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エーデルで工夫したこと

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エーデルで工夫したこと
エーデルで工夫したこと
はじめ に
2014 年 12 月 17 日 、私は 首相 官邸で「 内閣府バ リアフリー ・ユニバ ーサルデザ イン推進 功労
者表 彰 」 の特 命 担当 大 臣表 彰 優良 賞 を授 賞 し ま した 。 その 理由 は 、私 が 、 盲学 校に 勤めてい た
1991 年 に 図 形 を 点 訳 す る ソ フ ト 「 エ ー デ ル 」 を 開 発 し 、 以 来 今 日 ま で 改 良 を 続 け な が ら 、 こ
れを 無 償 で提 供 して き たこ と です 。 現在 で は エ ーデ ル は全 国に 普 及し 、 点 訳ボ ラン ティアの 方
々に よ る 点字 教 科書 の 製作 な どに 活 用さ れ て い ます 。 最近 では 、 筑波 技 術 大学 の率 いるグル ー
プが「チ ャート式 基礎 からの数 学」ⅠA ・Ⅱ B・ⅢC のす べてを点 訳しました 。この 3 冊 が
点字版で は 200 冊 余り、 計 1 万 5 千ペー ジにもな ります。た いへんな 労作ですが 、グラフ や図
をたくさ ん含んで おり、エ ーデ ルがなけ ればで きな かっ た事 業でした 。
エーデ ルは、MS-DOS の 時代か ら 4 半 世紀近く も改良を続 けてきた 結果、現在 では図形 だけ
でなく文 章も点訳 すること がで き、点訳 のあら ゆる ニー ズに 応えるも のとなって います。
図1
エーデ ルの 画面
作 図 の モ ー ド に は 、 フ リ ー ハ ン ド の 他 、 楕 円 や 長 方 形 、 及 び 、 各 種 関 数 の グ ラ フ な ど 、 20 種
類以 上 が あり ま す。 そ れを い ろい ろ に変 形 ・ 編 集す る 機能 もた く さん あ り ます 。ま た、文章 に
ついては 、3 種 類の入 力方法を もってお り、切り 取り・コ ピー・貼 り付けや検 索・置換 の機能、
及び 、 校 正作 業 を支 援 する 独 特の 機 能な ど も 備 えて い ます 。点 字 を知 ら な くて も、 ローマ字 入
力を す る とエ ー デル が 点字 に 変換 し てく れ ま す 。こ う した エー デ ルの 機 能 のす べて をここで 説
明 す る 余 裕 は あ り ま せ ん が 、 エ ー デ ル は 、 点 訳 者 に と っ て 「 痒 い と こ ろ に 手 が 届 く 」、 図 入 り
点訳本の 製作にな くてはな らな い、唯一 無比の ツー ルと なっ ています 。(図1)
私 が エ ーデ ル を作 ろ うと 思 った き っか け は 、 鳴門 教 育大 学大 学 院を 卒 業 して 盲学 校で勤務 す
るこ と に なり 、 全盲 の 男子 生 徒ひ と りの ク ラ ス を担 任 する こと に なっ た こ とで した 。数学の 授
業は 、 文 部省 ( 当時 ) が提 供 する 点 字教 科 書 を 使っ て 問題 なく で きま し た が、 その 点字教科 書
に載 っ て いる よ うな 点 図( 点 字と 同 じ凸 点 の 列 で描 い た図 やグ ラ フ) を 現 場の 教員 が製作す る
ことはで きません でしたの で、例えば、テ ストに図 形問題を出 題するこ とは難し かったので す。
当時 、 盲 学校 で はす で にコ ン ピュ ー タの 利 用 が 進ん で おり 、文 章 のパ ソ コ ン点 訳も 始まって い
て、 パ ソ コン で 動か す 点字 プ リン タ が活 躍 し て いま し た。 ある と き、 ふ と 点字 プリ ンタの説 明
書を 見 る と、 点 図を 描 く「 プ ロッ タ モー ド 」 と いう も のが ある と 書い て あ りま した 。読んで み
ると 、 確 かに 点 図を 打 てる の です が 、ひ と つ の 点図 を 製作 する た めに ひ と つの プロ グラムを 組
まなけれ ばならな いことが 分か りました 。この ため 、誰もこれ を利用し ていなか ったのでし た。
そこ で 、 私は 、 パソ コ ンの 画 面上 に マウ ス で 図 を描 く と、 それ を その 通 り に点 字プ リンタで 印
刷 す る パ ソ コ ン ソ フ ト を 作 ろ う と 考 え ま し た 。 こ う し て 、「 絵 が 出 る 」 エ ー デ ル が 誕 生 し ま し
た。
私 に ど うし て その プ ログ ラ ミン グ がで き た の かと い うと 、鳴 門 教育 大 学 大学 院時 代にプロ グ
ラミ ン グ を自 学 自習 し ていたから です。当 時、自然 棟7階には コンピュ ータ室が あり、C 言 語
のソフト もありま した。私 は Basic
は 少し かじってい ましたが 、「こ の際、本 格的な C 言語 を
勉強 し よ う」 と 思い 立 ったのでし た。C 言 語の開 発者カーニ ハンとリ ッチーによ る『プロ グラ
ミ ン グ 言 語 C』 を 読 み 、 小 さ な テ ス ト プ ロ グ ラ ム を 作 っ た り し ま し た 。 盲 学 校 で は 、 こ れ を
実際 の 課 題に 応 用し た いと 考 えま し た。 し か し 、も ち ろん まっ た くの 専 門 外で すの で、現実 の
作業は試 行錯誤の 連続でし た。例え ば、点 字プリン タに信号 を送るとき のプロト コルは RS-232C
というのですが、そんなものは聞いたこともないし、普通の C 言語の教科書には載っていま
せん 。 ま た、 プ ログ ラ ミン グ には ミ スを 修 正 す る「 デ バッ グ」 が 付き 物 で すが 、こ れがなか な
か難 し い ので す 。致 命 的な エ ラー が 起き て も 、 その 原 因が 分か ら ない こ と が度 々で した。そ れ
に集 中 す ると 、 周り が 見え な くな り 、上 の 空 に なっ て 家族 との コ ミュ ニ ケ ーシ ョン に問題が 発
生す る の でし た 。し か し、 そ の度 に ミス の 原 因 を突 き 止め て解 決 し、 ま た 、た くさ んの創意 と
工夫を重 ねて、エ ーデルを 成長 させてき ました 。
以下で は、エー デルのプ ログ ラミング におけ る工 夫の いく つかにつ いて述べま す。
1.図形 を等間隔 の点列で 描く
点 図 は 一定 の 間隔 を とっ た 凸点 の 列で 描 き ま す。 例 えば 、フ リ ーハ ン ド で曲 線を 描く場合 、
マウ ス を ドラ ッ グし ま すが 、 直前 に 打っ た 点 か らの 距 離を 絶え ず 計算 し て おり 、そ れが設定 し
た間 隔 の 値に な った 瞬 間に 次 の点 を 打ち ま す 。 これ は とく に問 題 あり ま せ んが 、例 えば、1 本
の線 分 を 描く 場 合は 問 題が 起 きま す 。線 分 を 描 く場 合 、始 点と 終 点を 指 定 しま すが 、その間 の
距離 は 設 定し た 間隔 の 値の 整 数倍 と は限 り ま せ ん。 従 って 、始 点 から 等 間 隔に 点を 打ってい く
と、 終 点 のと こ ろで 点 の間 隔 が違 っ てし ま い ま す。 そ れで 、で き るだ け 等 間隔 にし 、かつ、 始
点と終点 にも打点 するため に次 のように してい ます 。
① 線分の距離(実数)を、設定している間隔の値(整数)で割った商(整数)を求める。
② 線分の 距離(実数 )を、① の商(整 数)で割 り、そ の答え(実数 )を実 際の間隔 とする。
この 実 数 値の 間 隔を と って 線 分を 描 くと 、 終 点 のと こ ろだ け間 隔 が違 う と いう こと はなくな り
ます 。 も ちろ ん 、パ ソ コン の 画面 は 正方 形 の ピ クセ ル で構 成さ れ てお り 、 打点 する 位置の座 標
はす べ て 整数 な ので 、 実際 に 打点 す る位 置 の 座 標は 上 記で 求め た 値を 丸 め たも のに なります 。
円 を 描 く場 合 は、 極 座標 を 使っ て 計算 し 、 等 間隔 に する ため の 角度 間 隔 を、 線分 の場合と 同
様にして 求めます 。つまり 、
① 円の全 周( 実数) を、設定 している 間隔 の値(整 数)で割っ た商 (整 数)を求 める。
② 全 周 に 相 当 す る 角 度 2 π ( 実 数 ) を 、 ① の 商 ( 整 数 ) で 割り 、 そ の答 え (実 数 )を 等 間
隔に 相当する 角度間隔 (一 定値)と する。
しか し 、 楕円 で はこ の よう な 一定 値 の角 度 間 隔 を求 め るこ とは で きま せ ん 。楕 円の 周上で等 間
隔に 打 点 する た めの 角 度間 隔 は絶 え ず変 化 す る から で す。 それ で 、楕 円 に つい ては 、数年前 ま
で、 フ リ ーハ ン ドの 曲 線と 同 様の 方 法で 、 始 点 (右 端 の点 )か ら 等間 隔 を とっ て描 いていま し
た。 こ の ため 、 終点 ( 右端 の 点) の とこ ろ で は 間隔 が 違っ てし ま って い ま した 。こ のことを 修
正し て ほ しい と いう 要 望が 点 訳ボ ラ ンテ ィ ア の 方か ら 寄せ られ ま した が 、 なか なか 解決法は 思
いつ き ま せん で した 。 これ に つい て 、や っ と 思 いつ い た工 夫は 、 楕円 に つ いて は、 右端から 反
時計 回 り にフ リ ーハ ン ドと 同 じ方 法 で描 いてい き、終点 (右 端)の手 前約 0.5 ラジ アンに つい
ては 円 で 描く と いう も ので す 。こ の 約 0.5 ラ ジア ンについて 、楕円を 近似する円 の中心と 半径
を計 算 で 求め て いま す 。円 の 一部 な らば 、 上 記 のよ う にし て、 等 間隔 に 対 応す る一 定値の角 度
間隔を求 めること ができま す。( 図2)
図2
右 下約 0.5 ラ ジ アンは円 、右端で間 隔の乱れ なし。
2.ペイ ント機能 の3モー ド
エーデ ルでは 15 種類の パターンで 「ペイン ト」する ことができ ます。「ペイン ト」には 1)
刷毛、2) オ ート フィル 、3) 領 域指定の 3つの 方法 があ りま す。
「刷毛 」は、マ ウスのド ラッグに 連れ て、サ イズを設 定できる 小領 域を連続 的に塗っ ていく、
ある い は 、マ ウ スで ク リッ ク した 位 置で 小 領 域 を塗 る もの です 。 一般 の お 絵描 きソ フトの「 ペ
ン 」 に 当 た る も の で す 。「 ペ ン 」 な ら ば 、 何 も 考 え ず に ク リ ッ ク し た 位 置 を 基 準 に し て 塗 れ ば
いい で す が、 エ ーデ ル では 「 塗る 」 と言 っ て も 間隔 を とっ た点 の パタ ー ン で塗 るの で、クリ ッ
クし た 位 置を 基 準に し たの で は、 そ の位 置 は 微 妙に 異 なる こと が 多く 、 ク リッ クす る毎にパ タ
ーン の 位 置が ず れる こ とに な りま す 。こ の た め 、例 え ば2 度塗 り をす る と 、少 しず れたふた つ
のパター ンがいず れも打点 され ることに なり、結果的 に異なっ たパター ンになって しまいま す。
ふた つ の 凸点 が 近づ き 過ぎ る と、 重 なっ た り 、 極端 な 場合 は用 紙 が破 れ て しま いま す。これ を
防ぐ た め 、エ ー デル で は、 ど のパ タ ーン で も 打 点の 位 置は 絶対 的 に決 ま っ てお り、 クリック し
た位置に 依らない ようにし てい ます。(図 3)
図3
「刷 毛」で のペ イン ト
「オー トフィル 」では 、閉じた領 域の 内側を クリック すること でそ の領域を 塗りつぶし ます。
これ は 一 般的 な 「塗 り つぶ し 」と 同 じ機 能 で す 。し か し、 一般 的 な「 塗 り つぶ し」 では、領 域
が完 全 に 閉じ て いな け れば な らず 、 ちょ っ と で も開 い てい ると 、 そこ か ら 溢れ 出し て全体が 1
色に な っ てし ま った り しま す 。と こ ろが 、 エ ー デル で は閉 じた 領 域と い う もの はひ とつもあ り
ま せ ん 。 図 形 は す べ て 間 隔 を と っ た 点 列 で 描 か れ る か ら で す 。 そ こ で 、 エ ー デ ル で は 、「 オ ー
トフィル 」=「塗 りつぶし 」を 実現する ために 次の よう な処 理をおこ なっていま す。
① 作業用 の描 画画面 を別に用 意し、そ こへ 本来の作 図画面をコ ピー する 。
② 作業画面において、描かれているすべての点について、各点の位置を中心とする、一定
の 半 径( = 設定 さ れて い る点 間 隔程 度 ) の 円内 を 調べ 、そ こ に点 が あ れば 、中 心の点と そ
の 点 とを 線 で結 ぶ 。こ れ で、 作 業画 面 に お いて は 、間 隔を と った 点 列 で描 かれ ていた図 形
が、 すべて線 で描かれ るこ とになり 、開い てい た領 域を 閉じるこ とができる 。
③ クリッ クさ れた位 置を含む 閉領域を 塗り つぶす。
こ の ③ の段 階 は、 一 般的 な 「塗 り つぶ し 」 と 同じ ア ルゴ リズ ム でお こ な える はず ですが、 し
かし 、 そ れは ど うい う アル ゴ リズ ム なの か ? 、 私に と って はそ れ も問 題 で した 。閉 じた領域 と
いっ て も いろ い ろな 形 があ る わけ で すの で 、 そ れが ど のよ うな も ので あ っ ても 対応 できなけ れ
ばなりま せん。すぐ思い つくのは、その領 域内のあ るピクセ ルについて 周囲( 上下左右 の 4 点 )
を調 べ 、 境界 に 達し て いな け れば 塗 る、 塗 っ た 場合 は また その ピ クセ ル に つい て周 囲を調べ て
・・ ・ と いう こ とを 、 クリ ッ クで 指 定し た 位 置 のピ ク セル から 始 めて 、 塗 るべ きピ クセルが な
くな る ま で続 け る、 と いう 方 法で す 。こ う い う 動作 は 、ひ とつ の 関数 ( ひ とま とま りの処理 を
おこ な う ルー チ ン) の 内部 に 当の 関 数を 含 ん で いる 「 再帰 関数 」 によ っ て 実現 でき ます。し か
し、 実 際 にこ れ を作 っ て動 か して み ると 、 再 帰 の階 層 が深 くな り すぎ て 、 スタ ック オーバー フ
ロー ( メ モリ の 不足 に よる 致 命的 な エラ ー ) を 起こ し てし まい ま した 。 そ こで 、再 帰の階層 が
あま り 深 くな ら ない よ うに す る工 夫 が必 要 で し た。 そ れは 、あ る ピク セ ル につ いて 、まず左 右
に塗れる ところま で塗り、 塗っ た各点か ら上下 の 2 点 を 調べ て、塗れ る場合はま たそこか ら左
右の 塗 れ ると こ ろま で 塗る 、 また 上 下を 調 べ て ・・ ・ とい うこ と を繰 り 返 すア ルゴ リズムで 実
現できま した。
「 領 域 指定 」 では 、 長方 形 など の 領域 を 描 く と、 そ の内 部を 塗 りま す 。 以前 は、 領域の形 と
して長方 形に限定 していま した 。長方形 なら、 対角 の 2 点を 指定する ことですぐ 描けます し、
その 内 部 を走 査 する こ とも 容 易で す 。し か し 、 長方 形 だけ でな く 、任 意 の 多角 形領 域を指定 し
て塗 り た い、 と いう 要 望が 以 前か ら あり ま し た 。多 角 形を 描く こ とは 難 し くあ りま せんので 、
多角形を 描いた後 で、塗る場所 を指定す るため に、その内部を 1クリッ クするこ とにするな ら、
上記 の 「 オー ト フィ ル 」を 使 うこ と によ っ て 実 現で き ます 。し か し、 私 は 、多 角形 の内部を 指
定す る 1 クリ ッ クを 省 きた い と考 え まし た 。 こ のた め には 、多 角 形が 描 か れた 後、 どこがそ の
内部 で あ るの か を自 動 的に 判 断す る 必要 が あ り ます 。 そこ で、 あ る位 置 が その 多角 形の内部 で
ある か ど うか を 、そ の 位置 か ら画 面 の端 ま で 引 いた 直 線が 何回 多 角形 の 辺 (= 領域 の境界) と
交わるか を調べて 判断する こと にしまし た。内 部で あれば、こ れが奇数 になるは ずだからで す。
ただ、例 外もある ので、そ の位 置から上 下左右 の 4 方 向を調べ ています。
この、多角形領 域を 指定して 、どこがそ の内部で あるかを自 動的に判 断するア ルゴリズム は、
複写 や 移 動な ど の対 象 領域 を 指定 す ると き に も 使っ て いま す。 こ れに よ っ て、 図が 込み合っ て
いる中か ら、移動 したい部 分だ けを指定 して移 動す るこ とな どができ ます。(図4)
図4
右 側だけを 多角形 領域 とし て指 定してい る。
3.スプ ライン補 間曲線
ス プ ラ イン 補 間曲 線 とい う のは 、 いく つ か の 点を 次 々に 指定 し てい く と 、そ れら を、指定 し
た順 に 滑 らか な 曲線 で 結ぶ も ので す 。こ れ 自 体 は私 の オリ ジナ ル では あ り ませ ん。 以前から 、
これを実 現すべく 、『C に よる スプライ ン関数』 という本を 何度も読 みかけまし たが、そ の都
度挫 折 し てい ま した 。 だい た い、 た とえ ス プ ラ イン 関 数の 数学 的 な意 味 が 分か って も、実際 に
プロ グ ラ ミン グ する に はい く つも の 問題 が あ り ます 。 しか も、 エ ーデ ル の 場合 は間 隔をとっ た
点列 で 描 かな け れば な りま せ ん。 と くに 、 閉 曲 線も 描 く必 要が あ り、 媒 介 変数 表示 にしなけ れ
ばな り ま せん 。 その 媒 介変 数 とし て 何を と れ ば 良い の か、 具体 的 なイ メ ー ジが 持て ませんで し
た。実際 には、単 に媒介変 数を t とし て、i 番目の 区間の曲 線上の点 (x,y) につ いて、x=fi(t),
y=gi(t) ( i ≦ t ≦ i+1 ) とすれ ば良いの でした。 そして、後 から考え ると、t は 、曲線上 を
端から点 が動いて いくとき の経 過時間に 当たる もの でし た。
スプラ イン補間 曲線を求 める ためには 、指定 した 点で 区切 られる各 区間毎に 3 次 関数( 上記
の fi , gi ) を決定し なければな りません 。それは 次の3つの 条件を満 たすよう にします。
① 指定し た点 の位置 で曲線が 繋がる、 つま り、連続 である。
② 指定し た点 の位置 で、繋が る 3 次 関数の第 1 次導 関数の値が 等しい。
③ 同じく 第 2 次 導関数の値 が等しい 。始点と終 点の位置 では 第 2 次導関 数の値を0 とする。
結局、す べての区 間の 3 次関数 を決定す るために は、か なり 未知数の 多い連立一 次方程式 を解
かな け れ ばな り ませ ん 。こ の 計算 ( ガウ ス ・ ジ ョル ダ ン法 )と 結 果の 描 画 を、 経過 点を増や す
毎 に お こ な い ま す 。( 図 5 ) 係 数 行 列 の 次 数 が 高 く な る と 誤 差 が 発 生 し て 計 算 が 破 た ん す る こ
とがある ので、こ のプログ ラミ ングには 注意が 必要 でし た。
図5
スプ ライン 補間 曲線 を描 く
4.画像 の自動点 図化
一般的 な BMP フ ァイル 、JPEG フ ァイ ルの画像 を自動的に 点図に変 換すること ができま す。
これ も 点 訳ボ ラ ンテ ィ アの 方 から 要 望さ れ て い たも の です が、 あ ると き 集 中的 に考 えて実現 し
まし た 。 まず 輪 郭を 抽 出し な けれ ば なり ま せ ん が、 こ のた めに 、 ある 明 度 を境 にし て明るい 部
分は 真 っ 白に 、 暗い 部 分は 真 っ黒 に しま す 。 こ れを 「 2値 化」 と いう の で すが 、こ れが「画 像
処理 」 に おい て 一般 的 に行 わ れる も ので あ る こ とを 後 にな って 知 りま し た 。さ て、 この2値 化
画像 の 白 と黒 の 接し て いる と ころ が 輪郭 で す の で、 そ の部 分の み 、ま た は 、黒 い部 分のすべ て
を点 図 に すれ ば 良い わ けで す 。こ れ には 、 次 の よう な アル ゴリ ズ ムを 考 案 しま した 。まった く
のオリジ ナルです 。
2 値 化画 像 にお い て、 端 から 走 査し な が ら 、黒 い ピク セル が 見つ か れ ばそ こに 打点し、
かつ 、その周 囲の一定 半径 (=設定 してい る点 間隔 )の 内部を黒 以外の色に 替える。
カラ ー 写 真な ど は自 動 点図 化 して も その ま ま で は実 用 にな りま せ んが 、 白 地に 黒の 線で描か れ
た白地図 などはき れいに点 図に できます 。(図6、7、 8)
図6
元の画 像
図7
2値化 画像
図8
点図化
こ れ を 使っ て 漢字 な どの 文 字も 点 図化 で き ま すが 、 文字 の場 合 は、 骨 格 だけ =線 画の点図 に
する 方 が 望ま し いと 考 えら れ ます 。 この た め に は、 ゴ シッ ク体 な どの 太 さ のあ る文 字を、ま ず
「 細 線 化 」 す る 必 要 が あ り ま す 。「 細 線 化 」 に つ い て は す で に 研 究 さ れ て い て 、 い ろ い ろ な 方
法が あ る よう で すが 、 代表 的 なも の を使 っ て 実 際に や って みる と 、あ ま り うま くい きません で
した。確かに太 さ1の線 画にするこ とができ るのです が、不要 な「ひ げ」が生じま す。( 図9 )
それで、 私は、独 自にいろ いろ と試みま した。 その 結
果、結局 、黒い部 分につい て、 その「表 皮」の 黒い ピ
クセルの 層を 1 枚 ずつ剥 いでいく のが良いと 思いまし
た。これ で「ひげ 」は出ま せん が、しか し、い つま で
も続ける と真っ白 になって しま いますし 、ひと つの 文
字でも太 さが違う ところが あり ますので 、何層 剥い だ
時点で止 めるかが 問題にな りま す。それ で、こ の夏 ま
では、1 回クリッ クする毎 に1 層剥がす ように し、 何
時止める かはユー ザーが判 断す るように してい まし た。
これだと 、完全な 線画には なら ず、少し 太いと ころ が
残ってし まいます が、これ 以上 はできな いと考 えて 諦
めていま した。
ところ が、今年 の夏休み 前に 、やはり 点訳ボ ラン ティ
図9
アの方か ら「どう にかなら ない か」とい う要望 が寄 せら
れま し た 。そ れ で、 夏 休み の 宿題 の つも り で 、 この 夏 、改 めて 取 り組 み ま した 。次 のような い
ろいろな アイディ アが浮か びま した。
A) 文 字 の い ろ い ろ な 場 所 に お い て 4 方 向 に 「 太 さ 」 を 調 べ 、 そ の 最 頻 値 か ら 、「 表 皮 」 を
剥ぐ 走査を何 回やるの が適 当か求め られる ので はな いか 。
B) 上 の よ う に 「 太 さ 」 が 調 べ ら れ る な ら 、 文 字 の い ろ い ろ な 場 所 に お い て 、 そ の 中 央 の 位
置が 分かるの ではない か。
C) 白 地 を 海 、 文 字 の 黒 い 部 分 を 陸 に 例 え る 。 そ し て 、 陸 地 の す べ て の 位 置 は 海 岸 か ら の 距
離 に 比例 し て高 く なっ て いる と する 。 陸 地 のす べ ての 位置 に つい て 海 岸ま での 距離、す な
わち 標高を求 め、稜線 を抽 出すれば 良いの では ない か。
それ ぞ れ を試 し てみ た り、 そ れら を 組み 合 わ せ てみ た りし た結 果 、こ の 夏 の時 点で の結論と し
ては、次 のように すること にし ました。
① 上 の A) に よ っ て 「 表 皮 」 を 剥 ぐ 回 数 を 決 定 し 、 実 際 に 剥 ぐ 。 こ こ で あ ま り や り 過 ぎ な
いよ うに注意 する。こ の処 理によっ て「ひ げ」 の発 生を 防ぐ。
② 今度は「表皮」の1点1点について、それを白にすることによって「その辺りが真っ白
にな ってしま うのでな けれ ば」白に 替える 。
こ れ で 、 一 応 満 足 の い く 結 果 が 得 ら れ ま す 。( 図 1 0 ) た だ 、 ② の 条 件 を ど う や っ て 判 断 す る
かが 問 題 です が 、こ れ はい ろ いろ と 試し た 末 の 「結 果 オー ライ 」 で解 決 し まし た。 また、ユ ー
ザーが手 動で若干 の点を追 加し たり消し たりし て、 結果 を調 整できる ようにもし ました。
「文字 の細線化 」につい ては 、今後も 追及し てい きた いと 考えてい ます。
図10
「 藤」を細 線化し たも のと その 点図化
おわり に
私 が プ ログ ラ ミン グ を勉 強 でき た のは 、 そ の 環境 を 与え てく れ た鳴 門 教 育大 学大 学院のお か
げです。 この場を 借りて感 謝申 し上げま す。
も ち ろ ん素 人 です の で、 習 得し た プロ グ ラ ミ ング 技 術の 内実 は 大し た こ とは あり ません。 そ
れで も 、 エー デ ルは 広 く普 及 し、 フ リー ソ フ ト なが ら 、現 在で は 図形 点 訳 ソフ トの デファク ト
スタ ン ダ ード に なっ て いま す 。そ の ため 、 こ の 事業 を 将来 に渡 っ て継 続 し てい くこ とが社会 的
に求 め ら れて い ると 言 って も 過言 で はあ り ま せ ん。 そ れを 担っ て くれ る 、 プロ グラ ミングの 知
識とボラ ンティア 精神の両 方を 持った若 い人が 現れ るこ とを 期待して います。
88M05
ふじ のとしひ ろ
徳島県立城 東高 校
088-653-9111
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