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原油市場他:米国原油在庫増加及び米国金利引き上げ観測などで、11

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原油市場他:米国原油在庫増加及び米国金利引き上げ観測などで、11
更新日:2015/11/16
調査部:野神 隆之
原油市場他:米国原油在庫増加及び米国金利引き上げ観測などで、11 月初頭以降下
落傾向を示す原油価格
(IEA、OPEC、米国 DOE/EIA 他)
① 米国では、製油所でのメンテナンス作業実施に伴う原油精製処理量の減少もあり、原油在庫は増加
傾向となり、平年幅を超過する状態が続いている。他方、ガソリンについては原油価格とともに小売
価格が下落した影響から需要が根強くなっている反面、製油所での稼働低下から生産が低迷したこ
ともあり、在庫は減少傾向となり、量としては平年幅上限付近に位置している。他方、留出油につい
ても、秋場の穀物等の収穫期に伴う農機具用軽油需要の発生が影響する中、製油所での生産が伸
び悩み気味であったこともあり、在庫が減少傾向を示した結果、平年並みの水準となっている。
② 2015 年 10 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、欧州では原油精製処理
量が維持されたこともあり、当該地域での原油在庫は前月に比べ減少となった。しかしながら、米国
では原油在庫が増加となった他、秋場の製油所メンテナンス作業シーズンに突入した日本において
も原油精製処理量の減少の影響で原油在庫が増加した。結果として欧州での在庫減少が米国及び
日本での在庫増加で相殺されて余りあったことにより、OECD 諸国全体では原油在庫は増加となり、
平年幅を大きく超過した状態は維持されている。他方、製品在庫については、日本では微減となっ
た他、欧州では中間留分在庫が減少したことが影響し石油製品全体の在庫も減少している。また、
米国でも、製油所でのメンテナンス作業突入に伴いガソリンや留出油といった製品の生産が低迷し
たことから、石油製品の在庫は減少している。このようなことにより OECD 諸国全体では製品在庫水
準は低下したものの、この時期としては平年並みの量となっている。
③ 2015 年 10 月中旬から 11 月中旬にかけての原油市場においては、10 月中旬から 11 月初頭におい
ては、中国経済減速を示唆する経済統計類、市場の事前予想を上回る米国原油在庫の増加、欧州
中央銀行(ECB)による追加金融緩和検討方針に伴うユーロ下落と米ドル上昇等が、原油価格に下
方圧力を加えた反面、米国の製油所での稼働の上昇、米国石油坑井掘削装置稼働数の減少、ブラ
ジル国営石油会社ペトロブラスでのストライキ発生と同社の原油生産量減少の情報等が原油相場に
上方圧力を加えた結果、原油価格(WTI)は 1 バレル当たり 45 ドルを中心とする水準で変動してい
た。しかしながら、その後は米国原油在庫の増加、米国での堅調な雇用増加に伴う金利引き上げ観
測の増大などにより、原油価格は下落傾向となった。
④ 今後については、米国での金利引き上げ観測等が原油相場の上昇を抑制する可能性があるもの
の、地政学的リスク要因面で、シリア問題に絡み原油価格を上振れさせるリスクが依然存在している
と考えられる他、冬場の暖房シーズン到来で季節的な需給の引き締まり感が市場で発生しやすいう
え、米国での石油抗井掘削装置稼働数の減少傾向から同国での将来の原油生産水準の低下が継
続するとの観測が市場で根強いと見られることなどにより、原油相場が押し上げられやすいものと考
えられる。従って、原油価格は当面現在の水準からそう離れない範囲内で変動する可能性はあるも
のの、上昇に転じる余地もまた存在するものと思われる。
–1–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1.
原油市場を巡るファンダメンタルズ等
2015 年 8 月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で 1.7%程度の増加の日量 947 万バレルとな
り(図 1 参照)、速報値(同 944 万バレル、前年同月比 1.3%程度の増加)から上方修正されている。前月
に引き続き 8 月の同国のガソリン小売価格が前年同月比で 1 ガロン(約 3.8 リットル)当たり 0.8 ドル弱低
下していることから、自動車運転距離数が堅調に推移した(8 月の同国の自動車運転距離数は前年同月
比で 2.3%の増加となっている)ことが、ガソリン需要の増加に繋がったものと考えられる。他方、2015 年
10 月の同国ガソリン需要(速報値)は日量 921 万バレルと前年同月比で 0.7%程度の増加と、それまでの
数ヶ月間に比べて増加幅がやや縮小している。同月の同国のガソリン小売価格も前年同月比で 1 ガロン
当たり 0.9 ドル程度安価であることから考えると、ガソリン小売価格低下により引き続き需要が刺激され続
けている旨示唆されることから、当該需要は速報値が確定値に移行する段階でそれなりの程度上方修
正される可能性があるものと考えられる。他方、秋場のメンテナンス作業の実施等に伴い米国での製油
所の稼働が低下し続けるとともに、原油精製処理量も減少してきた(図 2 参照)ことが、製油所でのガソリ
ン製造活動に影響を与えた(最終製品の生産状況は図 3 参照)結果、ガソリン在庫は 10 月中旬から 11
月上旬にかけては概ね減少傾向を示し、11 月上旬時点では平年幅上限付近に位置する量となっている
(図 4 参照)。
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2015 年 8 月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で 0.3%程度の増加の日量 389 万バレルであ
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った(図5 参照)。8 月の留出油輸出量について EIA は速報値時点では暫定的に日量125 万バレル程度
と見込んでいたものの、実際の輸出量は日量 111 万バレルと暫定値を日量 14 万バレル下回っていたこ
とから、この分が確定値算出段階で輸出から国内需要に振り替えられたことが、速報値である同 369 万
バレル(前年同月比 4.8%程度の減少)から上方修正される一因となっていると見られる。他方、8 月の鉱
工業生産指数が前月からは若干の伸びにとどまったものの、前年同月比では大幅ではないまでもそれ
なりの増加を示していることもあり、8 月の物流活動も前月比では殆ど伸びが見られないものの、前年同
月と比べれば控えめながらも活発化してはいることから、8 月の留出油需要の伸びもそれほど大きくはな
いものの増加となっているものと考えられる。また、10 月の留出油需要(速報値)は日量 393 万バレルと、
前年同月比で 7.9%程度の大幅な減少となっている。10 月 29 日に米国商務省から発表された 2015 年 7
~9 月期の同国国内総生産(GDP)(速報値)が年率で前期比 1.5%の伸びと 4~6 月期の同 3.9%の伸び
から急減速しているうえ、9 月の物流活動も前年同月と比べると増加幅がかなり縮小していることが、10
月の留出油需要不振に影響している可能性があるとは考えられるものの、それでも、減少幅が大きすぎ
ると見受けられることから、当該需要は速報値から確定値に移行する段階で上方修正される可能性がそ
れなりにあるものと考えられる。他方、製油所での原油精製処理量が減少したことに伴い、留出油の生産
水準も伸び悩んだ(図 6 参照)ことに加え、米国では秋場の穀物収穫作業実施に伴う収穫のための農機
具稼働に向けた軽油需要発生の影響もあり、留出油在庫は 10 月中旬から 11 月上旬にかけ減少傾向と
なった結果、11 月上旬としては当該在庫は平年並みの量となっている(図 7 参照)。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2015 年 8 月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で 2.1%増加の日量 1,981 万バレルとなってい
る(図 8 参照)。ガソリンや留出油の需要は速報値からは上方修正されたものの、「その他の石油製品」が
速報値の日量 425 万バレルから確定値では同 355 万バレルへと大幅な下方修正となったことから、石油
需要全体でも速報値である日量 2,023 万バレル(前年同月比で 4.3%の増加)から相当程度の下方修正
となった。また、10月の米国石油需要(速報値)は、ガソリンや「その他の石油製品」の需要が前年同月比
で増加しているもののの、留出油需要の大幅な減少がそれらの増加を相殺して余りあった結果、日量
1,967 万バレルと前年同月比で 0.1%程度の減少となっている。他方、米国では、製油所での秋場のメン
テナンス作業シーズン突入とともに原油精製処理量が低迷したこともあり、原油在庫は、10 月中旬から
11 月上旬にかけては概ね増加傾向を示しており、11 月上旬時点では平年幅を大きく超過している状態
は維持されている(図 9 参照)。なお、原油在庫が平年幅を大幅に超過している一方で、ガソリン在庫が
平年幅上限に位置する量、留出油在庫が平年並みの量に、それぞれなっていることから、原油とガソリ
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ンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅を超過する状
態となっている(図 10 及び 11 参照)。
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2015 年 10 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、欧州では 10 月にはガソリ
ン精製利幅は低下していたものの、それ以前の米国でのドライブシーズンに伴うガソリン需要期におい
て、原油価格下落に伴う米国でのガソリン小売価格水準低下で需要が刺激されたことにより、その時期
の欧州製油所(米国等にガソリンを輸出している)での精製利幅が堅調であったことの影響を受け、製油
所のメンテナンス作業シーズンに突入しているにもかかわらず、原油精製処理量が維持された(この結
果当該地域での 10 月の原油精製処理量は日量 1,200 万バレル台半ばと前年同月比で日量 60 万バレ
ル程度増加していたと推定される)こともあり、当該地域での原油在庫は前月に比べ減少となった。しか
しながら、米国で原油在庫が増加となった他、秋場の製油所メンテナンス作業シーズンに突入した日本
においても原油精製処理量の減少の影響で原油在庫が増加した。結果として欧州での在庫減少が米国
及び日本での在庫増加で相殺されて余りあったことにより、OECD 諸国全体では原油在庫は増加となり、
平年幅を大きく超過した状態は維持されている(図 12 参照)。他方、製品在庫については、日本では微
減となった他、欧州では製油所の稼働は比較的保たれていたものの、特に中間留分在庫が高水準とな
ったため、欧州に輸入される予定であった中間留分を積載したタンカーをスエズ運河経由から南アフリ
カの喜望峰経由に変更することにより欧州の到着を遅らせた他、他の受け入れ地域へと仕向け地を変更
することにより、欧州での受け入れが手控えられた結果、当該地域の 10 月末の中間留分在庫は前月比
で推定 300 万バレル超減少した(しかしながら前年同月比では依然 4,300 万バレル超多い(推定)状況と
なっている)ことが影響し、欧州での石油製品全体の在庫は減少している。また、米国では製油所でのメ
ンテナンス作業突入に伴いガソリンや留出油といった製品の生産が低迷したことから、石油製品の在庫
は前月比で減少している。このようなことにより OECD 諸国全体では製品在庫水準は減少したものの、こ
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
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の時期としては平年並みの量となっている(図 13 参照)。なお、原油在庫が平年幅を大きく超過している
一方で、石油製品在庫が平年並みとなっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅を超
過する状態となっている(図 14 参照)。また、半製品等を含めた OECD 諸国の石油在庫量は 9 月末で
30 億バレル弱であったが、10 月末にかけさらに増加した結果、30 億バレルを若干ながら超過したものと
推定される。他方、2015 年 10 月末時点での OECD 諸国推定石油在庫日数は 65.1 日と 9 月末の推定在
庫日数である 64.5 日から上昇している。
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10 月 14 日には 1,100 万バレル強であったシンガポールでのガソリン等の軽質留分在庫量は、10 月
21 日には 1,100 万バレル台半ば程度にまで増加したものの、10 月28 日には一転して 1,000 万バレル割
れとなった。しかしながら、その後回復、11 月11 日時点では 1,000 万バレル台後半の水準となっており、
10 月 14 日の量からは若干の減少となっている。夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期は過ぎ去
ったものの、製油所でのメンテナンス作業シーズン突入で生産が減少していることから、需要も季節的に
は必ずしも強くないものの供給も必ずしも強くないことが、当該留分の在庫が顕著な増加もしくは減少傾
向を示さない背景にあるものと考えられる。しかしながら、この先もガソリン需要が旺盛になる時期ではな
い反面、製油所が秋場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇、製品生産活動を活発化させてくること
から、今後の在庫の積み上がりに関する観測が市場で発生していることもあり、ガソリン価格は原油に比
べ軟調になってきている。他方、ナフサについては、冬場の暖房シーズンが接近するにつれ、石油化学
部門で競合するLPGの暖房向け需要増加と価格上昇に伴い、石油化学部門でよりナフサの利用が指向
されるとの観測から、当該製品価格は原油に比べ堅調に推移した。
10 月 14 日には 1,400 万バレル台後半の水準であったシンガポールの中間留分在庫は、その後減少
傾向となり、11 月 11 日時点では 1,100 万バレル強の量となった。製油所でのメンテナンス作業実施に伴
い、アジア地域各国国内での中間留分の生産が低下、輸出余力がなくなる一方で、これら各国において
は国外から輸入を行う機会が増大することから、その影響でシンガポールの当該在庫が減少を示したも
のと見られる。このように足元の在庫減少に伴う需給の引き締まり感の増大に加え、冬場の暖房シーズン
に伴う暖房油(軽油の一種)や灯油といった暖房用石油製品の需要増加観測から、例えば、シンガポー
ルでの軽油と原油との価格差(この場合軽油価格が原油のそれを上回っている)は、上下に変動しながら
も、概ね堅調に推移している。
シンガポールの重質留分在庫は、10 月 14 日には 2,800 万バレル弱の水準であった。その後 10 月 21
日には 2,800 万バレル台半ばの量まで増加したものの、10 月 28 日及び 11 月 4 日にかけ減少傾向とな
り、11 月 4 日には 2,500 万バレル台半ばとなった。ただ、在庫は 11 月 11 日には 2,600 万バレル台前半
と多少回復している他、前年同期(11 月12 日時点の 1,800 万バレル強)の水準は大きく上回っている。こ
のように重質留分在庫は依然高水準となっており、この面では重油価格には下方圧力を加えているもの
の、シンガポールの重油価格の下落が原油価格の下落に追いつかなかった結果、重油と原油の価格差
(この場合重油価格が原油のそれを下回っている)は、縮小傾向を示している。
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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2015 年 10 月中旬から 11 月中旬にかけての原油市場等の状況
2015 年 10 月中旬から 11 月中旬にかけての原油市場においては、10 月中旬から 11 月初頭において
は、中国経済減速を示唆する経済統計類、市場の事前予想を上回る米国原油在庫の増加、欧州中央銀
行(ECB)による追加金融緩和検討方針に伴うユーロ下落と米ドル上昇等が原油価格に下方圧力を加え
た反面、米国での製油所稼働の上昇、米国石油坑井掘削装置稼働数の減少、ブラジル国営石油会社
ペトロブラスでのストライキ発生と同社の原油生産量減少の情報等が原油相場に上方圧力を加えた結果、
原油価格(WTI)は 1 バレル当たり 45 ドルを中心とする水準で変動していた。しかしながら、その後は米
国原油在庫の増加、米国での堅調な雇用増加に伴う金利引き上げ観測の増大などにより、原油価格は
下落傾向となった(図 15 参照)。
7 月 14 日に到達したイランのウラン濃縮問題を巡る西側諸国等との最終合意が 10 月 18 日に発効し
たことで、イランに対する制裁解除と同国での原油生産増加に対する期待が 10 月 19 日の市場で増大し
たことに加え、10 月 19 日に中国国家統計局が発表した、2015 年 7~9 月期の同国国内総生産(GDP)が
前年同期比 6.9%の増加と、2009 年 1~3 月期(この時は同 6.2%の増加)以来の低水準の成長を示した
他、同日国家統計局から発表された 2015 年 1~9 月の都市圏固定資産投資が前年同期比 10.3%の増
加、9 月の同国鉱工業生産が前年同月比5.7%の増加と、市場の事前予想(都市圏固定資産投資が前年
同期比 10.8~10.9%の増加、鉱工業生産が前年同月比 6.0%の増加)を下回ったことで、同国経済と石
油需要に関する懸念が市場で増大したこと、米国での秋場の製油所メンテナンス作業シーズンが峠を
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越えつつあることから、今後製油所でのガソリン生産が増加するとともに当該製品の需給が緩和するとの
観測が市場で増大したことにより、米国ガソリン先物相場が下落したこと、10 月22 日に開催される予定の
ECB 理事会で追加金融緩和策の実施が示唆されるのではないかとの観測が市場で発生したことにより、
10 月 19 日にユーロが下落した反面米ドルが上昇したことから、10 月 19 日の原油価格は前週末終値比
で 1 バレル当たり 1.37 ドル下落し、終値は 45.89 ドルとなった。また、10 月 20 日にも、翌 21 日に米国エ
ネルギー省(EIA)から発表される予定である同国石油統計(10 月 16 日の週分)で原油在庫が増加して
いる旨判明するとの観測が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 45.55 ド
ルと前日終値比で 0.34 ドル下落した。この結果、原油価格は 10 月 19~20 日の 2 日間で併せて 1.71 ド
ルの下落となった(なお、NYMEX の WTI 原油先物11 月渡し契約はこの日を以て終了したが、12 月渡し
契約の終値は 46.29 ドル(前日終値比 0.01 ドル上昇)であった)。そして、10 月 21 日には、この日 EIA か
ら発表された同国石油統計で原油在庫が前週比 803 万バレルの増加と市場の事前予想(同 270~390
万バレル程度の増加)を上回って増加している旨判明したことで、この日の原油価格の終値は 1 バレル
当たり 45.20 ドルと前日終値比でさらに 0.35 ドル下落した。ただ、10 月 22 日には、10 月 21 日に EIA か
ら発表された同国石油統計でガソリン在庫が前週比で 152 万バレルの減少と市場の事前予想(同 75~
86 万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明したことから、米国ガソリン先物相場が上昇した
ことに加え、10 月21 日夕方に発表された米電子商取引企業イーベイ及び 10 月 22 日に発表された米外
食大手マクドナルドの 2015 年 7~9 月期業績が市場の事前予想を上回ったことにより、米国株式相場が
上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.18 ドル上昇し、終値は 1 バレル
当たり 45.38 ドルとなった。しかしながら、10 月 23 日には、前日の 22 日に開催された ECB 理事会後の
記者会見で、ドラギ総裁が、12 月 3 日に開催される予定の次回理事会に向け追加金融緩和策実施を検
討する旨示唆したことで、ユーロが下落した流れを引き継いだことにより、米ドルが上昇したことから、こ
の日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 44.60 ドルと前日終値比で 0.78 ドル下落した。
また、米大手金融機関 Goldman Sachs が、10 月 25 日付報告書で、記録的に近い水準での製油所稼
働や中東及び中国からの留出油流入に対し、相対的に需要が弱いことで、欧米の当該製品貯蔵率が史
上最高水準に近い水準に到達しているうえ、この先暖冬が予想されることから、原油価格は 2016 年春に
かけ、下振れのリスクを抱える旨指摘したことで、石油需給の緩和感が 10 月26 日の市場で意識されたこ
とにより、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 0.62 ドル下落し、終値は 43.98 ドルとなっ
た。 10 月 27 日には、翌 28 日に EIA から発表される予定である同国石油統計(10 月 23 日の週分)で原
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
油在庫が増加している旨判明するとの観測が市場で発生したことにより、この日の原油価格の終値は 1
バレル当たり 43.20 ドルと前日終値からさらに 0.78 ドル下落した。この結果、原油価格は 10 月 26~27
日の 2 日間で併せて 1.40 ドルの下落となった。ただ、10 月 28 日には、この日 EIA から発表された同国
石油統計で製油所の精製稼働率が 87.6%と前週比で 1.2%上昇した他、市場の事前予想(同 0.1%程度
の上昇)を上回ったことで、製油所のメンテナンス作業が峠を越えつつあり、この先原油需要が増加する
との観測が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.74ドル上昇し、
終値は 45.94 ドルとなった。また、10 月 29 日にも、前日に EIA から発表された同国石油統計で製油所の
精製稼働率が市場の事前予想を上回って上昇したことで、この先原油需要が増加するとの観測が市場
で発生した流れを引き継いだうえ、前日の 28 日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)におい
て、次回 FOMC(12 月15~16 日開催予定)で金利引き上げが適切かどうかを検討する旨示唆されたこと
により 10 月 28 日に米ドルが上昇したことに対する利益確定の動きが 10 月 29 日に発生したうえ、10 月
29 日に欧州委員会から発表された 10 月のユーロ圏景況感指数(1990 年 1 月以降平均=100)が 105.9 と
9 月の 105.6から上昇したうえ市場の事前予想(105.1~105.2)を上回ったことによりユーロが上昇したこと
に加え、10 月 29 日に米国商務省から発表された 7~9 月の GDP が前期比で年率 1.5%の増加と 4~6
月期の同 3.9%増加から大幅に減速した他、市場の事前予想(同 1.6%の増加)を下回ったことから、米ド
ルが下落したことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 46.06 ドルと前日終値比で 0.12 ドル
上昇した。さらに、10 月 30 日には、この日米国石油サービス企業 Baker Hughes から発表された同国石
油坑井掘削装置稼働数(10 月 30 日の週分)が 578 基と前週比で 16 基減少(石油水平坑井掘削リグ稼働
数は 483 基と前週比で 17 基の減少)していた旨判明したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1
バレル当たり 0.53 ドル上昇し、終値は 46.59 ドルとなった。この結果、原油価格は 10 月 28~30 日の 3
日間で併せて 3.39 ドルの上昇となった。
11 月 2 日には、この日中国独立系報道機関財新伝媒及び英金融情報サービス企業マークイットから
発表された 10 月の中国製造業購買担当者指数(PMI)が 48.3 と当該部門拡大及び縮小の分岐点である
50 を 8 ヶ月連続で下回ったことに加え、11 月 2 日にロシアエネルギー省から発表された 10 月の同国石
油生産量(原油にコンデンセートを加えたもの)が日量1,078 万バレルと 1991 年の旧ソ連崩壊後最高水準
に到達した旨明らかになったことで、世界石油供給過剰感を市場が意識したこと、温暖な秋の気候に伴
う暖房向け燃料需要不振により留出油在庫が積み上がるとの観測が市場で増大したことにより、米国暖
房油先物(12 月渡し)価格が下落したことから、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 0.45
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ドル下落し、終値は 46.14 ドルとなった。また、11 月 3 日には、リビア東部の Zueitina 石油ターミナル(原
油出荷能力日量 8 万バレル)が同国の内紛の激化に伴い原油の出荷を停止する旨の不可抗力条項の
適用を 11 月3 日に宣言したことで、同国からの原油供給減少に対する懸念が市場で発生したことに加え、
11 月 1 日にブラジル国営石油会社ペトロブラスの労働組合が 1,300 億ドルに上る同社負債低減のため
の資本支出削減と資産売却に関する計画を取り下げるようペトロブラスに要求すべくストライキを実施し
たことに伴い同社の原油生産量の約 25%に当たる日量 50 万バレル程度の生産が停止した旨労働組合
が 11 月 3 日に明らかにしたこと、11 月 3 日に米国でメキシコ湾岸から東部地域に向け石油製品を輸送
するパイプラインである Colonial Pipeline のシダー・バイユー(Cedar Bayou、テキサス州)の関連施設が
大雨により冠水したことに伴い操業を停止したことにより、石油製品の輸送に支障が生じるのではないか
との懸念が市場で発生したことにより、米国ガソリン及び暖房油先物相場が上昇したこと、翌 4 日に EIA
から発表される予定である同国石油統計(10 月 30 日の週分)で製油所の稼働率が上昇しているとの観
測が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり47.90ドルと前日終値比で1.76
ドル上昇した。しかしながら、11 月 4 日には、この日 EIA から発表された同国石油統計で原油在庫が前
週比で 285 万バレルの増加と市場の事前予想(同 245~280 万バレル程度の増加)を上回って増加して
いる旨判明したこと、11 月 4 日に米企業向け給与計算サービス企業オートマチック・データ・プロセッシ
ング(ADP)から発表された 10 月の米国民間雇用者数が前月比で 18.2 万人の増加と市場の事前予想
(同 18.0 万人の増加)を上回った他、同日イエレン米国連邦準備制度理事会(FRB)議長が、米議会下院
金融サービス委員会での証言で、米国の経済状況が改善し続けるのであれば、12 月の金利引き上げの
可能性はある旨示唆したことにより、米ドルが上昇したこと、米国での秋場の製油所メンテナンス作業が
峠を越えつつあることから、この先製油所の稼働上昇とともにガソリンの生産が増加するとの観測が市場
で増大したことから、ガソリン先物価格が下落したことにより、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレ
ル当たり 1.32 ドル下落し、終値は 46.58 ドルとなった。11 月 5 日には、前日 EIA から発表された同国石
油統計で原油在庫が市場の事前予想を上回って増加している旨判明した流れを引き継いだうえ、同じく
前日、イエレン FRB 議長が、米議会下院金融サービス委員会での証言で、米国の経済状況が改善し続
けるのであれば、12 月の金利引き上げの可能性はある旨示唆した流れを引き継いだことから、米ドルが
上昇したこと、米国石油関連情報サービス企業 Genscape が 11 月 3 日までの 4 日間で米国オクラホマ州
クッシングの原油在庫が 71.3 万バレル増加している旨報告したと 11 月 5 日に報じられたこと、米国での
秋場の製油所メンテナンス作業が峠を越えつつあることから、この先製油所の稼働上昇とともにガソリン
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
の生産が増加するとの観測が市場で増大したことから、ガソリン先物価格が下落したことにより、11 月 5
日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 45.20 ドルと前日終値比で 1.38 ドル下落した。さらに、11 月 6 日
においても、この日米国労働省から発表された 10 月の同国非農業部門雇用者数が前月比で 27.1 万人
の増加と市場の事前予想(同 18.0~18.5 万人の増加)を上回ったことで、12 月 15~16 日に開催される
予定の FOMC で金利引き上げが決定されるとの観測が市場で増大したことから、米ドルが上昇したこと
により、11 月 6 日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.71 ドル下落し、終値は 44.49 ドルとなっ
た。この結果、原油価格は 11 月 4~6 日の 3 日間で併せて 3.41 ドル下落した。
11 月 9 日には、10 月 30 日~11 月 5 日にクッシングの原油在庫が 180 万バレル増加したと Genscape
が報告した旨 11 月 9 日に報じられたことに加え、11 月 12 日に EIA から発表される予定の同国石油統計
(11 月 6 日の週分)で原油在庫が増加しているとの観測が市場で発生したこと、11 月 6 日に発表された
10 月の米国非農業部門雇用者増加数が市場の事前予想を上回っていたことから、12 月 15~16 日開催
予定の FOMC で金利引き上げが決定されるとの観測が市場で発生したことに加え、11 月 8 日に中国税
関総署から発表された 10月の同国輸出額(米ドルベース)が前年同月比で 6.9%の減少と市場の事前予
想である 3.0%の減少を上回っていたうえ、輸入額(同)が前年同月比で 18.8%の減少と市場の事前予
想である 16.0%を上回っていたことで、世界経済の不透明感を市場が意識したことにより、米国株式相
場が下落したことから、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 0.42 ドル下落し、終値は
43.87ドルとなった。11月10日には、この日国際エネルギー機関(IEA)から発表された「世界エネルギー
展望 2015」(WEO2015:World Energy Outlook 2015)で、2015 年の上流部門投資が前年比で 20%超削
減された結果、2020 年までには非OPEC 産油国からの石油供給がピークに到達する旨指摘したことで、
将来の対 OPEC 原油需要の増加と OPEC 産油国の市場支配力の回復を市場が意識したことから、この
日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 44.21 ドルと、前日終値比で 0.34 ドル上昇した。しかしながら、11
月10 日夕方に発表された米国石油協会(API)による同国石油統計で原油在庫が前週比で 630 万バレル
増加し市場の事前予想(同50 万バレル程度の減少~130 万バレル程度の増加)を上回ったこと、11 月の
イラクから米国への原油輸出量が 1,900 万バレルと 2012 年半ば以来の高水準となる可能性がある旨こ
の日報じられたことで、石油需給緩和感を市場が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で1
バレル当たり 1.14 ドル下落し、終値は 43.07 ドルとなった。また、11 月 12 日には、この EIA から発表され
た同国石油統計で原油在庫が前週比で 422 万バレルの増加と市場の事前予想(同 50 万バレル程度の
減少~130 万バレル程度の増加)を上回って増加している旨判明したことから、この日の原油価格の終
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
値は 1 バレル当たり 41.60 ドルと前日終値比で 1.47 ドル下落した。さらに、11 月 13 日には、11 月 12 日
に EIA から発表された同国石油統計で原油在庫が市場の事前予想を上回って増加している旨判明した
流れを引き継いだうえ、11 月 13 日に IEA から発表された「オイル・マーケット・レポート」において、9 月
末時点で記録的な 30 億バレル近くの在庫が OECD 諸国に存在する旨IEA が指摘したことで、世界石油
需給の緩和感を市場が意識したこと、11 月13 日に Baker Hughes から米国石油坑井掘削装置稼働数(11
月 13 日の週分)が前週比で 2 基増加の 574 基と 11 週ぶりに増加に転じた(石油水平坑井掘削装置稼働
数は前週比 2 基減少の 485 基)旨明らかになったことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当
たり 0.86 ドル下落し、終値は 40.74 ドルとなった。この結果、原油価格は 11 月 11~13 日の 3 日間で併
せて 3.47 ドル下落している。
3.今後の見通し等
原油相場に影響を与えうる地政学的リスク要因としては、引き続きシリア注目されるであろう。9 月 30 日
にロシアがシリア反政権派勢力に対する空爆(ロシアはイスラム国を対象としていると主張しているが、反
政権派勢力側はロシアがイスラム国でない反政権派勢力にも攻撃を加えている旨明らかにしている)を
通じてアサド政権に対する軍事支援を開始して以来、以前と比べアサド政権に有利な展開となってきて
いるように見受けられる。そのような情勢の中、11 月 14 日には、オーストリアのウィーンにおいて米国、
欧州、ロシア、国連等を含めた多国間外相級協議が開催され(シリアのアサド政権と反政権派勢力は出
席していないと伝えられる)、国連の主導のもとアサド政権と反政権派勢力との間で交渉を進めることによ
り、今後半年の間に移行政権を樹立し、新憲法を制定、その新憲法に従って 1 年半以内に選挙を実施
する旨合意した。ただ、アサド大統領の取り扱いに関しては同大統領による政権に反対する米国と、支
援するロシアとの間での意見の相違を解消できなかったとされる。このようにシリア問題に関しては、解
決に向け一定の進展は見られていることから、シリアを含めた中東地域全般における情勢不安定化に伴
う市場での石油供給途絶懸念が後退に向かうことにより、原油相場に下方圧力を加えてくる可能性もある
ものの、なおアサド政権と反政権派勢力との間での対立解消に向けては紆余曲折を経ることも予想され、
再び両勢力間、欧米諸国とロシア、サウジアラビア(シリア反政権派勢力に近い)とイラン(アサド政権側
に近い)、といった間で対立が激化するようだと、中東地域全体の情勢不安定化と当該地域からの石油
供給途絶懸念から、原油相場が押し上げられる場面が見られることも否定できないであろう。
また、リビアにおいても、現在西部の El Sharara 油田及び El Feel 油田(地方勢力の抗議行動に伴うパ
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れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
イプライン封鎖等で 2014 年 11 月 5 日(El Sharara 油田)及び同年 11 月 9 日(El Feel 油田)より操業停止
中、両油田併せて日量 45 万バレルの原油生産量とされる)で操業再開に向け協議が行われているか、
協議が始まろうとしている旨伝えられるものの、11 月 3 日には、東部の Zueitina 石油ターミナルにおいて、
警備兵が施設の操業を停止させたとして、リビア国営石油会社 NOC が原油出荷に関して不可抗力条項
の適用を宣言するなど、国内情勢が依然不安定なことがうかがわれる。同国では、西部トリポリを中心と
するイスラム勢力による政府(制憲議会派)、国際的に認知されている世俗派とされると東部トブルクの政
府(暫定議会派)、そしてイスラム国の勢力が、それぞれ存在しているうえ、東西両政府との融和を図る努
力は現時点では実を結んでいない。そして、引き続き両国での分裂状態が継続するようであれば、11 月
9日に報じられた時点で日量41.5万バレルとされる同国の原油生産量が増加する可能性が高まらないこ
とに加え、イスラム国等の武装勢力の活動が活発化すれば、リビアのみならず北アフリカ地域、そして中
東地域全体での政情不安が高まることで、当該地域での原油生産に影響が及ぶとの市場の懸念が増大
することにより、原油相場に上方圧力が加わるといった展開もあり得よう。
また、イランについては、同国のウラン濃縮問題に関し西側諸国等との間で 7 月 14 日に到達した最終
合意が10月18日に発効するなど、これまでのところは比較的順調に手続きは進んでいるように見受けら
れる。ただ、今後は、12 月15 日に取り纏めが予定される、イランの核兵器開発疑惑解明に関する国際原
子力機関(IAEA)による報告書、及び同国によるウラン濃縮活動等の制限状況に基づき、いつどのような
形で欧米諸国による制裁が解除され、イランの原油増産が可能になるのか、といった、より石油市場に直
接影響を及ぼすような局面に入ることになる。その意味でも、イラン、IAEA、及び西側諸国等の関係要人
の発言や行動により、原油相場が変動するものと考えられる。
米国等の経済指標類等に関しては、12 月 15~16 日に開催される予定である次回 FOMC において、
金利引き上げの決定がなされるかどうかにつき、市場の注目が集まることになろう。イエレン FRB 議長は、
このまま米国経済が改善を継続していくようであれば、12 月に金利引き上げを決定することが現実的で
ある旨示唆していることから、この面で実際に次回の FOMC までに米国の経済が改善を示すかどうか、
つまり今後 1 ヶ月程度の間に発表される経済指標類が、同国経済の改善を示唆しているかどうかで、金
利引き上げの決定に関する市場の観測が強まったり弱まったりするとともに、米ドルが変動、原油価格に
影響を及ぼすことになると考えられる。この場合、発表される指標類が、米国経済が改善しつつあること
を示唆する場合には、米ドルが上昇するとともに原油価格を押し下げる圧力を、悪化しつつあることを示
す場合には、米ドルが下落するとともに原油価格を押し上げる圧力を、それぞれ加えることになろう。た
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だ、経済が悪化しつつあることを示す経済指標類がある程度の数発表されたとしても、米国の金利引き
上げ時期が後ろにずれ込む可能性はあるものの、当面金利引き上げ方針が完全に撤回されるわけでは
ないと見られることから、この面では原油相場の上昇傾向が形成される可能性はそれほど高くはないと
考えられる。他方、経済が改善しつつあることを示す指標類がある程度の数発表された場合には、原油
相場に下方圧力が加わることになろうが、他方で、米国での石油抗井掘削装置稼働数が減少を示すこと
が多い状況下では、将来に向け米国での原油生産減少傾向が継続するとの見方が市場で弱まりにくい
ことから、原油相場の下落程度にも限りがあると考えられる。
欧州では、12 月3日に ECB の理事会の開催が予定されているが、その場において、追加金融緩和策
の実施が発表される可能性がある(10 月 22 日に開催された ECB 理事会後の記者会見で、12 月開催の
理事会で当該方策について発表される旨示唆されていた)。従って、今後ECB 理事会までの間に、欧州
地域経済の低迷を暗示する指標類が発表されたり、追加金融緩和実施に前向きな欧州金融関係者の発
言等がなされたりすることにより、12 月の理事会での追加金融緩和策発表の観測が市場で強まると、ユ
ーロが下落する反面、米ドルが上昇、その結果原油価格が下落する場面が見られることも想定される。ま
た、中国においては、PMI、輸出入、小売売上高、鉱工業生産等の指標類が発表される予定であるが、
これらの指標類が揃って同国経済の大幅な改善を示唆しているとも考えにくく、また仮に多少の改善を
示したとしても、同国経済が改善局面に入ったとの認識を市場が持つには至らないものと考えられる。こ
のようなことから、同国経済が減速していることを示唆する経済指標類が発表された場合には、中国石油
需要の伸びの鈍化に対する観測が市場で広がることにより、原油相場に下方圧力を加えるものの、経済
が改善する兆しを示した場合でも、原油相場への上方圧力は限定的なものになる可能性があるものと思
われる。
石油需給面においては、既に北半球では冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期に突入
している他、製油所も秋場のメンテナンス作業を終了させつつあり、原油精製処理量も増加しつつある。
しかしながら、依然として米国での原油在庫の積み上がりを抑制するまでには至っておらず、この面で
は、現在のところ原油価格はむしろ下落傾向を示すようになっている。ただ、今後は気温が低下すること
により暖房向け石油製品需要が増加すると見られる一方で、製油所の稼働も上昇するとともに、原油精
製処理量も増加していくと思われる。このため、需給の引き締まり感が市場で感じられるとともに、原油相
場に上方圧力が加わると考えられる。ただ、現時点では、米国北東部等では、気温が平年を上回る傾向
となっている他、2015~16 年の冬は暖冬になるとの予報が発表されていることもあり、今後も気温が平年
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を上回ったままであることに加え、暖冬予報が継続するようだと、原油相場の上昇も抑制されてしまうこと
もありうる。その意味では、この先も、米国での暖房油消費の中心地である北東部等の実際の気温や、
気温に関する予報に注意する必要があろう。
他方、米国での石油抗井掘削装置稼働数は、ここ最近減少傾向を示してきている。11 月 13 日に発表
された当該稼働数は前週比で若干ながら増加したものの、原油価格が 6 月下旬以降下落し 1 バレル当
たり 40 ドル台で推移するとともに、時間差をおいて掘削装置稼働数が減少傾向を示したことからすると、
このような減少傾向はなおしばらくの間は継続する可能性があり、その面では、この先も米国での原油生
産減少傾向が続くとの観測が市場で根強く継続するとともに、原油相場に上方圧力を加えてくると見られ
る。また、12 月 14 日に EIA から発表される予定である「掘削生産性報告」(DPR: Drilling Productivity
Report)において、米国の主要 7 シェール鉱床における原油生産量につき、2016 年 1 月の予想量が前
月比でなお減少傾向を示す(既に発表されている 12 月時点の原油生産量は 8 ヶ月連続で減少を示すと
EIA は予想している)ということになれば、なおさらのこと、市場での原油生産減少傾向に関する認識を
市場で強めることになるので、原油相場に上方圧力を加えることとなろう。
OPEC産油国は、12月4日にオーストリアのウィーンにおいて通常総会を開催する予定である。OPEC
産油国が 10 月の原油生産量である日量 3,138 万バレル(OPEC の月刊石油市場報告(MOMR:Monthly
Oil Market Report)の二次情報源情報による)を 2015 年一杯継続した場合には、2015 年は石油供給が
需要を日量 150 万バレル程度超過することになる。このため、需給を均衡させるためには OPEC 産油国
は減産の必要性に迫られることになる。減産に関しては、OPEC 産油国の盟主であるサウジアラビアが、
他の OPEC 産油国やロシア等の主要非 OPEC 産油国による真剣な協力が得られれば、検討してもいい
旨明らかにしている。また、11 月 11 日にエクアドルのメリザルデ再生不能天然資源相が、石油需給均衡
のためには減産が必要である旨明らかにしているなど、一部 OPEC 加盟国も減産の必要性を認識して
いるようである。しかしながら、9 月30 日には、イランのザンギャネ大統領が、自国は制裁解除後2 ヶ月以
内に日量 50 万バレル、6~7 ヶ月以内に同 100 万バレルの増加を真剣に計画している旨 12 月の OPEC
総会において加盟国に通達する旨明らかにしている他、11 月13 日には、ロシアのノバク エネルギー相
も、次回 OPEC 総会で減産が決定される可能性は低く、また、ロシアが自国の石油生産を削減すること
はないと発言したと伝えられる。このように、減産に対しては、加盟国間や主要非OPEC 産油国の間で必
ずしも足並みが揃っているわけではない状態にある。このようなことからすると、次回総会において、世
界の石油需給を均衡させるような減産の決定がなされる可能性はそれほど高くないものと考えられる。た
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だ、現在のところこのような展開の予想は市場関係者間で織り込まれている感があるため、事実上の減
産見送り決定が当該 OPEC 総会でなされた場合、条件反射的反応で原油価格が下落する可能性はある
ものの、その期間や程度は限定的なものとなる可能性があるものと考えられる。なお、次回OPEC総会に
おいては、インドネシアの OPEC 再加盟(2008 年 9 月 9~10 日に開催された OPEC 総会においてイン
ドネシアは事実上 OPEC を脱退することが認められた)が決定されると言われている。インドネシア自体
は原油生産量が日量85万バレル(2015年10月現在、IEAによる)と生産量としては規模が限られるうえ、
同国は2004年より石油純輸入国となっていることから、同国のOPEC加盟が石油市場に与える影響は限
定的と見られる(インドネシアとしては、OPEC に加盟することにより、石油の市場安定化に貢献する、と
いうよりは、OPEC 加盟各国との間で直接の長期原油取引関係を樹立することや、インドネシア国内のエ
ネルギーインフラ投資について OPEC 加盟国を呼び込むことに狙いがあると伝えられる)。ただ、インド
ネシアが OPEC に加盟することにより、従来日量3,000 万バレルであった OPEC 産油国の原油生産上限
が、日量 3,100 万バレル程度に引き上げられることが予想される。
全体としては、米国での金利引き上げ観測及び欧州での追加金融緩和策実施観測等が原油相場の
上昇を抑制する可能性があるものの、地政学的リスク要因面で、シリア問題に絡み原油価格を上振れさ
せるリスクが存在している他、冬場の暖房シーズン到来で季節的な需給の引き締まり感が市場で発生し
やすいうえ、米国での石油抗井掘削装置稼働数の減少傾向から、同国での将来の原油生産水準の低
下が継続するとの市場の観測により、原油相場が押し上げられやすいと考えられる。従って、原油価格
は当面現在の水準からそう離れない範囲内で変動する可能性はあるものの、上昇に転じる余地もまた存
在するものと思われる。
4.
OPEC 産油国の原油生産方針を巡る過去と現在の状況に関する一考察
OPEC 産油国は過去原油価格下落時を中心として減産(もしくは原油生産枠の引き下げ)を実施して
きた。しかしながら、2014 年11 月27 日以降の OPEC 総会では原油価格の下落もしくは低迷局面におい
ても、OPEC 産油国(特にサウジアラビア)は減産の実施について頑なに拒否し続けている。このように
同じ原油価格の下落もしくは低迷局面でも、OPEC 産油国の対応は分かれている。では、なぜこのように
異なる対応となったのであろうか。ここでは、OPEC 産油国を取り巻く需給環境等をもとに考察を加えるこ
ととしたい。
原油価格は 1970 年代の 2 度のオイルショックを経ることを通じ、例えば 1972 年には1バレル当たり
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1.90 ドルであったサウジアラビアの代表的油種であるアラビアン・ライト原油価格は、1980 年には 35.69
ドルと 19 倍近くにまで上昇した。ただ、これにより、石油市場に変化が生じ始めた。まず、石油のような液
体燃料でないと利用が困難になるような輸送部門を除き、天然ガス、石炭、及び原子力等他の燃料への
転換が促進された。このため、一次エネルギー需要に占める石油の割合が 1973 年から 1985 年にかけ
て 10%程度低下した(図 16 参照)。併せて、省エネルギーへの施策などにより、石油需要が減少に転じ
た(世界石油需要は 1979 年の日量 6,386 万バレルが 1985 年には日量 5,925 万バレルと日量 462 万バ
レル減少したが、これには、原油価格高騰に伴う経済への負の影響に伴う部分もあると考えられる)(図
17 参照)。他方、OPEC 産油国による自国の石油資産への支配強化に伴い資産を失った大手国際石油
会社等が英領及びノルウェー領北海、アラスカ等の米国といった、非 OPEC 諸国での石油探鉱・開発活
動を活発化させた他、メキシコでも石油開発活動が促進されたことにより、これら非 OPEC 産油国での石
油生産量が増加することとなり、1980 年代に入り石油需給が緩和し始めた。このような中、OPEC 産油国
はサウジアラビアが中心となり原油生産量の削減により石油需給を均衡させ原油価格の下落を抑制しよ
うと試みた。しかしながら、それでも原油価格は下落したうえ、非 OPEC 産油国の石油生産量は増加傾
向を示した(非 OPEC 産油国の石油生産量は 1979 年の日量 3,605 万バレルが 1985 年には日量 4,159
万バレルへと日量 554 万バレル増加している)(図 18 参照)。また、サウジアラビア以外の OPEC 産油国
の減産規模が限定的であったこともあり、1980 年10 月には日量1,056 万バレル(推定)であったサウジア
ラビアの原油生産量は 1985 年 8 月には日量 215 万バレル(同)へと、約 5 分の 1 にまで減少してしまっ
た(図 19 参照)ことに加え、原油価格も 1980 年の 1 バレル当たり 30 ドル台半ばから 1985 年には 20 ド
ル台後半へと下落した(しかしながら、例えば北海の開発・生産コストは当時 1 バレル当たり 6 ドルであっ
たとの指摘もあり、原油価格の下落によっても容易に石油生産を減少させる環境下にはなかった)。この
ためサウジアラビアの国内総生産(実質ベース)が 1981 年から 85 年にかけ 16%強縮小するなど、同国
経済に大きな影響を与えることとなった。このように、1980 年台前半を中心とする時期は、需要が継続的
に縮小傾向を示す構造へと転換していたと見られる他、非 OPEC 産油国からの石油供給が堅調に増加
していたことから、サウジアラビアが減産の大部分を負担するのは困難な状況となってしまった。この結
果、サウジアラビアは市場での製品価格から一定の精製利幅を差し引いた額を原油販売価格とするとい
う、いわゆるネットバック価格を採用し始め(1985 年 8 月(つまりサウジアラビアの原油生産量が日量 215
万バレル(推定)にまで減少した時)の出来事であったと伝えられる)、ここにサウジアラビアは減産による
石油需給均衡と原油価格安定への試みを放棄することとなった(そしてサウジアラビアはこのような形で
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の減産実施に関し以降は反対する姿勢へと転じたと考えられる)。そして、産油国間での価格競争が激
化するとともに、原油価格は 1986 年に 1 バレル当たり 10 ドル台前半へと下落した。
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次に原油価格が大幅に下落したのは 1990 年代後半である。1997 年7 月2 日のタイ政府による為替の
変動相場制への移行に伴うバーツの暴落により発生したアジア経済危機の世界株式相場への波及、そ
して世界経済の混乱により、1996 年に 1 バレル当たり 20 ドル前後であった原油価格は 1998 年には 10
ドル台前半へと下落した。そのような下落局面である 1998 年 3 月 31 日に開催された OPEC 臨時総会で
は、1998 年 2 月時点の OPEC 産油国の実際の原油生産量(二次情報源で日量 2,699 万バレル(イラク
除く))から日量 124.5 万バレル減産する旨決定した。この時点は、ベネズエラのチャベス大統領就任前
であり(同大統領の就任は 1999 年 2 月 2 日である)、ベネズエラの原油生産が伸び悩むようになる以前
であった。しかしながら、この時の総会では、メキシコとノルウェーが日量10万バレルの減産(推定、以下
同じ)、イエメンが日量 4 万バレルの減少、オマーンが日量 3 万バレルの減少、エジプトが日量 2 万バレ
ルの減少を総会に際して表明したとされるなど、非 OPEC 産油国からの協力を得られたことから、OPEC
産油国としても減産に踏み切り、実際OPEC 産油国間でも減産がなされることになった(当該減産期間は
1998 年 4 月 1 日~12 月 31 日であったが、1998 年 6 月 24 日開催の通常総会においては、OPEC 産油
国はさらに日量 135.5 万バレルの減産を決定した)。さらに、チャベス大統領の就任後、ベネズエラは
OPEC の原油生産枠を遵守する政策を強化した。また、この時期非 OPEC 産油国からの原油生産の増
加にもかつてほどの勢いが見られなくなった(図20 参照)。このようなことにより、OPEC 産油国としても減
産政策を実施しやすくなったことから、その後開催された OPEC 通常総会でもしばしば減産が決定され
ている。
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ただ、例えば 2001 年 11 月 14 日開催の OPEC 臨時総会時のように、ロシアなどの非 OPEC 産油国か
らの日量 50 万バレルの減産を条件に OPEC 産油国として日量 150 万バレルの減産を決定したものの、
ロシアやノルウェー、メキシコといった非 OPEC 産油国といった産油国からの減産面での協調が得られ
なかったことから、事実上減産が見送られた場面も見られた。それでも、2001 年12 月18 日に開催された
OPEC 臨時総会では、アンゴラ、ノルウェー、オマーン、ロシアが日量 46 万バレル程度の削減(何に関
する削減かについては直接的には言及されていない)を表明したことにより、日量 150 万バレルの減産
が決定された。当時の OPEC 総会の声明には以下のような記述が見られる。
Having reviewed the recent positive announcements from non-OPEC oil producers, namely Angola, Mexico, Norway,
Oman and the Russian Federation, regarding their pledged reductions, totaling 462,500 b/d, and the current oil market
situation, the OPEC conference confirmed its decision to implement the previously announced reduction of its overall
production level by an additional 1.5 million barrels a day, for six months, effective 1st January 2002.
(仮訳)
「最近非 OPEC 産油国、具体的にはアンゴラ、メキシコ、ノルウェー、オマーン、そしてロシアが合計で日量 46.25 万バ
レルの削減を表明したこと、そして現在の石油市場の状況を検討し、OPEC の総会では、以前発表した日量150 万バ
レルの追加減産を 2002 年 1 月 1 日より 6 ヶ月間実施するとの決定を確認した。」
これに従って、ロシアは 2002 年 1 月 3 日に同年第一四半期の輸出を日量 15 万バレル削減する旨明
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らかにしたが、実際にはその輸出削減の基準となる量(つまりどの量からの削減となるのか)が曖昧であ
ったことから、その後実際に輸出が削減できたどうか確認できない状況となった(因みに同国の原油生
産量を見てみると 2001 年 12 月は日量 723 万バレルであったが、2002 年 2 月は日量 736 万バレルと増
加している)。
また、2008 年のリーマンショック時の原油価格下落局面で開催された OPEC 総会でも減産が決定され
た(2008 年 10 月 24 日臨時総会時に日量 150 万バレルの減産、そして同年 12 月 17 日通常総会時に日
量 420 万バレルの減産(2008 年 9 月時点の OPEC 産油国の実際の原油生産量(日量 2,905 万バレル(イ
ラク除く)とされる)に基づく)。この時は、世界経済が混乱をきたしていたものの、1980 年代前半に見られ
たような、石油需要を持続的に減少させるような構造的変化が発生していた、もしくはその兆候が見られ
たというわけでもなく、また、やはり非 OPEC 産油国の石油生産も伸び悩み気味であった(図 21 参照)。
そして、2008 年 12 月 17 日に開催された OPEC 総会においては、ロシアからセーチン副首相、アゼ
ルバイジャンからアリエフ産業・エネルギー相等の要人がオブザーバーとして参加した。総会開催前日
の 12 月 16 日には、OPEC のバドリ事務局長が、ロシアに日量 40 万バレルの減産を要請し、その他
OPEC 産油国に日量 10~20 万バレルの減産を期待している旨発言した一方で、ロシアは、総会開催に
際して、11 月の時点で既に日量 35 万バレルの減産を実施しており、原油価格の低水準が続けばさらに
日量 32 万バレルの追加減産の用意がある旨表明、アゼルバイジャンも日量 30 万バレルの減産を実施
する旨明らかにしていた。ただ、実際に総会が進行するにつれ、この両国は減産の確約に対し躊躇する
ようになり、最終的にはこの時の OPEC 総会の声明では、この両国を含めた非 OPEC 産油国による減産
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については具体的には言及されないこととなった。この時のOPEC総会の声明では、非OPEC産油国に
関連する記述は以下の通りとなっている。
...the Conference renewed its call on non-OPEC producers/exporters to cooperate with the Organization to support
oil market stabilization.
(仮訳)
「...総会では非 OPEC 生産者/輸出者に対して、石油市場安定化支持のため OPEC に協力するように改めて呼び
かけた。」
つまり、この時の総会においては、OPEC 産油国側から非 OPEC 産油国に対して一方的に協力を呼
び掛けた形にとどまっており、非OPEC産油国側からは何ら減産に関する公式な表明は行われなかった
ことが示唆される。このような状況であったため、ロシアやアゼルバイジャンによる減産は多分に象徴的
なものとなっており、実質的な効果は余り期待できなった。そして実際ロシアの原油生産量は 2008 年 12
月には日量959 万バレルであったが 2009 年2 月においても日量958 万バレルと殆ど変化は見られなか
った。なお、ヘリル OPEC 議長(当時のアルジェリアの鉱業・エネルギー相)は、2008 年 12 月 23 日に、
「ロシアは OPEC の減産の恩恵を受けるだけでなく、減産に貢献することを、OPEC としては期待してい
る。ロシアが(1 バレル当たり)20 ドルでなく 40 ドルで原油収入を得られるのは OPEC のおかげだ。」とい
う趣旨の発言をしたと伝えられる(なお、ノルウェーは 2008 年 11 月 25 日に、メキシコは 12 月 16 日に、
それぞれ関係者が OPEC に対して減産に協力する計画はない旨表明していた)。
このように見てくると、1980年代前半以降(1980年代前半は含まない)でOPEC産油国が減産を決定し
た場合というのは、世界石油需要が持続的に減少するような構造的変化が生じていないという事情があ
ったうえで、①OPEC 各産油国の個別の原油生産枠が設定されていることを含め、各産油国の減産遵守
が得られやすい環境が整っている、②非 OPEC 産油国の石油生産が伸び悩み気味になっている、③
OPEC 産油国の減産に際し一部の非 OPEC 産油国からの減産協力が得られる、といった条件につき、
少なくとも一つは満たされている状況下にある、ということが判明する。他方、2014 年以降の原油価格下
落局面においては、①については、OPEC 各産油国の個別の原油生産枠が設定されていない他イラク
やイランが実際に増産しているか近い将来増産する意向を示している旨示唆されている、②については、
米国のシェールオイル生産が増加する潜在力を有している、③については、ロシアをはじめとする非
OPEC 産油国からの減産協力が得られる状況ではない、ということで、いずれの条件も満たされていな
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い。従って、ここでサウジアラビアが中心となって減産を実施しても、販売量が確保できないうえ価格も上
昇しないといった、1980年代前半の状況と全く同じというところまではいかないまでもかなり類似した状況
に陥る可能性があることをサウジアラビア側が懸念した結果、原油価格が上昇しないことに関しては致し
方ないとしても、販売力の確保により原油収入の減少を最小限に抑制することを目指すため、OPEC 産
油国間での減産に合意しない、という方針を採用するに至っているものと考えられる。
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