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地政学的リスク要因と米国原油在庫減少が上方圧力を

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地政学的リスク要因と米国原油在庫減少が上方圧力を
更新日:2015/6/14
調査部:野神 隆之
原油市場他:地政学的リスク要因と米国原油在庫減少が上方圧力を、中東産油国の高
水準の原油生産と米ドル上昇が下方圧力を加える、原油価格
(IEA、OPEC、米国 DOE/EIA 他)
① 米国では、製油所での春場のメンテナンス作業が概ね完了したことにより、原油精製処理量が回復
した一方で、先物市場における直近の受渡月の原油価格が将来の受渡月のそれを下回る度合いが
軽微になってきたこともあり、原油在庫は継続的に減少したが、それでも平年幅の上限を超過する状
態は続いている。ガソリンについては、安価な小売価格で消費が刺激されていることもあり、在庫は
減少傾向となった結果、平年幅の上方付近の量となっている。留出油については、製油所での生産
活発化に伴い在庫が増加したことにより、平年幅上限付近に位置する水準となっている。
② 2015 年 5 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国等
での堅調な石油製品需要の影響により、欧州の製油所で精製利幅を確保できたことから、5 月の原
油精製処理量は前月比で余り減少しなかったこともあり、原油在庫もほぼ同水準を維持した一方で、
日本においては、製油所でのメンテナンス作業等により原油精製処理量が低下したこともあり、原油
在庫が増加したものの、米国での在庫減少により相殺されて余りある状態であったことから、OECD
諸国全体の原油在庫は若干ながら減少となったが、平年並みの水準を大きく超過した状態は維持さ
れている。他方、製品在庫については、欧州で米国等への輸出向けのガソリン需要が堅調であった
こともあり、若干ながら当該地域での製品在庫は減少となったが、日本ではガソリン需要が 5 月初旬
は比較的好調であったとされるものの、その後は低調となったことから、当該製品在庫が増加した
他、暖房シーズンが終わり不需要期となった灯油の在庫や発電量の低下により消費が減少した重油
の在庫が積み上がったこともあり、同国では製品在庫水準が上昇した他、米国でも製品在庫が増加
となったことで相殺されたことから、OECD 諸国全体では製品在庫水準は前月末比で増加したが、こ
の時期の量としては平年並みとなっている。
③ 2015 年 5 月中旬から 6 月中旬にかけての原油市場においては、サウジアラビア東部における自爆
テロと見られる爆発の発生とイスラム国による犯行声明に伴う中東情勢不安定化と当該地域からの石
油供給途絶懸念の増大や、米国での原油在庫の減少などが、相場に上方圧力を加えた一方で、6
月5日のOPEC総会を控え原油生産上限が据え置かれるとの観測や一部の中東産油国での高水準
の原油供給に伴う世界石油需給緩和感の醸成、及び米ドルの上昇などが下方圧力を加えた結果、
原油価格は WTI で概ね 1 バレル当たり 60 ドル前後で推移した。
④ 米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が到来し、季節的な石油需給の引き締まり感
が強まりやすい状況であるうえ、同国の主要シェールオイル鉱床における原油生産が 5~7 月にか
け前月比で減少すると予想されるなど、供給構造面での需給引き締まり感も発生している状況となっ
ていることから、当面原油価格には、これらの面で上方圧力が加わりやすい状況が続くものと思われ
るが、イランのウラン濃縮問題に関し西側諸国等と最終合意に至るようであれば、将来的な同国から
の原油生産増加観測の増大から、原油相場に下方圧力を加えるといった展開も考えられよう。
–1–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1.
6 月 5 日開催の OPEC 総会で原油生産上限を据え置き
6 月 5 日に石油輸出国機構(OPEC)はオーストリアのウィーンで通常総会を開催し、2011 年 12 月 14
日開催の通常総会時に導入した全 12 加盟国で合計日量 3,000 万バレルの原油生産上限を据え置きと
する旨決定した(表 1 参照)。総会前の OPEC 事務局による見通し(2015 年 5 月 12 日発行の OPEC の
月刊オイル・マーケット・レポート(MOMR:Monthly Oil Market Report)に基づく)では、2015 年の世界石
油需要は日量9,250万バレル、他方、供給面では、非OPEC 産油国の石油生産量が同5,716万バレル、
OPEC の NGL 及び非在来型石油資源の生産量が同 602 万バレル、併せて日量 6,318 万バレルと見込
まれていた。このため、2015 年の対 OPEC 産油国原油需要(世界石油需要から非 OPEC 産油国石油供
給と OPEC 産油国の NGL 等の供給を差し引いたもの、なおこれには世界の石油在庫変動も含まれる)
は日量 2,932 万バレルとなる。2015 年 4 月現在の OPEC 産油国原油生産量である日量 3,084 万バレル
を以降継続した場合、2015 年の OPEC 産油国原油生産量は日量 3,072 万バレルとなり、当該年の対
OPEC 産油国原油需要を日量 140 万バレル超過することになる他、従来の原油生産上限を日量 72 万バ
レル上回ることになる。ただ、既に OPEC 産油国は 2015 年第一四半期に日量 3,033 万バレルの原油を
既に生産していたことから、2015 年全体の石油需給を均衡させるためには日量 185 万バレル減産する、
もしくは原油生産上限を日量 100 万バレル程度引き下げたうえでそれを遵守する必要があった。しかし
ながら、そのような状況にもかかわらず、今次総会では原油生産上限は据え置かれ、事実上減産が見送
られる結果となった。
表1 OPEC加盟国原油生産上限、生産量及び減産遵守率(日量千バレル)
2 0 0 9 年1 月1 日以降
の生産目標
( 推定)
アルジェリア
アンゴラ
エクアドル
イラン
クウェート
リビア
ナイジェリア
カタール
サウジアラビア
UAE
ベネズエラ
OPEC11ヶ国合計
イラク
OPEC12ヶ国合計
1,203
1,517
434
3,336
2,222
1,469
1,673
731
8,051
2,223
1,986
24,845
-
2 0 1 1 年1 2 月1 4 日
O P EC総会
以降の生産上限
2 0 1 5 年6 月5 日
O P EC総会
以降の生産上限①
30,000
30,000
2 0 1 1 年1 1 月生産量
( I EA) ②
1,180
1,710
500
3,609
2,500
550
2,100
735
10,000
2,520
2,341
27,745
2,675
30,420
2 0 1 5 年5 月生産量
( I EA) ③
1,110
1,770
550
2,850
2,760
450
1,760
670
10,250
2,870
2,440
27,480
3,850
31,330
生産上限超過量
( ③- ①)
1,330
増産量
( ②- ①)
△ 70
60
50
△ 759
260
△ 100
△ 340
△ 65
250
350
99
△ 265
1,175
910
原油生産能力
( I EA)
1,140
1,800
570
3,600
2,820
500
1,920
700
12,340
2,940
2,490
30,820
3,900
34,720
余剰生産能力
( 2 0 1 5 年5 月現在)
30
30
20
750
60
50
160
30
2,090
70
50
3,340
50
3,390
注:四捨五入の関係で個々の数字の総和が合計と一致しない場合がある。
出所: OPEC 、 IEAデータ等をもとに推定
今回の決定に至った背景には、まず、サウジアラビアの原油生産に対する姿勢がある。過去には、他
の OPEC 加盟国が OPEC 総会で決定した原油生産枠の引き下げ等の減産要請を事実上軽視した時に、
サウジアラビアはほぼ 1 国で減産必要量を負担することにより、世界石油需給の均衡に努めるという、い
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
わば OPEC 産油国の原油生産の調整役を担っている時期があったが、実はこのようなサウジアラビアの
方策は 1980 年代に一度破綻している。1970 年代に発生した 2 回の石油危機とその後の原油価格高騰
により世界的に石油需要が低迷した(世界石油需要は 1979 年に日量 6,386 万バレルに到達した後 1981
年には同 5,940 万バレルにまで減少、1985 年も日量 5,925 万バレルとさらに減少することになった)一方
で、英領及びノルウェー領北海、そして米国アラスカ州といった非 OPEC 産油国での石油生産の増加
(非 OPEC 産油国石油生産量は 1981 年の日量 2,539 万バレルが 1985 年には同 2,957 万バレルへと増
加した)、さらにはイランやイラクといった一部の OPEC 産油国の石油生産量増加といった状況に直面し
たサウジアラビアがほぼ 1 国で、世界の石油需給の均衡と原油価格の維持を試みた結果、1981 年 8 月
には日量 1,033 万バレルであった同国の原油生産量は 1985 年 8 月には同 235 万バレルにまで減少し
た。他方原油価格は 1981 年の 1 バレル当たり 35.98 ドル(ブレントスポット価格)が 1985 年には 27.56 ド
ル(同)へと下落するなど、サウジアラビアは原油生産量の減少と原油価格の下落というダブル・パンチ
に見舞われることになった。このようなことから1986 年にはサウジアラビアは石油需要の調整役を放棄す
ることになった(それとともに原油相場はさらに下落することになった)わけであるが、それ以降世界石油
需給均衡のために大規模な減産が必要とされる状況になっても、サウジアラビアはその調整役を積極的
には担わなくなったと指摘されるようになった。
近年でも、米国のシェールオイルに増産の余地がある中、必ずしも原油相場が上昇するわけではな
い環境下では、サウジアラビアのみが減産の負担を負うことになれば、他の OPEC 加盟国及び非 OPEC
産油国の原油生産量が大きく犠牲になりにくくなる一方で、サウジアラビアの原油生産量だけが大きく落
ち込む可能性が高まる。原油相場が上昇しなければ、最も大きな痛手はサウジアラビアが負うことになる。
4 月 7 日には、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が、同国は原油価格を改善させる用意はあるが、
OPEC 産油国以外の生産者がその努力に合流したときのみ(改善するための努力を行う)旨発言してい
るが、これもそのような流れに沿ったものと解釈できよう。
他方、原油価格を含む石油市場安定(具体的には原油価格の引き上げを目的とした減産措置と見ら
れる)に向けた OPEC 加盟国及び非 OPEC 産油国間での協力については、その動きが全く見られなか
ったわけではない。ベネズエラは 1 月 4~17 日に、マドゥロ大統領がロシア、中国、イラン、サウジアラビ
ア、カタール、及びアルジェリアを訪問したが、1 月 10 日にイランのロウハニ大統領、1 月 11 日にサウジ
アラビアのサルマン皇太子(当時)、1 月 13 日にアルジェリアのブーテフリカ大統領、1 月 15 日にロシア
のプーチン大統領と会談した際、原油価格反転のための方策について協議したとされる。また、2 月 11
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
日にサウジアラビアのヌアイミ石油・鉱物資源相はアルジェリアのルー法相と会談し、OPEC 産油国と非
OPEC 産油国との協力について協議したと伝えられる他、2 月 19 日に、アルジェリアのユースフィ エネ
ルギー・鉱業相が石油市場の安定化のための協力策についてのメッセージをラブロフ露外相に伝えて
いる。また、3月16日には、同じくアルジェリアのユースフィ エネルギー・鉱業相がアンゴラのバスコンセ
ロス石油相、駐アルジェリア ナイジェリア大使のギンサウ大使と会談を行い低原油価格に対する共同で
の解決策について協議を行った旨報じられている。さらに、リビアの OPEC 理事が日量80 万バレルの減
産が OPEC 産油国全体で必要である旨明らかにしたと 4 月 8 日に伝えられる。しかしながら、4 月 9 日に
はイランのザンギャネ石油相がイランのウラン濃縮問題を巡る西側諸国等との最終合意に伴うイランへの
制裁解除後の同国の原油生産増加(イランは制裁緩和後、2 ヶ月間で日量 50 万バレル、6~7 ヶ月間で
最大日量 100 万バレルの増産を狙うとザンギャネ石油相が 6 月 5 日に発言している)に関し、原油価格
の下落を防ぐために OPEC は自身で調整できる旨表明している。つまりこれは、イランは今後増産する
方針であるのに対し、他の OPEC 加盟国は石油需給均衡のために減産を行うよう要請していることに等
しい。また、主要非OPEC 産油国であるロシアについても、5 月29 日にノバク エネルギー相が減産は必
要ない旨発言していた。このように、加盟国間等で減産協力に対する動きは見られたものの、最終的に
OPEC 加盟国、そして主要非OPEC 産油国間での当該協力については、足並みが乱れた格好となり、こ
のような条件ではサウジアラビアも減産には積極的になれなかった結果、今次総会では原油生産上限
の据え置き、つまり事実上の減産の見送りに至ったものと考えられる。減産して価格上昇を試みても、そ
の過程で米国での原油生産が増加することにより結局価格は抑制されてしまう可能性がある(かえって
米国での原油増産観測から下落してしまうという展開すらありうる)ことに加え、OPEC 産油国としては市
場シェアを獲得できないことになるため、価格及び量の両面で原油収入の落ち込みが深刻化する恐れ
がある。このため、価格は上昇しないかもしれないが米国での原油生産を抑制すべく、OPEC 産油国に
よる原油供給を確保できるような方策を志向したと考えられる。また、この場合でも、原油価格は抑制され
るため、サウジアラビアの原油収入も影響を受けることになるが、他の OPEC 加盟国や非 OPEC 産油国
でも同様の状況に見舞われることから、いわば痛手をサウジアラビア 1 国のみならず産油国に「広く」負
担させることが可能となる。
このように、今次総会での決定の結果、この先も世界石油需給バランスの緩和感が継続しやすい状況
となったが、このような展開は総会開催が近づくにつれ市場関係者間で織り込まれてきていた(総会直
前の 6 月 3~4 日には WTI で 1 バレル当たり 3.26 ドル下落していた)ため、6 月 5 日の原油市場におい
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ては、むしろそのような価格下落に対する利益確定の動きが発生し価格が上昇した他、それ以降も原油
価格は 1 バレル当たり 60 ドル近辺で推移するなど、今次総会における結果の原油市場への影響は概し
て限定的であったと見られる。なお、次回総会(通常総会)は 12 月 4 日にオーストリアのウィーンに於い
て開催される予定である。
今回の OPEC 総会に際し、2009 年 1 月 1 日に事実上 OPEC から脱退していたインドネシアが OPEC
再加盟を希望している旨伝えられた。ただ、インドネシアは日量 70 万バレル程度の原油を生産している
ものの、既に石油純輸入国となっており、石油輸出国としての位置づけはそれほど大きくない。このよう
なことから、インドネシアとしては、加盟することにより、世界石油需給バランス均衡を目指して加盟国間
の連携を強化する、というよりは、OPEC での活動を通じて、例えば OPEC 加盟国によるインドネシア石
油精製部門への投資促進や、インドネシアの OPEC 加盟国への石油探鉱・開発部門進出の促進、
OPEC 加盟国とインドネシアとの石油売買取引関係の確保といった、他の OPEC 加盟国各国との関係強
化を主眼に置いているのではないかとの指摘もある。
2.
原油市場を巡るファンダメンタルズ等
2015 年 3 月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で 4.3%程度増加の日量 906 万バレルと速報
値(同 893 万バレル、前年同月比 2.8%程度の増加)から上方修正された(図 1 参照)。3 月の同国からの
ガソリン(最終製品)輸出が速報値の段階では日量 55~67 万バレル程度(平均推定同 60 万バレル)と
2014 年 12 月~2015 年 1 月の月間輸出量(確定値)が暫定的に使用されたと見られる一方で、3 月の輸
出確定値は日量43万バレルと速報値を日量17万バレル程度下回っており、この分が速報値から確定値
に移行する段階で輸出から国内需要に算入されていることから、これが上方修正の一因と考えられる。
また、3 月の同国のガソリン小売価格が前年同月比で 1 ガロン(約 3.8 リットル)当たり 1.1 ドル程度安価に
なっていること、そしてそのような安価なガソリン小売価格もあり同国の 3 月の自動車運転距離数が前年
同月比で 3.9%の増加となったことも、ガソリン需要を押し上げているものと考えられる。また、2015 年 5
月の同国ガソリン需要(速報値)は日量 932 万バレルと前年同月比で 3.4%程度の増加となっているが、
同月の同国のガソリン小売価格も前年同月比で 1 ガロン当たり 0.9 ドル程度安価になっていることにより、
需要が刺激され続けているものと思われる。他方、春場のメンテナンス作業が概ね完了した製油所では
夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に向け稼働を引き上げてきており、同国の原油精製処理
量は 5 月中旬から 6 月上旬にかけ日量 1,600 万バレル台前半から 1,600 万バレル台半ばへと増加した
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(図 2 参照)。これに伴いガソリン生産活動も活発な状態が続いたと見られる(最終製品の生産について
は図 3 参照)ものの、ガソリン需要も堅調であったことから、ガソリン在庫は 5 月中旬から 6 月上旬にかけ
継続的に減少傾向を示したことにより、6 月上旬時点では当該在庫は平年幅の上方付近に位置する量と
なっている(図 4 参照)。
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2015 年 3 月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で 0.2%程度増加の日量 405 万バレルと速報
値である同 390 万バレル(前年同月比 3.7%程度の減少)から上方修正されている(図 5 参照)。3 月の留
出油輸出について EIA は速報値時点では暫定的に日量115 万バレル程度と見込んでいたものの、実際
の輸出量は日量102万バレルと暫定値を日量13万バレル下回っていたことから、この分が輸出から国内
需要に振り替えられたことが、速報値から確定値に移行する過程での需要の上方修正の一因となってい
るものと考えられる。また、3 月は物流活動が活発であったことから、軽油需要も堅調であったと考えられ
るものの、留出油需要の伸びは限定的なものにとどまっており、ここにおいては、2 月の米国北東部での
気温の大幅低下に伴う暖房用石油製品需要の増加(これにより 2 月の留出油需要は前年同月比で 8.4%
程度の増加となった)の反動が 3 月に発生した可能性があることが推測される。他方、5 月の留出油需要
(速報値)は日量405 万バレルと、前年同月比で 2.8%程度の増加となっている。2015 年4 月の物流活動
が前年同月比で殆ど拡大していないことから米国経済に減速の兆しが表れ始めている恐れがあり、この
ような面から 5 月においても留出油需要は速報値から確定値に移行する際に修正が施される可能性が
あることに留意する必要があろう。一方で、製油所での春場のメンテナンス作業が概ね完了したことによ
り製油所での留出油の生産も堅調に推移した(図 6 参照)こともあり、米国での留出油在庫水準は 5 月中
旬から6月上旬にかけては上昇傾向となった結果、6月上旬としては当該在庫は平年幅上限付近に位置
する量となっている(図 7 参照))。
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2015 年 3 月の米国石油需要(確定値)は、ガソリン及び「その他の石油製品」の需要の伸びが石油需
要全体の増加を牽引する格好となった結果、日量 1,924 万バレルと前年同月比で 3.8%程度の増加とな
った(図 8 参照)他、ガソリン需要が速報値から確定値に移行する段階で上方修正されたこともあり、石油
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
需要の確定値も速報値(日量1,911万バレル、前年同月比3.2%程度の増加)から若干ながら上方修正さ
れている。また、5 月の米国石油需要(速報値)は「その他の石油製品」の需要の増加が寄与し、日量
1,992 万バレルと前年同月比で 7.6%程度の大幅増加となっているが、「その他の石油製品」の需要はし
ばしば速報値から確定値に移行する段階で大きく変動する場合があるので注意が必要であろう。他方、
米国では、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に向けた製油所での原油精製処理量の増加に
伴い、石油需給の引き締まり感が発生していることもあり、原油先物市場において直近の受渡時期の原
油価格が将来の受渡時期のそれよりも低くなる(いわゆる「コンタンゴ」)状況が軽微になってきていること
(図 9 参照)から、原油を貯蔵するインセンティブが働きにくくなってきた結果、5 月中旬から 6 月上旬に
かけ原油在庫は継続的に減少したが、6 月上旬としては平年幅を大きく超過している状態は維持されて
いる(図 10 参照)。なお、原油在庫が平年幅を大きく超過している一方で、ガソリン在庫が平年幅上方付
近、留出油在庫が平年幅上限付近に、それぞれ位置する量となっていることから、原油とガソリンを合計
した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態と
なっている(図 11 及び 12 参照)。
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2015 年 5 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、欧州では
製油所のメンテナンス作業時期に突入してはいるが、米国での堅調な石油製品需要の影響により精製
利幅を確保できたことから、5 月の原油精製処理量は前月からは減少はしたものの、その規模は限定的
であった(前年同月比では日量数十万バレル程度の増加と推定される)こともあり、原油在庫はほぼ同水
準で推移した一方で、日本においては、製油所でのメンテナンス作業等により原油精製処理量が低下し
たこともあり原油在庫が増加したものの、米国での当該在庫の減少により相殺されて余りある状態であっ
たことから、OECD 諸国全体の原油在庫は減少となったが、平年並みの水準を大きく超過した状態は続
いている(図 13 参照)。他方、製品在庫については、欧州では米国等への輸出向けガソリン需要が堅調
であったこともあり、当該地域での製品在庫は若干ながら減少したものの、日本ではガソリン需要が 5 月
初旬は比較的好調であったとされるものの、その後は低調となったことから、当該製品在庫が増加した他、
暖房シーズンが終わり不需要期となった灯油の在庫や発電量の低下により消費が減少した重油の在庫
が積み上がったこともあり、同国では製品在庫水準が上昇した他、米国でも製品在庫が増加となったこと
で相殺されたことから、OECD 諸国全体では製品在庫水準は前月末比で増加したが、この時期の量とし
ては平年並みとなっている(図 14 参照)。なお、原油在庫が平年幅を大きく超過している一方で、石油製
品在庫が平年並みの水準となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上限付近の量
となっている(図15参照)。また、2015年5月末時点でのOECD諸国推定石油在庫日数は61.4日と2015
年 4 月末の推定在庫日数である 62.1 日から低下している。
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5 月 13 日には 1,300 万バレル程度の量であったシンガポールでのガソリンやナフサ等の軽質製品在
庫量は、その後上下に変動しつつも全体として減少傾向となり、6 月 10 日には 1,000 万バレル台後半と
なった。夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に入りつつあるうえ、概ね 6 月 18 日~7 月 16 日の
断食月(ラマダン)に向けたイスラム圏での住民の移動に伴う燃料需要期が視野に入っている他、インド
で Hindustan Petoroleum の Visakhapatnam 製油所(原油精製処理能力日量 17 万バレル)が 6 月 1 日よ
り 7 月30 日までの予定でメンテナンス作業に入ることなどを含め、製油所におけるメンテナンス作業に伴
い、生産が低下するガソリンの手当てが活発化したことから、ガソリン価格は原油価格に比べて相対的に
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堅調に推移した。他方、ナフサについては、6 月に台湾プラスチック工業(Formosa)の麦寮(Mailiao)で
のナフサ分解装置のメンテナンス作業実施(6 月 9 日から 45 日間の予定とされる)に伴う原料としてのナ
フサ需要の低下に加え、冬場の暖房需要期が終了したことにより LPG 需給が緩和、価格が下落してきた
こともあり、石油化学の原料としてナフサと競合するようになったことが、当該製品価格に下方圧力を加え
た結果、原油と比べて軟調に推移する場面も見られたが、夏場のガソリンシーズンに伴うガソリン品質調
整のために混入されるナフサの購入活発化もあり、6 月に入ってから価格は総じて持ち直しつつある。
5 月 13 日には 1,000 万バレル強の量であったシンガポールの中間留分在庫は、5 月 20 日には 900
万バレル半ばへと減少したものの、その後回復、6 月 10 日は 1,000 万バレル台半ばの水準と 5 月 13 日
に比べ微増となっている。このように必ずしも当該地域での中間留分在庫は旺盛に積み上がりつつある
わけではなく、またインドでも 6 月に始まるはずの雨季(モンスーン)の開始が遅延していることから、農
業部門における灌漑のための取水を行うために、軽油により稼働するポンプ装置を利用しなければなら
ないことに伴い、軽油の需要が堅調に推移しているものの、他方で、経済が低迷し軽油需給が緩和して
いると言われる中国から当該製品輸出が増加するとの観測が市場で発生していることから、例えばアジ
ア地域での軽油価格は上下双方から圧力が加えられた結果、当該製品価格は概ね原油のそれと連動
する形で推移した。
シンガポールの重質製品在庫は、5 月 13 日の 2,000 万バレル台後半の量から 6 月 10 日の 2,700 万
バレル台前半の水準へと大幅に増加した。欧州等での製油所で精製利幅が確保できていたことから、原
油精製処理活動が比較的活発に行われたことにより他の石油製品とともに重質製品の生産が進み、そ
れらがアジア諸国に流入したと見られることが、在庫増加の背景にあるものと考えられる。このようなこと
から、重質製品需給の緩和感が市場で醸成されたこともあり、例えば当該地域の重油価格は下落する傾
向にある。
3.
2015 年 5 月中旬から 6 月中旬にかけての原油市場等の状況
2015 年 5 月中旬から 6 月中旬にかけての原油市場においては、サウジアラビア東部における自爆テ
ロと見られる爆発の発生とイスラム国による犯行声明に伴う中東情勢不安定化と当該地域からの石油供
給途絶懸念の増大や、米国での原油在庫の減少等が、相場に上方圧力を加えた一方で、6 月 5 日の
OPEC 総会を控え、原油生産上限が据え置かれるとの観測や一部の中東産油国での高水準の原油供
給に伴う世界石油需給緩和感の市場での醸成、及び米ドルの上昇等が下方圧力を加えた結果、原油価
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格は WTI で概ね 1 バレル当たり 60 ドル前後で推移した(図 16 参照)。
5 月 18 日には、この日 JODI(Joint Organization Data Initiative)から発表されたデータで、サウジアラ
ビアの 2015 年 3 月の原油輸出量が日量 790 万バレルと 2005 年 11 月(この時は同 796 万バレル)以来
の高水準に到達していることが判明したことに加え、これまで米ドルが下落したことの動きに対する利益
確定の動きが市場で発生したことにより、米ドルが上昇したこと、翌 19 日には、この日米大手金融機関ゴ
ールドマン・サックスが、米国原油価格は 10 月までに 1 バレル当たり 45 ドル程度にまでに下落するであ
ろう旨の報告書を発表したと報じられたうえ、5 月 18 日に欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事が 5~6
月頃に ECB による債券購入を増額する意向を示した旨 5 月 19 日に明らかになったことによりユーロが
下落したことに加え、5 月 19 日に米国商務省から発表された 4 月の同国新築住宅着工件数が年率 114
万戸と 3 月に比べ 20.2%増加、2007 年 11 月(この時は同 120 万戸)以来の高水準となった他、市場の
事前予想(同 102 万戸)を上回ったことにより、米ドルが上昇したことから、原油価格は 5 月18~19 日の 2
日間で併せて 1 バレル当たり 2.43 ドル下落し、終値は 57.26 ドルとなった(なお、ニューヨーク商業取引
所(NYMEX)の WTI 原油先物 6 月渡し契約に関する取引は 5 月 19 日を以て終了したが、この日の 7 月
渡し契約の終値は 1 バレル当たり 57.99 ドル(前日終値比 2.25 ドル下落)であった(5 月 19 日の 6 月渡し
契約は前日終値比で 2.17 ドルの下落であった))。5 月 20 日には、この日日本国内閣府から発表された、
2015 年 1~3 月期の同国国内総生産(GDP)が前期比で年率 2.4%の増加と市場の事前予想(同 1.5~
1.6%の増加)を上回ったことに加え、5 月20 日に米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計
(5 月 15 日の週分)で、原油在庫が前週比で 267 万バレルの減少と市場の事前予想(同 100~175 万バ
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レル程度の減少)を上回って減少している旨判明したこと、また 5 月 21 日には、石油産業関連情報企業
Genscape が、5 月15 日から 19 日にかけ、米国オクラホマ州クッシングでの原油在庫が 74 万バレル減少
した旨報告したとこの日報じられたことから、NYMEX 原油先物契約受け渡し地点での原油需給の引き締
まり感を市場が意識したこと、5 月 21 日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(5 月
16 日の週分)が 27.4 万件と市場の事前予想(27.0~27.1 万件)を上回ったことに加え、同日全米不動産
業協会(NAR)から発表された 4 月の同国中古住宅販売件数が年率 504 万件と 3 月のそれから 3.3%減
少した他市場の事前予想(同 523~524 万件)を下回ったことで米ドルが下落したことにより、5 月 21 日の
原油価格の終値は 1 バレル当たり 60.72 ドルと、原油価格は 5 月 20~21 日の 2 日間で併せて 3.46 ドル
上昇した。ただ、5 月 22 日には、5 月 20~21 日の原油価格の上昇に対する利益確定の動きが市場で発
生したことに加え、5 月 22 日に米大手石油サービス企業 Baker Hughes から発表された同国石油坑井掘
削装置稼働数が 659 基と前週比で 1 基の減少にとどまっていた(同水平坑井装置稼働数は 565 基と前週
比で 1 基増加していた)旨判明したこと、5 月 22 日に米国労働省から発表された 4 月の同国消費者物価
指数(CPI)(食品及びエネルギーを除く)が前月比で 0.3%の上昇と市場の事前予想(同 0.2%の上昇)を
上回った他、イエレン米国連邦準備理事会(FRB)議長が、米国経済が予想通り回復していけば、年内に
も金利引き上げを実施することが適切であると予想している旨発言したことにより、米ドルが上昇したこと
から、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 1.00 ドル下落し、終値は 59.72 ドルとなった。
5 月 25 日は、米国戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)に伴う休日により、NYMEX では原油先物
契約に関する通常取引は実施されなかったが、5 月22 日に Baker Hughes から発表された同国石油坑井
掘削装置稼働数の下げ止まりの流れは 5 月 26 日の市場にも引き継がれたうえ、米国のシェールオイル
生産者は WTI が 1 バレル当たり 60 ドル近辺であり続ければ、活動を活発化させるであろう旨のゴールド
マン・サックスによる見解が 5 月 26 日に報じられたこと、イラクが日量 375 万バレルの記録的な原油輸出
を 6 月に予定している旨 5 月 26 日に報じられたこと、5 月 26 日に米国商務省から発表された 4 月の同
国耐久財受注(輸送機器を除く)が 前月比で 0.5%の増加と市場の事前予想(同 0.3~0.4%の増加)を
上回ったうえ、同日米国商務省から発表された 4 月の同国新築住宅販売件数が年率 51.7 万戸と 3 月か
ら 6.8%増加した他市場の事前予想(同 50.8~51.0 万戸)を上回ったことに加え、同じくこの日米大手民
間調査機関コンファレンス・ボードから発表された 5 月の同国消費者信頼感指数(1985 年=100)が 95.4
と 4 月の 94.3 から上昇したうえ、市場の事前予想(94.9~95.0)を上回ったことにより、米ドルが上昇したこ
と、5 月 27 日も、前日に報じられたイラクによる記録的原油輸出予定の流れを引き継いだことから、5 月
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27 日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 57.51 ドルと原油価格は 5 月26~27 日の 2 日間で併せて 2.21
ドル下落した。5 月 28 日には、この日 EIA から発表された同国石油統計(5 月 22 日の週分)で原油在庫
が前週比で 280 万バレルの減少と市場の事前予想(同86~200 万バレル程度の減少)を上回って減少し
ている旨判明したこと、5 月29 日も、5 月28 日に EIA から発表された同国石油統計で原油在庫が市場の
事前予想を上回って減少していた旨判明したことした流れを引き継いだことに加え、5 月 29 日にサウジ
アラビア東部にある都市ダンマームのイスラム教シーア派モスクで、自爆テロと見られる爆発が発生し、4
名が死亡、イスラム国が犯行声明を発表した旨報じられたことで、中東を巡る地政学的リスク要因に伴う
石油供給途絶の可能性に関する懸念が市場で増大したこと、5 月 29 日に米国環境保護局(EPA)が、
2015 年及び 2016 年のトウモロコシ由来エタノールの利用義務量を、それぞれ 134 億ガロン、140 億ガロ
ンとすべき旨提案、2007 年制定の同国エネルギー自給安全保障法で定める両年の利用義務量 150 億
ガロンから引き下げる旨示唆したことから、その分原油の利用量が増加するとの観測が市場で発生した
ことから、原油価格は 5 月 28~29 日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 2.79 ドル上昇し、5 月 29 日の終
値は 60.30 ドルとなった。
6 月 1 日には、6 月 5 日に開催される予定である OPEC 通常総会で現行の原油生産上限の据え置き
が決定するとの観測から、世界石油需給の緩和感の継続を市場が意識したことに加え、6 月 1 日に米国
供給管理協会(ISM)から発表された 5 月の同国製造業景況感指数(50 が当該部門拡大と縮小の分岐
点)が 52.8 と市場の事前予想(52.0)を上回ったことにより、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格
の終値は 1 バレル当たり 60.20 ドルと前週末終値比で 0.10 ドル下落した。6 月 2 日には、6 月 3 日に EIA
から発表される予定である同国石油統計(5 月 29 日の週分)で原油在庫が減少しているとの観測が市場
で発生したうえ、6 月 2 日に欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)から発表された 5 月のユーロ圏 CPI
が前年同月比で 0.3%の上昇と市場の事前予想(同 0.2%の上昇)を上回ったことに加え、ギリシャの債
務問題に関する協議で動きが見られることから、当該問題解決に対する市場の期待が増大したことによ
り、ユーロが上昇した反面米ドルが下落したことにより、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当た
り 1.06 ドル上昇し、終値は 61.26 ドルとなった。ただ、6 月 3 日には、OPEC 産油国間で日量 3,000 万バ
レルの原油生産上限を据え置きにするという合意が形成されている旨6 月2 日遅くに OPEC 産油国関係
筋が明らかにしたことが、6 月 3 日に報じられたこともあり、6 月 5 日の OPEC 総会において、事実上の減
産の見送りが決定されるとの観測が市場で増大するとともに、世界石油需給の緩和感継続に対する意識
が高まったこと、6 月 4 日も 6 月 5 日に開催される予定である OPEC 通常総会において原油生産上限の
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据え置きが決定されるとの市場の観測の流れを引き継いだことから、6 月 4 日の原油価格の終値は 1 バ
レル当たり 58.00 ドルと、原油価格は 6 月 3~4 日の 2 日間で併せて 3.26 ドル下落した。ただ、6 月 5 日
には、これまでの価格下落に対して利益確定の動きが市場で発生したことから、この日の原油価格は前
日終値比で 1 バレル当たり 1.13 ドル上昇し、終値は 59.13 ドルとなった。
6 月 8 日には、6 月 5 日に開催された OPEC 通常総会において原油生産上限の据え置きが決定され
たことで、世界石油需給の緩和感継続を市場が意識したことに加え、6 月 5 日に中国税関総署から発表
された 5 月の同国原油輸入量が 2,324 万トン(日量約 549 万バレル)と 2014 年 2 月(この時は 2,305 万ト
ン(日量約 603 万バレル)以来の低水準となった旨判明したことで、この日の原油価格は前日終値比で 1
バレル当たり 0.99 ドル下落し終値は 58.14 ドルとなった。ただ、6 月 9 日には、6 月 10 日に EIA から発表
される予定である同国石油統計(6 月 5 日の週分)で原油在庫が減少している旨判明するとの観測が市
場で増大したこと、果たして 6 月 10 日に EIA から発表された同国石油統計では原油在庫が前週比 681
万バレルの減少と市場の事前予想(同 150~170 万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明
したことから、6 月 10 の原油価格の終値は 1 バレル当たり 61.43 ドルと原油価格は 6 月 9~10 日の 2 日
間で併せて 3.29 ドル上昇した。しかしながら、6 月 11 日には、6 月 9~10 日の原油価格上昇に対する利
益確定の動きが市場で発生したことに加え、6 月 11 日に米国商務省から発表された 5 月の同国小売売
上高が前月比で 1.2%の増加と市場の事前予想(同 1.1~1.2%の増加)を一部上回ったことで、2015 年
中の金融当局による金利引き上げ観測が市場で増大したことから、米ドルが上昇したこと、6 月 11 日に
IEA から発表されたオイル・マーケット・レポートでサウジアラビア、イラク及び UAE の 5 月の原油生産量
が同機関による統計史上最高水準に到達した旨明らかになったことで、世界石油需給の緩和感を市場
が意識したこと、6 月 12 日も、6 月 11 日に IEA から発表されたオイル・マーケット・レポートでサウジアラ
ビア、イラク及び UAE の 5 月の原油生産量が同機関による統計史上最高水準に到達した旨明らかにな
った流れを引き継いだことにより、6 月 12 日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 59.96 ドルと、原油価格
は 6 月 11~12 日の 2 日間併せ 1.47 ドル下落した。
4.
今後の見通し等
イラクでは 6 月 10 日に同国中西部アンバル州ラマディの支配回復のために米国がイラク治安部隊の
訓練及び助言のために 450 名の軍事関係者の追加派遣を決定した。また、ウクライナ/ロシア関連では 6
月 3 日にウクライナ東部のドネツク西部にある都市マリインカでウクライナ政府軍と親ロシア派勢力との間
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で激しい戦闘が行われるなど、依然としてウクライナ津東部での停戦遵守に関しては疑問符が付される
状態となっている。このような中、6 月7~8 日に開催された主要7 ヶ国首脳会議(於ドイツ エルマウ)でウ
クライナ東部での停戦が遵守されない限り、ロシアへの制裁を継続することで意見が一致した他、6 月 10
日には米国のバイデン副大統領が必要に応じてロシアに対する追加制裁を実施する方針をウクライナ
のヤツェニク首相に伝えている。また、イエメンでは国連の仲介により 6 月 15 日より和平協議が開催され
る予定であるが、他方、サウジアラビア等の連合軍はイエメンのフーシ派勢力に対して空爆を実施する
など、依然として状況は不安定である。リビアではイスラム国が中部シルト地域を掌握するなど、こちらで
も混乱の度合いが増しているように見受けられる。このように、どの地域においても、情勢は安定化に向
かってはいないようである。ただ、これらの地域においては、状況が大きく動くことにより、石油供給途絶
懸念が市場で大幅に増大するという事態には至っていない。このため、これらの要因が原油相場に及ぼ
す影響は限定的な範囲にとどまるのではないかと考えられる(勿論突発的な事象の発生が原油相場に
大きく影響を与えるといったリスクは依然としてある)。
他方、当面地政学的リスク要因面で石油市場関係者の注目を集めるのは、ウラン濃縮問題を巡るイラ
ンと西側諸国等との最終合意を巡る協議であろう。期日は 6 月 30 日となっており、現時点では核兵器開
発の疑惑解消のための軍事関連施設への査察を含め、依然両者の主張には隔たりがあると言われてい
るが、多少期限の延長はありうるものの、最終合意に至るとの観測も市場にはある。ただ、最終合意に至
っても、イランが核プログラムを制限していることを確認するのに数ヶ月間を要することになろう。そのうえ
で制裁が解除されても、イランの油田に対してメンテナンス作業を施さないと同国での大幅な増産が困
難であると言われており、この作業にも数ヶ月間を要すると見られる。6 月 6 日にイランのザンギャネ石油
相は制裁解除後 2 ヶ月間で日量 50 万バレル程度、6~7 ヶ月で日量 100 万バレル程度の増産が可能と
発言しているが、これらの要因を考慮すれば、イランが大幅に増産できるようになるのは、早くても 2015
年遅くということになろう。メンテナンス作業が完了し、同国の油田からの増産体制が整うまでは、同国の
洋上在庫(3,000 万バレル程度とされる)の取り崩しで対応することになろうが、その場合供給増加余地は
限られることになる。ただ、それでも最終合意に至った場合、数年ではなく、数ヶ月単位で同国の原油生
産の増加が可能となるとの展望が市場で開けることから、この面では原油相場に下方圧力を加える格好
で作用すると思われる。また、そのような可能性故に、最終合意への交渉過程においても、原油相場の
上昇幅を抑制しやすいものと考えられ、最終合意に近づいた、もしくは最終合意に至った場合には、原
油相場が押し下げられる場面が見られることもあり得よう。
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米国等の経済指標類については、引き続き米ドルの変動を通じて原油相場に影響を及ぼすものと考
えられる。このため、米国経済が改善しつつあることを示す経済指標類が多く発表されるようだと、米国
金融当局による金利引き上げ観測が市場で増大するとともに米ドルが上昇、それにより原油相場に下方
圧力を加えるといった展開が考えられる。他方、欧州側では、6 月 11 日に IMF がギリシャの支援に関す
る協議を巡り、双方の主張が大きく隔たったまま進展が見られないため、交渉団を帰国させるなど、依然
としてギリシャの債務問題は不安定な状況が続いている。このようなこともユーロとともに米ドルを変動さ
せることにより、原油相場に影響を及ぼす可能性もある。中国については、経済刺激策による景気浮揚と
石油需要増加期待から原油相場を押し上げる圧力が加わる場面も見られるかもしれないが、不動産部
門での問題が根深いとされていることから同国経済が容易に回復するとは考えにくく、石油需要増加観
測も市場で継続的に発生しにくいことから、この面では原油相場への上方圧力は限定的であろうと考え
られる。
他方、米国では 5 月 23~25 日の米国メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)に伴う連休を以て、夏場
のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入した。そして、春場の製油所でのメンテナンス作業も終
了し、原油精製処理量が増加するとともに、原油在庫が伸び悩み気味(場合によっては減少)となる可能
性が高まることから、季節的な需給引き締まり感が市場で醸成されやすくなることにより、原油相場に上
方圧力を加えてくる可能性が考えられる。他方、5~7 月の米国主要7 シェールオイル鉱床における原油
生産量は前月比で減少となると推定もしくは予想(5 月が前月比で日量 4.3 万バレル、6 月が 7.2 万バレ
ル、7 月が 9.3 万バレルの、それぞれ減少)されていることから、市場でのこの先の米国原油生産量の伸
び悩み観測増大から、この面で原油相場が下支えされる可能性がある。しかしながら、Baker Hughes か
ら発表された米国石油坑井掘削装置稼働数は最近比較的小幅の減少にとどまっている旨判明しており、
原油価格の上昇とともに、掘削活動が下げ止まるとの観測も市場で発生しており、この面では石油需給
ファンダメンタルズ面からの原油相場への上方圧力を削ぐ格好となっている。それでもまだ、掘削装置稼
働数が下げ止まるという現象にとどまっており、実際原油生産が増加するという認識や予想も市場関係
者間では必ずしも確信をもって広がっているわけではないことから、石油需給ファンダメンタルズ面では、
当面原油相場に緩やかに上方圧力を加わるものと考えられる。
大西洋圏では 6 月 1 日にハリケーン等の暴風雨シーズンに突入した(暴風雨シーズンは例年 6 月 1
日~11 月 30 日である)。ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の
油田関連施設に影響を与えたり、また、湾岸地域の石油受入港湾施設や製油所の活動に支障を与えた
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Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
り(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網を切断することによ
り、製油所への電力供給が停止することを通じて操業が停止するといった事態が想定される)、さらには、
メキシコの沖合油田操業活動や原油輸出港の操業等が停止することにより米国での原油輸入に影響を
与えたりする(2014 年に米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量 73 万バレル超程度の原油を輸入して
いる)。現時点で予測機関から発表されている予測では、2015 年の大西洋圏でのハリケーンシーズンは
平年よりも不活発な暴風雨の発生が予想されている(表 2 参照)こともあり、この面では必ずしも市場を神
経質にするというものではない。それでも、このような予報に反してハリケーン等の活動が活発化する場
合もありうることから、今後のハリケーン等の実際の発生状況やその進路、そしてその予報等に留意すべ
きであろう。
表2 2015年の大西洋圏でのハリケーン等発生個数予想
熱帯性低気圧( 命名される もの)
2015年4月9日 コロラド州立大学
2015年5月27日 米国海洋大気庁(NOAA)
平年(1981~2010年平均)
う ち 強い勢力 * のハリケー ン となる もの
う ち ハリケー ン となる もの
7
3
1
6-11
3-6
0-2
12.0
6.5
2.0
*:カテ ゴ リー 3(風速時速111マイル(時速178k m))以上のハリケー ン
出所:機関資料をも とに作成
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