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28.素粒子物理国際研究センター

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28.素粒子物理国際研究センター
東京大学素粒子物理国際研究センター
28.素粒子物理国際研究センター
Ⅰ
素 粒 子 物 理 国 際 研 究 セ ン タ ー の 研 究 目 的 と 特 徴 ・ ・ 28− 2
Ⅱ
分析項目ごとの水準の判断
Ⅲ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28− 3
分析項目Ⅰ
研究活動の状況
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28− 3
分析項目Ⅱ
研究成果の状況
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28− 9
質の向上度の判断
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28− 11
−281−
東京大学素粒子物理国際研究センター
Ⅰ
素粒子物理国際研究センターの研究目的と特徴
1.素粒子物理国際研究センターの研究目的
本センターの使命は、素粒子物理学の最先端の研究を、最高エネルギー衝突型加速器
を用いた国際共同実験を基軸にして遂行し、素粒子物理学の新たなパラダイムを切り開
く こ と で あ る 。 こ れ ら の 実 験 を 通 し て 、「 質 量 の 起 源 」、「 時 空 の 構 造 」、「 宇 宙 創 生 の 謎 」
など、人類の根源的な疑問の解明を図る。
最高エネルギー加速器を用いた衝突実験では
(1) 宇 宙 開 闢 後 10 -1 2 秒 の 高 密 度 高 温 状 態 で の 素 粒 子 反 応 を 実 現 し 、
(2) 宇 宙 初 期 に 存 在 し た と さ れ る 未 発 見 の 重 い 新 粒 子 を 作 り だ し 、
(3) 前 人 未 到 の 高 エ ネ ル ギ ー で の 衝 突 反 応 に よ っ て 10 -1 8 セ ン チ の 極 微 の レ ベ ル に 至 る
まで物質の究極構造を探る。
この研究の成果は、我々の自然観や物質観の変革を促し、広く基礎科学全体に貢献す
るであろう。
2 .現 在 、本 セ ン タ ー は 、ジ ュ ネ ー ブ 郊 外 に あ る CERN( 欧 州 原 子 核 研 究 機 構 )研 究 所 の LHC
加 速 器 ATLAS 実 験 に お い て 測 定 器 建 設 ・ 解 析 環 境 構 築 ・ 物 理 解 析 を 積 極 的 に 推 進 し て い
る 。 ま た 、 チ ュ ー リ ッ ヒ 郊 外 に あ る PSI( ポ ー ル シ ェ ラ ー ) 研 究 所 に お い て 、 コ ラ イ ダ
ー 実 験 と は 相 補 的 に μ 粒 子 の 稀 崩 壊 か ら 物 質 の 究 極 構 造 に 迫 る MEG 実 験 を 主 導 し て い る 。
本センターは、これらの国際共同実験を通して大学の国際化の一翼を担い、全国共同
利用施設として、全国の大学・研究機関の研究者に対し、本センターが推進する国際共
同研究への参加の窓口となる。更に、わが国の素粒子物理学の将来計画である国際リニ
ア コ ラ イ ダ ー( ILC)を 、他 大 学 や 高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構 (KEK と 略 す )な ど の 研 究
コミュニティーと協力して推進していくことも、全国共同利用施設としての使命と考え
る。
本センターは上記のように大型国際共同実験を基軸にするが、小規模な独創的な実験
や測定器の開発も行い、研究者の動機を高め、その成果を大型国際共同実験に反映させ
る。
3.本センターの特徴を以下に挙げる。
・国際共同実験を遂行していく上での、学問上、技術上、運営上の豊富なノウハウの蓄
積がある。その実績は国際的にも高く評価され十分に認知されている。
・ 上 述 の 研 究 課 題 (ATLAS 測 定 器 建 設 、 物 理 解 析 、 解 析 環 境 、 MEG、 小 実 験 、 ILC)毎 に 教
授・准教授 1 名及び複数名の助教・特任助教を割り振り、活動単位として研究にあたる
ことの出来る適切な規模の組織であるが故に、国際共同実験において十分な機動性を発
揮できる。
・全国から公募で集められた優秀な若手研究者は、国際共同実験に派遣されて研究を行
い、多くは成果をあげて世界中の大学や研究機関に移り活躍しており、国際交流と人員
の流動性に貢献している。
・本センターは、最先端の素粒子物理学研究と教育を一体化させた組織として、基幹研
究大学である本学にふさわしい研究施設である。
[想定する関係者とその期待]
全国の素粒子物理学及び関連分野の研究者が、最先端の国際共同実験に主導的に参加
出来るようになることを、全国共同 利 用 施 設の 機 能 と し て 本 セ ン タ ー に 期待 し て い る 。
国際共同実験を行うという点において、相手先となる海外の研究機関の研究者は、実
験を効果的に推進するための貢献が、本センターによってなされることを期待している。
最先端の実験研究を国際共同で進めており、その成果は素粒子物理学の描像を大きく
変 え る 可 能 性 が 高 い 。そ の 成 果 に つ い て は 広 く 素 粒 子 実 験・理 論 研 究 者 が 期 待 し て い る 。
−282−
東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅰ
Ⅱ
分析項目ごとの水準の判断
分析項目Ⅰ 研究活動の状況
(1 )観 点 ご と の 分 析
観点 研究活動の実施状況
(観 点 に 係 る 状 況 )
① 論文・著書等の研究業績や学会での研究発表等の状況
本 セ ン タ ー の 教 員 に よ る 論 文 発 表 数 は 、 年 度 別 で は 資 料 28-1 の よ う に な る 。 2004 年 度
以 降 の 延 べ 数 を 計 算 す る と 学 術 雑 誌 投 稿 数 176 件 、国 際 会 議 発 表 件 数 64 件 、国 内 学 会 等 講
演 回 数 183 件 に 及 び 、 研 究 者 1 人 当 た り 学 術 雑 誌 投 稿 数 8.8 件 、 国 際 会 議 講 演 数 3.2 件 、
国 内 学 会 発 表 数 9.2 件 と な る 。 ま た 、 学 術 雑 誌 投 稿 176 件 の 内 、 163 件 が 他 機 関 の 研 究 者
と の 共 著 、140 件 が 国 外 の 研 究 者 を 含 む 共 同 研 究 と な っ て お り 、セ ン タ ー の 名 称 の と お り 、
国 際 共 同 研 究 が 活 発 に 行 わ れ て い る 。 研 究 活 動 の 具 体 的 内 容 を 資 料 28-2 に ま と め る 。
( 資 料 28-1 : 発 表 研 究 論 文 数 (2004 年 度 ∼ 2007 年 度 ) )
年度
学術雑誌
2004
2005
内和文以
内他機関
内国際共
外
と共著
同研究
63
39
31
18
126
53
34
30
144
102
73
67
44
90
46
25
25
183
423
240
163
140
国際会議
その他
33
6
24
40
13
73
2006
73
29
42
2007
30
16
合計
176
64
計
※ 本 セ ン タ ー の 2007 年 度 の 教 員 数 : 20 名 ( 助 教 以 上 の 専 任 教 員 及 び 特 任 助 教 )
( 資 料 28-2 : 研 究 業 績 の 詳 細 )
①AT LAS 実 験
本 セ ン ターは 、AT L AS 実 験 にお いて 、測 定 器 ・ デー タ解 析 システ ム・ 物 理 解 析 の 全 て にお いて主 導 的 役 割 を果 たし てき
た。測 定 器 で は、AT LAS 実 験 の 極 初 期 か ら T h in Gap Ch amb e r (T GC と略 す) をミュ ーオ ン トリガ ーチェ ンバ ーに 提 案 し 、
R&D・ 設 計 ・ 製 作 ・ 試 験 ・ 設 置 を 主 導 し て きた。 物 理 解 析 では、ヒ ッグス 粒 子 や超 対 称 性 、 ブラ ック ホー ル と いった LHC で期
待 さ れる 最 も物 理 学 的 意 義 の 高 い発 見 に 向 け ての 準 備 研 究 に おいて 、非 常 に 重 要 な 貢 献 を行 って いる 。デー タ解 析 シス
テムで は、世 界 的 規 模 の 分 散 解 析 環 境 を可 能 に する 新 技 術 計 算 グリ ッ ドを 用 い た L CG データ 解 析 網 の 一 翼 を担 う 地 域 解
析 セ ン ター 計 算 機 システ ム を本 セ ンタ ー内 に導 入 ・ 設 置 し 、そ の 運 転 を開 始 し た。
②ME G 実 験
MEG 実 験 は本 セ ンタ ー が提 案 ・ 主 導 し て、こ れま で準 備 研 究 を 進 め てきた が、 この 共 同 研 究 の 成 果 により 、高 強 度 ミュ ー
粒 子 ビ ー ム ラ イ ン 、 陽 電 子 ス ペ ク ト ロ メ ー タ、 液 体 キ セ ノ ン ガ ン マ 線 測 定 器 の 開 発 ・ 建 設 が 終 了 し 、 近 く ミ ュー 粒 子 の 稀 崩 壊
反 応 の発 見 を 目 指 し 実 験 データ の取 得 が開 始 でき る状 況 と なっ た。
③小 実 験
長 年 懸 案 と なって いた オ ルソ ポジ トロニ ウ ムの 寿 命 問 題 に 対 し 、新 し い アイ デ アで 実 験 を行 い、 理 論 の予 想 値 と高 い 精 度
で一 致 する 結 果 を得 、この 問 題 に 終 止 符 を 打 った 。こ の他 、 小 規 模 なが らも 新 し い物 理 の 徴 候 を探 る実 験 を 複 数 遂 行 中 で
ある。
④I LC 準 備 研 究
本 セ ンタ ーは、 国 際 リニ ア コ ライ ダ ー計 画 ( I L C) を、 国 際 的 ・ 国 内 的 に 極 めて 重 要 な次 期 計 画 とし て位 置 付 け 、AT LAS 実
験 や MEG 実 験 と の相 乗 効 果 も考 慮 し 、コ ミュ ニティ ーやKE Kと も 連 携 し て 推 進 し て い る。具 体 的 には、I LC の物 理 、加 速 器 の
超 伝 導 空 洞 及 び 位 置 制 御 に関 する 研 究 や、I L Cで の測 定 器 開 発 や粒 子 流 ア ル ゴリズ ム の研 究 、光 検 出 器 の開 発 など を行
なっ て い る。 測 定 器 開 発 で はガ ス 飛 跡 検 出 器 ( T P C) の 主 飛 跡 測 定 器 と 、MP P C と い う最 新 鋭 の 光 検 出 素 子 を用 い た 大 き
な半 径 のカ ロ リメ ー タを 基 礎 とす る GL D 測 定 器 コ ンセ プ ト を 打 ち 立 て てき た。 最 近 は 心 臓 部 で あ る超 伝 導 加 速 空 洞 に 関 す る
研 究 も 開 始 し た。更 に、 立 地 に関 する 科 学 的 研 究 や プロジェ ク ト の広 報 活 動 も幅 広 く 行 な ってき た。
⑤LEP 実 験 デー タ解 析
−283−
東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅰ
本 セ ン ターは 時 限 措 置 で設 立 さ れた 施 設 で あり 、2 0 0 4 年 に期 限 を迎 え AT L AS 実 験 を主 軸 と するセ ンタ ーに 転 換 さ れ た。
転 換 前 の 中 心 課 題 であ った国 際 共 同 実 験 OP AL は、CERN 研 究 所 ( スイ ス) の世 界 最 高 エ ネ ルギー の 電 子 陽 電 子 衝 突 加
速 器 LEP を 用 いた素 粒 子 物 理 の 研 究 であ る。こ の実 験 では 、弱 い相 互 作 用 の 担 い手 である Z 粒 子 や W 粒 子 を 大 量 に 生
成 し た。 そ れに よりニ ュー トリ ノ の種 類 ( 素 粒 子 の 世 代 数 ) を 決 定 し 、電 弱 統 一 理 論 の検 証 を 行 い、Z の崩 壊 か らの 多 数 の ハ
ド ロ ン 事 象 を 用 い て 強 い 相 互 作 用 ( QCD ) の 研 究 を 深 め た 。 そ し て 標 準 理 論 に お い て 質 量 の 起 源 に 関 係 す る ヒ ッ グ ス 粒 子
の探 索 や、 標 準 理 論 を 超 え る 新 物 理 、例 え ば 超 対 称 性 など の探 索 など 、現 在 の素 粒 子 物 理 に と って 本 質 的 に重 要 な 数 々
の成 果 を 上 げ た。現 在 も 研 究 は継 続 し てい る。
② 共同研究・受託研究の状況
本センターは全国共同利用施設として国際共同実験を推進する役割を担っている。その
ため、本センターでの研究は基本的に共同研究として行われており、本センターが推進す
る ATLAS 実 験 、 MEG 実 験 、 ILC の た め の 研 究 開 発 な ど 毎 年 10 件 程 度 の 共 同 研 究 を 実 施 し て
いる。
③ 研究資金の獲得状況
本センターでは、国際共同研究を恒常的に推進するために、予算獲得においても長期的
展望を持ち、人員の戦略的配置派遣や基盤となる部分の予算の安定的確保に向け、研究資
金獲得のための努力を毎年精力的に行っている。
ATLAS 実 験 に つ い て は 、デ ー タ 解 析 用 計 算 機 シ ス テ ム (地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム ) 導 入
が 2006 年 よ り 進 め ら れ 、翌 年 に は 全 面 稼 働 し て お り 、そ の 研 究 資 金 は 、運 営 費 交 付 金 教 育
研 究 特 別 経 費 に よ り 賄 わ れ て い る 。2005 年 度 155,412 千 円 、2006 年 度 291,000 千 円 、2007
年 度 592,695 千 円 が 認 め ら れ た 。
MEG 実 験 に つ い て は 、 建 設 費 が 2004 年 か ら 2005 年 に か け て ピ ー ク に 達 し た が 、 そ の 後
も継続して外部資金から研究資金を獲得している。
科学研究費補助金では、特定領域研究「ヒッグス超対称性」の計画研究2件のほか、公
募 研 究 、 毎 年 基 盤 研 究 、 若 手 研 究 、 萌 芽 研 究 な ど 多 数 を 獲 得 し て い る ( 資 料 28-3 : 研 究
資 金 の 獲 得 状 況 )。
( 資 料 28-3 : 研 究 資 金 の 獲 得 状 況 ( 年 度 毎 の 左 枠 は 件 数 、 右 枠 は 金 額 で 単 位 は 円 ))
2004
2005
2006
2007
合計
特定領域
4
1 4 3 ,5 0 0 ,00 0
4
1 5 5 ,8 0 0 ,00 0
2
1 0 8 ,4 0 0 ,00 0
2
9 5 ,3 0 0 ,0 00
5 0 3 ,0 0 0 ,00 0
基盤研究
3
1 8 ,9 0 0 ,0 00
5
1 8 ,3 0 0 ,0 00
3
5 ,8 0 0 ,0 0 0
1
3 ,3 8 0 ,0 0 0
4 6 ,3 8 0 ,0 00
若手研究
1
2 ,3 0 0 ,0 0 0
1
1 ,1 0 0 ,0 0 0
0
0
1
1 ,2 0 0 ,0 0 0
4 ,6 0 0 ,0 0 0
萌芽研究
1
2 ,4 0 0 ,0 0 0
1
7 0 0 ,0 0 0
0
0
0
0
3 ,1 0 0 ,0 0 0
学術創成
0
0
0
0
1
3 ,0 0 0 ,0 0 0
1
7 ,0 0 0 ,0 0 0
1 0 ,0 0 0 ,0 00
科研費計
9
1 6 7 ,1 0 0 ,00 0
11
1 7 5 ,9 0 0 ,00 0
6
1 1 7 ,2 0 0 ,00 0
5
1 0 6 ,8 8 0 ,00 0
5 6 7 ,0 8 0 ,00 0
共同研究
1
1 ,5 0 0 ,0 0 0
1
1 ,2 6 0 ,0 0 0
1
6 2 7 ,9 0 0
1
6 2 7 ,9 0 0
4 ,0 1 5 ,8 0 0
受託研究
1
1 ,0 0 0 ,0 0 0
2
1 9 ,8 8 3 ,6 84
1
1 7 ,6 0 0 ,0 00
0
0
3 8 ,4 8 3 ,6 84
産学連携計
2
2 ,5 0 0 ,0 0 0
3
2 1 ,1 4 3 ,6 84
2
1 8 ,2 2 7 ,9 00
1
6 2 7 ,9 0 0
4 2 ,4 9 9 ,4 84
1
1 ,0 0 0 ,0 0 0
2
1 ,9 0 0 ,0 0 0
2
2 ,0 0 0 ,0 0 0
2
1 ,8 0 0 ,0 0 0
6 ,7 0 0 ,0 0 0
1
9 8 ,0 0 0 ,0 00
0
0
0
0
0
0
9 8 ,0 0 0 ,0 00
13
2 6 8 ,6 0 0 ,00 0
16
1 9 8 ,9 4 3 ,68 4
10
1 3 7 ,4 2 7 ,90 0
8
1 0 9 ,3 0 7 ,90 0
7 1 4 ,2 7 9 ,48 4
特別研究員
奨励費
寄付金
外部資金合
計
教育研究特
別経費
合計
2 6 8 ,6 0 0 ,00 0
1 5 5 ,4 1 2 ,00 0
2 9 1 ,0 0 0 ,00 0
5 9 2 ,6 9 5 ,00 0
1 ,0 3 9 ,1 0 7 ,00 0
3 5 4 ,3 5 5 ,68 4
4 2 8 ,4 2 7 ,90 0
7 0 2 ,0 0 2 ,90 0
1 ,7 5 3 ,3 8 6 ,48 4
−284−
東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅰ
観点
大 学 共 同 利 用 機 関 、大 学 の 全 国 共 同 利 用 機 能 を 有 す る 附 置 研 究 所 及 び 研 究
施設においては、共同利用・共同研究の実施状況
(観 点 に 係 る 状 況 )
① 共同研究の実施状況
本センターが推進する国際共同研究をより効率的に実施するために、全国共同利用施設
と し て 全 国 の 研 究 者 に 呼 び か け 、 共 同 研 究 を 行 っ て い る 。 本 セ ン タ ー が 推 進 す る ATLAS 実
験 、 MEG 実 験 、 ILC の た め の 研 究 開 発 な ど 、 毎 年 10 件 程 度 の 共 同 研 究 を 実 施 し て い る ( 資
料 28-4 : 本 セ ン タ ー で 実 施 さ れ た 共 同 研 究 の 採 択 数 及 び 概 要 、 別 添 資 料 28-1 : 2007 年
度 「 共 同 研 究 」 状 況 、 P28− 12)。 本 セ ン タ ー が 進 め る 国 際 共 同 研 究 の 参 加 国 、 機 関 、 研 究
者 の 数 を 資 料 28-5 に ま と め る 。
( 資 料 28-4 : 本 セ ン タ ー で 実 施 さ れ た 共 同 研 究 の 採 択 数 及 び 概 要 )
共同研究件数
年度
参加研究
参加研究
ATLAS
MEG
ILC
計
者数*
機関数
2004
4
4
0
8
36
9
2005
7
4
0
11
35
10
2006
7
4
2
13
43
12
合計
18
12
2
32
*参 加 研 究 者 数 に 本 セ ン タ ー 教 員 は 含 ま れ て い な い 。
○ 本 セ ン タ ー が 推 進 す る ATLAS 実 験 、 MEG 実 験 、 ILC の 概 要
本 セ ン タ ー の 進 め る ATLAS 実 験 は 35 カ 国 160 研 究 機 関 が 参 加 す る 巨 大 国 際 共 同 実 験 と し て 推 進 さ
れ て い る 。国 内 か ら も 15 研 究 機 関 が 参 加 し 、共 同 で 測 定 器 建 設 と 物 理 解 析 準 備 に 邁 進 し て い る 。前
後 方 ミ ュ ー オ ン ト リ ガ ー シ ス テ ム の 建 設 に お い て は 国 内 か ら は 本 セ ン タ ー 、KEK、神 戸 大 学 、信 州 大
学 、 首 都 大 学 東 京 が 10 年 以 上 に わ た り 共 同 で 開 発 ・ 建 設 を 行 っ て き た 。
本 セ ン タ ー の 提 案 に よ っ て 始 ま っ た MEG 実 験 は 、 ス イ ス ・ イ タ リ ア ・ ロ シ ア ・ ア メ リ カ と の 国 際
協 力 で 進 め ら れ て お り 、 国 内 で は KEK と 早 稲 田 大 学 の 研 究 者 が 共 同 研 究 に 参 加 し て い る 。 こ れ ま で
本センターを軸として、国内の研究者が中心となり、実験の主要測定器である陽電子スペクトロメ
ータ超伝導電磁石及び液体キセノンガンマ線測定器の開発・建設を行ってきた。
国 際 リ ニ ア コ ラ イ ダ ー 計 画( ILC)は 、次 世 代 の 最 高 エ ネ ル ギ ー 素 粒 子 実 験 を 目 指 し ア ジ ア・欧 州 ・
北米の千人を超える加速器・測定器・理論の専門家による共同研究組織を形成している。本センタ
ーは、この共同研究組織の立ち上げ時からの中心機関であり、現在も世界的な規模での研究及び計
画の推進を率いている。
( 資 料 28-5 : 国 際 共 同 研 究 へ の 参 加 機 関 ・ 人 数 )
国際共同研究
参加国数
参加機関数
参加研究者数
国内参加機関
国内参加研究
者数
ATLAS
37
167
2200
15
121
MEG
5
12
86
3
25
ILC
40
325
1816
42
208
−285−
東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅰ
② 共同利用のための環境・資源・設備等の提供及び利用状況
本 セ ン タ ー は 、 ATLAS 実 験 の 物 理 解 析 の た め の 計 算 機 資 源 を 全 国 の 共 同 利 用 者 に 提 供 し
て い る 。共 同 利 用 者 は 、本 学 に 設 置 さ れ た 地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム と と も に 、CERN 現 地
に 設 置 さ れ て い る CERN サ テ ラ イ ト シ ス テ ム を 利 用 す る こ と が で き る 。 CERN 現 地 で は 、 研
究所設備等の利用支援・情報提供や、国内の研究者との通信連絡用のテレビ会議システム
の 提 供 な ど も 行 っ て い る 。2007 年 9 月 時 点 で の ユ ー ザ 数 は 、地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム 66
名 、 CERN サ テ ラ イ ト シ ス テ ム 21 名 で あ る 。
ま た 地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム は 、 世 界 の ATLAS 実 験 共 同 研 究 者 に 計 算 グ リ ッ ド を 通 し
て 利 用 さ れ て い る 。 こ の 世 界 規 模 で の 共 同 利 用 は 、 2006 年 3 月 31 日 に 本 学 と 欧 州 原 子 核
研 究 機 構 (CERN)と の 間 で 締 結 さ れ た 覚 え 書 き に 基 づ い て 提 供 さ れ て い る (資 料 28-6 :「 世
界 規 模 LHC コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ グ リ ッ ド の 配 備 と 活 用 に お け る 協 力 の た め の 覚 書 」 に つ い
て )。
( 資 料 28-6:
「 世 界 規 模 LHC コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ グ リ ッ ド の 配 備 と 活 用 に お け る 協 力 の た
めの覚書」について)
原 題 は ” Memorandum of Understanding for Collaboration in the Deployment and Exploitation
of the Worldwide LHC Computing Grid” で 、 グ リ ッ ド 資 源 を 提 供 す る 各 国 財 務 当 局 と CERN の 間 で
締 結 さ れ た 覚 え 書 き 。 日 本 に 関 し て は CERN 側 は 副 所 長 で 科 学 主 任 官 で あ る Jos Engelen 氏 、 東 京
大 学 側 は 当 時 の 小 宮 山 宏 総 長 が 2006 年 3 月 31 日 に 調 印 し て い る 。 本 覚 え 書 き は 前 文 と 15 条 の 条
文 及 び 添 付 資 料 か ら な り 、 Worldwide LHC Computing Grid(LCG と 略 す )の 役 割 、 CERN と 各 国 研 究 機
関の提供するサービスと責任分担などを規定している。
ATLAS の 解 析 ソ フ ト ウ エ ア は 、 非 常 に 大 規 模 で 複 雑 な も の で あ る 。 ま た 、 グ リ ッ ド の 使
用方法は、それまでの計算機利用と異なり、認証や情報取得、ジョブ記述、ファイル管理
など現状では専門の知識を必要とする。上述のシステムを効率的に使用するために、共同
利用者向けに講習会を実施し、利用方法の解説をウェブサイト上に掲示するなど、利用技
術 の 向 上 を 支 援 し て い る 。 毎 年 30 名 程 度 が 3 日 間 の 講 習 を 受 講 し て い る 。 2007 年 度 は 12
月 25 日 ∼ 27 日 に 開 催 し た 。
国 際 共 同 研 究 を 進 め 、若 手 研 究 者 を 育 成 す る こ と を 目 的 に 2005 年 度 よ り「 ICEPP フ ェ ロ
ー 」 制 度 を 導 入 し た 。 全 国 か ら 公 募 を 募 り 、 意 欲 あ る 若 手 研 究 者 (大 学 院 学 生 を 含 む )を 数
ヶ 月 に わ た り 国 際 共 同 研 究 に 参 加 さ せ る た め に 海 外 に 派 遣 し て き た 。 派 遣 実 績 を 資 料 287 に 示 す 。 ま た 、 公 募 要 領 を 資 料 28-8 に 示 す 。
( 資 料 28-7 : ICEPP フ ェ ロ ー 採 用 数 )
年度
採用数
派遣先
2005
3
ス イ ス ・ CERN 研 究 所 3 名
2006
3
ス イ ス ・ CERN 研 究 所 2 名 、 米 国 ・ フ ェ ル ミ 研 究 所 1 名
2007
3
ス イ ス ・ CERN 研 究 所 1 名 、 ス イ ス ・ PSI 研 究 所 1 名 、 米 国 NASA1 名
合計
9
−286−
東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅰ
( 資 料 28-8 : ICEPP フ ェ ロ ー 公 募 要 領 (抜 粋 ))
東京大学素粒子物理国際研究センター
2008 年 度 「 ICEPP フ ェ ロ ー シ ッ プ 」 の 公 募 要 領
(1)
公募の主旨
東 京 大 学 素 粒 子 物 理 国 際 研 究 セ ン タ ー は 、欧 州 原 子 核 研 究 機 構 (CERN)に 建 設 中 の 世 界 最 高 エ ネ ル
ギ ー 陽 子 ・ 陽 子 衝 突 装 置 LHC の 稼 働 に 向 け 、 国 際 共 同 実 験 ATLAS の 準 備 を 行 っ て い ま す 。 特 に 、
ATLAS 検 出 器 の 建 設 や 、物 理 研 究 、解 析 の 拠 点 と な る 地 域 解 析 セ ン タ ー の 構 築 を 強 力 に 推 し 進 め て
い ま す 。 ま た 、 ス イ ス ・ ポ ー ル シ ェ ラ ー 研 究 所 (PSI)に お い て ミ ュ ー 粒 子 の 稀 崩 壊 を 探 索 す る 国 際
共 同 実 験 MEG が 開 始 さ れ ま し た 。 本 セ ン タ ー で は 、 将 来 の 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 を 担 う 国 際 性 豊 か
な 研 究 者 を 育 成 す る 為 、こ れ ら 最 先 端 の 研 究 を 行 う 海 外 の 研 究 機 関 に 長 期 間 滞 在 し て 研 究 を 行 う 若
手 研 究 者 を ICEPP フ ェ ロ ー と し て 公 募 し ま す 。ATLAS や MEG 実 験 に 限 ら ず 、幅 広 い 海 外 で の 実 験 で
の公募が可能ですので、奮ってご応募ください。
(2)
申請資格者
国 ・ 公 ・ 私 立 大 学 及 び 国 ・ 公 立 研 究 機 関 の 研 究 者 ( 大 学 院 生 、 研 究 生 、 ポ ス ド ク な ど を 含 む )、
ま た は こ れ ら に 準 ず る 研 究 者 な ら び に 本 セ ン タ ー 長 が 適 当 と 認 め た も の 。 ATLAS や MEG 実 験 に 限
ら ず 、海 外 の 研 究 機 関 に 中・ 長 期 間 滞 在 し て 成 果 が 期 待 さ れ る 研 究 を 行 う こ と が 条 件 で す 。特 に ポ
スドクや大学 院生など、若手の研究者を優先します。
③ 共同利用の一環として行った研究会等の実施状況
過 去 13 回 に わ た り ICEPP シ ン ポ ジ ウ ム を 、 毎 年 、 本 セ ン タ ー が 開 催 し て き た 。 全 国 か
ら若手を中心とした研究者が参加し、素粒子物理学及び関連する様々な分野の研究発表・
意見交換を行っている。若手研究者にとっては、より広い視野で自分の研究を捉える機会
になり、また大学院修了後の活動範囲を広げていく上でも非常に有効である。最近の参加
者 数 は 、 2004 年 度 52 名 、 2005 年 度 31 名 、 2006 年 度 37 名 で あ る 。
ATLAS Physics Tools Workshop、 Supersymmetry in 2010’ s な ど 国 際 会 議 も 活 発 に 開 催
し て い る 。 本 セ ン タ ー が 主 催 し た 国 際 会 議 を 資 料 28-9 に ま と め る 。
( 資 料 28-9 : 本 セ ン タ ー が 主 催 し た 国 際 会 議 等 )
会議名称
A T L A S P h ys i c s T o ol s Wo r ks h o p
開催日時
2 0 0 6 年 5 月 15 日 ∼ 1 9 日
開催場所
東京大学
参加人数
70 名
うち外国人
35 名
備考
A T L AS の 物 理 解 析 ソ フ ト ウ エ ア に 関 す る ワ ー ク シ ョ ッ プ 。 こ の 会 議 は 特 に ア ジ ア 太 平 洋 地
区 の AT L AS 共 同 研 究 者 が 一 堂 に 会 し た 点 で も 注 目 さ れ た 。
会議名称
S u p e rs y m me t r y i n 2 0 1 0’s
開催日時
2 0 0 7 年 6 月 20 日 ∼ 2 2 日
開催場所
北海道大学
参加人数
64 名
うち外国人
9 名
備考
A T L AS 実 験 の 課 題 の 一 つ で あ る 超 対 称 性 粒 子 の 発 見 を 中 心 課 題 と し た 国 際 研 究 会 。 理 論 実
験研究者が参加。
会議名称
L e p t on F la v o r P h ys i c s w it h Mo s t I n t en s e D C Mu o n B e am
開催日時
2 0 0 8 年 3 月 27 日 ∼ 2 8 日
開催場所
東京大学
参加人数
31 名
うち外国人
17 名
備考
2005 年 度 よ り 毎 年 開 催
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東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅰ
(2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由
(水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 大 き く 上 回 る 。
(判 断 理 由 ) 本 セ ン タ ー の 研 究 活 動 は 、 最 先 端 の 実 験 研 究 を 国 際 共 同 で 主 導 的 に 進 め て お
り 、様 々 な 準 備 研 究 に お い て も 重 要 な 貢 献 を 行 い 、本 実 験 を 効 果 的 に 推 進 し た 。ま た 、ATLAS
実験地域解析センターのための特別経費など、資金の獲得も活発に行われており、国際共
同研究の拠点としての役割を果たしている。衝突型加速器実験など大規模な実験装置の建
設運転を行うために活発な国際共同研究を推進している。
全国共同利用施設として、海外で研究を行おうとする研究者を多面的に支援している。
具 体 的 に は 、ATLAS 実 験 地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム や CERN サ テ ラ イ ト シ ス テ ム な ど の 計 算
機 資 源 を 提 供 し 、 CERN 現 地 で は 、 滞 在 す る 共 同 利 用 研 究 者 へ の 研 究 所 設 備 等 の 利 用 支 援 ・
情報提供及び国内の研究者との通信連絡用のテレビ会議システムなどを提供し、全国の研
究者が、最先端の国際共同実験に主導的に参加できるよう供している。これらの活動は、
共同利用研究者から高く評価されている。
これらの研究活動に加え、本センターの研究者自身の研究活動も活発で、学術論文等研
究業績の上でも大きな成果をあげていることから、関係者の期待する水準を大きく上回る
と判断する。
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東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅱ
分析項目Ⅱ 研究成果の状況
(1 )観 点 ご と の 分 析
観 点 研 究 成 果 の 状 況 (大 学 共 同 利 用 機 関 、 大 学 の 全 国 共 同 利 用 機 能 を 有 す る 附
置 研 究 所 及 び 研 究 施 設 に お い て は 、共 同 利 用・共 同 研 究 の 成 果 の 状 況 を 含
めること。)
(観 点 に 係 る 状 況 )
ATLAS 実 験 は 、 2008 年 度 実 験 開 始 を 目 指 し て 建 設 と 物 理 解 析 の 準 備 が 進 行 し て い る 。 そ
の 中 で 本 セ ン タ ー の 研 究 者 の 果 た し て い る 役 割 は 、非 常 に 大 き い 。TGC 測 定 器 組 み 立 て は 、
こ れ ま で の CERN で の 活 動 経 験 を 活 か し 、本 セ ン タ ー 研 究 者 が 中 心 に な っ て 進 め て い る 。ま
た、物理解析においても、ヒッグス粒子の質量が軽い場合の発見の可能性を格段に向上さ
せ た( 研 究 業 績 22-28-1001)。こ れ ら は 引 用 数 も 多 く 、ATLAS 実 験 に 参 加 す る 国 内・国 外 の
研究者から高く評価されている。
解析用計算機資源でも計算グリッドが史上初めて世界規模で使用されるが、本センター
はそのグリッドサイトを国内で最初に設立した。グリッド技術に関しては、分野を超えて
期 待 が 集 ま っ て お り 、 地 域 解 析 セ ン タ ー の 高 い 効 率 (2008 年 1 月 ∼ 3 月 で 98%以 上 )で の 運
用 実 績 は 、ATLAS 実 験 だ け で な く 関 係 す る グ リ ッ ド 運 用 サ イ ド か ら も 高 い 評 価 を 得 て い る 。
各 国 の 地 域 解 析 セ ン タ ー の 中 で は 、 世 界 で ト ッ プ を 争 う 計 算 量 を 誇 る 。 2007 年 10 月 に は
世界第2位のシミュレーション計算実績を持つ。
本実験は開始直前であり、これらの成果は研究業績として発表できる段階ではないが、
実験開始後には本センターを代表する研究業績となることは明らかである。
国際共同研究の中で主導的に研究を推進するためには、その研究組織の中で重要な役割
を 果 た す 必 要 が あ る 。 ATLAS 実 験 に お い て は 資 料 28-10 に 示 す よ う に 各 種 委 員 会 の 委 員 を
本センター教員が務めており、我々の視点を常に実験遂行に反映すると同時に、実験の進
行状況を的確に把握し、研究計画を常に適切に保つことができている。これらの委員はア
ジア太平洋地区の代表としても貢献している。これらは共同研究者の期待に十分に応えて
いることの1つの指標でもある。
(資 料 28-10: 本 セ ン タ ー 教 員 が 委 員 を 務 め る ATLAS 実 験 関 係 委 員 会 )
委員会名
委員
委員会の役割
Executive Board
小林富雄教授
ATLAS 実 験 執 行 委 員 会 に 該 当
Computing Resource Review Board
川本辰男准教授
計算資源に関する諮問委員会
Speakers Committee
川本辰男准教授
国際会議発表者の選考委員会
International Computing Board
坂本
宏教授
解析計算資源の企画運用を決定
WLCG Overview Board
坂本
宏教授
LCG プ ロ ジ ェ ク ト 監 視 監 督
WLCG Grid Deployment Board
坂本
宏教授
LCG グ リ ッ ド 配 備 の 企 画 検 討
MEG 実 験 に 関 す る 共 同 研 究 で は 、 本 セ ン タ ー 研 究 者 の 主 導 に よ る 独 創 的 な 優 れ た 測 定 器
の開発研究が高く評価されている。特に液体キセノン測定器の開発研究については、国際
的にも独創性に優れているとの評価を得、高エネルギー加速器科学研究奨励会小柴賞を受
賞 し た ( 研 究 業 績 22-28-1002)。 ま た 、 液 体 キ セ ノ ン 用 パ ル ス 管 冷 凍 機 に 関 す る KEK と の
共同研究は、我が国の科学技術への貢献が大きいとして、文部科学大臣表彰科学技術賞を
受 賞 し た ( 研 究 業 績 22-28-1001)。 国 内 外 の 学 会 で の 研 究 成 果 発 表 に よ る 学 会 賞 の 受 賞 も
複数ある。またこの数年、毎年2、3の大きな国際学会で研究成果に関する講演依頼があ
る 。 こ れ ら の 事 よ り わ か る よ う に 、 MEG 実 験 に 関 連 す る 研 究 に お い て も 、 内 外 の 共 同 研 究
者から高い評価を得ており、国際的に非常に高い水準にあるものと考えられる。
本センター研究者の独創的アイデアを活かした小規模実験も行われている。オルソポジ
トロニウムの精密寿命測定による標準理論の高精度検証など、学術的に非常に重要な成果
が得られている。
−289−
東京大学素粒子物理国際研究センター 分析項目Ⅱ
ILC(国 際 リ ニ ア コ ラ イ ダ ー )の 準 備 研 究 に お い て 、 加 速 器 、 検 出 器 、 物 理 解 析 の 広 い 範
囲 で 優 れ た 成 果 を あ げ て お り 、 将 来 ILC 建 設 の 開 始 時 に 、 本 セ ン タ ー が そ の 中 心 的 役 割 を
担うための礎が着実に構築されつつあると、内外の素粒子研究者コミュニティーから高く
評価されている。
(2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由
(水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 大 き く 上 回 る 。
(判 断 理 由 ) ATLAS 実 験 に お い て は 、 斬 新 か つ 有 効 な 物 理 解 析 手 法 の 開 発 を 通 し 、 巨 大 な
共同研究の中で日本の研究者の研究活動の水準の高さを各国の研究者に示すことが出来た。
その背景には、地域解析センターシステム等の解析基盤の高可用性を通し、研究者のアイ
デアをシミュレーション結果に結びつけることを可能ならしめ、そのアイデアが本実験デ
ータ解析でいかに有効であるかを効果的に説明することができたことなどが挙げられる。
MEG 実 験 に お い て も 、そ の 正 否 を 決 す る 重 要 な 検 出 器 の 開 発・建 設 に 成 功 し て お り 、2007
年 秋 に 実 験 開 始 に こ ぎ 着 け た 。 MEG 実 験 を 構 成 す る 大 部 分 の 検 出 器 建 設 運 用 は 本 セ ン タ ー
が行っており、このことからも共同利用研究者を含む内外の共同研究者の期待する水準を
大きく上回っていると考えられる。
−2810−
東京大学素粒子物理国際研究センター
Ⅲ
質の向上度の判断
① 事 例 1 「 地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム 導 入 に よ る 研 究 水 準 の 向 上 」 (分 析 項 目 Ⅰ )
(質の向上があったと判断する取組)
2006 年 度 に 地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム を 本 セ ン タ ー に 導 入 し た 。こ の シ ス テ ム は 計 算 グ
リ ッ ド サ イ ト と し て 運 用 し 、 そ れ を 通 し て ATLAS 実 験 全 体 に 対 し て 貢 献 す る と と も に 、 全
国の共同研究者への解析環境を提供している。以前のパイロットモデルシステムは、地域
解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム 導 入 の 研 究 開 発 を 主 た る 目 的 で 使 用 さ れ て い た た め 、規 模 も 小 さ く 、
また、頻繁なシステム停止などにより共同利用者の使用には適していなかった。地域解析
セ ン タ ー シ ス テ ム は 、以 前 の 10 倍 の ス ケ ー ル (2600CPU コ ア 、1 PB 近 く の デ ィ ス ク 等 )の 計
算 資 源 を 100%近 い 稼 働 率 で 使 用 で き る よ う に な っ た 。2007 年 よ り 全 面 的 に 共 同 利 用 者 に 開
放されており、高可用性も確保している。これによりシミュレーション等計算資源を多く
使う研究が急速に進展した。
② 事 例 2 「 特 任 教 員 ・ リ サ ー チ フ ェ ロ ー の 採 用 に よ る 研 究 水 準 の 向 上 」 (分 析 項 目 I)
(質の向上があったと判断する取組)
CERN と の 協 定 に 基 づ き 、地 域 解 析 セ ン タ ー シ ス テ ム を グ リ ッ ド サ イ ト と し て 高 い 効 率 で
運用しなければならない。そのため計算機技術の専門知識を有する特任助教を2名採用
(2006 年 6 月 及 び 2007 年 8 月 )し 、 運 用 ス タ ッ フ の 充 実 を 図 っ た 。 そ の 結 果 、 そ れ ま で 1
名で行ってきた運用を2名で行えるようになり、高可用性を確保できるようになった。ま
た、ネットワーク接続の詳細な調査など、効率運用が出来るようになった。物理解析の準
備では、大量のシミュレーション生成と様々な角度からの解析の検討が必要であり、その
ために若手研究者の集中的な投入が必須であった。そのためにリサーチフェローを4名
(2006 年 度 1 名 、 2007 年 度 3 名 )採 用 し 研 究 水 準 の 向 上 を 目 指 し た 。 CERN に 常 駐 す る 助 教
4名にリサーチフェロー4名が加わったことにより、背景雑音信号の評価や検出器性能の
影 響 な ど 、解 析 手 法 の 有 効 性 の 確 認 を よ り 多 面 的・包 括 的 に 行 う こ と が 出 来 る よ う に な り 、
研究水準が上がった。これらの取組により、地域解析センターシステムの運用について、
高可用性の確保と研究水準の大幅な向上が認められた。
−2811−
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