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第5章 観光産業の活性化
第5章 観光産業の活性化 .神戸観光プランの推進 神戸観光プランの趣旨と意義 全国的に人口減少局面に突入している中、観光による交流人口の増加は、人・物・情報の交流・融 合を深め、さらに魅力あふれるまちを築いていく上で、非常に重要なテーマの一つとなっており、国 や他都市でも観光振興に向けた多様な取り組みが進められている。観光分野における都市間競争が激 しさを増す中、国内外からより多くの観光客を神戸にひきつけるためには、神戸の魅力をより一層高 め、情報発信していく取り組みを進める必要がある。 このように「観光交流都市」の実現がさらに重要なテーマとなる中、今後もこれまでの取り組みを 発展・継続させていくため、2010年度(平成22年度)に計画の最終年を迎えた「神戸観光アクション プラン」の後継計画として、「神戸観光プラン」を策定した。 このプランを着実に遂行していくことにより、経済や雇用への効果だけでなく、観光振興の持つ地 域創造力を活かし、まちの美化や整備、市民のわがまちに誇りを持ちわがまちを愛する心の醸成を進 めるなど、観光を通じた総合的なまちづくりにより、人が集い、交流し、魅力あふれる「観光交流都 市」を実現する。 ① コンベンションを核とするMICE誘致の推進 参加者の消費活動による経済効果があるだけで なく、シティセールスや外国人観光客の拡大にも つながるMICEを積極的に誘致・開催するとと もに開催環境の整備を進め、戦略的な観光客誘致 につなげる。 ⑴防災、医療など神戸ならではのコンベンショ ンやインセンティブツアーなどの誘致を進め る。 ⑵多様な観光資源を活かした魅力的なプログラ 神戸国際会議場 ムの提供やMICEを支える人材の育成などを行う。 ※MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業の行う報奨・研修旅行(Incentive· Travel)、 国際会議(Convention)、イベント・展示会・見本市(Event/Exhibition)の総称。 第5章 観光産業の活性化 71 国際コンベンション開催件数,都市別開催件数(上段:新基準、下段:旧基準) 2010年 会議開催件数 会議参加者数 うち参加外客数 会議延日数 東 京 (23区) 福岡市 横浜市 京都市 名古屋市 神戸市 都市別開催状況 札幌市 仙台市 大阪市 つくば地区 千里地区 千葉市 北九州市 奈良市 金沢市 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2,159件 2,122件 2,094件 1,858件 1,670件 ― ― ― ― ― ― ― ― ― 3,005件 2,859件 2,896件 2,554件 2,683件 2,737件 1,130,631人 1,252,545人 1,072,163人 908,078人 1,105,066人 1,176,046人 1,180,013人 1,182,771人 1,155,889人 1,026,319人 144,968人 108,929人 110,852人 109,720人 115,254人 104,035人 131,534人 106,308人 110,791人 88,719人 5,167日 5,211日 5,259日 4,958日 6,498日 5,977日 6,513日 5,723日 5,926日 5,902日 ① 491件 ① 497件 ① 480件 ① 440件 ① 460件 ① 357件 ① 428件 ① 353件 ① 408件 ① 371件 ― ― ― ― ① 744件 ① 742件 ① 733件 ① 715件 ① 793件 ① 759件 ② 216件 ② 206件 ③ 172件 ④ 151件 ③ 126件 ⑤ 97件 ⑥ 76件 ⑥ 77件 ⑥ 77件 ⑥ 75件 ― ― ― ― ③ 274件 ⑤ 180件 ⑤ 178件 ⑤ 160件 ⑥ 150件 ⑥ 147件 ③ 174件 ③ 179件 ② 184件 ③ 157件 ⑥ 103件 ④ 105件 ⑤ 82件 41件 70件 15件 ― ― ― ― ⑦ 162件 ⑦ 159件 ⑦ 156件 ⑥ 148件 ⑦ 130件 ⑧ 105件 ④ 155件 ④ 164件 ④ 171件 ② 183件 ② 154件 ② 137件 ② 170件 ② 149件 ② 145件 ② 111件 ― ― ― ― ② 278件 ④ 224件 ③ 224件 ② 222件 ② 209件 ⑤ 192件 ⑤ 122件 ⑤ 124件 ⑤ 130件 ⑤ 109件 ⑤ 109件 ③ 108件 ④ 89件 ④ 83件 ③ 86件 62件 ― ― ― ― ⑤ 194件 ③ 236件 ④ 193件 ③ 193件 ⑤ 167件 ④ 194件 ⑥ 91件 ⑧ 76件 ⑦ 94件 ⑥ 89件 ⑦ 76件 ⑧ 58件 ⑪ 44件 ③ 84件 ⑤ 79件 ④ 82件 ― ― ― ― ⑧ 183件 ⑥ 177件 ⑥ 172件 ④ 168件 ③ 207件 ⑦ 86件 ⑦ 82件 ⑧ 77件 ⑩ 44件 48件 54件 ⑦ 65件 46件 42件 46件 ― ― ― ― ⑨ 127件 ⑨ 99件 ⑨ 92件 ⑨ 87件 ⑩ 71件 ⑨ 96件 ⑧ 72件 ⑫ 60件 ⑬ 63件 ⑨ 51件 45件 42件 43件 37件 41件 46件 ― ― ― ― ⑪ 64件 ⑫ 54件 ⑫ 54件 ⑫ 45件 ⑪ 53件 ⑫ 56件 ⑨ 69件 ⑥ 94件 ⑧ 77件 ⑧ 76件 ④ 111件 ⑥ 89件 ③ 94件 ⑤ 80件 82件 ③ 83件 ― ― ― ― ④ 237件 ② 249件 ② 254件 ⑥ 148件 ④ 192件 ② 230件 ⑨ 69件 ⑨ 74件 ⑫ 80件 ⑦ 82件 64件 ⑦ 60件 ⑩ 56件 72件 55件 ⑤ 76件 ③ 205件 ― ― ― ― ⑩ 94件 ⑩ 88件 ⑩ 78件 ⑧ 90件 ⑨ 80件 ⑩ 88件 ⑪ 65件 ⑩ 71件 ⑩ 53件 ⑭ 32件 49件 35件 ⑨ 58件 39件 32件 25件 ― ― ― ― ⑧ 146件 ⑧ 127件 ⑧ 130件 ⑩ 62件 ⑧ 119件 ⑦ 113件 ⑫ 56件 ⑪ 63件 ⑪ 67件 ⑫ 42件 39件 38件 ⑤ 59件 34件 16件 19件 ― ― ― ― ⑫ 56件 ⑪ 66件 ⑪ 76件 ⑬ 40件 ⑰ 20件 ⑯ 26件 ⑬ 49件 ⑬ 50件 ⑬ 47件 ⑪ 43件 28件 19件 30件 28件 18件 31件 ― ― ― ― ⑬ 36件 ⑯ 24件 ⑮ 37件 ⑭ 34件 ⑫ 43件 ⑪ 69件 ⑭ 33件 15件 ⑮ 29件 23件 19件 27件 17件 23件 18件 24件 ― ― ― ― ⑭ 32件 ⑬ 35件 ⑬ 33件 ⑪ 27件 22件 ⑭ 32件 ⑮ 31件 ⑭ 27件 ⑭ 16件 20件 10件 10件 13件 12件 11件 10件 ― ― ― ― 17件 15件 16件 15件 19件 14件 出所)JNTOコンベンション統計2010 注)・2007年に対象となる国際会議の基準が変更された(新基準)。 ・「つくば地区」はつくば市、土浦市を含む。 ・「千里地区」は大阪府の豊中市、吹田市、茨木市、高槻市、箕面市を含む。 ・ひとつの会議が複数の都市にまたがって開催された場合、それぞれの都市において1件として計上している。 72 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み ② 国際観光の推進 日本全体で外国人観光客の誘致が進み、神戸も外国人観光客の数が増加しているなか、これから の神戸の活性化と国際化に大きく貢献する国際観光の推進のため、戦略的な対策を進める。 ⑴神戸ならではの食や景観、夜景など外国人が魅力を感じる資源を活かす。 ⑵積極的な情報発信やプロモーション展開など誘致を進める。 ⑶多言語サービスの充実など快適に過ごせる受入環境づくりを進める。 メリケンパークでのレセプション 魅力を感じる神戸の資源:夜景 ③ 周遊と滞在につながる観光の推進 関西周辺都市からのアクセスがよいという神戸のメリットを最大限に活かすとともに、宿泊型の 観光や複数の観光資源を周遊するなど、神戸での長時間滞在につながる取り組みを進める。 ⑴観光資源のネットワーク化や交通インフラの充実をはかる。 ⑵夜型の魅力の充実や遠距離からの誘致、教育旅行の推進など宿泊につながる誘致を進める。 ⑶関西の都市と連携した広域観光の推進に取り組む。 近隣市と連携した観光セミナー 神戸夜景ツアー 第5章 観光産業の活性化 73 2.魅力ある観光資源づくり 「KOBE de 清盛 2012」 平成24年の大河ドラマ「平清盛」の放送にあわせて、全国から観光客を誘客し、観光振興および経 済活性化をはかるため、「KOBE·de·清盛·2012」を展開する。 ① 「ドラマ館・歴史館」の運営 平成24年1月21日にオープンしたハー バーランド会場「ドラマ館」と大輪田泊 会場「歴史館」について、ドラマの内容 に合わせて展示物を更新するなど、引き 続き集客拠点として魅力ある運営を行 う。また、歴史ガイドツアーや神戸・清 盛隊によるおもてなし活動により、ドラ マファンにとどまらない誘客に努める。 ② 広報PR活動 ドラマ館 全国に神戸と清盛のゆかりや神戸の魅 力を発信し、更なる誘客に努めるととも に、市民にも神戸と清盛のゆかりを再認 識してもらうためPR活動を積極的に展 開する。 ・神戸・清盛隊によるPRキャラバン 活動 ・公式ウェブサイトでの情報発信 ・子どもたちを含め市民に対する清盛 の業績や神戸とのゆかりの周知 ・他都市と連携した共同キャンペーン 歴史館と神戸・清盛隊 ③ 市民事業者の参加促進 平野地域や兵庫津エリアなど地元団体の取り組みに対する連携や、多様な主体による関連イベン トへの参加促進を引き続き実施する。 また、認定商品や宿泊プランづくりへの支援や交通事業者との連携により市内経済活性化をはか る。 74 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 3.観光客の誘致受け入れ 1)観光コンベンションビューローの運営 民間事業者との密接な連携のもと、観光振興、コンベンション誘致を一層推進していくため、「観 光コンベンションビューロー」を運営する。 2)情報発信誘致プロモーションの充実 神戸の多彩な観光資源の魅力を効果的な手段で発信し、より多くの観光客の誘客に努める。 ① 神戸フィルムオフィス事業 ロケ地としての魅力を活かした観光誘客を はかるため、国内外の映画やテレビドラマな どの映像作品を神戸に誘致し、映像制作に関 する各種サービスを提供する神戸フィルムオ フィスを支援する。 ② 全国主要都市での観光プロモーション展開 南京町での撮影 神戸空港の就航都市である札幌、鹿児島などで実施される祭りやイベントに参加し、観光 キャンペーンを実施するほか、首都圏をはじめとする全国主要都市において、旅行会社に対 し神戸向けの旅行商品造成に向けた働きかけを行うなど、神戸観光のPRや観光客誘致をはか る。 ③ メディアを活かした情報発信 神戸観光の情報発信をより効果的に展開するため、メディアを対象として、インセンティブ となる助成を行う。 ⑴取材費助成 観光・生活情報誌などの媒体を対象として、神戸の情報を掲載するにあたっての取材費助 成を行う。 ⑵旅行番組撮影助成 「旅番組」及び情報番組内の「旅コーナー」誘致のため、撮影助成を行う。さらに、撮影 にあたっては神戸フィルムオフィスによるノウハウを活用し、撮影アテンド等のサービス提 供もあわせて実施する。 ④ 夜型観光の振興 経済波及効果の大きい滞在型観光のさらなる推進をはかるため、夜型観光の振興に取り組む。 第5章 観光産業の活性化 75 3)国際観光の振興 今後も国際観光の市場が拡大していくことが期待される東アジアをターゲットとして、効果的な情 報発信を行い、外国人観光客の増加につなげる。 · ① ビジット・ジャパン事業の推進 訪日外国人観光客促進戦略の一環である観光庁のビジット・ジャパン(VJ)事業を推進す るにあたり、近畿運輸局・周辺地方自治体・民間企業と連携して、外国人観光客誘致のための プロモーション事業を展開する。 ② 東アジアでの観光プロモーションの展開 今後訪日旅行の増大が見込まれる東アジアを中心とした外国人観光客の誘致を行うため、神 戸商品造成の促進をはかるとともに、メディア等の招聘も含め、ターゲット国内でのPRに努 める。 ③ 訪日旅行商品造成助成 中国・韓国などからの訪日旅行商品が、大阪から東京を周遊するコースが多い現状をふま え、神戸を含む旅行商品造成の促進をはかるため助成を行う。 ④ 「関西元気!プロジェクト」の展開 ソーシャルネットワークを活用した楽しい観光風景や安全で快適な観光地情報などを個人レ ベルで共用し、インターネットでの口コミによる情報を広げ、より効果的に消費者へ神戸の魅 力を伝える。 ⑤ その他国際観光の推進 ・関西地域振興財団との連携 ・京阪神堺四都市外客誘致実行委員会、兵庫県外客誘致促進委員会への参画 等 76 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 4.MICE誘致の推進 コンベンションをはじめとするMICEの開催は、国内外からの滞在型の集客が期待されるととも に、文化の振興、都市イメージの向上さらには空港の利用促進にも資することから、積極的な誘致活 動を展開する。 1)インセンティブツアー誘致の推進 多様な観光資源を有する神戸の強みを生かした神戸ならではの魅力的なプログラムの充実をはか り、幅広い支援メニューの提供、セミナーの開催、企業担当者の招聘などを通じてインセンティブツ アーの誘致を推進する。 2)コンベンションの誘致促進 ① 国内会議・大会への補助制度の創設 大型の国内会議・大会に対する開催経費の一部を補助することにより誘致機能の強化をはか る。 ② 誘致プロモーション事業 医学系学会、工学系学会をはじめ、 大学や企業などへの営業を全国的に展 開する。また、「国際ミーティングエ キスポ」への出展、海外キーパーソン 招聘事業等、誘致プロモーションを積 極的に展開する。 ③ 広報・宣伝 情報誌やインターネットなどによ り、神戸のコンベンション情報を積極 国際免疫学会議 的に発信するとともに、パンフレットなどの作成を行う。 ④ 主催者・事務局サポート 会議開催補助制度や様々な特典サービスをパッケージにして提供 する国際会議誘致プロモーション“MEET· IN· KOBE 21”を展開 する。また、優良コンベンションを神戸に誘致・定着させるため、 会議運営面でのアドバイス、資料提供をはじめ、主催者への各種サ ポート業務を実施する。 第5章 観光産業の活性化 77 ⑤ 見本市・展示会の誘致及び開催支援 神戸での継続開催を主催者に働きかけるとともに、宝飾・ファッション・医療分野など、神 戸の特性にマッチした見本市・展示会の誘致及び開催支援に努める。 ⑥ コンベンション誘致体制の強化 コンベンションに関連する企業・団体との幅広い人脈やコンベンション誘致に関してノウハ ウを有する民間人材を、(財)神戸国際観光コンベンション協会内に配置(神戸・東京)し、新 規需要の掘り起こしなど積極的な誘致に取り組む。 また、市内主要ホテルを中心として設立された「神戸コンベンション誘致協議会」におい て、首都圏へのキャラバン実施など、官民一体となった誘致活動を行う。 3)コンベンションセンター再構築基本構想の策定 都市間競争が激しいコンベンション誘致において、本市が引き続き優位性を発揮できるよう 今後求められるコンベンションセンターの規模・設備・サービスなどについて基本構想を策定 する。 78 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 第6章 小売商業・地域社会の活性化 .商店街・小売市場の現状 消費者ニーズの多様化や流通構造の変化、自動車の普及による生活様式の変化、大型店の進出な どにより、商店街・小売市場(以下「商店街等」という。)を取り巻く環境は厳しいものとなってい る。全国の大都市においても小売業事業所数は減少傾向にあり、この傾向は、神戸市においても同様 である。 売上の低迷や店主の高齢化、後継者の不在などのため廃業するケースも多く、空き店舗対策が課題 となっている地域もある。 一方、商店街等は、消費の場としてばかりではなく、「賑わい」の場として、また、「地域力の醸 成」の場として都市の重要な機能を有している。特に神戸においては、震災からの復興の過程で高 まった地域の絆は大きな財産であり、商店街等もその中で重要な役割を担っている。 商店街等には、商品やサービスのきめ細かい提供などによる住民ニーズへの対応や、地域の交流・ 情報発信の拠点として、大型店にはない個性や魅力があり、高齢化が進む地域社会において、徒歩圏 内で買い物ができ、コミュニティの核として地域と強く結びついた商店街等の役割は大きい。 最近では、地域に根付いた商店街等として、地域との結びつきを強める様々な取り組みが行われて いる。また、若手商業者グループが業種・地域聞の壁を乗り越えて交流・情報交換を行うなど、商店 街等の活動も多様化してきている。 2.活性化に向けた取り組み 地域の特性を活かした賑わいづくりや地域との連携等を促進し、あわせて空き店舗対策をさらに推 し進めることで、商店街・小売市場に賑わいを取り戻し、地域住民にとってなくてはならない魅力的 な商業集積を形成する。 1)「地元こうべで買いましょう」運動の展開 平成21年₃月より広く市民に地元消費を訴え、地域商業を活性化するためのキャンペーン事業「地 元こうべで買いましょう」運動を市内で一斉実施し、地域消費の喚起を促し、地元消費の拡大を図っ た。 また、神戸市商店街連合会・神戸市小売市場連合会が共同で平成21年₃月から平成21年₈月まで実 施した「こうべ買っ得商品券」発行事業についても支援を行った。 第6章 小売商業・地域社会の活性化 79 2)商店街・市場「知っ得!買っ得!」応援事業 平成23・24年度には、商店街・小売市場が、それぞれの 特色や個店を紹介するため、クーポン(特典)付きの「ガ イドブック」を企画・製作する事業に対して支援してい る。 さらに、平成22年度より、市内商店街・市場から応募の あった団体の逸品を一堂に集めて展示販売する「自慢の逸 品展」を開催している。 KOBE商店街・市場 自慢の逸品展 3)賑わい創出・魅力づくり事業(イベン卜助成) 商業者の継続性ある事業を促進し、まちづくりと一体となった地域商業の活性化のため、商店街・ 小売市場が行う住民とのふれあいを図るイベン卜への支援を行い、地域の賑わいづくりや集客力の拡 大に努めている。 4)都心商業魅力アップ事業 都心商業エリアにおいて、景観形成市民団体や商業団体などと連携しながら、エリア毎の景観やコ ンセプトづくりとそれに即した店舗を誘致することにより、まち(エリア)の魅力向上をはかるた め、その手法などについて検討をすすめるとともに、店舗改装支援や賃料補助を行う。 5)商店街・市場インターネット市場進出支援事業 急成長を続けるインターネット市場への進出により、新たな販路の開拓に取り組もうとする意欲あ る商店街・小売市場の店舗に対して、セミナーの開催などの支援を行う。加えて、進出店舗の商品を 一堂に集めて販売する企画展を期間限定で開催する。 6)若年者等商店街就職支援事業 商店街・市場においては、店主の高齢化や後継者不足、空き店舗の増加が大きな課題となってい る。一方で、長引く不況の影響により、新卒者等の就職環境は厳しい状態が続いている。 そこで、若年求職者を商店街・小売市場に派遣し、店舗での就業体験やチャレンジショップの運営 体験をさせることで、商店街等の空き店舗の解消や若返り・活性化を図るとともに、若年求職者の商 店街・小売市場の店舗での就職、開業にもつなげていく。 80 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 7)総合空き店舗活用支援事業 地域商業の活性化に資することを目的として、商店街・小売市場の実 施する空き店舗対策に対して、事業の目的や内容、段階に応じたきめ細 かな補助メニューによる総合的な支援を実施する。 〔戦略的空き店舗活用支援事業〕 ⑴ プラン策定等事業 商店街・小売市場が実施する基本調査・診断、空き店舗対策プランの 策定、家主交渉、出店交渉、店舗誘致を継続的に支援する専門家を派遣 する。 ⑵ 空き店舗賃借料等補助(商業型) 商店街・小売市場が、計画に基づき必要な業種を空き店舗に誘致する 空き店舗活用支援事業により 場合に、その賃借料等の一部を補助する。 ⑶ 空き店舗賃借料等補助(コミュニティ型) 出店した「手作り水餃子店」 (長田区:丸五市場) 商店街・小売市場が、地域団体、NPO、学生等などと連携し、一般の店舗以外のコミュニティ施 設を空き店舗に開設する場合に、その賃借料等の一部を補助する。 8)地域力アップ事業 「地域商業の活性化は地域そのものの活性化と密接不可分」であることから、平成18年度から地域 力アップに貢献する活動を通じて、商店街・小売市場の活性化を図る以下の先進的な取り組みに対 し、その初期段階での活動を支援している。 (補助対象テーマ) 1.安全・安心な商店街・市場づくり 2.高齢者・障害者にやさしい商店街・市場づくり 3.子どもにやさしい商店街・市場づくり 4.環境にやさしい商店街・市場づくり 5.地域・歴史にちなんだ商店街・市場づくり 6.芸術・文化をいかした商店街・市場づくり 7.デザインに配慮した商店街・市場づくり 8.大学・学生との連携による商店街・市場づくり なお、平成24年度分に限り、「地域・歴史にちなんだ商店街・市場づくり」のうち「平清盛」に関 連する取り組みに対しては、支援内容を拡充している。 第6章 小売商業・地域社会の活性化 81 9)共同施設建設補助金 商店街・小売市場の共同施設もまた、まちの利便性・活力を維持・ 向上させるとともに、まちの個性と潤いを形成する非常に重要な役 割を果たしている。そのため、商店街・小売市場の環境整備を促進 し、地域商業の活性化を図るため支援を行っている。防犯カメラ、街 路灯、アーケードなどは、安全確保や雨天時の利便性・回遊性を高 めることにより、高齢者・障害者をはじめとする来街者全体に多大な 効用をもたらしており、またアーチ、カラー舗装、ス卜リー卜ファニ チャーなどはまちの美しさ・魅力の向上に寄与している。魅力ある共 同施設の整備は、消費者に安全で安心して買い物ができ、楽しく時間 を過ごせる環境を提供するとともに、商店街・小売市場にとっては集 アーケードの改修 (中央区:元町六丁目商店街) 客力向上につながっている。 10)中心市街地活性化の取組み(神戸ながたティ・オム・オ一) 商業者が中心となった中心市街地活性化の取組みとして、神戸なが たティ・エム・オーが積極的な活動を行なっている。 神戸市では、震災からの復興を図るため、平成10年度に新長田駅周 辺113.4haを指定区域として、中心市街地活性化基本計画を策定した。 その後、都市型新事業支援施設としてシューズフラザを建設し、ケミ カルシューズ産業の復興への支援を進めてきた。 一方、商業の振興については、地元商業者による活性化検討会の結 果を踏まえ、地元商業団体を主な出資者として、「株式会社神戸ながた ティ・エム・オー」が平成13年6月に設立され、検討会での討議内容 をもとに作成されたTMO構想が、同年9月に認定された。 神戸ながたティ・エム・オーは、同構想に基づき、地域の商業団体 と協力しながら、①ホームページによるイベン卜等のまちの情報発 信、②「社会体験学習のまち」構想の推進、③「食のまちながた」の 新長田一店逸品研究会 「神戸新長田夏の学校」 推進、④商店街・小売市場からの事業受託などの取組みを柱に、地域の発展と商業の活性化に取り組 んでいる。 さらに、平成18年8月の中心市街地活性化法の改正に伴い、神戸ながたティ・エム・オーを中心に 地元で設立された「神戸・新長田中心市街地活性化協議会」と議論を重ね、新たに策定した基本計画 が平成20年7月9日付けで国の認定を受け、この計画に基づき、中心市街地のさらなる活性化に取り 組んでいる。 平成24年度は、「食のまち長田」を推進するとともに、街の回遊性の向上を図り、広域からの集 客・リピーターの確保を目指して、各店舗の魅力を掘り起こす「一店逸品運動」を強化する。 82 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 第7章 農水産業の活性化 .こうべ農漁業ビジョン2015の推進 (農漁業ビジョンの概要・体系図についてはP.48〜49参照) 1)人づくり 神戸の農漁業を支えている意欲ある農漁業者や、集落営農組織の創意・工夫、活動を支援するとと もに、新規参入者や企業などの多様な担い手の育成を進めている。 ① 人・農地プランの推進 農家の高齢化、後継者不足により地域における担い手の育成が課題となっており、平成25年度ま でに集落・地域の話し合いにより、地域における今後の担い手(認定農業者、集落営農組織、新規 就農者など)を選定するとともに、農地の集積による土地利用計画の作成など、地域の将来像につ いてまとめた「人・農地プラン」を作成する。 ② 認定農業者・集落宮農組織の育成 農業の担い手不足など地域が抱える課題に対処するため、経営規模の拡大や集約化、複合化など によって経営を発展させていこうとする意欲ある農業者を認定農業者として認定し、地域農業の中 心的な担い手として集中的に各種施策を実施している。 また、集落営農組織について、経営診断を行うなど、法人化への誘導を図り、経営の安定化をめ ざしている。 【認定農業者数】 (平成24年3月末現在:人、組織) 水稲 野菜 花卉 果樹 畜産 その他 法人 計 北区 4 26 18 0 9 2 7 66 西区 6 187 22 8 23 1 15 262 市外 0 1 0 0 0 0 0 1 計 10 214 40 8 32 3 22 329 ③ 新規就農の推進 近年,農業従事者の高齢化や後継者不足が進み,地域農業の低迷や農村環境の悪化などが懸念さ れていることから,今後の農業を支える多様な担い手を育成・確保するため,新規に就農を希望す る市民,農業後継者等に対する農業技術や経営知識等の基礎的研修として,市・JAの共催による 新規就農者塾を実施する。 また,新規就農希望者にとって,農業技術等の習得とともに農地の確保や就農後の地域との協調 は大きな課題となることから,農業技術力や地域情報量だけでなく,教え,育てる能力を併せ持つ 第7章 農水産業の活性化 83 農家を里親として登録し,新規就農希望者に対して研修,就農及び就農後のフォローアップまでを 行う。 ④ 民間企業等の農業参入促進(多様な担い手の育成) 民間企業やNPOの農業参入を促進するため、農村地域や企業等の様々なニーズや課題を把握し て、円滑に農業参入できる仕組みづくりを進める。 ⑤ 女性農漁者の育成・支援 市内の農漁業に携わる女性の活動強化のため、平成16年₈月に発足した神戸地域農漁村女性組織 連絡協議会の活動を支援している。さらに、本市農漁業の振興と、農漁業女性の教養を高め、社会 的・経済的地位の向上を図ることを目的として、女性組織による事業推進への活動助成を行ってい る。· ⑥ 雇用農業の推進 JA兵庫六甲が開設している農作業無料職業紹介所とタイアップして、産業として自立できる足 腰の強い農業経営体の育成を図るとともに、雇用農業の推進を図る。 【JA兵庫六甲の農作業無料職業紹介所による市民雇用実績】 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 98名 85名 72名 55名 45名 53名 90名 60名 70名 ⑦ アグリマイスター 卓越した技術を持つ農業者を、平成18年度から「アグリマイスター」として認定し、担い手の意 欲向上、後継者の育成を図っていくとともに、学校などに出向き、都市住民へ農業の大切さの普 及・啓発に努めている。 2)ものづくり 新鮮で安全・安心な農水産物を安定的に市民に提供するため、すぐれた生産技術の継承や生産基盤 の整備などにより生産性の向上に努め産地の強化を図るとともに、市場出荷や直売所をはじめ市内小 売店、飲食店などとのマッチングによる販路の拡大や産官学との連携による6次産業化を推進し、新 たなブランドの開発により売れるものづくりを進める。 ① 安全・安心な農水産物づくり 市民等に新鮮で安全・安心な野菜等を提供するため、土づくりを行い、環境に配慮した栽培方法 により生産された野菜「こうべ旬菜」の生産出荷の拡大に努めるとともに、地産地消による産地づ くりの支援を行う。 神戸ビーフの振興のため、酪農家の協力を得て、こうべ育成牧場を活用した素牛生産体制づくり を行って、畜産振興に取り組んでいる。 また、栽培漁業センターなどによる魚類の種苗生産や中間育成、栽培試験の実施による「つくり 育てる漁業」を推進する。 84 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み こうべ旬菜とは 神戸市内で生産され、その生産過程において、環境保全に配慮して栽培された野菜で有機農 産物、特別栽培農産物があり、こうべ食の安全・安心農産物懇談会の意見を受けて市が認定し た野菜をいいます。 現在、キャベツ・ダイコン・キクナ・ホウレンソウ・トマト・ナス・キュウリ・レタス・青 ネギ・ニラ・しろな・小松菜・ブロッコリー・チンゲンサイ・ミ ニトマト・スイートコーン・モロへイヤ・水菜の18品目が認定さ れています。 地元の野菜として、市民に親しまれ、末永く愛されるように、 愛称を「こうべ旬菜」としました。 また、シンボルマークは、農家の皆さんが心を込めて作る「新 鮮」で「安心」して食べることができる神戸育ちの野菜と、毎日 の食卓を預かる主婦の満足な顔をイメージしてデザインしたもの です。 ② こうべ版GAPの推進 より「安全・安心」な農産物を生産するため、土づくりから出荷までの生産段階における環境負 荷軽減及び安全確保のための自主チェックシステムである「こうべ版GAP」の取り組みを進め、 農作物の安全性の向上と消費者や実需者の信頼性の確保をするために推進していく。 推進にあたっては、部会等での研修会の開催や現地調査、アンケートの実施、安全性確保のため の先進的な取り組みを支援していく。 ③ ブランド化による販売チャネルの確立 安定した農漁業経営を行うため、既存ブランドのPRによる神戸ブランド力の向上や大学などや 企業と産地による6次産業化の取り組みによって新たな「美味しいもの」づくりによるブランド開 発を進めるとともに、情報の収集・発信・活用による新たな販路の開拓を進めていく。 3)地域づくり (1)豊かな里づくりの推進(里のデザイン) 農業・農村地域には、農地、ため池、里山などがあり、単に農業生産をする場だけでなく、水資源 の涵養、自然環境、農村環境などの美しい景観の形成、伝統文化や食文化の継承など多面的、公共的 な役割を担っている。この大切な財産を保全し、次世代に引き継ぐために、地域住民だけでなく多く の市民が共有できる機会を生み出し、交流を通じて地産地消や食育の場を提供することで、地域の活 性化を推進する。 ① 里づくりの推進による農村環境の保全・育成 神戸市では、市内の農村地域を「人と自然との共生ゾーン」と位置づけ、農業振興や農村地域の 活性化を通じて、自然と調和し、快適で魅力あふれた都市の実現を目指している。 具体的には、共生ゾーン区域のゾーニングにより秩序ある土地利用を誘導するほか、農村景観の 保全・形成のため農村景観保全形成地域の指定などを行っている。 第7章 農水産業の活性化 85 また、里づくりとして、概ね集落ごとに「里づくり協議会」が設立され、地域住民が主体となっ て地域の将来像である「里づくり計画」を策定している。策定後は計画に基づき実践活動を行って おり、市はそれらを側面的に支援している。 平成24年3月末現在、共生ゾーン区域内の167集落のうち159集落で里づくり協議会が設立され、 91集落で里づくり計画が策定されている。 【里づくり協議会設立及び計画策定状況】 区 全集落数 北 (平成24年3月末現在) 協議会設立 計画策定 集落数 地区数 割 合 集落数 地区数 割 合 65 65 59 100% 35 32 54% 西 102 94 75 92% 56 46 55% 合計 167 159 134 95% 91 78 54% ② 生産・生活基盤施設の有効活用 農業生産基盤・生活基盤として整備した農地、ため池、水路、集落排水施設については、その機 能を維持するため、ストックマネジメントによる効率的で適正な管理を進める。また、農地・農業 用水などの資源や農村環境の保全に向けた取り組みを推進する。 ③ 都市と農村との交流による地域づくり 【ふる里一誇事業】 市では、地域住民による特産品や景観などを活かした里づくりの取り組みを「ふる里一誇」事業 と位置づけ、支援を行っている。 具体的には、①地域の特色を活かした特産品づくり、②都市部と農村部との交流、③農村景観の 保全・形成、④伝統文化の保存・継承などを目的とする取り組みについて、事業費の一部助成など を行っている。 地元産花壇苗の植え付け体験 86 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 稲刈り体験 (2)豊かな海づくりの推進(浜のデザイン) 神戸市では、約6,900haの漁場で漁船漁業、海苔養殖、観光漁業などの沿岸漁業が活発に営まれて いる。この神戸の豊かな漁場の環境・生態系の維持・保全と漁業の振興のため、漁港の整備や、海底 耕耘などの「豊かな海づくり」に取り組んでいる。 【漁業拠点】 漁港・・・垂水漁港、塩屋漁港、舞子漁港 漁船だまり・・・須磨浦、須磨港、長田港、兵庫運河 また、「獲る漁業」から「育てる漁業」への転換を目指し、神戸市立栽培漁業センターにおいて、 ヒラメ、オニオコゼ、アサリ、マダイ、マコガレイなどの稚魚を生産し、神戸の海に放流することで 水産資源の保全を図っている。 【稚魚の放流数(平成23年度)】 魚介類名 放流数 マ ダ イ 約55千尾 ヒ ラ メ 約260千尾 オニオコゼ 約85千尾 マコガレイ 約20千尾 ア サ リ 約1,900千個体 そのほか、漁業と市民との交流拠点として水産体験学習館・海づり公園を運営している。 【交流拠点】 水産体験学習館(さかなの学校)・・・漁業体験学習を通じ、漁業者と市民との交流を図る 須磨・平磯海づり公園・・・快適な海づりの場と海上の憩いの場を市民に提供する 水産体験学習館 漁業の様子 海づり公園(須磨) 第7章 農水産業の活性化 87 第8章 企業誘致の推進 .企業誘致の推進 1)概要 神戸の経済を活性化していくには、既存産業の高度化とともに、今後の成長が期待される産業を中 心に新たな立地を進めていくことが不可欠である。中でも企業誘致については、都市間競争が激化し ており、これに打ち勝つため、平成17年(2005)4月に、市長をトップとする企業誘致プロジェクト チーム「神戸エンタープライズプロモーションビューロー」(企業誘致推進本部)を設置し、体制の 強化を図り、一元的な情報の収集・発信など官民一体となった企業誘致の取り組みを進めている。 2)今後の取り組み 平成17年4月の「神戸エンタープライズ プロモーション ビューロー」の発足以降、「平成26年 度までの10年間で100ヘクタールの産業用地売却」を目標として、企業誘致に取り組んできた結果、 平成24年4月の分譲契約により前倒しして目標を達成した。(平成24年4月13日現在 100.6ha)今後 は、「150ヘクタールの産業用地売却(平成26年度までに)」の他、「医療関連企業の300社集積(平成 27年度までに)」、「企業誘致(再開発事業等を含む)による1万人の雇用創出(平成22年度から平成 25年度までに)」といった目標達成に向けて企業誘致に全力で取り組んでいく。 国内での投資件数が減少傾向にあり、都市間での企業誘致競争がさらに厳しさを増す中、国内最大 の医療クラスター、関西イノベーション国際戦略総合特区の指定、スーパーコンピュータ「京」の本 格稼動(平成24年9月)といった、神戸の独自の強みを最大限アピールし、企業立地インセンティブ を活用しながら、国内外の成長分野の企業を中心に、民間事業者とも連携した企業誘致活動を積極的 に展開していく。 ◆誘致重点地域 臨海部:①ポートアイランド第2期 ②神戸空港島 内陸部:③神戸テクノ・ロジスティックパーク(神戸複合産業団地) ④神戸サイエンスパーク ◆企業立地のためのインセンティブ ①神戸エンタープライズゾーン条例による市税の軽減 ②産業団地の分譲価格の割引 ③新産業・外資系企業立地促進のための賃料補助 ④兵庫県産業集積条例による県税の軽減・設備投資補助 ⑤企業立地促進法による法人税の特別償却・低利融資 ⑥国際戦略総合特区での法人税の軽減 など 88 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 2.医療関連企業の誘致 1)概要 平成11年(1999)4月に「神戸医療産業都市構想」を発表して以来、神戸市では、先端医療センター や発生・再生科学総合研究センターといった中核施設などとの連携や、優れた技術を有する地元中小 企業や既進出企業とのビジネスマッチングの可能性などをセールスポイントとして、今後大きな成長 が見込まれる国内外の医療・福祉・健康関連企業の積極的な誘致を行っている。 既にポートアイランド(第1期・第2期)には多くの研究機関や大学、医療関連企業が集積し(平 成24年10月31日現在 221社)、産官学の連携によるバイオメディカル分野のイノベーションに取り組 んでいる。神戸2015ビジョンに掲げた目標(300社)の達成に向けて、引き続き医療関連企業の集積 促進を目指していく。 2)今後の取り組み スーパーコンピュータ「京」(平成24年9月)の本格稼動、神戸低侵襲がん医療センター(平成25 年春)の開設などに伴い、博士号取得者など知的人材のさらなる集積を進め、先端的な研究開発の充 実を図っていく。 平成22年度の神戸医療産業都市による経済波及効果は1,041億円(平成24年6月推計)に上ってお り、平成28年3月末までに300社の企業集積を達成することで、さらなる雇用や経済波及効果の増に つなげていく。そのため、平成23年12月に指定された「関西イノベーション国際戦略総合特区」を活 用しながら、医療関連企業の集積促進を図る。一方で、操業環境の向上や企業間・研究者等のマッチ ングの場づくりといった研究開発環境及び事業化支援サポート体制の充実にも努め、進出企業の定着 と成長促進を図る。 医療関連企業・団体の集積が進む神戸医療産業都市(中心部周辺) 医療関連ビジネスのネットワークを形 成するグラスター交流会(原則月1回 開催) 第8章 企業誘致の推進 89 3.スーパーコンピュータ「京」を活用した企業集積の推進 1)概要 スーパーコンピュータ「京」は、平成24年9月に共用が開始され、ものづくりやライフサイエンス 等あらゆる分野で革新的な研究開発や産業利用が始まっている。 世界最高クラスの計算資源が神戸に集積している優位性を活かし、地元企業が産業競争力をつける ために、企業のスパコン活用を支援する環境づくりに取り組んでいる。 現在、「京」の周辺には、高度計算科学研究支援センター、「京」の利用促進業務を行う「高度情 報科学技術研究機構」、神戸大学統合研究拠点や兵庫県立大学、甲南大学など、産学官のスパコン関 連施設が集積している。また、高度計算科学研究支援センターには、「京」や「FOCUS」スパコン を利用するユーザ企業への技術支援を行う企業が入居している。 2)今後の取り組み ① スパコンの産業利用推進のための環境整備と関連企業の誘致 「京」の共用開始に伴い、「京」の産業利用への応募が多数あるなど、企業のスパコン利用の関 心は高い。また「FOCUS」スパコンの好調な利用状況からみて、安価で利用しやすいサポートが あれば、企業の利用は更に高まると予測される。引き続き地元企業も含めたスパコンの産業利用推 進のための環境整備と関連企業の誘致を図る(参考:FOCUSスパコン利用80社、平成24年11月16 日現在)。 ② スパコンを産業利用できる人材の育成 スパコンの産業利用の拡大には、企業にスパコンを活用できる人材が必要であるため、スパコン 関連機関と連携して、地元製造業団体や医療産業都市進出企業向けの実習・セミナーの開催や、 「関西イノベーション国際戦略総合特区」(平成23年12月指定)における「シミュレーション技術 の人材育成」を活用することにより、人材育成を図っていく。 平成24年9月に共用されたスーパーコンピュータ「京」 産業界の利用が好調なFOCUSスパコン 90 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み 4.外国・外資系企業の誘致 1)概要 外国・外資系企業の進出は、海外の技術・ノウハウと地域の資源を結びつけることにより、新たな 地域経済の発展と雇用機会の増加につながり、また、国際都市神戸としてのブランドイメージの維 持・発展にとっても重要であるため、(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)、兵庫県等の関係機関と協 調しながら、積極的に企業誘致・定着活動に取り組んでいる(市内の外国・外資系企業の本社・本店 数134社(平成24年10月31日現在))。 2)今後の取り組み ① 投資環境の整備 神戸市では、神戸国際経済ゾーン(ポートアイランド第2期、ポートアイランド北西部、神戸 空港島、HAT神戸の商業地域)を定めるとともに、税軽減等の優遇措置を設け、同ゾーンへの外 国・外資系企業の進出を促している。 また、進出の受け皿の一つとして、ポートアイランド第2期に神戸国際ビジネスセンターを整備 しており、外国・外資系企業18社が入居している(平成24年10月31日現在)。 さらに、前記神戸国際経済ゾーンに加えて、三宮〜神戸・ポートアイランド第1期・六甲アイラ ンドの商業地域も対象とした「外国・外資系企業向けオフィス賃料補助制度」を県と協調して実施 しており、今後も外国・外資系企業の更なる集積を図っていく。 ② 関係機関との連携 国の対内投資促進策の実施窓口である独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)、国内外の総 合的な立地相談窓口である「ひょうご・神戸投資サポートセンター」(運営:公益財団法人ひょう ご産業活性化センター)とも連携しながら、東京での企業誘致セミナー開催協力等も含め、誘致活 動を進めていく。 また、神戸商工貿易センタービル内に設置された「ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセン ター」では、コンサルティングサービスの提供やテンポラリーオフィス(最大100日間・賃料な し)の提供を行っており、今後も引き続き支援を行っていく。 東京でジェトロ等と連携して開催する外資系企業誘致セミナー 第8章 企業誘致の推進 91 第9章 神戸医療産業都市 .神戸医療産業都市の推進 1) 概要 ① プロジェクトの目的 · 「神戸医療産業都市」は、ポートアイランドを中心に、高度医療技術の研究・開発拠点を整備 し、産学官の連携により医療関連企業の集積を図り、 1.雇用の確保と神戸経済の活性化 2.神戸市民の医療水準や福祉の向上 3.アジア諸国の医療技術の向上など、国際社会への貢献 を目的とする。 ② プロジェクトの経緯 1995年1月に発生した阪神・淡路大震災により、神戸経済は壊滅的な被害を受けた。この困難な 状況から神戸経済を立て直すため、21世紀の成長産業である医療関連産業の集積を図り、日本随一 のバイオの拠点をつくろうと、当時、神戸市立中央市民病院長の井村裕夫氏を座長に1998年に「神 戸医療産業都市構想懇談会」を設置し懇談会で検討を重ね、1999年3月には、日本では遅れてい た、基礎研究の成果を臨床や産業応用していくトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)に焦 点を当てた基本構想がまとめられ、「神戸医療産業都市構想」がスタートした。 2)進捗状況 プロジェクトの着手から10年を超え、基礎研究の成果を臨床に応用するための橋渡し機能の中核 を担う「先端医療センター(IBRI)」や、情報拠点である「神戸臨床研究情報センター(TR I)」、理化学研究所「発生・再生科学総合研究センター(CDB)」、「分子イメージング科学研 究センター(CMIS)」などの14の中核施設が整備された。これらの施設を核に、200社を超える 医療関連企業が進出している。 92 第3部 伸ばしていくべき神戸経済の強み この、クラスター形成により、平成17年度は約409億円、平成22年度は1,041億円の経済効果が、ま た、税収額は35億円があったものと推計している。 3)関連企業の業績 これまで着実に企業誘致を進めてきた結果、ポートアイランドには現在220社医療関連企業・団体 が集積(平成24年8月末現在)する、わが国最大のバイオメディカルクラスターとして成長を遂げる ことができた。また、雇用についても、平成24年3月末現在で、ポートアイランドの医療関連企業等 での雇用者数は約5,000名であるが、今後も、神戸に雇用の場を創出し、産業の活性化を図るため、 「神戸2015ビジョン」で掲げた2015年度末300社の集積という目標達成に向けてさらなる企業の集積 を進めている。 ※詳細は90ページ「スーパーコンピュータ「京」を活用した企業集積の推進」参照 4)スーパーコンピュータ「京」の共用開始 理化学研究所が国家プロジェクトとしてポートアイランド第2期で整備を進めていたスーパーコン ピュータ「京」が平成24年9月末に共用開始した。「京」は2011年6月と11月に行なわれたスーパー コンピュータ計算性能ランキングで2期連続世界第1位を獲得した。共用後はライフサイエンス、も のづくり、ナノテクノロジー、防災、航空・宇宙、地球環境、原子力、天文・宇宙物理など広域な分 野で利活用される予定で、特にライフサイエンス分野においては、最先端の医療技術の実現や副作用 のない革新的な医薬品の開発などが期待される。 ※·詳細は89ページ「医療関連企業の誘致」参照 5)将来の姿 2007年3月に提言された「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン」の実現に向けた取り 組みとして、臨床機能をより一層強化するため、中央市民病院の周辺に高度専門病院の集積を進める 「メディカルクラスター」の形成と、産学官の連携と市民の参画により、市民の科学的な健康づくり を支援する「健康を楽しむまちづくり」の具体化がある。 2011年7月には中央市民病院が先端医療センターの隣接地に移転した。さらに、2013年には「神戸 低侵襲がん医療センター」、「西記念ポートアイランドリハビリテーション病院」、「チャイルド・ケ モ・ハウス」が開設予定で、2015年には「県立こども病院」の移転が予定されるなど、高度専門医療 機関と優秀な臨床医を集積させ、中央市民病院と連携して市民をはじめとする国内外の患者に対し、 高度医療サービスを提供する「メディカルクラスター」の形成を進める。 さらに、2011年12月には「関西イノベーション国際戦略総合特区」(京都府、大阪府、兵庫県、京 都市、大阪市と共同申請)として、総合特別区域法に基づく国際戦略総合特別区域の指定を受け、税 制上の支援措置や規制の特例措置等の適用による、関西圏全体でのライフサイエンス分野のスーパー クラスター形成に向けた取り組みを進めていく。 第9章 神戸医療産業都市 93