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平成 18 年度 教育論文
平成 18 年 度 教育論文 学ぶ楽しさと充実感を味わえる授業づくりをめざして ―子どもたちが主体的に取り組む体験的な活動を通して― 目次 はじめに Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 研究主題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1 研究主題 2 主題設定の理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)今日的 課題から (2)学習指 導要領から Ⅱ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 研究主題について 研究の構想 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ (3)児童の実態 と教師の願 いから 3 1 1 研究の仮説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2 研究の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 (1)取組の 視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 (2)研究の 構想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 Ⅲ 研究の実際 1 単元について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 指導計画・評価計画 3 研究の実際 6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (1)子どもたちの興味・関心を高めるための 教 材 ・ 教 具 の 工 夫( 仮 説 1 に 関 し て ) ・ ・ ・・・・ ・・・ ・ (2)学び が深まる学習 過程・学習形態の 工 夫(仮説2 に関して ) ・・・・ 7 13 ( 3 ) よ さ を 認 め 、 励 ま し 、 伸 ば す 指 導 と 評 価 の 一 体 化 ( 仮 説 3 に 関 し て )・ ・ 15 研究のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 1 研究の成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 Ⅳ はじめに 子どもたちには楽しく学校に来てほしい、楽しく学んでほしい。これが、教師として私 の 中 に あ る 思 い だ 。し か し 、 「 勉 強 が 楽 し い 」は「 テ レ ビ ゲ ー ム が 面 白 い 」 「遊びが面白い」 とは違うはずだ。大きな違いは「学び」の要素の有無である。子どもたちにとって「勉強 はきついもの、がんばらなくてはいけないもの」というイメージが、低学年にしてすでに 1 できているような気がする。 「 楽 し く 学 ん で ほ し い 」と い う 私 の 思 い は 、や は り 実 現 で き な いのだろうか。思いを現実のものにするにはどうしたらいいのだろうか。 学 習 指 導 要 領 の 中 に 、「 活 動 の 楽 し さ 」「 算 数 的 活 動 を 通 し て 」 と い う 言 葉 が 目 に 留 ま っ た。今まで何度となく見て、聞いてきた言葉である。意識して授業もしてきているはずで あ る 。 し か し 「 活 動 の 楽 し さ 」「 算 数 的 活 動 」、 こ れ が 「 楽 し く 学 ぶ 」 た め の キ ー ワ ー ド な の で は な い だ ろ う か と 改 め て 思 っ た 。遊 び や テ レ ビ ゲ ー ム の 面 白 さ で は な い け れ ど 、 「活動 の楽しさ」 「 分 か る 楽 し さ 」と い う も の が 学 習 の 中 に は あ る は ず で あ る 。こ の キ ー ワ ー ド を もとに授業づくりをしていきたいと考えた。 本年担任をしている2年生の子どもたち。これから学年が上がるにつれ、学習内容も難 しくなる。そのときに「勉強はきついもの、がんばらなくてはいけないもの」というイメ ー ジ の ま ま 中 学 年 、 高 学 年 に 上 が っ て ほ し く な い 。「 勉 強 の 中 に は 楽 し い こ と が い っ ぱ い 」 という思いを子どもたちに持ってほしいと思った。そして、そう思わせるような授業づく りを研究することが私に与えられた課題である。このような思いをもちながら、この研究 に取り組み、実践していくことにした。 Ⅰ 研究主題 1 研究主題 学ぶ楽しさと充実感を味わえる授業づくりをめざして ―子どもたちが主体的に取り組む体験的な活動を通して― 2 主題設定の理由 (1)今日的課題から 国 際 教 育 到 達 度 評 価 学 会 ( I E A ) の 「 国 際 数 学 ・ 理 科 教 育 動 向 調 査 」 の 2003 年 調査結果を見ると、 『 算 数 の 勉 強 が 楽 し い か 』と い う 質 問 に 対 し て 、日 本 は「 強 く そ う 思 う 」と 答 え た 児 童 の 割 合 が 29 パ ー セ ン ト で あ る 。こ れ は 、国 際 平 均 値 の 50 パ ー セ ン ト よ り も 21 ポ イ ン ト 下 回 っ て お り 、国 際 的 に 見 て 低 い レ ベ ル に あ る 。ま た 、「 そ う 思 わ な い 」 及 び 「 ま っ た く そ う 思 わ な い 」 に 対 す る 我 が 国 の 児 童 の 割 合 は 35 パ ー セ ントであり、統計的に高くなっている。 そこで子どもたちに、算数を学ぶ楽しさやよさを味わわせることが必要ではないか と考える。算数のもつ面白さ、不思議さ、美しさなどを子どもたちが感じ取り、子ど もたちの意識の中に「算数は楽しい」という意識が芽生えてくれば、算数の学習がも っと興味深いものになるのではないかと考える。子どもたちが算数は楽しい、算数は 面白い、算数はすばらしいと感じてくれるような授業を作り出していくことが大きな 課題である。 (2)学習指導要領から 学習指導要領では、数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能を習得し、 多面的にものを見る力や論理的に考える力、事象を数理的に見る力や処理することの よさ、自ら進んでそれらを活用しようとする態度の育成が重要視されている。それを 2 達成させるためには、子どもたちが自ら課題を見つけ、主体的に問題を解決する活動 を 通 し て 、学 ぶ こ と の 楽 し さ や 充 実 感 を 味 わ わ せ る 指 導 の 工 夫 が 大 切 で あ る と 考 え る 。 また、目標に「算数的活動を通して」とある。児童の実生活に基づいた作業的・体 験的な活動を取り入れていくことが大切である。 (3)児童の実態と教師の願いから 本学級は、29名の明るく活発な2年生である。 「三角形と四角形」 ( 形 を し ら べ よ う )の 学 習 を す る に 当 た っ て レ デ ィ ネ ス テ ス ト を 行 っ た 。 そ の 結 果 は 以 下 の 通 り で あ る 。( 表 1 ) 表1「レディネステストの結果」 (ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (カ) さんかく 57.1% 0% 50.0% 17.9% 93.0% 53.6% しかく 0% 60.7% 0% 3.6% 3.6% 3.6% どちらでもない 42.9% 39.3% 50.0% 78.6% 3.6% 42.9% (キ) (ク) (ケ) (コ) (サ) (シ) さんかく 0% 3.6% 53.6% 25.0% 46.4% 0% しかく 46.4% 17.9% 3.6% 0% 0% 82.1% どちらでもない 53.6% 78.6% 42.9% 75.0% 53.6% 17.9% レ デ ィ ネ ス テ ス ト の 結 果 か ら 、「 さ ん か く 」 を お む す び や 屋 根 の 形 、 山 の よ う な 形 、 「 し か く 」を 箱 や テ レ ビ の よ う な 形 と と ら え て お り 、不 定 形 の も の や 向 き が 傾 い た も の ( ア 、ウ 、キ 、ク )は 三 角 形 や 四 角 形 で な い と 考 え て い る 児 童 が 多 い 。角 が 丸 い も の や 閉じていないものも三角形や四角形であると考えており、仲間分けの根拠は曖昧であ ると考えられる。しかし、山のような形であっても(エ)や(ク)を三角形ととらえ ていない児童が多いことから、直線の数には気づいていると考えられる。 本学級の児童はこれまでに、図形の学習に対して非常に意欲的で、進んで形作りを したり、形見つけをしたりしてきた。図形の学習において、理由をつけて自分の意見 を話す児童や友達と教え合って学習する児童の姿も多く見られる。その一方で、うま く操作ができない児童や自分の考えを言葉で表現できない児童もいる。 今後学年が上がるにつれて、学習内容は具体的なものからより抽象的なものになっ て く る 。 た と え 学 年 が 上 が っ て も 、「 算 数 っ て 楽 し い 」 と 言 え る 児 童 で あ っ て ほ し い 。 そのために、特に低学年のうちに、作業的・体験的な活動を多く経験することで、 算数の持つ楽しさ・面白さを味わっておくことが大切である。そこで、子どもたちが 体験的に取り組む活動を取り入れたり、グループ学習やペア学習をしたりする中で、 学び合う楽しさや課題を解決する楽しさを味わわせたいと考えた。 3 3 研究主題について 「学ぶ楽しさと充実感」とは、算数の内容や方法の本質にかかわるものである。自 らの主体的な活動によって、数量や図形についての意味がよく分かったとき、学ぶこ との楽しさが感じられる。自分で実際に作業したり、体験したりして算数を学習する ことも楽しいことである。数量や図形についての知識や技能を確実に身につけたとき には、充実感が味わえる。自分で数学的な考えを生かし工夫して算数の問題を解決で きたときにも、楽しさと充実感が味わえる。そうした学習活動を充実させることによ って、算数への関心や意欲が高まる。それと同時に、算数の好きな児童が更に増えて いくようになると考えられる。そのような授業を作り出していくことが、教師にとっ ての大きな課題である。 また、 「 子 ど も た ち が 主 体 的 に 取 り 組 む 体 験 活 動 」と は 、数 量 や 図 形 に つ い て の 意 味 を理解し、考える力を高め、活用していくための土台となるものであると考える。つ まり、これが「算数的活動」である。この算数的活動を通して数量や図形についての 意味を理解し、次第に具体物を用いない念頭での理解も可能となってくる。したがっ て、算数の学習では具体物を用いたり、実際に作業や体験を十分に取り入れたりする ことが重要だと考える。 これらを踏まえた上で、学ぶ楽しさと充実感を味わえる授業づくりの在り方を研究 していく。 Ⅱ 研究の構想 1 研究の仮説 【 仮 説 1】 子 ど も た ち の 興 味・関 心 を 高 め る た め の 教 材・教 具 の 工 夫 を す れ ば 、子 ど も た ち は 意 欲的に学習に取り組み、力をつけることができるであろう。 【仮説2】 学 び が 深 ま る 学 習 過 程・学 習 形 態 を 工 夫 す れ ば 、子 ど も た ち は 楽 し く 学 び 、充 実 感 を 味わうことができるであろう。 【仮説3】 よ さ を 認 め 、励 ま し 、伸 ば す 指 導 と 評 価 の 一 体 化 を 図 れ ば 、子 ど も た ち の 学 習 意 欲 を 高めることができるであろう。 2 研究の方法 (1)取組の視点 【 子 ど も た ち の 興 味 ・ 関 心 を 高 め る た め の 教 材 ・ 教 具 の 工 夫 】( 仮 説 1 に 関 し て ) ○ ゲームや具体物の操作を取り入れた学習 ○ 学習シートの工夫 ○ 児童の視覚に訴える図形の提示の仕方の工夫 ○ 児童の意欲を高めるためのキャラクターの登場 4 【 学 び が 深 ま る 学 習 過 程 ・ 学 習 形 態 の 工 夫 】( 仮 説 2 に 関 し て ) ○ 学習過程の工夫(多様な学習活動) ○ 学習形態の工夫(ペア学習を取り入れた学び合いの場の設定) 【 よ さ を 認 め 、 励 ま し 、 伸 ば す 指 導 と 評 価 の 一 体 化 】( 仮 説 3 に つ い て ) ○ 児童が伸びを実感できる評価カードの作成 ○ 評価カードの工夫 ○ 学習意欲を高めるための評価カードの活用 (2)研究の構想 算数が好き 学ぶことの楽しさ・充実感 基 礎・基 本の 確実な 定着 5 指導と評価の 児童の興味・関心 一体化 学習過程・ 教材・ 教具の工夫 学習形態の工夫 「 分かっ た」「で きた」 Ⅲ 研究の実際 1 ―2 年算数 単 元 『 三 角 形 と 四 角 形 』( 形 を し ら べ よ う ) ― 単元について 本単元では、ものの形の観察や構成、分類などの活動を通して、平面図形に親しみを 持 た せ な が ら 平 面 図 形 に つ い て の 理 解 の 基 礎 と な る 経 験 を 一 層 豊 か に す る と と も に 、三 角形や四角形についての概念を理解することをねらいとしている。 これまで児童は、身の回りにある立体を観察、分類し、さらに立体を構成している面 の形に着目して、まる、さんかく、しかくを感覚的にとらえている。 そこで本単元では、直線で囲んだ形のなかま分けをするという具体的操作活動を通じ て 、「 三 角 形 」「 四 角 形 」 の 定 義 に つ い て 学 習 す る 。 そ の 定 義 を も と に 、 弁 別 、 点 構 成 、 線構成や面構成の力をつけ、身の回りの具体物から三角形や四角形の形を見つけ出すこ とができるようになると考えられる。 2 指導計画・評価計画 時 学習内容 ◎目標および ○評価規準(観点) 間 ○点と点を直線で結んで、魚を直線で ◎「 魚 つ か ま え ゲ ー ム 」を 通 し て 、三 角 形 ・ 囲み、できた形を 2 つのなかまに分 ける。 四角形について知ることができる。 ○「 魚 つ か ま え ゲ ー ム 」に 関 心 を 持 っ て 取 り 1 ○「 三 角 形 」 「 四 角 形 」の 用 語 と 定 義 を 知る。 組 ん で い る 。( 関 ) ○ 直 線 で 囲 ん だ い ろ い ろ な 形 を 、直 線 の 数 に ○「三角形と四角形について調べる」 着目して三角形と四角形に分けることが という単元の課題をつかむ。 で き る 。( 考 ) ○三角形と四角形の用語と定義を知る。 (知) ○形を見て三角形と四角形を見つけ 1 る。 ◎三角形と四角形の弁別と点構成ができる。 ○ 三 角 形 や 四 角 形 を 見 つ け 、そ の わ け に つ い ○点と点を直線で結んで三角形と四角 形をつくる。 ○紙を 3 回折って三角形をつくる。 て 説 明 で き る 。( 考 )( 知 ) ○ 三 角 形 や 四 角 形 の 点 構 成 が で き る 。( 表 ) ◎紙を折ったり切ったりして三角形や四角 ○三角形の紙を2つに切るとどんな形 1 形をつくり、その理解を深める。 ができるかを予想し、2つの図形に ○ 三 角 形 の 線 構 成 が で き る 。( 表 ) 分け、切り取る。 ○面構成を通して三角形や四角形について ○2つの三角形、三角形と四角形のつ 理 解 を 深 め て い る 。( 知 ) くりかたを話し合う。 ○写真を見て、三角形や四角形を見つ ◎ 身 の 回 り か ら 、三 角 形 や 四 角 形 の 形 を し た ける。 ものを見つける。 1 ○教室や他の場所で三角形や四角形の ○身の回りから三角形や四角形の形をした 形をしたものを見つけ、話し合う。 ものを進んでさがし出そうとしている。 (関) 1 ○学習内容の自己評価 6 3 研究の実際 (1) 子どもたちの興味・関心を高めるための教材・教具の工夫(仮説1に関して) ① ゲームや具体物の操作を取り入れた学習 ・『 魚 つ か ま え ゲ ー ム 』 「 三 角 形 」「 四 角 形 」 の 定 義 は 、 や や 抽 象 的 で 、 児 童 に と っ て は 理 解 し に く い 概 念であるので、点と点を直線でつないで魚を囲む具体的な活動を取り入れて、それ らの概念づくりを図る。教科書では、点と点を結ぶ活動を通して学習するようにな っている。本学級には、集中力が持続しなかったり作業することが苦手だったりす る児童がいる。そこで直線を引く活動そのものにも楽しみながら興味を持たせたい と 考 え 、『 魚 つ か ま え ゲ ー ム 』( 図 2 ) を し な が ら 点 と 点 を 直 線 で つ な ぐ 活 動 を す る ことにした。 ここでのゲームの目的は、直線を引くという活動自体に興味を持たせることであ る。三角形・四角形が「直線で囲まれてできた形」ということに自然と目が向き、 スムーズに定義できなければならないので、ゲームのルールは分かりやすく、単純 なものにした。 図2「魚つかまえゲーム」 【魚つかまえゲーム】 〈やりかた〉 ○ジャンケンをする。 勝ち…直線を2本引く 負け…直線を1本引く。 ○魚の周りを直線で囲む。 〈ルール〉 ○ 点と点を直線でつなぐ。 ○ 定規を使って直線を引く。 ○ 魚がはみ出ないように囲む。 ○ ひとつの魚を囲んでから、 次の魚にチャレンジする。 図3「魚つかまえゲームをする児童の様子」 ぼくは勝った じゃんけん、 か ら 、2 本 引 け ぽん! るぞ。 7 「 魚 つ か ま え ゲ ー ム 」で は 、子 ど も た ち は 意 欲 的 に 、楽 し ん で 学 習 す る 姿 が 見 ら れ た 。 ( 図 3 ) 授 業 終 了 後 に は 、「 も う 1 回 ゲ ー ム を し た い 。」 と い う 声 も 上 が っ た 。 三 角 形 と 四角形の定義を知るという子どもたちには理解するのが難しい学習であったが、 「魚が逃 げないようにしっかり囲む」というゲームのルールと重ね合わせて理解していた。 そのことが、次時の「三角形と四角形の弁別」の学習で弁別の理由を述べた子どもの 言 葉 か ら わ か っ た 。( 図 4 ) 図4「三角形と四角形の弁別での児童の発言」 この形は、三角形ではないと思います。 何でかと言うと、この形はお魚がにげてし まうから、かこまれていない形だからです。 三角形は、かこまれていないとだめなので、 これは、三角形ではありません。 子どもたちは魚つかみゲームをしたことで、 「 直 線 で か こ ま れ て い る 」=「 お 魚 が に げ ないように直線でつなぐ」というイメージで理解していることが分かった。 ・なかま分け 『 魚 つ か ま え ゲ ー ム 』で 、実 際 に で き た 形 を 2 つ の 仲 間( 三 角 形 と 四 角 形 )に 分 け る 。 その際、カ ードに切り分 けた 6 枚のカード( 図5)を学 習シートの上 で操作し 、なかま 分 け を す る 活 動 を 取 り 入 れ た 。( 図 6 ) 一斉授業の中で、なかま分けすることも可能である。しかし、自分自身が作った図形 を使ってなかま分けすることで、より興味・関心を持って活動すると考えた。 図5「魚カード」 図6「カードを使ってなかま分け をする児童」 「なかま分け」では、実際に図形のカードを操作してなかま分けしたので、子どもた ち は 試 行 錯 誤 し な が ら 活 動 す る こ と が で き た 。な か ま 分 け し た 後 、な か ま 分 け の 理 由( 子 ど も た ち へ の 発 問 は「 な か ま 分 け し た 形 の 同 じ と こ ろ や に て い る と こ ろ 」と し た 。)を 書 かせたが、実際に自分で作った図形をよく見てなかま分けしていたので、図形の構成要 素である直線に着目することにつながり、図形の特徴をつかみ自分なりの言葉で書くこ 8 とができた。 6 枚のカードを使ってなかま分けをするという具体物の操作によって、子どもたちは 活動に興味・関心を持ち意欲的に活動し、三角形・四角形の定義を知ることができたと 考えられる。 ② 学習シートの工夫 ・児童の思考にそった学習シート 子どもたちにとって学習シートが分かりやすいものであれば、子どもたちは進んで 学習を進めていく。進んで学習できれば、そこに学習する喜びがある。また、1時間 の 学 習 が 終 わ っ た と き に 、 子 ど も た ち が 「 今 日 は 、 こ の こ と を 勉 強 し た ん だ 。」「 こ れ だ け 分 か っ た 、で き た 。」と い う 実 感 が 味 わ え る と 、学 習 す る 喜 び 、充 実 感 が 出 て く る 。 そこで、学習シートが子どもたちの思考にそったもの、学習の跡が残るようなもの になるように工夫した。作成に当たっては、他のクラスに協力を得て事前に使っても ら い 、 そ の 結 果 を 元 に 改 良 を 加 え て い っ た 。( 図 7 ) シートの一番下に移動 図7「学習シートの変遷」 学習シートは、ほぼ板書と同じにな るようにした。学習の流れでは、最後 に「三角形」と「四角形」と書いて学 習のまとめをする。 板書と同じように「三角形」と「四 角 形 」を 一 番 上 に 書 く 学 習 シ ー ト だ と 、 子どもたちの学習の流れに逆らうこと になり、使いづらいことが分かった。 定義を書く活動を省略 こ の 学 習 シ ー ト で は 、定 義 を 書 く 枠 を 作 っ て い た 。し か し 、こ の 時 間 で は 直 線 で 点 をつないで魚を囲むという具体的な活動 を 通 し て 、三 角 形・四 角 形 の 定 義 を 知 る こ とがめあてである。 そ こ で 、活 動 の 時 間 を 十 分 に 確 保 す る た めに、書く活動を省略した。 をなかま分けした「わけ」を書くように していた。しかし、そこの活動で子ども たちに戸惑いが見られた。子どもたちが 三角形・四角形の特徴をつかんで、なか ま分けの理由が子どもたち自身でも分か りやすくなるように「わけ」を「同じと ころやにているところ」に変更した。 9 「わけ」から「おなじところ や、にているところ」に変更 この学習シートでは、三角形と四角形 ( 図 8 )「 実 際 に 使 用 し た 学 習 シ ー ト 」 このように学習シートに改良を加えていったのだが、新しい学習シートを使うたびに 子どもたちが生き生きと学習するようになっていった。枠のわずかな場所移動、言葉の 変更によって子どもたちの活動に対する取り組み方が変わった。児童の思考・学習の流 れにそった学習シート(図8)を作成することで、子どもたちは時間・気持ちの両面に おいてゆとりを持って学習を進めることができた。そのため、子どもたちが活動したこ とを十分にまとめに生かすことができた。 学習シートの工夫は、子どもたちが主体的に活動するという点で有効であったと考え られる。 ・学習シートの形式の統一 前に述べた学習シートの工夫と同じように、子どもたちにとって学習シートが分かり やすいものであれば、子どもたちは楽しみながら進んで学習を進めていく。形式を統一 させるというのも、子どもたちにとって分かりやすい学習シートになると考える。 そこで、単元の中でできるだけ形式を統一し、子どもたちがスムーズに学習を進めら れ る よ う な 学 習 シ ー ト を 作 成 し た 。( 図 9 ) 図9「形式を統一させた学習シート」 三角形、四角形の用語と定義 を知る学習でのシート 三角形と四角形の 弁別での学習シート 紙を折ったり切ったりして、三角形や 四角形を作る活動での学習シート 10 学習シートの形式を統一したことで、子どもたちは自分なりの学習のまとめができる ようになってきた。考えたり、まとめたりすること自体に興味・関心を持って学習をし ていた。本単元の学習を進めるたびに、学習シートに自分の考えを、自分の言葉で説明 を加えたり図を描き加えたりしながらまとめる児童が増えてきたことからも、興味・関 心 の 高 ま り が う か が え る 。( 図 10) 分かりやすい学習シートを用いた活動を通して、活動への興味・関心が高まり、図形 についての意味を理解、納得し、実感することができたようだ。 図 10「 説 明 を 加 え な が ら ま と め て い る 児 童 の 学 習 シ ー ト 」 三角形、四角形の弁別に対して、 自分なりの言葉で理由を書くこと ができている。 作業の手順を図に描いて説明している。 ③ 児童の視覚に訴える図形の提示の仕方の工夫 子どもたちが図形に注目して考えをまとめられるように、提示の仕方を工夫した。 三角形と四角形になかま分けする際は、子どもたちが手元に持っているカードと同じに なるように、イラストの描いてある図形カード(図11)を提示した。イラストのある図 形カードは、なかま分けの際、自分と他の人のなかま分けの仕方を確かめるときには有効 である。その後の活動(なかま分けの理由を考える)では、図形の特徴をつかむことが大 切である。そこで、子どもたちの目がイラストではなく図形そのものに向くようにする必 要があると考えた。ここでの工夫として、イラストのある図形と図形のみのものを両面に 貼り付けておき、なかま分けの時にはイラストありの図形を掲示し、なかま分けの理由を 考 え る と き に は カ ー ド を 裏 返 し て 図 形 の み の カ ー ド ( 図 12) を 掲 示 す る よ う に し た 。 図 11「 イ ラ ス ト 入 り 図 形 カ ー ド 」 図 12「 図 形 の み の カ ー ド 」 裏返す 11 ま ず 図 形 を 裏 返 さ ず に 掲 示 し( イ ラ ス ト 入 り 図 形 カ ー ド の ま ま )、な か ま 分 け の 理 由 を考える活動をさせたら、魚の種類のことについてなかま分けの理由を書いた児童が 数名いた。その後、裏返して図形のみのカードを掲示し、同じ発問をすると、図形の 構成要素に着目し、理由を書けるようになった。 このことから図形の掲示の仕方を工夫したことで、子どもたちが課題を明確にとら えることができ、学習活動に集中して取り組むことができたと考えられる。 ④ 児童の意欲を高めるためのキャラクターの登場 ・算数大魔王 算数大魔王は、年間を通じて算数のいくつかの単元にわたって登場させてきた。算 数大魔王の絵をはった袋から「挑戦状」として出題したり、算数大魔王を黒板に貼っ て問題を出したりしてきた。 本単元の授業では、同学年の先生に算数大魔王になってもらい、まとめの問題の出 題 と 次 時 の 予 告 を し て も ら っ た 。( 図 14) 図 13「 算 数 大 魔 王 か ら の 挑 戦 状 」 図 14「 算 数 大 魔 王 の 登 場 」 この形は、 三角形かな?それとも 四角形かな? きみたちは、答えられ るかな? 「 算 数 大 魔 王 」 の 登 場 は 、 子 ど も た ち も 毎 回 楽 し み に し て い る 。「 算 数 大 魔 王 に な ん か 負 け な い も ん ね 。」と 言 い 、楽 し み な が ら 課 題 に 取 り 組 ん で い る 。学 習 後 の 振 り 返 り カ ー ド に も「 算 数 大 魔 王 の 問 題 が 2 問 解 け ま し た 。」な ど の 感 想 が 書 か れ る こ と が あ る。算数大魔王は、子どもたちの学習の楽しみ・励みになっている。 ・海の生き物たち 2年生では、海の生き物の学習が多く、国語「スイミー」や「サンゴの海の生きも の た ち 」、 図 工 「 紙 ね ん 土 で か こ う 」( 海 の 中 の 様 子 を 描 こ う )( 図 15) な ど で 何 度 も 登場してきた。また、ご褒美として魚のシールを様々なところに貼ってきた。そのよ うな経緯があって、海の生き物たちは、子どもたちが大好きなキャラクターであり、 大変親しみを持っている。 算数の教科書では、点と点を直線で囲む活動として「どうぶつのいえをつくろう」 と な っ て い る 。活 動 と し て は 似 て い る も の で あ る が( ゲ ー ム を 取 り 入 れ た こ と は 除 く )、 直線を引くという作業的なものであっても、三角形と四角形の定義を学習するに当た 12 っては直線を引くということが、図形の構成要素に自然に目を向けるために大変重要 な活動である。 そこで、子どもたちに直線を引く活動により興味を持ってほしいと考えた結果、動 物を子どもたちが好きな魚にかえ、 「点と点を直線でつないで魚がにげないようにしよ う 。」 と い う 活 動 を 取 り 入 れ る こ と に し た 。 図 15「 2 年 生 で 何 度 も 出 て く る 海 の 生 き 物 た ち 」 「 海 の 中 の 生 き 物 た ち 」が 出 て き た だ け で 、子 ど も た ち か ら 歓 声 が 上 が る 。今 回 の「 魚 つ か ま え ゲ ー ム 」 も 、「 イ カ を ゲ ッ ト し た 。」 と 言 い な が ら 楽 し ん で 活 動 し て い た 。 海 の 生き物に対してかなりの興味を持っているので、子どもたちの意欲を高める効果があっ たと考える。 (2)学びが深まる学習過程・学習形態の工夫(仮説2に関して) ① 学習過程の工夫 学 習 過 程 の 工 夫 と し て 、1 時 間 の 学 習 の 中 に 多 様 な 学 習 活 動 を 取 り 入 れ た 。 ( 図 16) 児童の実態として、集中力が続かなかったり活動に意欲がもてなかったりする児童が 数名いる。そのような児童でも一つ一つの活動の時間が短ければ、その時間集中して 取り組むことができる。 そこで子どもたちの学習意欲 を持続させ るた めに、多様な学 習活動を取り 入れた。 子どもたちは、それぞれの学習活動において意欲的に集中して取り組んでいた。一つ の活動時間が長くなると、作業の進み具合の差が大きくなりがちである。しかし、多 様な学習活動を取り入れたことで、その都度スタートラインをそろえることができ、 作業の差がほとんどない状態で授業を進めることができた。 結果として、授業が終わったときにほとんどの子どもたちがすべての課題を達成す ることができ、子どもたちに達成感・満足感を味わわせることができた。 13 図 16「 学 習 過 程 の 工 夫 」 ゲーム 作業 魚つかまえゲーム カードを切り分ける 考える なかま分けをし、その理由を考える。 深める なかま分けの理由を隣同士で話し合う。 まとめる な か ま 分 け の 理 由 を「 三 角 形 」 「 四 角 形 」を 学 習 シ ー ト に 書 く 。 ま と め る・ふ り か え る ② 「 三 角 形 」「 四 角 形 」 の 定 義 を 声 に 出 し て 読 む 。 学習形態の工夫 学 習 形 態 の 工 夫 と し て 、 ペ ア 学 習 を 取 り 入 れ 学 び 合 い の 場 を 設 定 し た 。( 図 17) 上記で述べた通り、児童の実態として、理由をつけて自分の意見を話す児童や友達 と教え合って学習する児童の姿も多く見られる一方で、うまく操作ができない児童や 自分の考えを言葉で表現できない児童もいる。そのことを考慮し、ペア学習を取り入 れ、学び合う楽しさや課題を解決する楽しさを味わわせたいと考えた。 まず、主体的に学習するということを大切にするために、必ず自分で考える「一人 学び」の時間を確保した。その後、考えを共有し、自分の考えに自信を持たせたり、 発表の練習をしたりするための「ペア学習」を取り入れる。それから、全体への話し 合 い を し 、考 え を 深 め た り 広 げ た り す る 活 動 を 行 う 。最 後 に 、 「 一 人 学 び 」へ 戻 し 、ま とめたり振り返ったりする活動を行う。 図 17「 学 習 形 態 の 工 夫 」 一人学び ペア学習 全体学習 一人学び 自分で 考えを 深める・ まとめる 考える 共有 広げる ふりかえる 「ペア学習」をする前に「一人学び」の時間を確保したことで、学習カードに、自 分の意見のあとにペア学習で出てきた意見を書き加える児童の姿が多く見られた。そ のため、一人学びのみ、ペア学習のみのときよりも学習に深まりが出てきた。一人学 びの自分の意見がペア学習に生かされるので、子どもたちも満足感を得ていたように 思う。また、ペア学習を取り入れたことで、普段はなかなか自信が持てずに挙手でき ない児童も、積極的に発表していた。学習形態を工夫したことで、一人一人の思いや 意見が全体に反映され、学習が深まり、一人一人が充実感を味わえたと考えられる。 14 (3)よさを認め、励まし、伸ばす指導と評価の一体化(仮説3に関して) ① 児童が伸びを実感できる評価カードの作成 ふ り か え り カ ー ド は 、 子 ど も の 意 欲 を 持 続 さ せ る も の と し て 作 成 し た 。( 図 18) し た が っ て 評 価 項 目 は 、1 時 間 1 時 間 の 学 習 内 容 に 関 す る も の で は な く 、子 ど も の 関 心・ 意欲・態度に関するものにした。また、単元を通して同じ評価カードを使用し評価す ることで、子どもも教師も一目で伸びが分かるようにした。 評 価 項 目 に つ い て は 、 は じ め は 、「 友 達 と 協 力 し て 学 び 合 う こ と が で き ま し た か 。」 という項目を加えた4項目だった。しかし、項目が多すぎると子どもたちが評価する のが難しくなる。 「 学 び 合 う 」と い う こ と は 2 年 生 に は 難 し い と 考 え 、3 つ の 評 価 項 目 にした。 評 価 方 法 と し て は 、「 よ く で き た … 青 、 だ い た い で き た … 黄 、 も う 少 し … 赤 」 で 子 どもたち自身が自己評価する。評価の規準については、色を塗る際に評価となる規準 を教師が口頭で説明しながら色を塗るようにした。色で評価することで子どもの伸び が 一 目 瞭 然 と な る 。記 述 の 欄 に は 、 「 今 日 の 学 習 で わ か っ た こ と 」を 書 か せ る よ う に し た。本時のめあてに関することが分かったこととして書かれていれば、めあて達成と なる。 図 18「 ふ り か え り カ ー ド 」 このふりかえりカードを使って、子どもたちは喜んで評価活動をするようになっ た。評価項目が複雑ではないので、子どもたちは1時間の学習を簡単に振り返るこ と が で き た よ う だ 。「 昨 日 よ り 青 が 増 え た 。」「 発 表 の と こ ろ を 青 に す る た め に 、 い っ ぱ い 手 を 挙 げ よ う 。」 と い う 声 も 聞 か れ 、 ふ り か え り カ ー ド の 評 価 を 励 み に し て いることも分かった。 ま た 教 師 も 評 価 カ ー ド を 見 て 、「 今 日 は 、 楽 し く が ん ば っ た ね 。」 と か 「 青 が 増 え た ね 。」 と い う 励 ま し の 声 を か け る こ と が で き る 。 分 か り や す く 見 や す い 評 価 カ ー ド を 使 用 す る こ と で 、子 ど も た ち が 伸 び を 実 感 し 、 励みになってきているようだ。 ② 評価カードの工夫 評価カードの工夫として、様々な場面における評価カードと自己評価方法を統一さ せた。 15 「 よ い こ の く ら し 」( 一 日 の 反 省 ) や 算 数 、 国 語 な ど で 共 通 の 評 価 方 法 (「 よ く で き た … 青 、だ い た い で き た … 黄 、も う 少 し … 赤 」)を と る よ う に し た 。( 図 19)そ う す る ことで、子どもたちは規準さえ分かれば、短い時間で自己評価をすることができ、ま た、統一することで自己評価力アップにもつながると考えられる。 子どもたちは3色で評価する方法に非常に慣れてきた。評価カードを使用しない場 面においても、色に例えて評価するような言葉が聞かれるようになった。自分で振り 返るときに、色をイメージしながら評価している。子どもたちの中で、この評価方法 が定着しつつある。評価することが児童自身で簡単にできるようになり、評価する力 がついてきたようだ。 図 19「 評 価 カ ー ド の 工 夫 」 算数 よい子のくらし(1日の反省) 国語 ③ 学習意欲を高めるための評価カードの活用 子 ど も た ち が「 今 日 の 学 習 で 分 か っ た こ と を 書 き ま し ょ う 。」の 項 目 に 書 い た 内 容 に し 、 コメントを書き、学習意欲を高めるようにした。また、評価カードの子どもたちの言葉 か ら 、 前 時 の 学 習 を 振 り 返 っ た り 、 復 習 し た り し た 。( 図 20) 評価項目に関しては、評価の色を振り返る時間を設け、どのように変化していったか 子どもたち自身が確かめられるようにした。 16 図 20「 評 価 カ ー ド の 内 容 を 復 習 に 生 か し た 授 業 の 導 入 」 T: ま っ す ぐ 引 い た 線 の こ と を 何 と 言 い ま し た か ? C: 直 線 で す 。 T: 三 角 形 は ど ん な 形 だ っ た で し ょ う ? C: 3 本 の 直 線 で 囲 ま れ た 形 で す 。 Ⅳ 研究のまとめ 単元終了後にレディネステストと同じテストを、 「 さ ん か く・し か く 」か ら「 三 角 形・四 角 形 」 に 言 葉 を か え て 行 っ た 。 結 果 は 以 下 の 表 の 通 り で あ る 。( 表 21) 表 21「 確 認 テ ス ト の 結 果 」 (ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (カ) さんかく 57.1% 0% 50.0% 17.9% 93.0% 53.6% 三角形 100% 6.9% 100% 0% 3.4% 3.4% しかく 0% 60.7% 0% 3.6% 3.6% 3.6% 四角形 0% 93.1% 0% 3.4% 3.4% 3.4% どちらでもな 42.9% 39.3% 50.0% 78.6% 3.6% 42.9% 0% 0% 0% 93.1% 93.1% 93.1% い 17 (キ) (ク) (ケ) (コ) (サ) (シ) さんかく 0% 3.6% 53.6% 25.0% 46.4% 0% 三角形 0% 0% 0% 3.4% 3.4% 0% しかく 46.4% 17.9% 3.6% 0% 0% 82.1% 四角形 96.6% 96.6% 3.4% 0% 0% 3.4% どちらでもな 53.6% 78.6% 42.9% 75.0% 53.6% 17.9% 3.4% 3.4% 96.6% 96.6% 96.6% 96.6% い 1 研究の成果 【仮説1】 ○ 算数的活動を多く取り入れた学習活動をすることにより、子どもたちは楽しく学習 でき、学習に対する意欲が高まった。 ○ 子どもたちの興味・関心を高めるための教材・教具の工夫をすることにより、子ど もたちが学習課題を確実につかむことにつながり、自分の考えを表現したり、まと めたりすることができるようになった。 ○ テ ス ト の 結 果 か ら 、子 ど も た ち は「 さ ん か く 」か ら「 三 角 形 」へ 、 「 し か く 」か ら「 四 角形」へ概念が変わったことがうかがえる。主体的に学習した結果、子どもたちは 図形に基本的な力をつけつつあると考えられる。 【仮説2】 ○ 学習過程を工夫することにより、子どもたちの興味や学習意欲を持続させることが できた。そのため授業が活発になり、学びが深まった。子どもたちに充実感を味わ わせることができた。 ○ 学習形態を工夫することにより、子どもたちの学び合いの場を確保することができ た。 ○ 子どもたちは自分の考えを伝えたり、友達の意見を聞いて考えをまとめたりするこ とができるようになった。 【仮説3】 ○ すべての活動において評価方法を統一したことで、子どもたちにとって自己評価が しやすくなり、自己評価力アップにつながった。 ○ 評価カードに分かったことを書かせることで、授業中に発言できなかった児童の考 えや思いを知ることができ、授業に生かすことができた。 18 2 今後の課題 ○ ゲ ー ム を 取 り 入 れ た 学 習 を す る 際 に 、ゲ ー ム の 楽 し さ を 学 習 の 楽 し さ に 結 び つ け る こ と が 難 し い と 感 じ た 。「 ゲ ー ム は 楽 し か っ た が 、 勉 強 は 面 白 く な か っ た 。」「 ゲ ー ム の や り 方 は 分 か っ た け ど 、 何 を 学 習 し た の か 分 か ら な か っ た 。」 と い う こ と が な い よ う に 、 ゲ ームや楽しい活動を取り入れた際、学習の本質に迫る工夫をしていかなければならな い。 ○ ペ ア 学 習 で の 学 び 合 い で は 、ど ち ら か が 相 手 に 頼 っ て し ま う こ と も あ る 。ペ ア 学 習 に 入 る 前 に( 一 人 学 び の 時 点 で )個 別 指 導 を し て お い た り 、 グ ル ー ピ ン グ を 工 夫 し た り 、学 びが深まる工夫をしていく必要がある。 ○ 子 ど も た ち が 自 己 評 価 す る 中 で 、児 童 に よ っ て 評 価 が 厳 し か っ た り 甘 か っ た り ば ら つ き が 見 ら れ た 。ま た 、 自 己 評 価 を 続 け て い く と マ ン ネ リ 化 し て い く こ と も あ っ た 。児 童 の 実態に合わせて、評価規準や評価項目を常に見直していく必要がある。 《参考文献》 小学校学習指導要領解説 算数編 平成11年 板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 東洋館出版社 編者 たのしくわかる授業 1年生の算数科 文部科学省 小学館 筑波大学付属小学校算数部 著編者 清水静海 平 成 15 年 1993年 おわりに 今回、研究テーマを『学ぶ楽しさと充実感を味わえる授業づくりをめざして -子ども たちが主体的に取り組む体験的な活動を通して-』とし研究に取り組んできた。 本学級には学習面、生活面、家庭環境など様々な面において厳しい状況におかれた子ど も た ち が い る 。 そ の よ う な 子 ど も た ち に と っ て も 、「 勉 強 、 楽 し い 。」「 学 校 、 楽 し い 。」 と 思ってほしい、そのような子どもたちの思いや願いを大切にしたいと考えてきた。先生方 に相談しながら「楽しい授業」を考え、取り組んできた。そのような中で、子どもたちの 笑 顔 が 見 ら れ た り 、「 分 か っ た 。」「 あ 、 そ う か 。」 と い う 声 が 上 が っ た り す る こ と が 、 私 自 身の喜びになった。子どもたちと楽しく授業することで、教師自身が授業を楽しむことが できた。これが「楽しい授業」の大きなポイントになっていたかもしれない。 本学級で特に気にかけなければならない子どもたちが、笑顔を見せ楽しんで学習できた のは成果の一つである。しかし、それ以外のすべての子どもたちも私の予想以上に楽しん で 学 習 す る こ と が で き 、大 き な 成 果 を 得 る こ と が で き た 。今 後 も こ の 気 持 ち を 忘 れ ず 、 「楽 しい授業づくり」に励んでいきたいと思う。 この研究を進めるに当たっては、同学年の先生方に全面的に協力をしていただいた。事 前授業を見せていただいたり、たくさんのアイデアをくださったり、そのご協力があって 研究を深めることができた。温かいご指導、ご助言、そして、多大なるご協力をいただき ました諸先生方、2 年部の先生方に心から感謝したい。 19