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仮想世界システム - 東京工業大学 長谷川晶一研究室
仮想世界システム 佐藤誠・長谷川晶一 http://haselab.net/class/vr 成績評価など 最終回の1回前に A3サイズ1枚のポスター発表会 お互いにポスター見て、意見交換 最終回に最終版を提出 内容 新しい体験を提供するシステムについて まだ実現していない体験を提供 実現して体験したい体験を提供 体験内容 その体験の価値、面白さの説明 それを実現するシステムと技術の説明、解説 出席はつけません バーチャルとは? Virtual 「Existing in essence or effect though not in actual fact or form」 (The American Heritage Dictionary) 「みかけや形は原物そのものではないが, 本質的あるいは効果としては現実であり 原物であること」 仮想(Imaginary)ではありません バーチャルとは? Virtual Real Nominal (名目上の) Imaginary (仮想の) バーチャルリアリティのしくみ 人の入力・動作を計測 バーチャル世界をシミュレーション 五感に実世界と同様の刺激を提示 インタフェース 感覚 運動 提示 入力・計測 コンピュータ シミュレ ーション バーチャル世界 外界(まわりの世界)の認識 人は外界を「五感」を通して捉え、世界を認識する。 リアリティは心のなかにある。 リアリティを感じさせたいとき、 五感に提示するは良い方法。 映画Matrixの方法=桶の中の脳も、リアリティを 感じさせるだろう。 人は感覚からスタートして、客観的な世界とそこに存在する自己にたどり 着く(人によっては違うかもしれません) 視覚/聴覚/触覚/嗅覚/味覚 物理世界が存在することを 証明できますか? • • 物理の法則 例:𝑓 = 𝑚𝑎 論理学のトートロジー 例: A → B ⟷ (¬𝐴 ∨ 𝐵) はどちらも同様に証明されていて 真だといえますか? コンピュータ 7 「世界」という言葉 世界は心の外にあるの?中にあるの? 感覚を通して認識した もの(左)だが、 認識 環境の認識(右) 意識 だと思っている。 知覚 感覚 意志 運動 世界? 現実世界 身体 死後、魂が生活すると想定される世界 お伽話の世界 理性 あの世 生まれてから今まで自分 が生きてきた世界 お伽話の登場人物達が生活していると想定される世界 バーチャル世界 世界? 環境 リアリティ実現のために (1)感覚のリアリティ インタフェース 感覚 コンピュータ 提示 運動 計測 入力 シミュレーション バーチャル世界 人の感覚を考えた、よいインタフェース 人は感覚を元に世界を知覚、認識する。 人間の感覚が、実刺激と区別できなければ十分。 物理現象を再現する必要はない。 9 感覚の窓 光線は物理現象、視覚は? 人の視覚は可視光線だけを知覚する → 紫外線や赤外線を視覚提示する必要はない Wikipediaより 10 感覚の窓 RGB:光の三原色 Wikipediaより なぜ3原色なのでしょう? 感覚の窓 Wikipediaより 人の視覚 4種の視細胞 錐体(cone) :中心窩にしかない S (青)錐体 M (緑)錐体 L (赤)錐体 桿体(Rod):周辺に多い 人の視細胞内の視物質の吸収スペクトル S,M,L:錐体 R:桿体 Wikipediaより 12 感覚の窓 = + 両者で3つの錐体の反応が同じ → 人は、区別できない。 光の波長成分を再現する必要はない。 13 波長と色 Yxy表色系 明るさz軸に対応 右図は同じ明るさ 色:x,y軸に対応 三角形の内部は3つの頂 点の波長の光で表せる Yxy表色系 感覚のリアリティを目指して 様々な提示装置(=ディスプレイ) CAVE 視覚・聴覚・嗅覚・味覚 コンピュータ 東工大中本研 嗅覚ディスプレイ Sensics piSight HMD 2200x1200 145°x 60° 力覚・触覚 体勢感覚 東工大 佐藤研 SPIDAR 8本の指に力を提示 筑波大 岩田研 TorusTreadmill リアリティを実現 (2) 認識のリアリティ インタフェース 感覚 コンピュータ 提示 運動 計測 入力 シミュレーション バーチャル世界 ユーザーが認識する世界のリアリティ 世界の形、色、音、触感 → モデリング(モデルの作成とパラメータの計測) 世界の変化・反応 → モデルのシミュレーション 16 モデリングとは、モデルを作ること オブジェクト指向モデリング どんな、機能や要素、相互作用があるのか、表現する(書き表す) 動的システム 微分方程式を使って、表現する 離散システム 離散数学を使って、表現する 確率システム 確率を使って、表現する 表現すること、書き表すこと、 = モデリング 現実のシステムそのものを書ききることはできない。 抽象化(本質を抜きだす)ことが必要。 床との摩擦は? 空気抵抗は? 床は平ら? バネの発熱は? 静電気は? おもりや床の在室? 光は? 𝑥 𝑚 𝑚𝑥 = −𝑘𝑥 切れ目なく沢山の事象がつながる実世界から、本質を抜き出して、表現する。 初期値を求めることも重要 モデリングの例 形状のポリゴンモデル 形状を三角形を並べて表現する。 実物の形状の計測 3次元計測 → 奥行きデータ → メッシュ 株式会社データ・デザイン Artec 3D Scanners のホームページより 完全なモデリングとシミュレーションは可能か? バーチャルリアリティの利用者が望む世界 日常生活の再現(創造、制御、通信、教育、娯楽) お伽の世界は、日常世界に近い 可視化(解明) 街一つを完全にモデリング&シミュレーションできるか? 日常世界で働く物理法則は知られている 運動方程式:剛体、連続体(柔軟物・流体) 化学反応は、分子動力学法が知られている コンピュータのトランジスタ数は3年で4倍になる 速度も、記憶容量もどんどん増している 完全なモデリングとシミュレーションは可能か? 私の考えは、「無理」です。 シミュレーション 1原子のシミュレーションに数バイトのメモリが必要。 実世界の分子動力学法のシミュレーションには、 最低実世界の原子数の数倍のメモリが必要。 クォークと日常空間の比は 1016 もあります Powers of 10 A 1968 American documentary short film written and directed by Ray Eames and her husband, Charles Eames, rereleased in 1977. モデリング 全ての原子の状態(位置・速度)の初期値を調べる術がない 仮にあったとしても、膨大すぎて調べきれない 世界を切り出し、本質を抜き出す必要があると思います。 20 Powers of ten 21 バーチャル世界のモデリング モデリング システムモデリングのモデリングと同じ 現実の世界そのものを書ききることはできない。 抽象化(本質を抜きだす)ことが必要。 切れ目なく沢山の事象がつながる実世界から、本質を抜き 出して、書く。 バーチャル世界の本質は何か? バーチャル世界で何をするかに依存する。 再現したい作業をしている時、作業者はどんな視点で世界を捉 えているのか。 何が本質かは、何をするのかに依存 用途に依存する (創造、制御、通信、教育、娯楽、解明) CAD, CAE, 設計評価 コミュニケーション、テレプレゼンス、遠隔会議、遠隔操作 教育、訓練 インタラクティブアート、エンタテインメント 例: 都市景観設計評価 治安活動のための訓練 重要なこと - 建物の形 - 空の色 無視できること -街の人々 重要なこと -街の人々 -車 無視できること -空の色 23 何が本質かは、何をするのかに依存 照明のシミュレーション http://www2.panasonic.biz/es/lighting/control/lightcont rol/LightControl/LightControl.html デジタル ミケランジェロ プロジェクト http://graphics.stanford.edu/projects/mich/ 組立シミュレーション 何が本質かは、何をするのかに依存 組立可能かどうか確認する http://www.ddd.co.jp/product/smartcollision-sdk/%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC/ る 形が重要、色は適当。 バーチャル世界の時間とシミュレーション バーチャル世界の変化の実現 = 時の流れをつくる 人(ユーザ)の入力に応じて変化する必要がある 入力を限定すれば、提示するモデルを事前に用意しておき、 切り替えて提示することもできる。 入力のバリエーションが多いと、事前に用意しきれない → 時間経過によるモデルの変化を法則に基づいて計算する。 リアルタイムシミュレーション インタラクティブ性が必要。 入力に合わせたシミュレーションをその場ですぐに行い、提示する。 シミュレーションよって入力の自由度が増すことの例: Aspen Movie Map (コンピュータグラフィクスなし) ウォークスルー@佐藤研 (3Dコンピュータグラフィクス) 両手操作環境@佐藤研 1994年 (物理シミュレーションなし) 両手操作環境(長谷川) 2006年 (物理シミュレーションあり) 26 Aspen Movie Map (1978-80 MIT) 27 3Dコンピュータグラフィクスを用いたウォークスルー @佐藤誠研 2005年頃 28 両手直接操作環境 29 物理シミュレーションを用いた両手直接操作環境 by 長谷川@佐藤研 2006 30 シミュレーションの役割 シミュレーション 3Dコンピュータ 技術 グラフィクス 物理 シミュレーション 従来の手法 2Dアニメーション、ビデ スクリプト オディスク プログラム (事前に用意した2次 元画像を表示) モーションデータ 何が自由に変 えられるように なったか 視点 どこにでも移動できる 物体運動 ユーザはどの物体で も操作できる シミュレーションは、多様な入力に応じた変化を実現する → バーチャル世界でできることが増える 31 まとめ 良いVRには 良いインタフェース 良いバーチャル世界 両方が必要 インタフェース 感覚 コンピュータ 提示 運動 計測 入力 シミュレーション バーチャル世界 インタフェース 人の感覚に合った提示装置、人の運動に合った入力装置。 バーチャル世界 本質を切り出してモデリングする 何が本質かは、何がしたいのかに依存する。 再現したい作業をしている時、作業者はどんな視点で世界を捉えているのか。 シミュレーションにより、多様な入力が可能になり、 バーチャル世界でできることが増える 32 1993 ARMS(Artificial Reality Management Systems) ロボット技術研究会(サークル) ARMS(Artificial Reality Management Systems) 稲見昌彦(現 慶応大)、川上直樹(故人 東大) 関口大陸(Point Gray)、森泰樹(View Plus → 起業?) 93年 力覚インタフェースARMS II 力覚レンダリング プログラムを作る d f=knd n 1994 サークルでの活動 94年力覚インタフェースARMS III 特許公開平9-109070 非接触追従型位置計測および力覚提示装置 MIT media lab Fish sensor 1995 1995 サークルでの活動 95 跳躍による全方向移動感覚提示装置 G.O.D Gravity On Demand 1996 サークルでの活動 歩行移動感提示装置 ARMS V 1996 東京工業大学 SPIDAR(1989-) 精密工学研究所 佐藤誠研 1997 Virtual Basket 2000 Virtual Rubik's cube 2004 両手直接操作 2005 Virtual Canoe 2005 Virtual Canoe Hardware 1993 1994 1995 1996 1997 2000 タ 2004 2005 ARMSII リンク・ジンバル機構 ARMSIII パンタグラフ機構・ボールねじ G.O.D. 足場パイプ・電磁ブレーキ・ゴム紐 ARMSV ACサーボモータ・レール・・・ Virtual Basket 大型SPIDAR 8モータ Virtual Rubik’s Cube 小型SPIDAR 24モー 力覚+物理シミュレーション 小型SPIDAR 8モータ Virtual Canoe 大型SPIDAR 8モータ Software 1993 ARMSII 既製品 Sense8 World Tool Kit 1994 ARMSIII 既製品 Sense8 World Tool Kit 1995 G.O.D. 既製品 Super Scape VRT 1996 ARMSV Rend386を参考に自作 1997 Virtual Basket 2000 Virtual Rubik’s Cube Direct3DRM / 専用シミュレーション&力覚制御 2004 力覚+物理シミュレーション 2005 Virtual Canoe Direct3D or OpenGL / 汎用物理シミュレーションSpringhead リアリティの階層 VR リアリティ 感覚のリアリティ 映像のリアリティ 静止画:ポリゴン数,照明モデル... 動画:Mocap,アニメーション... 映画のリアリティ 役者の演技,台詞 舞台設定,ストーリーの自然さ マンガのリアリティ 小説のリアリティ AI 解像度,視野角,色再現性... リアリティの階層 人の心 知覚・認識 行動生成 人の感覚 インタフェース コンピュータ 提示 入力 計測 バーチャル世界 動作制御 インタフェースのリアリティ 感覚とデバイスの層 世界のリアリティ 認識とモデルの層 50 バーチャル VR VRの定義 みかけや形は原物そのものではないが,本質的あるい は効果としては現実であり原物であること バーチャルVRの定義 みかけや形はVRそのものではないが,本質的あるいは 効果としてはVRであること 最小限のVR