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石炭と人類・社会とのかかわり - 経済産業省・資源エネルギー庁
石炭と人類・社会とのかかわり 平成20年12月12日 経済産業省 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石炭課長 國友 宏俊 1.石炭の起源 石炭の起源 石炭 • 石炭紀:3億4500万∼ 2億8千万年前 • イギリスの炭田の多くが 起因 • 堆積した植物が長期間、 地熱や地圧で変成。 • 炭素の他、水素、酸素、 硫黄、灰分等含有。 • 日本の石炭は、約300 0万年前の被子植物が 起源。ヨーロッパより新し い。 地質時代 地質時代 第三紀 第三紀 6500万年前 6500万年前 石油 • ジュラ紀、白亜紀起 源が主。 白亜紀 白亜紀 1.4億年前 1.4億年前 ジュラ紀 ジュラ紀 2.1億年前 2.1億年前 三畳紀 三畳紀 2.5億年前 2.5億年前 二畳紀 二畳紀 2.8億年前 2.8億年前 石炭紀 石炭紀 3.6億年前 3.6億年前 デボン紀 デボン紀 4.1億年前 4.1億年前 シルル紀 シルル紀 4.4億年前 4.4億年前 • 長期間にわたり厚い 堆積層に埋没した生 物遺骸が、高温・高 物遺骸が、高温 高 圧により、液体やガス の炭化水素へと変 化。 →これらが岩盤内の 隙間を移動し、貯留 層にて油田を形成。 オルドビス紀 オルドビス紀5.1億年前 5.1億年前 カンブリア紀 カンブリア紀5.8億年前 5.8億年前 • 石炭より新しい。 地球カレンダー ◇ 1月 1日 地球誕生 ◇ 1月12日 天体が衝突、地球と月が分離 ◇ 2月25日 最初の原始生命が誕生 (約27億年前生命が陸上へ) ◇12月 1日 石炭紀(約3.5億年前) ◇12月16日 原始的な哺乳類登場 図:炭素・水素・酸素の相対的含有量 ◇12月25日 恐竜全盛期(約2億年前) ◇12月31日午後11時37分 人類(ホモ・サピエンス)誕生 ◇12月31日午後11時59分46秒 キリスト降誕 ◇12月31日午後11時59分58秒 産業革命 ◇12月31日午後11時59分59秒 20世紀が始まり終わる 石炭可採埋蔵量の分布 石炭は確認埋蔵量が豊富で、地域偏在性が少ない。 石炭の可採年数(可採埋蔵量/年間消費量)は約133年と、石油の3.2倍、天然ガ スの2.2倍以上となる。 7% 31% ロシア(1,570億t) ヨーロッパ(781億t) 30 % 44 % 34% 62% 53% カナダ(66億t)13% 16% 13% 中国(1,145億t) 30% 26 % 54% 46% 米国(2,427億t) インド(565億t) 41% 26% 8% 2% 11 % 72% 89 % その他アジア(419億t) 92% その他アフリカ(16億t) 18% 5% コロンビア(70億t) 40% 95% 42% インドネシア(43億t) 0% その他南米(93億t) 49% 48% 93% 100% 南アフリカ(480億t) 3% オーストラリア(766億t) 出所:WEC Survey of Energy Resources 2008、BP統計2008 瀝青炭 亜瀝青炭 褐炭 7% 2.人類と石炭 石炭使用の黎明期 • 古代ギリシア:記録(紀元前315年)に石炭が鍛冶 屋の燃料として使われたと書かれている。 • 中国戦国時代:石炭を使用した遺跡が見つかって いる 宋代から大々的に燃料として用いられるよ いる。宋代から大々的に燃料として用いられるよ うになり、その強い火力により中華料理の炒め物 のメニューができた。 • イギリス:国内に豊富な石炭資源を有し、一部は 地表に露出していたため、700年以上前から燃 料として使われていた。 石炭の工業利用 • 18世紀英国:産業革命の起爆力としての石炭 *鉄、石炭、スチームの3位1体の発展 *農業の効率化による農村からの労働力供給 • 1750年:ダービーによる石炭使用の製鉄法確立 1780年:ワットによる蒸気機関の実用化 1814年:スティーブンソンによる石炭運搬用の実 用蒸気機関車の開発 石炭の黄金時代 • 19世紀末:コークスを製造する際の副産物とし て出てきたコールタールを原料とした石炭化学 工業の開始。 • 燃料としての石炭は 燃料としての石炭は、工場の動力に使わ 工場の動力に使わ れた他に、鉄や船の蒸気機関の燃料とし て使用。 • 都市の照明や暖房・調理用への 石炭由来の合成ガスの使用。 1904年製の蒸気機関車City of Truro 石炭から石油への移行 • 黒船(1840年頃∼) *当時の汽船の機関は石炭を多量に消費。 *蒸気帆船で、風力と石炭を両用。石炭積込船を曳い ていた。(伴船) • 第一次世界大戦 第 次世界大戦 *石油世紀の幕開け。 *英チャーチルが艦船燃料の石油への転換。(石油は 液体でカロリーが石炭の2倍。石炭燃焼の黒煙は敵 に見つかりやすい。) • 第二次世界大戦 船舶のボイラー燃料は重油が主流に。 欧州統合のきっかけ • 1951年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)条約 西欧6カ国(ベルギー、フランス、ドイツ、イタリ ア、ルクセンブルグ、オランダ)で調印 (国家にとっての基本資源である石炭と鉄鋼の 共同管理) ↓ 石炭共同市場の設立 • 1993年 EU(欧州連合)成立 主要国の一次エネルギー構成 石炭 アメリカ合衆国 石油 23.7 天然ガス 原子力 水力 39.0 中国 27.0 70.1 日本 19.7 23.8 カナダ 43.5 9.2 30.9 インド 28.4 イギリス 6.4 韓国 10.0 15.6 34.7 20% 40% 25.7 60% 1.9 6.3 45.3 27.9 0% 1.0 4.4 40.6 25.1 世界計 25.2 25.9 34.8 3.6 10.1 35.2 17.4 12.0 32.3 26.9 2.3 3.6 0.8 5.8 17.1 52.2 ドイツ 7.9 13.6 5.5 80% 0.9 0.5 6.2 100% 出典:BP統計2008 3.日本における石炭利用 石炭の発見 日本における石炭の使用 • 貝原益軒「筑前国続風土記」 「燃石。農民是を薪に代わり用ゆ。」 元禄から宝永年間(1680年∼1700年代) • 芭蕉の句(元禄元年) 香ににほへ うにほる岡の 梅のはな 【早春の故郷では梅が咲き匂い始めた。岡から掘り出す「うに (泥炭)」は悪臭がするから、梅の花よ、清香で和らげてほしいもの だ。】 • 日本での本格使用は江戸時代に九州筑豊の 石炭が瀬戸内海の製塩に用いられた記録がある。 日本石炭産業の近代化 1867:明治政府の旧幕府鉱山の接収開始 1873:三井鉱山、高島炭鉱等の官営化 1879:幌内炭鉱開鉱 1883:常磐炭鉱社設立(渋沢栄一会長) 1889:三池炭鉱、幌内炭鉱が払い下げ この頃、筑豊では、三井、三菱の中央資本と 麻生・貝島・安川の地元資本共に鉱区獲得 • 山口(宇部)炭田は、地元資本中心に開発 • • • • • • 大正時代の三井三池鉱山 石炭から石油へ、さらに石炭に回帰 • 第二次世界大戦に敗戦した日本は、疲弊した国内産業の 建て直しのために、国策として石炭の増産を実施し(傾斜 生産方式)、戦後の復興を遂げた。 • 当時、火力発電は、ほとんど石炭を燃料としていた。しか し 、1960年から発電用燃料として石油の使用量が増大 し、1970年代には石炭のみを使う火力発電所は新設され なくなった。 • 1973年の石油危機後は、石炭が石油代替エネルギーとし て見直され、石炭火力が拡大。さらには、LNG火力も。 • IEAの勧告(1979年)で、ベースロード用石油火力の新 設が禁止。 ∼1950年 1950 石炭火力 1960 1960年 石油火力 1980 1980年∼ 石炭火力・LNG火力 日本のエネルギーベストミックス オイルショック以降は、脱石油を推進。海外炭、LNG、原子力で、エネル ギー消費増に対応。 <我が国一次エネルギー供給の推移> (1018J) 新エネルギー・地熱等 水力 原子力 天然ガス 石炭 石油 25 22.76 22.75 22.70 22.00 19.66 20 3.1% 3.4% 12.6% 11.7% 12.3% 15.92 16.47 14.38 15 12.42 9.6% 11.5% 13.8% 16.5% 18.5% 21.2% 10.7% 16.5% 17.5% 18.0% 21.3% 16.8% 20.0% 10 6.38 71.6% 69.9% 64.7% 5 29.3% 56.0% 53.6% 90 95 49.0% 44.1% 55.4% 55.9% 0 65 70 75 80 85 00 05 06 年度 日本における電源別比率推移 石炭火力発電(25%)は、 原子力(30%)、LNG火力(26%)に次ぐ重要 なエネルギー源。 9,900 10000 9,396 9000 8,557 8000 7,376 7000 5,840 億KWh 6000 4,918 5000 4000 3,790 水力他 原子力 石 油 LNG 石 炭 3000 2000 1000 0 出典:電源開発の概要 2007 4.主要国の石炭政策 日本の石炭政策の変遷 日本 【これまでの石炭政策の変遷】 *傾斜生産方式 − 炭鉱国家管理 *昭和30年代(1950∼60年代) 炭主 → 油主炭従 *IQ(Import Quota:輸入許可):国内炭の需給確保が目的 1992年 制度廃止 1996年 事前確認も廃止 *平成13年度 国内石炭政策終了(その後5年間の激変緩和措置) 【組織の変遷】 昭20年石炭庁→昭24年資源庁(石炭生産局、石炭管理局)→ 昭27年石炭局→昭43年鉱山石炭局(石炭部)→ 昭48年資源エネルギー庁石炭部→ 平9年石炭・新エネルギー部(石炭課)→平14年資源・燃料部(石炭課) 【現在の石炭政策の重点】 *ゼロエミッション石炭火力発電の実現 *海外炭の安定供給確保 国内炭鉱の概要 ・国内では、北海道に、坑内掘炭坑1炭坑、露天掘炭鉱7炭鉱のみ。 ・生産量は約130万トン。国内消費量の約0.7%。 坑内掘炭鉱 露天掘炭鉱 計 吉住 1炭鉱(釧路炭鉱) 7炭鉱 8炭鉱 留萌炭田 (よしずみ) 空知新 東芦別 新旭 釧路炭鉱(坑内掘) 北菱美唄 ● 札幌 (ほくりょうびばい) 三美 砂子 石狩炭田 釧路炭田 (さんび) 23 我が国の石炭輸入相手国(2007年) 石炭輸入割合 (1億8613万t) ベト ナム カ ナダ 1% その他 1% 6% ロシ ア 6% 中国 8% インドネシア 18% 豪州 61% 出典:財務省貿易統計 豪州の資源政策の変遷 【豪州の資源禁輸政策を変えた日本】 *最大の石炭輸出国である豪州は、1970年代中頃まで資源輸出禁 止政策。 *石炭(一般炭)、石油、天然ガスは資源ナショナリズムの観点から輸 出禁止。 *我が国発電会社・政府の提案で、1974年、日豪首脳会談で石炭の 輸出開始に関する問題を取り上げ。 *その後、両国が協議を行った結果、豪州はエネルギー資源の輸出禁 止を解除。 *石炭交渉をきっかけとして、豪州は石炭のみならず石油、天然ガス の輸出も解禁。資源産業は豪州の基幹産業となった。 *現在、日本は世界の石炭貿易量の約1/4弱を輸入し、世界最大の 石炭貿易国。豪州は、日本にとって最大の石炭供給国。 インドネシアの石炭政策 インドネシア 【日本とのかかわり】 *インドネシアは、低灰分、低硫黄分の一般炭(発電用石炭)の世界最 大の輸出国。 *海外資本を導入したコントラクターの炭鉱開発やアジアの石炭需要の 増大に伴い、輸出拡大。 日本への輸出量は、年々拡大。 0.3百万トン(1987FY)→10.9百万トン(1997FY)→33.3百万トン(2007FY) *2009年から国内供給優先の取組を強化へ *炭鉱技術移転、地質調査、CCT技術移転、低品位炭改質技術事業等 の協力実施中。 中国の石炭政策 【日本とのかかわり】 *日中LT貿易(長期貿易協定の締結:1978年∼) 中国→日本 資源の安定供給 日本→中国 技術の移転(宝山製鉄所関連) *秦皇島港 円借款 (1980∼90年代) 石炭輸出体制構築のため大同炭田からの約850kmの専用貨物鉄 道を敷設。 *輸出減:中国国内需要の高まりにより、日本への輸出は2003年を ピークに毎年減少。 *現在、中国は世界の石炭生産量の4割を占め、世界最大の石炭生産 国。 *炭鉱技術移転、地質調査、CCT技術移転等の協力実施中。 ご静聴ありがとうございました