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記述的規範情報がシートベルトの着用に与える影響

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記述的規範情報がシートベルトの着用に与える影響
記述的規範情報がシートベルトの着用に与える影響
-記述的規範情報の準拠集団の違いが与える影響について-
○高木 彩1・小池 はるか 2・安藤 雅和 3・北折 充隆 4・
13
( 千葉工業大学社会システム科学部・2高田短期大学子ども学科・4 金城学院大学人間科学部)
Key words: 記述的規範,準拠集団,交通安全
The Effect of Printed Descriptive Norm Information on Safety Belt Use by Backseat Passengers
Aya TAKAGI1, Haruka KOIKE2, Masakazu ANDO3 and Mitsutaka KITAORI4
1, 3
( Chiba Institute of Technology, 2Takada Junior College, 4Kinjo Gakuin University)
Key words: descriptive norm, reference group, road safety
本研究では、文章と図で提示された記述的規範情報が、後
席のベルト着用行動に与える影響を検討する。行為者に知覚
された社会規範は、ベルト着用頻度や行動意図を促進する効
果が確認されており、その中でも記述的規範の効果が頑健に
認められている(高木・小池・北折, 2009 他)。だが、後席の着
用率の全国平均は 33.1%と低い(日本自動車連盟, 2011)。その
ため、この着用率を記述的規範情報として提示すると、着用
率の低下を招く恐れがある。しかし、後席のベルト着用の定
着 状 況 は 、 都 道 府 県 に よ っ て 異 な る (R=14.7%( 宮 崎 県 ) ~
56.1%(三重県))。もし着用率の高い三重県の記述的規範情報
の提示が、他県在住者にも影響を与えるのであれば、最も着
用が定着している県の情報を利用した方がよいと言える。だ
が、記述的規範の操作が文章や図で提示する情報であること
や、県別のカテゴリーが顕現的な場合には、他県の情報は外
集団の規範情報とみなされる可能性を考えると、当該操作が
どの程度影響力を持ちうるのかは不明である。そこで本研究
は、記述的規範情報の準拠集団を操作し、広範な記述的規範
(全国の着用率)とする場合と、他県の着用率を記述的規範情
報として提示する場合に、着用意図や着用行動に影響を及ぼ
しうるのかを検討する。もし、他県の情報も全国の着用率と
同じ効果を持つのであれば、準拠集団の差異(他県, 全国)の効
果は認められず、記述的規範情報の主効果のみ認められるだ
ろう。反対に、他県の情報が着用に影響を与えない場合は、
全国条件でのみ、記述的規範の高低の効果が認められるだろ
う。加えて、先行研究の知見をふまえ、行為者が着用をどの
程度重要視するかという程度(重要度)により調整される可能
性も検討する。
方 法
【実験参加者】(株)日本リサーチセンターの有するパネルを
用いた。実験参加者は、世帯で車を所有し、三重県在住経験
者を除いた全国の成人男女であった。年代、性別、地域が均
等になるよう抽出し、3 週間後の追跡調査まで全てに協力を
得られた 466 名(男性 236 名, 女性 230 名)を分析対象とした。
【実験計画】2 記述的規範情報
(着用率高 56%, 着用率低 33%)
×2(記述的規範情報の準拠集団(全国, 三重県))。いずれも被
験者間要因であった。
【手続き】以下の手続きは全て Web 調査の形式で実施した。
まず、
「文章理解と記憶に関わる予備実験」と称して、記憶対
象として調査データ結果を示し、その中で記述的規範情報を
提示した。提示時間は統制せず、実験参加者が任意に時間設
定できるようになっていた。その直後に再認テストを実施し、
操作チェックとして、記述的規範情報、準拠集団、調査の信
頼度(その調査データを信頼できると思う程度)に回答を求め
た。この直後に別の研究として「交通に関する意識調査」を
提示し、その中で、重要度や後席の着用意図(3 項目 7 件法)
などを測定した。その 3 週間後、同じ実験参加者を対象に、
この 3 週間の実際の後席のベルト着用回数への回答を求めた。
結果と考察
操作チェック項目で全てに正答し、信頼できるとした回答
者のみを実験操作に成功した実験参加者(n=98, 全体の 21%)
として分析した。記述的規範情報と準拠集団が閲覧後の着用
回数に及ぼす影響を、階層的重回帰分析で検討した。目的変
数を情報提示後 3 週間の後席ベルト着用回数とし、説明変数
として記述的規範情報、準拠集団、重要度とその交互作用項
を投入した。その結果、記述的規範の主効果(β=.23, p<.05)、
重要度の主効果(β=.27, p<.01)と記述的規範×準拠集団の交
互作用効果(β=-.22, p<.05)が有意であった(Figure 1)。記述的
規範の主効果に関しては、高い着用率を提示された条件では、
低い着用率を提示された条件よりも着用回数が多かった。ま
た、重要度の主効果に関しては、後席のベルト着用を重要と
考える人は、そうでない人よりも着用回数が多かった。ただ
し、記述的規範の主効果は、記述的規範×準拠集団の交互作
用効果により制限されていた。下位検定を行ったところ、三
重県での記述的規範情報を提示された場合には、高い着用率
を提示された条件よりも、低い着用率を提示された条件の方
が、着用回数は多かった(β=.45, p<.01)。また、記述的規範と
して高い着用率を提示された場合には、全国平均の着用率と
して提示された条件よりも、三重県の着用率として提示され
た条件の方が、着用回数は多かった(β=-.36, p<.05)。以上の
結果から、現実場面で着用率向上を目指す場合には、全国平
均の情報よりも、最も着用率が高い県の情報の提示が、有効
であることが示唆された。そして、この記述的規範情報の効
果は、重要度によって調整されてはいなかったため、情報の
受け手が後席のベルト着用を重要視するか否かに関係なく、
着用率の向上を期待できると思われる。
ただし、本研究では、
条件操作が成功した実験参加者数が少なかったため、今後、
実験操作などを見直した再検討が必要である。
0.6
記述(着用率高)
記述(着用率低)
0.5
後
席
ベ
ル
ト
着
用
回
数
0.4
0.3
0.2
0.1
0
-0.1
-0.2
-0.3
三重県
全国
準拠集団
Figure 1 記述的規範×準拠集団の交互作用効果
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