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輸入脚症候群
輸入脚症候群 研修医 2年目 Y.M 指導医 H.T 症例 70歳代 男性 【主訴】嘔気,腹部膨満感 【現病歴】 20xx年1月に進行胃癌に対し当院消化管外科で幽門側胃切除術 (Roux-Y再建法)を施行された.(断端:陰性,リンパ節転移:12/14) 術後は外来で定期的にフォローアップされていたが,術後2年半頃よ り食思不振と下痢が出現.その後嘔気症状も加わり,20xx+2年8月 に精査のためCT・MRI撮像. 【既往歴】小児喘息 【嗜好品】喫煙:67歳で禁煙,飲酒:ビール1本 毎日 【常用薬】なし 【現症】脈拍 75回/min 整,血圧 156/100mmHg 腹部膨隆,圧痛なし,叩打痛なし,反跳痛なし,筋性防御なし 【血液検査】 【CT】 造影効果を示す 不整な壁肥厚を伴う腫瘤 SMAとAoの間、腫瘤より盲端側 に拡張・液体貯留を示す腸管 【CT】 総胆管の軽度拡張 下腸間膜静脈の狭窄 盲端側の腸管の拡張・液体貯留 【MRI】 DWI (b=800) ADC map 腫瘤は拡散強調(b=800)で高信号、 ADCmapで低値を示す 画像所見のまとめ <CT> ・幽門側胃切除術後,Roux-en-Y法による再建後 ・吻合部に造影効果を示す不整な壁肥厚を伴う腫瘤 →再発/リンパ節転移の疑い ・腫瘤内を走行する下腸間膜静脈の狭窄化がみられ, 浸潤が疑われる ・腫瘤より盲端側の十二指腸水平脚から空腸近位部にかけて 拡張と液体貯留を認める →輸入脚の拡張 ・総胆管の軽度拡張あり →胆道内圧の上昇 <MRI> ・腫瘤は拡散強調画像で高信号,ADCmapで低値を示す →再発/リンパ節転移の疑い 病変の部位からはリンパ節転移による 輸入脚症候群と考えられた ⇒1か月後に十二指腸-空腸,空腸‐直腸バイパス 手術による減圧を施行.化学療法を導入. 8ヶ月後に再び通過障害が出現 総胆管・肝内胆管の著明な拡張 腫瘤は増大 ⇒PEJ増設するも全身状態悪化し,死亡. 胃癌と術式 1.胃全摘術後の再建法 5.内視鏡的切除の種類 ・Roux-en-Y 法 ・EMR(Endoscopic Mucosal Resection) ・空腸間置法 ・ESD(Endoscopic Submucosal Dissection) ・double tract 法 2.幽門側胃切除術後の再建法 ・Billroth Ⅰ法 ・Billroth Ⅱ法 ・Roux-en-Y 法 ・空腸間置法 3.幽門保存胃切除術後の再建法 ・胃胃吻合法 4.噴門側胃切除術後の再建法 ・食道残胃吻合法 ・空腸間置法 ・double tract 法 胃癌取扱い規約(2010年3月改訂 [第14版]) 輸入脚症候群 【病態】胃切除後や胆管切除後のBillroth Ⅱ法やRoux-en-Y 法再建後に,輸入脚に通過障害を起こす病態 【原因】内ヘルニアや輸入脚の癒着,捻転,屈曲,吻合部の 狭窄・潰瘍,癌再発による狭窄など • 胃切除後のBillorth Ⅱ法再建で1.0% • 胃全摘術後のRoux-en-Y法再建で0.68%に合併 【症状】内容物の貯留・膨満による嘔吐や腹痛,閉塞性黄疸, 消化酵素停滞による脂肪便,VitB12吸収不良症候群など 外科治療 vol.104 2011;222-227 輸入脚症候群 • 輸入脚が完全閉塞し急性発症する場合と,不完全閉塞 で慢性に経過する場合があり,急性の場合,輸入脚の 壊死,穿孔をきたすこともある. 無胆汁性嘔吐 慢性 胆汁性嘔吐 急性 輸入脚の完全閉塞 輸入脚の停滞 胃全摘後の輸入脚症候群 外科治療 vol.104 2011 増刊 輸入脚症候群 【合併症】急性膵炎,逆行性胆嚢炎,敗血症,縫合不全 【治療】 ・外科的手術(狭窄の解除,吻合術式の変更) ・経皮的直接穿刺,経皮経肝ドレナージによる減圧 ・内視鏡的治療 外科治療 vol.104 2011;222-227 画像所見 ・上腸間膜動静脈と大動脈の間に拡張した十二指腸水平脚 (輸入脚)を認める ・輸入脚内圧の上昇に伴う肝内/外胆管拡張や主膵管拡張 ・急性膵炎,胆嚢炎を伴うこともある Catarina Ruivo, Célia Antunes, Pedro Marques (2013, Mar. 19) Afferent loop syndrome {Online} URL: hJp://www.eurorad.org/case.php?id=10671 画像所見 <超音波検査> 輸入脚が無ガス像のcystic lesionとして認められる SMV SMA Aorta 腸管拡張 胃全摘後の輸入脚症候群 外科治療 vol.104 2011 増刊 結語 胃癌術後、Roux-en-Y再建術後にリンパ節転移病変に より輸入脚症候群をきたした一例を経験した. Billroth Ⅱ法やRoux-en-Y法などの輸入脚の存在する 手術歴があり,CTで拡張した十二指腸水平脚を認める 場合は,輸入脚症候群を考慮する.