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年代 - World Bank

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年代 - World Bank
ザンビアを訪問中の
ロバート・S・マクナマラ
世銀総裁。1972年
11月15–18日。
キングストン(ジャマイカ)のビクトリア・
ジュビリー病院で、出産を終え、
退院を控えた母親たちが家族
計画の講義を受けています。
1970年、世銀は家族計画
プロジェクトに対する最初の融資
を行いました。
ロバート・S・マクナマラ
世銀総裁。
1968–1981年。
チュニジアを訪問中の
ロバート・S・マクナマラ
世銀総裁。1973年。
1970
国際農業研究協議
グループ(CGIAR)が
設立される。
IDA第3次増資が行われ
る。拠出総額は29億ドル。
世銀の融資承認総額が
初めて30億ドルを超える。
世銀職員組合が
設立される。
1973
日本が世銀の5大出資
国の1国となる。
1972
世銀グループの融
資承認額が初めて
20億ドルを超える。
1971
1970
年代
ロバート・S・マクナマラ(1968–1981)
ロバート・S・マクナ
マラ総裁がナイロビ
で開催された年次総
会で演説し、貧困の
緩和が初めて世銀ア
ジェンダの筆頭に位
置付けられる。
開発の有効性
運河の拡幅・増深を行うために、
土手から土砂を運び出す人々。
1974年「スエズ運河改修
プロジェクト」
。
イエメンの「サナア上
下水道プロジェクト」
(1977年)
では、井戸と
給水所が建設されたほ
か、揚水器とパイプラ
インが整備されました。
パキスタンの「タルベラダ
ム・プロジェクト」
(1974年)
は、カナダ、フランス、イ
タリア、パキスタン、英国、
米国、および世銀が共同
で拠出した5億ドルの資金
によって実現しました。
最初の環境融資が行わ
れる
(フィンランドの水質
汚染抑制プロジェクト)。
IDA第4次増資が行われ
る。拠出総額は45億ドル。
最初の「世界開発
報告」が発行され
る
(「世界開発報
告:1950–75年の
総括」)。
1979
IDA第5次増資が
行われる。拠出総
額は77億ドル。
1978
栄養プロジェクトに対す
る最初の融資が行われ
る
(ブラジル、1900万ド
ル)。
1977
IBRDとIDAの農村開発
プロジェクトに対する
単一年度の融資承認総額
が10億ドルに迫る。
1976
1975
カルカッタで子供の診察をする医師。
1973年「カルカッタ都市開発プロジェクト」。
世銀の融資承認総額が
初めて100億ドルを
超える。
保健・医療プロジェクト
に対する融資を開始。
4
第4章
開発の有効性
世界が安定と繁栄を達成するためには、開発関係者
に次の3つの分野における行動が重視されています。
が測定可能な結果を達成することが不可欠です。それ
はより多くの人々を貧困から救うことであり、高等教育
■ 途上国―結果が達成される場所。結果重視マネ
へのアクセスを改善することであり、乳幼児死亡率を引
ジメントを実現するための計画、統計、モニタリング、
き下げることです。よりよい政策決定を下し、効果的な
および評価能力を高める。開発結果の説明責任
開発戦略を策定するためには、こうした望ましい結果の
に対する国民の意識を喚起する。
達成に焦点を当てる必要があります。開発のための新
■ 世銀―戦略、手段、インセンティブ、および報告シス
たなパートナーシップは、ミレニアム開発目標(MDGs)
の
テムの結果重視志向を強め、適切で効果的な
達成に向けた進捗状況を測定することを各国に提唱し
パートナーとなる。
ています。2004年度、世銀は「結果アジェンダ」に着手
■ すべての開発機関―アプローチの共通化を進め、
しました。これは開発機関としての世銀の有効性を高
途上国のキャパシティ・ビルディングを協調的に支援
めることを目的とした行動計画です。また、開発パート
することによって、結果重視マネジメントのグローバ
ナーと共に、第1回の「グローバル・モニタリング・レポー
ル・パートナーシップを構築する。
ト」
を作成し、MDGsを達成するために各国が進めてい
る政策と行動の進捗状況を評価しました。
2004年度は3つの分野のすべてで進展が見られま
した。
結果重視マネジメント
結果重視マネジメント
(適切なデータをもとに、途上国
結果重視マネジメントを実現するために、途上国には
がよりよい意思決定を下し、明確に定義された目標に向
意欲と能力が求められます。結果に関する情報を要求
かって開発を進めることができるようにすること)
は、国
する政治的意思と、そうした情報を生成し、政策・経営
際的な開発アジェンダの中心を占めるものであり、世銀
判断に活用するための制度と専門知識がなければ、前
の戦略目標の中核を成すものでもあります。世銀は融資
に進むことは不可能です。しかし、多くの途上国には開
と非融資活動の質を改善し、援助の効果を高めること
発結果に関する基本的なデータも、モニタリング・評価
によって、結果重視マネジメントに貢献しています。2003
システムも、結果に関する情報を経営者や政策決定者
年度は結果重視マネジメントの概念フレームワークと世
に提供する制度構造もありません。
銀としての行動計画が策定され、この計画に基づく行
動は2004年度から始まりました。
このフレームワークはプロジェクトのあらゆる段階で結
84
途上国のキャパシティ・ビルディング
こうした課題に取り組む途上国を支援するために、
世銀は政府の貧困削減戦略の結果重視志向の強化を
支援し、国内の制度が結果重視マネジメントに対応した
果に重点を置くことを提唱しています―つまり、初期(戦
ものとなっているかどうかを評価し、的確な分析活動、
略的な計画立案とプログラム設計)、実施中
(日々のプ
公共セクター改革、および財政管理の強化を通して、政
ロジェクト管理と設計の修正)
、および完了後(プロジェ
府機関が結果重視アプローチを導入できるよう支援して
クトの評価と今後に向けた提言)
です。この計画では特
います。2004年度の特記事項の一つは、途上国の統
世界銀行 年次報告 2004
計システム、制度能力、および計画立案を強化するため
囲み4.1
結果重視型CAS
の包括的な融資プログラム「統計能力育成プログラム」
が構築され、適用が始まったことです。世銀は各国で
結果重視型CAS(国別援助戦略)
は、世銀職員が最も
の開発経験からベストプラクティスを抽出し、その普及
適切で効果的な援助プログラムを組み合わせて、途上国
に取り組んでいますが、こうした知識共有活動も途上国
を支援できるようにしたものです。結果重視型CASには次
の開発結果を高める一助となっています(第5章「知識
のような特徴があります。
共有と分析・助言サービス」参照)。
■
開発結果への貢献
高い開発結果を達成することは世銀の普遍的な目標
援との関連性が明確に定義されている。
■
です。しかし、成功を測る指標は時と共に変化してきま
した。たとえば、かつては援助の「量」が重要な指標と
世銀と対象国を合意された結果に導くことのできる、
強固なモニタリング・評価システムが導入されている。
■
され、その後は個々の融資プロジェクトの「質」が問わ
れていました。しかし、ここ数年は開発結果をより広範
支援対象となる活動が目指す結果、および世銀支
対象国の結果重視マネジメント能力の強化に重点
が置かれている。
■
経験から学ぶ仕組みがある。次のCASと世銀の活
な視点から捉えることが求められるようになっています。
動の参考とするために、終了したCASは体系的に評
これは世銀の報告書とサービス
(分析活動、キャパシ
価される。
ティ・ビルディング、グローバル・プログラムなど)
が多様化
し、個々のプロジェクトの結果から、国レベルの結果に
焦点が移されるようになったためです。
2003年度と2004年度は6件の結果重視型CASパイ
ロットプロジェクトが承認されました。初期のフィードバック
世銀は国別援助戦略とセクター戦略、融資手段、報
により、こうしたプロジェクトはセクター横断的な議論を喚
告システム、および世銀職員のインセンティブを、測定可
起し、適切な援助プログラムの選択に寄与していることが
能な結果を重視したものに作り替えることで、この新し
分かりました。途上国と世銀の対話も強化されています。
い指標に対応しようとしています。2004年度は世銀の報
パイロットプロジェクトに対する正式な評価は2005年度に
告書とサービスを国レベルの結果とよりよく結びつける
実施される予定です。今後は結果重視型CASが広範に
ために、結果重視型CASのパイロットプログラムを導入
採用されていく予定です。
第4章
開発の有効性
85
開発機関との連携
開発結果を高めるためには、
途上国と開発機関の連携を強
化するだけでなく、開発機関同
士の連携も強化する必要があ
ります。開発機関が援助対象
国に課している結果報告義務
は、対象国のモニタリング・評
価システムと一致したものでなけ
ればなりません。また、途上国
の結果重視マネジメント能力を
強化するためには、各国の取り
組みに対して、開発機関が調和
の取れた支援を提供する必要
があります。
こうした問題に対処するため
に、世銀は2004年度、結果重
しました(85頁の囲み4.1参照)。世銀のセクター委員
視マネジメントに焦点を当てた2つの公式パートナーシッ
会では、セクター/テーマ戦略の結果フレームワークと結
プの構築を支援し、積極的に参加しました。その一つ
果モニタリングが強化されました。結果志向を明確にし、 は多国間開発機関のパートナーシップ、もう一つは多国
世銀業務のモニタリングと評価を強化するという観点か
間開発機関と二国間開発機関のパートナーシップです。
ら、基本的な文書と手続きにも変更が加えられました。 世銀は他の機関と共に、結果重視マネジメントに関す
また、結果重視アプローチの導入によってスキルの需要
る国際会議も開催しました。2004年2月にモロッコで開
が高まっていることを受けて、世銀職員と執行部がこう
催された「第2回結果重視マネジメントのための国際円
した需要に応えることができるよう、長期的な学習戦略
卓会議」はその一つです。こうしたパートナーシップや会
の策定も進んでいます。結果重視アプローチの重要性
議は、開発機関と途上国が結果重視マネジメントを促
はますます高まっており、世銀文化の一部と見なされる
進し、グッドプラクティスを共有し、お互いから学ぶ機会
ようになっています。
となっています。
世銀はIDA第14次増資(IDA14、対象期間2006–08
「第2回円卓会議」の主催者たちは、結果重視マネジ
年)
に備えて、高度な結果測定システムを構築しました。 メントの中核原則、共同合意文書、および行動計画を
このシステムは貧困削減戦略の優先項目との整合性
採択し、結果重視マネジメントの定義とそれを実現する
や、ミレニアム開発目標との関連性に基づいて、プロ
ためのアプローチについて、
広範な合意を形成しました。
ジェクトの成果を測定するものとなる予定です。このシス
この円卓会議では各国の統計機関も、国際統計システ
テムは開発結果の達成状況と、それに対するIDAの貢
ム
(国際的な協力を含む)
を強化するための中期的な
献に関する情報を総合的に提供するものとなります。
行動計画について合意しました。こうしたイニシアティブ
世銀全体を網羅した包括的な結果報告システムを構
を通して、世銀とその他の開発機関は調和の取れた結
築し、国、セクター、およびグローバルレベルの結果情報
果重視のアプローチと報告を実現するための基盤を
を集めることは、結果アジェンダの重要な目標の一つで
整えつつあります。
す。しかし、このシステムは結果重視型CASや、結果志
向のプロジェクト/プログラムから得られる情報を必要と
するため、結果重視アプローチが世銀の業務全体に拡
大されるまでは、その効果は限られたものとなります。
86
世界銀行 年次報告 2004
政策・手続きの簡略化と調和化
途上国への援助を近代化・簡略化するために、世銀
は投資政策と構造調整融資政策の合理化と改訂を進
めています。その一環として、世銀は投資融資における
融資対象項目の拡大、支出・財政管理・調達メカニズ
ムの近代化、受託者手続きとプロジェクトのセーフガード
評価の合理化、およびその他の開発機関との政策の
調和化を進めています。
開発資金と引き換えにドナーが課しているさまざまな
義務が、途上国の「取引費用」
を高めていることは、国
際社会でも広く認知されるようになっています。この問題
に対処するために、多国間・二国間開発機関は政策、
手続き、および慣行の調和化を進めています。ドナー組
織は開発効果を高めるために、重複したプログラムや
援助の条件を撤廃し、各自が優位性を持つ分野で援
助を提供するようになっています。
世銀は経済協力開発機構(OECD)
と共に、財政管
理、調達、環境・社会セーフガード、分析活動といった
分野で調和化ツールキットの開発を進めています。世銀
は開発実践者が調和化関連の情報を入手するための
達成しました。しかし、アフリカは大幅に遅れを取って
ウェブサイトや、過去の経験やベストプラクティスを共有
おり、この目標を達成する見込みがあるのは域内の8カ
するための国レベルの追跡ツールの開発にも取り組ん
国(アフリカ人口の約15%)
にすぎません。また、第1目
でいます。
標を達成できると見込まれている地域でも、一部の国々
世銀は各国の法律が世銀のセーフガード・ポリシーと
は目標を達成できない可能性があります。中でも、切迫
一致したものとなっているかどうかを確認するために、メ
した状況にある低所得国(LICUS)
は目標に遠く及ばな
キシコ、ポーランド、スリランカ等で法律評価を実施し、 い可能性があります。LICUSの約半数はアフリカの
政府が適切な環境・社会管理フレームワークを設計で
きるよう支援しています。
国々です。
人的開発分野の目標、特に教育と保健・医療に関す
る目標の進捗状況は、実行された介入の規模と有効性
MDGs進捗状況のグローバル・モニタリング
によってばらつきがあります。また、この分野の目標の達
成にはセクター横断的な複数の要因が関わっています。
2004年4月に発表された第1回の「グローバル・モニタ
教育関連の目標は、保健・医療関連の目標よりも達成さ
リング・レポート」は、MDGsの達成可能性を世界規模
れる可能性が高いと見られています。現在の傾向が続
で概観するものとなっています。この報告書は楽観要因
くならば、複数の地域が初等教育の完全普及を達成す
と共に、重大な懸念の存在を指摘しています。世界全
るか、達成に近づくことができるでしょう。しかし、ア
体で見ると、政策の改善とそれに伴う力強い経済成長
フリカはこの目標を達成できない可能性が高く、南アジ
に助けられて、
「1990年から2015年の間に所得貧困を
アと中東・北アフリカ地域でも状況は芳しくありません。
半減する」
というMDGsの第1目標は達成される可能性
この3地域はジェンダー格差が最も深刻な地域でもあり
が高いと見られています。東アジアはすでにこの目標を
ます。初等・中等教育におけるジェンダーの平等は、
2004年の開発委員会春期会合では、第1回の「グローバル・モニタリング・レポート」がアジェンダの中心を占めました。この会合は開発問題
に関する合意を形成するために、世銀と国際通貨基金(IMF)が合同で開催しているものです。この報告書は世銀とIMFの職員が、パート
ナー機関(国際開発金融機関、OECD、国連、世界貿易機関)
と密接に連携しながら作成しました。この報告書は開発委員会がミレニアム開
発目標とその関連目標を達成するために定期的に実施している政策アジェンダの進捗モニタリングを補強し、主要な関係者(先進国、途上
国、多国間開発機関)の説明責任を強化するものとなる予定です。
第4章
開発の有効性
87
約半分にすぎず、ほとんどの地
域はこの目標を大幅に下回る
と見られています。目標を達成
できるのは全体の約20%、低
所得国の場合は10カ国に1カ
国と見られています。
世界や地域レベルの数字か
らは見えないものの、地域内、
時には国内にも深刻な格差が
存在します。東アジアはその典
型です。この地域の中所得国は
MDGsのいくつかをすでに達成
しているか、達成間近となってい
ますが、低所得国はアフリカの
多くの貧困国と同様に、こうした
目標を達成できる見込みはほと
んどありません。こうしたばらつ
2005年が達成期限となっていますが、世界全体として
きは国内にも見られ、特に広大な国土を持つ国では深
見ると、途上国の約3分の1は2015年になってもこの目標
刻です。
を達成できないと考えられています。
低所得国に比べると、中所得国の見通しは明るく、
保健・医療分野では、MDGsの達成が非常に危ぶま
その多くはすでに目標を達成しているか、達成に向けて
れています。子供と妊産婦の死亡率の削減という目標
確実に歩を進めています。しかし、こうした国にも数億
に着実に近づいているのは途上国のわずか15∼20%
人に上る貧困層が存在します。
にすぎません。現在の状況が改善されないならば、ほ
とんどの地域はどちらの目標も達成することはできない
緊急の行動が求められている分野
でしょう。HIV/エイズ、マラリア、および結核の罹病率は
こうした数字が意味しているところは明らかです―
上昇しており、感染の拡大を食い止め、減少方向に転
MDGsを達成するためには、途上国は大幅に、かつ迅
じさせるという目標を達成することは難しいと見られてい
速に開発の速度を加速させなければなりません。すべ
ます。こうした疾病の蔓延は、子供と妊産婦の死亡率
ての開発関係者(途上国、先進国、多国間開発機関)
を上昇させる一因となっており、途上国の経済と社会に
は、2002年3月にモンテレーで合意された原則とパート
与える影響は甚大です。HIV/エイズの感染拡大を食
ナーシップに従って、努力を拡大する必要があります。
い止めるという目標が達成されない可能性はアフリカ地
MDGsを達成するためには、次の3つのポイントを政策
域で特に高く、それ以外の地域でも多くの国が相当の
アジェンダに組み込む必要があります。
リスクを抱えています。
安全な飲料水と基本的衛生設備へのアクセスは大
■ 改革を加速し、深めることで、より力強い経済成長
きく遅れており、これが保健・医療分野のMDGsの達
を達成する。経済成長は所得貧困の削減に直結
成をさらに難しいものとしています。最も深刻なのは、
するだけでなく、それ以外の目標に向けて資金を
飲料水がアフリカ、衛生設備は南アジアです。2015
増大させる。
年までに安全な飲料水と衛生設備を利用できない人
88
■ 貧しい人々のエンパワーメントと便益に投資する。
口を半減するためには、さらに15億人に安全な飲料水
人的開発と関連主要サービスの提供状況を改善す
を、20億人に衛生設備を提供しなければなりません。
る。教育と保健・医療サービス、および関連インフ
しかし、現在の進捗速度は必要とされている速度の
ラサービス
(水と衛生、農村道路など)
を強化する。
世界銀行 年次報告 2004
■ モンテレー・パートナー
シップに基づいた行動を
加速し、改革を加速させ
た 途 上 国に 対 する先 進
国と国際機関の支援を
拡大する。途上国が輸出
を拡大し、成長を加速さ
せるためには、先進国市
場へのアクセスを拡大す
る必要がある。途上国は
開発プログラムを実施す
るために、さらなる援助を
必要としている。
「グローバル・モニタリング・
レポート」は す べ ての 開 発
パートナーの政策と行動を総
合的に評価しています。この報告書は説明責任のフ
で、先進国が支援を拡大することを定めています。先進
レームワークであり、各関係者がモンテレー会議で掲げ
国の政策は地球環境の保全といった、地球規模の行
た公約の実施状況をモニタリングすると共に、優先的な
動の結果にも大きな影響を与えています。このフレーム
行動が求められている分野に国際社会の注目を集める
ワークは4つの分野(マクロ金融政策、貿易政策、援
ものとなっています。
助、および地球公共財)
に重点を置いて、先進国の政
このフレームワークは途上国の政策アジェンダを4つ
策をモニタリングしています(図4.2参照)。
の分野に分類してモニタリングしています:経済・財政
途上国がMDGsを達成するためには、国際金融機
政策、公共セクター運営、人的開発、および環境管理
関が重要な役割を果たします。このフレームワークは
国際金融機関の貢献を4つの側面(国別プログラム、
(図4.1参照)
。
モンテレー合意は、途上国の開発結果に直接的な
グローバル・プログラム、パートナーシップ、および結
影響を及ぼす2つの重要分野、つまり
「貿易」
と
「援助」 果)から評価しています(図4.3参照)。
図4.1
モニタリング:途上国の政策
図4.2
モニタリング:先進国の政策
経済・財政政策
• マクロ • 民間セクター • 金融セクター
関連の規制と • インフラ
• 貿易
制度環境
公共セクター運営
• 公共支出と収入管理
• 行政
• 透明性、説明責任、
汚職管理
人的開発
• 教育と保健・医療
• 社会的保護
• 発言/参加
• ジェンダー
環境管理
• 政策と制度
出典:世界銀行、2004年、
“グローバル・モニタリング・レポート 2004”
、ワシントンDC
マクロ金融政策
• 経済成長と安定した資本移動を
促進する政策
貿易政策
• 農業と製造
• サービス(労働者の
一時的移動を含む)
• 貿易関連の援助
援助
• 援助の量と質
• 債務救済
地球公共財
• 環境 • その他
出典:世界銀行、2004年、
“グローバル・モニタリング・レポート 2004”
、ワシントンDC
第4章
開発の有効性
89
表4.1
MDGs関連の世銀融資 2004年度
プロジェクトの件数
プロジェクト全体
MDGs関連のプロジェクト
初等教育の完全普及
ジェンダーの平等と女性のエンパワーメント
子供の死亡率の削減
妊産婦の健康の改善
HIV/エイズ、マラリアなどの疾病の蔓延防止
持続可能な環境作り
グローバルな開発パートナーシップの構築
融資承認額(単位:100万ドル)
IBRD
IDA
IBRD/IDA
IBRD
IDA
IBRD/IDA
87.0
19.5
3.0
0.3
0.8
0.5
0.3
9.1
5.6
158.0
39.7
6.9
3.3
0.5
2.2
8.7
12.7
5.4
245.0
59.2
9.8
3.6
1.3
2.7
9.0
21.8
11.0
11,045.4
2,406.6
204.8
24.4
274.5
212.6
25.0
788.4
876.9
9,034.6
2,356.9
578.8
343.8
63.3
79.7
354.2
516.2
420.9
20,080.1
4,763.5
783.6
368.2
337.7
292.3
379.2
1,304.6
1,297.8
注:第1目標「極度の貧困と飢餓の撲滅」に関するデータが掲載されていないのは、貧困の削減は世銀の活動を貫く使命であり、世銀の融資はすべてこの目標と関連し
ているからである。プロジェクトの件数が一部、整数でないのは集計システムによるもの。このシステムは複数の目標に関連するプロジェクトを特定し、二重計算や
成果物の過大報告を防ぐように設計されている。数字は四捨五入されている。
MDGsを達成するための費用
を超えるでしょう。これはほとんどの試算において、
先進国と金融機関には援助の量と質を高めることが
求められています。その一方で、途上国はこうした援助
MDGsを達成するために途上国が必要とすると見なされ
ている金額です。
を有効に活用できないのではないかという懸念もありま
MDGs達成のための費用を予測することは容易では
す。しかし、モンテレー会議以降に約束された追加援
ありません。一つには、MDGs達成の「値段」をはじき
助は、それが実際に提供されたとしても、途上国の国
だすためには、平均費用と限界費用を区別しなければ
民総所得(GNI)
に占める割合で見れば、1990年代初
ならないからです。教育を例にとると、子供を就学さ
頭の水準を下回っています。最近の世銀の研究により、 せるための限界費用は、平均費用よりも高くなる可能性
健全な政策と制度を持つ途上国は多額の追加資金を
があります。これは学校に通っていない子供を学校に
MDGs達成のために効果的に利用できることが分かり
通うよう説得するのは難しく、また家と学校が地理的に
ました。こうした途上国が吸収できる援助資金は、控え
離れているケースも考えられるためです。もう一つの理
めに見積もっても年間300億ドル以上に達しています。 由は、ある目標の進捗が別の目標の進捗につながる
多くの途上国が政策とガバナンスを強化するようになれ
からです。たとえば、安全な飲料水と衛生設備が提
ば、有効利用が期待できる援助資金は年間500億ドル
供されるようになれば、
地域住民の健康も増進されます。
図4.3
どの目標にも複数の決定要因があり、そうした要因の及
モニタリング:開発機関の支援
ぼす影響は複数のセクターにまたがっています。各目標
国別プログラム
• 戦略的整合性(貧困削減などMDGsを達成するために
途上国が定めた優先項目との整合性)
• プログラム設計の適切性と選択性
は相互依存関係にあるため、目標を達成するための費
用を別々に見積もると、二重計算の恐れがあります。ま
た、追加資金の効果はその国がしかるべき政策・制度
改革を実施したかどうかによっても変わってきます。
グローバル・プログラム
• PRG/GPG関連の
国別キャパシティ・ビル
ディング支援
• 主要PRG/GPG関連の
国際組織での活動
(中心的な役割)
パートナーシップ
• 政策と慣行の
調和化
• 援助プログラムの
調整
MDGs関連の世銀融資
2004年度、世銀は承認された新規融資をMDGsごと
に分析しました。表4.1は第2∼8目標に対する融資の内
訳を示したものです。
結果
• 質と結果の重視
• モニタリング、報告、
および評価のシステム
注:GPG=地球公共財、RPG=地域公共財
出典:世界銀行、2004年、
“グローバル・モニタリング・レポート 2004”、ワシントンDC
90
世界銀行 年次報告 2004
活動の質的評価
世銀の質保証グループ(QAG)
の任務は、世銀のプ
ロジェクトと分析業務の質をモニタリングすることです。 図4.4 実施中のプロジェクト(地域別)
2004年6月30日現在
融資承認総額951億ドルに占める割合
QAGは世銀上層部の直轄部署ですが、評価結果をま
とめた報告書は理事会にも提出されます
(これらの報告
南アジア 19%
アフリカ 17%
中東・北アフリカ
5%
東アジア・
大洋州 23%
書はwww.worldbank.orgで公開されています)
。評価
には専門家パネルも参加しており、
このパネルには毎年、
数百人に上る世銀上級職員に加えて、他の開発機関、
シンクタンク、大学、およびシビルソサエティ組織の経験
豊富な専門家が参加しています。専門家パネルを設置
することにより、評価の信頼性が確保されるだけでなく、
現場でプロジェクトを進めている職員に専門家の意見
を迅速に伝えることができます。
ヨーロッパ・
中央アジア 15%
ラテンアメリカ・
カリブ海 21%
QAGは新規プロジェクトの質を「リアルタイム」に評価
し、フィードバックをプロジェクトが承認された時点(承認
時の質)
と実施中(監督の質)
に担当チームとそのマ
ネージャーに即時に提供します。QAGは経済・セクター
図4.5
調査(ESW)
と呼ばれる世銀の分析・助言サービスの評
実施中のプロジェクト(テーマ別)
2004年6月30日現在
融資承認総額951億ドルに占める割合
価も行っています。ESWの評価は、サービスが借入国
に提供された直後に行われます。2004年度は国別担
都市開発 12%
経済管理 1%
当局長の要請に応じて、国別融資ポートフォリオを評価
貿易・統合
4%
環境・天然
資源管理13%
するパイロットプロジェクトが始まりました。QAGの主要
報告書である
「ポートフォリオの成果に関する年次報告」
は、実施中のプロジェクトの規模、構造、成果、および
質を分析したものです。このほか、QAGは世銀が直面
社会的保護・
リスク管理 7%
金融・民間
セクター開発
17%
社会開発・
ジェンダー・参加
9%
人的開発
13%
している主要な業務課題を一つないし二つ選び、分
析報告書を作成しています。
QAGの評価結果は、この数年で広範な改善が見ら
農村開発
14%
法規 2%
公共セクター運営 8%
れたことを示していますが、
「承認時の質」はおよそ2年
にわたって停滞しています。
「承認時の質」
において満足
できるレベルにあると評価された世銀プロジェクトは、
2000–02年度は平均90%に上ったのに対し、2003年
度は85%でした。
「監督の質」
においては、2002年度は
世銀業務の90%が満足できるレベルにあると評価され
図4.6
実施中のプロジェクト(セクター別)
2004年6月30日現在
融資承認総額951億ドルに占める割合
ました。ESWについては、92%が満足できるレベルに
あると評価されました。2003年度の「ポートフォリオの成
給水・衛生・治水 10%
農業・漁業・林業 10%
果に関する年次報告」は、業務評価局(OED)
が実施し
教育 9%
ているプロジェクト終了時の評価で、満足できる開発結
果を達成したと評価されたプロジェクトの割合が下がっ
運輸 20%
エネルギー・
鉱業 9%
たことに言及しています。これはプロジェクトの「監督の
質」評価が、開発結果の下降を食い止めるための警告
手段とならなかったことを意味しています。こうした結果
法律・司法・
行政 16%
をふまえ、世銀執行部は開発結果を高め、プロジェクト
の成果のモニタリングと報告の信頼性を強化するため
金融 6%
保健・その他の
社会サービス 15%
情報・通信 1%
産業・貿易 4%
第4章
開発の有効性
91
を通して構築していることを明らかにしました。本報告
書は持続可能な貧困削減を促進するような政策の導入
を世銀が効果的に支援できたかどうかを分析し、3つ
の重要なポイントを指摘しました。
■ この4年間で、途上国の3分の2は経済・社会政策
を改善しました。こうした国の成長率はそうでない
国の2倍に達しています。世銀のプログラム
(構造
調整融資だけでなく、あらゆる形態の支援を含む)
は多くのケースで政策の改善に寄与しました。
■ OED評価では、評価対象となった国別プログラム
の70%が満足できる結果を達成したと評価されま
した。それ以外のプログラムが十分な結果を出す
ことができなかった理由としては、対象国に関する
知識の不足、支援プログラムと対象国の政策決定
スタイルの不一致、債務の持続可能性に対する過
度の楽観、対象国の状況を無視した政策・制度の
転用などがあります。
■ 2002年度はプロジェクトの79%が満足できる結果
を達成したと評価されました。これは戦略的に
重要として設定された75%という目標値を上回る
ものでした。2003年度のプロジェクトに関しては、
の包括的なプログラムに着手しました。図4.4、4.5、お
約84%に対して評価が完了し、このうちの74%が
よび4.6は世銀の実施中のプロジェクトを地域別、テー
満足できる結果を達成したと評価されました(図
マ別、およびセクター別に分類したものです。
4.7参照)。
独立評価
世銀組織の評価
世銀組織の評価は理事会の要請を受けて、あるい
業務評価局(OED)
は世銀理事会直属の独立評価部
門です。OED評価の目的は、世銀業務の結果を判断
図4.7
する客観的なデータを提供すること、世銀の目標達成状
況について、世銀が十分に説明責任を果たせるように
プロジェクト結果の満足度 1974–2004年度
(満足できる成果をあげたプロジェクトの割合)
100
すること、そして世銀職員が過去の経験から学べるよう
にすることです。OEDは過去のプロジェクトから教訓を
引き出し、評価結果に基づいた提言を行うことによって、
80
世銀業務の改善に貢献しています。
OEDの主要報告書である
「開発効果に関する年次レ
60
ビュー」の最大の目標は、世銀の開発効果を理事会に
通知することです。2003年度の「開発効果に関する年
次レビュー:政策改革における世銀援助の有効性」は、
世銀が貧困層に配慮した成長と広範で持続可能な貧
困削減を促進するための環境を、政策改革と制度構築
92
世界銀行 年次報告 2004
40
74
78
82
86
90
94
注:2003年度については、一部期間の案件しか含まれていない。
出典:世界銀行、業務評価局(OED)による計算。
98
02 年度
は特定の懸念に対処するために実施されるものです。
同評価では、現在進められている世銀業務の総合的な
有効性、効率、および定められた目標との整合性が分
析されます。2004年度は
「包括的な開発フレームワーク」
、
「知識の共有:イノベーションと未解決の課題」等の評
価が実施されました。
「包括的開発フレームワーク」評価は、包括的開発フ
レームワークが威力を発揮するためには、途上国が規
律ある予算プロセスを導入すること、
ドナーが予算プロ
セスの強化に取り組む途上国を支援し、その国の開発
戦略に沿った援助を提供すること、そしてすべてのド
ナー、特に世銀がセクター横断的なプログラムの設計・
実施メカニズムの開発に率先して取り組むことが必要
も得られないことを考えると、世銀と中国は政策と手続
だと結論しています。
きを見直すことによって、世銀援助を最大限に活用して
「知識共有:イノベーションと未解決の課題」は、世
いかなければなりません。
銀の知識プロセスにはさらなる戦略的方向性と監督が
クロアチアに対しては、新興企業が活動しやすい事
必要であり、ネットワークと地域局は知識共有活動を世
業環境を整備するなどして、民間セクター開発を推進し、
銀のコア業務と密接に関連づける必要があると指摘し
成長の促進、失業問題への対処、および債務の持続
ました。本報告書は世銀の包括的な知識イニシアティ
可能性の改善に重点を置く必要があります。ルワンダの
ブは時宜を得た適切なものであり、世銀の知識はより
IDA援助に対しては、ミレニアム開発目標の枠組みに
迅速かつ容易に提供されるようになっていると評価しつ
従って、貧困と不均衡の緩和に焦点を当てることが提
つも、監督、モニタリング、およびインセンティブをさらに
言されました。ルワンダの開発を成功させるためには、
強化していく必要があると述べています。
分析・助言活動とルワンダの状況に合わせたプロジェク
トが不可欠です。イスラム開発銀行と共同で実施され
国別プログラムの評価結果
たチュニジアの評価では、政府が進めている民間投資
OEDの国別援助評価は、特定の途上国での世銀の
環境の改善、社会支出の効率化と質の向上、および
援助プログラムの有効性を、通常は過去4、5年の結果
農村セクターの制度とセーフティネットの強化を支援する
に照らして評価します。国別援助評価は、開発の成果
ことが奨励されました。
と世銀の国別援助戦略の関連性を分析し、世銀戦略
の有効性を総合的に判断します。たとえば、2004年度
セクター、テーマ別プログラムの評価結果
に実施されたアルメニアの援助評価は、民間セクター開
OEDのセクター別、テーマ別評価は、融資セクターま
発のための環境を整備し、公共セクター改革の促進に
たはセクター横断的なテーマにおける世銀の成果と経
重点を置くことを世銀に提言するものでした。この2つの
験を5年から10年単位で分析し、それが世銀の政策や
分野の進展は、成長を維持するために必要な雇用の
グッドプラクティスとどれだけ一致しているか、世銀の目
創出と輸出の拡大につながります。ボスニア・ヘルツェ
標がどの程度達成されているかを概観するものです。
ゴビナの援助評価は、国際通貨基金や欧州連合との 「世銀業務における社会開発レビュー」は、社会開発分
連携を密にし、重要な改革に共通のアプローチで取り
野における世銀の活動と、開発効果に対する重要性を
組む必要性を明らかにしました。
分析し、開発効果をさらに高めるための助言を提供し
1990年以来、世銀は政策助言と制度構築を通して、 ました。OEDは世銀に対し、開発結果の改善につなが
中国の急成長を力強く支えてきました。2004年度の
るような社会的テーマを見つけ出し、その分野の活動
OED評価は、世銀が中国での活動を継続することを提
を強化することを提言しました。また、戦略的計画は現
言しています。しかし、融資プログラムが減り、IDA融資
在のスキル、モニタリング、および評価に対応したもので
第4章
開発の有効性
93
なければならないと指摘しました。OED報告書「ガーナ
高めることを提言しました。
における基礎教育の改善」は、ガーナの基礎教育制度
に対するハード面での支援は、同国の就学率の向上と
CAS完了報告書のOEDレビュー
学習結果の改善に大きな影響を与えたものの、今後は
2004年度の特記事項の一つは、CAS完了報告書の
不利な状況に置かれた学校への配慮をさらに強化して
OEDレビューが始まったことです。CAS完了報告書は
いく必要があると指摘しました。
世 銀 の 新しい 重 要な自己 評 価 手 段 であり、O E Dレ
「採掘産業と持続可能な開発」評価は、ガバナンスの
ビューの任務はその妥当性を審査することです。こうし
問題に正面から取り組むこと、プロジェクトの実施を強
たOEDレビューは2005年度には主流となり、将来的に
化すること、そして世銀の統合力を活かして関係者に
年間20∼25件のレビューが行われる予定です。2004年
精力的に関与することを強調しています。また、持続可
度はブラジル、カメルーン、モザンビーク、ウクライナ、お
能な開発に対する採掘産業の貢献度をさらに高めるた
よびザンビアのCAS完了報告書についてOEDレビュー
めには、世銀グループはセクターおよび国レベルで、統
が行われました。
合戦略を策定し、実施する必要があると指摘しました。
「移行経済国」評価は、東ヨーロッパとソ連の旧社会主
義国が経験した大規模な移行プロセスを世銀がどう支
査閲パネル
援したかを明らかにするものでした。本報告書はガバナ
世銀理事会は1993年に独立調査機関である査察パ
ンス、貧困の悪化、および民営化プロセスにもっと早い
ネルを設置しました。査閲パネルの任務は、世銀プロ
段階から注目していれば、移行経済国をより効果的に支
ジェクトによって影響を受ける人々の懸念によりきめ細か
援することができたと指摘しています。OEDは世銀の援
く対応し、プロジェクトの計画、準備、および実施段階で
助はおおむね成功を収めていると結論づけつつも、 世銀の業務方針と手続きが遵守されているかどうかを
94
利害関係者の参加を促すプログラムをさらに拡大する
確認することです。世銀が支援するプロジェクトによって
こと、国別援助戦略を利用して、途上国の改革能力を
悪影響をこうむる可能性があると考える人は、2人以上
世界銀行 年次報告 2004
集まれば査閲パネルに申し立てを起こし、業務方針と
手続きの遵守状況を調査するよう求めることができます。
外部評価
理事会はパネルの提言をもとに、調査を開始するか
2000年、世銀グループは「採掘産業レビュー」
に着手
どうかを決定します。査閲パネルは一般市民、特に貧
しました。このレビューの目的は、石油、ガス、および鉱
しい人々が世銀の最高機関である理事会に直接アク
業に対する世銀の支援が持続可能な開発の進展にど
セスする手段を提供しています。この仕組みは世銀が
んな効果を与えたかを分析すること、そしてこうした支援
支援するプロジェクトによって悪影響を受けた可能性の
が今後果たすべき役割を明確にすることです。採掘産
ある人々に対するエンパワーメントとなり、発言の場を提
業に対する投資は、世銀の年間融資承認総額の約2%
供するものとなっています。
を占めています。多くの途上国は、高い開発結果を達
査閲パネルは遵守の問題に取り組む世銀メカニズム
成するためには世銀グループの資金援助が不可欠だと
の一つであり、査閲パネルが設置されたことによって、 考えています。また、世銀グループの資金を得たプロ
世銀は外部の申し立てに耳を傾け、それに対するパネ
ジェクトは、環境、社会、およびガバナンスのセーフガー
ルの評価結果を検討し、貧困削減という使命に向けて、 ドの面で産業界のモデルとなることが少なくありません。
よりよい政策と業務方針を導入することができるようにな
りました。
「採掘産業レビュー」は世銀グループの執行部とは別
の独立したグループが実施した2つの評価で構成されて
2004年度は6件の調査請求が査閲パネルに提出され
います。一つは世銀グループの業務評価ユニットとIFC・
ました。調査請求の対象となったのは、フィリピンの「第
MIGAの準拠アドバイザー・オンブズマン
(前述)
によるも
2次マニラ下水道プロジェクト」
、カメルーンの「石油開発
の、
もう一つは利害関係者との協議に基づいたものです。
パイプラインプロジェクト」、メキシコの「先住民族・地
このレビューにより、採掘プロジェクトに対する世銀グ
域社会生物多様性プロジェクト」
、コロンビアの「カルタ
ループの関与は持続可能な開発にプラスの影響を与え
ヘナ上下水道・環境管理プロジェクト」
、およびインドの
ているものの、その程度にはばらつきがあることが分か
「ムンバイ都市輸送プロジェクト」
(2件)
です。また、査閲
りました。特に利害関係者による報告書は、再生可能
パネルは第2回報告書「世銀における説明責任:査閲
エネルギー源、収入報告の透明化、地域社会の利害関
パネルの10年」
を発表し、査閲パネルのこれまでの軌跡
係者との協議の拡大、
プロジェクト情報の完全開示など、
を振り返り、過去の経験を総括しました。この報告書で
数多くの分野で改革の必要性を指摘しました。
は適格性の問題と、世銀の慣行と政策に査閲パネル
2004年6月18日、世銀グループ執行部は採掘産業に
が与えた影響が検討されました。本報告書はフランス
対する支援活動の改革案を発表しました。この提案は
語、スペイン語、およびポルトガル語にも翻訳されました。 理事会の要請に基づいて公開され、30日にわたって一
査閲パネルの設置からこれまでの間に提出された調
般からのコメントを募集しました。これは理事会が世銀
査請求は33件に上ります。このうち10件はアフリカ地
としての公式の返答を承認する前に、幅広い関係者の
域、11件はラテンアメリカ・カリブ海地域、9件は南アジ
意見に耳を傾けることを目的としたものです。レビューに
ア地域、3件は東アジア・大洋州地域から提出されたも
対する世銀内外からの反応への対応を反映した提案
のです。これら33件の調査請求はいずれも正式に受理
は、全 文 が 世 銀 のウェブサイトで 公 開されています
。採掘産業関連のその他の
され、査閲パネルはそのうち14件について調査の実施 (www.worldbank.org/ogmc)
を提言しました。このうちの6件はパネルの活動方針に
レビューはwww.ifc.org/oegおよびwww.caoombudsman.
修正条項が加えられた1999年4月より前に承認されたも
org/ev.phpにも掲載されています。
の、8件はそれ以降に承認されたものです。
世銀が採掘産業を支援することについては、株主国
調査請求、パネルの提言、パネルの調査報告書、お
からは引き続き、広範な支持が得られています。世銀は
よび今年度に調査されたプロジェクトに対する執行部の
業界基準の強化と普及に取り組んでいるほか、公共セ
提 言は 世 銀 のウェブサイト
( w w w. w o r l d b a n k . o r g /
クター改革を支援し、技術的な助言とトレーニングを提
inspectionpanel)
で公開されています。
供し、環境保護と代替エネルギーに関する専門知識と
革新的な融資を提供しています。
第4章
開発の有効性
95
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