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西洋演劇史 1.近代市民劇(19c 前半〜)

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西洋演劇史 1.近代市民劇(19c 前半〜)
14.12.14
1.近代市民劇(19c 前半〜)
西洋演劇史
第9回:近代演劇(1) (1)市民とは
①貴族でない ②都市に住む ③支払い能力がある(商人・地主) (2)メロドラマの流行(フランス) 人物の登場や重要な場面を音楽で強調するドラマ (当初はパントマイム+音楽) (a) ディドロ(1713〜84)の市民劇 「古典主義から脱却し、庶民の生活を扱うべ
き」 → 身近な金銭問題、家庭問題を扱う市民
劇を主張 (b) ゴシック・ロマンスの影響 中世の古城を舞台とする恐怖小説(18c英) → ①恐怖心を煽る=煽情的 ②勧善懲悪(幽霊・悪魔が滅びる) (c)ドイツ・ロマン主義の影響 理性より感情 (2)ウェル・メイド・プレイ 小さくまとまった劇
①ストーリーが定型的 ②スターの柄に合った作劇 (作劇の特徴:秘密の設定→暴露/主・敵が交互に
浮沈/勘違いによるもつれ/大詰めは明快に/必
ず男女が争う) スクリーブ(仏1791~1861)による戯曲の大量
生産~サルドゥー(仏1831~1908)に継承
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2.近代市民劇の展開① フランス
(1)エミール・ゾラ(1842~1902)
自然主義風の人生観を演劇に移すも、さほど
成功せず。
(1873)『テレーズ・ラカン』……ゾラの同名小説の
舞台化。テレーズが情夫ロランと謀って夫カミーユを
溺死させるが、ふたりは恐れと悔いから憎み合い、
亡父の母の眼前で自殺する。
(2)アンドレ・アントワーヌ(1858~1943)
•  「自由劇場」(1887)をつくる。 できるだけ実人生そのままの舞台を願う。
→ ①素人俳優の起用(日常会話風) ②会員制による固定客確保(⇄商業演劇) •  第四の壁理論(ジャン・ジュリアン)に同意。 幕の位置が第四の壁(観客には透視できるが
俳優には見えない状況) 劇場内を暗くすることを主張=生活の断面を切
り取る 序文「あらゆる種類の物語を捨て、人物の性格と
その環境を探究すべき」
3.近代市民劇の展開② 北欧
(1)アウグスト・ストリンドベリ(1814~1912) 病的性格から来る反抗と苦悩の表現、悲観思
想 →葛藤の生じる点を生のなかに探る 劇的形式に囚われず、夢・無意識・想像の世
界を描く →ロマン派的、ゴシック的イメージの内面化 ← ガス灯〜電灯への移行期
(2)ヘンリック・イプセン(1829~1906) 既成の道徳に真っ向から対立、個人と社会、
自由と運命の対立を描く
(1879)『人形の家』 (1881)『幽霊』 (1888)『令嬢ジュリー』 (1902)『夢の戯曲』 2
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4.ストリンドベリの主な作品 『令嬢ジュリー』
(1)あらすじ 北欧の白夜。夏至祭の夜。 屋敷の下男下女・農夫らが夏至祭に踊り狂っている。 主人は明日の朝まで帰ってこない。その地下室では、
下男のジャンとその婚約者クリスティンが語らってい
た。そこへ屋敷の令嬢ジュリーがやってくる。彼女は
夏至祭でジャンと踊ろうとしたのだが、ジャンが素っ気
なく去ったので追いかけてきたのだ。クリスティンが
眠ってしまった(寝たふりかもしれない)あいだに、実
は少年時代ジュリーに恋をしていたことを打ち明ける
ジャン。そこへ、ジャンを探して、屋敷の召使いたちが
地下室にやってくる。一家の令嬢と下男がふたりきり
でいるところを見られてはスキャンダルになると、ふた
りは小部屋に身を隠す。 (2)解釈例 ストリンドベルイは『令嬢ジュリー』の序文で、「わた
くしは人生の残酷な戦いに生の喜びを見出します」と
いっていますが、このことは、主人公ジュリーに関係す
るばかりでなく、市民社会崩壊期における古い社会層
と新興の社会層の争いにも関係しています。作者はこ
のテーマをえがくために、事件と性格を重視し、みごと
な自然主義的作品をかいています。(中略)上流社会
にあこがれると同時に、それをにくんでいる、にえきら
ない下男の性格は、ジュリーを自殺に追いこまずには
いません。作者が解放された女性ジュリーをにくんで
いることは、彼女の結末によってもわかります。(永野
藤夫『世界の演劇』199〜200頁を一部改変) 部屋から出てきたふたりは、明らかに肉体関係を結ん
だことがわかる。そのことが召使いたちにも知られてし
まう。ジャンは、ジュリーとともに逃げ出し、新生活へ
の思いを語る。しかしそれが単なる夢物語だと気づい
たジュリーは落胆する。夜が明け、そろそろ主人が
帰ってくる頃である。召使いたちにふたりの関係を知
られてしまったので、主人が帰ってくるときがふたりの
身の破滅である。当時は、階級を超えた恋など許され
なかったからである。次第に、下男根性を取り戻して
ゆくジャン。彼に頼りがいを感じなくなったジュリーはク
リスティンに助けを求めるが、婚約者を寝取られたクリ
スティンは冷たくあたるばかり。やがて鈴が鳴り、主人
が帰ってきたことがわかる。ジュリーがとるべき道はた
だひとつ。ジャンに渡されたカミソリで自殺をすること
だった。鳴り続ける鈴に怯えるジャン、そしてジュリー
は自殺をする。
5.近代市民劇の展開③ ロシア
(1)アレクサンドル・プーシキン(1799~1837) (1831)『ボリス・ゴドゥノフ』 (2)マクシム・ゴーリキー(1868~1936) (1902)『どん底』 (3)アントン・チェーホフ(1860~1904) (1896)『かもめ』 (1900)『ワーニャ伯父さん』 (1901)『三人姉妹』 (1904)『桜の園』 ←「モスクワ芸術座」(1898年成立、演出家スタニスラフスキー)
による上演で評価される。
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(3)チェーホフ(続) 6.チェーホフの主な作品 『かもめ』
イプセン=社会の行き詰まり→個人の行き詰
まり チェーホフ=それが前提 誰もが変化を望んでいるが、皆それが無理
だとわかっている時代の感性を描く ①日常 ②無意味 ③バラバラの人間関係 人はそこに存在し、意思疎通を図るが、現実
には互いの接触を失う = 断絶のドラマ
(1)あらすじ 大女優アルカージナを母に持つトレープノフ(コスチャ)は
引退した伯父ソーリンと共に田舎に暮らしている。母に認
められたいと願うコスチャの気持ちはアルカージナには伝
わらない。決してコスチャを愛していないわけではないの
だが、それ以上に女優である自分が大事なアルカージナ。
コスチャの才能を認めてくれた医師ドールンの存在は僅か
にコスチャを癒すが、彼の心の支えだった恋人ニーナは、
アルカージナの愛人、小説家のトリゴーリンに惹かれてし
まう。トリゴーリンもニーナの一途さに惹かれるものの、ア
ルカージナも捨てられない。 母とトリゴーリンがモスクワに去り、トリゴーリンを追って
ニーナも去る。 2年後、新進の小説家となったコスチャ。伯父の病気
が悪化して母とトリゴーリンが訪れる。そして、トリゴー
リンに捨てられたニーナも現われる。コスチャは変わ
らぬ想いを告げるが、ニーナは未だにトリゴーリンを
愛していた。ニーナが去った後、彼女が来たことを母
に気づかれてはならないとつぶやき、隣室に消えるコ
スチャ。そして屋敷に一発の銃声が鳴り響く。 (2)解釈例
戯曲『かもめ』は人物の会話の叙情詩的な美しさ、心
理的な含み、それを助けるいわゆる”間”、風景を取り
入れた舞台面の新鮮さ、などいろいろあるが、それで
もまだ、独白などがあちこちにみられるような旧套の
かけらがのこっている。(中略)『かもめ』もコメディと
なっている。(中略)愚かなチグハグな人生、叡智も意
志も思いやりも足りない、虚名にあこがれ、旧套にな
ずみ、凡俗に堕した生活、そういう生活を笑うという意
味でのコメディであろう。 (湯浅芳子訳『かもめ』、岩波文庫、訳者解説より)
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7.参考文献
〈書籍〉 ・永野藤夫、『世界の演劇』(中央出版社) ・チェーホフ(湯浅芳子訳)『かもめ』(岩波文庫) 〈DVD〉 ・アルフ・シェーベルイ『令嬢ジュリー』(ジュネス
企画) ・栗山民也演出『かもめ』(ホリプロ) 5
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