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美幌高校(PDF 181KB)
「 専 門 高 校 Power Upプ ロ ジ ェ ク ト 」 推 進 事 業 生徒研究成果発表会提出資料 発表テーマ 環境を意識した家畜糞尿の適正な処理方法と資源としての可能性の追求 学校名 北海道美幌高等学校 1 3年間の取組内容 (1) 活動のねらい 北海道の畜産では、経営が大規模化したことによる家畜頭数の増加に伴う糞尿の処理が問 題となっている。野積みとなった堆肥から汚水が流出し、河川を汚染するという環境破壊が 社会的な問題にもなった。そのため平成16年に「家畜排せつ物法」が全面適用され環境に 配慮した畜産経営が求められるようになった。このことから、堆肥舎及び尿溜めなどの設置 が義務付けられた。しかし、堆肥は畑に利用しているが、尿やそこから出る汚水はあまり利 用されていないのが現状である。また、堆肥舎から堆肥が溢れ、尿が排水などに流れている 農家もあり、糞尿の適正な処理と有効利用が問題になっている。 そこで、本校では資源循環バイオ実験室を活用して尿を適正に処理し、その有効活用を目 指すことで、環境に負荷をかけない環境保全型農業に取り組むこととした。 (2) 活動内容 ア 一年目の取り組み (ア) 圃場における活用 資源循環バイオ実験室で処理された処理液(これ以降、親水と呼ぶ)の圃場での実用 化を目指して、親水の土壌散布による効果について検証を行った。実験概要は、供試作 物としてビートを用いて、試験区は化学肥料、親水+米ぬか、親水、無肥料の4試験区 とした。この実験から、地上部、地下部の生育には肥料成分が必要不可欠であったが、 糖度の上昇には親水のみの散布でも効果があることが分かった。 (イ) 分解能力を活用した実験 資源循環の一環として農場残渣の処理を視野に入れ固体分解実験を行った。資源循環 バイオ実験室の処理システムを応用して350Lタンクで処理装置を2基製造した。処 理装置は上段に御影石、下段に軽石と散気管を設置し、ミニコンテナ2段構造とした。 実験サンプルとして、緑化ジャガイモ(ペーストにする)と米ぬかを用いた。試験区は、 親水処理区と水処理区の2試験区とした。この実験から、親水処理区で好気性微生物の 働きにより実験サンプルの分解が促進されることが分かった。 (ウ) 糞尿処理施設の視察 糞尿の処理と有効利用の可能性を求めて、地域の酪農家を訪れた。佐呂間町にある源 藤牧場では堆肥の固液分離を十分に行い、良質な堆肥を製造していた。町内の農家にも そのシステムが普及していた(9月12日)。別海にある森高牧場では、処理した糞尿 を堆肥に散布することで、堆肥の発酵を促進していた(9月26日)。 (エ) 処理システムの確立 (株)微創水研究舎の指導のもと、糞尿処理システムを確立した。そのシステムで実 験室を稼働させたことで、一昨年に比べランニングコストを大幅に削減できた。 イ 二年目の取り組み (ア) 農場残渣処理施設の製造 本校は敷地面積47ヘクタールと広大な土地がある。そこから出る、野菜や作物の収 穫後の残渣、芝生の残渣などは数10トンになる。これらを堆肥化し資源として有効利 用することで、環境にやさしい資源循環型農業が展開できる。そこで、親水の分解能力 を利用し農場残渣を堆肥化することに着目し、堆肥製造部と汚水貯留部で構成される大 規模な処理システムを(株)微創水研究舎のアドバイスを受け製造した。 (イ) 農場残渣堆肥の製造 (株)微創水研究舎の指導のもと、農場残渣堆肥の製造を11月18日に実施した。 堆肥原料として農場残渣のキャベツやハクサイといった葉菜類と規格外のニンジン、ダ イコンなどの根菜類を計5トン、牛糞10トン、親水を800L準備した。製造方法は マニュアスプレッダにタイヤショベルで残渣と牛糞を1対2の割合で積み親水を散布し た。その後撹拌しながら堆積させた。製造した堆肥は、分解効率を良くするためにビニ ールシートを掛け堆積した。 (エ) 普及活動 普及活動として、5年間の研究成果を1冊の報告書にまとめて、研究活動でお世話に なっいる町内で農業を営む高橋氏に報告した。 ウ 三年目の取り組み (ア) 農場残渣堆肥の製造 昨年から堆積していた堆肥をタイヤショベルとマニュアスプレッダを使って2回切り 返した。仕上がった堆肥を土ふるいにかけ、貝殻等を取り除ききれいな状態に仕上げた。 (イ) 堆肥の土壌分析 東京農業大学の中丸教授を訪れ、でき上がった堆肥を分析していただいた。 (ウ) パネルの設置(掲示教育) 本校における、資源循環型農業の仕組みと農場残渣処理施設の概要を4枚のパネルに まとめ設置した。1枚のパネルは縦90cm×横90cmの大きさとした。 (エ) 普及活動 インターネットのホームページに2年間の取り組みを掲載した。3年間の取り組みを 新聞に取り上げていただき、多くの方々に情報発信ができた。 (3) 活動時期 科目実施日(課題研究) 平成21年4月~平成24年3月 (4) 活動場所 本校資源循環バイオ実験室、圃場、地域の酪農家、東京農業大学 (5) 活動人数 農業科学科3年生11人 農業科学科2年生12人 生活科学科3年生 6人 生活科学科2年生 4人 2 上記取組内容に対する○成果と●課題 (1) 親水の効果について ○親水の効果を確認することができ、今後の有効活用や資源循環型農業への道筋を作ること ができた。 ●地域の農家に普及し、農業経営に反映させる必要がある。 (2) 農場残渣処理施設について ○大規模な処理施設を設置することができ、親水を使った堆肥作りを行うことができた。こ のことで、良質な堆肥を製造することができ、地域農業のモデルとなった。 ●様々な残渣を利用して、1年間をとおして堆肥製造を行う必要がある。 (3) 普及活動について ○ホームページや報道での情報発信をすることができた。 ●地元の普及所や農家に対する普及活動が少なかった。 3 次年度以降の各校の取組方針など 今年度は堆肥の固液分離機が導入され廃液が以前より多く排出されるようになった。したが って、定期的に家畜の糞尿を処理し、農作物等への積極的な利用を試みていきたい。また、農 場残渣処理装置で良質な堆肥を多く製造し、畑に還元していきたい。資源循環型農業について、 製造した施設等を活用し、自営者に広めていきたい。