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光の伝わり方
第2章 波 光の伝わり方 光の進み方 ① ものの見え方と色 我々が視覚を通して物体の色を感じるとき,光の波長の違いを色の違いとして認識 する.我々が認識できる光を可視光といい,可視光の波長の範囲を可視領域という. 最も短い紫色の波長が約 3.80 10 7 〔m〕であり,それよりも波長の短い光を紫外線 という.また,可視領域の中で最も波長の長い赤色の波長は約 7.70 10 7 〔m〕であ り,それよりも波長の長い光を赤外線という.また,太陽光のように,可視領域の光 をほぼ全て含んだ光を白色光といい,逆に,ある1つの波長だけからなる光を単色光 という. ② 光の速さ 地上で初めて光速度を測定したのはフィゾーであり,1849年,高速回転する歯車 と反射鏡を用いて光速度を求めた.その後,測定方法が工夫され,現在では重要な 物理定数の1つとして,真空中を進む光の速さは以下の値で定められている. c 2.997924585 10 8 〔m/s〕 2 第 34 講 ③ 光の伝わり方 光の反射と屈折 光は横波の一種であり,反射・屈折という波の基本的な性質をもっている.光があ る媒質1から別の媒質2へ進むとき,入射角 i と反射角 r の間には, 反射の法則 i r が成立している.一方,屈折角 j を,それぞれの物質中の光速を v1 , v2 ,波長を λ1 , λ2 とすると, 屈折の法則 n12 sin θ1 v λ 1 1 sin θ 2 v2 λ2 が成り立つ.ここで, n12 は,媒質1に対する媒質2の屈折率であり,これを相対屈折 率と呼ぶ. 図1 また,媒質1,2の絶対屈折率をそれぞれ n1 , n2 とすると,次式が成立する. n12 n2 n1 これより,屈折の法則は次のように書き換えられる. n2 sin θ1 v λ 1 1 n1 sin θ 2 v2 λ2 3 第2章 ④ 波 全反射 絶対屈折率の媒質から小さい媒質へ光が進むとき( n1 n2 ),入射角よりも屈折角が 大きくなる.このとき,入射角を次第に大きくしていくと,屈折角がちょうど 90 に なり,それ以上の入射角では光が屈折して進むことができず,すべて反射される.こ の現象を全反射といい,屈折角が 90 になるときの入射角を臨界角という. 図2 このときの屈折の法則は,臨界角を θ 0 とすると, n2 sin θ 0 である. n1 ⑤ sin 90 光の分散・光のスペクトル 光の屈折率は波長ごとに異なり,短い波長の光は屈折率が大きく,長い波長の光は 屈折率が小さい.細くしぼった白色光をプリズムに入射させると,図3のように,白 色光は様々な色に分かれる.これを光の分散といい,光の波長の順番に並んだ光の帯 を光のスペクトルという.分散は,図3のように,光の屈折を含んだ光学現象であり, 虹が発生する原理は光の分散である. 4 第 34 講 光の伝わり方 図3 ⑥ 光の散乱 光が波長と同程度の粒子に当たって,様々な向きに進んでいく光学現象を光の散乱 という.大気中には酸素や窒素などの気体分子が含まれており,大気を通過する太陽 光はこれらの分子によって散乱される.このとき,波長の短い青い光ほど強く散乱さ れ,波長の長い光は散乱されにくい.昼間の空が青いのは,散乱された青い光が地上 に多く届くためである.一方夕方は,太陽光が通過する大気の層が長くなるため,散 乱されにくい長波長側の赤い光だけが地上に届くためである. ⑦ 偏光 自然の光(自然光)は,光の進行方向に対してあらゆる方向に振動しいる横波であり, 自然光を偏光板を通すと,振動の方向が1つの方向に限定された光にすることができ る.そのような光を偏光とよび,偏光を作り出す板を偏光板とよぶ.偏光板を通過し た自然光は,偏光板の軸と平行な光だけになる.また,振動方向が偏光板の軸と垂直 な光は,偏光板を通過することができない. 5 第2章 波 光の屈折に関する次のような実験をした.図1のように角AOBが直角の,ガラスで できたプリズムを水中に置き,レーザー光線を当てた.レーザー光線は,OA面上の点 Pに入射角 i で入射し,角 r で屈折したあと,OB面上の点Qからプリズムの外に出た. 水に対するガラスの屈折率(相対屈折率)を n とする. (1) 入射角 i ,屈折角 r ,屈折率 n の間にどのような関係が成り立つか. (2) 入射角 i を小さくしていったところ,ある角 i0 になったときに,レーザー光線は OB 面から外へ出なくなった.角 i0 と屈折率 n との間にどんな関係が成り立つか. 6 第 34 講 光の伝わり方 図は,屈折率 n1 の透明物質Aと屈折率 n2 の透明物質Bからなる光ファイバーのモデルを 示している.光は物質A,Bの境界で全反射をくり返して,物質A内を進む.P点において, 空気中から入射角 θ 0 で入射した光は,屈折角 θ1 で屈折し,物質A,Bの境界上のQ点に直進 する.Q点での入射角 φ が臨界角よりも大きいときには全反射する.ここで, n1 > n2 >l で,空気の屈折率を1とする. (1) sin θ1 を, n1 , θ 0 を用いて表すと, sin θ1 = (2) 物質 A の物質 B に対する相対屈折率は, (3) sin φ の値が (4) 90 ° なので, sin φ = cos θ1 となる.また, sin 2 θ1 += θ1 += φ cos 2 θ1 1 である.し ウ イ ア となる. である. より大きいと,点 Q において入射光は全反射される. たがって,光が物質A内を全反射して進んでいく条件を入射角 θ 0 および n1 , n2 を用い て表すと, sin 2 θ 0 < エ となる. 7 第2章 波 虹は,太陽の光が空気中の水滴によって屈折,反射することにより生じる現象である. この現象について考えよう.球形の水滴に太陽からの光が,図のように水平に点 A に入射 したとする.水滴の中心を O とし,水平な線 OF と線 OA のなす角を θ とする,このとき, 点 A への太陽光の入射角(線OAE と太陽光の間の角)は θ である.太陽光は点 A で屈折し て水滴の中を進み,水滴の境界面上の点 B に到達する.空気に対する水の屈折率を n とし, 点 A での屈折角( Ð OAB )を θ ¢ とすると,屈折の法則は (1) と表される.点 B に到達 した光の一部は反射されて水滴の境界面上の点 C に達し,ここで屈折して空気中に出て, 地上の点 D に到達する.点 C への太陽光の入射角( Ð OCB )は (2) である.したがって, この水滴により屈折・反射された太陽光を地上から見る角度( Ð GDC )は (3) となる. 太陽光はいろいろな波長(色)の光を含んでいるが,水の屈折率は波長ごとに異なっている. そのため,点 A での屈折角は波長によって異なってくる.このような現象を (4) とい う.水の屈折率は,可視領域の光の中で紫色の光でもっとも大きく,赤色の光でもっとも 小さい.したがって,この水滴により屈折・反射された光を地上から見る角度( Ð GDC )は, 紫色の光の方が赤色の光より小さくなり,その結果,虹の並びが観測できる. 8 第 34 講 光の伝わり方 9