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N巨WS - Hamamatsu
PHOTON IS OUR BUSINESS NEWS RELEASE 加工用 YAG レーザの使いやすさを追求 世界で初めて共振器にガラスブロックを開発した 小型、高安定、高効率な LD 励起 Yb:YAG 超短パルス高強度レーザと 複数の機能光学素子を直接接合により一体化した共振器を開発した 調整不要、小型、低価格なマイクロチップレーザを レーザーEXPO 2010 に出展 2010 年 4 月 19 日 本社:浜松市中区砂山町 325-6 代表取締役社長:晝馬 明(ひるま あきら) 当社は、世界で初めて共振器の中に手のひら大のガラスブロックを用いた小型で高安定、 高効率な LD 励起 Yb:YAG 超短パルス高強度レーザを開発しました。また、独自の MOEMS 技術によって共振器を 1cm に一体化し、調整不要で小型化と低価格を実現した、マイクロ チップレーザも開発しました。国内外の加工装置メーカーや研究施設などに向けて本年 10 月の製品化を予定しています。 なお、本製品は、4 月 21 日(水)から 3 日間、パシフィコ横浜(横浜市)で開催される、社 団法人レーザー学会が主催するレーザ分野では国内で最大規模の技術展示会「レーザー EXPO 2010」に出展します。 <開発製品の概要> 1、LD励起Yb:YAG超短パルス高強度レーザ 本開発品は、世界で初めて共振器の中に手のひら大のガラスブロックを用いて、レーザ の小型化と安定化を実現した再生増幅器と、MOEMS技術で作製した回折効率が最高で95% と高効率な透過型回折格子を用いたパルス圧縮器で構成した、超短パルス(1.5ps~10ps) で高強度(100MW~15MW)なLD励起Yb:YAGレーザです。1.5ピコ秒(1.5兆分の1)と超 短パルス幅で、1億W(100MW)と高強度なレーザ光を1秒間に2万回(20kHz)の繰返しで 照射するため、熱影響の少ない綺麗な加工を高速で実現します。 ガラスブロックの開発により、同程度の性能をもつLD励起Yb:YAG超短パルスレーザに比 べ、ヘッド容積が約2分の1以下の約30,000cm3と小型化を実現するとともに、ミラー一体化 により安定性も同時に向上させました。また、全プログラム制御により操作を簡便化し、 用途に応じて繰り返し周波数やパルス幅の変更が可能です。 本レーザの仕組みは、40MHz・5nJ・200fsのシードパルスを、チャープパルス増幅法によ り、透過型回折格子でパルスを時間的に引き延ばし、これを再生増幅器に取り込んでパル スエネルギーを数万倍に増幅して、再度回折格子でパルス幅を数ピコ秒に圧縮して、最終 的に繰返し20kHzでパルスエネルギー150µJ、最大100MWの高ピーク出力を得ています。 開発したガラスブロックは、高精度な研磨技術と薄膜作製技術によってタテ5cm・ヨコ 5cm・厚さ1cmにまとめました。光は、ガラス内部を全反射しながら進み、ポッケルスセル の動作に必要な光路長を確保します。ガラスブロックをはじめ、主要部品は、内製化して いるため、最適な設計を可能にしています。 これにより、超短パルスレーザが、据え置き型から持ち運びが可能になり、穴あけや周 期構造の形成、薄膜除去などの各種精密・微細加工などの生産現場で簡易に使うことが可 能になります。特に、液晶パネルなどの抵抗膜方式のタッチパネルに使われている ITO(酸 化インジウムスズ) の薄膜除去など、選択的な材料加工に最適です。また、表面を傷つけず、 ガラス内部にレーザ光を集光して内部だけを加工することやガラス溶接など、新たな加工 用途の開発にも貢献します。 ガラスブロック レーザ再生増幅器とパルス圧縮器の構成図 *単位:µ=マイクロ(百万分の1)、n=ナノ(10億分の1)、p=ピコ(1兆分の1)、f=フェムト(1000 兆分の1)、M=メガ(百万)、s=秒、J=ジュール(エネルギー)、Hz=ヘルツ(繰り返し数) *共振器:平行に置いた2 枚のミラーの間に光を反射して往復させ、光を共振させて蓄積するシステム。 光の振幅の山と谷が反射光と干渉して安定な定在波、つまり光が共振している状態をつくり蓄積される。 共振器内にレーザ媒質を置き、光が反射を繰り返す過程で増幅しレーザ光を得る。 *LD(半導体レーザ) :半導体中の電子とホールが再結合する際に発光する現象を利用したレーザ。発振 波長は半導体の種類によって異なり、アレイ化することによりkW 程度の出力を得ることがで きる。 2 *YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ:母材であるYAG結晶に希土類活性イオン Nd3+,Ho3+,Yb3+などをドープしたレーザ媒質を用いたレーザ。一般的には波長 1064 nmのレーザ 光を発するNd:YAGレーザを指す。(Nd:ネオジウム、Yb:イッテルビウム) *MOEMS(マイクロ・オプト・エレクトロ・メカニカル・システム) :微細加工で半導体材料や光学素子を 3次元的に加工し、組み立てる技術。 *チャープパルス増幅法:超短パルスを時間的に引き延ばして増幅したのち、再度パルス幅を圧縮して、 高ピーク出力を得る方法。レーザ増幅媒質中での損傷を防ぎ、エネルギー蓄積密度の高い固体媒 質の使用が可能になる。 *ポッケルスセル:通常、チャープパルス増幅法において光ビームの偏光方向を制御してスイッチング する素子。10ナノ秒程度で動作して1パルスを取り出すため、共振器の光路長を3m程度確保する 必要がある。この光路長を確保するには、複数のミラーを用いてレーザを構成するため、大型で 高価、光学系の調整が困難などの課題がある。 *回折格子(グレーティング):マイクロ(百万分の 1)メートルサイズ(光の波長オーダー)の周期で 平行に並んだ直線状の凹凸形状。主に分光素子として利用される。 <主な予定仕様> レーザヘッド 最大出力 最大パルスエネルギー 繰り返し周波数(可変域) 中心波長 パルス幅(可変域) 出力安定性 偏光 空間モード ビーム広がり角 外形寸法 (W×H×D) 質量 ビーム高 3W@20kHz 150µJ 1~20kHz 1030.5±1nm 1.5~10ps <±1%rms24H 直線(垂直) TEM00(M2<1.3) <1mrad 330mm×180 mm×460mm 約 35kg 170mm 2、マイクロチップレーザ YAGレーザの共振器は、レーザ媒質とパルス化のためのQスイッチを共振器ミラーがは さむ形で数10cmの筐体の中に配置されています。そのため、温度や振動により光路がず れることがあり、ミラーの位置調整など取り扱いが面倒でした。 本開発品は、従来50cm以上もあった共振器を1cmに一体化し、集光レンズ、フィルタな どを組み合わせた超小型レーザヘッドにより、調整不要なうえに小型化と低価格を実現 したマイクロチップレーザです。レーザ媒質(Nd:YAG)とQスイッチ結晶(Cr :YAG)、 冷却用結晶(YAG)、共振器ミラーを、MOEMS技術による結晶の精密研磨、接合、薄膜 作製技術によって長さ1cmに一体化しています。用途に応じて、高ピーク出力型(1000µJ、 50~200 Hz)と高繰り返し型(3µJ、10000Hz)の2品種を開発しました。 3 1cm 新開発の直接接合一体化共振器 ●高ピークパワー型 開発した高ピークパワー型は、波長1064nm、パルスエネルギー1000µJ、パルス幅2ns、周 波数50~200 Hz、容積3410cm3、質量3kgです。液晶パネルなどのリペア工程やレーザ誘 起発光分光(LIBS)分析装置などに最適です。 液晶パネルなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)のショートやはみ出しの欠陥個 所の加工には、パルス幅2nsと短時間でMWレベルの高いパワー密度でレーザ照射し加熱 するため、欠陥個所以外は熱が伝わることなく、加工サイズも約1µmと微細な修正加工 が可能です。 レーザ誘起発光分光(LIBS)分析装置は、鉱物探索、環境検査、薬物検査、土壌測定な どに用いられ、屋外で多元素・多成分を同時分析されます。 ●高繰り返し型 開発した高繰り返し型は、波長1064nm、パルスエネルギー3µJ、パルス幅2ns、周波数 10000Hz、容積217cm3、質量0.4kgです。バイオ分野のラマン分光器や理化学実験、顕微 鏡搭載などに最適です。 1064nm励起のラマン散乱は、蛍光による妨害が著しく減少するため、生体組織の観察に 有効です。 *スペクトル:光(電磁波)を回折格子などの分光器で分光した波長ごとの強度分布の帯。原子や分 子は、特定の波長の電磁波を強く放射したり吸収したりする性質がある。 *励起:原子や分子が光を吸収した高いエネルギーの状態のこと。ガラスやYAG結晶などの固体レー ザを発振させるエネルギーの元になるのが励起用光源。 *Q スイッチ:レーザをパルス化するためのスイッチ法のひとつでここでは可飽和吸収体の Q スイッ チを使っている。 可飽和吸収体とは、光が弱い間は吸収体として働き、強くなるとそれ以 上は吸収できなくなり透明になり光が出力される。 *レーザ媒質:レーザは、レーザ共振器とレーザ媒質から構成される。レーザ媒質は、外部から注入 されたエネルギーを蓄えて、そこを通過する光にそのエネルギーを与えレーザ光を発生させ ることができる。具体的には、気体、固体、液体、半導体が利用される。 *ラマン分光法:物質に単波長のレーザ光を照射し、散乱する光のスペクトルを分光器で得て物質の 同定などを行う。散乱光と入射光の振動数の差から分子の構造や状態が分かる 4 <主な予定仕様> レーザヘッド 高ピークパワー型 高繰り返し型 波長 パルスエネルギー パルス幅 周波数 平均出力 質量 外形寸法 (W×H×D) レーザクラス 1064nm 1000µJ 3µJ 2ns 10000Hz 30mW 0.4kg 38mm×38 mm×150mm 3B 50~200 Hz 50~200mW 3kg 110mm×155mm×200mm 4 <開発の背景> 当社には、長年培ったレンズ、ミラー、回折格子などの光学設計技術、光学フィルタ、 誘電体多層膜、反射防止膜などの光学薄膜作製技術、高精度調芯、光学部品高精度自動組 み立て、高精度研磨・接合、超精密立体ナノ加工(ナノは 10 億分の 1)などの MOEMS・光 ナノテク技術があります。 当社は、中央研究所を中心に構成した全社横断的なプロジェクトとして、レンズなどの 光学系をMOEMS技術などによってポータブル機器に集積するインテグラルオプティクス 関連の技術と設備を集約し、光学設計技術、光学薄膜技術、MOEMS・光ナノテク技術を融 合した新製品として、今回発表の2製品とテラヘルツ波利用の小型分析装置の開発を進めて きました。これらの製品は、相互に共通する技術として、インテグラルオプティクス技術 でくくられています。 超短パルス高強度レーザ 5 マイクロチップレーザ マイクロチップレーザ 高繰返し型 ハイピークパワー型 この件に関するお問い合わせ先 ■報道関係の方 浜松ホトニクス株式会社 広報グループ 海野賢二 〒430-8587 浜松市中区砂山町 325-6 日本生命浜松駅前ビル TEL053-452-2141 FAX053-456-7888 E-mail:[email protected] 時間外は、携帯電話 090-4080-3501 へお願いします ■一般の方 浜松ホトニクス株式会社 機器営業部 伊藤寛治 〒434-8601 浜松市浜北区平口 5000 TTEL053-584-0220 FAX053-586-8467 E-mail:[email protected] 6