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Euroanaesthesia 2016に参加しました(PDF)
今年の欧州麻酔科学会(Euroanaesthesia 2016)は 5 月 28 日から 3 日間の日程 でまだ EU から離脱決定前の英国で開催されました。会場はロンドン中心部から 東に電車で 30 分程のロンドンのウォーターフロント再開発地区にある施設の ExCeL London です。日本を出発する 5 月 27 日は大韓航空機事故の影響で羽田発 着の数百便が欠航しました。福岡で開催された日本麻酔科学会学術総会と一部 日程が重なっていたため、福岡で出席した後に東京に戻ってロンドンへ出発し ようとされた先生方には影響を受けた方もいたようです。私たちは、幸いにも事 故のちょうど 50 分前の全日空便で出発でき、影響はありませんでした。しかし、 最近のテロの影響なのかヒースロー空港での入国審査は長蛇の列で、入国でき るまでに 1 時間半以上かかりました。ロンドンの西に位置するヒースロー空港 から、ロンドンを横切るように列車や地下鉄を乗り継ぎ、1 時間以上かけて会場 近くのホテルに到着しました。 これまでこの学会は 4 日間かけて行われていて、初日は午後から始まり、最終 日の正午で終了していました。しかし、今年の日程は初日が午前から始まり、最 終日の午後まででした。時間的には変わりありませんが、例年より短く 3 日間 に変更されていました。それでも世界 80 か国以上から 6,000 人程の参加者があ り、一般演題の総数はおよそ 1,200 題でした。今年も日本麻酔科学会学術総会 と日程が重なっていましたが、日本からの演題数は 80 題程度ありました。学会 期間中の気温は 10-20 度で日本と比べて朝は肌寒く、天候も曇りがちで、雨も 降りました。 学会初日は午前 8 時から入場手続きが始まりましたが、機器の不具合からか、 ここでも 30 分以上足止めされてしまいました。そのため残念なことに予定して いたセミナーを聞き逃してしまいました。学会場はメインホールのほか、10 以 上の大小の講演会場に分かれ、さらに機器展示を行う広いホールとレセプショ ンホールからなります。初日から講演やポスター発表にも参加し、空いた時間は 広い機器展示場を見て回りました。機器展示に出展している企業の中では、中国 を中心としたアジア勢の進出が特に著しいと感じました。学会受付で配られる バッグにも中国企業の名前が印刷されていました。しかし、日本企業で機器展示 を行っていたのは日本光電だけで寂しい気がしました。特に中国企業の麻酔器、 シリンジポンプ、挿管器具は同じ機能を持つ機器でも定価が 3 割程度安く設定 されていました。また年末に日本に入るといわれているフレゼニウスのシリン ジポンプも価格は安く、数種類のモデルが使用できる open-TCI が装備され、プ ロポフォールも患者に合わせたモデルが使用できます。麻酔深度を評価する脳 波モニターや r-SO2 のモニターも新製品が展示されていました。夕方からはオー プニングセレモニーに参加しましたが、大会長の挨拶や役員の紹介、表彰などの 後にヨーロッパ各国の麻酔科医によるビートルズの合唱が演じられ、学会の開 催を盛り上げていました。 2 日目の朝は 8 時半からセミナーを聴講しました。Euroanaesthesia では、毎回 多彩な教育的セミナーや講演、ワークショップが準備されており、気軽に聴くこ とができます。プログラムを見るだけでも、80 以上のシンポジウム、およそ 20 のリフレッシャーコース、8 つのワークショップ、20 以上のレクチャー、20 以 上の企業共催セミナーがあります。その他にもディベートなども多数あります。 今回われわれは、乳幼児への麻酔薬の neurotoxitiy、術後せん妄、輸液や気道 確保など興味を惹いた講演を中心に聴講しました。 ポスター発表は昨年のベルリン開催と同様に e-poster 形式でした。発表者、座 長や聴衆が 20 人程度集まり、議論は和やかな雰囲気で行われました。今回われ われが準備した演題は、2 日目に「ファイバースコープによる局所麻酔薬の噴霧 方法」について、3 日目に「麻酔開始時間による体内水分量の変化」についての 2 題で、塚本助教が発表しました。Euroanaesthesia では英語を母国語としない 参加者が多いため、英語が不得意な人でも発表しやすい雰囲気です。質疑応答 も、わかりやすい英語で議論が進められます。 学会会場では、何人かの日本からの先生もお見かけしましたが、カロリンスカ大 学麻酔科のセルデン先生と偶然再会しました(写真1)。セルデン先生はアミノ 酸輸液で有名であり、これまでに横山教授と共同研究も行っています。また、釜 山大学のヨン先生にもポスター会場でお会いしました。 学会最終日の終了間際まで学会を堪能し、夕方からロンドン中心部に出て、トラ ファルガー広場やビックベンを訪れました。夕食は、イギリスを代表する料理の フィッシュアンドチップスとビールでロンドン滞在を締めくくりました。 今回で、塚本助教はバルセロナで開催された 2013 年から 4 回目、横山教授は 2004 年から連続 13 回目の Euroanaesthesia 参加になりました。この学会のよい ところは、世界中からバランスよく参加者がいること、そして拙い英語でも十分 に議論ができることです。今回の Euroanaesthesia でも、ヨーロッパをはじめ 世界各国の麻酔科医と直接お話しすることができ、これからの臨床や研究への モチベーションがさらに高まりました。また、教育的なセミナーや講演は、非常 に勉強になります。機器展示ではまだ日本に入っていない機器などに触れるこ ともできます。 写真1:左から塚本助教、セルデン先生、横山教授