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事業別成長戦略

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事業別成長戦略
Business Strategy
事業別成長戦略
新中期経営計画「More Than Shipping 2018」における各事業の成長戦略をご説明します。
事業の当年度の業績については、P.88 をご覧ください。
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
61
Focus 前中期経営計画で大きく成長した海洋事業
安定収益を生み出す事業基盤
日本郵船グループが展開する海洋事業
現在、当社グループは、三井物産㈱、川崎汽船㈱、日本海洋掘削
シャトルタンカー(北海)
㈱と共同でブラジル国営石油会社 Petrobras 社向けドリルシッ
2011 年 10 月 Ente Nazionale Idrocarburi 社(イタリ
ア)と2 隻の定期用船契約締結(10 年)
2011 年 12 月 ExxonMobil Exploration and Production Norway 社(ノルウェー)の子会社
と定期用船契約締結(10 年)
プ 1 隻、またオランダの海洋開発大手 SBM Offshore 社や伊藤
忠商事㈱などとともに Petrobras 社向け FPSO(浮体式海洋石
油・ガス生産貯蔵積出設備)1 隻に出資しており、さらに、海底
油田上にある FPSO から陸上貯蓄基地までピストン輸送する
シャトルタンカーの運航を手掛ける世界シェア 2 位の Knutsen
NYK Offshore Tankers(KNOT)社に対し 50% の出資を行って
います。
ドリルシップ Etesco Takatsugu J は、Petrobras 社が用船
するドリルシップの中で最も高い稼働率を誇っています。
FPSO 事 業 で は、2013 年 6 月から原 油 生 産 を 開 始した
ドリルシップ(ブラジル沖)
2009 年 6 月 Etesco Drilling Services 社(米国)に
共同出資
2011 年 12 月 Etesco Takatsugu J 竣工
2012 年 4 月 Petrobras 社(ブラジル)向け用船サー
ビス開始(最長 20 年)
Business Strategy
FPSO Cidade de Paraty に加え、新たに SBM Offshore 社
や三菱商事㈱などと Petrobras 社向け FPSO を2 隻受注し、そ
れらは 2015 年末から順次用船契約が開始、原油生産に従事
する予定です。
シャトルタンカー事業では、Ente Nazionale Idrocarburi 社
(イタリア)向けに2隻、Repsol YPF 社(スペイン)向け、Exxon-
Mobil Exploration and Production Norway 社(ノルウェー)の
子会社向け、Repsol Sinopec Brasil 社(ブラジル)向けに各 1
隻ずつ長期用船契約を締結しています。さらに、2013 年 12 月
には、2016 年に竣工予定である FSO(浮体式海洋石油・ガス
シャトルタンカー(ブラジル沖)
2011 年 8 月 Repsol YPF 社(スペイン)と定期用船
契約締結(5 年)
2013 年 1 月 Repsol Sinopec Brasil 社(ブラジル)
と定期用船契約締結(10 年)
貯蔵積出設備)の建造および用船の契約を受注しました。
海洋事業における当社グループ バリューチェーン
上流
下流
探査・探鉱
開発・掘削
生産設備の
建造・設置
ドリルシップ
62
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
生産・貯蔵
FSO 事業
NYK Report 2014
FPSO 事業
域内輸送、
パイプライン
精製・液化
(LNG)
・貯蔵
輸送
ガス会社・電力会
社・石油化学会社
など
シャトルタンカー事業
資金調達の多様化
KNOT(ノルウェー)
2010 年 12 月 旧 Knutsen Offshore Tankers 社へ 50% 出資、社名を
Knutsen NYK Offshore Tankers(KNOT)社に
2013 年 4 月 関連会社 KNOT Offshore Partners 社を設立、ニュー
ヨーク証券取引所へ新規上場
海底油田開発の活発化を受けて、FPSO は2020年までに新たに
約 150 隻が竣工する見通しです。それに伴うシャトルタンカー
の新規需要は約 40 ∼ 50 隻と見込まれます。この需要を取り込
むには、計画的な新造船の発注が必要ですが、1隻当たりの船価
FSO(北海)
が高額であることから、安定的な資金調達が不可欠となります。
2013 年 12 月 Total E&P Norge 社と FSO の
建造および定期用船契約締結
(最長 12 年)
このため、KNOT は出資により分社化した KNOT Offshore
Partners(KNOP)社を米国ニューヨーク証券取引所へ新規上
場させ、市場から今後の成長に必要な資金である約 160 億円
協力:JAMSTEC
を調達しました。
KNOP は 5 年以上の長期用船契約に投入されるシャトル
タンカーの保有・運航を担い、既存の 4 隻に加え、2014 年中に
©JAMSTEC
地球深部探査船「ちきゅう」
(日本)
1997 年より 当社グループの㈱グロー
バルオーシャンディベロッ
プメントが運航を受託
2000 年代 初めてのプロジェクト立ち
上げから関与
竣工予定の 5 隻についても、KNOT から譲り受ける予定です。
一方、KNOT は今後、中短期輸送、FSO 事業、既存船を改造し
たケミカル圧入船事業を担うことになります。
海洋事業の収益力
海洋事業は、ドリルシップや FPSO の稼働が順調で、シャトル
タンカー事業の収支改善もあり、2013 年度は黒字化を達成。
FPSO(ブラジル沖)
2012 年 4 月 Petrobras 社と用船・操業契約締結(最長 20 年)
2013 年 6 月 FPSO Cidade de Paraty がブラジル沖で原油生産
開始
2013 年 7 月 Petrobras 社向け FPSO2 隻を新たに共同受注
将来的には 2020 年度に経常利益 100 億円の計上を目指しま
すが、先述の FPSO2 隻の新規契約も含め、新規参入を目指す
FSRU(浮体式 LNG 貯蔵再ガス化設備)事業や、シャトルタン
カーの新規契約の獲得により目標を達成する考えです。
オフショアビジネスの知見を蓄積
FPSO の仕組み
生産設備
当社から船長、
機
今回 KNOTが新たに契約したFSO案件では、
係留設備
関長、技師をそれぞれ 1 名ずつ派遣し、プラントエンジニアの
設計・調達・建設(EPC)段階から関与することとしています。
貯蔵タンク
また、新たに契約した FPSO2隻についても同様に技術者を派
係留索
係留索
パイプライン
遣する予定です。今後も人材育成の観点から、技術者派遣を
将来的には 50 名規模まで増やすことを考えています。
海運会社が持つノウハウ
洋上施設であるFPSOやFSOでは、
も大いに活かされます。また、海底から原油を み上げ、精製、
貯蔵し、積み出す、
という一連の作業において、全体の仕組みを
知ることで、より深くプロジェクトに関わることができます。技
術者の派遣によって得たさまざまな知見やノウハウにより、将
来のビジネスに広がりがでることを期待しています。
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
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Business Strategy
海洋地球研究船「みらい」
(日本)
一般貨物輸送事業
既存の事業体の枠に留まらず、
さまざまなソースにキャパシティを確保し、
さ
まざまなソースから得たノウハウをグループのシナジーとして昇華させなが
ら、
ますます多様化していく一般貨物輸送のニーズに対して、
当社グループな
らではの多彩なメニューを用意します。
取締役・常務経営委員
一般貨物輸送本部長
丸山 英聡
管掌:定期船事業/ターミナル関連事業/物流事業
定期船事業
前中期経営計画(2011 年度∼ 2013 年度)の振り返り
Business Strategy
当社は世界全体で約 400 万個のコンテナを取り扱っており、
ライトアセット化とは、単なる船隊の合理化が目的ではあり
1 コンテナ当たりの運賃が 100ドル下がると、収支は単純計算
ません。貨物の取り扱いという点で、船社としての直接集貨に
で 400 億円ほど悪化します。実際には、2011 年から 2013 年に
加え、グループ内の物流会社の海上フォワーディングによる
かけておよそ200ドル以上下落したので、収入単価減効果とい
集貨を組み合わせ、輸送ボリュームを拡大させてきました。必
う意味では 800 億円以上の減収効果があったことになります。
ずしも自社保有スペースを持たなくとも輸送量をしっかりと
そうした逆風下、2011 年度は定期船事業で 370 億円の経常
伸ばしていくことがライトアセット化の狙いです。その独自な
損失を計上することとなりましたが、
ライトアセット化とコスト
需給バランスは、結果として、輸送量を供給スペースで割った
構造改革を推し進め、2012 年度からは赤字幅が大きく縮小。
消席率に反映されます。2011 年度から 2013 年度までの数字
2013 年度には経常損失を7 億円に留め、着実に収支改善を果
を見てみると、長期固定船隊は84隻から74隻へ10隻減りまし
たしてきました。
たが、供給スペースと輸送量は伸長しており、消席率も改善傾
向にあります。
n 船隊のライトアセット化
船腹の需給ギャップが大きく、市況の影響を受けやすい定期
コンテナ船船隊規模
船事業では、このボラティリティをいかに抑えるかが大きな
(年度)
2011
2012
2013
2014
(予想)
課題でした。そこで取り組んできたのが、船隊のライトアセッ
運航隻数(隻)
99
92
99*
95
ト化です。
うち、長期固定船隊(隻)
84
76
74*
70
アジア→北米
国際海運業界は長年にわたり、自社保有、用船を問わず、長
期保有の割合が大きかったため、市況の変化に即時の対応を
輸送量(千 TEU)
650
624
663
696
スペース(千 TEU)
802
759
787
826
消席率(%)
81%
82%
84%
84%
とることが難しく、需要が減少すると損失が拡大するという
アジア→欧州
構造的な課題がありました。しかし、昨今かなり柔軟な用船
輸送量(千 TEU)
500
508
512
559
スペース(千 TEU)
580
557
560
595
マーケットも出現し、船腹の支配形態も旧来主力であった自
社保有のみならず、用船においても長短期の組み合わせと
いったポートフォリオが考えられるような環境になってきたよ
うに見えます。
64
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
消席率(%)
*「More Than Shipping 2018」策定時
86%
91%
91%
94%
n コスト削減
この IBIS という固定費削減プロジェクトに対して、貨物量に
ライトアセット化を進める一方で、固定費と変動費の両面でコ
比例する変動費については、コンテナ単位で収支の最適化を
スト削減に注力してきました。定期船事業のみで毎年 200 億
図る「EAGLE プロジェクト」に取り組んできました。
円以上のコスト削減を実現しています。
固定費において占める割合が大きい燃料費の削減に向け、
イールドマネジメント「EAGLE プロジェクト」
減速航海を通じて燃料消費量を低減させる活動を展開してき
予想される空コンテナの転送コストも踏まえたうえで、コンテ
ました。それが、最適経済運航プロジェクト「IBIS プロジェク
ナ 1 本 1 本のラウンド(往復)の採算性を追求する取り組みで
ト」です。
す。これを実現するためには、発着地間で現場の担当者同士
の緊密な連携が不可欠です。
最適経済運航プロジェクト「IBIS プロジェクト」
そのため、輸出営業、輸入営業、コスト管理などの縦割り組
IBIS の仕組みについては、P.42 をご覧ください。
織にありがちな自部門の目標達成だけを考えるようなサイロ
を取り払い、意識改革を進めてきました。コンテナの動きを細
費量を低く抑えることを重視したサービスの作り込みから始
かく管理するITインフラを整備したのはもちろん、事務局をは
まりました。お客さまからご理解いただくことが前提ですが、
じめ、直接・間接にプロジェクトを牽引した関係者の努力もあ
サービス内容が決まれば、運航速度も決まるため、燃料消費
り、着実に数値を伴った成果が表れています。
Business Strategy
2012年より取り組んできたこのプロジェクトでは、まず燃料消
量は計画的に管理することができます。次に取り組んだのが、
日常業務における燃料費節減活動です。コンテナ船にブロー
ドバンドや運航モニタリングシステムを導入し、気象・海象を
はじめ運航に関する一連のデータを本船側と陸上間でリア
ルタイムに共有。状況に応じて最適なルートや速度を選択す
ることで、ムダな燃料を消費しない省エネ運航を実現してい
ます。
EAGLE プロジェクト
1. EAGLE Cargo Plan System
稼働中
貨物を積んだコンテナの輸送実績と本船への積み込
み予定から、世界各地の将来のコンテナ需要・返却予
測を策定
コンテナ需要・返却予測
定航基幹システム「OSCAR」
空コンテナ輸送予定
稼働中
2. EAGLE Inventory Plan System
空コンテナの輸送実績と世界各地の空コンテナ在庫
情報をシステムから取得し、オペレーション現場から
は最新の空コンテナ輸送予定を取得。これにより、将
来の在庫推移状況を把握
WIR(Weekly Inventory Report)
今後
導入
3. EAGLE Optimization
1 と 2 で得られる将来の在庫推移状況を基に、最適な
空コンテナ輸送計画を策定
最適な空コンテナ輸送計画
WIR Viewer
コンテナの動きを地図上に表示
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
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一般貨物輸送事業
新中期経営計画における事業方針
Business Strategy
n 事業方針
を組み合わせることで、市況に対する柔軟性と事業の安定性
向こう5年間の運賃市況は横ばいか、若干下がると想定してい
を確保する方針を再確認しました。
ます。コンテナ貨物の荷動きはアジアを中心に堅調に推移す
3C5M の 5M とは 500 万 TEU のコンテナ輸送のことです。こ
ると見ていますが、北米や欧州に向かう東西航路では、今後、
の5M を前提とした場合、大きな意味でのコンテナ貨物輸送全
大型新造船が次々に投入される予定で、供給圧力は依然とし
3C、
つまりNVOCC
体
(Container Common Carrier) において、
て高いと言わざるを得ません。さらに、その影響で、押し出さ
(Non-Vessel-Operating Common Carrier)
、FVOCC(Flexi-
れる格好となる船舶がアジア域内に配船される可能性もあ
ble-Vessel-Operating Common Carrier)、SVOCC(Stable-
り、堅調な需要を大幅な供給が上回ってしまうことを懸念して
Vessel-Operating Common Carrier)という供給スペースの調
います。当社もコスト競争力を高めるべく、2016 年に 1 万
達手段をポートフォリオとして考えようということです。
4,000 個型の新造コンテナ船を欧州航路に投入しますが、一
新 中 計で は、目標とする積 高 を NVOCC で 100 万 TEU、
方で、これまで通り、ライトアセット化を継続します。そのため
FVOCC で100万 TEU、SVOCC で300万 TEU としました。市況
には往復航で片寄りなく貨物を取り込むことが不可欠であ
に対する柔軟性と、事業の安定性を分けて考えると、市況が急
り、北米で大きな成果を出した「EAGLE プロジェクト」を、次
速に悪化しても対応しやすいNVOCCやFVOCCで200万TEU、
は欧州やアジア域内で展開していきたいと考えています。
安定的な SVOCC で 300 万 TEU です。比率は 4:6となり、この
バランスにより、取り巻く環境が変わった時に素早く動け、よ
n 船隊ポートフォリオ
り安定した収益が期待できます。現在、SVOCC での積高は約
新中期経営計画では、
「3C5M」という名の下、コア船隊、短期
350万 TEU と、
目標を超えており、
NVOCC と FVOCC にできる
用船と海上フォワーディングという異なるスペース供給形態
限り早く振り向けていきたいと考えています。
3C5M
日本郵船グループのコンテナ輸送全体としての積高目標
5,000,000 TEU
ライトアセット
NVOCC(Non-Vessel-Operating Common Carrier)
1,000,000 TEU
積高目標:
日本発着以外の輸送需要も含め、今後も対応を強化する領域
FVOCC(Flexible-Vessel-Operating Common Carrier)
1,000,000 TEU
積高目標:
陳腐化リスクの高い、コモディティ化したスペックのアセットは短期で保有
コアアセット
SVOCC(Stable-Vessel-Operating Common Carrier)
3,000,000 TEU
積高目標:
いかなる状況においても必要と見込まれるアセットのみを長期保有
■ 3C5M について
3 つの輸送モードを通じて、5 百万 TEU のコンテナ貨物の輸送を目指すことを表しています。
・3C:NVOCC、FVOCC、SVOCC
・5M:5 Million TEU
66
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
定期船事業 FAQ
Q 2014 年度の業績見通しを教えてください。
ましたが、これで満足せず、後退だけは絶対にしないよう、
A 定期船事業とターミナル関連事業を合計して
決して、手を緩めないことが大事だと社内で言い続けてい
黒字化を目指します
ます。
異なるハードルでの 3 つのシナリオを描いています。一つ目
Q 長期的な課題を教えてください。
を遥かに上回るような最悪な環境でも死守すべきだという
A 一般消費財の地産地消の影響を注視しています。
デッドラインですが、現時点では、そのような状況は想定し
世界の荷動きは今後もアジアを中心に伸びていくのは間
ていません。二つ目は定期船とターミナルでの黒字化で、
違いありませんが、地産地消化に伴い、将来的に海上輸送
現時点では 25 億円の経常利益を見込んでいます。三つ目は
距離が徐々に短くなっていく傾向があります。例えば、欧州
定期船だけで黒字化というシナリオですが、これは経済性
に近いインドやアラブ諸国、北米に近いメキシコやジャマ
に優れた 1 万 4,000 個型コンテナ船が投入される 2016 年度
イカからの輸出が大きく増えてくると、状況は一変します。
以降に見込むのが現実的な見方であり、本年度においては
消費地までのニアソース化が進展すれば、これまでは既定
二つ目のシナリオの実現を目指していく考えです。
路線のように思えた船舶の大型化も、その効果を再検討さ
れる時期が来るかもしれません。新中計期間中にこうした
Q さらなるコスト削減の余地はありますか。
動きが急速に進むとは見ていませんが、楽観視はせず、慎
A あると思いますが、大事なのは継続であり、
重に動向を見極めていきたいと考えています。
後退しないことです。
減速航海はすでに日常業務の一つになっています。マニュ
アルも整い、運航費を適正な水準に維持できる体制も整い
ターミナル関連事業
新中期経営計画における事業方針
今後も定期船事業とのシナジー効果を追求していきます。投
また、昨今、船型の大型化と配船の効率化の観点からハブ
資先としてベトナムやインドネシアなどアジア地域の港に注
&スポーク型の運航が広まりつつあります。船型の大型化や
目していますが、これまで同様、ターミナルを使用するユー
ハブ & スポークのような配船形態の変化によって定期船事業
ザーとしての視点から、貨物需要とターミナルの価値を見極
の採算は大きく変わりますが、ターミナル事業は、大型船の直
めながら、慎重に判断するという姿勢に変わりはありません。
行便でも小型船のフィーダーでも、取扱量さえ確保できれば
ターミナル事業は、取扱数量に応じて、安定的にキャッシュ・
安定的に運営できる事業です。業績変動リスクのある定期船
フローを得ることができます。定期船事業で目指す積高 500
事業をより安定させる重要なビジネスモデルとして、着実に
万TEUは、
その多くを当社のターミナルで取り扱うことになる
取扱数量を伸ばしていく考えです。
ため、組み合わせて考えれば、ボラティリティを抑制させるこ
ハブ&スポーク
とにもつながります。そうした狙いもあって、2013 年度から
中継拠点となる港に荷物を集結させてから販売国へと輸送する体制。従来の生産国
と販売国間の単線的な輸送に比べ、効率良く輸送することができる
ターミナル関連事業を定期船事業に含めて業績を開示するこ
ととしました。
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
67
Business Strategy
は定期船、ターミナル、物流を合わせて黒字化。これは予想
一般貨物輸送事業
物流事業
前中期経営計画(2011 年度∼ 2013 年度)の振り返り
n 業界でのプレゼンス向上
ダーとしての存在感は確実に高まっています。スペースを仕入
世界の航空貨物が低迷し、当社グループの航空フォワー
れる購買力もついてきたことで、今まで取引のなかった船会
ディング事業における取扱量は目標の 50 万トンに対し、19 万
社やお客さまとも、新たに関係を築くことができました。さら
トン下回る 31 万トンに留まりました。一方、海上フォワー
に、コントラクト・ロジスティクスも引き合いが増えており、サ
ディング事業も、貨物取扱量は目標の 100 万 TEU に対して 57
プライチェーン全体で物流を手掛けるような案件を受注する
万 TEU となりましたが、競合他社が苦戦する中、この 3 年間で
など、ビジネスの裾野は広がっています。
約 30% 伸ばすことができました。航空、海上ともにフォワー
新中期経営計画における事業方針
Business Strategy
n プレゼンスのさらなる強化
こに、
これまで培った経験と、
それを支える「技術力」を発揮す
当社グループの物流事業の中核会社である郵船ロジスティク
るチャンスがあると見ています。
ス㈱では、2016 年度を最終年度とする 3 カ年の中期経営計画
また、消費者のニーズはめまぐるしく変化するため、モノの
に取り組んでいます。海上貨物 85 万 TEU、航空貨物 37 万トン、
動きもそれに合わせて柔軟に対応していく必要があります。
営業収益 5,000 億円、営業利益 120 億円を目指す計画です。海
最終消費者のニーズをいち早く察知し、ニーズに合った高品
上貨物については、利益率を重視しつつ、100万 TEU の早期達
質かつユニークなサービスを提供できるかが勝負の分かれ目
成を目指します。
となります。その意味では、いろいろな分野、地域に数多くの
アンテナを保有し、感度よく情報を収集していくことが不可欠
n 技術力で差別化を
です。コントラクト・ロジスティクスのみならず、消費財の物流
新中期経営計画の副題にもある「技術力」をコントラクト・ロ
に携わる分野では、
こういった最終消費者の動向をリアルタイ
ジスティクスで活かし、さらなる差別化を図ります。例えば、中
ムに把握する必要があり、そこで得られる生きた情報は当社
国などの複数の製品メーカーの工場、または拠点からさまざ
グループのシナジーを発揮する上で、極めて重要です。
まな商品を集荷し、欧米などの小売会社の倉庫へ輸送し、販売
これらの情報を足掛かりに海上輸送の案件につなげるな
状況に応じて仕分けし、販売店舗や拠点に効率よく配送する
ど、船会社出身ならではのユニークな総合物流会社として、独
案件では、集荷と仕分け、店舗向け配送のそれぞれのステージ
自の発展を目指したいと考えています。
で各プロセスを高度にシステム化することが求められます。こ
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NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
航空運送事業
8 機の新型機 B747-8F が、2014 年度に予定通り います。その優れた積載
能力を最大限発揮し、導入メリットを最大限に活かしたビジネスを展開する
方針です。
取締役・経営委員
貨物航空事業グループ長
大鹿 仁史
前中期経営計画(2011 年度∼ 2013 年度)の振り返り
n ビジネスモデルの変革
リーマン・ショック後、急速に縮小した航空貨物市場は一向に
定期便以外の収入源も確保すべく、チャーター便の増加や他の
回復の兆しを見せず、特に、日本発着の航空貨物の荷動きは
航空会社向けの新しいサービス作りにも取り組んできました。
想定以上に低迷しました。足元ではようやく底打ち感が出て
一般的にチャーター便は要請を受けた後、サービスを開始
きましたが、依然として過去最低の水準で推移しています。
NCA では最短4日で対応
するまで2 ∼ 3週間程を要しますが、
日本出しの貨物の割合は、2010 年度と比べ、北米向けで 5
したこともありました。こうした実績が評価され、今では同様
割から3割に、欧州向けでは8割から5割と減少しました。日本
の案件があった場合、お客さまから必ず声がかかるようにな
を主要拠点とする日本貨物航空㈱(NCA)は、この3 年間苦戦
りました。この他にも単なる機材の貸し出しではなく運航ま
を強いられましたが、アジア出しの貨物の割合が増えており、
でを引き受けるサービスを国内航空会社向けに提供するエア
アジアを中心とした成長市場の貨物を着実に取り込むことが
ラインチャーターを本邦で初めて手がけました。
できました。これは、日本市場で圧倒的な強みを持つ NCA に
また、既存ネットワークの拡充にも取り組み、新たに北米−
アジアでの営業力がついてきたことを意味しており、今後もさ
ドイツ間を結ぶ定期便を開設しました。これまで、日本から北
らなる成長を期待しています。
米向けは帰路の貨物が少なく、北米へ向かった機材は積載ス
また、NCA では、ここ数年間、徹底的なコスト削減にも取り
ペースに空きを抱えて戻り、一方、欧州から日本向けの荷量は
組んできました。元々、
部門間の垣根が低く情報を共有しやす
多いにもかかわらず、全量積みきれずに機材を戻すなど、何か
い社内風土があり、社内にはコスト改善の意識が既に根付い
と非効率な機材繰りを強いられていました。今回就航させた
ていました。世界でもトップクラスのコスト競争力を有してい
北米−ドイツ便では、日本から北米へ貨物を輸送した後、その
ると自負しています。
まま北米から欧州へ向かわせ、欧州から日本へ貨物を運ぶと
いう、効率的な機材繰りが可能となりました。
新中期経営計画における事業方針
n 新型機を中心とした成長戦略
かしたビジネスを展開する方針です。
順次導入を進めてきた8 機の新型機 B747-8F が、2014 年度に
また、チャーター便を増やすために、主要空港以外の空港で
予定通り います。 も適切な貨物のハンドリングが行えるように、その能力やノウ
これまでの新型機と旧型機が併存している状況では、どう
ハウをキャリアみずからとして蓄積していきたいと思います。
しても積載能力の劣る旧型機を基準に営業しなくてはなりま
プロフェッショナルなサービスを磨き続け、お客さまに評価し
せんでした。しかし、すべて新型機に置き換わることで、その
ていただくことが事業収益の源泉だと考えています。
優れた積載能力を最大限発揮し、導入メリットを最大限に活
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
69
Business Strategy
n 事業環境と業績
ドライバルク輸送事業
2016 年以降に不透明感が増してくる市況動向に備え、収入サイドの契約期
間と船隊サイドのミスマッチを早期に解消させ、市況の変動に左右されにく
いビジネスモデルの確立を目指します。
取締役・常務経営委員
ドライバルク輸送本部長
左光 真啓
前中期経営計画(2011 年度∼ 2013 年度)の振り返り
Business Strategy
n 黒字化に目途
n NYK バルク・プロジェクト貨物輸送
これまでは、中国の粗鋼生産が年 10 億トンまで伸びると想定
旧日之出郵船(日之出)と旧 NYK グローバルバルク(NGB)が
し、ケープサイズを中心に船隊整備を進めました。ところが、
統合し、2013 年 10 月に NYK バルク・プロジェクト貨物輸送㈱
その粗鋼生産は 2013 年も 8 億トン弱に留まり、輸送需要も思
が発足しました。旧日之出は鋼材やプラント貨物、旧 NGB は
うように伸びず、多くの余剰船腹を抱えてしまいました。
バルク貨物の輸送に強い会社ですが、それぞれバラスト航海
前中計最大の課題は、営業強化によりこの需給ギャップを
が多いという課題がありました。統合により、旧 NGB のバル
少しでも埋めることでした。特に注力したのが長期契約の積
カーに旧日之出の貨物を組み合わせ、バルカーの稼働率向上
み上げです。会社全体では、2013年度に800億円と計画してい
に取り組んでいます。またこの動きを加速させるために、新造
た安定収益が 1,100 億円まで積み上げることができましたが、
船の建造にあたってはバルカーのタンクトップ強度を高め、鋼
ドライバルク部門もその積み上げに大きく寄与しました。
材やプラント貨物を積み取るのにより適した設備を整え、一
同時に船隊の合理化にも着手し、適正な船隊規模を目指し
層の収支向上を図っていきます。
て、高コスト船の早期返船や売却処分を実施してきました。運
航面でも、減速航海を船隊の 7 割を占める用船まで広げたほ
か、契約ポートフォリオの見直しや配船の工夫により、バラス
バラスト航海
貨物を積んでいない状態で航海すること
タンクトップ
貨物倉(カーゴホールド)の床面を構成している部分
ト航海を削減するなど、営業部門と運航部門が一体となって
取り組んだ結果、2014 年度の黒字化に目途がつきました。
新中期経営計画の事業方針
n 市況動向
る見込みです。さらに、環境への配慮から、鉄含有率が少なく品
ケープサイズは2010年から2012年にわたり、年間200隻以上も
質の劣る中国産鉄鉱石の利用が制限されるうえ、資源会社の増
の新造船が竣工しました。しかし、2013 年に入ると竣工数は約
産や輸入鉄鉱石のコスト競争力の向上もあり、国産の鉄鉱石か
100 隻と半減し、数年ぶりに輸送需要の伸びが船腹供給の伸び
ら輸入鉄鉱石への代替が加速しそうです。こうしたことから、中
を上回りました。2014 年、2015 年も同程度の新造船の竣工が
国向け輸送需要は最大 10% 近く伸びる可能性もあります。
予測されており、船腹供給の伸びは 4%程度となる見通しです。
一方でこれまでに竣工した新造船が多いため、いまだ相応
需要面では、引き続き中国の動向を注視しています。中国で
の供給過多を引きずっていますが、需給は 2014 年後半には健
は老朽化した住宅の更新や鉄道網の拡充などインフラ整備を
全な水準に収まると見ています。
中心とした構造改革を進める方針を掲げており、6 ∼ 7%程度の
ただし、2016 年以降は注意が必要です。投機筋による発注
経済成長が期待され、その場合、粗鋼生産は 3 ∼ 5% 程度伸び
残が積み上がっているためです。2013 年には株式市場から
70
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
100億ドルもの資金が海運業へ流れ込み、その多くがドライバ
n 船隊整備と投資方針
ルカーに投資されました。市況が高騰し、過剰投資が進んだ
船隊規模はいまだ過剰であり、規模拡大目的の投資は考えて
2007 年と同水準です。2016 年以降の市況動向に不透明感が
いません。一方、競争力向上のため、既存船から省エネ性能に
強まる中、今のうちから備えておくことが、新中計最大の課題
優れた新造船への更新投資は積極的に行います。新中計では
となります。
当部門で許容されている投資枠が限られるため、実施の際に
は、船主やファンドなどの力を借りて、進めていく考えです。
ドライバルク荷動き量・船腹量伸び率推移
ケープサイズでは、先行発注はしませんが、もし新造船を伴
(%)
20
う長期契約が出てくれば発注を検討します。隻数は、現在の
15
126 隻から 2018 年度末までに 100 隻へ絞る計画ですが、想定
10
される契約数に見合った規模が100 隻ということであり、契約
が増えれば、船隊規模もそれに合わせて対応します。
5
0
–5
n 技術力でマーケット+αの収益を目指す
08
09
10
11
12
13
(予想)
14
(予想)
契約と船隊をマッチさせることは、市況が悪化した時のリスク
マネジメントの意味合いから大事だと考えます。一方で、利益を
n 市況耐性のあるビジネスモデル確立
航海などの最適経済運航やバラスト航海を減らす効率配船は
これまで、コストが高く、保有・用船期間が長い固定船隊に見
今後も継続しますが、新中計の副題にある通り、
「技術力」を活
合った貨物の長期契約が十分につかないことが、赤字をもた
かしてマーケット+αの収益を目指します。省エネ機器の搭載な
らす最大の原因でした。これは、収入サイドの契約期間と船隊
どハード面のみならず、ソフト面でデータを分析する力を磨き、
サイドのミスマッチにより生じていました。新中計では、この
短中期的な市況予測の精度を上げ、収益の最大化を図ります。
創出するには、可能な限りの施策を取ることが重要です。減速
不均衡を解消させ、市況の変動に左右されにくいビジネスモ
デルの確立を目指します。
収入が長期で固定されている契約に対しては、長期でコス
ドライバルク輸送事業 FAQ
トが固定している船隊を充当し、短期のスポット契約に対して
Q ビジネスチャンスをどう捉えていますか。
は、短期用船を充当します。用船期間が短ければ、市況が低迷
A 石炭に注目しています。
しても早期に返船できるため、収益への影響を最小限に留め
日本では、原子力発電に変わる電源として、新規石炭火
ることができます。現状では、
長期固定船隊の比率が依然高い
力プロジェクトが多数計画されており、石炭の輸送需要
ため、当面は調整局面となりますが、2015 年度中には高コス
は間違いなく増えそうです。また、電力発電源の 75% を
ト船の返船に目途がつくため、2016年以降、バランスが取れて
石炭が占めるインドでは、経済発展に合わせ、2014年度
くると見ています。
も 10% 以上の輸送需要の拡大が見込まれており、イン
ドの石炭需要はますます伸びると見ています。
市況に左右されにくいビジネスモデルへ
現状
長期安定契約
長期固定船隊
市況・トレードパターンの
変化に対して硬直的
修正後
長期安定契約
市況変動の影響を受けにくい
長期固定船隊
収入・資産の価値
中期・短期契約
ギャップあり。
負債サイドの
ロングポジション
利益
損失
中期・短期契約
中期・短期用船
中期・短期用船
利益
費用・負債の価値
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
71
Business Strategy
ドライバルク荷動き伸び率 ドライバルカー船腹量伸び率
出典:Clarkson Dry Bulk Trade Outlook(March, 2013)
エネルギー輸送事業
タンカーは船舶の保有形態を工夫しつつ、将来のビジネスモデルを模索して
いきます。LNG 船は量の追求より品質を重視します。海洋事業はプロジェク
トへの人材派遣を通じ、まずはこれまで知り得なかった知見をしっかりと蓄
積します。
代表取締役・専務経営委員
不定期専用船戦略会議議長
エネルギー輸送本部長
長澤 仁志
前中期経営計画(2011 年度∼ 2013 年度)の振り返り
Business Strategy
n タンカー部門
トーン LNG プロジェクトへの出資と、2017 年後半に生産開始
この 3 年間は、原油輸送事業にとって、極めて厳しい環境でし
予定の米国キャメロンLNGプロジェクトへの参画意思の表明
た。特に日本は、少子高齢化や人口減、都市部での車離れと
です。単に権益を取得するにとどまらず、生産されるLNG輸送
いった構造的な問題によって石油需要は減少傾向にあり、日
を請け負うなど、本業とのシナジー効果が見込めます。また、
本向け輸送が主力である当部門にとっては、我慢の時期とな
プロジェクトに当社の人材を派遣する機会を得ることで、こ
りました。
れまで知り得なかった知見を蓄積でき、新たな商機につなが
そうした中、フリー船を減らし、需要に合わせて船隊を調整
るものと期待しています。
する一方、前中計の方針に基づき、
アジア向け長期契約の積み
上げに注力しました。その結果、タイ石油精製企業の Thai Oil
n 厳しさの増す品質管理要求
社向けに計 3 隻の VLCC(Very Large Crude Oil Carrier)を長
LNG 輸送需要が高まる一方、船員の乗船履歴が細かくチェッ
期用船として投入することができました。東南アジア諸国で拡
クされるなど、
お客さまからの品質管理要求も年々厳しくなっ
大している石油需要を捉えた成功事例であったと思います。
てきています。相応の経験と高度な操船技術を持つ船員の育
成には時間がかかりますが、当社はフィリピンの商船大学を
n LNG 輸送部門
はじめ、シンガポールのトレーニングセンター、船舶管理会
石油から天然ガスへの燃料転換が進む中、シェール革命も加
社、2隻の CADET(船舶職員候補生)訓練船など、自前で人材
わり、LNG 輸送の需要は大きく伸長しました。北米でシェー
育成の仕組みを持つことが大きな強みとなっています。これ
ルガス・オイルに関する新規プロジェクトが次々と立ち上がっ
は原油輸送も同じですが、安全運航の観点から、自社で育て
たことで、さまざまな商談が寄せられ、今後 5 年間に輸送を開
た信頼できる優秀な船員を配乗し、
「日本郵船」の責任の下、
始する長期契約を積み上げることができました。
運航しており、
こうした取り組みはお客さまからも高い評価を
また、海運会社として初めて LNG の上中流権益に進出しま
いただいています。
した。それは 2016 年末に生産開始予定の豪州ウィートス
新中期経営計画における事業方針
n タンカー部門
発注残が積み上がっている中、規模拡大目的の投資は控え
原油輸送の需要の伸びは残念ながら当面期待できません。各
ざるを得ません。また、安定収益が見込めない限り、更新投資
社、新造船の発注を抑えているものの、需給が均衡するまでに
もできないので、長期契約が付かなければ新造船の発注は難
は時間を要すると見ています。また、かかる市況低迷下におい
しいと考えています。これらの点をお客さまにもご理解いた
ても投機筋による新造船の発注があり、大変気がかりです。
だきながら、
船舶の保有形態の検討およびThai Oil社へ展開し
72
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
ている長期用船の事例などを踏まえつつ、将来のビジネスモ
デルを模索していきたいと思います。
n 海洋事業とのシナジー追求
海洋事業については、P.62 の[Focus]をご覧ください。
未開拓の天然ガス田は世界に多数存在しており、洋上で LNG
n LNG 輸送部門
を精製、
積出する傾向が今後進んだ場合には、
LNG 版の FPSO
現在2億4,000万トンある世界の LNG 需要は、2025年には4億
(FLNG)やFSRUの需要が増大すると見ています。現在、
FLNG
5,000 万トンと約 2 倍の規模になると予測されています。LNG
は豪州で12件、東南アジアで5件、その他も併せて計29件が計
船の隻数も、370 隻から 2025 年には 650 隻に増大する見通し
画中で、うち 2 つのプロジェクトでは実際に FLNG が建造段階
です。当社では、LNG 船を現在の 67 隻から2018 年度末に 100
にあります。これに対し、当社が長年培ってきた LNG 輸送に関
隻+αとする計画を掲げています。これは確実に達成できる
する技術・知見・ノウハウに、現在、海洋事業で蓄積しつつあ
目標であると認識しています。徒らに数を求めることはせず、
るオフショアビジネスに関するそれを組み合わせれば、確度の
サービス品質を維持しながら積み上げいくことが重要です。
高い事業展開が可能になります。FPSO や FSO で EPC へ人材
上中流権益への参画については、契約の安定性、信頼性を
派遣するのも、こうした狙いがあってのことです。
重視し、投資だけでなく輸送など本業とのシナジー効果が見
海洋事業はまだ「張り子の虎」
LNG 船事業を「虎」とすれば、
込めるようであれば、今後も前向きに検討します。
です。その LNG 船事業も、事業を開始した1980年ごろは、現在
n 技術力を商機に
ハウを積むことで実力がつき、
「虎」となりました。海洋事業も
油・ガス田開発プロジェクトでは、新たな港湾設備の建設を必
「虎」を目指すことで、
将来の選択肢が広がってくると思います。
要とするケースがあります。この場合、海事コンサルティング
M&A にしても、海洋事業をさらに発展させるために必要な企
を専門とするグループ会社の㈱日本海洋科学の協力を得て、
業・ビジネスが見えるようになるはずです。
安全や効率の面で優れた港湾設備の提案を行っています。
タンカーや LNG 船に数多く従事した知見に基づくこうした提
案は、お客さまからも高く評価いただいています。
「技術力」による差別化を志向する新中期経営計画からも、
こうした動きは今後ますます増えてくると思います。
エネルギー輸送事業 FAQ
Q さらなる差別化に向けた取り組みを
教えてください。
A セーフティ・ミッションステートメントを
導入しました。
エネルギー輸送部門では全船を対象に安全面のミッ
ションステートメントを作成しています。かつて石油メ
ジャーで品質管理に長年従事し、現在
は当社で活躍する人材からのアイデア
が基になっています。グループ内にお
ける安全意識のさらなる浸透と、お客
さまへの輸送品質サービスのアピール
という2 つの効果を期待しています。
SAFETY FIRST!
Strong values and ethics support our mission to be the partner of
choice for the transportation of our customer s liquid products
Aligned and focussed operations ensure added value to the
transportation chain
Focus on safe and environmentally friendly operations ensures we
are at the forefront of the value chain
Empowered employees always strive for excellence in everything
we do
Through our people we deliver goods and services that meet our
customers expectations
Years of experience plus integrity, innovation, and intensity
provides our customers with world class performance
NYK―Your Partner of Choice
First choice In Reliable and Safe Transportation of liquid products
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
73
Business Strategy
の海洋事業と同様に「張り子の虎」でした。それが、知見・ノウ
自動車輸送事業
戦略的に拠点を増やし、お客さまのニーズに対応できる体制を整えてきまし
た。今後さらに拠点を充実・最適化していくことで、点と点を結ぶだけではな
く、線と線、さらには包括的に「面」といった次元で、お客さまの期待に応え
ていきたいと考えています。
代表取締役・専務経営委員
自動車輸送本部長
力石 晃一
前中期経営計画(2011 年度∼ 2013 年度)の振り返り
Business Strategy
n 船隊ポートフォリオの適正化
一方で三国間輸送に目を向けると、グローバルには生産・
この3年間、
中国やインドなど一部の自動車市場は拡大したも
販売台数が増加しているため、これに伴い海上の荷動きは増
のの、リーマン・ショックの影響を受け、世界的に自動車生産・
えています。当社の2008年から2013年にかけての三国間輸送
販売台数は低迷し、
さらに東日本大震災、
タイの大洪水といっ
実績はおよそ 1.5 倍に拡大し、当社全体の輸送実績も、326 万
た影響と円高進行や燃料油価格の高騰が追い打ちをかける
台から 2013 年は 360 万台まで回復させることができました。
など、逆風の連続でした。
全体に占める三国間輸送の割合は、大きく増えており、
自動車
こうした中、喫緊の課題として取り組んだのが、船隊ポート
輸送の環境変化にしっかり対応できたと自負しています。
フォリオの適正化です。リーマン・ショック前に発注していた
高品質の大型新造船の竣工に合わせ、老齢船を中心に 22 隻
を処分しました。ただ、処分となると、船隊規模を柔軟に調整
する余地がなくなるため、当初はできる限り係船で対応しよ
世界の自動車荷動きの現状と見通し
(万台)
(%)
5,000
50.0
4,000
40.0
3,000
30.0
2,000
20.0
1,000
10.0
うと考えていましたが、環境の改善が見通せなかったため、思
い切って処分することを決めました。2008 年 12 月に 125 隻
あった船隊を2011年 4月時点では116隻まで絞り込み、さらに
新造船の発注を控え、適正な規模を維持してきました。なお、
新造船の発注については更新投資を含め、現在は再開してお
り、2014 年に4 隻、2015 年に2 隻が竣工する予定です。いずれ
も次世代の競争力ある 7,000 台積み自動車船であり、今後の
標準船型と位置づけています。
n 自動車産業の構造変化にしっかり対応
円高や東日本大震災の影響により、国内自動車メーカーの海
0
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18
(予想)
(予想)
(予想)
(予想)
(予想)
■ 地域内(左軸) ■ 地域間(左軸)
地域内 %(右軸) 地域間 %(右軸) 合計 %(右軸)
* % について:荷動き比率。生産台数に占める荷動き台数の割合
出典:日本郵船調査グループ推計
日本郵船グループ 自動車輸送台数
(万台)
400
外生産化が進みました。さらに地産地消の動きも加速してお
り、世界の自動車生産台数は 2008 年から 2013 年にかけて
6,700 万台から 8,200 万台へと 1,500 万台増えながらも、日本
300
200
からの輸出台数は、520 万台から減少し、現在は 400 万台前半
で推移し、当社の日本出しの輸送実績も同様の傾向を りま
した。
74
100
0
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
05
06
07
08
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10
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13
14(年度)
(予想)
0
n 多様な収益基盤の構築
フスタン、フィリピン、インド、ロシア、タイ、メキシコと着実に
全世界の自動車生産台数は 2017 年には約 1 億台となる見通
拡大し、2013 年には 35 カ所までになりました。
しです。一方、海上荷動きは 3,500 万台になると見ています。
生産台数は年率 5 ∼ 6% で順調に伸びていきますが、海上荷
n 新しい技術を実用化
動きは、年率2 ∼ 3% 程度と生産台数ほど伸びないと予測して
ターミナルで船への積載のため保管されている自動車の位置
います。これは自動車メーカーの地産地消戦略が背景にある
を、GPS と独自のソフトウエアを使って正確かつ瞬時に特定
と思います。
し、スマートフォンなどのモバイル機器でセキュリティを確保
海上輸送が増えていくのは間違いありませんが、地産地消
した上で効率良く確認できる技術について、以前より研究を積
が進むと、陸上輸送や域内内航輸送がメインとなり、海上輸送
み重ねてきましたが、この度、複数の自動車メーカーで採用さ
距離は短くなります。従来の海上輸送で対応するだけではな
れることになりました。もともと港での効率的な船積みのため
く、こうした状況に対して、当社は以前より自動車の海上輸送
に使用することを想定し開発しましたが、あるお客さまでは、
プラスαのサービスを立ち上げ、収益基盤の裾野を拡大すべ
在庫管理に有効であるとして、本技術を国内の物流拠点や数
く取り組んできました。その一つが、建機や重機の輸送ニーズ
百カ所の販売所に導入を検討すると伺っています。今後も用
の積極的な取り込みです。2009年に新設した建機ROROチー
途が広がっていくことを期待しています。
RORO:Roll-on Roll-off Ship
大しており今後もさらに伸ばしていきたいと考えています。
フェリーのように、ランプウェイと車両を収納する車両甲板を持ち、自走で荷役ができ
る構造の船。クレーンを使わず直接荷役を行うことができる
もう一つが、自動車物流事業の拡大です。2008 年に19カ所
だった全世界での拠点数は、マレーシアやシンガポール、カザ
新中期経営計画における事業方針
n 事業方針
自動車物流についても、新たにメキシコなどに拠点を設け、
自動車船については、船齢の構成を考えると、毎年 4 ∼ 5 隻は
現在の 35 カ所から2016 年には 42 カ所まで拠点数を拡大する
更新していく必要があります。船型を6,500台積みから7,000台
予定です。
積み船型へのシフトを進め、競争力をさらに高めていきます。
今、世界の自動車メーカーは世界中にネットワークを張り
船隊規模は、今後の海上荷動きの伸びに合わせ、2018 年度末
巡らせており、物流ニーズも多様化・複雑化しています。これ
には 125 隻となる見込みです。
までのように、A 地点から B 地点へ輸送するだけの単純なもの
建機・重機輸送については、日本出し、海外出しともに増え
ではなく、A から B、B から C、C から D、E、F といった具合に、
ており、今後もその輸送ニーズに積極的に応えていきます。
複数の拠点にまたがって効率よく輸送することが求められる
2016 年までに現在の 50% 強まで伸ばす計画にしており、その
時代です。これに対し、当社は、戦略的に拠点を増やし、お客
達成に向け、自動車船グループや自動車物流グループでは営
さまのニーズに対応できる体制を整えてきました。今後さら
業活動強化のための合同ミーティングを定例開催し、さらな
に拠点を充実・最適化していくことで、点と点を結ぶだけでは
るシナジーの創出を追求しています。
なく、線と線、さらには包括的に「面」といった次元で、お客さ
まの期待に応えていきたいと考えています。
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
75
Business Strategy
ムが中心となり、2013年までの4年間で積高をおよそ3倍に拡
客船事業
黒字化の定着が今後の課題です。今後もクルーズ商品の開発にあたり、お客
さまのニーズをしっかりと捉えて、乗船率のさらなる向上、ひいては収益性
の向上につなげていきたいと考えています。
取締役・常務経営委員
客船本部長
左光 真啓
前中期経営計画(2011 年度∼ 2013 年度)の振り返り
Business Strategy
n 黒字化の実現
約数が伸びるという相乗効果が生まれた結果、定価で販売し
米国クルーズ市場の事業環境は悪くなく、他社が健全な利益
ていた時より乗船率が高くなったことはもちろん、顧客単価も
を上げているにもかかわらず、Crystal Cruises 社の業績が低
大きく改善させることができ、2013 年度は黒字化しました。
迷していたことから、事業の黒字化に向けて抜本的な対策が
日本を市場とする郵船クルーズ㈱については、アベノミクス
Crystal Cruises社が提
必要でした。そこで販売戦略を見直し、
に伴う株価回復が追い風となって 2012 年度には予約状況が
供する全クルーズ商品について売り出し価格を下げ、その後、
好転し黒字化を果たしました。2013 年度はさらにそのペース
予約状況に応じて価格を見直すこととし、予約が好調な商品
を上回る予約をいただき増収増益となりました。懸念してい
は2カ月ごとに価格を上げ、予約の鈍い商品については売り出
た消費増税の影響は現在までほとんどなく、今も予約は好調
し価格を据え置きました。人気商品の価格が上がる一方で、
に推移しています。
最初は伸び悩んでいた商品に値ごろ感が出てきて、徐々に予
新中期経営計画における事業方針
n 事業環境
n 事業方針
2013 年に外国籍の客船が日本市場に参入しましたが、そのク
黒字化の定着が今後の課題です。
ルーズ商品は幅広い裾野にあたる「マス層」で、最上級の「ラ
日本ではこの 1 年、日本外航客船協会を通じて当局に対し、
グジュアリー層」に位置する私たちとはカテゴリーが異なって
日本籍客船への規制緩和を働きかけてきた結果、これまで毎
いたため、顧客流出はありませんでした。その一方で、外国籍
年実施が義務付けられていたドライドックでの船舶検査が 5
客船の参入によりクルーズがメディアに取り上げられる機会
年に 2 回となり、また外国人船員の職域制限も一部撤廃され
が増え、クルーズに興味を持つ方が増えたと感じています。米
ました。それでもまだ外国籍船にはない規制が残っています
国のクルーズ市場が全人口の 3% 程度と言われている一方で、
ので、我々としては日本籍客船が外国籍船と同じ土俵で健全
日本のクルーズ人口はまだ0.2% に過ぎません。米国市場が成
な競争が行われるよう、引き続き当局に規制緩和をお願いし
熟した理由は、さまざまな客船が参入し、市場を形成してきた
ていきたいと考えています。
ためであり、日本のクルーズ人口もまた外国籍客船の参入に
Crystal Cruises 社については、おかげさまで今も乗船予約、
伴い広がりを見せていくものと思います。そして顧客層の裾
単価ともに好調が続いています。今後もクルーズ商品の開発
野の広がりはやがてラグジュアリー客船の需要拡大にもつな
にあたり、お客さまのニーズをしっかりと捉えて、乗船率のさ
がっていくと期待しています。
らなる向上、ひいては収益性の向上につなげていきたいと考
えています。
76
NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA
NYK Report 2014
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