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陸上競技100m 種目のスタートにおけるフライングの影響 ~レースタイプ
陸上競技 100m 種目のスタートにおけるフライングの影響 ~レースタイプと心理的負担~ 島尻佳輔 佐川正人 (北海道教育大学大学院) (北海道教育大学岩見沢校) Effect of the false-start on the subsequent start of 100m sprinters ~ A relationship between race types and psychological disadvantage ~ Keisuke SHIMAJIRI and Masato SAGAWA Ⅰ. 緒言 あったが,スムーズに競技を進行させるため にはかかせないものであった. 陸上競技のトラック種目では,スターター さらに,センサーなどの技術革新によって のピストルの合図よりも先に動いたと判定さ 正確にフライングの判定が行われるようにな れた場合,不正スタートとしてフライングと った.タイマーはピストルの引き金に連動し みなされる.2003 年,このフライングのルー て自動的に作動し,同時に,競技者の足元に ルについて改正が行われた.改正以前は,1 あるスターティング・ブロックを蹴った際に 回のレースに対してフライングを 2 度侵した 加えられた圧力をセンサーが感知することに 競技者が失格となる, というルールであった. より,スタート信号が発信される.元々,ス しかし 2003 年より,1 度目のフライングが ターティング・ブロックは,短距離種目にお 誰の侵したものであっても, 全体の中で 2 度 いて,クラウチングスタートを行う際に競技 目及びそれ以降にフライングを侵した競技者 者のスタートダッシュを補助するための道具 が失格となる,という新しいルールが施行さ であった.しかし,国際大会などの大規模な れることとなった. 競技会では,このセンサーが備え付けられた レースにおいて, 競技者は自分のタイミン ことによって,医学的根拠に基づき,合図か グに合わせてスタートしたいという考えから ら 0.100 秒以内に反応すると,反応時間が極 故意にフライングを侵し,スタートを仕切り 端に短いと判定され,フライングとみなされ 直させるという行為を行うことがある.改正 るようになった. 以前のルールでは,1 人に対し,1 度のフラ このような新しいルールによって,以前よ イングが許されているため,1 回のレースの りも厳しくフライングの判定が行われるよう 中で,多くの競技者が故意にフライングを侵 になり,ある競技者の失格が話題になった. し,結果競技時間が大幅に長引いてしまうと 2003 年のパリ世界選手権,アメリカの いう事態がしばしば起こっていた. 2003 年の Jonathan(“Jon”) A. Drummond 選 手 は ルール改正は競技者にとっては不利なもので 100m に出場したが,その二次予選において 1 彼は 2 度目のフライングを侵したと判定され, スタイプは正反対であり,Tyson Gay は後半 失格を宣告される.彼の猛抗議によって競技 型,Asafa Powell は前半型であるとされる. は 1 時間中断し,皮肉にも競技時間の短縮を Asafa Powell はオリンピックのような大舞 狙ったルール改正が,結果的に競技時間を遅 台で取り零すことが多々あり,精神面の弱さ らせることになってしまった. が指摘されているが,この要因として,競技 フライングのトラブルはこの組で突発的に 者のレースタイプが関係しているのではない 起こったというわけではない.この組以前の かと考える. レースでも機械の反応であるがゆえに,見た 前半型・後半型の 2 つのレースタイプの中 目では判定することが難しいフライングが何 でも,特にスタートや加速局面を得意として 度もみられた.この年から改正された新しい いる前半型の競技者は,慎重なスタートが要 ルールの不自然さが一部で指摘されていた上 求される 2 度目以降のスタートでは,失格を に,微妙な判定のフライングが幾度も重なっ 恐れ,本来の思い切りのいいスタートが出来 ていた中でこのレースは始まり,問題のトラ なくなるということが多い. ブルが起こってしまった. 逆に,スタートや加速局面よりも,レース 陸上競技における 100m とは,メインスタ 後半での追い込みを得意としている後半型の ンドの直線 100m を走るタイムを競うトラッ 競技者は,元々,前半型の競技者ほどスター ク種目の一つである.トラック種目の中で最 トに比重を置いていないため,このような状 も距離が短いこの種目は,僅か 10 秒という 況であっても,前半型の競技者と比較して心 短時間の中で競技が行われ,0.01 秒単位で勝 理的な影響は少ないと考えられる. 負が決するという競技であり,1 度のミスが 以上から, 2 度目以降の,失格の危険性が 記録・勝敗に大きく影響する.そのため,他 高い状況でのスタートにおける心理的負担は, の競技と比較して,スタートダッシュの重要 競技者のレースタイプに影響を受けていると 性が高く,それに伴い,スタートにおける心 いうことが考えられる. 理的負担も大きいと言える.そして,1 度フ ライングがあった場合,2 度目及びそれ以降 Ⅱ. 目的 は誰がフライングを侵しても失格となるため, 心理的に追い込まれてしまう競技者も多い. 陸上競技の 100m は,僅か 10 秒という短 100m の競技者は,得意としている疾走区 時間の中で競技が行われ,1 度のミスが勝敗 間によって,主に,前半型・後半型のレース に大きく影響する.特に,スタートは最も集 タイプに分類される.身体的な負担という面 中力を要求され,非常に重要な区間の一つで では,前半型・後半型ともに,100m を走り あると言える.そのため,個人の感じる心理 きった時点でエネルギーが空になるよう,レ 的負担の大小が,その後のレースに対して, ースが展開される.しかし,心理的な負担と 有利・不利に働くと考えられる. いう面でみると前半型・後半型の間に差が生 本研究では,スタートや加速局面を得意と じているのではないかと考える. している前半型の競技者は,レース後半での Tyson Gay,Asafa Powell は,ともに世界 追い込みを得意としている後半型の競技者と でも最高レベルの 100m 選手であるが,レー 比較して,2 度目以降の,失格の危険性が高 2 い状況でのスタートにおける心理的負担が大 する競技者で構成される.跳躍はスピードが きいと仮定し,レースタイプと心理的負担の 必要とされる走幅跳,三段跳を専門種目とす 関係を明らかにすることを目的とする. る競技者で構成され,混成は,社会人は十種 競技,高校生は八種競技の競技者で構成され Ⅲ. 方法 る. 2 調査時期 1 調査対象者 2008 年 10 月 11 日の学連記録会最終戦に 陸上競技の 100m における状況を想定して 調査を行った.また,後日,競技者と直接対 いるため,調査は本種目に出場した経験のあ 面する機会を用意し,そこで同様の調査を行 る競技者に限定して行われた.調査対象者は った. 北海道の高校生~社会人の陸上競技者の中か ら,100m に出場した経験がある競技者,108 3 調査内容 名(平均年齢 20.157±1.725 歳)とした.調査対 インタビュー及びアンケート調査を行った. 象者は 100~400m(ハードル種目を含む)を専 (1)インタビュー調査 門とする短距離系種目の競技者,スピードが インタビュー調査項目は①性別 ②年齢 必要とされる跳躍系種目及び混成種目の競技 ③競技年数 ④専門種目 ⑤100m のパーソ 者であった.100m のパーソナルベストの平 ナルベスト ⑥スタートの得手・不得手 ⑦ 均は,男子が 11.295±0.345 秒,女子が 得意としている疾走区間の計 7 項目から構成 13.019±0.626 秒であった.競技者の専門種目 される. の分布は図に示す. (2)アンケート調査 競技者の不安得点を計るために, Charles 跳躍(7) 6% D. Spielberger らが作成した State-Trait 混成(4) 4% Anxiety Inventory-From Y(STAI-Y) を改良 し,日本の文化的要因を考慮して開発された 日本語版の状態- 特性不安尺度である ロングスプ リント(29) 27% State-Trait Anxiety Inventory-From JYZ(STAI-JYZ)を参考に,アンケートを作成 ショートス プリント (68) 63% した.状態不安とは,ある特定の場面で感じ られる不安であり, 本研究では 2 度目以降の, 失格の危険性が高い状況でのスタートに感じ られる不安が計られる.この状態不安得点が 高いほど心理的負担が大きいと判定される. 図 競技者の専門種目の分布 特性不安とは,個人の不安の感じやすさであ ショートスプリントは 100m・200m・ り,得点が高いほど不安を感じやすいと判定 110mH・100mH を主な専門種目とする競技 される. 者で構成され,ロングスプリントとは 状態不安・特性不安それぞれ各 20 項目の 200m・400m 及び 400mH を主な専門種目と 計 40 項目で構成され,状態不安は「全くな 3 かった」 「いくらかあった」 「かなりあった」 Ⅳ.結果 「はっきりあった」の 4 件法で回答され,特 性不安は「ほとんどない」 「時々ある」 「しば 1 レースタイプの違いによる心理的負担の しばある」 「いつもある」の 4 件法で回答さ 差(表) れる.また,不安得点を計算する際,不安が 前半型・後半型の間で,2 度目以降の,失 大きい競技者ほど得点が高くなるようにいく 格の危険性が高い状況でのスタートにおける つかの項目の得点を反転させて,計算を行っ 心理的負担(状態不安得点) の差を比較する た.反転項目は表に※で示す. ため,t 検定によって分析を行った.その結 果「2. 安心感があった」の項目で,前半型の 4 分析方法・群分け ほうが,後半型と比較して有意に高い値 (1)レースタイプの違いによる心理的負担の (p<.01)を示した.また「11. 自信があった」 差 の項目では,後半型のほうが,前半型と比較 インタビュー項目の得意な疾走区間の回答 して有意に高い値(p<.05)を示した. 結果をもとに競技者を前半型・後半型の 2 つ のレースタイプに分類し,2 つのレースタイ 2 不安の感じやすさの違いによる心理的負 プの間で,2 度目以降の,失格の危険性が高 担の差 い状況でのスタートにおける心理的負担(状 特性不安得点の平均によって high 群と 態不安得点)の差を比較するため,t 検定を行 low 群に分類された 2 つの群の間で,2 度目 う.また,前半型・後半型のどちらにも属さ 以降の,失格の危険性が高い状況でのスター なかった競技者は,分析の対象からは除外し トにおける心理的負担(状況不安得点) の差 た. を比較するため,t 検定によって分析を行っ (2)不安の感じやすさの違いによる心理的負 た.その結果, 「17. 心に悩みがあった」の項 担の差 目で,high 群(1.52±0.61)のほうが low 群 (1.22 ± 0.56) と比較して,有意に高い値 特性不安得点が高い群(high 群)と低い群 (low 群)の 2 群に分類し,2 群の間で,2 度目 (p<.05)を示した. 以降の,失格の危険性が高い状況でのスター 3 性別の違いによる心理的負担の差 トにおける心理的負担(状態不安得点)の差を 比較するため,t 検定を行う. 性別の違いによって,2 度目以降の,失格 2 群の群分けは,特性不安得点の平均を取 の危険性が高い状況でのスタートにおける心 り,平均得点より高い得点を示した競技者を 理的負担(状況不安得点) の差を比較するた high 群,低い得点を示した競技者を low 群と め,t 検定によって分析を行った.その結果, した. 「3. 緊張していた」の項目で,女子(2.70± (3)性別の違いによる心理的負担の差 0.87)のほうが男子(2.19±0.85)と比較して, 男子・女子の 2 群に分類し,2 群の間で,2 有意に高い値(p<.01)を示した.また,状態不 度目以降の,失格の危険性が高い状況でのス 安項目 1~20.の合計得点においても,女子 タートにおける心理的負担(状態不安得点) (53.78±7.95)のほうが男子(50.53±8.31)と の差を比較するため, t 検定を行う. 比較して,有意に高い値(p<.05)を示した. 4 表 レースタイプの違いによる心理的負担の差 項目 平均 t p (前半型) (後半型) 1. ※気持ちが落ち着いていた 2.80±0.86 2.45±0.92 1.958 n.s. 2. ※安心感があった 3.48±0.77 2.91±0.96 3.229 .0017 3. 緊張していた 2.32±0.91 2.37±0.84 -.275 n.s. 4. くよくよしていた 1.09±0.29 1.14±0.46 -.645 n.s. 5. ※気楽な気分だった 3.26±0.93 3.12±0.84 .810 n.s. 6. 気が動転していた 1.44±0.53 1.52±0.89 -.534 n.s. 7. 何か悪いことが起きないかと心配だった 1.57±0.91 1.87±0.86 -1.670 n.s. 8. ※ほっとして心休まる感じがした 3.73±0.52 3.58±0.67 1.210 n.s. 9. 何か不安な感じだった 1.86±0.71 1.95±0.84 -.594 n.s. 10. ※居心地のいい感じがあった 3.86±0.39 3.79±0.41 .912 n.s. 11. ※自信があった 2.57±1.05 2.95±0.77 -2.051 .0430 12. 神経質になっていた 1.94±0.72 2.06±0.83 -.770 n.s. 13. 気持ちが落ち着かずじっとしていられなかった 1.61±0.66 1.72±0.89 -.728 n.s. 14. ピリピリと気持ちが張り詰めていた 2.28±0.80 2.45±0.92 -.986 n.s. 15. ※くつろいでいた 3.63±0.71 3.60±0.53 .239 n.s. 16. ※満ち足りている感じだった 3.51±0.82 3.33±0.95 1.043 n.s. 17. 心に悩みがあった 1.32±0.47 1.50±0.74 -1.399 n.s. 18. 興奮しすぎて気持ちが落ち着かなかった 1.59±0.66 1.45±0.58 1.099 n.s. 19. ※何かうれしい気分だった 3.82±0.55 3.54±0.94 1.863 n.s. 20. ※快適な気分だった 3.80±0.56 3.52±0.89 1.930 n.s. 1~20 合計 51.59±7.32 50.91±9.03 .415 n.s. ※は反転項目 Ⅴ. 考察 もに反転項目であることから,得点を反転さ せて計算を行った. 1 レースタイプと心理的負担の関係 その結果「2. 安心感があった」の項目では, 前半型・後半型の 2 つのレースタイプの違 前半型の競技者のほうが,後半型の競技者と いによる 2 度目以降の,失格の危険性が高い 比較して有意に高い値(p<.01)を示している 状況でのスタートにおける心理的負担の違い ことから,2 度目以降のスタートでは,後半 をみると,分析結果から「2. 安心感があった」 型の競技者のほうが,前半型の競技者と比較 「11. 自信があった」の 2 項目について,有 して,1 度目のフライングがあった後でも, 意な差がみられた. また,この 2 項目は,と 安心してスタートにつくことができたと考え 5 られる.これは,前半型の競技者は,後半型 かる.しかしながら,今回はスタートの苦手 の競技者と比較して,2 度目以降の,失格の 意識と心理的負担との関係を示すことはでき 危険性が高い状況でのスタート時に生じる心 なかった.今後はスタートの苦手意識と心理 理的負担が大きいとした仮説を支持する結果 的負担,レースタイプとの関連についても検 であると言える. 討する必要がある. しかし,逆に「11. 自信があった」の項目 2 不安の感じやすさと心理的負担の関係 では,後半型の競技者のほうが,前半型の競 技者と比較して有意に高い値(p<.05)を示し 特性不安と状況不安の関係についての考察 ている.この分析結果は,前半型の競技者の を行う.特性不安とは,個人の不安の感じや ほうが,後半型の競技者と比較して,2 度目 すさであり,得点が高いほど不安を感じやす 以降でもスタートに自信を持っているという いと判定される.状況不安とは,状況下にお ことを示している. これは,前半型の競技者 ける不安であり,ここでの状況とは 2 度目以 のほうが,後半型の競技者よりも心理的負担 降の,失格の危険性が高いスタート時のこと が大きいという仮説とは逆の結果を示してい を示している. る. 不安の感じやすさによる心理的負担の違い 一部の項目にはレースタイプと心理的負担 をみると, 「17. 心に悩みがあった」の項目 の関係を示すことができたが、仮説を支持し で,high 群の競技者のほうが low 群の競技者 ない結果も示されている。本研究では,1 度 と比較して,有意に高い値(p<.05)を示してい 目のフライングが侵された場合,それに伴う る.high 群の競技者のほうが高い値を示して 心理的負担によって,前半型の競技者の心理 いることから,普段から不安を感じやすい競 的な優位さが失われ,後半型の競技者のほう 技者ほど 2 度目以降の,失格の危険性が高い が心理的に優位になるのではないかと予測し 状況でのスタートにおいて心理的負担を感じ ていたが,状態不安得点の合計による心理的 やすいと言える. 負担には 前半型・後半型の差が見られなかっ 3 性別と心理的負担の関係 たため,仮説を支持することはできなかった と言える. 性別の違いによる心理的負担の違いをみる 心理的負担に関連して、 インタビューの 「ス と,状態不安項目全体の合計得点においても タートの得手・不得手」の項目に対して,今 女子の競技者のほうが,男子の競技者と比較 回の調査では,後半型の競技者 48 名が全て して,有意に高い値(P<.05)を示している.ま 「苦手」もしくは「どちらでもない」と回答 た, 「3. 緊張していた」の項目で,女子の競 している(苦手=33 名, どちらでもない=15 名). 技者のほうが男子の競技者と比較して,有意 このインタビュー調査の結果から,後半型の に高い値(p<.01)を示している.女子の競技者 競技者のほとんどがスタートに対して苦手意 のほうが高い値を示していることから,2 度 識を持っており,スタートにおいて,フライ 目以降の,失格の危険性が高い状況でのスタ ングが 1 度も侵されていないという状況では, ートにおいては,女子の競技者のほうが,男 前半型の競技者のほうが後半型の競技者と比 子の競技者と比較して不安を強く感じ,心理 較して,心理的に優位な位置にいることがわ 的負担も大きいと考えられる. 6 このことは,女性は男性と比較して感受性 負担の大きさは一つの要因で決まるものでは が高く,まわりの状況に対して,反応が細や なく,いくつもの要因が関係していると考え かに表現される(Allan & Barbara Pease: ることができ,今後さらに検討を重ねる必要 2001)という先行研究と一致する. があると言える. また,女子の競技者と男子の競技者の特性 不安項目に違いがあるかをみると, 「3. 泣き Ⅶ. 引用・参考文献 たいような気持ちになる」 「12. 自信がない」 の 2 項目について女子の競技者のほうが,男 1) Allan and Barbara Pease (2001) Why 子の競技者よりも高い値(p<.05)を示した.こ men don't listen and women can't read の結果から, 女子の競技者は性格特性として, maps. 2) Harald Barkhoff and Elaine M. Heiby 男子の競技者よりも不安を感じやすい傾向に あり,状態不安得点の高さは特性不安に起因 (2004) Differences していると考えることができる. body-concept, and in self-concept, mood between training champion and competitor type athletes in artistic roller and figure Ⅵ. 総括 skating. 3) James Lowther and Andrew Lane 本研究では,スタートや加速局面を得意と している前半型の競技者は,レース後半での (2002) Relationships 追い込みを得意としている後半型の競技者と cohesion 比較して,2 度目以降の,失格の危険性が高 performance among soccer players. い状況でのスタートにおける心理的負担が大 4) Kay Porter and Judy Foster (1991) きいと仮定し,レースタイプと心理的負担の The mental athlete-Inner traning for 関係を明らかにすることを目的として進めら peak performance-. and between mood, satisfaction with 5) 石井直方 (2007) 究極のトレーニング. れた.また,不安の感じやすさ,性別の違い といった,それ以外の要因との関係について 講談社:東京 6) ジム レーヤー:小林信也 (1987) メンタ も検討を行った. ル・タフネス―勝つためのスポーツ科学. その結果,前半型と後半型の間で,心理的 負担に関して,いくつかの違いをみることが ティビーエス・ブリタニカ:東京 できたが,前半型のほうが後半型よりも心理 7) 徳永幹雄 (2003) ベストプレイへのメン 的負担が大きいという仮説については支持す タルトレーニング-心理的競技能力の診 ることができなかった.また,不安の感じや 断と強化-.大修館書店:東京 8) 中込四郎 (2004) アスリートの心理臨床. すさ,性別の違いによる比較からは,性格特 性として,普段から不安を感じることが多い 道和書店:東京 競技者ほど,女子の競技者のほうが男子の競 技者よりも,心理的負担を強く感じるという 結果を得ることができた. これらの結果から,フライング時の心理的 7