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尾池工業株式会社

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尾池工業株式会社
尾
池
工
業
株
式
会
社
ド
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ィウ
ンェ
グッ
をト
多
岐
に
展
開
「OIKE 透明導電性
フィルムワールド」の構築を
わが社がいま、目指しているのは、
「OIKE 透明導電性フィルムワールド」
の構築です。現在、ITO フィルムをス
尾池 均 社長
後は化粧品や導電性インキ、電極構成
材としての使用が実現するよう研究開
発を進めています。
積極的にアクション
できる人材を育成
パッタリングで加工し、それをタッチ
社会の変化に対応し、クライアン
パネル用に展開しています。これをさ
トのニーズに応えていくには、常にア
らに、ドライコーティング、ウェット
イデアソースを得るためのアンテナを
コーティング両方の技術を駆使し、透
張っておくこと、その感度を高めてお
明導電膜の幅を拡げるとともに、ハー
くことが大切です。技術はもちろん、
ドコート、ハイバリア、グリット電極
まずは精神面が重要だと考えています。
などを付加していこうという考えで
当社では、
「会社の発展のために、
す。これにより、
有機 EL や無機 EL 用、
そして自分自身の素晴らしい人生のた
太陽電池用、電子ペーパー用など幅広
めにも、渦の中心になって仕事に取り
い分野での活用が期待されます。
組もう」という言葉をテーマに掲げ、
以前勤めていた、京セラ創業者の稲盛
の一途をたどっています。かつてニッ
和夫氏の影響を受けたものです。
チだった分野も、もはやニッチではな
また、幹部や各部署の長となる社員
創業は 1876 年。刺繍などに用いら
現在、この基盤技術を用いて、当社
くなってしまいました。そこでわが社
を対象に、柔軟で広い視野を持つため
れる金銀糸の販売を生業として、当社
の売り上げの約 50 %を占めているの
は、ドライ&ウェットコーティングと
の管理職研修を実施しています。新入
の歴史は始まりました。その後、時代
がディスプレイ分野です。約 20 年前
いう基盤技術にとどまらず、サブテク
社員には日経産業新聞を半年間読ま
とともに、自社製造による機械化や量
にはほとんどゼロだったものが、ここ
ノロジーや二次加工技術などを活かし
せ、毎日レポートを提出するように指
産化など、様々な展開を行ってきまし
まで拡大しました。また、
スマートフォ
たニッチな新たな商品開発にも力を注
導しています。世の中の動きに敏感に
いでいます。
なり、自社の技術をいかなる場面で活
1990 年∼
二次加工製品の開発で、
ニッチでの高シェアを狙う
用できるか、常にイメージできる力を
93 年、上鳥羽工場を関西尾池工業株
式会社として設立。現在の尾池工業
の生産拠点となる。
ズを製品化する開発部門とは別に、独
た。そして 1956 年、先代が国産初の
ンやカーナビゲーションに使用される
真空蒸着機による金銀糸の製造を開始
タッチパネル用透明導電性フィルムが
したことが、事業拡大への大きなエ
このうちの 3 分の 2 を占めています。
ポックとなったといえるでしょう。
透明導電性フィルムは、スパッタリ
身につけるためのトレーニングのひと
つです。さらに、クライアントのニー
面に酸化インジウム ・ スズなどの透明
金箔、銀箔を近代的技術によってリー
自の新技術、新規事業の開発を進める、
て気化させ、フィルムに薄膜を形成す
導電膜を作り、導電機能を与えるもの
ズナブルに再現した、
「高砂箔 ®」が
フロンティアセンターも設立していま
る技術です。これにより金属などの持
です。またこの技術を応用した電磁波
あります。これはフィルムに着色層、
す。ニッチ分野での躍進、さらなる会
つ様々な機能をフィルムに付加するこ
シールド素材は、逆に電磁波遮断する
蒸着層、着色層を設け、フィルムから
社の発展のためには、ニーズを製品化
金 銀糸などの加 飾 材 料、 食 品などの
とができます。これに続き、スパッタ
機能を付加し、人体への電子機器障害
剥離させたものです。また、これを粉
するだけでなく、こちらから新しい商
品 質を守る包 装 材 料、 液 晶ディスプ
リング(真空中でイオン化した高エネ
を低減することができます。
末状にカットした、
「エルジ− ®」とい
品技術の提案をしていく積極的な姿勢
レイ分野における電子情報材料など、
ルギー粒子をターゲットに衝突させる
このタッチパネル用透明導電性フィ
う製品は、優れた光輝性を備え、レザー
が今後ますます必要になるでしょう。
幅 広いフィールドで自社 の 基 盤 技 術
ことにより、ターゲットを構成する成
ルムは、従来の抵抗膜方式から、静電
製品のコーティングやメタリック印刷、
を活かし、 発 展をつづける尾 池 工 業
分が粒子としてたたき出される。この
容量方式へとニーズが移ってきていま
身近なところではラメ入りのボールペ
粒子をフィルム表面に付着させる技
す。この分野の製品はクライアントの
ンのインクなどに使用されています。
術)技術を導入。ここに2つのドライ
要求が非常にシビアで、内容も多岐に
コーティング技術が確立しました。
渡ります。また商品サイクルが早く、
蒸着膜だけを粉末にしたのが「リーフ
ウェットコーティングという2つの技 術
の 組 み 合 わせから生まれる、 様々な
テクノロジ ー や 商 品 の 強 み、 新 たな
可能性を尾池均社長にうかがった。
06
1950 年∼
大手企業も参入し、マーケットは拡大
化物、硫化物などの蒸発材料を加熱し
いる。同社が誇るドライコーティング、
1940 年∼
47 年、株式会社尾池商店を設立。3
代目尾池耕三が 22 歳で代表取締役社
長に就任。
タッチパネル分野での
透明導電性フィルムの躍進
真空蒸着機導入による
伝統産業からの発展
二次加工製品のひとつに、伝統的な
進 取の気 質は当代にも受け継がれて
1930 年∼
34 年、2 代目・尾池鋼之輔が家業を
継承し、尾池池鋼之輔商店と改める。
社員に浸透させています。これは私が
ングによりプラスチックフィルムの表
向け果敢にチャレンジをつづけてきた
1876 年∼
76 年、前身の尾池鉄太郎商店を開設。
刺 繍 用 金 銀 糸 の 販 売、 製 造 を は じ
める。
しかし一方で透明導電性フィルムは
真空蒸着とは、真空状態で金属、酸
株 式 会 社。 代々、 新たなステージへ
Corporate
History
さらに、
「エルジ− ®」とは異なり、
さらに有機化合物や無機化合物を塗
常に変化しています。これに対応して
パウダー ®」
です。厚み 10 ∼ 500nm、
料化し、フィルムに塗料を薄膜状に塗
いくのは大変ですが、それをクリアす
平均粒径 1 ∼ 20µm の鱗片状の蒸着
布するウェットコーティング技術と組
ることがさらなるイノベーション、自
微分で、比表面積が大きいため様々な
み合わせ、当社の基盤技術へと発展し
社の成長につながると考え、積極的に
シーンでの応用が可能になります。実
ました。
取り組んでいます。
例としては既に、イメージングやデコ
レーションに使用されていますが、今
P ro f i l e
尾池 均(おいけひとし)社長
1956 年(昭和 31)京都市生まれ。大阪
大学大学院工学研究科を卒業後、京セラ
株 式 会 社 に 入 社。1986 年( 昭 和 61)、
尾池工業株式会社に入社。その後、取締
役、専務取締役、副社長の役職を経て、
1988 年(平成 10)、代表取締役社長に
就任。この他、尾池イメージング株式会
社など 4 社のグループ企業の代表取締役
社長、またフランス法人 NIPO SAS の代
表取締役会長を兼務する。公職では、京
都工業会、京都経営者協会、フィルム蒸
着工業会、京都金銀糸工業協同組合の理
事、また京都発明協会の評議員を務める。
56 年、国産初となる真空蒸着機を導
入。事業が大きく飛躍する転換期とな
る。58 年、社名を尾池工業株式会社
に変更。59 年、東京営業所を開設。
1960 年∼
60 年、上鳥羽工場を開設。
1980 年∼
80 年、倉吉尾池工業株式会社設立。
85 年、フランス、パリにリエゾンオ
フィスを開設。
2000 年∼
00 年、開発研究の新規事業開発部門、
フロンティアセンターを設立。02 年、
フランス法人、NIPO SAS に資本参
加。ここでは化粧品のパッケージな
どに用いられる転写フィルムの販売を
主 業 務とする。03 年、4 代 目 尾 池 均
が代表取締役社長に就任。タッチパ
ネルディスプレイ用導電性フィルムに
代表される、電子情報材料等の分野
に事業を拡大する。 05 年、中国、上
海に連絡事務所を開設。同年、尾池
イメージング株式会社を設立。同社に
て転写箔技術をもとに、イメージング
分野の事業を担う。同じく、尾池パッ
クマテリアル株式会社を設立。同社で
は主に、軟包装材料用蒸着フィルムを
中心とした、包装部材を開発、製造、
販 売する。06 年、 鳥 取 県 倉 吉 市 に、
尾池ファインコーティング株式会社を設
立。開発センターの研究開発と生産
技術を融合させた、精密ウェットコー
ティングフィルム事業の独立会社とす
る。 07 年、 中 小 企 業 庁 によ る、「 元
気 な モノ作り中 小 企 業 300 社 」 に 選
出される。「ものづくり日本大賞」(経
済産業省)の優秀賞を受賞する。
07
尾池工業株式会社
ニッチ分野で活躍する二次加工製品
世界初・日本初
ナンバーワン性能
トップシェア
尾池工業株式会社のコア技術となる、ウェットコーティングとドライコーティン
技術等概要
発展がつづくエレクトロニクス
分野に不可欠な高機能フィルム
プラスチックフィルムに金属や酸化物、硫黄物などの薄膜
や粒子を付着させ、機能を付加するドライコーティング技
タッチパネル用
透明導電性フィルム
リーフパウダー®
術。有機、無機化合物を塗料化し、フィルムに薄膜状に塗
グに、ナノテクノロジーを融合させて開発された独自製品、
「リーフパウダー ® 」。
ナノレベルの薄さを有した鱗片上の蒸着微粉は、新しい機能性材料として幅広
いジャンルで活かされています。
布するウェットコーティング技術。これら2つの基盤技術
にサブテクノロジーを組み合わせ、新しい機能を付加した
フィルムを開発。変化の著しいエレクトロニクス産業の細
かなニーズに応えています。
これまでにない薄さ、微細さが活用の鍵
尾池工業株式会社が保有する金属蒸着粉は 3 種あります。フィルムに蒸着を施しこれを
カットした、グリッター。フィルムに着色層、蒸着層、着色層を設け、フィルムから剥
【特徴 1】
スパッタリングで導電機能を付加
【特徴 2】
導電膜技術により高性能な電子機器を提供
離させた後、細かくカットした、「エルジー ®」
。そして鱗片状蒸着微粉である「リーフ
パウダー ®」です。「リーフパウダー ®」は鱗片状で厚み 10 ∼ 50 nm、粒径 1 ∼ 20 µm
タッチパネル用透明伝導性フィルムにはドライコーティ
透明度が高く、導電性の高い透明導電性フィルムは、光
というナノレベルの形状です。他の金属蒸着粉と比べ、比表面積が大きく、高アスペク
ングのひとつ、スパッタリング技術を採用しています。
と電気の両方を通す特性を活かし、カーナビゲーション
ト比を実現しています。
真空中でイオン化した高エネルギー粒子を Cu、ITO な
システムやスマートフォンなどのタッチパネルの他、エ
どのターゲットに衝突させることにより、ターゲットを
レクトロルミネセンスなどに広く使用されています。
構成する成分が粒子としてたたき出されます。この粒子
また、透明導電性フィルムは、電磁波シールド用素材に
をフィルム表面に付着させることで、プラスチックのフィ
も使用されています。
ルムに Cu、ITO の導電膜を形成し、導電性を与えます。
ここに
注目
背 景
独自性とニーズの一致
タッチパネル用透明導電性フィルムの
まり、着物や装飾品、仏具等を彩る金銀箔、 自社ブランド、
「テトライト TCF®」は、
メタリックパウダーの製造へと展開。さら 用途に応じて結晶膜の KA タイプ、非結
に食品を守る軟包装フィルムや、化粧品 晶膜の KB タイプ、後結晶膜の KH タイ
のパッケージング用に用いるメタリック転 プの 3 種を使い分けることができます。
写箔などの製造も可能な独自のドライ& また、iPhone に代表されるスマートフォ
ウェットコーティング技術を保持していま ンの普及により、タッチパネル分野は従
す。この技術をエレクトロニクス分野にも 来のガラスタイプの静電容量方式から、
応用し、事業を拡大しています。
自社が得意とする ITO フィルムを使用
したもの へと需 要 が 大きく変 化してお
り、その販売量も増加しています。
刺繍に用いられる金銀糸の製造からはじ
今後の展開
基 盤 技 術 であ るドライ&ウェットコ ー
ティング技術を最大限活かした、透明導
電性フィルムワールドの構築を目指して
います。ハードコートやハイバリア、グ
リット電極などと組み合わせ、有機・無
機 EL 用、太陽電池用、電子ペーパー用、
調光シート用など、タッチパネル用だけ
にとどまらない様々な用途での透明導
電性フィルムの展開を考えています。
リーフパウダー構成拡大図
効果と機能
「リーフパウダー ®」を利用した塗膜は、光輝性や緻密感が向上し、フリップフロップ
性を備えます。また、導電性、触媒活性、磁性、抗菌性、紫外線遮蔽性などの多機能化、
複合化が可能となります。塗膜の厚みが減少、添加量が削減することから省資源化にも
つながります。
実例と可能性
会社概要・基本情報(2012 年 1 月現在)
所在地 〒 600 -8461
京都府京都市下京区仏光寺通
西洞院西入ル木賊山町 181
U R L http://www.oike-kogyo.co.jp
T E L 075 -341 -2151(代表)
F A X 075 -341 -8058
08
業務概要
従業員数 600 名
プラスチックフィルムの表面加工製品およ
資 本 金 2 億 240 万円
び、二次加工製品の製造販売。
現在はイメージングやデコレーション材料として採用されています。また化粧品用途とし
ても注目を集めています。この他、自動車、バイク、建築材料などの塗装、印刷での使用。
衣料品、包装材などの産業素材としての利用など、様々な応用が可能です。研究機関では、
設 立 1876 年
リーフパウダーをリチウムイオン二次電池の負極構成材に使用することで、充放電時の体
代表者名 代表取締役社長 尾池 均
積変化を抑制する効果があることが実証されています。導電、電子材料としての採用も期
待され、これまでにない機能性材料といえるでしょう。
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