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図画工作料の評価における一考察 〝一・〝ー般に教育と

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図画工作料の評価における一考察 〝一・〝ー般に教育と
図画工作科の評価における一考察
兵庫教育大学大学院・芸術系大橋圭介
1.はじめに
-一般に教育とは、入間が入間によって価頒あるものとして成長し、実現して
いくことを昌的とした社会的機能であると言われているO特に学校教育におい
ては、人格の全面的な発達を目指した教育の目標や内容を持ってその活動を展
そしてこの教育活動は絶えず反省され、検討されながらよりよい
賭していく。
'-Vノ;ナ∴. ・f';/-:jhko:;:で・そ∴∴.
二rliき蝣-:.
V. -'1沌;再さ一一、ここ.
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く教育評価の位置づけの重要性は誰もが認めるところであるO樋PI)はr教育
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v::;'iy-^Jf-U.
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瑚き
かけや環境の諸条件などを、教育の目的に照らして価値判断することであり、
これによって教育効果一.,9向上を図るところにそのEj鏡がある」としているc数
:v」--:? 一::l与,・7*・'二:,盤上て.
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、ここ
のて'蝣*・r
それにもかかわらず、「評
評価の研究は、これまでに様々重ねられてきた。
価の灘定は出来るのか」といった指摘に代表されるように、美術教育において
はしこ∴言こ. '・-*上7if∴>''*王∴-:<iた葦、・J:・事ここ:"*JJノノこ,iVi¥-が耳糾
的に測定しやすいのに対し、清音的側面や創道性、備性など法評価,jD基準その
ものが智難を伴うからであろう。
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・fjご.
子どもの主体性や創造性の心的過程を捉える
:j'」''・・1iit-'.? r>-∴! 、::よこして,".
-:ff-.:ナ、
評価するには多くの問題が残されていると言えよう,J
ところで図画工作科の巨額を見てみると、創造的な活動、表現の喜び、情操
の3つのねらいから構成されている2)1
この中に接仁一-・人ひとりの子どもの思
、'I、特vI_:、三、-,-こ・k. 員j'':,T亘視三苦れ.
葦fi'・蝣瑞弓に・>. 蝣'蝣"--一一㌦y:・.
_,二
:r.
.
自己<7)璃憾観に基づいた学習の展開が出来ることを求められている射。
.
このような中で、「どのように評価するのか」よりも評価の意味について、
今一度その意味を考えることが必要ではないだろうかG
本稿は、これらのことをふまえ、図画工作科の評価の現況やあり方について
考察したものであるI3
-38-
2.図画工作科における評価の現況
2.1図画工作科における評価の理想と環実
S蝣*・S蝣蝣''>S>こ∴lTこ・・.
・、、ては、これまでに.
:.!i.Y」S\*!
?さ∴')も、,ヾ三・*-!
・Jil叫.
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・・・・コ・!
t-'->蝣'、''*'''{:.
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言:∴・'U・*・蝣、-て∴てきて.
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、‥T(-
、二・;;*v・・"^こ∴豆'・揺・'tV-i-^*r.
二F主席されを、まま十三か与・.
と現実に分けて整理すると義 ri,のようになろう。
葬1図画工作科における評価の理想と現実の主な例
那m>%而
「評価」の捉え方
絵師的評価
(授業的)
W・価の理想における主な例
秤価 の 現 実 にお け る主 な 例
〇日襟に即した学習の流れにそった指呼■に 生 き る W -価
O .栄-に 作 品 評 価 を 朽 し が ち で あ る
蔓と 指 導 者 の 思
○子どものレディネスや生活な
いやねらいから母材や材料選定をし : り 、 授 業 計 画
○珍 軒 的 評価 は しない
○指 導 者 の思 い や都 合
を立てる
(子どもの把掘)
胃WfH腔缶㌢い
KJfoE駈M息屈にusm
栄
・造形的な体.
・衣現抜穂
守
心事
・子どもの日常生活における興味、
など
形成的評価
(授業過程)
具体 的 な例 と
○指導と一体化した形成的評価をする
しては桐別や集渦への対応、 Eな ど の 改 善 に
=フ ィ ー ドバ ツ
EE*ifc4its!
引eess旧mw.
クする
(染料収集)
・自己評価カード-の記録
・作品
・教師観無カードなど
○ 形 成 的 W l価 は し な い
○ 自由放 任 主 義
子 ど もの 自主性 に任 せ 、具 体的 な 指
は しな い
○ 技術 主 義 、作 品主義
作 品 の 出 来 具 合 い や 善 し 感 しの 判 噺
進行 を促 す
総括的評価
(授業後)
和白E3E4iヒ習 傾 向 や 間 瀬
〇日襟の達成状況を把掘し
点を明確にする
○ 作 uu '7'優 井 の 打
○ 学 習 へ の フ ィ ー ドバ ッ ク を し な い
○個別、集団的な評価の無卿こより
と
業 方 溝 の 改 .善
に役立てる
○総括W・価の種類
wmm銅旧斤
・短期的な総括評価
学期束や学年:I兼 で の 評 価
・F{耶的^tSfS打価*学習不適応の解消の一再で は短脚的な
:総 括 評 価 か ら
の指導-のフィードバックが大き
OSEfca
自己評価カード-の記録
作品
教師観無カードなど
作 品の 表 面 的
謂raGM&iii」3如mmm旧HHS
な結果の評価に終わらない
○作品の造形的な特色を理解する
○教師自身が自己の軒価力を充実させ,
〇分折的評価を行う
・文車記述による評定尺度法
一
法
記述評定尺度法、チェックリス
市準的な作品をもとにした
:法
-39-
○作 品 を 感覚 的 、印象 的 に評 価 を す る
○教 師 の 価値 観 や 好み で作 品 を評 価す
'¥づ'W二言「<?
'V'.. 、t-、丁は、_寵蝣:V∴. :て・.
"'.. 、て主*J',' *豆き・:こげた::)ミ
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た現実については、実際に現場で行われがちだと思われる主な評価の仕方につ
いて挙げたO
この裏を見てみると、理想では指導に生かせる評価を目指しているのに対し、
oU*がiliら一詛・'蝣:こ・. :・t、・駁・・ほIvて・「;二:.
華に
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よ蝣*:*:‥てL.
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おける学習の成果が作品に重ぎを置いて捉えられていること、二つには作品が
,%として残るだけに、指導においても評価においても優劣がつけやすいことが
考えられるC
この件品評価重視の傾向は美締教育史における評価の変遷でもうかがうこと
が出来る08)9}。
明治時代の「鉛筆画境」「新定画犠」などの国定教科書が出された境では、
授業の基本は「物ノ形相ヲ正確二描写スルコトヲ離蔓トナス」であり、評価の
基準は教科書の絵を正確に写す模写技柿であったaまた1919年に起こった自由
画教育運動はその精神を「子どもは素晴らしい創造力を持っていること,自然
の中で自由にそれを産み出させること、模写をもって成績とせず、乱造をもっ
て成績とすること、など」としながらも、その評価基準は指導者の作品に対す
*蝣*-**もて義一
r,芸'・蝣:STLlユ・1想貢献:二.
従ってこれらの評価の多くは、教師の勘に頼ったものであり、子どもの学習
また1932年
全体を通した評価というよりも作品の巧拙の評価が大半であった。
には「図画成績考査用尺度」が出されたが、これもまた作品を通した鑑賞力に
関わる評価であった0
1947年、教育基本法が公布され、学習指導要額の試案が出されたoこの串で
評価についてもふれ、その呂的(教材の目的や指導法が適切であったかの吟味)
や方法(知識、技能、鑑賞、態度の考査方法など)について述べられているo
Lかし咋tin証fiUiと_て・V!
,L鯨か、、記述尺度法を」げ'J:つ蝣>・*,.
々∴三三
r・て-'f.
・'・/;.
観によって評定されるもので、客観的な基準は決まっていない」と評価するこ
との難しさと客観性の弱さとを指摘しているOこれ以降、指導要理が出される
に. 評価、JU;法が詳しく・^'.
/,r,二蝣->->.
∴計莞こ÷:・-. T.・-*-・:・*;<蝣Lが昌指されて、、・.
た、
特に1980年度では、学習指導要嶺に伴う指導要録に「観点別学習状況評価」が
示され、指導事項の分析的な考え方が取り上げられた。
また評価の指導へのフ
ィードバックが言われるようになっていったQしかし、10数年縫って新たに指
導要頚が出された今日でも、情意的側面が重視される率で、依然として棒品評
-40-
価はその中心を占めていると言えよう。
以上のように見てみると、作品の質の評価が最も優先され、作品の出来映え
がその指導のよさにも通ずる評価となっている。
しかし次に述べるように、こ
れでは指導と評価が十分に一体化するまでには到っていないと言えるのである,0
2.2作品評価偏重の要図
評価が主に作品に偏重していることを反省する立場から見れば、次のことが
挙げれられよう。
第一に、評価のための評価ではなかったか、という点であるO評価は測定、
評定、評価の3つに分けられる10)。
これまでの図画工作の評価を振り返ると、
評価と言いながらも、評定を主とした目的の作品評価で終始してきたように思
われるo端≠伽こ言えば、通信簿や指導要録などの成績記録のためである。
これ
に蘭して梶田11)は、わが寓は評価拒否と成績重視の社会・文化的構造であると
している。 例えば、通信簿や指導要録はタテマエは「親との対話」や「指導過
程と子どもの発達過程の記録」であるが、現実は「定期的成績証明書」「成績
証明の原簿」であるだけと言ってよい、というのである。
また、教育の現実を
検討すると、一貫して浮かび上がってくるのは、評価することによって何もの
かを有効適切にしていく評価本来の嶺姥の弱きと、成績が占めている位置の大
きさである、と言っている。
このことは図画工作の評価においても否定は出来
ない。作品の出来映えは即、評定=成績となってその子に返るのである。
も評価自体が、作品やその子の遣形活動の印象で評定きれたり、指導者の勘や
好みによって優劣や選別が行われたりしていることも事案であるG
第二には、一般に指導と評価は一体と言われているものの、作品主義、技術
主義中心の指導や作品の善し慈しだけを評価の対象としてきた傾向が現場には
根強く残っていることである。
このことは展覧会-の出品を意識して見栄えの
よい作品を作らせたいこと、また教師-の評価が子どもの作品の優劣や展覧会
にどれだけ入選、入賞させたかなどの指導性に現場では重きが置かれているこ
とも一国していると言えよう。
評価のための評価や評定となっていることが現在での多くの業態でもあるG
教師も子どもも、「よい作品」を目指すことは自然な姿であるOしかし重要な
また「子どもらしい作品j「子ど
ことは、その基準をどこに置くかであろう。
もの生活が表れている作品」などと展覧会の審査評でよく言われるが、それを
取り上げる審査員にはわかっていても、現場の教師が理解していない限り、指
-41-
しか
導や評価に生かすことができないのであるOここで美術教育の本来の姿を認め
ることは困難であるO学習の結果だけの評価指向では指導不在の教育となろう。
2.3図画工作科における評価の検討
ここで、二人の子どもの実際の表現の姿を見ていきたいe
図1は、4年生を対象として、同一題材「つるす飾り」を同一の条件(風で回
ること、紙1枚から作ること)のもとで3度作らせていった実践である12)主
な学習の日額は、回ることに粥心を持ってイメージを広げながら、紙の変形を
工夫してつるす飾りを作ることが出来る、であるo
子どものそれぞれの作品及び学習ノートの記述内容を見てみると、次数を経
る毎に変化していることが分かるO以下、それぞれの観点から見ていくo
O件品から
A、Bともに形態(イメージの広がり、形の美しさ、細かさ、など)や機能
性(回ること)など作品の構成要素の点で見ていくと、次数を追う毎に深化し
ていくことが認められたoLかしその深化の仕方は違うoA児の場合、第1次で
は基本形となっている軸に切って曲げるなどの単鶴な飾りを加えるだけであるO
第2次では、カールや円錐形など部分的な飾りを工夫し、軸への秩序ある取り付
また形の美しきは第1次よりも感じられるO第3次ではこれらの
けをしている。
工夫に加えて,飾り全体のバランスが増し、美しきもさらに感じられる。
の場合、第1次では飾りの軸そのものよりも、軸に何本もの細い紙を立体的な広
がりを持たせて取り付けている。
第2次ではこのイメージをもとに、よりよく回
るための風受けの四角形を軸に取り付けるなど部分的な飾りが増え、作品とし
ての魅力が出てきたと言えるO第3次では四角柱の軸にカールした紙を巻き付け
たり、細かく折り曲げた部分などを加えたりして飾り全体の面白さを義してい
ると言えよう。
このようにそれぞれの作品を見ていくと、A児の場合は結果と
して形の美しきの追求が見られ、B児の場合は形の面白きへの変化が見られよ
う。
○記述内容から
それぞれの学習ノートの記述内容を見てみると、様々な視点を持ち'ながら自
己の造形を展開していった様子を知ることが出来る。
A児の場合こ第1次ではき
れいさや回ることの機能性への観点を持ち、第2次ではこのきれいざが形や機能
性に粥わって具体的になり、第3次ではよりよい作品作りを求めた視点へと移っ
ている。 B児の場合、第1次ではきれいさや機能性の観点、第2次では具体的な
-42-
B児
I--ー芋富ゥiscテIu、
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XBS血,′
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き才いに緯illを作t:二、
きれい亡こ亘る
面白」・横にレた′一1
学習て六一一い1テ、`E
畦か増とcEく選る
B児の場合
第1次
第2次
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smm貞玩m^m相賀、
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享く:盟_.
丈夫な作品
・.
にL,たvM
ー手管て''J-s-'-fiい一、
-ノ,ヽー′′
・-*-きい方,3、きれV*
第3次
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卓.こき.
_I.,・与r、.
L、';>*
監sm^m岩国
出束たら図りヤ;すいS_'
*=・'う
・*蝣<,'.
三」'蝣う、f:二、_
せKTcく'はさみを覆う
二幸で弾きタよ=-、{_
も積着か葺tJ二tB菜る
芋古蝣蝣fc.
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風受けをOtfたり鈴
m凹EサJkw検wm
芝醤`こ_
-」_・ブ、へ
風受けを少しでt,・つけ
''_・<3*、三.
志
X>--"'
蝣3.
図1第4学年「風で回る飾り」作品例
9KB
く宰習ir)絶・あてう
亘るように風受け
・よ、=、.
- --*ミ
蝣*.
・亘る時{"(,5ういうな芹f
に見えるよデここ控-i
たちかしないよ、ラな
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%
才芸いてなtf>-:>.
ir:亘'.
-*V、た
作品作りに関わる視点、そして第3次ではよりよく回ることの機能性や個性的な
作品摩りの視点へと移っているoこれらの記述からは.
学習の初めの段醇では
漠然としているものの、学習が進むにつれて具体的になっていくことがうかが
えるOまた、回ることの機能性から飾りの美しきや面白さ、儲性的などよりよ
い作品作りへと視点が移っていき、作品にもそれが表れていることが認められ
る. I.
0教師観察から
本題材は運動会の入退場門の飾りとして使っていくことが前提となっているO
そのためチビもたちは「まわれまわれ、みんなの心」のテーマのもとで、それ
ぞれの思いを持って作っていったoここでは具体的な例は出せないが、はめる、
励ますなど、慎重にその子に応じた言葉がけをしていったOこの中で、次のよ
うな学習の姿が見られた。
作品作りに取り、組んでいない子どもは意欲がないのではなく、作品のイメー
ジ作りに浸って←、る時であり、逆に、取り組んではいるものの作品作りに投入
していない場合があること。
また相互鑑賞の場で、発表しない子どもでもしっ
また制作中の子どもの
かりと考えている場合があるし、逆の場合もあること。
こだわりがその子の遣形への意欲に関わっていること。
以上のように見ていくと子どもの姿が立体的に捉えられる。
即ち、作品評価
を記述内容とともに分析的に見ていくと、感覚的、印象的な評価よりもその子
なりの造形展開の仕方があり、深化があることに気づくQ子どもは、学習の初
めの段階から遣形的な要素のすべてを盛り込んだ素晴らしい作品を作るのでは
なく、一つずつ自己の作品作りにおける課題を解決しながら深化させていくの
例えば第1次の
であるQまた作品を継続的に見ていくことが重要だと言えよう。
作品を比べると、見た酎こはA児の作品よりもB児の作品に惹かれる。
が第3次のA児の作品は、B児の作品にひけをとらないほど魅力が出てくるO両
者ともに高まりのある表現の可能性を持っているのである。
これらのことは図画工作科の評価のあり方を問うことにもつながろうo即ち、
記述内容に見られる視点を知らずして、教師の勝手な感覚で子どもの作品作り
へ関わってはズレが生じてしまい、また作品の部分的、断片的な評価では、不
確実で誤った判断をしてしまうということである。
その子の表現への思いを諌
め、その子の表現の可能性を切り拓いていけるような評価を教師は求めていく
ことが必要ではないだろうか。
ここに指導と評価の意味ある一体化があるよう
-44-
ところ
に思える。 このことが結局は、教師にとっても意味ある評価活動となろう。
2.4だれのための評価か、何のための評価か
ここで、だれのための評価、何の為の評価であるのか、ということについて
整理したいO
だれのための評価であるのかoそれは一言で言えば、子どもと教師にとって
の評価であろうo
子どもにとっての評価とは、子どもにとって意味ある評価でなければならな
い。作品完成後の教師からの一方的な評価で終わってしまうだけならば、その
意味は薄い。
資料ではない。
子どもの学習内容の獲得の度合いや作品評価の判別のためだけの
そして、作品の上手下手、善し惑しのもとでの評価や指導は、
自己の造形活動に投入しようとする子どもにとっては意味をなさないO本来、
子どもが連続、継続させ、発展させていく学習の過程や節目において、目横の
達成に導いていく指導の手がかりとして評価を機能させていくことが大切であ
ろう。それが、表現の主体者であるその子を尊重した支援となり、結局はその
子にとっての生きた学習内容の獲得につながってくると考える。
ここに「何のための評価か」が浮き出してこようし、ここから「何を評価す
るのか」という具体的な目的の必然性が出てくるOこれまでの反省に立てば、
ここでの指導者の姿勢が「図画工作科で目指す子ども像」不在で、漠然として
このような評価で
いるだけに、作品評価に陥っていたきらいがあると言える。
は子どもの遣形活動において機能しないばかりか、子ども自身、自己の遣形の
追求過程よりも結束としての作品にだけ目を向けがちとなる。
そして指導者の
満足する作品作りが遣形活動の目的となり、結局、指導者の作品評価がその手
の可能性のある造形活動を阻害することにもなる。
ここに「指導者が変われば
評価が変わる」13)といった指導者の主観に左右されるといった現象となるので
あるO評価は出来るだけ客観的になされなくてはならないOしかし、評価の目
的や対象、観点などが具体的な姿としそ捉えられていなければ、たとえ信感度
の高い作品評価が出来てもも、子どもにとっても指導者にとっても評価本来の
意味がなさなくなってくると言えようO.
ここに指導と評価の目標、基準が表裏一体となる重要性が隠れていると言え
よう。指導者にとっても子どもにとっても、生きた評価を日揮きない限り、こ
れまでの指導者の主観による芸術的、美的観点を重視した作品評価から脱皮す
ることは困難であろうo
-45-
近年、「子どもの側に立つ」14)図画工作の授業の展開が言われているO先の
評価観の転換を真に受け止めない限り、指導者の都合に合わせただけの授業の
また「子どもが号の子なりに一生懸命に作
展開となり、評価となるであろう。
った作品を評価することは出来ない」といった「努力万能主義」15)の立場では
何等解決出来ないのである。
3.これからの図画工作科における評価への姿勢
評価の手順は、目標の改定から始まって評価の範囲、尺度の設定実施方法な
どを経ることになる16)しかし、教育は子どもや学習場面を評価することでは
ない。人間の形成に関わる図画工作科の担う側面から捉えることも忘れてはなL
らない。 即ちその子なりの個性を発揮し、創造的な表現が出来、豊かな人間性
図画工作では美術家を育てるのではなく、図画工作の学習
を養うことである。
を通して人間形成していくのであるoここに作品だけに目を向けた評価の落と
し穴があると言えよう。
しかし現場では、作品の質の如何だけに関心が高いこ
とも事実であるO
ところで西野17)は「造形的な表現や鑑賞活動を楽しみ続け、その喜びを味わ
わせるようにするとともに創造感覚など豊かな人間感覚を高めるようにする必
要がある」と表現の楽しさの過程を中核に置いているOこのことは「従来の学
力観が獲得された知識や技能の量が問題にされやすかったのに対し、新しい学
力観では主体的、創造的に生きていくために必要な資質や能力、すなわち意欲
や態度、思考力や判断力、表現力などが学力の中心」をなし、また「知識・、理
解は主体的な学習活動によって自分らしさを発揮しながら、自ら獲得するもの
であり、自己実現に生かしていく」といった学習の過程の重視や子どもの慨に
立った教育を指すことでもある18)評価のあり方も当然、子どもの噺に立って
検討されなければならないOこのことがよりよい図画工作科の方向を求めた指
導と評価の一体となっていくと言えよう。
以上のように、人間形成としての図画工作科の役割、図画工作科の学習で大
切にあたためていきたいこと、そして学力観などを見抱えた立場で学習の姿を
捉えることが重要であろう。
このことは教師の哲学ともなってこなければなら
ない。なぜなら目指す子ども嶺、指導や評価などの姿勢は、現場の教師によっ
て決定されるからである。
近年、「00方式」「00方法」などといった指導法に閑した様々な実践者
-46-
が出版されてきた。
また新指導要領が改訂される度に、その具体的な実虜事例
集も多く出版されてきている。
その中で部分的に評価の方法についても普及さ
れている。 教師は、子どもたちには個性や創造性を求める一方、自らはこれら
の「ハウツーもの」に頼りがちであるo指導と評価が一体となっていることは,
理解されても、某にそれをどれだけ受けとめられるのか疑問であるO日々の実
践の中で、子どもの学習を探り自らの問題として評価のあり方を問うていきた
い。
参考・引用文献
1)樋口敏生地縞「図画工作科学習の静断と指導1・2年」明治図書、p.
5、1981
2)西野範夫薯r改訂小学校学習指導要償の展開図画工作科縮」明治図書、
PP. 33-36、1989
3)前掲香、p. 15
4)石原英雄編著「達成日裸を明確にした図画工作科授業改造入門」明治図書、
229-230、1984
pp.
5)相田盛二著「図画工作の評価」三晃書房、PP.
6)前掲書、pp.
10-11、p.
49-64、1986
40、
7)中村亨編著「日本美術教育の変遷」日本文教出版社、pp.
78-348、1978
8)林健道、西光寺亨編著「基礎的・基本的事項の習得と発展」ぎょうせい、
447-460、1980
pp.
9)相田盛二着「図画工作の評価」三晃書房、pp.
33-36、P.
39,1986
12、1986
10)相田盛二著r図画工作の評価」三晃書房、p.
11)梶田叡-著「教育における評価の理論」金子書房、P.
19.1、1975
12)小坂茂、大橋圭介著「友だちから学ぶための鑑賞カードを組み込んだ遣形活
60-64、1985
動の深化」兵庫教育大学附属校園研究紀要第4集、PP.
13)石原英雄締着「達成日額を明確にした図画工作科授業改造入門」明治図書、
227、1984
P.
14)新井哲夫薯「新しい教育観に立つ年間指導計画作成の視点」教育美術No.
2、財団法人教育美術振興会、pp.
32-33、1991
189、1975
15)梶田叡-著「教育における評価の理論」金子書房、P.
18)相田盛二着「図画工作の評価」三晃書房、P.
14、1986
17)西野範夫薯「改訂小学校学習指導要苛の展開図画工作科縞」明治図書、
p-15、1989
18)新井哲夫著「新しい教育観に立つ年間指導計画作成の視点」教育美術
592、pp. 32-33、1991
棉.
-47-
59
Fly UP