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ペランの塔
昭 和 二七弔 一=月 一 日 羅濟 論 叢 第 三種 郵優 物 認 可 第101巻 哀 第5号 静 歌 佐 波 宣平 教 授 遺 影 お よび 原稿 1 ミュー ル型 紡 績工 場 … … …… … … … … … … … 堀 英 一 … …… … … ・ …罪 農 麩 垂 原価 管 理 思 考 と して の 変 動 予 算 概 念 … … … … 野 村 秀 和 3 2 江 部 門 間 ・ 連 関 構造 … …一 ・ 一 3 4 4 戸 0 低 開発 国 開 発 計 画 にお け る技 術 選 択 … … … … 名 記 畑 恒 事 佐 波教授逝 く 追 悼講 演(山 田 浩之 前 田 義 信 谷 山 新 良 森嶋 通 夫 上 田三 四 二) 追 憶 談(葛 城 照三 安 間進) 故 佐波 宣平 教授 自作 年譜 昭和43年5月 :東 郡:大:學 繧 … 齊 學 會 64(466) 低 開発 国開発 計 画 に お け る技術 選 択 一 ド ヅブ の 大 規 模 優 先 型 発 展 モ デル ー 名 は こ の 小 稿 の 課 題 は,低 し が 畑 恒 き 開 発 国 工 業 化 問 題 へ の マ ル クス 経 済 学 的 ア プ ロー チ の 一 典 型 を 示 す と み ら れ る ド ッ ブMauriceDobbの 低 開 発 国 経 済 発 展 模 型 を, 投 資 の 技 術 形 態 の 選 択 と い う領 域 に 限 定 し て 検 討 す る こ と で あ る 。 ド ヅ ブ の 発 展 模 型 は,こ れ ま で に 数 多 く の 解 説 や 吟 味 を 受 け て い る が,そ 認 し て お くな ら ば,ド の結 果 だけ を確 ッブ の発 展 模 型 の基 本 的 含 意 を次 の諸 点 に 要 約 す る こ と が 可 能 で あ ろ う1り 。 1.低 開 発 国 工 業 化 の 問 題 は,一 題 で は な く,資 2.資 金 を運 用 す る組 織 と経 済 体 制 の 問題 で あ る。 本 蓄 積 の 速 度 と構 造 を 規 定 す る 重 要 な 要 因 は,貯 は な く,投 3.そ 般 に い わ れ て い る よ うな意 味 で の資 金 の 問 蓄 ・投 資 の 絶 対 額 で 資 の 部 門 間 ミ規 模 問 配 分 で あ る 。 の 点 で,重 を 短 縮 し,農 工 業 ・大 規 模 工 業 へ の 優 先 的 投 資 は,工 業 化 に 必 要 な時 間 業 → 軽 工 業 → 重 工 業 と い う先 進 資 本 主 義 諸 国 が た ど っ た 漸 進 的 な 経 済 発 展 径 路 を 短 期 間 に 凝 縮 し て 実 現 り る こ と が で き る。 4.経 は,生 済 発 展 率 と い う長 期 的 な 課 題 を 念 頭 に お い た 投 資 配 分 の 計 画 的 決 定 産 手 段 が 社 会 的 に 所 有 さ.れ投 資 が 社 会 的 に 規 制 さ れ る 社 会 主 義 計 画 経 済 体 制 を 前 提 とす る 、 ま た,こ の 点 に,社 会主義計画経済体 制が資本主義経済体 制 に 対 し て 有 す る 経 済 発 展 戦 略 上 の 優 位 制 が 成 立 す る. 5.重 工 業 ・大 規 模 工 業 へ の 優 先 的 投 資 に よ っ て 先 進 資 本 主 義 諸 国 よ り も 高 1>さ しあた り.小 野一一郎.マ ル クス主義後 進国発展 論の一類型,松 井清福 「後進国開発理論 的 研 究」昭和32年,173-192ペ ージ;瀬 尾 芙巳子,低 開発地域 の投資基準 モデル について一 ドッブ 理 論 をめ ぐる検討一.「 アジア経済」第7巻 第10号,昭 和41年10月,19-31ペ ージを参照・ 低開 発国開発計画 におけ る技術選択(467)65 い 経 済 成 長 率 を 記 録 し た1920・30年 ド ッ ブ の 議 論 は,投 こ の 点 は,同 代 の ソ ヴ ェ トの 経 験2)は そ の 実 例 で あ る。 資 の 部 門 間 ・規 模 間 配 分 を基 軸 と し て 展 開 さ れ て お り, じ マ ル ク ス 経 済 学 的 ア プ ロ ー チ を 採 りな が ら も,も 泉 の 確 保 の 次 元 で 展 開 さ れ て い る バ ラ ン の 議 論3)や,低 属 国 と い う 制 度 的 段 階 で 把 握 す る シ ン グ9冷 っ ぱ ら投 資 源 開発 国 問 題 を植 民 地 従 コ 『 ソ タ イ5)の 議 論 に対 し て ユ ニ ー クな 地位 を 占 めて い る。 'な ん ら か の 経 済 計 画 主 体 の 存 在 を 想 定 し ,そ の計 画 主 体 の 手 中 に一 定 の 投 資 ノ 資 源 が 確 保 さ れ て い る 場 合 に,計 間 にふ りむ け る か 。 い る.5)こ 2次 画 当 局 は そ れ を どの よ うに産 業 部門 間 ・規 模 ド ヅ ブ が こ の 問 題 領 域 を 自 らの 低 開 発 国 論 の 中 心 に 据 え て と の 背 景 に は,次 の よ う な 事 情 が 存 在 す る で あ ろ う 。 そ の1つ は,第 世 界大 戦 を 境 と して 後 進 諸 国 の経 済 機 構 の 中 に 多 か れ 少 なか れ定 着 させ ら れ る.こ と に な っ た 計 画 機 関 の 役 割 で あ る 。 戦 後 の 低 開 発 諸 甲 の お び た だ し い 数 力 年 計 画 を 数 え あ げ る ま で も な く,国 家 セ ク タ ー や.公 共 投 資 が 低 開 発 諸 国 の 再 生 産 機 構 の 中 で 太 き.な 役 割 を 果 す よ う に な っ て い る 。 第2に 実 を 反 映 し て,低 は,.そ の よ うな現 開 発 国 理 論 自 体 に 計 画 的 視 野 が 大 き く導 入 さ れ て き て い る と い う 事 情 が あ る 。 レ ッ セ ・ フ ェ ー ル の 機 構 が 比 較 牛.産 費 原 理.に 基 く 国 際 分 業 の 中 で 低 開 発 国 の 工 業 化 を 保 障 す る と い うJ.ヴ ァ イ ナ ー の 接 近 η は,も は や低 開 発 国 開 発 論 の 主 要 な流 れで は な い。 む し ろケ イ ン ズ以 降 の 国民 所 得 分析 の諸 タ ー ム を 用 い て 経 済 成 長 論 の 低 開 発 国 へ の 適 用 を 試 み る シ ン ガ ー).等 2)晒.Dobb,∫omeAspectsofEconomicDevelopment.ThreeLectures,2.ed.,1955,小 の接 近 が 野一一 郵 駅 「後 進 国 の経 済 発 展 と経 済 機 構 」 昭 和31年,63ペ ー ジ,80ペ ー ジ。 3)P.Baran,ThePobd59cadEconomyofGrowth、1957,浅 野 栄 一 ・高 須 賀 義 博 訳 「成 長 の経 済 学 」 昭 和35年 。 4)V.B.Singh,"KeynesianEconomics'inRelationtoU皿derdevelopedCountries", ∫cienceandSocieDy,Summer1954,pp.222-234.玉 井 龍象 訳 「ケイ ンズ 経 済 学 批 判 」昭 和32年 。. 5)ヴ ェ ・コ ロ ン タ イ,杉 本 昭 七 訳,ブ へ 一 シP ル ジ ョ ア経 済 学 の 後 進 国 開 発 論,松 井清 編 前 掲 書,211-237 6)ド ッ ブの 問 題 領 域 が超 体 制的 な 「計 画 」一 般 の 投 資 行 動 で あ る と い え ぱ 語弊 が あ る が,ド ッ ブ の発 展 模型 の 中 心 が 投 資 基 準 の 択 一 的 選 択 とい う形 を と ってい る限 りで こ の よ うな 言 い 方 ば許 さ れ る で あろ う。 ま た,社 会 主 義 的 「計 画 」モ デ ル と して の ド ッ ブ ・モ デル の不 十 分 さ の指 摘 が本 稿 の ね らい の ひ とつで あ る。 7)」.Viner,InternationalTradeandEconomicDevelopmenj,1953;梅 津 和 郎,古 典 派 的 後 進 国 開 発 理 論 の本 質,松 井 清 編 前 掲 書,97-128ペ ー ジ。 66(468)、 第101巻 主 流 で あ る 。 身 こ で は,投 第5号 資 計 画 とい う限 られ た 次 元 に お い て で は あ れ,資 本 蓄 積 の 機 構 に 一 定 の 計 画 性 を 賦 与 す る こ と が 試 み ら れ て い る 。. 投 資 の 技 術 選 択 とい う問 題 領 域 は,低 開.発国 開 発 に お け る そ の よ う な 意 味 で の 計 画 的視 野 の 拡 大 を背 景 と して 発展 させ られ て き た諸 問 題 の一 中心 で あ る。 低 開 発 国 開 発 論 の ほ とん どす べ て の 類 型 が 投 資 政 策 に 言 及 し,何 らか の 投 資 基 準 を 提 出 し て い る。 今 日 提 出 さ れ て い る投 資 基 準 に は,(1)資 本 ξ労 働 比 率(資 本 集 約 度)が と 労 働 の 相 対 的 賦 与 比 率 に 比 例 し な け れ ば な ら な い と い う基 準,② 位 あ た りの 使 用 資 本 量(資 本 係 数).の な い と い う基 準,(3)雇 用 労 働 者1人 あ た りの 再 投 資 率(利 潤 率)が い う基 準,(4)短 産 出 高1単 小 さい 生 産 活 動 餌 採 用 さ れ な け れ ば な ら あ た りの 再 投 資 率 あ る い は 投 下 資 本1単 位 大 き い 資 本 集 約 度 を選 択 しな け 劃 ば な らな い と 期 で は な く一 定 の 計 画 期 間 を 基 準 と し ℃ 雇 用 や 産 出 量 を 極 大 に す る こ とが 望 ま し い と い う基 準 等 が あ る9)。 ば,ド 資本 ッ ブ の 発 展 模 型 は1つ こ の よ うな 脈 絡 に お い て 見 る な ら の 投 資 基 準 を 提 出 し て い る もあ とい え よ う。 本 稿 で は(ユ)と② の 技 術 選 択 基 準 を ど り あ げ て ド ッブ の 基 準 と 対 比 させ たk・。(1)は ド ッブ が 「要 素 比 例 の 理 論 」10)と し て 自 ら の 発 展 模 型 の 批 判 的 出 発 点 と し て い る も.ので あ り,前 記 のJ.ヴ ァイ ナ 一等 の新 古 典 派 的 な考 え方 に根 拠 を有 し てい る も.ので あ る 。 ② はGC=sと れ て い る も の で あ り,前 い う周 知 の 経 済 成 長 の 考 え 方 の 系 論 と し て 出 さ 記 の低 開 発 国 開 発 論 の主 流 の基 準 で あ る。 ド ヅブ の発 展 模 型 が 「ヶ ム ブ リ ッ ジ 的 タ ー ム 」11)に依 拠 し て 展 開 さ れ て い る と い う事 情 は, ド ッ ブ の 発 展 模 型 が さ し あ た り前 記(1>お よ び(2)と の 対 比 に よ っ て 内 在 的 に 検 討. さ れ る こと を 要請 して い るよ うに思 わ れ る。 R)H.W.Singer,"TheMechanicsofEconomicDevelopment「',IndianEconomicReview, Aug.1952,rep.inTheEconomicsofUnderdevelopment,ed.byA.N.AgarwalaandS. P.Singh,1963,PP.381-399;山 本 繁 紳,経 集 」 第11巻 第4号,昭 和36年10月.41-69ペ 9)塩 野 谷 祐 一 、 産 業 構 造 の 策 定 基 準.篠 済 成 長 理 論 と低 開 発 国 問 題 ージ 。 原 三 代 平 編 10)ド ッ ブ は 随 所 で'theoryoffactor-proportions'と 11)柳 父 徳 太 郎,経 「産 業 構 造 」 昭 和36年1202・ ージ 。 「経 済 学 論 一224ペ ー ジ 。 よ ん で い る。 済 開 発 理 論 の 背 景 一 国 連 開 発 理 論 の 形 成 と批 判,国 済 発 展 」 昭 和30年,30ペ 関 西 大 学 際 経 済 学 会 編 「後 進 国 の 経 低 開発 国 開 発 計 画 に おけ る技 術 選 択(469)67 r と こ ろ で,ド ッ ブ の 発 展 模 型 は,一 般 に 「重 工 業 優 先 」 タ イ プ で あ る と い わ れ て い る王2)。 た し か に ド ッ ブ の 低 開 発 国 開 発 論 の 核 心 の 一 つ は,投 く あ らあ れ,近 資効 果 が 早 い 将 来 の 雇 用 や 所 得 を 増 加 さ せ る よ う な 投 資 よ り も,投 は 遅 くあ ら わ れ る が,遠 資効 果 い 将 来 の 雇 用 や 所 得 を 大 き くす る よ う な 投 資 を 優 先 す る こ と で あ る 。 そ の か ぎ りで 投 資 は 農 業 ・軽 工 業 よ り も重 工 業 に 」 マ ル ク ス の 第 皿部 門 よ り第1部 門 に,そ れ る で あ ろ う。 し か し,ド し て 小 規 模 工 業 よ り大 規 模 工 業 に 優 先 的 に 行 な わ ッ ブ の 発 展 模 型 で 直 接 に 展 開 さ れ て い る の は,最 終 消 費 財 の 生 産 高 に 与 え る さ ま ざ ま な 資 本 ・労 働 比 率 の 効 果 で あ る 。 資 本 ・労 働 比 率 と 部 門 間 へ の 投 資 配 分 と の 関 連 は 必 ず し も 明 確 で は な い が,こ よ うに 確 認 し て お き た い 。 資 本 ・労 働 比 率 の 選 定 は,直 小 規 模 に 係 わ る 決 定 で あ り,部 こで は 次 の 接 に は 産 業 の 大 規 模 ・. 門 間 投 資 配 分 とイ コ ー ル.で は な い 。 も ち ろ ん 両 ヒ 者 は 生 産 の 迂 回 化 あ るい は生 産 の 「時 間 構 造 」13)とい う観 点 か ら見 れ ば 同 一 の も の に 帰 着 す る 。本 稿 は 投 資 の 部 門 間 配 分 の 考 察 を 別 の 機 会 に 譲 っ て い る の で, 「重 工 業 優 先 」 は 厳 密 に は 「大 規 模 優 先 」 と読 ま れ る べ き で あ ろ う。 以 下,M,Dobb,AnEssayonEconomicGrowthandPlanning")の を 中 心 に,ド 第3章 ッ ブ の 発 展 模 型 の 意 義 と限 界 を 検 討 し て み た い 。 1ド ッブ の 発 展 模 型 の 基 本 構 造 ま ず,次 の よ うな 仮 定 と 記 号 が 設 定 さ れ る 。 a)全 経 済 シ ろ テ ム が 資 本 財 生 産 部 門 と消 費 財 生 産 部 門 の2部 門に よって 構 成 さ れ る。 b)賃 金 は す べ て 消 費 さ れ,剰 c)資 本 財 は 固 定 資 本 を 用 い ず,労 12)註1)の2論 文 以 外 に,松 井 清,低 余 は す べ て 蓄 積 さ れ る。 働 だ けで 生 産 され る。 開 発 国 に お け る農 業 開 発 の意 義 困,「 経 済 詳 論 」 昭 和42年 8月 。 13)M.Dobb,11SeじandThoughtsonCapital-1ロtens)ヒyofInvestment",ReviewofEconomic Studies,Vol.14,No.65,June1957,p.34. 14)M.Dobb,AnEssayonEconomicGrowthandPlanning,1960.石 成 長 と経 済 計 画 」 昭 和40年 。 川 滋 ・宮 本 義 男 訳 「経 済 68(470)第101巻 第5号 d.)賃 金 率 は 時 間 を 通 じ て 一 定 で あ り,両 e)消 費 財 生 産 部 門 の 雇 用 労 働 者 の 技 術 装 備 率 は1対1の え ば,労 働 者1人 f)資 に つ き1台 の トラ ク タ ー)を 本 財 は 同 質 的 で あ る 。(新 部 門 同 率 で あ る。 対 応 関 係.(た と もつ 。 しい 技 術 が 選 択 さ れ る と,そ の 技 術 は既 存.資本 財 に も適 用 さ れ る 。) 9)資 本 財 は 永 久 に 磨 損 し な い 。.「 h)労 働 力 の追 加 は 無 限 に可 能 で あ る。 i)外 国貿 易 を 捨 象 す る 。 L;労 働 く人 間 時 間) ρ;労 働 生 産 性. 側;賃 金 率(1人 添 字 ら0は 間 時 間 が 受 け 取 る 消 費 財 量 で 測 られ る) そ れ ぞ れ 資 本 財 部 門 ・消 費 財 部 門 を あ ら わ す 。 投 資 計 画 は2つ の 部 門 連 関 方 程 式 に 制 約 さ れ る 。 ま ず,蓄 消 費 財 余 剰L。(ρ 。一切 が,資 積 の源 泉 と して の 本 財 部 門 の 賃 金 財 と し て 投 資 ざ れ る の で(仮 定c) に 注 意), 現 ・ 初=現(ρ 、 一 ω)(1) 次 に,消 費 財 部 門 の 新 雇 用(雇 (仮 定e)に 資 本 財 生 産 量 に よっ て決 定 さ れ る 注 意), 筆 さ て,問 用 の 増 分)が 題 は,与 一曲(・).. え ら れ た(1),② の 投 資 条 件 の も とで,特 定の技術選択が消 費 財 の 生産 量 に 与 え る効 果 を確 定 す る こ とで あ る。 しか し,そ れ 前 に ド ッ ブ の 「技 術 」 概 念 の 特 異 性 に つ い て ふ れ て お か な け れ ば な ら な い 。.ド ッ ブ は 選 択 ざ れ る 技 術 の 指 標 は 資 本 集 約 度(資 で あ る と理 解 し て い る が,ド と 労 働 の 比 率(技 術 装 備 率)と ッ ブ の 資 本 集 約 度 概 念 は,生 本 ・労 働 比 率) 産 要 素 と して の 資本 い う伝 統 的 な 概 念 で は な い 。 仮 定e)に 1人 間 時 間 の 使 用 す る 資 本 財 の 重 は,あ ら か じ め1に よ っ τ(, 固 定 さ れ て お り,こ の意 味 で の 資 本 集 約 度 と技 術 に は 全 く代 替 的 選 択 の 余 地 は な い 。 こ の 仮 定 の 意 図 は, 低 開発 国開発 計画におけ る技術選択(471).69 「生 産 要 素 」 と し て の 資 本 とい う概 念 を 回 避 し,資 本 をそ の本 源 的 価 値 で あ る 労 働 に 還 元 し て 測 定 す る こ と に あ る 。 資 本 財 は 物 量 単 位 で な く,そ 入 ざれ た 労 働 費 用 ▽ 汐・ で 測 ら れ,資 本 集 約 度 は,消 使 用 す る 資 本 財 部 門 の 労 働 量 で 測 ら れ る 。 一 般 に,消 の生 産 に投 費 財 部 門 の1人 間時間 の 費財 生産 に使 用 さ れ た場 合 に あ が 大 き い 資 本 財 は そ の 生 産 に お い て か が 小 さ く,.労 働 費 用1/あ き い 。 逆 の 場 合 は 逆 で あ る 。 ド ッ ブ は 両 部 門 の 生 産 性 拓,あ.の に,事 相関関係の 中 態 を 労 働 価 値 説 の 立 場 か ら考 察 し よ う と し て い る。 こ の ク,と 係 に つ い て ま ず 第1図 の よ う な 原 点 に 対 し て 凹 で,直 が 仮 定 ざ れ る 。 こ の 曲 線 の 形 状 は,1.技 (双 曲線 の よ う に無 限 に ρ。軸,森 つ れ てあ の変 化 率 が か が大 釦 角 双 曲 線 よ り平 板 な 曲 線 術 知 識 の限 界 に よ る労働 の 収 穫逓 減 軸 に漸 近 す る の で は な い),2.少 。が.E昇 す るに の 変 化 率 よ り大 き く な る こ と(原 点 に対 して 凹)と 2つ の 事 態 を 予 想 して い る15)。 Pi 問 題 はL;=乙 。(ρ 。一w)/初 と い う. 与 え られ た 投 資 可 能 量 を 第1図 の 夕,,あ に ふ りむ け るか で あ る。 と こ ろ で,選 技 術 は,計 存 し,さ 上で を異 に す る さま ざま な タ イ プ の 資 本 財 の ど の1つ 択 ざれる 画 主 体 の 有 す る 目標 に 依 し あ た り3つ の競 合 的 な 目 P¢ 第1図 的 関 数 が 設 定 さ れ う る 。 す な わ ち, 1)雇 用,2)産 1)新 出 量16),3)剰 余'り で あ る。 雇 用 を 極 大 化 す る 場 合 は, 争 一町 で あ り,一 鷺・ を 極 大 化 す る た め に は,あ を 極 大 に す れ ば よ い19)。 15)M.Dobb,"SecondThoughts".p.55.' 16)17)資 18)現 本 財1単 位 あ た りで も 雇 用 労 働1単 の 関 位 あ た り で も 同 じ こ と で あ る(仮 は ω 式 に よ っ て 与 え ら れ た 一 定 の 貯 蓄 量 で あ る 。 以 下2),3)に 定e))。 つ い て も同様 。 い う 70(472)第101巻 2)新 第5号 産 出 量 を 極 大 化 す る場 合 は, ρ。・ 一 驚 一触 乙・ P`Pf で あ る か ら,か 勉 を 極 大 に す れ ば よ い 。 3)新 剰 余 を 極 大 化 す る場 合 は, ψ 。 丁 ω)・砦 で あ り,(ρ,一 以 上3つ 一(少・一 切)μ ゼ ω)あ を 極 大 に す れ ば よ い 。 の ケ ー ス を 図 表 化 す る な らば,1), 2),3)の 解 は 第2図 Pc 1 の 』 点,B点,C ロ (P、 一 ω)割1 点,に お い て与 え ら れ る 。 第2図 て 軸 ρ轟 上図 のた は資 本財 部 門 の労 働 生 産 性 を消 費 財 単 位 に よ っ て 測 っ た もの19)で あ り,ド ツ ブ が 結 合 生 産 性(combinedproductivity) と よ ん で い る も の で あ る 。 第2図 (少。一 切 あ 軸 は,い 下 図 の う ま で もな く,生 産性 の 代 りに剰 余 を問 題 に した もの で あ る。 第 2図 下 図 に お い て は,ク ψ 盛曲 線(点 、 ω が 大 き く な る に つ れ て(か 線)が 4BP・ 第2図 ω の 大 き さ に 応 じ て 右 下 方 に 収 縮 し, 一切 釦 曲線 の頂 点 は右 方 へ 移 動 す る。 雇 用 を 極 大 に す る場 合 は 《 を 最 も小 さ くす る よ うな ル の 値 を 選 べ ば よ い が, 社 会 の 生 存 維 持 水 準 を考 慮 す る な らば か の 下 界 は 含 二 〇 で は な く か=卿 ろ う。 であ こ の 場 合 は 生 産 物 が す べ て 消 費 さ れ る こ と に な っ て 再 投 資 ク・一 ω は 一 ビ ロ で あ り,拡 財 生 産 性)を る 。 剰 余(厳 に は,(汐,一 大 再 生 産 は 不 可 能 で あ る 。 産 出 量(厳 密 に は資 本 財 部 門 の 労働 の 消 費 極 大 に す る場 合 に は,ρ 。 少、曲 線 の 頂 点 に 対 応 す るP。 の 値 が 選 ば れ 密 に は資 本 財 部 門 の 労 働1単 位 の 消 費 財剰 余生 産 量)を 極 大 に す.る場 合 側)少、 曲 線 の 少。 勿 曲 線 か ら の 収 縮 に対 応 し て(少 。一 ω)ル 曲 線 の 頂 点 が ρψ・由縁 の頂 点 を右 下 方 に移 動 させ た位 置 を と っ てい る の で,産 、9)旋 。)の 意 図 は,.の よ う に資 本 貝柱 果 を あ き.らか に す る こ と に あ る。 盤 を 消 費 財 ・還 元 して 測 り,麟 の鹸 出量 の 甦 産性 効 低開発国開発計 画におけ る技術選 択.(473)71 極 大 化 の 場 合 よ り大 き い ρ。値 を 選 ば な け れ ば な ら な い 。 ω が 大 き け れ ば 大 き い ほ ど(クー ω)勉 曲 線 の 頂 点 の ク,座 標 は 大 き くな る 。 ω が 小 さ くな っ て 沼 〃=0 と い う極 端 な 場 合 を 考 え れ ば,C点 用 ・産 出 量 ・剰 余 と い う3つ はB点 に ア 致 す る。 ド ヅ ブ は こ の よ う に 雇 の 政 策 目標 を 競 合 さ せ る こ と に よ っ て,剰 余 の極 大 化 が 雇 用.・産 出 量 の 極 大 化 よ り も ヨ リ大 き な 少.値 を もつ タ イ プ の 資 本 財 を 必 要 と す る こ と の 根 拠 と して い る20)。 ド ッ ブ の 技 術 選 択 基 準 の 低 開 発 国 工 業 化 に 対 す る政 策 的 意 味 は 何 で あ.ろ う か 。 そ れ は,賃 金 率 引 上 げ → 高 技 術 採 用 → 剰 余 率 の 上 昇 → 成 長 率2り の 上 昇 と い う 因 果 関 係 か ら構 成 さ れ る で あ ろ う。 出 発 点 は 賃 金 率 の 引 上 げ で あ る 。 低 開 発 国 に お い て は,広 範 な 偽 装 失 業 の 存 在22)に よ っ て 労 働 の 限 界 生 産 力 が ゼ ロ に 近 い 諸 セ ク タ ー が 存 在 す る。 こ の よ うな 事 情 の も とで 伝 統 的 な 「要 素 比 例 」 の 理 論 が 示 す よ う に,労 働 の 相 対 的 豊 富 を 反 映 し た 労 働 賃 金 率 が 決 定 され る な ら ば, 労 働 賃 金 率 は き わ め て 低 い 水 準 に 固 定 さ れ る こ とに な り,投 資は低い資本集約 度 と低 い 労 働 生 産 性 を も つ もの に 限 定 して 行 な わ れ るで あ ろ う。 労 賃 水 準 が 「要 素 比 例 か ら」 乖 離 す る と し て も,少 く と もそ れ が 労 働 の 生 存 維 持 水 準 よ り 高 い と こ ろ に 決 定 さ れ る 可 能 性 が あ る な ら ば,そ 的 に 高 め,剰 れ は投 資 の資 本 集 約 度 を相 対 余 率 を 向 上 さ せ る こ と に な る で あ ろ う。 こ の よ う に,き わ め て 単 純 化 さ れ た 形 に お い て で は あ れ,.ド 一 つ の 投 資 基 準 を提 起 し て い る こ とは,次 ッブが 積 極 的 に の諸 点で 大 きな 意 義 を もっ て い る よ うに思 わ れ る。 第1は,こ れ ま で の 低 開 発 国 論 の 中 で ほ と ん ど公 理 的 と も い え る地 位 を 築 い て しま 一 フて い る 観 が あ る 「要 素 比 例 」 とい う考 え 方 に ド ッ ブ が 疑 問 を 提 示 し て パ 賃 金 率 の意 識 的 決 定 の可 能 性 を示 唆 して い る こ とで あ る。 もち ろ ん これ は計 画 モ デ ル の 上 で の 理 論 的 可 能 性 で あ っ て,資 本主 義 的 あ るい は 混 合 経 済 的体 制 の 20)こ こ で はr,が 資 本 集 約 度 の指 標 とさ れ てい る。 ド ヅ プは 第1図 にみ られ る よ うに生 産 性 の 高 い技 術 ほ ど資 本 集 約 的 で あ る と い う仮 定 を 設 け て い る 。 2・)(・)式 に注 意 して(・)式を微 分 す れ ば ・ 消 費 財 産 雌 の成 長 率 即 ・(汐 ・ )/ω と輯 ざ れ る・ 仮 定h)に と り入 れ ら れ ら れ て い る 。22) 72(474)第101巻 第5号 も とに あ る 現 実 の 低 開 発 諸 国 で の 直 接 的 な 適 用 可 能 性 が 考 え られ るわ け で は な い 。 第2に,ド ヅ ブ の 発 展 模 型 は,過 去 と現 在 の ソ ヴ エ トや 中 国 に お け、 る投 資 決 定 の 動 機 の 定 式 化 に 一 つ の 鍵 を 与 え て い る と い う こ とで あ る 。 工 業 化 の 「ソ ヴ ェ ト方 式 」2ヨ)と して 常 に 引 き 合 い に 出 さ れ る1920・30年 代 の ソ ヴ ェ トに お け る 投 資 は 果 し て 雇 用 ・産 出 量 の 極 大 化 で は な く成 長 率o極 大 化 を 目標 と して高 資 本 集 約 度 を 志 向.し た の か ど うか 。 そ の 場 合 に ド ッブ ・モ デ ル どお り に 賃 金 率 が 技 術 選 択 の 目安 と し て 機 能 し て い た か 。 第3に,こ れ と 関 連 す る が,工 業化の ッ ブ ・モ デ ル の 理 論 的 系 論 と して の 的 な 定 式 化 が 試 み ら れ,こ 「ソ ヴ ェ ト方 式 」 の 定 式 化 と し て の ド 「中 国 方 式 」2り('ChineseMethod')の 端初 れ に 対 す る成 長 率 極 大 化 の観 点 か らの 疑 問 が 表 明 さ れ て い る こ と で あ る 。 ソ ヴ ェ トの 重 工 業 優 先 型 成 長 と中 国 の 「農 業 基 礎 語 」 と の 対 照 は,す い る。 で に か な り指 摘 さ れ て い る が25),ド ッブ は 改 め て これ を確 認 して 「伝 統 的 な 手 押 車 に よ る ダ ム 建 設 や 地 方 の 小 熔 鉱 炉 」2邑)と い う低 技 術 小 規 模 生 産 は,た し か に 当 面 の 雇 用 と産 出 量 を 増 加 さ せ る で あ ろ うが,.他 方 で は そ れ が 賃 金 支 払 額 の 増 大 を 引 き 起 し,余 剰 の比 例 的 増 加 を もた ら さ な い の で成 .長 率 は 鈍 化 さ せ ら れ る で あ ろ う。.これ が ド レ ブ の 疑 問 の 骨 子 で あ る が,ド モ デ ル の 見 地 か ら は,① の 目 的(た ッブ ・ 中 国 に お け る投 資 決 定 が 剰 余 率 極 大 化 以 外 の な ん らか とえ ば 雇 用 拡 大)に よ っ て 規 制 さ れ て い る か,② 低 技 術 で も,た とえ ば 投 資 の 懐 妊 期 間 短 縮 の 複 利 的 効 果77)と い う よ う な 要 因 に よ っ て 剰 余 が 極 大 化 さ れ る か の ど ち ら か の 可 能 性 に よ っ て 説 明 さ れ る こ と に な.る。 23)M.Dobb,SomeAspects,邦 C働 η漉 θ3,1963,p,36,宮 訳,80ペ 本 義 男 訳 ー ジ;M.Dobb,EconomicGrowthandUnderdeveloped 「成 長 24)M,Dobb,AxEssay,p.46. 25)N.Spulbeτ,"ContrasしingEconomicPatterns:ChineseandSovietDevelopment St■ategies'脚,SavielStudies,July1963.. 26)M.Dobb,AnEssay,p.46. 27)∫ 配 諺.,p.45. と 開 発 の 経 済 学 」 昭 和40年 。 低開 発国開発計画におけ る技術 選択 ■ (475)7ヨ ドッブ の資 本 集 約 的 投 資 基 準 に対 す る 障 害 ド ッブ の発 展 模 型 は 以 上 の よ うに成 長 率極 大 化 を 目的 と す る技 術 選 択 が雇 用 と産 出 量 の 極 大 化 を 目 的 と す る 技 術 選 択 よ り も高 い 資 本 集 約 度 を志 向 し な け れ ば な ら な い こ と,お よ び 賃 金 率 が 高 け れ ば 高 い ほ.ど こ の 資 本 集 約 度 が 高 くな け れ ば な ら な い こ と を「 特 質 と し て い る 。 し か し,Zり の 上 昇 → 高 技 術 の 選 択 とい う こ の 発 展 径 路 は,そ れ 自身 の 内 的 矛 盾 を か か え て い る 。 そ れ は,ド の投 資 配 合 問 題 の 考 察 か ら,単 ヅブが 自 ら な る 制 約 条 件 とい う形 に お い て 機 械 的 に 分 離 し て い る 貯 蓄 の 絶 対 的 大 き さ の 側 面 に 存 在 す る 矛 盾 で あ る 。 投 資 条 件(1)式 が 示 す よ う に,投 資 の 絶 対 量 は 消 費 財 余 剰 の大 き さ に よ っ て 規 定 さ れ,後 上 昇 か ω の 下 落 に よ っ て 高 め ら れ う る の で あ る が,も が 高 い な らば,そ れ はL,(あ 一 切/ω 者は 姦 の し即 発 の 初 発 に お い て 初 とい う投 資 の絶 対 額 を低 めず に は お か な い 。 低 い 投 資 額 は そ れ が 投 資 と して ど の よ う に 技 術 間 に 配 分 さ れ よ う と も成 長 の 絶 対 的 規 模 に お け る 天 井 を 構 成 す る で あ ろ う。 高 い ω は,一 に お け る 貯 蓄 額 の 低 下 を も た ら し,他 方 で 開発 の初 発 方 で 開 発 の 途 上 に お け る剰 余 率 の 極 大 化 を もた らす の で あ る。 資 本 財 部 門へ の追 加 的 雇 用 が 消 費 財 部 門 の賃 金 財 供給 の 余 剰 分 に よ っ て 規 定 ざ れ,資 本 財 部 門 へ の追 加 的 投 資 の成 長率 は 消 費財 部 門 の 産 出 高 の 成 長 率 を 超 え る こ とが で き な い30)と い う 模 型 の 構 成 は,ド 集 約 的 技 術 選 択 の.第1の 第2の 障 害 は,第1図 ッブ の資 本 障 害 で あ る。 で示 された ル と 勉 につ い て の単 純 な相 関 関 係 に係 わ る も の で あ る 。 技 術 知 識 の 限 界 に よ っ て ρ。;勉 曲 線 は 必 ず 飢 軸 お よ び 少・軸 と交 わ る と し て も,こ ら ば,.第2図 の 曲 線 が 中 央 部 に お い て 直 角 双 曲 線 と 同 じ形 状 に な る な のpap=曲 線 は 一 定 と な り,地 あ ろ う。 そ の 場 合 は,減 こ と に な り,ド 点 ・B点 軸 に平 行 な直 線 にな って しま うで ・C点 は 全 く相 互 に 無 関 心 に 任 意 に 羅 ば れ る ッ ブ の 模 型 の 基 本 的 出 発 点 が くず れ 去 っ て し ま う。 ま た;収 28)(・),(・)式・ ・ 与 ・ 士 一争 ・ 去 一鯉 斜 穫 74(476)第101巻 第5号 逓 減 と い う仮 定 は 第1図 の 曲 線 を 原 点 に 凹 な もの に し て い るが,資 本集約度の 上 昇 が 規 模 の 拡 大 に 伴 う収 穫 逓 増 とい う よ う な も の を だ ら す と す れ ば,こ のよ うな 単 純 な 原 点 に 凹 な 曲 線 は 描 く こ と が で き な く な る。 も ち ろ ん 収 穫 逓 減 とい う仮 定 は ド ッ ブ が よ.り所 と し て い る伝 統 的 な 生 産 性 関 数 の 仮 定 で あ り,難 そ こ に 求 め ら れ る で あ ろ う。 そ れ と と も に,ド い 資 本 財 は 労 働 費 用 が 高 い(廊 が 低 い)と の 生 産 性 効 果 が 表 わ さ れ て お り,し 点は ッブ の模 型 に お い て は あ の高 い う形 に お い て 間 接 的 に 資 本 集 約 度 か も資 本 集 約 度 の 高 い 技 術 ほ ど 生 産 性 が 高 い と い う暗 黙 の 仮 定 が 設 け ら れ て い る 。 こ こで は 資 本 集 約 的 で な い 技 術 が む し ろ 高 い 生 産 性 を も た ら す 可 能 性 は も ち ろ ん,技 術 進 歩 が 中 立 的 で あ っ て も生 産 性 の 高 ま る 可 能 性29)は 全 く排 除 せ られ て い る と い え る。 第3の 障 害 は,「 剰 余 は す べ て 蓄 積 さ れ る」 と い う模 型 の 単 純 化 の た め の 仮 定 で あ る 。 ド ッ ブ 自 身 も述 慌 て い る よ う に,現 実 に投 資 と して蓄 積 過 程 に入 り こ む の は 「市 販 さ れ る 剰 余 の 大 き さ 」3D)で あ る 。 た と えAが も,そ の 増 加 分 は 資 本 財 との 交 易 条 件 の 不 利 の た め に,大 大 に よ っ て 相 殺 さ れ て し ま うか も しれ な い 。1920年 可 能 性 を 立 証 し て い る31)。 しか し,蓄 味 で 語 られ う る た め に は,「 一 掃 し,農 業 を,専 こ と」32)(農 民 の 生 産 協 同 組 合 化,農 以 上 に 羅 列 し た3つ な い が,以 29)M.カ 代 の ソヴ ェ ト の 経 験 は こ の 積 と消費 の 比 率 の 計 画 的 決 定 が 十 全 の意 業 に 基 づ く,市 場 目 あて の農 業 に変 形 す る 民 経 営 の 集 団 化)を 必 要 とす る と す れ ば, は や ド ヅ ブ ・千 デ ル の 枠 外 に は み だ す 問 題 で あ る 。 の 障 害 は ∴ も と よ り ドッ ブ ・壬デ ル の 困難 の一 角 に す ぎ 下 に お い て は,今 お い て,ド 部 分 が 自家 消費 の増 農 業 経 営 の主 要 形 態 と して の 最 低 生 活 農 民経 営 を 問 化 さ れ た,分 こ の.よ うな 制 度 的 与 件 は,も 日提 起 さ れ て い る他 の2つ の投 資 基 準 との対 比 に ッブ の 資 本 集 約 的 技 術 選 択 の 内 在 的 難 点 を 検 討 す る。 レ ツ キ,竹 浪 祥 一 郎 訳 「社 会 主 義 経 済 成 長 論 概 要 」117-129ペ セ ソ の構 想 へ の批 判 的 コ メ ン トを参 照 。 30)M、Dobb,AnC∬ 31)M.Dobb,R粥 Baran,oメ).6ゴ 32)P.B3ran,め 上 昇 した と して 鵡ッ,p,29. 滋 賜Eooηo痂6エ)evelopmen4sincetheRevolution,1928,PP.221-245;P. 彦.,邦 訳,355-357ペ 猛,邦 訳,356ペ ー ジD ー ジ。 ー ジ,に お け る ドッ ブ と (477)75 低開発 国開発計画 におけ る技術選択 皿 「要 素 比 例 」 的 技 術 選 択 「発 展 過 程 に お け る 人 口稠 密 国 は,労 働 が 相 対 的 に 稀 少 な 先 進.諸 国 で 用 い ら れ る の と 同 じ資 本 集 約 度 を もつ 道 具 や 機 械 を 必 要 と し な い 。 ・ ・ …・ 理 想 的 に は, 後 進 国 に輸 ズ され る資 本設 備 は これ ら・ ♪画 で み られ る生 産要 素 騨 に適 応 す る よ う に 特 別 に 設 計 さ れ ね ば な ら な い 。 … … 人 口過 剰 な 農 業 国 で は,た 道 路 を 作 る場 合.に,.各 労 働 者 が ブ ル ドー ザ ー を1台 とえ ば ず つ装 備 す る こ とは 空想 的 と い っ て よ い ほ ど 不 経 済 で あ ろ う。 … … 産 業 難 展 の 初 期 段 階 で は,も っ と簡 単 な 道 具 や 設 備 の 方 が こ の 種 の 国 々 の 生 犀 要 素 の相 対 的 賦 与 状 態 に と っ て 適 切 で あ ろ う。」ヨ3)この 議 論 は 直 接 に ド ヅプ の 高 技 術 志 向 を 対 象 と し て な さ れ て い る か の よ うで あ る が,実 う こ と な く,産 は,農 村 の 偽 装 失 業 動 員 に よ って 亘額 の資 本 投 下 を お こな 出 量 を 増 加 さ せ る可 能 性 ど結 び つ い て;多 くの低 開発 国 に 関 す る文 献 の 中 で ほ とん ど公 理 と も い え る地 位 を 獲 得 し て い る伝 統 的 な 資 源 配 分 の 考 え 方 で あ る。 こ の 基 準 に よ る な ら ば,一 で 一 定 の 産 出)を 定 の 生 産 費 で 最 大 の 産 出(あ も た ら す 生 産 要 素 の 組 み 合 せ(資 るい は 最 小 あ生 産 費 本 集 約 度)は,生 産要素 の 相 対 的 賦 与 比 率 の 点 に お い て 与 え ら れ る 。 そ の 場 合 に(1)現 存 の 生 産 要 素 と し て の 資 本 ・労 働 は 一 部 分 し か 生 産 に 充 当 さ れ な くて も,必 ず 平 均 的報 酬 の分 配 に は 参 加 す る こ と,(2)価 格 体 系 が 要 素 の 相 対 的 賦 与 状 態 を 完 全 に反 映 す る こ と と. い う2つ の 重 要 な 仮 定 が 設 け られ て い る。 ヤ'い か え れ ば,こ の基 準 は 資 源 の完 全 利 用 時 に お け る 生 産 要 素 の 組 み 合 せ と比 例 し た 価 格 体 系 を め や す に し て 技 術 選 択 を 行 な うの で あ る。 こ の 基 準 を ド ッ ブ の 基 準 と の 対 比 に お い て 考 察 し そ み よ う 。 第3図 資 本 集 約 度,た.(軸 る 。 資 本 と 労 働 に1次 33)R,Nurkse,Problems・ 土 屋 六 郎訳 は横軸に に 労 働生 産性 を とっ た ヴ ィ クセ ル 以 来 の 生 産 性 関 数 で あ 同 次 の 関 係 が 想 定 さ れ,あ=ノ(勅 ∫Cσ が 鰯Fσ 「後 進 諸 国 の 資 本 形 成 」66-67ペ 辮 幽 ㈱ ー ジD 漉 ≡∫(1/戸盛)に 臼 お いて UnderdevelopedOovwntvSes,1953,P・35・ 76(478)第101巻 第5号 f'㈲>0,∫"(効 く0の こ こ で,ド 形 状 を 想 定 す る34)。 ッ ブ の3つ の 極 大 化 目標 を ρ,=∫ ㈹ に あ て は め て み る と次 の よ う な 解 が え られ る。 1)新 雇 用 の 極 大 化 … ・… … ・・ … … … … 為 を 極 小 化(オ'点) 2)新 産 出 量 の 極 大 化 … … … ・・… … … ヂ(ん)=幽 3)新 剰 余 の 極 大 化 … ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ … ア(ん)=(♪ 第3図 の 溜 れ ぞ れ 第2図 点,B'点,α の 』点 対 応 し て お り,ド 沸(β'点) 、一ω)沸(C'点) 点 は そ ,B点,C点 Pこ に ヅブ の用 い て い る トゥー ルが 実 は 一 種 の生 産 性 関数 で あ ろ た こ と が し ら れ る の で あ る35>。 ド ッ.ブ の 主 張 は 第3図 に お い て も 明・ ら か で あ る 。 そ れ は,消 労 働1単 費 財 部 門 の 位 あ た り の 産 出 高 で な く,河'B'C'ん(=1/p、 剰 余 を 極 大 に す る た め に は,ω き さ に 対 応 し てB'点 とこ ろ で あ ろ うか ∼ もB'点 第3図 を そ れ だ けc い.う こ と で あ る 。 「要 素 比 例 」 説 の 技 術 選 択 点 は,は た し てc点 で な く β'点 な ので 産 出 量 と 剰 余 を 競 合 さ せ る ド ッ ブ の 展 開 か ら は あ た か もB'点 あ る か の よ う で あ る 。 し か し,B'点 値 〉 の 大 点 に 移 動 ざ せ な け れ ば な ら な い,と あ り,い ω は ρ。 ρ`と い う 投 資.の 生 産 性 の 極 大 化 点 で や し く も ω に 正 値 を 予 測 す る な ら ば,「 要 素 比 例 」 説 の選 択 す る んの よ り 右 方 に 位 置 し な け れ ば な ら な い は ず で あ る 。 「要 素 比 例 」 説 余 率 の 極 大 化 を 目 的 と す る な ら ば,ω で の 値 い か ん に よ っ てC'点 を選 択 し うる の で あ る 。.し た が っ て ド ッ ブ の 基 準 と 「要 素 比 例 」的 基 準 の 相 違 は,ω 34)こ の想 定 は ド ッブ の ρe≡含 曲 線 の想 定 に 等 しい 。 35)M.Dobb,"ANoteo皿ProfessorIshikawa「s℃hoiceofTechniqueduringtheProcess ofSocialistIndustrialization'∴ 一 橋 大 学 「経 済 研 究 」第13巻 第3号 ペー ジ,で は ド ッ ブ 自 身が これ を 承 認 して い る。 も剰 が労 働 の ,略 和37年3月,287-288 低開発国開 発計 画におけ る技術選択(479)77 相 対 的 賦 与 度 を フ レ キ シ ブ ル に 反 映 す る も の と し て 決 定 さ れ る の か,あ 勧'は 相 対 的 賦 与 度 とは 剃 の 基 準 に よ っ て 決 定 さ れ る の か と い う点 に 横 た わ っ て い る 。 B'点 かC'点 か と い う議 論 の し 方 は 「要 素 比 例 」 的 技 術 選 択 の 批 判 と して は 根 拠 が 弱 い と い え よ う。\将 来 の 成 長 の た め の 剰 余 率 ρ、一四 を 極 大 に す る と い う ド ヅ ブ の 観 点 は,た し か に 集 本 約 約 度 の 上 昇 を 通 じ た資 本 蓄 積 の 進 行 と生 産 構 造 の 高 度 化 を 説 明 す る動 態 的 原 理 と し て 提 出 さ れ て い る が,以 術 が 高 賃 金 率 に 依 存 さ せ ら れ,し 上 の よ うに高 技 か もそ の 賃 金 率 の 独 自 的 決 定 機 構 に つ い て は 必 ず し も 明 言 さ れ て い な い 以 上,静 態 的 な 資 源 配 分 の 原 理 で あ る 「要 事 比 例 」 説 を 十 分 に 克 服 して い る とは い い が た い 。 問 題 は ド ッ ブ が 自 ら の 技 術 選 択 基 準 の 提 出 に あ た り,伝 分 析 手 法 に そ の ま ま 依 拠 してB'点 とC'点 統 的 な生 産 性 関 数 の の 対 立 とい う形 で 議 論 を 進 め て い る こ と 自 体 に あ る が,い ま,こ て み よ う。 そ れ は,ド ッ ブ の 発 展 模 型 で 用 い られ て い る賃 金 率 盟 の 性 格 に つ い. て で あ る 。 第3図1こ の分 析 手 法 の枠 内 で の 一 定 の解 決 の 可能 性 を考 え つ い て い うな ら ば,"が 「要 素 比 例 」 説 の 主 張 す る,生 資 源 の 完 全 利 用 時 の 労 働 の 相 対 価 格 で あ る と し よ う.そ の"よ り高 い 位 置 に も う1つ の 初 を 設 定 し,そ し て,わ 産 れ わ れ は,こ れ に 対 応 し た ヨ リ高 い 技 術 と剰 余 率 を 保 障 す る こ とが で き る。 こ の 初 が 実 際 に 行 な わ れ る賃 金 率 引 上 げ で あ る か そ れ と も ヨ リ高 い 資 本 集 約 度 を 選 択 す る た め の 恣 意 的 想 起 で あ る か は こ こ で は 問 わ れ な い が,と もか く こ の 初 は 要 素 賦 与 状 態 に.おけ る相 対 価 格 か ら乖 離 し, し た が っ て 現 存 資 源 の 完 全 利 用 ・価 格 の 十 分 な 伸 縮 性 と い う必 要 条 件 を 満 さ な い もの で あ る こ とは 明記 され なけ れ ば な らな い 。要 素賦 与 状 態 と不斉 合 な資 本 集 約 度 は,現 存 の 資 本 ス ト ッ ク と労 働 力 の 完 全 利 用 に は 反 す る が,経 動 態 的 観 点 か ら見 る な らば,投 済発展 の 資 基 準 と して の十 分 な存 立基 盤 を有 して い る と い え る で あ ろ う。 W資 八 日 ヅ ド=ド 本 係数 極 小 化 の 技 術 選 択 ー マ ー の 経 済 成 長 論 の 系 論 と し て 「与 え ら れ た 資 本 か ら最 大 の 78(480)、1.第101巻 第5号 生 産 量 を生 み だ す た め に,資 本 係 数 の 小 さ い 技 術 を 選 択 す る 」 と い う投 資 基 準 が 存 在 す る 。G=s/C=OS(た だ し,β は 国民 所 得成 長 率 ド ∫は 貯 蓄 率,Cは 係 数,σ は資 本 の 限界 生 産 性)に た 上 でCの 極 小 化,σ お い て,資 本 係 数 極 小 化 基 準 は,∫ 限界 資 本 を一 定 と し の 極 大 化 を 考 え る の で あ る。 こ の 基 準 に は 生 産 要 素 と し て 資 本 だ け し か 登 場 し な い とい う限 界 が あ るが,低 対 し て 資 本 が 相 対 的 に 稀 少 で あ る と こ ろ が ら,資 開 発 国 に お い て は,労 本 の み に着 目 し て,そ 働に の最 大 限 の 利 用 効 果 が 追 求 さ れ る わ け で あ る。 い ま/y/N=(K/N)/(κ/y)(た Yは 産 出量,Nは (K/N)の 雇用,κ は 資 本 ス ト ヅ ク)に よ?て み れ ば,ド 上 昇 の 生 産 性 効 果 を考 え て い る の に 対 し て,資 だし ッブが 資 本集 約 度 本係数極 小 化基 準 は 資 本 係 数 の 低 下 の生 産 性 効 果 を 追 求 し て い る の で あ る 。 こ の 基 準 が 選 択 す る 点 は,第2図 B点 は ρ・ ρ♂が 極 大 値 を と6点 の β 点,第3図 で あ り,飢 の β'点 で あ る。 第2図 例 は 資 本 財 部 門 の雇 用 と して投 入 さ れ た 投 資 の 消 費 財 生 産 性 を 示 す も の で あ っ た か ら,そ 位 あ た りの 必 要 投 資 量(資 は,資 で 本 係 数 は 原 点 か ら 生 産 性 曲 線 に 引 い た 接 線 の 傾 き ψ 。/(1/ク ・)一戸碗)の 単 は 少轟 の 極 大 化 点 を 示 し て い る。 ド ッ ブ は こ の 点 に つ い て 資 本1単 余 の2つ の 逆 数 で あ る消 費 財1単 こ の 点 に お い て 極 小 値 を と る。 第3図 数 で あ り,B'点 本 係 数)は の 位 あ た りの 産 出 量 と 資 本1単 位 あ た りの 剰 に つ い て そ れ ぞ れ の 極 大 化 目標 が 競 合 す る こ と を 指 摘 し て い る が,こ こ で も前 節 と 同 じ 問 題 が 起 る で あ.ろ う。 資 本 集 約 度 の 高 さ が 依 存 さ せ られ て い る賃 金 率 が 低 開 発 国 の 資 本 ・労 働 の 相 対 的 稀 少 性 を フ レ キ シ ブ ル に反 映 し て い る も の で あ る な ら ば,資 本1単 位 あ た り剰 余(利 潤 率)を 極 大 化 す る資 本 集 約 度 は 低 くな ら ざ る を 得 な い 。 こ の よ うな 問 題 点 に もか か わ らず,ド 一 マ ド ( 孤 = ヅ う フ ド ト ` ω ん = ( 一 卸 ω s7 合 yア = /κ Y ( N. , ﹄y = yπ N 器 N/ = う ド ツ ロ バ ( = G 5τ で 確 認 し て お く必 要 が あ ろ う。 ヅブ の発 展 模 型 の動 態 論 的 含 蓄 を こ こ 低開発国開 発計画 におけ る技術選 択(481).79 と な る35)。(た だ し,Yは 産 出量,5は 貯 蓄,Kは 資 本 ス トッ ク,Nは 雇 用 で あ る 。 そ' ■ の 他 の 記 号 は.これ まで本 稿 で用 い てい る もの 。)か ロ ッ ドは ∫ を 一 定 と し た 上 で(こ こに 動 態 論 と して の 限界 が あ る)Cの 低 下 に よ っ てGを に よ っ て そ れ を 相 殺 す る 以 上 の ε←p=一 高 め,ド ッブ は た の 上 昇 ω)の 上 昇 を もた ら し,そ の 結 果Gを 高 め る めで あ る。 』 む 成 長 率 の極 大 化 が す び 「要 素 比 例 」 的 基 準 や 資 本 係 数 小 化 基 準 の 示 す もの よ り高 い 技 術 を 志 向 律 ね ば な ら な い と い う ド ッ ブ ・モ デ ル の 含 意 は,伝 統 的な資源配 分 の 考 え 方 に 大 き な 疑 問 の 一 矢 を 放 っ て い る 。 伝 統 的 な 資 源 配 分 の 考 え 方 は, ド ッ ブ に よれ ば,限 界 生 産 力 の 理 論 と比 較 生 産 費 説 の 結 合 に よ ら て 構 成 さ れ て .い る37)。限 界 生 産 力 の 理 論 に よ る な らば,比 較 的 稀 少 な 資 本 の 高 価 格 と比 較 的 豊 富 な労 働 力 の低 価格 を 目安 と して最 少 の生 産 費 に よ る生 産 が 追 求 され る こ と の 結 果,低 開 発 国 は きわ めて 労 働 集 約 的 な投 資 形 態 を選 好 せ ざ る を え ない 。 ま た 比 較 生 産 費 説 に よ る な ら ば,後 進 的 経 済 は 比 較 優 位 を もつ 消 費 財 の 輸 出 と比 較 劣 位 を もつ 資 本 財 の 輸 入 を経 済 効 率 の 観 点 か ら推 奨 さ れ る こ と に な る 。 これ は 農 業 → 軽 工 業 → 重 工 業 の 発 展 径 路 を 漸 進 的 に 運 ん だ19世 紀 資 本 主 義 の 悪 し き パ タ ー ン を 低 開 発 諸 国 に 再 現 す る よ う強 制 す る 理 論 で あ る。 急 速 な 工 業 化 と経 済 的 自 立 化 を 課 題 とす る低 開 発 諸 国 は こ の よ う な 漸 進 的 な 経 済 発 展 の 悪 循 環 が 不 可 能 で あ る こ と を 自 覚 し,こ れ か ら抜 け 出 し た い と願 っ て い る。 ド ッブ ・モ デ ル は 投 資 の 計 画 化 が 高 技 術 の 選 択 を 可 能 し,工 業 化 に必 要 な時 間 を短 縮 す る こ と が で き る こ と を 論 証 し よ う ど し て い る点 に お い て,こ の 希 求 の 実 現 に1つ の 鍵 を提 出 し て い る 。 し か し,高 技 術 → 高 い 剰 余 率 → 成 長 率 極 大 化 と い う径 路 は 果 し て 成 動 的 に 論 証 さ れ て い る とい え る で あ ろ うか。 一 種 の生 産 性 関数 に依 拠 し た ドッブ の展 開 36)岡 倉伯士.低 発達経 済 と締 発展一 ド。ブ理論 の吟味 と展 開一,「 山口経 済学艦 1号,昭 和34年1月,36-68ペ ージ,の ヒγ トを得 た。 37)M.DDbb印 加o犯o撚oGγoω'ん鼻 鋸 σ鋸 β κ8麟oク84Co循η〃ゴ8∫,1963,p,47. 」第10巻第 80(482>.第101巻 に お い て は,剰 第5号 余 率 を 極 大 化 す.る高 い 資 本 集 約 度 は 賃 金 率 の 高 低 に 依 存 さ せ ら 騨 れ て い る 。 ド ッ ブ の 賃 金 率 が 資 源 の 完 全 利 用 状 態 に お け 否要 素 の 限 界 生 産 力 に 等 し い 相 対 価 格 に よ っ て は 与 え ら れ な い も の で あ る と す る な ら ば,ド ッブ は そ れ に 代 る な ん ら か の 価 格 体 系 ・賃 金 率 の 決 定 機 構 を 示 さ な け れ ば な ら な い3日)。 ま た,資 源 の 完 全 利 用 と生 産 効 率 の 極 大 化 とい う 「要 素 比 例 」 説 あ る い は 生 産 性 関 数 に よ る 分 析 手 法 の 前 提 が ド ヅ ブ に あ っ て は 必 ず し も明 確 に 確 認 さ れ て い な い 。 い い か え れ ば,成 長 率 極 大 化 の た め に は 要 素 賦 与 比 率 か ら意 識 的 に 乖 離 さ せ た 技 術 が 望 ま し い と い う点 が 明 確 に 述 べ ら れ て い な い3の。 ド ッ ブ の 技 術 選 択 論 は 皿.N節 あ る こ と に よ っ て,な の基 準 と形式 的 対 比 が 投 資 基 準 と して 可能 で ん ら か の 計 画 主 体 の 存 在 を 仮 定 す る 限 りは 経 済 体 制 の い か ん を 問 わ ず オ ペ レ ー シ ョナ ル な もの だ と み ら れ が ち で あ る が 櫛,ド は 「資 本 が 社 会 的 に 所 有 さ れ,し た が っ て 投 資 が(あ る 意 味 で)社 ッ ブ 自身 会 的 に 管理 さ れ て い る 計 画 経 済 」41)に お け る 投 資 行 動 の 定 式 化 を 企 図 し て い る。 そ の 限 り に お い て ド ッ ブ の 投 資 基 準 モ デ ル は,1920・30年 代 の 「ソ ヴ ェ ト方 式 」 の 定 式 化 あ る い は 社 会 主 義.的技 術 選 択 の 基 準 と し て 提 出 さ れ て い る.ド ッブ に よ れ ば, 社 会 主 義 的 計 画 経 済 は 資 本 主 義 経 済 と の 次 の よ うな 活 動 様 式(modusoperandi) の 差 異 を 備 え て い る42)。 1.貯 38)社 ・ 蓄 ・投 資 は 中 央 集 権 的 に 決 定 さ れ,市 場諸 力 の 結 果 と して決 定 され る 会 主 義 計 画 経 済 に お い て は 賃 金 水 準 が 労 働 力 の 供 給 情 況 に 依 存 し な い で 決 定 さ れ る,と の が こ の 点 で の ド ッ ブ の 示 唆 で あ る(M.Dobb,AnEssay,p.40)。 あ ろ う。 こ の 点 の 不 明 確 さ は,実 レ か し,こ 証 研 究 の 側 面 か ら次 の よ う な 批 判 を 引 き 起 し て い る 。 中 国 の 賃 金 水 準 は 高 度 資 本 主 義 国 よ り低 い と み ら れ る か ら,こ 究 」 第13巻 39)こ 第3号,昭 の 点 の 明断 化 はノ 「'ChineseMethod"に 「ソ 連 や の論 証 は 両 国 の 技 術 が 却 って 最 先 進 技 術 よ り低 い 水 準 を 志 向 せ ね ば な ら 組 こ と を 教 え て い る と い っ て よ い 」(石 業 化 過 程 にお け る技 術 選 択 一 ド ッ ブの い う れ で は 不 十 分 で 関 連 し て 一,一 川 滋,社 橋 大 学 会 主義 工 「経 済 研 和37年3月,p.268)0 「低 い 実 質 賃 金 率 」 と 重 工 業 ・大 規 模 工 業 優 先 の 並 存 と い う 「ソ ヴ ェ ト方 式 」 の 基 本 的 特 徴 の 解 明 に 役 立 つ で あ ろ う。 実 証 研 究 が 用 意 さ れ て い る わ け で は な い が,こ の基 本 的 特 徴 は ド ッ ブ の 依 拠 し て い る 新 古 典 派 的 な ア プ ロ ー チ の 「ソ ヴ ェ ト方 式 」 へ の 適 用 不 可 能 性 を示 唆 して い る。 40)ド ッ プ の 構 想 の 直 接 的 契 機 に な っ た と思 わ れ るA.K.Sen,'「SomeNo七esontheChoice ofCapitalIntensityinDevelopmentPlanning",Quavlrady/b㍑7"副ofEooηoηz鉱s,Nov. 1957,ChDiceofTechniques,1960.は,前 41)M.Dobb,AnEssay,p.1. 42)1醜 冨.,PP.1-14. 提 とな る経 済 体 制 につ い て の 明言 を 欠 い て い る。 低開発国開発計画 におけ る技 術選択 、(483)81 のではない。 2.投 資 が個 々の貯 蓄 者 の時 間選 好 に 左右 され な い 。 3,投 資 の技 術 形態 の選 択 が 必 ず し も利潤 率極 大 化 原 狸 に よ って左 右 され な / いo 高 い 投 資 率 と重 工 業r大 規 模 工 業 に与 え られ た 投 資 優 先 権 に特 色 づ け られ る 工 業 化 の 「ソ ヴ ⊥ ト方 式 」 は,現 討 の 段 階 を む か え て い る。 そ の1つ 化 的 経 済 改 革 で あ り,そ 実 の レ ベ ル に お い て1950年 は ソ連 に お け る1950年 代 を 境 と す る再 検 代 以 降 の一 連 の分 権 こで は理 論 の重 点 が 経 済 成 長 とい うマ ク ロ的 な課 題 か ら し だ い に 投 資 効 率 ・生 産 効 率 と い う ミ ク ロ 的 な 課 題 へ と 移 行 し て い る(い わ ゆ る利潤 論 争)。 も う1つ は 「農 業 基 礎 論 」 とい うコ〔業 化 の 「中 国 方 式 」 の 提 起 で あ る。1930年 代 に ラ ン ゲ 等 に 対 して 集 権 的 計 画 の 立 場 に 立 っ た ド ッ ブ は43), 本 稿 で 検 討 し た モ デ ル に お し)て も.経 済 成 長 とい うマ ク ロ 的 な 立 場 か ら ミ ク ロ の 問 題 を 考 え る 立 場 を 維 持 し て い る よ うに み え る 。 し か し,静 態 的 な資 源配 分 論 の 分 析 手 法 を 借 用 し た ド ッ ブ の 論 証 は 多 くの 問 題 を 含 ん で お り,社 会 主 義 的 計 画 モ デ ル と し て の 特 質 が 曖 昧 と な っ て い る。 こ れ は 上 述 の 意 味 で の ソ連 経 済 の 過 渡 期 岨4)にお け る,「 ソ ヴ ェ ト方 式 」 の 相 対 化 を 意 味 す る も の で は な い だ ろ うか 。 、 ./ 43)皿 ・Dobb,PolaticalEconomyandCapitalism・1937・ 3五年,260ペ 44)な お,分 、岡 稔訳 「政 治 経 済 学 と資 本 主 義 」 昭 和 ージ 。 権 的 計 画 化 に 関 す る ド ッ ブ の コ メ ン トは,M,Dobl),「`SocialismandtheMarket「', MonthlyReview,Sept.1965.に ブ の 立 場 は,註43)に 平 易 に 述 べ ら れ て い る 。C,Bettelheimと お け る 立 場 と 対 照 的 で あ る。 の 論 争};お け る ドッ