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文学教材学習指導における発問の類型と構成
三浦, 和尚
愛媛大学教育学部紀要. 第I部, 教育科学. vol.41, no.1, p.8998
1994-09-30
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/2533
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愛媛大学教育学部紀要 教育科学 第41巻 第1号 89∼98 1994
文学教材学習指導における発問の類型と構成
三 浦 和 尚
(国語科教育研究室)
(平成6年4月28日受理)
は じ め に
教材研究という言葉は広義に,学習者の把握・教材の分析・指導法の工夫といった,授業の
構想から実践の直前までの教師の準備という意味でとらえられる。しかし,読解学習指導のた
めの実際の教材研究は,文章そのものの分析と,それに基づく発問計画の作成がその中心とな
っている。特に高等学校レベルにおいてはその傾向が著しい。
本稿では,文学教材学習指導における指導法としての発間について,その具体的た姿を類型
として提示し,授業の展開に位置付けてみたい。さらに,実際の授業を構成するために,どの
ようた文章分析からどのように発間計画が作られるのか,その過程を具体的に示し,考察する
こととする。そのことによって,文学教材を文学として読み深めるための方法の,ひとつのパ
ターンを示すことができるのではたいかと考えるからである。
ただし,この考察は,発間中心の授業をさらに深みのあるものにするための,あるいは文学
作品と学習者の主体をつたいでいくための,ひとつの方法的整備であり,現在の国語科教育が
すでに発問中心,教師主導の学習観を乗り越えつつあることはお断りしておかねばたらたい。
I 国語科学習指導における読みの層
国語科の読解の学習過程は,さまざまな方式が考えられ実践されてはいるものの,基本的に
は通読一精読・味読の三段階(三層)を経るr三読法」が主流である。
通読段階では,文章を一通り読み通すこと(素読),難解た語句について一般的な意味を理
解すること(註解),全文の主題・事象・情緒がおおまかにとらえられること(文章の直観)
が要求される。とにかく一通り読んで,一応意味が分かり,こんたことが書いてあるんだたと
漠然と理解するという段階である。したがって,ここで言う主題をとらえるという作業は,あ
くまでも仮定的た予見に過ぎたい。
精読段階では,主題の決定,事象の精査と統一,解釈的構想作用,形式による自証が行われ
る。文章を詳しく読んで,全体像をとらえ,主題を文章に則して証明するという段階であり,
読みの中心的た作業である。
味読段階では,朗読・感想発表だとの形で文章全体を味わう。読者として作品のすばらしさ
を確認していく作業である。
しかし,国語科学習指導の現状では,通読段階の素読・註解(音読・意味調べなど)は行わ
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三 浦 和 尚
れても,文章の直観にはあまり踏み込まだい傾向がある。そのため,そこで行われるべき主題
の予見が無自覚的になって,精読段階における検証につたがらず,学習の主体性が失われがち
になっている。さらに,味読の方法として感想文の記述や朗読といった以外の方法が考えられ
ず,いきおい単調になって,味読段階がおろそかにたっているという現状もあり,三読法は主
流といいたがらも,その本来の理念が具現化されているかどうかは疑わしい実態である。
ところで,文学的文章の読解過程を層として考えた場合,次のようにその層をとらえること
は可能であろう。
①文字・語句を読む一文字が読め,語句の一般的た意味がとらえられる。
②文章を読む 文脈上の意味か分かり,そこに描かれた事象がとらえられる。
③作者を読む一作品の主題や作品の背後にある思想がとらえられる。
④読者(自身)を読む 自己とのかかわりにおいて作品がとらえられる。(作品世界を通し
て自己を発見する)
これらは当然①∼④の順序で時問的に明確に区別される層として存在するのではない。語句
の意味が完全に分からたいと作品の主題について見当もつかないといったものではなく,少々
不明な言葉があっても大意はつかんでいることが多いように,実態としては渾然とした形で現
れる。
しかし,授業の構成や発間を考えるとき,こういった層を念頭に置くことは無意味ではない。
読みが①の層から始まって最終的に④の層に至ることでひとまずの完成を見ると考えれば,た
とえば漢字の読み方,語句の意味を問う発問は①の層に相当し,感想文を書く学習過程は④の
層に相当する。それぞれの層に対応する学習過程や発問が計画されねばたらず,そういう視点
で発問を分類することも可能である。
一般に女学教材の場合,語句的抵抗が論理的文章に比べて少なく,③作者を読む・④読者を
読むといった層にかかわる発問の工夫が欠きた問題となるし,そこに時間を割きがちとたる。
論理的文章の指導においてその層をおろそかにしてよいというのではないが,文学的文章の指
導においては,授業の中心,あるいは最終段階がそこに置かれるということである。
さらにいえば,文学を主体的にとらえていく,自己の問題としてとらえていく,文学の楽し
さを味わうといった,文学の学習のあるべき姿を想定したとき,最終的に③作者を読む1④読
者を読むといった層に踏み込む発間が必要になってくることは言うまでもたい。そういう層に
踏み込むに至る過程を,発問の構成という観点から見直すことは,実際の授業準備としての教
材研究の労を軽減することになろう。
皿 国語科学習指導における発問の類型
発間の分類は教育方法学の立場からもさまざまな形で行われ,外国の研究に負うところも多
い現状である。文学教材の指導における発問は,知識を間う発問よりも思考・認識の深化・拡
充をはかる発問に重きが置かれる点で,知識を前提とする授業の一般的な発問とは多少異質た
傾向を持つ。
野池潤家は,発問の一般類型を次のように分類している。・(注1)
発問の目的によって一試験発問・練習発問・発展発間
発問の内容の対象によって 記憶(事実)発問 思考(問題)発問
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文学教材学習指導における発間の類型と構成
学習の準備される時期によって一予定発問・即時発問
学習指導過程の文節化に応じて一導入発問法・展開発問法・終結発問法
文学教材の学習指導において問題とたるのは,「学習者各自の理解力・思考力を誘発して,
学習を発展させるため」の発展発問,教材研究の中心となる予定発問,そしてそういった発問
をどのように指導過程に沿って構成していくかという点で導入発問法・展開発間法・終結発問
法ということにたろう。
井上尚美は,『言語論理教育への道』(注2〕の中で,ブルームだとの諸外国の研究を紹介した
後,次のように国語科の発問を分類している。
私は,<中略>国語科の,とくに読みに関する発問として,次の三段階に大きく分ける
のが有効だと考えています。
1,知識に関する発間(情報収集に関することがら)一・・認知,記憶
2,解釈に関する発間(基本的事項の理解と,それの応用)…分析一統合,収束一拡散
3,評価・批判に関する発問(一定の基準から妥当性・真偽を判断すること。鑑賞も含
む)……評価
こうして三段階に分ける根拠として,文章の読解には大きく分けると次の三つの過程が
考えられるということがあります。
1,叙述面の理解(字づら読み)
いつ,どこ,だれ,たに,など
2,解釈(解釈読み)
関係づけ,分析・統合
3,批判,評価,鑑賞(批判読み).
この三段階をそのまま読みの指導に持ち込んだのが,通読・精読・味読という石山式三
説法といえましょう。
井上尚美は基本的に解釈学的三読法によりつつ,この三段階に対応する発問の型を,この後,
①知識,情報収集に関する発間,②解釈(理解,応用,分析,統合)に関する発問,③評価,
批判,鑑賞に関する発問,のように分類した上で,それぞれ発問の例を示している。これは,
読解(説明的文章・文学的文章)指導における発問を流れとしてみようとしたとき,極めて有
効な分類であると考えられる。
皿 文学教材学習指導における発問の実際
ここでは文学教材学習指導における具体的な発間について,三読法に基づく井上の分類を基
本的た流れとし,一般的た授業展開である導入,展開,終結という流れと,発問のねらいを加
味した分類を試み,それを話形の形で例示することとする。
さらに,それぞれの話形の後に,先に述べた①文字・語句を読む,②文章を読む,③作者を
読む,④読者を読むという層を示しておく。それぞれの層が授業展開の中で繰り返されて読み
が進むことを示すためである。
こうすることにより,通読・精読・味読という読みの層としても,導入・展開・終結という
学習の展開としても,どういった学習場面でどういった趣旨(ねらい)の発間が可能かがとら
えやすくたると考える。
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三 浦 和 尚
1 通読段階の発問
(1)導入
・<作品・作者・話題>について知っていますか。(①)
・題からどんたことを考えますか。(④)
・題から,どんなことが書いてあると予想しますか。(③)
(2)語句
・この言葉は何と読みますか。(①)
・この言葉はどういう意味ですか。(①)
(3)文脈的意味
・この部分は具体的にはどういう意味(こと)ですか。(②)
(4〕粗筋把握
・いつの話ですか。(②)
・どこの話ですか。(②)
・だれが出てきましたか。(②)
・だれがどうしたというのですか。(②)
・主人公はだれですか。(②)
(5〕概括的印象
・一読して,どんなことを感じましたか(考えましたか)。(④)
・一読して,どんなことが(どの場面が)印象に残っていますか。(④)
・一読して,よく分からないところ(疑問に思ったところ)がありますか。(②・④)
・一読して,作者はどんたことを言いたいのだと考えましたか。(③)
2 精読段階の発問
(1)構成
・いくつの場面に分けることができますか。(②)
・二つ(いくつか)に場面を分けるとすれば,どこで分けることができますか。(②)
・AとBの場面が分かれるのはたぜですか。(②)
・AとBの場面は,どんなところが違っていますか。(②)
・この場面は,全体から見てどんた意味がありますか。(③)
(2)文脈
・この言葉はどの言葉にかかりますか。(②)
・この部分を分かりやすく説明するとどうたりますか。(②)
・この部分をまとめて言うとどうなりますか。(②)
・この指示語は具体的にどういうことをさしていますか。(②)
・この会話の言葉はだれの言葉ですか。(②)
・この比倫は,具体的にどういうことを言っていますか。(②)
・この言葉はここではどういう意味で用いられていますか。(②)
・この言葉(部分)と同じ意味で用いられている言葉(部分)はどれですか。(②)
・この言葉(部分)と反対の意味で用いられている言葉(部分)はどれですか。(②)
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文学教材学習指導における発問の類型と構成
・Aと同じ関係にあるものは何ですか。(②)
・’Aと反対の関係にあるものは何ですか。(②)
・AとBはどういう関係にありますか。(②)
・ここでAでたくBという言葉が使われているのはなぜですか。(③)
(3)人物
・この人はここで何をしたのですか。(②)
・この人がここでこういう行動をとったのはなぜですか。(②)
・この人はたぜこういう状態に置かれているのですか。(②)
・こういう行為・しぐさ・表情は具体的にどういう気持ちを表していますか。(②)
・この会話文(物言い)は,とんだ気持ちを表していますか。(②)
・ここでこの人はどんな気持ちですか。(②)
・この人のこういった気持ちを一番よく表しているのはどこですか。(②)
・この人の気持ちがいちばん高ぶっている(沈んでいる)のはどこですか。(②)
・この人の気持ちが大きく変わったのはどこですか。(②)
・ここでのこの人の気持ちは以前とどう変わりましたか。(②)
・この人の気持ちがこのように変わったのはなぜですか。(②)
・ここでこの人がこういう気持ちになったのはなぜですか。(②)
・この人とAという人との気持ちはどう違いますか。(②)
・この人とAという人との気持ちが違っているのはなぜですか。(②)
・この人はどんた人ですか。(思想・性格・容姿・社会的立場だと)(②)
・この人とAという人はどういう関係ですか(どう違いますか)。一(②)
・この人は話し全体(場面)の中でどういう役割を果していますか。(②・③)
・もしこの人がいなかったらどうたっていたと思いますか。(②・③)
・この人の行動・心清についてどう思いますか。(④)
・あたたたら,ここでどうしますか(どう思いますか)(④)
(4)場面・情景
・この場面はどんた様子(時間・場所・雰囲気だと)一ですか。(②)
・この場面にはだれが登場しますか。(②)
・この場面では何が起こりましたか。(②)
・こういうことにたったのはたぜですか。(②)
・もしこういうことが起こらなかったらどうなっていましたか。(②・③)
・この情景の描写はどんた様子を表していますか。(②)
・この情景の描写は何を象徴していますか。(③)
・ここに描かれているものは何を象徴していますか。(③)
(5)表現
・書きぶりで気がついたところ(特徴的なところ)はありませんか。(②)
・書きぶりでうまいと思うところはありませんか。(④)
・こういう心情・状態がどういった書きぶりに表れていますか。(②)
・こういう書きぶりで何を表そうとしていますか。(③)
(6)主題
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三 浦 和 尚
・作者はこの作品でどういったことが言いたかったのですか。(③)
・そういった主題にたどり着いた主た理由はどのようなものですか。(②)
3 味読段階の発問
(1)感想
・どんな感想を持ちましたか。(④)
・初めに感じたことと,どんたに変わりましたか。(④)
・いちばん印象に残っているところはどこですか。(それはたぜですか)(④)
(2)批評・鑑賞
・主題についてどのようたことを考えますか。(④)
・主人公の生き方についてどのように考えますか。(④)
・主人公とあたたを比べると,どんなことが言えますか。(④)
・ごめ作品のいちばん優れた点はどんた点だと思いますか。(③)
・作者についてどのように考えますか。(③・④)
以上,比楡の種類を問うなどの知識的な発問を除き,読解過程にかかわる発間を列挙した。
発問はさまざまだ視点からの整理が可能であろうが,実際の授業の流れの中でどのようた発
間が可能かを典型的た話し方(話形)として分かりやすく示したつもりであ亭。結果的には,
現実の授業における発問のパターンの相当部分をカバーしているはずである。
ただ言うまでもなく,文学作品の分析方法や読解における思考過程そのものがあいまいな現
状の申では,この例示があくまでも経験的なものの集積にすぎないことは明らかである。
実際に発問計画を作るときは,可能た発問を列挙した後で,それらを取捨選択し,子供の思
考過程に合わせる形で組み立てていかなければならない。発問相互の関連性が確実に意識され,
しだいに思考が深まっていくという流れで組み立てられなければ,よい発問とは言えたいし,
よい授業にもたらたくなる。
なお,中沢政雄は発問の機能として次のようだ11項の分類を試みている。(注3〕
1 課題のための発間
2 分析のための発問
3 総合のための発問
4 関係判断のための発問
5 想像・推理のための発間
6 比較したり,異同を明らかにしたりするための発間
7 感覚・感動・情景などを明らかにするための発間
8 感想・意見・批判のための発問
9 知識・情報のための発問
10技能のための発問
11復習のための発問
この分野は相当数の授業観察から導き出されたもので,実際の発間をほぼ当てはめていくこ
とができると思われるが,具体的た例として挙げられている個々の発問を見ると,必ずしも文
学を読み深める,味わうという方向に収束していかたいのではたいかと思われるものも少なく
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文学教材学習指導における発問の類型と構成
ない。授業観そのものが,初等教育を前提とした,教師が教えるというものにたっているため
ではないかと思われる。また,発間と指示の区別が明確でないところもあり,多少あいまいさ
を残している部分がある。
しかし,こういった機能の面から発問のバリエーションを考え,文章理解のための発問の着
眼点としていくことは十分に可能であろう。文学教材の理解という視点でさらに整理していく
意味はあると考える。
1V 文学作品の教材研究と発問の実際
文学教材として「名づけられた葉」(新川和江,S社中学1年教材)を取り上げ,その教材
分析と発問の実際を例示することとする。ここで念頭に置いているのは,教師の発問を中心と
した一斉学習である。部分的には,グループでの話し合いが可能な形にはなっている。
<教材本文>一行頭の数字は行数を示す。
名づけられた葉 新川和江
1 ポプラの木には ポプラの粂
2 何千何万芽をふいて
3 緑の小さた手をひろげ
4 いっしんにひらひらさせても
5 ひとつひとつのてのひらに
6 載せられる名はみな同じ <ポプラの葉>
7 わたしも
8 いちまいの葉にすぎないけれど
9 あつい血の樹液をもつ
10 にんげんの歴史の幹から分かれた小枝に
1ユ不安げにしがみついた
12 おさたい葉っばにすぎないけれど
13わたしは呼ばれる
14 わたしだけの名で 朝にタに
15 だからわたし 考えなけれぼならたい
16誰のまねで一もたい
17葉脈の走らせ方を 刻みのいれ方を
18せいいっぱい緑をかがやかせて
19 うつくしく散る法を
20名づけられた葉たのだから 考えなければならない
21 どんたに風がつよくとも
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<発間を前提にした作品分析>
知識 連・口語自由詩・体言止め・倒置法・リフレイン・比喩
表題 題の意味は
題から考えるこ1とは
作者 作者はどんな人か
1行 7音5音の多用(リズム)
話題の中心は何か
2行 10行目との対応
3行 11行目との対応
4行 9行目との対応
5行 8行目との対応
6行 13・14行目との対応
かかり受けの特殊性
体言止めの効果・<>の記号の使い方の効果は
7行 「も」の意味は(1行との対応,話題の転換)
8行 12行とのリフレインの効果は
比楡の意味は
以下,この連で作者の自己認識が描かれる
13行 「は」は「ポプラ」に対応して限定
14行 具体的に説明すると
15行 「だから」は1・2連を受けている
「考えなければたらたい」のはなぜか
「わたし」の後の「は」の省略の効果
16行 6・14行に対応
17∼19行 比楡を具体化すると
作者の願う生き方とは
20行 表題の意味は
21行 倒置法の効果は
作者の決意はどのようか
全体 1連十2連→3連という構造(連の関係は)
王違・2連の比較(類似点・相違点は)
平仮名表記の効果
<発間計画>
[導入コ
1 新川和江について知っていますか。
2 r名づけられた葉」という題からどんたことを連想しますか。
[展開コ
(音読)
3 こういう詩の形式を何といいますか。一口語自由詩
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文学教材学習指導における発間の類型と構成
4 いくつの連でできていますか。一3連(連の説明)
5 それぞれの連は,一言で言うと何について書いてありますか。一1連・ポプラ,2連・
わたし,3連・わたし
6 連と連をつたいで関係を示している言葉を探したさい。一(7行目rも」),15行目「だ
から」
7 7行目のrも」は何と何をつないでいますか。一ポプラとわたし
8 1連と2連のポプラと私について,同じところと違うところを説明したさい。(1・2連
音読)一話し合い(必要に応じて語句「樹液」,比喩「にんげんの歴史の幹から分かれた
小枝」の意味にふれる。また「比倫」の説明)
9 15行目の「だから」は,どのようた内容を受けていますか。一わたしには自分だけの名
がある。
1O 15行目の「考えたければたらたい」というのは,具体的にはどんなことを考えなければた
らないのですか。一話し合い(必要に応じて語句「刻み」,比倫r葉脈の走らせ方」「刻み
のいれ方」rうつくしく散る法」の意味にふれる)
11作者の気持ちがいちばんよく表れているところはどこですか。一2工行目「どんなに風が
つよくとも」
12そこから作者のどのような気持ちが感じられますか。一話し合い(倒置法の効果につい
てふれる)
[終結コ
13 3連に表された生き方を自分自身に当てはめるとどんなことが考えられますか。一話し
合い
(教師の朗読)
14書き方(表現の方法)で工夫が感じられるところを指摘しなさい。 話し合い(リフレ
イン,体言止め,倒置法,5音7音の多用,平仮名の多用等,その効果も含めて)
この発問計画における中心発間は8,1O,!3である。
8は作品全体の構造(「ポプラ」と「わたし」の比較・同一視)をとらえる発間で,文章そ
のものを読み取る層にあたる。10は作品の主題に迫る発問で,文章読み取りの最終段階に位置
付けられる。この発問を踏まえて,12の作者を読む層の発問が可能にたるのである。13は感想
を含め,作者の思想を読者(生徒)自身の問題として受け止めようという発間で,読者を読む
という層である。
1・2の導入に続いて(発問3は知識の確認である。),発間4∼7は8の発問を導くための
助走にあたる。9は少し説明が多くなるかもしれたいが,8を前提にこのったぎを経て1Oの発
問が可能になり,それがさらにn・12の補強的な発問を経て,13の発問を可能にするのである。
このように考えれば,中心発間が三つといっても,それぞれが同じようた高さのピラミッド
の頂点になっている一のではなく,ひとつの中心発問が次の中心発問の前提となって,複雑た峰
を形成していることが分かる。こういった,いわば発間の有機的だったがりが,学習者の読み
を深化させていくと考えられる。
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三 浦 和 尚
お わ り に
国語科学習指導における発問を,文学教材に限って分類し,その具体的た姿を話形として示
すとともに,1時間の授業における組み立てを例示した。無論,ここで示した発間話形や発問
計画はあくまでも典型的た例示であり,実際の学習指導はもっと多様に展開されている。むし
ろこういった枠組みを越えた発問によって,本当の文学の味わいが引き出されるという側面は
否定できたい。
また,はじめにも述べたが,国語科教育の現状がすでに間答中心の指導方法を目指してはい
たいということ一は改めて確認しておきたい。知識の注入ではなく,問題解決学習,関連指導,
国語単元学習だと,学習者の主体的た活動の中で,生きて働く言葉の力を獲得させる方法が考
えられている。メタ言語の教育ではたく,また言語教育でもたく,.いわば言語活動の教育が目
指されているといえる。
そういった意味では,こういう作業が授業改善にどれほどの役に立つのかは心もとないが,
文学教材の指導の方法について,パターンとしてその足場を固めておく必要もあると考える。
発問の話形など,今後さらに整ったものにしていきたい。
〈注〉
(注1)野池潤家『話しごとば学習論』(共文杜 1974) p.182∼183
(注2)井上尚美r言語論理教育への道』(文化開発社 1977)第W章発間の構造 p.156
(注3)中沢政雄『国語科の発問』(明治図書 1966)
<その他の主な参考文献>
・石田佐久馬『発問・板書・ノート』(東洋館出版 1964)
・平井昌夫r教師の教え方・その基本』(明治図書 1967)
・授業研究国語科部会編『国語科の授業研究1 ヰい発問悪い発問』(明治図書 1975)。
・青木幹男r青木幹男授業技術集成 第1巻 問題を持ちながら読む』(明治図書 1976)
・井上尚美『国語の授業方法論』(一先杜 1983)
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