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経済学部学生のためのマールブルク大学海外研修について

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経済学部学生のためのマールブルク大学海外研修について
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東洋大学人間科学総合研究所紀要 第 2 号(2004)
58−64
経済学部学生のためのマールブルク大学海外研修について
斎藤 佑史*
この報告は、一昨年の秋に実施された経済学部学生のためのマールブルク大学海外
研修についての報告である。この研修の目的は、異文化経験としてヨーロッパの大都
市を訪問し、またマールブルク大学で研修を行うことである。
キーワード:研修、異文化体験
一昨年の 11 月、経済学部独自のプログラムとしてマールブルク大学海外研修が実施された。この
ような海外研修は、経済学部としては、すでにフランスのストラスブール大学で始められていたが、
一昨年はパイロットプログラムとして同時期にドイツでも実施されたのである。経済学部では、こ
れらの海外研修の他に、本来なら今日のシンポジウムのテーマの外国語教育にはもっとふさわしい
と思われる、一昨年の夏から秋にかけて実施されたイギリスのウォーリック大学での語学研修があ
るが、今日はこの語学研修のことも念頭に置きながら、引率として参加したマールブルク大学海外
研修のことを少し報告したい。
そこでまずこの経済学部学生のため海外研修の目的であるが、簡単に言えば、ヨーロッパの経
済・文化・歴史などを実際に現地に出かけ、生きた体験として学ぶ、異文化体験研修である。百聞
は一見に如かず、ヨーロッパのことをただ知識として頭のなかで知っていることと、それを体験的
に知っていることとの間には、雲泥の差がある。そこでこの経済学部の海外研修では、体験的にヨ
ーロッパを知ってもらうために、大きな柱を二つを用意した。一つ目の柱は、ヨーロッパの代表的
な大都市を訪ね、自分の足で大都市を歩き、学生たちに体験的に大都市を知ってもらうことである。
二つ目の柱は、ヨーロッパの協定校の大学を訪ね、協定校の教授の講義を聴き、また協定校の学生
との交流をすることである。その他、経済学部学生対象の研修ということで、海外にある企業訪問
を用意した。
*人間科学総合研究所研究員、東洋大学経済学部
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斎藤:経済学部学生のためのマールブルク大学海外研修ついて
そこでまず昨年秋に実施されたマールブルク大学海外研修の期間、規模、費用などを以下、具体
的に記してみたい。
・期間: 2002 年 11 月 9日(土)∼ 11月19日(月)(8泊10日)
・研修地:パリ、ストラスブール、マールブルク
・参加者:斎藤ゼミ(4 名)・上村ゼミ(12名)、計16名
・引率教員: 2 名
・費用:約 19 万円
次に 2000 年度パイロットプログラムとして実施された内容についても時間を追って記してみた
い。
11 月 9 日(土)
12:45
成田空港発
17:20
パリ着 バスでホテルへ移動
(パリ泊)
11 月 10 日(日)
パリ・グループ研修
(パリ泊)
11 月 11 日(月)
休戦記念日 パリ・グループ研修
(パリ泊)
11 月 12 日(火) 8:00
ホテルロビー出発
11:00
ド・ゴール空港発
12:15
ストラスブール空港着
バスでド・ゴール空港へ
午後各自自由行動
11 月13 日(水) 9:00
バスでホテルへ移動
(ストラスブール泊)
ホテルロビー出発(ストラスブール組と別れる)
バスでマールブルクへ(途中、ドライブインで昼食)
13:30
マールブルクのホテル着
午後各自自由行動
11 月14 日(木)
(マールブルク泊)
ライン川一日研修旅行(チャーターバス、ドイツ人案内人ハッセルバッ
ハ氏)マールブルク→コブレンツ→ローレライ(昼食)→マルクスブル
ク城→カウプのアヒム・レムラーのワイン醸造所見学とワイン試飲会→
マインツ→マールブルク
11 月15 日(金) 10:00
16:00
(マールブルク泊)
企業訪問(キャノン・ギーセン)
シュトルツ教授によるドイツ経済の講義とマールブルク大学卒業生ハッ
ハフェルト氏によるドイツの職業教育システムについての報告
18:00
夜、マールブルク大学主催の歓迎レセプション
二部構成で、第一部は学長室前の会議室で、経済学部長キルク教
授によるマールブルク大学経済学部の組織、カリキュラムなどの概要説
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東洋大学人間科学総合研究所紀要 第 2 号
明 第二部は、場所を会議室隣の小ホールに移してレセプション 国際
事務局長のコム氏の歓迎の挨拶、乾杯の後の立食と歓談の後、東洋大学
経済学部を代表して道重一郎教授が英語で感謝の挨拶、続いて引率教員
の斎藤佑史教授が独語で挨拶、最後に参加学生を代表して国際経済学科
3年綿貫直美さんが独語で挨拶 20:00 レセプション終了後、非公式である
がマールブルク大学日本学専攻の学生主催の友好の集いに東洋大学の学
生は参加
11 月 16 日(土) 10:00
15:00
(マールブルク泊)
マールブルク市内見学(案内 児玉弘美氏)
日本センター内の教室でマールブルク大学学生との討論会 マー
ルブルク大学から 12 名の学生が参加 二部構成で、第一部は「政治」「経
済」「教育」「環境」「学生生活」のテーマ別にグループに分かれて町の喫
茶店に出て討論し、第二部は一時間半後、教室に戻り、それぞれグルー
プごとに前に出て、何が話し合われたか報告
19:00
ツィンマーマン教授夫妻を囲んでお別れ夕食会 ツィンマーマン教授に
よるテーブルスピーチ 場所はレストランAltes Brauhaus
(マールブルク泊)
11 月 17日(日) 10:00
ホテル前よりマールブルク大学のミニバスでフランクフルト空港
へ向けて出発
11:30
フランクフルト空港到着
その後荷物を空港内の一時荷物預かり所に預け、希望者は大学の
ミニバスでフランクフルト中央駅まで送ってもらい、フランクフルト市
内自由行動
20:40
パリに向けてフランクフルト空港を出発
22:00
ド・ゴール空港着
23:25
成田空港に向けてド・ゴール空港出発
11 月 18 日(月) 19:05
成田空港着、解散
*
以上が、今回のマールブルク大学海外研修の期間や実施内容その他であるが、先に述べた大きな
二つの柱に沿って、この海外研修をさらに振り返り、またそれに補足を加えたい。まず一つ目の柱、
ヨーロッパの代表的な大都市で学生に異文化体験をさせるという企画は、今回はパイロットプログ
ラムでもあったので、ストラスブール大学海外研修組と行動を共にしてパリで最初の 3 日間合同で
実施した。パリでは、それぞれの研修目的に従って 参加学生はグループ別に自主的に行動し、単独
行動は危険なので禁止させた。このパリの 3 日間は、事前準備の行き届いたグループとそうでない
グループとでは、その異文化体験 にもだいぶ差が出たようである。パリの食文化、パリの美術、パ
斎藤:経済学部学生のためのマールブルク大学海外研修ついて
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リの建築、パリのカフェ文化などいくつか参考として事前に提示したが、この研修目的に関しては、
参加学生の自主性に任せた。その代わり、パリで何を研修したかは、研修後報告を文書で作成し提
出を義務付けた。
二つ目の柱、ヨーロッパの協定校の大学での研修は、すでに報告した実施内容からもわかるよう
に、マールブルク大学側の協力により、計画通り、実にスムーズに実施することができた。特に参
加学生にとって印象深かったのは、マールブルク大学学生との交流プログラムであったようで、11
月 16 日午後の、テーマ別に少人数に分かれてのマールブルク大学学生との討論会は、色々な意味で
よい刺激になったようである。この交流プログラムに協力してくれたマールブルク大学の学生は、
マールブルク大学日本学科所属の学生たちであったので、程度の差はあれ、日本語によるコミュニ
ケーションが可能であったため、日本人学生の語学教育の立場からすればこれを素直に喜んでいい
のか疑問だが、ともかくも言葉による障壁は、思っていたほど深刻ではなかったようである。問題
は、グループ別ディスカッシュン後の全体報告会で明らかになったことであるが、それぞれのテー
マについて話し合われた内容の方である。それぞれのテーマについて日独の比較が話題になったの
は当然のことであるが、印象的だったのは、日本のことについてもしばしばドイツ人学生の方がよ
く知っていて、日独の学生の年齢の差もあるが、問題意識がドイツ人学生の方が平均的にはるかに
高かったことであった。これは逆に言えば、日本人の学生の方がドイツ人の学生から学ぶ点がはる
かに多かったということである。参加学生の今回の研修後に提出された報告を読むと、そのことに
気付かされた学生が何人もいた。日本人なのに日本のことについて何も知らないことを外国に出で
初めて実感させられたと。教育という点から言えば、これこそ学生にとって自分の状態を認識させ
られる貴重な体験であり、このような機会をできるだけ多く学生に提供することが、また海外研修
を企画する側の重要な責務であろう。
このマールブルク大学学生との討論会のような交流プログラムを実施してみて、参加学生たちが
日本のことを知らないことを自覚させられたことは貴重な点であったが、反省点として、参加学生
の多くが、日本のこともそうだが、訪問国ドイツのことについてもほとんど知識がないということ
も明らかになって、事前研修の充実の必要性を企画者として実感させられたのも事実である。今回
はパイロットプログラムということもあり、短期間にフランス・ドイツと回ったために、参加学生
の全てがドイツに関心があるというわけではかならずしもなかった。ただそういう事情があったに
せよ、ドイツの政治、経済、文化、歴史などについての的確な情報を事前学習でもっと多く提供し
ておけば、マールブルク大学学生との討論会をもっと実りあるものにすることができたであろうこ
とは疑いないことである。これは今後の課題である。
次に、特に経済学部の学生を意識した企画、企業訪問についても少し報告しておきたい。海外の
企業がどんなものかを体験として知ることも、多かれ少なかれ、将来企業で働くことになる経済学
部の学生にとっては、重要なことである。そこで今回の海外研修では、海外に進出している日系企
業ということで、キャノン・ギーセンの工場見学を学生のために用意し、実施した。キャノン・ギ
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東洋大学人間科学総合研究所紀要 第 2 号
ーセンは、ヨーロッパにおけるキャノン・コピー機の生産拠点で、社員約 450 名、社長は日本人、
日本人社員は十数名で、社員のほとんどはド イツ人である。社長の日本語による挨拶と会社説明、
その後、同じ会社説明をドイツ人の幹部の人が英語でやってくれるなど、学生の英語の勉強を会社
側が配慮してくれたことはありがたいことであった。ドイツで少人数でいかに無駄をなくして生産
効率をあげ、現在企業実績を残しているかの社長の会社説明には、現場ならではの説得力があり、
学生たちに強いインパクトを与えたようだ。その後、場所を変えてコーヒー、軽食の接待を受けた
後、グループに分かれて一時間ほど工場見学をし、高価なボールペンのお土産までいただいて、至
れり尽くせりの歓待ぶりに恐縮するほどであった。この企業訪問は語学教育とは直接的には関係は
なかったが、日系企業と言えども会社の会議は、ドイツ語で行なわれているなど外国では特に語学
が重要であることが、学生にも再認識された点はよかったと思われる。
*
以上で今回のマールブルク大学海外研修についての報告を終えたいが、最後にこのような海外研
修を今日のシンポジウムのメインテーマである、外国語教育という点から少し考えてみたい。外国
語教育という点では、最初に示唆したように海外での語学研修の方がはるかに効果的であることは
確かである。これは疑いえない事実であるが、ただ語学研修はその性格上、海外研修よりも長期滞
在が必要であり、そうでなければその効果が望めないという特徴があり、従って費用の点でも学生
にとって負担が大きい。その点、海外研修は 10 日前後と滞在期間が短く、かかる費用の負担も軽い
ので学生にとっては参加しやすいという利点がある。従って海外旅行気分で気軽に応募する学生も
見受けられ、また海外は初めてという学生も多かった。
海外研修は、確かに語学教育ということを銘打っているわけではないが、しかし、参加した学生
の報告書を読むと、いかに外国語の習得が必要かを例外なく実感的に書き綴っていた。特に最初の
パリ 3 日間は、グループ別行動とは言え、学生たちをパリに連れて行っ ていきなり外に放り出した
わけであるから、外国語の心得が多少ともなけれは、パニック状態になるのも止むを得ない。この
ような荒療治も特に学生の外国語教育には時に必要ではないのかというのが私見である。その意味
では、外国語の必要性を身をもって実感させられたということで、この海外研修は、外国語教育に
大いに役立ったということができよう。外国語教育の動機づけという意味では、このような海外研
修は、大学の一、二年生の方が望ましいと思われる。ただ、問題は交流相手のマールブルク大学学
生が年齢と実力から言っても日本の大学院生に相当すると言ってもよいから、対等な討論というこ
とがますます困難になるという点である。
海外研修については、これまでここで述べてきたこととは反対に、日本でもう少し事前学習を徹
底させ、語学力を向上させた上で、大学の三、四年対象に実施すべきであるという意見があるかも
しれない。確かにマールブルク大学教授による英語の講義、マールブルク大学学生との討論会の実
情をみると、大学三、四年対象の実施の方が成果があがるかもしれないという側面がある。だが海
外研修には、多様な要素があり、一律にこうだと決められない面があるので、今後色々な角度から
斎藤:経済学部学生のためのマールブルク大学海外研修ついて
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検討をしていく必要があるように思われる。
今まで述べてきたように海外研修は、経済学部の独自のプログラムとして計画され、実施された
が、このような海外研修は、各学部の特徴を生かした各学部の独自のプログラムとして今後各学部
で検討されるべきであろう。一方また外国語教育ということを考えると、国際交流センターで実施
されているような語学研修を充実させて、全学的な立場で外国語教育というものを検討していく必
要性もあろう。語学研修にせよ、海外研修にせよ、ともかく国際化という時代の波を受けて、外国
語教育の必要性は、今後ますます高まることになっていくと思われるので、日本から外へ出て、実
際に外国で学ぶ機会をより多く学生に提供していくことが、今後の東洋大学の外国語教育にとって
必要なことではないかと思われる。
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The Bulletin of the Institute of Human Sciences, Toyo University, No.2
Über die Ausbildungsreise nach Marburg für die Studenten
der Wirtschaftswissenschaften
SAITO Yushi *
Im vorletzten November wurde die Ausbildungsreise als Pilotprogramm nach
Deutschland, Marburg für die Studenten der Wirtschaftswissenschaften ausgeführt. Es gab
zwei wichtige Gründe für die Ausbildungareise 1. Die Besichtigung einer Großstadt in Europa.
2. Die Ausbildung an der Universität Marburg. Das erste Projekt hatte unter Mitwirkung von
der Universität Marburg Erfolg. Der nachfolgenge Bericht handelt über dieses Pilotprojekt.
Key words :Ausbildung, interkulturelles Erlebnis
*A professor in the Faculty of Economics, and a member of the Institute of Human Sciences at Toyo University
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