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【背景】気管支喘息は、慢性の好酸球性気道炎症を主として、気道過敏性

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【背景】気管支喘息は、慢性の好酸球性気道炎症を主として、気道過敏性
【背景】気管支喘息は、慢性の好酸球性気道炎症を主として、気道過敏性の亢進,さらに
は気道のリモデリングを生じることにより気流閉塞を来たすアレルギー性疾患である。
種々のメディエーターの関与が報告されているが、近年、気道の線溶系がその病態にも関
わっていることがわかってきた。plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)は、生体にお
ける最も重要な線溶系の抑制因子であるが、組織の炎症や線維化へ関与していることも報
告されており、さらに喘息モデルマウスの気道壁における発現亢進も確認されている。こ
れらを踏まえて、PAI-1 の喘息病態への関与を検証する目的で、本研究では以下の 3 点につ
いての検討を行った。1)喘息患者の誘発喀痰上清中の PAI-1 濃度を測定し、PAI-1 と喘
息の病態との関連を検討する。2)PAI-1 ノックアウトマウスを用いた喘息モデルを作製し、
喘息の病態への PAI-1 の関与を検討する。3)PAI-1 に対する siRNA (PAI-1-siRNA)を作
製し、その経気道投与による気道 PAI-1 のノックダウンが喘息の病態に及ぼす影響を検討
する。
【方法】まず喘息患者と健常者から誘発喀痰を採取し、その上清中の PAI-1 濃度を比較し
た。さらに喘息患者において、誘発喀痰上清中 PAI-1 濃度と喘息罹病期間,TGF-1 濃度と
の関係も検討した。次に C57BL/6 バックグラウンドの PAI-1 ノックアウトマウス及び野生
型マウスに対して、卵白アルブミン(OVA)の腹腔内感作・吸入曝露を行った急性喘息モデル,
慢性喘息モデルを作製し、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の炎症細胞,BALF 中の PAI-1 およ
び TGF-1 等のサイトカイン濃度,気道過敏性,気道リモデリングの程度を比較検討した。
さらに野生型喘息モデルへローダミンで標識した PAI-1 に対する siRNA(PAI-1-siRNA)
を経気道投与した後に、肺組織を蛍光顕微鏡で観察し、気道構成細胞への PAI-1-siRNA の
取り込みを評価した。そして PAI-1-siRNA の複数回経気道投与(急性モデルで 3 日ごとに
計 6 回、慢性モデルで 3 日ごとに計 12 回)を行い、好酸球性気道炎症,気道過敏性,気道
リモデリングへの影響も検討した。
【結果】喘息患者の誘発喀痰上清中の PAI-1 濃度は,健常者に比して有意に高く、喘息罹
病期間の長い群ほど高値となることが示された。また、PAI-1 と TGF-1 濃度の間にも有意
な相関を認めることが明らかとなった。PAI-1 ノックアウトマウスを用いた喘息モデルにお
いては、野生型マウスと比較して、急性モデルでは好酸球性炎症,気道過敏性が抑制され、
慢性モデルでは気道リモデリングが抑制されることがわかった。ローダミンで標識した
PAI-1-siRNA を野生型喘息モデルマウスへ経気道投与を行った後、蛍光顕微鏡で肺組織を
観察する実験からは、PAI-1-siRNA が気道上皮細胞に取り込まれることが確認された。さ
らに、PAI-1-siRNA の複数回経気道投与によって気道の PAI-1 をノックダウンすることで、
急性喘息モデルマウスでは好酸球性気道炎症と気道過敏性が、慢性喘息モデルマウスでは
気道リモデリングが抑制されることが証明され、PAI-1 ノックアウトマウスにおける結果を
追試できることも確認された。機序を探る実験として、PAI-1 ノックアウトマウスにおける
急性喘息モデルおよび PAI-1-siRNA を経気道投与した野生型マウスにおける急性喘息モデ
ルの BALF 中の hepatocyte growth factor(HGF)濃度を測定した。それぞれ対照群に比
して有意な HGF の上昇が認められたことから、気道における PAI-1 の抑制に起因して生じ
る好酸球性気道炎症および気道過敏性の減弱には、HGF を介した機序が関与している可能
性が示唆された。
【結論】喘息患者から採取した誘発喀痰中の PAI-1 濃度の検討からは、PAI-1 が気道リモ
デリングに強く関与している可能性が示唆された。喘息モデルマウスを用いた検討からは、
PAI-1 が、急性喘息モデルにおいては好酸球性気道炎症と気道過敏性に、慢性喘息モデルに
おいては気道リモデリングに関わっていることが明らかとなった。本研究の結果から、
PAI-1 が喘息の病態に強く関わっていることが明らかとなり、その治療標的となりうる可能
性が示された。PAI-1 を標的とした治療戦略として、PAI-1 に対する siRNA の経気道投与
が考慮できる手段であることも示された。
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