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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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日米多国籍半導体企業の海外活動における性格変遷(1) 途上国への海外アセンブリ投資を中心に -
桑田, 義弘
經濟論叢 (1989), 144(3-4): 313-331
1989-09
https://doi.org/10.14989/134326
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
(
3
1
3
)4
9
日米 多国籍半導体企業め 海外活動
に お け る性 格 変 遷
-
(
1
)
途上国への海外アセンブ リ投資 を中心に-
桑
Ⅰ は
じ め
田
義
弘
に
日米間の半導体摩擦が激化す るにつれ,半導体産業に関す る研究成果が相次
いで発表 され るようになってきた。それ らの諸研究の焦点は主 として, 日米を
中心 とした先進国間の関係 に置かれている。だが, 日本企業のアジア由IES
など第三国を経由 した対米 「ダンピング輸出」が,1
9
8
7年 4月の米国による対
日半導体報復実施の直接的契機 となった ことか らも窺い しれ るように,(日米)
半導体産業にとって発展途上国 (
地域) の生産拠点は戦略的に重要で不可欠の
存在 となっている. 日永 における従来の半導体産業研究は,卓の中心が 日米関
係に置かれ る債向があ り,途上国への進出は補完的なものとしてあま り重視 さ
れて来なかった嫌いがある。
)であ り,
半導体産業は歴史上,「大規模 に海外進出を行 った米国最初の産業」1
)に多 くの生産
先進国か ら発展途上国 (
主 として東南アジア ・アジアNIES
拠点 を有 し, グローバルな企業内分業 を展開 している.米国には及ばない もの
の日本半導体産業 も同様である.途上国に設立された生産拠点は一般 に,その
製造工程の うち組立 ・検査 を行 ういわゆる後工程 を担当 し,米国企業にあって
はその進出の最大の 目的は低賃金労働の利用にあった。そして完成品に仕上げ
られたその製品の多 くは本国へ送 り返 されてきた0-万 日本企業にあっては,
低賃金労働の利用のみならず現地 ・近接市場への製品供給が大 きな日的 となっ
1
) K.Fl
a
mm,〔
1
6
〕
,p.3
8
.
5
0 (
31
4
)
第1
4
4巻 第 3・4号
て きた。1
9
7
0
年代以降は米国企業において も,途上国の生産拠点 を現地 ・近接
市場への製品供給拠点 として本格的に利用す る動 きがみ られ るようになるとと
もに,最近では しだいにそれ ら拠点に独 自性 を持たせ るように もなって きてい
る。途上国に展開された先進国半導体企業の生産拠点 を,単 なる組立拠点 とし
て企業戦略上補完的 な役割を果た しているにす ぎない とみるのではな く, その
重要性の高ま りを的確に把握 し,先進国半導体企業のそれ ら地域への進出を詳
細に解明してい く必要があるだろう。
以上のような問題意識 を踏まえ,本稿では 日米多国籍半導体企業の海外進出
を,発展途上国 (
地域)への進出すなわちオフノ
シ ョアアセソプリを中心 とした
「
海外アセンブリ」 の展開,およびその性格変遷 を軸 にし考察す ることを試み
ているOすなわち本稿は,途上国にとくに焦点 を合わせ, 日米多国籍半導体企
業の生産工程上の企業内国際分業の歴史的展開ならびにその現状の把握に,そ
して 日米企業間にみ られ る相違の析出にその主 目的 を置いている。 さらに日米
多国籍半導体企業の グローバルな企業内分業の将来像の展望 をも試みている。
なお,東南 アジア ・アジアNIESな どに進出 した 日本企業の現地市場お よ
び第三国市場意向的なアセ ンブ リ事業 をオフショアアセンブ リ (あるいはオフ
ショア生産) として論 じる傾向 も存在す る2
)が,筆者は本国か ら送 られてきた
半製品 (チ ップ) を組み立てたのち,その完成品の過半 を本国へ送 り返す場合
のみをオフシ ョアアセンブ リとして把 え,本国以外の市場 にお もに製品を供給
す るものはそれに加えることは避けた。そ して,海外 (その中心は途上国であ
るが) でのアセンブリ事業全体 を広 く 「
海外アセ ンブリ」 と称す ることにした。
以下, まず Ⅱ節で米国半導体企業の途上国 (
地域)への進出を,そ してⅢ節
で 日本半導体企業のそれを,すなわちⅡ,Ⅲ節 においては両国企業の海外アセ
ンブ リの展開ならびにその性格変遷 を中心に検討 し,現在 までの両国企業の企
業内国際分業 (
主 として生産工程間のそれ) の姿 を描 き出す ことを試みる。そ
2
) 宋虞 昭 「日本電磯 ・電子産業の海外投資 と多国籍企業化戦略- アジアを中心 として- 」,
〔
1
0
〕,絵所秀紀 「アジア諸国における事業展開- 1
9
8
0
年代の動 向- A
,〔
1
1
〕 など。
日米多国籍半導体企業の海外活動における性格変遷 (1)
(
31
5) 51
してⅣ節 においては,
.1
9
90年代以降の 日米多国籍半導体企業の生産工程 のみな
らず製品別分業 も含めた企業内国際分業の将来像 を資本主義世界経済体制 との
係わ りで展望す ることにす る。
Ⅰ
Ⅰ 米国半導体企業の途上国への進出
/
米国半導体企業の発展途上国 (
地域)への進出を具体的に検討 してい く前に,
まず半導体産業 と海外アセンブ リについて述べることにしよう。
半導体産業では,その生産工程上や貨物輸送 コス ト上の諸特質8) および企業
間の国内的 ・国際的競争の俄烈 さな どか ら,その後工程 (アセアブ1
)事業) を
途上国を中心 とした海外に移転 し,生産工程上の企業内国際分業が きわめて活
発に展開されている。 この産業では,製品別の分業 よ りもこうした分業が企業
内国際分業の主要な形態 となっている。
海外でのアセソプ リ事業 (
海外アセソブリ) を,OECDならびにUNCT
C(
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ns
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i
o
na
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po
r
a
t
i
o
ns
)はその製品の輸
出 ・供給先によ り次の二つに分額 している4
)
。 すなわち, オフシ ョアアセソプ
)」(
po
i
nt
of
s
a
l
ea
s
s
e
mbl
y) であるo前者はい う
1
)と 「販売地点型 アセソプ 1
まで もな く,本国か ら半製品 (
チ ップ) を海外 (
途上圏)のアセンブ リ工場 に
送 りそこで細.
み立てた完成品の過半 を本国市場へ再 び送 り返す ものを指 してい
る。一方後者は,完成品の過半 を現地および第三国市場に供給 ・輸出す るもの
3
) 半導体の生産工程は大まかにいって,技術集胎的 ・資本集約的な前工程 (マスク, ウニ--輿
造工程) と労働集約的な後工程 (
組立 ・検査工程)に分けられる. この二つの工程は質的にまっ
1
3ページ)
,そのためその分割は技術的にたやすい。 また
た く異なってお り (田中昭二,〔8〕,1
半導体は,重量 ・容積当た りの付加価値が非常に高い声軌 航空機による輸送が一般的でありな
.
1% ときわめて小さくなっている (
志村幸雄 「半
がら製品価値に占める輸送 コス トの割合は約 0
導体産業 日米比較㊥」 『日本経済新館』1
9
8
5
年1
1月2
5日付。輸送運賃および保険料 を含めた輸
2
3
〕
,p.1
2
3)
0
送 コス トも出荷額の 2%を超えることはめったにない。UNCTC,〔
4) OECI
)
,〔
1
8
〕
,p.2
7;UNCTC,〔
2
3
〕
,pp.1
3
9
41
.この二つの国際磯閑の分解はお もに
米国企業の対外直接投資をもとにして行 っている。オフシ鼓アアセンブリと違 って本国市場以外
Po
i
n
t
ofs
a
l
e
) と称 したのは,米国企
におもに製品を供給する 「アセンブ リ」 を 「販売地点塑」(
業が欧州に設立 したアセンブ リ工場を念頭においていたためと思われる。 ちなみに,OECDは
「
販売地点型」の輸出先を 「外国市場向け」 としている。
5
2 (
31
6)
第1
4
4巻 第 3・4号
を指 してい る.一般にオフシ ョアアセソプ 1
)は,途上国においてみ られ る形態
であ り,販売地点型アセソプリは先進国 と途上国の双方においてみ られ るもの
である.またその市場戎模か らも想像 できるように,先進国でのアセソプ1
)辛
業は 「販売地点型」が一般的な形態 となっているo
それでは,米国半導体企業の途上国への進出の具体的検討に入 ることに しよ
う。第 1表は,米国半導体企業 の海外生産工場の設立数 を年次別お よび先進国
と途上国 との地域別 とは分けて示 した ものであるo この表か ら,米国半導体企
業の海外進出は途上国 よりも先進国の方が先行 していることがまず確認できる。
欧州への最初の直接投資-進 出はテキサス ・インスツルメンツ (
Texa
sl
ns
t
r
u一
me
nt
s
,TI
) が1
95
7年 に行 っている (
英国スコットラソ ド・べ ドフォー ド)5
)
0
一方,途上国への最初の直接投資はフェアチ ャイル ド (
Fai
r
c
hi
l
d)6
)
が,1
961
年
に香港 にたい し行 っている。1
9
6
9年は先進国,途上国 ともに工場設立数が もっ
とも多 くなっているが,それ峠 ドル危棟 によるイソフレや賃金上昇の圧力を強
9
7
3
年 には途上国への工場設立数が急増 してい
く受けたためと思われ る。また1
るが,それは主 として1
9
7
4年の 日本の ICの資本 と貿易の 自由化 を展望す る中
で生 じた ものであると考 えられ る。
米国企業の中で初めて途上国へ直接投資 を行 ったのは先 にも指摘 したように
9
61
年,同社は 日本企業による安価 な トランジスタ
フェアチャイル ドである。1
の輸出攻勢 に対抗す るべ く,生産工程 の うちの後工程 を香港に移転 し トラソジ
スタの組立生産を開始 した7
)
。 そ れ はその製品のほぼ全量 を米国本国へ再輸出
す るいわゆるオフシ ョアアセソプリであった。その後,同社 につづいてモ トロ
-ラ (
Mo
t
or
o
l
a
)な どの米国企業が1
96
0年代半ばか ら, また欧州企業が60
年代
5
) 第 1蓑では,先進国における最初の工場設立は1
9
5
5
年 となっているが ,筆 者の知 るかぎり欧州
と日本の双方においてそれに該当するものはなく,その詳細は不明である。
6
) フェアチャイル ドはプレーナ技術を開発 し,TIとともに Ⅰ
,
Cの発明に貢献 した企業であ り,
NS)などの有力企業の母体 ともなった名門半
またイ ンテルやナシ違ナル ・セ ミコンダクター (
9
8
7
年 8月,NSにより買収 され るにいた った (当初は富士
導体企業であるが,経営の悪化から1
通により買収される予定であったが, 「国家安全保障」を盾に米国政府が横槍 を入れた結果, フ
社側経営陣も望んでいた富士通による買収は実現 しなかった)
0
7) K.Fl
a
mm,[
1
6
]
,p.69
.
(
3
1
7
)5
3
日米多国籍半導体企業の海外活動 における性格変遷 (1)
第 1表
年
次
ア メ リカの海 外 半 導 体 生産 工 場 (
設立工場数)
'
L
先 進
1
95
6
1
95
7
1
958
1
95
9
1
960
国
発展途上国
計
合
0
0.
0
1
2
1
2
1
1
1
0
1
961
1
962
1
9
6
5
3
5
0
2
1
〔1
1
〕
1〔2〕
0
3
1
1
9
64
1
965
19
66
1
1
3
1〔2〕
1〔4〕
1
2〔3〕
2〔5〕
4
1
9
68
1
96
9
1
97
0
1
10
4
7
1
7
l
l
8
27
1
5
1
971
1
9
72
1
9
73
1
97
4
3
1
4
-
7
6
1
4
7
1
0
7
18
7
時期不 明
9
1
3
22
計
46
89
1
35
合
(
注) 1
)1
9
7
4
年 までの もので,設立年次による。
2) 〔 〕内は筆者が把捉で きる範囲での投資件数 ・工場数であるO
3
) すべての投資件数 ・工場数 を網雇 しているわけではない。 また投資年次 と工
場設立年次は異なる場合がある。
(出所) U.S
.De
pa
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t
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n
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mme
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c
e
,A Re
po
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to
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heU.S.s
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mi
c
o
nduc
t
o
r
7
・
y,1
9
7
9
.機械振興協会,〔1〕
,2
3ページ,表 2-5
i
n
du
s
1
未か らしだいに このオ フシ ョアアセ ンブ リを利用す るようになって きた。 こう
S ・チ ャンは, フェアチ ャイル ドの ことをオ フシ ョアアセ ン
した事情か らY・
ブ リのパイオニア と称 してい る8
)
0
第 2表 は,1
97
1
年 3月時点 での米国半導体企業 のオ フシ ョアアセ ンブ リ活動
8
) Y.S.Ch
a
ng,[
1
5
]
,p
-4
0
.
5
4(
3
1
8
)
第 2表
企
第1
4
4巻 第 3・
4号
米国半導体企業のオフシ 亘アアセンブ リ活動 (
1
9
71年 3月時点)
業
1
所
地
l従業員数 l
主 な樋
品目
トランジスタ とIC
トランジスタ
港
2
.
韓
国
3
.シンガポール
IC
4.メキ シコ ・シテ ィ
IC
5.メキシコ国境地帯
6.沖
縄
ダイオー ド, トラン
ジスタ,iC
座 業開始年
1▲6
4 6
8 6
8 6
97
0
6
9
9 9
9 9
9
1.
香
在
韓 国 (ソウル)
1
.
2.メキ シコ
3.メキ シコ
Te
x
a
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l
m
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u
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トランジスタ とIC
1
.シ′
ソガポール
2.カ リブ海 (
Ca
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be
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)
3
.
台 湾 (
台北)
Na
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Se
mi
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o
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ICとメタル ・トラ
ンジスタ
1.シ′
ソガポール
2.
韓国,香港,台湾,
メキシコな どに下
請企業
(
1
9
7
1
.
3
.
時点)
1.
韓
I
n
t
e
l
国
Il・メキ シコ
1.シ′
ソガポール
(
合弁会社)
1
巨 請企業
1
.メキシコ
2
.
西イン ド諸島 (オ
ランダ)
Ame
r
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Mi
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Ge
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0
50
1
.
韓 国 (
合弁会社 )
2,メキ シ′
コ
0
-
パ ワー ・トランジス
タ
2 ≡
:
引 MOS
1.
韓
国
2.メキシコ
/ジスタ
ICと トラ'
ICとMOS
1
.
台 湾 (
高雄)
トランジス
オー ド,整
OS
タ
,
ダ
イ
流
器
,
M
日米多国籍半導体企業の海外活動 における性格変遷 (1)
MOSのみ
2
.
スコットランド
RCA -
2
1
.
台
シ′ソガポール
汚
TRW
1
.
台
Tr
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n
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n.
2
1
.メキシコ
湾
■6
6
5
0.半導体
1
9
6
7
3
5
0 軍装 (
バツ- わ) l 1
9
6
5
,
_
O
O
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部
品
組
立
1
て
国
下請企業
ⅠCセラミック実装
Ra
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o
n
極東数箇所
下請企業
El
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I
.シソガポール
*
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韓
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.シンガポール_
Co
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1
.シンガポール
(
3
1
9
)5
5
1
9
6
9
-
l
E
8
5
0
l
1
9
68
〕
l
(
注) *これ ら2企業は1
9
71
年前半に半導体事業を廃止 した。
〔〕 内は筆者による
(出所) F
i
e
l
dI
n
t
e
r
v
i
e
ws
.Y.S
.C
l
l
a
n
g
,〔
1
5
】
,p
.1
9
2
0
,Ta
b
l
e
.
を示 した ものであるO この裏か ら,多 くの米国企業がオフシ ョアアセンブ リを
利用 していることが確認 で きるが, なかで もフェアチ ャイル ド, モ トp-ラお
よびT Iな どの大手 メーカーが とりわけそれ を活発 に利用 していることがわか
る'
O また中小 メーカーを中心 に下請企業 を利用 したオフシ ョアアセ ソプ l
) (い
わゆる 「国際的下請生産」
) もい くつかみ られ る。
進出先に関 しては,東南 アジア ・アジア NIESおよびラテンアメリカに集
中 してお り, とりわけシソガポール とメキシコへの進出が際立 っている。 メキ
シコの場合,1
96
5年 に始まった国境地帯工業化計画に もとづ く米墨国境地帯へ
め輸 出志向型企業の誘致 を目的 とした 自由貿易地区 (マキラ ドワラ)の設置が,
その大 きな原動力 となっているもの と考 えられ るOチ ャンも指摘す るように,
I
メキ シコには第 2表 に掲げ られた もの以外 に小企業 も多数進出 し, また下請企
5
6(
3
2
0
)
第1
4
4巻 第 3・4号
業 も数多 く設立 されてい るところか ら, この裏に示 されたメキシコの工場設立
数は過少評価 されていると考 えるのが妥当であろう9
)
0
1
9
6
0
年代において米国半導体企業 をしてオフシ ョアアセンブ リに大挙 して走
らせるにいたった巨大なコス 1
1低減圧力は, この産業に特有の激 しい競争性に,
1
9
5
0
年代後半に始まる日本企業の トランジスタ輸出攻勢10)
, ならびに以後激化
の一途 をた どることになる日米セ ッ トメーカー問の験烈 な競争が加わることに
よって もた らされた ものである。す なわち,米国のセ ットメーカーは 日本企業
による激 しい輸出攻勢にさらされ る中で, 自社製品の価格競争力をつけるため
環極的にオフショアアセソプ 1
)を展開す る一方,半導体 を含む部品メーカーに
たい しては価格引 き下げ要求を行 った。それによ り,半導体企業には強いコス
ト低減圧力がの しかかることにな り,それが企業間でのいっそ う激 しい価格競
争を誘発す るとともに,諸企業のオフシ ョアアセンブ リを促進す ることにもな
0
6
.
3
0および8
0
7
.
0
0
条項の存在が他の製造企業
った。また米国関税表 における8
と同様 に半導体企業において もそのオフシ ョアアセソプ 1
)の大 きな促進要田 と
なったことはい うまで もない。
9
8
8
年 3月時点での主要半導体企業の海外工場展開を示 した もの
第 3表は,1
である。1
9
7
0
年代初期 と同様,途上国へ展開された諸工場は依然 として後工程
のみを担当す るアセ ンブリ工場が支配的 なもの となっていることが確認できよ
うOまた, これ らアセソブ リ工場 の形態 としては一部 に販売地点型 アセソプ1
)
と呼べるもの も出現す るようになって きているとはいえ11),やは りオフシ ョア
9
) Y.S
.Ch
a
ng
,〔
1
5
〕
,p.2
4
.
9
5
7年 と5
8
年の間にほぼ 5倍に増大 し,5
9
年 と6
0
年の 2年間は米国
1
0
) 日本の トランジスタ生産は1
の トランジスタ生産を上回っていた。 これ らの トランジスタの 3分の 2が ラジオに組み込まれ,
その大部分が輸掛 こ向けられたoK.Fl
a
mm,〔
1
6
〕
,p.6
9
.
l
l
) 途上国に展開された各アセンプ.
)工場の中にはその製品の輸出比率 を把握できる工場 も一部存
在するが,その製品の輸出 ・供給先比率に関してはほとんど把握できないのが実情である。その
ため各海外アセソプ ]
)工場_
をオフシ謹7アセンプ1
)工場 と販売地点型 アセンプ l
)工場 とに正確に
分類することは残念なが ら不可能なことであるD したがって,個 々の工場の性格分類 よりむ しろ
その製品の愉出供給先を指標 としての海外アセ/プ1
)工場全体の性格変遷に焦点を合わせること
で (とりわけ米国企業の場合)
, 多国籍半導体企業の途上国における 海外活動 の性格変遷 を論 じ
ざるを得ないし,またそうしているのだ,とい うことをここで了承 していただかねばなるまい.
/
日米多国籍半導体企業の海外活動における性格変遷 (1)
第 3表
(
3
2
1
)5
7
米国主要半導体企業の海外工場展開 (
1
98
8
年 3月現在)
企 業/所 在 地
1
生産品 目 (
事業内容)
1操業開始年な ど
Te
xa
sl
ns
t
r
ume
nt
s(
TI
)
<東南 アジア ・アジアN IES>
シソガポ-ル
後工程 : トラソジスタ, IC
タイペイ (
台湾)
後工程 :バ イポーラ ・MOSIC
バギオ(フィ1
)ピソ) 後工程
クアラル ンプ-)
レ 後工程
(マ レーシア)
69年 組立輸 出基地
1
9
7
0 , 1
00%輸 出
,
年
1
98
0年
1
9
7
2
年
< 中南米>
サ ンサルバ ドル (エルサルバ ドル :後工程,8
5
年閉鎖),カンピナス (ブラジル :級
工程)
, プェノスアイ レス (アルゼ ンチ ン:後工程)
<欧州>
べ ドフォー ド(
一貫,ス コッ トラン ド:1
9
5
7
年設立), プ 1
)モス (
英国), ニース (
一
9
6
4
年設立), フライジング (
一貫,西独 :1
9
6
5
年設立), オボル ト
貫, フランス :1
)エテ ィ(
一貫, イタ リア :1
96
8
年設立)
(ポル トガル)
, マ ド1
)ッ ド (スペイン), 1
< 日本>
1
9
6
8
年 日本 T I設立,7
1
年完全子会社 に, 8
6
年 6月 メモ 1
)-チ ップ事業本
部移転
鳩 ヶ谷 (
埼玉県)
日出 (
大分県)
美浦 (
茨城県)
一貫生産 ・デザイソセンター :CMO
Sロジック,マイコン, ゲー トア レイ
など
一貫生産,デザインセンター :バイポ
ーラ IC, ロジックア レイ,CMOS
リニア
一貫生産, 開発設計センター :MOS
メモ 1
)- (
2
5
6K, 1MDRAM)
,C
CD
筑波 (
茨城県)
「
筑波研究開発センター」,半導体の研
究開発(
次世代 メモ リー, 自動化など)
<東南 アジア ・アジアN IES>
ソウル (
韓国)
香
港
フ ィ1
)ピソ
ペナ ン(
マ レーシア)
< 中南米>
メキ シコシテ ィ
<欧 州>
t
・クールーズ (フラ
ンス)
イ-ス トキルプライ
ド(スコッ トラン ド)
ミュン-ソ (
西独)
ジュネ-プ(
スイス)
一貫生産 :デ ィスク1
)- ト, アナログ
デ/
ミイス, I
,ジッタIC
一貫生産 :M OSメモ リー, マイクロ
プロセ ッサ,CMOSロジック
後工程 :ロジックIC,ASIC
ヨーロピアン ・デザイ1
/センタ-/級
工程
5
8(
3
2
2
)
< 日本>
第1
4
4巻 第 3・4号
73
年 アル プス電気 と合弁で 日本法人 を設立, 7
5
年完全子会社 に (日本モ ト
p-ラ)
会浄若松 (
福島)
東北 セ ミコソダクタ
1
9
8
0年
一貫生産 :CMOSロジック, メモ リ
ー, マイ コン ・M PU
前工笹 : 1MDRAM,M PU
8
7
年 (
8
8
年夏稼働)
Na
t
i
o
na
lSe
mi
c
o
nduc
t
o
r(
NS)
∴ 芋
∴
ア
ン シ
ピイ ネ湾
リ ド
イ ソ
フタイ台
f≠ 畏
.諾 。.
if
後穣 後(後 後後超
<東南 アジア ・アジアN IES>
シンガポール
香
港
マ レーシ′
ア
1
9
7
0年 (
6
9
年末)
イス ク リー ト, IC)
r
スクT
)- I, モ ジュ- ル)
C:近 い将来前工程 も)
71
年 セ レ ンバ ン ,73
セ レンバ ン組立工場閉鎖) 年べナソ , マ ラ ッカ
197
6年
リー ト)
197
3
年
ィソグ)
1
97
4
年 (8
5
年 閉鎖)
ジックア レイ技術 セ ンタ
〔
Fa
i
r
c
l
l
i
l
d買収 による組立工場群〕
シンガポール, ジャカルタ (イン ドネ シア), ソウル (
韓 国), セブ (フ ィリピン)
<欧 州>
グ1
)-ソノック (ス
コッ トラン ド)
西 ドイ ツ
一貫生産 :リニア IC, メモ 1
)-, マ
イ クロプロセ ッサ
1
96
9
年設立,7
9・8
4
年拡張
< その他 アジア>
イスラエル
E
≡
デ イソセ ンタ- (マイ コンとメモ リ
< 日本> 1
9
8
0
年 ナシ ョナルセ ミコンダクタージャパ ン設立
京
1デザ インセ ソクー (リニア ICのみ)
東
<東南 アジア>
蒙諾
(
S豊 :琵墓i
l
三3-芝(
E
f vIシア)i
< その他 アジア>
イス ラエル
=予 告鮎 詔 .
B
a莞・
p冨 芸 壬 ソ セ ン タ l票
< 中米>
プ-ル ト1
)コ(
米国) 後工程 (システム生産 ・検査):(
8
6年
内に従業員8
7
0
人 の うち4
2
0
人 を レイオ
E
バ ルバ ドス
<欧 州>
イギ リス
ベルギ ー
壬
3
記箸
もi呈基三晶 蒜晶
フ)
後工程 (
組立 ・検査):(
8
6年い っぱい
で従業員全員 を解雇,工場 を閉鎖)
デザインセンター
デザ インセ ンター
< 日本> 1
9
7
6
年 インテル ・ジ ャパ ン設立
つ くば (
茨城県)
lデザ インセ ンター
1
9
81
年
日米多国籍半導体企業の海外活動における性格変遷 (i)
(
3
2
3
)5
9
Adva
nc
e
dMi
c
r
oDe
vi
c
e
s(
AMD)
<東南アジア>
ペナン(
マ レーシア)
慧諾 主題 墓 圭男,
ン豊姦馨㌢ IC製
マニラ(フィリピン) 後工程 : (同 じく専用検査 ラインを設
置)
後工程
後工程, テス トセ ンター
〔
Mo
no
l
i
t
hi
cMe
mo
r
i
e
s買収 (
8
7
年 8月) に伴 う組立工場〕
ペナ ン (マ レーシア)
バ ンコク (タイ)
う/
ソガポール
<欧州>
アイルラン ド
一貫生産 :CMOSIC, テ レコム I 1
9
8
6年,欧州の拠点
C
ペイジソグス トーク
(
英国)
< 日本>
1
9
7
4年 ア ドバ ンス ト・マイクロ ・デバ イセズ設立
】品質管理センター,デザインセンター I
厚木 (
神奈川県)
1
9
8
7
年
Ge
ne
r
a
lI
ns
t
r
ume
nt
<東南 アジア ・アジアN IES>
タイペ イ (台湾)
高雄 (
台湾)
クア ラル ンプール
マ レー シア)
一貫 生産 :デ ィス ク1
)- 7
.デバ イ
後工 程 :マ イ クロ- レク トロ_
ニ クス
バ イス (
CMOSICな ど)
後工 程 :オ プ トエ レク トロニ クス製 品
(
発 光 ダイオ ー ドな ど)
ス
1
9
6
4年
デ
(
<欧 州>
グ レソローテス (ス
コ ッ トラン ド)
闇
,
:
(
ga 箪 言 呈;L7
p;・
誓 7
1
1
9
7
9
年, 自動化を推
進 した新鋭工場
1
9
6
8
年
<米国>
チ ャン ドラー (ア リ 前工 程 :マ イ ク ロエ レク ト p ニ クス
バ イス (
CMOSI C,EPROM ,
ゾナ州)
デ
パ ロアル ト (カ リフ
ォルニア州)
EEPROM な ど)
前工程 :オ プ トエ レ ク T
・p ニ クス製 品
< 日本>
1
9
7
3
年ゼネラル ・イソス ツルメソ ト・インタナシ ョナル設立, 8
6年ゼネラル ・イソ
スツルメソ ト・ジャパ ン設立 (
販売)
Ana
l
o
gDe
vi
c
e
s
<東南アジア>
フ ィリピン
J後工程
`冒芸言 ア ク (アイル l後工程 :CMOSIC
6
0(
3
2
4
)
第1
4
4巻 第 3・4号
ne
r
lI
a
ns
t
r
ume
ntおよび Ame
r
i
c
a
nMi
c
r
o
s
ys
t
e
msには,企業内国際分業 としての
(
注) ㊨ Ge
オフショ77センプ1
)をとりわけ際立たせる意味で,米国内の工場展開 も含めている。両
社は,米国内では前工程を中心に行 う一方,その後工程のほぼすべてを途上国で行ってい
る。
㊤ 販売地点型 アセンブリと呼べる工場 としては, さしあた り Ame
r
i
c
a
nMi
c
r
o
s
ys
tem s
の1
9
7
0
年1
0
月, 日本のLSI市場をねらって設立された韓国工場 (
『日本経済新聞』1
9
70
年1
0月 6日付)が挙げられる (だがこの工場はその後米国への輸出も増やしている)
。一
方, 「
販売地点型」の性格を帯びたアセンブリ工場の代表的なものとして紘,AMDのマ
レーシア ・ペナン工場およびフィT
)ピソ・マニラ工場,あるいはモ トローラの香港工場な
どが挙げられるであろう。
1
3〕各年版,プL
,
スジャーナル詞査部,〔
1
2
〕
,第 3瓢 UNCTC,
(
出所) 産業タイムズ社,〔
〔
2
3
〕
,Ch
a
pt
e
rV,『日本経済新聞』,『日経産業新聞』などの諸資料より作成
アセ ソブ 1
)が そ の主 要 な もの とな っ て い る とい え る1
2
)
0 - 万 そ の進 出 先 と して
970年 代 初 期 に比 べ 東 南 ア ジ ア ・ア ジ ア N IESへ の 工 場 集 中 が と りわ け
は, 1
頗 著 に な って い る。 この 地 域 に 米 国 企 業 が 数 多 く進 出 す る に い た った 諸 要 因 と
して は, まず 第 一 に この 地 域 の 諸 国 政 府 が 輸 出 志 向 型 工 業 化 政 策 に も とづ く先
\ 米国企業の途上国におけるアセンブリ工場の中で 「
販売地点型」 と呼べるものの具体例につい
ては,第 3表を参照のこと。
1
2
) 米国の半導体輸入の中に 8
0
6
.
3
0
/
8
0
7
.
0
0
条項輸入が占める割合をみると, 1
9
7
8
年8
4
%,8
0
年7
6
年7
5
% となってお り (OECD,〔
1
8
〕,p.2
8
)
,米国半導体産業がいかにオフショアアセ
%,8
2
ンプT
)に依存しているかがわかるo
日米多国籍半導体企業の海外活動における性格変遷 (1)
(
3
2
5
) 61
進国のエリク トロニクス企業の誘致 を積極的に行 ったことが挙げ られ る。た と
えば,マレこシアでは1
96
9年に電子工業誘致政策を打ち出 し,71
年にはエレク
トロニクス産業特別奨励法および自由貿易区法 を制定 している。また軍国では
1
9
6
9年に電子工業法 を,7
0年には輸出 自由地域設置法 をそれぞれ制定 し,エレ
ク トロニクス企業の贋 極的誘致 を行 った。 さらに,い くつかの諸国では企業誘
致のた釧 こ米国や欧州に使節団を送 るとい うことまで行 っている18)0 1
9
7
4年 1
2
月に実施 された 日本の
IC貿易の自由化 も, こうした米国企業の動 きを明らか
9
7
3
に促進 している。 このことがその第二の要因 として挙げ られ るであろう。1
年 に途上国への工場設立数が急増 しているが (
第 1表参照), その多 くは有望
な日本市場の開放 に備えてのこの地域への進出であった と考 えられ る14)。す な
わち日本市場の規模 とその成長性に着 目し, この地域を日本市場への製品供給
拠点 とす る動 きが本格化 し始めた とい うことである。また この ことは,米国企
業のこの地域における純粋 なオフシ ョアアセソブリの一部が, しだいに販売地
点塑アセソブ リへ とその性格 を変 え始めた とい うことをも意味 している。その
第三の要因 として, さらに東南アジア .アジアN IES市場 自体の成長性 も挙
げ ることができる15)。 しか し, これはこれか ら以後の米国企業のこの地域への
進出ならびに設備拡張に とっての大 きな要因 となってい くことだろう0
ところで第 4表は,米国半導体企業の輸出および現地生産を通 しての英国,
フランス,西独, 日本の先進 4カ国にたいす る進出状況 (
1
96
8
年および72年)
1
3
) た とえば, シンガポールは1
9
6
5
年マレーシア連邦から離脱-独立 したのも, まもな く経済開発
委員会 (EDB)の使節団を欧米に派遣 している。 また,マレーシアもエ レク トロニクス企業の
誘致のた桝 こ使節団を欧米に派遣 しているoR.Cha
po
nni
e
r
e
,〔
2
1
〕,
pp.1
39
4
0
.
,
00
0万 ドルを見込み, 1
9
7
3
年春にマ レー
1
4) たとえば,NSは IC貿易自由化後の対 日輸出年間 2
シアのペナンおよびマラッカの両地区に IC組立工場を新設 したD また, フェアチ ャイル ドは同
じく年間約 1
,
0
0
0万 ドルの対 日輸出を見込み, 7
3
年春,韓国のソウルに IC組立工場の新設 を開
9
7
3
年 4月 4日付。
始 したo 『日本経済新聞』1
1
5
) 世界半導体市場 (
需要)に占める東南アジア ・アジアNIES市場のシェアは, 1
9
8
5
年6
.
1%
(
『日本経済新聞』1
9
8
6
年 7月1
3日付)
,8
7
年 7% (
『日本経済新聞』1
9
8
8
年 4月1
7日付) と,先進
国セッ トメーカーの相次 ぐ進出を背景に市場規模は拡大傾向にあるO米データクエス ト社社長 ・
フェルナンデス氏は,1
0年後にはアジアN IESを中心 としたN IES半導体市場が欧州市場の
『日経
親横を上回るにいた り, 日本, 米国に次 ぐ世界第 3位の市場に成長すると予測 している (
産業新聞』1
9
8
8
年 4月1
3日付)
。
6
2(
3
2
6
)
第 4表
第1
4
4巻 第 3・
4号
米国半導体企業の英国, フランえ,西独および日本市場への進出
(
1
9
6
8年および1
9
7
2
年)
(
単位 :1
0
0
万 ドル)
t
1
9
6
8
年 (シニア)L
1
9
7
2年 (シニア)
直接的輸出
4カ国における付加価値
アセンブ リ工場受入国 (
途上国)か らの輸出
7
6(57
.
0
%)
1
3( 9
.
5
%)
46(3
3
.
5
%)
1
51(34
.
6
%)
3
3( 7
.
5%)
2
5
3(5
7
.
9
%)
1
37(
1
00
.
0
%) L43
7(
1
00
.
0
%)
(
荏) a
) ( )内は総輸出に占めるシェア
b
) F.Ma
le
r
b
aはオフショアアセンブリと販売地点塑アセンプ7
)との概念上の区別
を明確に行っているわけではない。そのため彼は,本文では途上国のアセンブリ
=場からの輸出のすべてをオフショアアセンプ1
)工場からのものと表現している.
(出所) W.Fi
n
a
n
,I
n
E
e
r
na
t
hnalTr
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h,1
9
7
5
.
Ba
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r
ms
.Ne
F.Ma
le
r
b
a
,〔
1
9
〕
,p.1
1
0
,Ta
b
l
e5
1
0より作成。給輸出に占めるシェ7は筆
者が算出したもの。
を示 した もので あ る。 この裏 か ら, 途上 国 の アセ ンブ リ工場 を経 由 した上 記 4
カ国 へ の輸 出が 1
960年 代後半 か ら1
970年 代 初 め にか け て大 き く増 大 してい るこ
968年 には, 米 国か らの直接 輸 出 (全体 の 57.
0%)
とが 明 らか に確認 で きる。1
が途上 国 の アセ ンブ リ工場 を経 由 した もの (同 33.
5%) よ り多 か ったが,72年
9%) が前者 (同 34.
6%) を大 き く上 回 るにい た り, そ の地位
には後 者 (岡 57.
は ま った く逆 転 して しま ってい る。 この こ とか ら以下 の こ とが い え よ う。 す な
わ ち, 米 国企 業 の途上 国 での海 外 アセ ンブ リが その製 品 の ほぼ全量 を本 国 へ育
輸 出す るよ うな純 粋 なオ フ シ ョアアセ ンブ リば か りで な く, 販 売地 点型 アセ ン
ブ リあ るいは 「販 売地 点塾」 の性格 を帯 びた オ フ シ ョアアセ ンブ リもか な り存
在 し, それ らが増 大 しつ つ あ る とい うこ とで あ る。 だが 日本 に関 して い うな ら
ば, 米 国企 業 の途上 国 (東南 ア ジア ・ア ジア NIES)の アセ ンブ リ工場 を経
由 した対 日輸 出が本格 化 し始 めた のは60年 代末 か らの こ とで あ り,68年 は もち
ろん の こと72年 にお いて もそ うした輸 出は,欧 州諸 国 ほ どには大 きな シ ェア を
6
'
O途 上 国経 由 の対 日輸 出が か な り
占 め るにいた って い なか った と考 え られ る1
1
6
) 米国企業のアジア地域のアセンブリ工場を経由Lた対日輸出は6
7
年時点では姪とんど行われ/
日米多国籍半導体企業の海外活動における性格変遷 (1)
(
3
2
7
)6
3
のシェアを占めるようになるのは,7
4
年の IC貿易の自由化以降のことであろ
う。 ちなみに,1
978年の米国企業のアジア地域子会社経由の対 日 IC輸出はお
300万 ドル と推定 されてお り, それは 日本の全途上国か らの IC輸入の
よそ 3,
4分の 3にあたる額である1
7
)
0
以上,米国半導体企業の途上国 (
地域)への進出をとりわけそのオフシ ョア
アセンブ リに焦点をあてつつ考察 してきた。その結果,米国企業の途上国にお
ける海外アセンブリは,低賃金労働利用による生産 コス ト引 き下げを最大の 目
的 としたオフシ ョアアセソプ 1
)がその支配的形態上 なってお り,その進出先 と
しては東南アジア 丁アジアNIESが最大の地域 となっているとい うこと, そ
してオフシ ョアアセソプ リ工場の 「販売地点型」化が徐々に進行 しつつあると
い うこと′ などが明 らかになったであろう。
さて,米国企業の途上国における事業活動は現在 において も,オフシ ョアア
セソ̀プリが支配的な もの とな・
つているわけであるが,1
9
80年代半ばか ら米国企
業の東南アジア ・アジアNIES
地域での活動古
こ新たな動 きがみ られ るように
なってきた。すなわち, この地域内に ICの回路設計を行 うデザイソ ・センタ
ー
(
D・C) を設立す る企業が相次いでいるとい うこと, さらには大手企業の
中に前工程か らの一貫生産工場 を建設す るところが出現 しているということで
あ'
る。D ・Cの設立は, この地域の拠点 とい うこともあってシンガポールに限
5
年 にGE (
Ge
n
e
r
a
lEl
e
c
t
ic
r
)
,ATT,ヒューレッt
・
パ ッカ
られているが,8
ード (
He
wl
e
t
トPa
c
k
a
r
d
,HP)
,フェアチ ャイル ドなどが設立 している1
8
)
.一貫
\ていなかった (
『日本経済新聞』1
9
6
7
年1
1
月6日付)。それが次第に本格化 してい くのは60年代未
0
年代に入 ってからである。
か らであ り,それ もとりわけ7
1
7
) 冗.Fl
a
Ⅱ1
m, 〔
1
6
〕
,p.85
,no
t
e1
0
5(
BA As
i
aLi
mi
t
e
d の調査にもとづ く)
.各国の貿易統計で
は企業の国籍は一切問われないため,多国籍半導体企業の海外アセンブ リ工場経由の輸出入は正
確には把握できないのが実情であるOただ, 日米間においては日本が原産地主義をとり,製品の
0
%以上残 っている国 (
地域)を原産地 としている (日本電子機械工業会 ・西川隆氏
付加価値が5
からのヒア リングによる)ので米国の対 日輸出統計 (
直接輸出のみ) と日本の対米輸入統計 との
差筋から,米国企業の海外工場経由の対 日輸出の水準を大まかにではあるが知ることもできる。
1
8) 日本貿易振興会 『ジェ トロ自書 ・投資腐』1
9
8
7
年版,1
2
ト2
2ページ。なお,モ トローラは9
0
年
「シT
)コソ.ハーバー」) を建設中であ
本格稼働をめざし,香港に開発 ・製造機能も備えた拠点 (
9
8
7
年1
2月2
2日付)
。
る(
『日経産業新聞』1
L
6
4(
3
2
8
)
第1
4
4巻 第 3・
4号
生 産 工 場 に 関 して は , 1
983年 にす で に伊
∼
SGS-ATES19)が シ ン ガ ポ ー ル に
987
設 立 して い るが これ は あ る意 味 で は例 外 的 な存 在 とみ られ て い た 。 しか し1
年 春 に ,HPが や は りシ ン ガ ポ ー ル で
IC ウニ - - の生 産
(前 工 程 ) を88年 か
0)
, さ らに 88年 に入 って か らは NS
, モ トロ 「 ラ とい
ら開 始 す る計 画 を発 表 し乞
った 大 手 外 販 メ ー カ ー が マ レ ー シ ア に ウェ - 一工 場 を建 設 し一 貫 生 産 体 制 を確
第 5表
年
月
最近 のお もな先進 国 セ ッ トメーカーに よる東南 ア ジアへ の投資
l
企
業
名
【投
資
先
F
備
考
日立製作所 (日)
台
湾
モ ニターデ ィス プ レーの移管
テ ィア ック (日)
台
湾
普及 品 カセ ッ トデ ッキの移管
日立製作所 (日)
三菱 電鍵 (日)
台
湾
シンガポール
アイ ワ (日)
シンガポール
ミニ コンポ生産 を開始
シ ャー プ (日)
マ レー
ーシア
0
%増 産
音響機 器 を6
ケ ンウ ッ ド (日)
シンガポール
音響機 器生産 5倍 化 に着手
日立製作所 (日)
シンガポール
ラジカセ生産 を集紛
ユ ニシス (栄)
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ロジー (栄)
シンガポール
コン ピュータ周辺機器 の生産
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デ ィス ク ドライ ブ生産開始 ,8
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固定 デ ィクス装 置 (
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多様 化 に着手
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HDD生産 開始
シンガポ ール
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5
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最先端 ・大 容 量 3
生産開始 (
予 定)
(出所) 『日本経済新聞』
, 『日経産業新聞』より作成
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年 4月,仏 トムソン・セ ミコ/ダクタ- (
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) 『日経産業新聞』1
9
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7
年 6月 1日付。HPが生産するウ--ーおよび ICはガリウムひ素製の
もので,現在一般的なシ1
)コン製 ICより電子移動速度が 5-6倍という超高速のものであり,
-同社は先端的技術をシンガポール工場に移転することになる。なお,HPは半導体 (IC)を自
社消費用に生産する内製メーカーである。
日米多国籍半導体企業の海外活動 における性碍変遷
(1)
(
3
2
9
) 65
立す ることを発表す る2
1
)
にいた り,米国 (
欧州)企業による途上国での前工程
工場建設-一貫生産体制の確立は もはや例外的なものではな く なって き た。
1
990年代にはかな りの米国企業が,東南アジア ・アジアN IE Sに前工程工場
を建設す ることが予想 され る。
以上のような新たな動 きはオフシ ョアアセソブ リの 「販売地点型」化のいっ
そ うの深化, そしてさらに もうー歩進んで,途上国における活動が地域市場 に
より密着 した一貫生産体制 の確立にまで進みつつあるとい うことを示 している
といえる。 こうした米国企業の動 きをもた らした諸要因としては以下の ものが
挙げ られ る.①東南アジア ・アジアN IE S市場の政大 と独 自性の高ま り①世
界最大の市場へ と成長 した 日本市場 も含めたアジア市場へのアクセス体制強化
特定用途向け) IC化22'
の進展,
の必要性の増大④半導体産業におけるAS (
④進出先での設計 ・技術要員の確保が より容易になったこと, などである。①
は1
985年 9月の G5以来の円高対策ならびに米欧諸国 との貿易摩擦回避 を目的
とした 日本電子機器 メーカーの進出や生産 コス ト低減 と製品供給能力の強化 を
主 目的 とした米欧電子機器 メーカーの進出 ・生産拡大 (
第 5表参照)がその原
動力 となって もた らされた ものであるといえるO以上の米国企業の最近の動 き
は明らかに,
.今までの企業内国際分業の′
くタ-ソを変容 させるも の で あ る。
1
990年代以降に展開され るであろうその新たな企業内国際分業像は,Ⅳ節にお
いて検討す ることにしよう。
(
1
9
88
年 4月2
8日)
(
未完)
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1
9
8
4年O
2
1
) 『日経産業新聞』1
9
8
8
年 2月1
0日付0
2
2
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年版,1
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5
年版,1
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7年版,電波新聞出版部。
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