態があります。
出店者の模倣品販売行為については電子ショッピングモールの運営者にも責任が発生する可能性
当社が運営するインターネット上のショッピングモールの出店者が、著名な食品メーカーの商標を無断使用した商品を
販売したところ、同メーカーから当社に対して差止請求の訴えがありました。当社は「場の提供者」であるため、出店者に
直接差止請求をするように求めたのですが、当社のような電子ショッピングモールの運営は、模倣品を販売しているのと
変わらないという論理で当社が訴えられました。電子的な市場であり、模倣品の把握は出来るのではないかという権利
者の主張もありましたが、出店者の個別商品そのものが模倣品であるかを判断することは現実的に不可能です。
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判決では、単に権利者からの主張ではなく、具体的な商標権侵害の事実を知った場合には電子ショッピングモールの運
営者にも責任が生じ得る、とのプロバイダ責任制限法と同様な基準が示され、当社がその基準に照らし合わせても合理
的な対応をしている、として当社には責任がないと判断されました。
【模倣被害対策と効果】
当社の電子ショッピングモールや商標を模倣される被害に対しての取り組み
当社商標を騙った模倣サイトのケースでは、商標権を根拠として模倣業者に対して直接もしくは法律事務所経由で警
告を行います。国内サイトの場合であれば、模倣サイトのインターネット・サービス・プロバイダに対して、プロバイダ責任
制限法に基づく申請を行って模倣サイトを閉鎖してもらうのも実効性のある対策です。ただし、プロバイダ責任制限法は
国内法のため海外にはその効力が及びません。そのため、中国の模倣サイトについては警告をしても実効性に乏しいこ
ともあり、消費者に対してそのような模倣サイトと当社とは関係がない旨の注意喚起を行っているところです。
また、当社商標の類似ドメインを取得されたケースについては、ドメイン保有者を特定し、交渉をしたり、当社の著名性
を根拠としてドメインの取消しまたは移転の申立を行っています。なお、当社商標の類似ドメインの買い取りを要求するブ
ローカーなどのコンタクトは無視するのが一番の対策になっています。
ショッピングサイトにおける模倣品販売を撲滅するための取り組み
出店者の個別商品そのものが模倣品であるかを当社が自ら判断することは現実的に不可能であるため、真贋判断以
外の点で取り組みを行っています。まずは、出店規約において、権利侵害行為が規約違反であることを明記し、権利侵
害と疑われる行為についても禁止しています。また、重大な規約違反行為を行った出店者に対しては、一時的な営業停
止や出店契約を解除するなど、厳しい措置も講じています。
権利者は、特定商取引に関する法律に基づき明示されている連絡先を使い出店者に直接警告等を行うことが可能で
すが、権利者から当社に、出店者による権利侵害行為について具体的に通知があった場合には、当社から出店者に連
絡をして対応を促し、期限内に対応がなされなければ厳しい措置を講じるということも行っています。
さらに、利用者からの苦情や問い合わせといったものを契機として、出店者に確認を求めたり、権利者の協力が得られ
れば試買をして権利者に真贋の判断をしてもらい、問題が発覚した場合には出店者に対して厳しい措置を講じるというよ
うなことも行っています。
企業間連携による模倣被害対策
当社は、権利者団体やブランドメーカーと協力して、模倣品に関する情報交換や、模倣品の発見、販売者への対処な
どを行っています。権利者側の協力を得て自主的なパトロールなども実施しています。
なお、オークション事業では有名メーカーをはじめとした権利者も参加するインターネット知的財産権侵害品流通防止
協議会※に参加しており、権利者側が考える模倣被害基準を共有して自主的取締りに活かしたり、権利者側およびイン
ターネットオークション事業者が連携し取り得る対策、情報交換などの協議を年4回ほど実施しています。
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※注:インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会
インターネット上での知的財産権侵害品の流通防止を目的としており、権利者(団体)およびインターネットオークショ
ン事業者によって 2005 年 12 月に設立された民間の組織
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