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最近の米国経済について
情 報 報 告 シカゴ ●最近の米国経済について ○2016年1月の米小売売上高は前月比 0.2%増の 4,499 億ドル 2月12日、米商務省は2016年1月の小売売上高(速報)を発表した。1月の小売売上高 (季節調整値)は、4,499 億ドル(前月比 0.2%増)となった。労働市場の改善が続いていること が消費を下支えしており、市場予測(ブルームバーグ調べ)の 0.1%増を上回った。なお、12 月の小売売上高は、4,481 億ドル(前月比 0.1%減)から 4,491 億ドル(0.2%増)に上方修正さ れた。 業種別に売上高をみると、無店舗小売り(前月比 1.6%増、422 億ドル)、自動車・同部品(同 0.6%増、957 億ドル)、総合小売り(同 0.8%増、565 億ドル)と全体の押し上げ要因となった。 一方、ガソリンスタンド(3.1%減、328 億ドル) 、フードサービス(0.5%減、535 億ドル)、スポ ーツ・娯楽品・書籍(2.1%減、76 億ドル)などは落ち込みが目立った。特にガソリンスタンド は、ガソリン価格が金融危機以降で最低水準となっていることなどを背景に大きな押し下げ要因 となった。 ○2016年1月の米消費者マインドは前月より 1.8 ポイント上昇 1月26日、米コンファレンスボードは1月の消費者信頼感指数(※)を発表した。1月の消 費者信頼感指数は 98.1(前月比 1.8 ポイント増)となり、市場予測の 96.5(ブルームバーグ調べ) を上回った。この結果に関してコンファレンスボードの経済指標ディレクターのリン・フランコ 氏は「現在の景況感に対する消費者の見方は横ばい、6 ヵ月先の見通しは緩やかな改善を示した。 現時点では、消費者は金融市場の不安定さが経済に悪影響を与えるとは考えていない」とコメン トしている。 (※)全米 5,000 世帯を対象に毎月、経済状態や雇用情勢についてアンケートし、結果を指数化 したもの。現況指数は経済、雇用の 2 項目、期待指数は 6 ヵ月後の経済、雇用、所得の 3 項目 の平均値で、信頼感指数は両者を合わせた 5 項目の平均値。 ○2015年12月の米貿易赤字は前月比 2.7%増の 434 億ドル 2月5日、米商務省は2015年12月の貿易統計を発表した。輸出は(国際収支ベース、季 節調整済み)は 1,815 億ドル(前月比 0.3%減、前年同月比 6.9%減) 、輸入は 2,249 億ドル(前 月比 0.3%増、前年同月比 6.5%減)となり、貿易赤字は 434 億ドル(前月比 2.7%増、前年同月 比 4.8%減)と増加した。輸出額の減少の背景には、中国をはじめ一部の主要相手国の景気低迷 や、貿易相手国通貨に対するドル高などがあるとみられる。なお、11月の貿易赤字は、424 億 ドルから 422 億ドルに下方修正された。 財貿易を主要財別(通関ベース、季節調整済み)にみると、輸出は消費財以外の全てでマイナ スとなった。特に、自動車・同部品(前月比 4.4%減、123 億ドル)の落ち込んだ他、工業用原材 料(1.3%減、324 億ドル)、食料品・飲料(3.6%減、99 億ドル)、資本財(0.8%減、440 億ドル) ― 70 ― 情報報告 シカゴ も下落した。一方、消費財は 5.9%増の 168 億ドルとなり、主に芸術品、宝飾品、玩具などが伸 びを押し上げた。 国・地域別に財貿易(通関ベース、季節調整前)を前年同月比でみると、輸出入ともに欧州の 一部の国を除き、ほぼ全ての主要相手国で減少した。中でも、カナダや中国などの減少幅が大き かった。カナダ向けの減少は、輸出入ともに、輸出入価格が 5 割近くまで下落した原油が主な押 し下げ要因となった。中国については、輸出では大豆(39.0%減)と自動車(34.1%減)がそれ ぞれ大幅に減少した。輸入では携帯電話、パソコンがそれぞれ 30.4%減 (全体の減少額の約 7 割)、 10.5%減となったことが影響した。 対日貿易では、輸出は、航空機(48.4%減)、電気機器(20.5%減)の減少が影響し、全体で 17.5%減となった。電気機器は、航空用無線機などが落ち込んだ。輸入は、機械類、電気機器が それぞれ 11.0%減、5.6%減と減少した一方、自動車は 11.3%増と大幅増になったことから、全 体で 0.9%減にとどまった。機械類に関しては、ブルドーザーなどの工事車両、電気機器では集 積回路などが押し下げ要因となった。 2015 年 12 月の輸入増には、財別で自動車が大きく寄与した。中でもメキシコからの輸入増が 目立つ。12 月は、自動車の輸入増加分の 25%以上をメキシコが占めており、 とりわけ排気量 3000cc 以下の乗用車が、43.3%増と大幅な伸びになった。米国での需要増を受け、日系や米系メーカー がメキシコでの生産台数を増やしており、近年では米国で販売される自動車の原産国としてシェ アを伸ばしている ○2016年2月の米新車販売台数は前年同月比 6.9%増の約 134 万台 3月1日、オートデータは、2016年2月の米新車販売台数は 134 万 4,225 台(前年同月比 6.9%増)と発表した。季節調整済みの年率換算台数は 1,754 万台となり、2 月としては2000 年以来の最高となった。1 月の落ち込みの反動と、メーカーが提供するインセンティブの増加に 加え、アメリカンフットボールの決勝戦であるスーパーボウルでの宣伝効果などが販売増に寄与 したことなどが要因と報じられている。トゥルーカー・ドット・コムによると、2 月のインセン ティブは前年同月比 11.0%増の 2,975 ドルとなり、11 ヵ月連続で増加した。 車種別では、小型トラックが前年同月比 12.8%増と大幅に伸び、押し上げ要因になった。好調 なスポーツ用多目的車(SUV、スポーツワゴンを含む)の 12.4%増に加えて、ミニバン・フルサ イズバンが 32.6%増と大きく伸びた。ミニバン、小型バン、大型バンはいずれも 2 桁増となり、 日系、米系メーカーともに好調だった。 各メーカーを販売台数順にみると、ゼネラルモーターズ(GM)は、多くのメーカーが好調な中、 前年同月比 1.5%減の 22 万 7,825 台とマイナスとなった。シボレーブランドの大型ピックアップ トラック「シルベラード」 (5.0%減)や、クロスオーバーSUV(以下、CUV) 「エクイノックス」 (8.7% 減)など小型トラック部門の人気モデルの落ち込みが影響した。 フォードは、ハイエンド向け新シリーズが投入された CUV「エッジ」 (90.9%増)や、ピックア ップトラック「F シリーズ」(9.9%増)、大型バン「トランジット」(70.3%増)など小型トラッ ク部門が押し上げ、全体で 20.2%増の 21 万 6,045 台と大幅に増加した。 トヨタは、CUV「RAV4」 (16.3%増)と SUV「4 ランナー」 (32.0%増)などに牽引され、4.1%増 ― 71 ― 情報報告 シカゴ の 18 万 7,954 台と伸びた。中でも「RAV4」が好調で、2 月の販売台数としては過去最高を記録し た。 フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)は 11.8%増の 18 万 2,879 台となった。2 月の販売台数としては過去 10 年間で最高で、前年同月比増は 71 ヵ月連続となった。前月同様に、 好調なジープブランド(22.6%増)と大型ピックアップトラックや商用バンが伸びたラムブラン ド(27.4%増)が押し上げた形だ。ラムブランドのロバート・ヘグブルーム社長兼最高経営責任 者(CEO)はデトロイトフリープレスのインタビュー(2 月 27 日)で、商業用利用を目的とした バンのシェア拡大を目指す方針だと述べている。 日産は、小型乗用車「セントラ」 (34.2%増)と、CUV「ムラーノ」 (85.9%増)などが牽引し、 10.5%増の 13 万 911 台となった。 ホンダは、12.8%増の 11 万 8,985 台となり、2 月の販売台数としては過去最高を記録した。2015 年秋に発表された小型乗用車の新型「シビック」が 31.7%増、中型乗用車「アコード」が 19.3% 増と、伸びを牽引した。 現代は、新型 CUV「ツーソン」 (89.6%増)が大幅に伸び、1.0%増の 5 万 3,009 台となった。 起亜は、小型乗用車「フォルテ」 (47.5%増)やミニバン「セドナ」 (68.8%増)が好調で、13.0% 増の 4 万 9,737 台と大きく伸びた。 スバルは、1.6%増の 4 万 2,011 台となった。2 月の販売台数としては過去最高で、前年同月比 増は 51 ヵ月連続と記録を更新するなど引き続き好調だった。CUV「フォレスター」 (6.8%増)と 「アウトバック」(2.8%増)が伸びを押し上げた。 VW は、不正ソフト搭載モデルの販売停止を受け、8.7%減の 3 万 4,186 台と 3 ヵ月連続で減少 した。同社は 2 月 2 日、カリフォルニア州大気資源局(CARB)に対し、対象車のうち 3000cc モデ ル 8 万台のリコール計画案を提出。これを受けて、CARB は内容の検討を始めると発表した(同局 プレスリリース 2 月 2 日)。同計画案は環境保護庁(EPA)にも提出されているが、3 月 2 日の段 階でいずれの当局からも承認されていない。なお、2000cc 車に関しては、1 月にリコール計画案 が出されたものの、具体性に欠けることを理由に当局から却下されている。 また、2016 年の販売台数予測に関しては、2010 年以降続いた伸びが一服し、2015 年とほぼ同 水準になるとみる専門家が多い。金融危機以降の繰り越し需要への供給が、2015 年でほぼ満たさ れたとの判断が背景にある。ケリーブルーブックは「2016 年の販売市場は、金利引き上げの影響 と景気の動向次第」としながらも、2015 年と変わらずの 1,750 万台から 1,800 万台の範囲を予測 している。 ― 72 ―