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2) 模型用エンジンの種類と特徴

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2) 模型用エンジンの種類と特徴
8
ENGINE
N
REVIEW
W
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 5 20014
模型用
用エンジン
ンの種類
類と特徴
徴
~Max450000rpm の秘密
密とは~
小川精機株式
式会社
:開発
発グループ
じめに
1 はじ
模型用エンジンの種
種類は多岐に渡る
るが,弊社が製造販売している
るエンジンの内,主な用途ごとに
にその構造と特徴
徴を紹介する。
めに弊社につい
いて簡単にご紹介
介させていただく。昭和11年(1
者の故小川重夫
夫が大阪市東住吉
製作所を創業。模
模型飛
はじめ
1936),創業者
吉区にて小川製
行機用エンジン(O.S.1 型ピキシー)とし
して OS エンジン
ンは誕生した。 (図1)
同 16
6 年,資本金 200 万円にて小川精
精機株式会社を
を設立。同 29 年
年,模型用ラジオ
オコントロール装
装置の生産開始。
。同 32 年,現在
在の本社工場を新
新築移
転。同 43
4 年,世界初の
の模型用ロータリ
リーエンジンの商
商品化に成功。同
同 48 年,日本初
初のシュニューレ
レ掃気方式のグ
グローエンジンを開発。同 51 年,4 サイ
クルエン
ンジンの量産開始。同 53 年,ラ
ライブ・スチーム・ロコモーティブ
ブの製造,販売を
を開始。同 58 年,奈良工場完成
年
成。平成 2 年,模
模型用スーパー
ーチャー
ジャー付
付 4 サイクルエン
ンジンを開発。常
常に模型用エンジ
ジンメーカーのパ
パイオニアとして
て成長してきた。模型を趣味とす
する人には”O.S.エンジン“という
うブラン
ドで,国
国内外で良く知ら
られている。
2 模型
型用エンジンの種
種類と基本構造
造
模型用のエンジンと
として使われるの
のは,ガソリンやバイオエタノール
ルを燃料とする
るものもあるが,一
一般的にメタノー
ールを主成分と
とする燃料を用い
い,2及
トロークサイクル
ルのグローエンジ
ジンが主流を占め
める。 本稿では
は,2 ストロークグ
グローエンジンを
を主に述べる。
び4スト
模型用グローエンジ
ジンの代表的な構
構造を図2に示す
す。 2ストローク
クサイクルエンジ
ジンの場合,キャ
ャブレターを通っ
った燃料はクラン
ンクシャフト(図3
3)の中
心部を通
通り,クランクケ
ケース内で1次圧
圧縮されて吸気ポ
ポートを経てシリ
リンダ内に入る。
シリン
ンダヘッドに取り
り付けられたグロ
ロープラグに電流
流を流し,フィラ
ラメントを赤熱させ
せてエンジンを始
始動させる。 そ
その後通電を止
止めてもフィラメン
ントは,
燃焼熱
熱と触媒熱によっ
って焼玉として働
働きエンジンは回
回転を持続する。
。 エンジンが高
高回転で運転されれば,フィラメ
メントは冷える間
間もなく高温にな
なり,点
火時期は自動的に進角
角される。 点火
火時期の調整は
はフィラメント材料
料である,複数の
の白金族の配合
合量などで調整す
する。 プラグが
が持つ熱価ごとに
に,ホッ
プとコールドタイプ
プに位置づけられる。それぞれ
れの使い分けは,
,プラグのフィラ
ラメントの熱が高
高温になり,断線
線やノッキングに
によるオーバーヒ
ヒートが
トタイプ
発生する場合,コールドタイプを使って
て適温に下げ,ト
トラブルを防ぎ, 逆に始動後いつ
つまでも温度が
が上がらず,レス
スポンスが今ひと
とつの時にはホッ
ットタイ
プを使用
用し適正な点火
火タイミングを得る
るといように使い
い分ける。 (図4
4)
シリン
ンダーは真鍮,炭
炭素鋼鋼管で無
無電解 NiP メッキ
キやハードクロム
ムメッキを施して
ている。 シリンダ
ダー自体は単純 なパーツだが2サイクルエンジンの場
合ポート(穴あけ) 加工
工形状,切削角度
度等が性能追求
求の要となる。 そ
その為5軸同時
時加工などを駆使
使して加工してい
いる。(図5)
ピスト
トンは,ピストンリング仕様のエンジンでは実物
物のエンジンと近
近い AC8A 相当を
を用い,コンプレ
レッションリングが
が1本ついている
る。(図6)
ピスト
トンリング径φ19.5 以下のピス
ストンでは,特殊な
なハイシリコンア
アルミのピストン
ンと,真鍮製シリン
ンダーを組み合
合わせることによ
より,ピストンリン
ングを使
用せず気密を保つ。この為にサブミクロンレベルでのマッチングとミク
クロンレベルで管
管理されたテーパ
パー加工を施して
ている。
クラン
金のブッシュがはめ込まれてい
ンクピンとピストンピンはすべり軸受けで,強度
度と軽量化の為コ
コンロッドは超ジ
ジュラルミン製で
で両端には銅合金
いる。ク
ランクシ
シャフトが片持ち
ちであることが構
構造上の特徴であ
ある。
空気と燃料の混合比
比率はキャブレタ
ターによって調整
整され,通常は4
4~7 位の間で運
運転される。
Fig.1 O.S.1型ピキシ
シー
Fig.2 エンジン断面図
Fig.3 シャ フト外観
Figg.4 グロープラグ
グ外観
Fig.5 シ
シリンダー外観 Fig.6 ピストン外観
3 各種
種エンジンの用途
途別特徴につい
いて
一口に模型用エンジ
ジンといっても,搭
搭載する模型が
が飛行機であった
たり,車や ヘリコプターであった
たりとその形態 や使用する目的
的は様々で,中に
には安
定した回
回転が求められ
れるものもあれば
ば,高出力が求め
められるものもあ
ある。
表1に
に代表的な用途
途と基本諸元に示
示す。
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ENGINE
N
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SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 5 20014
Tab
ble 1 模型用エ ンジンの代表的
的な用途と基本諸
諸元
特性項目
エンジン特
品名
Bore (mm)
Strokee (mm)
気筒
筒数
エンジン排
排気量( cc)
点火 形式
圧縮
縮比
長さ
幅
エンジ
ジン寸法( mm)
高さ
ド ライ
重
重量(
kg)
最低回転
使用回
回転領域( rpm)
最高回転
常用運転時 (L/ H)
燃費
最大( kW))
出力
トルク
最大( Nm)
飛行
行機用2st
小
中
大
15LA
65AX 160FX
15.2
24.0
33.6
13.7
23.5
29.6
1
1
1
2.49
10.63
26.25
グロー グロー グロー
7.69:1 10.28:1
1
8.12:1
93.3
115.5
63.7
60.0
74.0
40.0
99.5
123.2
61.0
0.497
0.925
0.138
2,000
1,800
2,500
18,000 12,000 10,000
1.75
2.50
0.50
1.287
2.721
0.302
0.768
2.888
0.169
飛行機用 4st
小
中
大
V FR7-420
FS-30S FS-95V
19.5
29.00
24.0
16.4
23.66
22.0
1
1
7
4.90
15.599
69.67
グロー グロー
ー グロー
7.74:1 9.30:1 8.79:1
82.0
115.77
158.5
44.0
61.00
230.0
86.5
119.00
230.0
0.279
0.592
3.167
2,500
2,1000
1,500
13,000 11,0000
7,000
0.60
1.200
3.50
0.368
1.250
―
0.351
1.194
―
ヘリコプター用
小
中
大
37SZ--H 55HZ-R 1055HZ
200.5
23.0
2
29.0
188.4
21.5
2
26.0
1
1
1
6.007
8.93
177.17
グロー
ー グロー グロ
ロー
13.7::1 11.4:1 10.00:1
755.0
76.6
8
85.5
455.0
52.0
6
61.0
766.5
90.9
1000.7
0.29 3
0.429
0.5596
2,0000
2,000
2,0000
21,0000 20,000 16,5500
2.114
2.31
3
3.27
1.0300
1.545
2.721
0.5466
0.868
1.733
車用
車
中
12XZ Spec.3 R2
2101
13.8
16.1
17.2
14.0
1
1
3.49
2.09
グロー グロー
グ
7.47:1 7.12:1
65.6
52.4
45.0
39.0
94.2
82.6
0.225
0..340
5,000
4
4,000
45,000 455,000
0.90
1.50
1.287
2..059
0.351
0..596
小
大
30VG
18.5
18.2
1
4.89
グロー
8.65:1
65.6
45.0
113.0
0.360
4,000
36,000
2.18
2.207
0.753
舶用
221XZ-M
16.27
16.8
1
3.49
グ
グロー
65.6
45.0
78.0
0.307
4,000
4
45,000
2.059
0.596
以降用
用途毎に,その特
特徴や工夫点を
を述べる。
3.1 飛行機用
飛行
行機用エンジンは
は 1936 年に販売
売された OS1 型ピキシーが最初
型
初で,2ストローク
クサイクルでピス
ストンバルブ,ピ
ピストンにデフレク
クタのない横断掃気エ
ンジンで
で,圧縮比は 4.55 で,回転数はせ
せいぜい 4000rpm 程度であった
た。その後 1940
0 年には 9.35cc
c の OS6 型が発
発売,当時の最高
高性能のエンジ
ジンで圧
縮比 5.2
2 最高回転 7000rpm であった。戦争中アメリカにおいてグロー
ープラグ点火方式
式が実用化された。 現在におい
いては排気量は
は 5~70cc で圧縮
縮比は
約8程度
度,最高回転数
数は 13000rpm になる。
に
飛行機用エンジンの主
主流である AX シリーズエンジン
シ
を図7に示す。
飛行機用として工夫
夫している点はロ
ロータリーバルブ
ブ方式のためキャ
ャブレター位置が
がプロペラ回転域に近いため, 安全性から燃調
調ニードル部を斜
斜め後
るよう設定してい
いる。排気量によ
よりシリンダーピ
ピストンは小型(55cc 以下)はピス
ストンンリングレス
ス方式とし,中・大
大型はリング方
方式を採用。
方になる
特殊な例として 19770 年に販売を開
開始したロータリ
リー・エンジンを 紹介する。(図8
8)バンケル型ロ
ロータリー・エンジ
ジンと同じ構造で
で,同じ原理で作
作動す
る。(図
図9)従来のレシプ
プロエンジンは,シリンダー内で
でのピストンの往
往復運動をクラ
ランク軸の回転運
運動に変換し動
動力を取出してい
いるのに対し,ロ
ロータリ
ー・エン
ンジンはローター
ーで発生する回転
転力を直接出力
力軸に伝えている
る。 このためレ
レシプロエンジン
ンは往復運動によ
よる慣性力の不
不釣合いのため振
振動が
大きいが
が,ロータリー・エンジンは,ロー
ーターの回転運
運動のみなので, 容易にバランス
スをとることがで
でき,振動が少な
なく,非常に円滑
滑に作動する高性
性能エ
ンジンで
である。
初期はサイドポート吸
吸気であったが
が,ペリフェラルポ
ポート吸気に変更
更され現在に至っている。
Fig.7 AX シ
シリーズ
Fig.8 ロータリエンジン
Fig
g.9 エンジン構造
造詳細
3.2 RC カー用エンジン
カー用
用エンジンは 2.1cc から 5.0cc,圧縮比は 7 程度。 オンロード
ドのレーシング用
用では実用回転数が 45000rpm
m に達する。
1/10 ツーリングにおい
ツ
いて 2011 年,2013 年に全日本チ
チャンピオンに輝
輝いた O.S.SPEE
ED 12XZ SpecIIII の工夫点と特
特徴について述べ
べる。(図10)
全回転域でトルクフル
ルな出力特性,さらにどんな回
回転域からでも微
微妙なスロットル
ル操作に確実に追
追従するレスポ
ポンスは,必要な
なパワーをドライバ
バーの
望む時に発生させ,そ
その結果,過酷な
な走行条件下で
でも,ドライバーに
にとって運転自体
体が楽に感じら
られる自然なエン
ンジンフィーリン
ングを実現してい
います。
その実現
現のために以下
下の工夫をしてい
いる。
シリン
ンダーライナーは
はオーソドックス
スな3ポート(掃気
気3ポート+排気
気1ポート)ながら
ら,O.S.SPEED 専用のポート及
専
及びインナーヘッ
ッド(燃焼室)との組
組み合
わせにより,ベースエン
ンジンの低燃費性能を犠牲にせ
せずにスムーズ
ズ且つ伸びの有る
る出力性能を実
実現。軽量,低重
重心専用アウター
ーヘッドを採用。ボトム
けられた多数の
の穴は,軽量化と
と抜群の冷却性能を実現する。 また前モデル比
比約 2.5mmダウ
ウンの全高を実
実現。低重心化が
がマシンの運動性
性能向
からあけ
上に大きく貢献している
る。
リヤボ
ボールベアリング
グには,転がり抵
抵抗軽減の為に
にセラミックスボ
ボールベアリング
グを採用している
る。クランクシャフ
フトにはポッテイ
イング加工を施し
し,カウ
10
ENGINE
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SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGGINEERS OF JAPAN
Vol. 4 No. 5 20014
ンターウ
ウェイト部には慣
慣性マスを最適化
化する為にタング
グステンウェイト
トを追加している
る。表面処理には
は耐久性と滑り性
性に貢献する DLC コーティング
グを施し
ている。
。
図11
1は小川精機が
が管理する奈良県
県の R/C エンジンカーの専用サ
サーキットです。エ
エンジン R/C カーの普及を目指
指して設置してい
いるコースで,エ
エンジン
カーを対
対象としたレース
スイベント等を定
定期的に開催。エ
エンジン R/C カー
ーを思う存分楽
楽しむことが可能である。
Fig.10 RC カーエンジン
ン
Fig.11 専用サ
サーキット
3.3 ヘリコプター用(図12)
ヘリコ
コプター用エンジ
ジンはホバリング
グ時等の冷却の
のためシリンダヘ
ヘッドが大きく作ら
られている事が特
特徴である。 排
排気量は 5.23cc~17.17cc で圧
圧縮比
は 11 程度。
程
回転数は
は 15000~230000rpm 程度である
る。近年,模型ヘ
ヘリコプターは,運
運動性能が格段
段に向上し,エン
ンジンもその激し
しい飛行姿勢の変
変化に
対応する性能が求めら
られる。安定した
た燃料供給システ
テムの開発は燃
燃料加圧方式の
の領域に入ってい
いる。エンジン使
使用回転域は,キ
キャブレタースロ
ロットル
ング域とスロットル
ル全開のフルパ
パワー領域の 2 系統で安定した
た出力特性が要
要求される。ヘリコ
コプター専用エン
ンジンを図13に
に示す。
開度が半分のホバリン
このエン
ンジンは,F3C 競
競技用をターゲ
ゲットに開発された
たものである。
図のエンジン
ンではブルーアル
ルマイトのヒートシ
シンクで冷却効果を高め,高回
回転,高
出力が要求され,高め
めの圧縮比であり
りながら,熱ダレ
レしない新設計の
の燃焼室形状とし,ホバリングと
と上空フライト時
時の出力域での安
安定した運転を可
可能に
している
る。
Fig.12 ヘリ
リコプター
13 ヘリコプター
ー用エンジン
Fig.1
3.4 ボート用
ボート用エンジンは,
,カー用や飛行
行機用エンジンを
をベースにしなが
がらも,水上走行
行に欠かせないトルクフルな出力
力特性を得られ
れるようなチュー
ーニング
を施して
ている。船体内部
部は密閉された状態になるので
で,確実な冷却性
性能を得るため,
,水冷ヘッドの装
装着を基本として
ている。(図14)
Fig.114 ボート用エン
ンジン
4 さい
いごに
今ま
まで模型用エンジ
ジンとしては様々
々な構造のものが存在したが, 小型,軽量,低コストを基本とし
して,複雑な構造
造なものは淘汰されてきた。
本報が
が物づくりを目指
指す若いエンジニ
ニアや,自動車用
用エンジンをはじ
じめエンジンを開
開発に携わる人達の一助になれ
れば幸いである。
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