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農薬散布に伴う周辺作物の農薬残留濃度予測ソフト改訂版の活用法

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農薬散布に伴う周辺作物の農薬残留濃度予測ソフト改訂版の活用法
農薬散布に伴う周辺作物の農薬残留濃度予測ソフト改訂版の活用法
ねらい
ポジティブリスト制度の施行後、農薬の飛散・付着による周辺作物の残留基準超過が大
きな問題となっている。このため、平成17年度に農薬飛散濃度予測ソフトを開発して、周
辺作物への危険性に対する判断技術として普及させたが、特定距離での飛散量しか算出で
きないこと、様々な散布方法に対応できないことなどの課題が残されていた。
そこで、これらの点を改良してソフトの普及を図り、散布ほ場の周辺作物に配慮した防
除指針の作成や、飛散による付着を受けた作物の濃度予測ができるソフトに改良する。
主要成果
1 ソフトの改良点
(1) 従来型は予測地点が7か所に限られていたが、改訂版では散布ほ場から任意地点で
残留濃度予測ができる。
(2) 従来型は、1種類の予測方法をすべての散布方法に適応するというやや煩雑な方法
であったが、改訂版では、パイプダスター、無人ヘリ、スピードスプレーヤ、ブーム
スプレーヤの散布方法ごとに周辺作物の残留濃度予測ができる。
2 予測ソフトの使い方
(1) 「散布作物」、「農薬散布条件1)」、「風速」、「噴頭高」、「ノズルの種類」の情報を入力
する(表1)。ただし、「ノズルの種類」は、実際に散布した散布機および使用したノズ
ルの種類を表4に当てはめ、該当する欄のセル入力言語を入力する。また、噴頭高は、
無人ヘリは3.5m、スピードスプレーヤは7m、その他は実測値を入力する。
(2) 収穫時の残留濃度を予測する場合は、付着作物の情報を入力する(表2)。
(3) (1)の条件をもとにドリフト率予測回帰式(Y=a×Xb)が計算されるので(図1)、
Xの係数(a)および指数(b)をドリフト予測式係数セル(表3)に入力する。
(4) 予測したい地点の距離を「境界からの距離」のセルに入力する(表5)。
(5) 入力した地点において、あらかじめ設定されているモデル作物における飛散直後お
よび収穫時期の残留濃度予測値が表示される(表5)。
(6) 飛散対象作物と形態が類似するモデル作物を選んで残留基準値を比較し、安全性を
確認する。なお、S/W(作物1gあたりの表面積)を推定した場合は、作物可食部の
S/W のセルに入力し予測する(図2)。
脚注1)薬剤名、剤型、成分含有率、希釈倍数、散布量
成果の活用面・利用上の留意事項
1 本ソフトの使用は指導者を対象とし、産地の防除指針の検討、飛散付着事故発生時の
の判断指標として活用する。
2 本ソフトで示される残留濃度は予測濃度であり、安全を担保するものではない。特に、
無人ヘリやスピードスプレーヤは、風速や散布技術、樹木の茂り具合により誤差が大き
くなる場合があるため、注意が必要である(表6、7)。
3 散布ほ場への近接部分(予測ドリフト率30%以上)は、誤差が大きく予測できない。
関連文献等
(1)平成18 年度革新的農業技術習得研修農業機械開発・実用化機種の特徴と活用上の留
意点研修テキスト,独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研
究支援センター,2006.
(2) 「製剤各論 粉剤」「農薬製剤ガイド」,日本農薬学会
(社)日本植物防疫協会発行,10,1997.
農薬製剤・施用法研究会編
試験成績
農薬散布液の飛散・付着による作物の残留濃度予測ソフト
表1 農薬散布条件セル
平成21年12月改良 山口県農林総合技術センター 表4 農薬散布条件セル(表1)におけるノズルの種類の入力言語
散布機具
散布時可食部個体の重量(g/1個体)
5
収穫時可食部個体の重量(g/1個体)
20
成分含有率
25
希釈倍数
8
散布量(L/10a)
0.8
風 速
2
噴頭高(m)
3.5
ノズルの種類
セル入力言語
ブームスプレーヤ 慣行広角ノズル
慣行
ブームスプレーヤ ドリフト低減ノズル(空気非混入タイプ) 低減①
ブームスプレーヤ ドリフト低減ノズル(空気混入タイプ) 低減②
無人ヘリ
慣行広角ノズル
パイプダスター DL粉剤
スピードスプレーヤ 慣行広角ノズル
表3 ドリフト予測式係数セル
回帰式Xの係数
回帰式Xの指数
270.08
-2.0172
無人ヘリ
粉剤
SS
0.5
ドリフト率(%)
散布作物
ムギ
薬 剤 名
チルト乳剤
剤 型
乳剤
散布機具
無人ヘリ
ノズルの種類
無人ヘリ
表2 近接栽培作物状況セル
使用方法
1 表1、表2のセルのセルに情報を入力して下さい。
注1 ノズルの種類のセルには表4のセル入力言語を入力して下さい。
注2 無人ヘリの噴頭高は3.5mを入力して下さい。
注3 スピードスプレーヤの噴頭高は7mを入力して下さい。
注4 表2は、必要なければ省力しても差し支えありません。
2 表3のセルに図1に表示された回帰式の係数を入力します。
3 表5にモデル作物の散布直後および収穫時期の残留濃度予測値が表示されます。
注1 予測したい地点の距離を「境界からの距離」のセルに入力して下さい。
注2 S/Wが推定できる場合は、「作物可食部のS/W」のセルに入力して下さい。
4 目的作物と形態が類似しているモデル作物の残留濃度と基準値と比較して安全を確認します。
0.4
y = 270.08x-2.0172
R2 = 0.9782
0.3
0.2
0.1
0.0
0
50
100
150
200
飛散距離(m)
図1 ドリフト率予測回帰式
表5 散布直後および収穫期の残留濃度予測値
(
)
散
布
機
具
ド
%リ
フ
ト
率
)
対
象
作
物
モ デ ル 作 物 残 留 濃 度 推 定 値(ppm)
ウ夏
ホ
ウ
レ
ン
ソ
フ
ダ
ン
ソ
ウ
葉
わ
さ
び
チ
ン
ゲ
ン
サ
イ
穫
時
表7 無人ヘリ散布におけるドリフト調査事例との比較
飛散距離 5m
10m 20m 30m 50m
事例1
実測値 4.80 1.74 0.25 0.13
-
風速0.1m 予測値
4.29 1.06 0.26 0.12 0.04
事例2
実測値 0.35 0.18 0.08 0.04 0.01
風速0.7m 予測値
5.95 1.47 0.36 0.16 0.06
事例3
実測値 4.89 1.80 0.39 0.24 0.14
風速0.75m 予測値
6.11 1.51 0.37 0.16 0.06
事例4
実測値 9.30 3.90 6.70 4.50
-
風速2m 予測値 10.51 2.60 0.64 0.28 0.10
研究年度
研究課題名
担
当
平成19年~21年
ポジティブリスト対策
農業技術部資源循環研究室
50
45
40
S/W (cm 2/1g)
表6 ブームスプレーヤにおけるドリフト調査事例との比較
飛散距離 3m
5m
10m 15m 20m
事例1
実測値 0.08 0.30 0.013 0.010 0.005
風速1m 予測値 0.07 0.03 0.006 0.003 0.002
事例2
実測値 0.08 0.06 0.03 0.021 0.011
風速1.7m 予測値 0.21 0.08 0.02 0.008 0.005
事例3
実測値 0.03 0.02 0.008 0.000 0.004
風速2.1m 予測値 0.03 0.01 0.003 0.001 0.001
事例4
実測値 0.21 0.14 0.07 0.05 0.02
風速2.8m 予測値 0.59 0.21 0.05 0.02 0.01
35
30
25
20
15
10
5
ブ
ド
ウ
巨
峰
0.79
0.19
0.05
0.02
0.01
0.00
0.00
0.20
0.05
0.01
0.01
0.00
0.00
0.00
6.0
0.55
0.14
0.03
0.01
0.01
0.00
0.00
0.14
0.03
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
4.2
0.30
0.07
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.07
0.02
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
2.27
ピ
キ
マ
ン
ウ
リ
0.34
0.08
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.08
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
2.6
0.22
0.05
0.01
0.01
0.00
0.00
0.00
0.05
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
1.7
ト
マ
ト
リ
ン
ゴ
シ
ロ
ウ
リ
0.14
0.03
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.03
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
1.03
0.10
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.75
0.08
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.63
キャベツ
シロウリ
リンゴふじ
モモ
ハクサイ
トマト
キュウリ
結球レタス
ビワ
ブドウ巨峰
ピーマン
グミ
オクラ
ユスラウメ
はなっこりー
リーフレタス
葉ネギ
チンゲンサイ
葉ワサビ
フダンソウ
ホウレンソウ
25
8
5.0 10.51
4.07
3.42
2.28
1.72
25
8
10.0
2.60
1.01
0.84
0.56
0.43
無
25
8
20.0
0.64
0.25
0.21
0.14
0.11
乳
ム
人
25
8
30.0
0.28
0.11
0.09
0.06
0.05
剤
ギ
ヘ
25
8
50.0
0.10
0.04
0.03
0.02
0.02
リ
25
8
75.0
0.04
0.02
0.01
0.01
0.01
25
8
100.0
0.02
0.01
0.01
0.01
0.00
25
8
5.0 10.51
1.02
0.85
0.57
0.43
25
8
10.0
2.60
0.25
0.21
0.14
0.11
チ
無
ル
25
8
20.0
0.64
0.06
0.05
0.03
0.03
乳
ム
人
ト
25
8
30.0
0.28
0.03
0.02
0.02
0.01
剤
ギ
ヘ
乳
25
8
40.0
0.16
0.02
0.01
0.01
0.01
リ
剤
25
8
50.0
0.10
0.01
0.01
0.01
0.00
25
8
100.0
0.02
0.00
0.00
0.00
0.00
作物可食部のS/W値(作物1g当たりの表面積(cm2))
44
37
25
19
※ 収穫時の残留予測濃度は、農薬の分解や雨による流亡がなく、肥大成長のみによる濃度変化を計算した値
チ
ル
ト
乳
剤
こ
り
オ
ク
ラ
は
な
ュ
希
釈
倍
数
ー
型
率成
%分
含
有
ー
散
布
直
後
収
剤
っ
薬
剤
名
離境
界
mか
ら
の
距
(
農 薬 散 布 方 法
0
図2 作物の1g当たりの表面積(S/W)の違い
渡辺卓弘・明石義哉
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