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第5回「グリーンシート銘柄制度の検討に係る懇談会
第5回「グリーンシート銘柄制度の検討に係る懇談会」議事要旨 日 時 平成 24 年2月 15 日(水)午前 10 時 30 分~12 時 15 分 場 所 日本証券業協会 第7会議室 出 席 者 秦座長ほか各委員 議 案 1.今村証券㈱からのプレゼンテーション 2.グリーンシート銘柄制度の見直しに関する検討 配 付 資 料 ・「グリーンシート銘柄制度の抜本的な見直しを行うための論点について」 (第4回懇談会にて配付した資料と同内容) 【議事概要】 1.今村証券㈱からのプレゼンテーション 今村証券㈱ 今村社長より、同社のグリーンシート銘柄(以下「GS」という。)制度と の関わりと、それを踏まえたGS制度への要望等について、以下のとおり説明が行われた 後、質疑応答・意見交換が行われた。 【今村氏より説明・報告】 当社が営業基盤としている北陸地方では、GSの活発な売買が行われていた。北陸以外 の地域では、リージョナル区分の銘柄についてもそれほど根付かず、売買もあまり行われ てこなかったが、なぜ北陸ではこのようにGS制度が根付いたのかについて、まず申し上 げたい。 戦前から戦後間もなくにかけて、日本の銀行にはそれほど資金がなく、地方の所謂ベン チャー企業に資金を貸し付ける余裕がなかった。そこで、起業の際には、地元の名士等に 株式への出資を頼む以外の方法がなかった。また、所謂ベンチャー企業の株式を地方の資 産家に持ってもらおうと奨励してくれた北陸地方の衆議院議員の存在もあり、北陸地方で は所謂ベンチャー企業が増えていった。特に、相互銀行、鉄道、薬品、放送といった大き な資本が必要な業種に地方の人のお金が集まって株式会社となり、大きく発展していった。 このような過去の経緯が、北陸地方において、リージョナル区分の銘柄の売買が根付いた 理由の1つであると考える。 これは北陸地方に限った話ではないかもしれないが、通勤や通学のために、ローカルの バス会社や電鉄会社の優待券を取得したいというニーズが今でもある。優待券を得るため には、株式を取得し、株主になる必要がある。ところが、転勤や卒業により優待券が不要 1 になれば、その株式も不要となるため、売りたいというニーズが出てくる。北陸地方には、 こうしたニーズが多数存在していた。 北陸地方の特異な背景として、北陸3県の全てのローカル新聞において、地方株の株価 情報がGS制度の成立前からずっと掲載されている。本懇談会において、GS制度が利用 されなかった理由として、取引価格の不透明さや、どういった企業が登録されているのか よく分からないといった点が挙げられていたが、北陸地方の場合、そういった点は特に問 題なかった。これも、GS制度が北陸地方に根付いた理由の1つではないかと考える。 GS制度は、1997年7月に発足したが、当社は第1号の銘柄の指定を行った。その際に、 店頭に気配を表示すること、いつでもGSの発行会社について説明できるよう、会社内容 説明書を常備しておくこと、顧客から店頭取扱有価証券の取引に関する確認書を受領し、 その写しを当該顧客に渡すといったことについて、全社員に徹底した。こうした当社の取 組みに対抗し、福井県や富山県の地場証券会社も続々とGS制度に参加していき、北陸地 方の全ての地場証券会社がGS制度に参加することとなり、隆盛を極めていた。 実際にGSの取扱いを始めてみると、やはり売り注文が買い注文よりも多く出る。売り 注文が出ると、買い手を探すことになるが、容易には見つからない。そこで、売り注文の 値段を下げるように話をすると、今度は当該銘柄の発行会社が待ったをかける。常にこの ような傾向にあった。 これに関連して、現在は破綻してしまった、ある銘柄の例を取り上げたい。当該銘柄の 発行会社は、自社の顧客からどんどんお金を集めて、破綻する直前まで株式をどんどん発 行していた。しかし、当該銘柄の発行会社の経営が危ないという噂が流れた際に、当該銘 柄を売ろうにも買い手が付かなかった。直接当該発行会社に持ち込んでも、買い取りを拒 まれてしまったため、取扱証券会社である当社に相談がきた。そこで当社は、当該発行会 社と値下げの交渉をしたが、当該発行会社は経営危機に直面しているため、株価が下がれ ば困ってしまう。結局、当該発行会社が買い手を探すこととなり、当該銘柄を売りたいと いう顧客の3分の1程度については買い手が付き、売り抜けることができた。その後、当 該発行会社は破綻し、破綻直前の増資について訴訟となり、敗訴している。GS制度の問 題点にも、発行市場の問題と流通市場の問題がある。流通市場へのフォローは、発行会社 にとって不利な一面もあるため、発行会社としては否定的な場合も多い。しかしながら、 流通市場を整備しなければ、本事例のように、株主に大きな影響が出ることもあるため、 既存株主の保護という観点で、流通市場の問題についてもよく考える必要があるだろう。 GS制度への登録について、既存株主からは賛同を得たが、発行会社は歓迎的ではない 2 場合がほとんどであった。そのため、当社が取り扱った銘柄のほとんどは、発行会社が関 知していない状況で、GSとして届出を行い、気配等を公表していた。その結果、様々な 問題が発生した。気配等の設定は、現在のGS制度においても水面下で問題になっている のではないかと思料する。望ましいことではないが、GSの場合、やはり発行会社と調整 して株価を決めていくことにならざるを得ない場合もあり、非常に不透明な印象である。 発行会社は、新規の株主として反社会的勢力等が入ってくることについて、かなり神経 質である。そのため、新たに株式を購入したいという顧客がいた場合、当該発行会社に確 認を取っていた。また、売り注文を受ける場合にも、偽株券ではないかと気を配っており、 必ず発行会社に問い合わせ、記番号や裏書人等を確認していた。それから、現在のGS制 度では、譲渡制限の付与は禁止されているが、当時、譲渡制限付きの株式も取り扱ってい た。これについても、事前に顧客にその旨を伝えておけば、特に難しい問題には発展しな かった。こうした取組みにより、勧誘面、流通面でのトラブルは、当社では全く発生しな かったことを強調したい。 2005年4月、リージョナル区分が廃止となったが、これについて北陸地区の証券会社は 軒並み大反対をした。インサイダー取引規制のGS制度への導入が理由のようであるが、 顧客の内部者登録を行い、不審な場合にはインサイダー取引に当たらないかを確認するよ うにすれば問題は起こらないのではないか。また、この際に、GSとして登録するには、 事情聴取等に積極的に協力する旨の発行会社の同意書が、適時開示の確保のために必要に なった。しかし、当社が取り扱っていた銘柄は発行会社が関知しない状況で取引が行われ ており、一方、発行会社自体は株価の変動を嫌い、制度への参加に否定的であった。その ため、同意書を得られず、全ての発行体のGS登録を抹消することになった。世間には、 問題のある証券会社も確かに存在しているが、歴史があり、誠実に仕事をしている証券会 社が圧倒的多数である。先ほど、流通市場の活性化が重要であると申し上げたが、証券会 社を過度に厳しい規制で縛りあげてしまえば、流通市場は活性化しないだろう GS制度は、スタートから違和感がある。実質的な必要性に迫られて整備されたのでは なく、行政の方針に証券界が慌てて対応したという一面を持つ印象である。当時、証券免 許の取得は厳しいものであったが、登録制に変わったことにより、比較的容易に証券会社 を始められるようになった。 他のGSを取り扱っている証券会社は発行市場中心の考え方であり、流通市場中心の考 え方である当社とは著しく考え方が異なっていた。特に、一定のグループの中だけで株式 を流通させようとする仕組みには、猛烈に反発した。元々、流通市場、GS市場とは全国 的なものであり、グループの中だけで流通するのでは、裾野が広がっていかない。これで 3 は、流通市場とは言えないというのが、当社の考えである。 また、取扱会員制度についても、大反対した。GS制度を改善していきたいのであれば、 まずは発行市場や流通市場に対して、参加することによるメリットを与えるべきである。 証券会社としても、費用対効果が見合っていなければGSを取り扱わないし、発行会社と しても、何らかのメリットがなければGS制度を利用しないだろう。一番有効であるのは、 やはり税制面の手当てだろう。例えば、GS制度における価格を税務上の評価に用いるこ とができた銘柄は、比較的よく流通していた。上場株式と同様に税務上の対応ができるこ とは、かなり大きなプラスとして働くだろう。逆に言えば、そうしたメリットを付与しな い限り、GS制度の活性化は絶対にうまくいかないだろう。 旧リージョナル区分の株式については、未だ多数の株主が存在しており、当該株主は売 却できずに困っているため、何らかのフォローが必要である。地方の会社の株式の流通は、 地方経済に活気を生む一因となるし、株主層の拡大にも寄与するだろう。こういった理由 から、何らかの形での旧リージョナル区分の復活を強く願う。これは、北陸地方の地場証 券全社の願いである。 ・ 御意見内容に基本的に賛成である。 プレゼンテーションにおいて、証券会社が発行会社と交渉・調整しつつ、株価を決定し ていくことについて、望ましくないと言及されていたが、流動性が低い場合には、私は当 然のことだと考えている。少なくとも、不正な行為や不公正な行為ではない。極めて流動 性が低く、発行会社が株主の属性をある程度コントロールしたいという条件下においても、 市場として成立し得るという点を改めて認識すべきだろう。 適時開示やインサイダー取引規制といった、形骸化した規制の撤廃により、旧リージョ ナル区分の復活を本懇談会として強く打ち出すべきであると強く感じた。 ・ エマージング区分に当たる会社の発行支援を通じて、同じような問題を感じてきた。地 方にベンチャー企業が起こり、既存企業が事業変革しなければ、日本経済が潰れてしまう と危惧しているが、なかなか有効な手立てが見つからない。 地方企業の活性化を、株式の流動化という観点を考えると、リージョナル区分という素 晴らしい仕組みを潰してしまったことは非常に勿体無い。是非復活させたいところである。 GS制度が設立され、それを普及・推進する過程において生じてきた様々な疑問を整備す れば、活性化の手段として素晴らしい仕組みとなるだろう。 ・ 地方には、新しい企業を立ち上げるというエネルギーがそれほどないというのが正直な 4 感想である。少しでも有望な技術を持っている企業があれば、銀行、県、市等が軒並み貸 し付けを行っていくため、資金的な問題は特に発生していないようである。大きく育ち、 世界に雄飛する気概のあるベンチャー企業があれば、是非証券会社を頼ってほしいところ であるが、そういった要望は全くなかった。現在のGSも、発行会社が自発的にGSとな ることを決めたと言うよりも、証券会社の勧誘によりGS制度に登録してもらったという 面が強いのではないかと思料する。そういった会社はなかなか成長しないし、不正も起こ りやすいのではないか。 やや抽象的であるが、ベンチャービジネスとは、もっと勢いのあるものだと考えている。 直接金融を利用するしか資金調達の手段がないが、それでもチャレンジしたいという意気 込みのある企業があれば、是非応援したいところであるが、そうした声が全然ない。現在 は、過度に間接金融の資金を供給する傾向にあり、戦前から戦後間もなくの時代の方が、 ある意味では健全な資本主義の時代だったのではないかと個人的には思う。 ・ 地方都市でベンチャーを起こそうという者は、本当に少数である。起業家を応援すると アナウンスすれば、県外からでも訪れ、本社の場所を合わせてでもベンチャービジネスを 起こそうとする若者も存在しているが、起業には、やはりそれぐらいのエネルギーが必要 だろう。今のままでは、地方都市はますます安定志向になってしまい、100~200 万円の創 業資金ですら、本当に集まるとは思えない状況にある。GS制度でも、縁故でしか資金が 集まらない状況にある。企業をサポートしようとする者が増えてこない限り、GS制度に 登録しても資金が集まらないことが明白である以上、登録銘柄は増えないだろう。更に、 ベンチャーキャピタルからの出資もあまり期待できないという、選択肢がほとんどない状 況で、日本はどうしていけばよいのか、切実な問題である。赤字を続けながらも、何百億 円もの資金を集めて世界のシステムを牛耳るようなエネルギーのある起業家が出てこなけ ればいけない。そういった意味でも、地方経済の活性化の観点で、リージョナル区分を復 活させるべきではないか。 ・ 現場の実態に基づいた、非常に現実的で明確なプレゼンテーションである。譲渡制限株 を取り扱っていたと言及されていたが、これについて様々な規制を作る委員会等が対処す ると、流通市場と発行市場の整備の問題と短絡的に結びつけ、規制強化に動き、その結果 として、現場の実態にはそぐわない規制ができ上がるだろう。しかし、非上場企業の世界 では、譲渡制限株式を譲渡したいという要請は現実的にあり、それを行おうにも、発行体 との意見の相違により、スムーズにはいかないというのは、一般的な話である。上場会社 の規制を、そのまま非上場企業にも適用することが健全であるという短絡的な考え方に基 づき、非上場株式に上場株式と同じような規制をかけていったことが、どれだけ非上場株 式の流通市場を冷やしてきたことの根本的な原因になっているかが、非常に端的に伝わっ 5 たのではないか。 ・ 現場の熱気がそのまま伝わってくるプレゼンテーションであったが、その中でも特に、 流通市場が整備されなければ、購入した株式を売却することができず、多くの顧客が迷惑 を被ることになるという点は、まさに消費者側のマインドだろう。先ほどから意見が出て いる方法(旧リージョナル区分の復活)により、GS制度の改善と地方経済の活性化につ ながるのであれば良いが、そうとは言い切れないのであれば、もっとシンプルで、消費者 にとって透明な制度としなければ、最終的に迷惑を被るのは消費者となってしまう。よく 考える必要がある問題だろう。 証券会社が免許制から登録制になったことも関係しているのかもしれないが、非常に悪 質な証券会社が出てくると、消費者としては、本当にその会社だけであるのか、疑心暗鬼 になってしまう。消費者としても、安心して投資したいと考えており、「~証券」という 名前であれば、きちんとした業者であると信じて取引を行う。悪質な業者が紛れ込んでい るようでは、消費者は非常に困る。対応のために規制を厳しくしていった結果、逆に問題 が発生するというのはよくある話であるが、顧客が安心して投資ができるシンプルな市場 を是非作っていただきたい。 2.グリーンシート銘柄制度の見直しに関する検討 前回に引き続き、配付資料「グリーンシート銘柄制度の抜本的な見直しを行うための論 点について」(以下「資料」という。)に基づき、GS制度の抜本的な見直しについて、 以下のとおり意見交換が行われた。 ・ 資料の1ページの「前提となる確認」について、再確認したい。現行のGS制度をどの ように評価するかという点について、「定量的・定性的な現状確認を行ったところ、GS 懇において、GS制度を利用しても発行会社は十分な資金調達ができない(募集金額と比 較して調達できた金額が少ない)点、一部を除きほとんどのGS銘柄について売買が行わ れていない点、新興市場等へ上場できたGS銘柄の発行会社は 11 社にすぎない点等が認識 された。したがって、現行のGS制度はその役割を果たしておらず、同制度の大幅な改正 若しくは代替的な制度の構築が必要と考えられる。」とあるが、この点について異論はな いだろうか。 ・ 「新興市場等へ上場できたGS銘柄の発行会社は 11 社にすぎない」という部分について であるが、これでは取引所への上場を目指すことが、GS制度に参加する上での大前提で あり、義務のような印象を受ける。特に、旧リージョナル区分を復活させるのであれば、 上場しなくともある程度株式の流通ができる資本市場という位置付けであっても差し支え 6 ないのではないかと考える。 ・ GSは所謂新興市場等への上場を目指すことが王道であるといったイメージがあるが、 本来そういった位置付けではないのではないか、との意見が本懇談会にあったと記憶して いる。表現を工夫したい。 ・ 「前提となる確認」は、「十分な資金調達ができない」、「売買が行われていない」等、 ネガティブなニュアンスで書かれているが、継続開示の適用を受けないようにするため、 1億円未満の公募を繰り返し、少人数の株主を作る。このように、ごく限られた株主しか 存在しない中で、流通市場を整備しようとしても、無理があるだろう。かといって、数千 万円、数億円の純資産規模の会社が、数十億円の資金を手にすれば、ビジネスモデルその ものを見直す必要が生じるだろう。単に資金が集まらないのか、それとも、現在の事業規 模に即した規模の資金調達を行っているのかに注意する必要があるだろう。 厚みのある流通市場を作るには、個人投資家だけではなく、機関投資家、ヘッジャー等、 様々な投資マインドを持った市場参加者が必要になる。上場会社であっても、純資産が小 さい会社は、大口の投資家の投資基準には合わないため、売買が行われず困っている。G S制度に登録した会社全てが上場を目指す必要があるのか。資金調達ができない、流通が 行われないことを理由として、大幅な制度の見直しが本当に必要であるのか。非常に疑問 に思うところである。 ・ 現実のデータを客観的に分析してみるとこのような状況にあるので、それを踏まえてG S制度をこれからどのように考えていくか、というのが本懇談会における検討のスタンス ではないか。こうした実態を踏まえた上で、論点の1、2でGS制度のあり方について議 論すればよいのではないか。 ・ 資金調達ができていない、売買が行われていない、新興市場等に上場できていないとい った点の他に、GS制度に登録しても、小規模な売買や資金調達しかできないにも関わら ず、非常に重いコスト負担を強いられることは、重要な論点だろう。GS制度が、本来求 められている社会的要請を満たせていないことの原因として、こうした側面についても、 加筆してはどうか。 ・ 「前提となる確認」に、その旨を加筆する必要があるということだろうか。 ・ 本懇談会において認識できた事実は、「前提となる確認」において、大枠として記載さ れているが、それ以外にもう1つ、旧リージョナル区分の地方における使い勝手の良さに ついても記載してはどうか。ほとんど資金調達を行わず、上場を目指すこともないが、あ る程度株式を流通できる仕組みがほしいという社会的要請があるにもかかわらず、上場会 社並みの規制をかけたことで、大きなミスマッチが生じた点についても、もう1つの側面 7 として加筆してはどうか。 ・ そういった点について、これからどうすべきであるのか、具体的な議論をしていきたい ところであるが、もう少し書き振りを調整したい。 本日は、未公開株式の証券会社を通じた流通の問題に焦点を絞り、論点1、2を中心に 議論を進めさせていただきたい。 ・ 現行のGS制度は、その役割を果たしていないと評価されているが、これは発行会社に とってメリットがある制度を作ろうという発想の結果だろう。しかし実際には、既存株主 の利益を含めて考える必要がある。要するに、現行のGS制度は、発行会社にとっては、 一定のメリットはあるものの、負担もかかる制度であり、既存株主にとっては、自らの株 式を売ろうにも、証券会社の仲介が無ければ、買い手を見つけることすらできず、世界に 例を見ないような規制が入っているため、結局売却先を見つけられないという状況になっ ており、これをどう解決するかという問題意識がある。発行会社にとってのメリットだけ を強調するのではなく、自らの株式の売却先を探している既存株主の手助けを、証券会社 が行うのかどうかという問題ではないか。 ・ GS制度は、非上場会社の株式を取り扱うための制度であり、そういった制度下のマー ケットがあっても差し支えないという前提で申し上げたい。現在の金融商品取引法(以下 「金商法」という。)等は、非上場会社の株式を取り扱う証券会社の姿が、容易には描け ない作りになっており、GS制度を取り扱う証券会社の拡大を図るに当たっては、採算性 を含め、そうした根本的な問題について考える必要がある。非上場会社の株式は、上場会 社の株式よりもリスキーであるため、参加可能な投資家をきちんと線引きした市場とする べきだろう。 それから、発行市場である以上、上場会社ではなくとも、資金調達をした発行会社が存 在しているはずであるが、当該発行会社は、責任を持って株主のケアをするべきだろう。 株主になっていただいた見返りとして、資金を得た以上、自らの株式を売りたいという要 望に対して、本来は証券会社ではなく、発行会社が対応するべきだろう。それにより、株 価が発行会社の意向よりも安くなってしまうということは当然考えられるが、それを牽制 し、適正な水準を出す役割として、非上場株式の市場は有効に働くのではないか。 ・ 資料の1ページに「未上場のベンチャー企業に対するリスクマネーの供給はいまだ不十 分である」とあるが、これは決して供給側だけの問題ではないだろう。出資したいと思え るような有望なベンチャー企業が少ないという「需要側」の側面も大きい。必要な資金の 3~4割しか資金が集まらなかったという話は、事業内容等の魅力に乏しいためもあろう。 8 より多くの資金が欲しい事業者は非常に多いが、全員に貸し付けたり、投資をしたりすれ ば、どんどん回収不能に陥ってしまうため、取捨選択しなければならない。事業金融の鉄 則と言えるだろう。 ベンチャー企業の現場にいる実感であるが、将来的に上場は間違いないと感じるほど有 望な起業家が、投資や融資を受けられないで破綻していく姿はあまり見たことがなく、非 常に苦労はしたとしても、最終的には必ず資金を集めている。ベンチャー企業への資金供 給がもっと普及していけば望ましいが、資金不足の問題ではなく、有望なベンチャー企業 を発見する機能の不十分さや、ベンチャービジネスに挑戦する起業家の不足の問題が大き いと感じる。 例えばフェイスブックに、なぜ未上場段階で数千億円の資金が必要であったのか。会社 経営において、特にお金が必要であるのは人件費であるが、フェイスブックのように急成 長を遂げた米国のベンチャー企業の場合、瞬く間に従業員数数千人、数万人の事業規模に なる。そのため、給与の支払いに加えて、広いオフィスや、パソコン等の備品も必要にな るため、非常に多額の資金需要が発生する。一方、日本の場合、労働市場の流動性が非常 に低いため、有能な人材を雇い入れようにも、なかなかいい人材が得られない。非常に大 きく成長したベンチャー企業はそれなりにあるが、上場時でも数百人、数十人の従業員し か雇用していない場合がほとんどであるため、そもそも資金需要がない。すなわち、日本 に、ベンチャー企業が大きく成長していくことを阻害する要因はあるが、資金供給サイド の問題だけではない。 更に、ベンチャー企業への資金はGS制度だけに依存しているわけではなく、他の資金 調達方法も多く存在しており、それらの方法の間での競争になっている。具体的には、セ カンダリー・マーケットでの取引を想定しない、ベンチャーキャピタルからの直接出資が 大きい。ベンチャーキャピタルからの投資額は、最近は縮小しつつあるが、それでも年間 数百億円規模であり、GS制度よりもはるかに巨額の資金が供給されている。 また、前回の本懇談会でも紹介したが、第二種金融商品取引業による資金調達も増えて きている。第一種金融商品取引業者と第二種金融商品取引業者では、金融庁の検査マニュ アルの項目数を見てもかなり大きな差があり、ベンチャー企業への資金供給という面では、 コスト的にも競争力があるかも知れない。第二種金融商品取引業といっても、かなり規制 は厳しいため、十分な金融リテラシーのある起業家でなければ始められないが、それでも 10 億円単位の取引実績ができてきている第二種金融商品取引業者が数社出てきており、既 にGS制度よりも大きな市場になっている。他の資金調達スキームとの競争という点につ いても、認識するべきではないか。 ・ ベンチャーキャピタルの現状について、具体的な数字を交えて申し上げたい。リスクマ 9 ネーの供給が不十分であると指摘されているが、日本においてリスクマネーは本当に枯渇 していると認識している。ベンチャーキャピタルも、自らの資金を原資とする場合よりも、 複数の機関投資家等から集めた資金でファンドを運営し、それをベンチャー企業に供給す るというビジネスモデルが中心であり、非常に厳しい状況にある。 概略の数字であるが、昨年の統計では、日本のベンチャーキャピタルが調達した資金は 合計 450 億円程度である。一方、日本の約4分の1の経済規模の韓国のベンチャーキャピ タルは、2,000 億円以上もの資金を調達している。瞬間風速的な数字であるが、ベンチャ ーキャピタルに関しては、4分の1程度の経済規模の国が、4倍の資金を調達していると いうことを、まず御認識いただきたい。 それから、ベンチャーキャピタルは、リスクのない企業にばかり投資し、リスクの高い 企業には投資しないと言われているが、確かにそういった実態は一部にはあるかもしれな い。最終的にリスクとリターンがマッチした投資を実現させるのがベンチャーキャピタル の役目であると考えているが、ベンチャー企業の事業を理解できる者が絶対的に不足して いるため、リスクを正確に測り、軽減することが難しい。もっと多くの事業を理解できる 者が、ベンチャーキャピタルビジネスに入ってこなければ、リスクの高いベンチャー企業 を育てていくことは難しいだろう。グリーンシートの議論とはやや離れた内容かもしれな いが、VC業界を御理解いただきたく発言した。 ・ 確かに、供給サイドの問題だけではないだろう。出資したいと思えるような投資対象が なかなか出てこないという点は、以前から指摘されていた。しかし、本懇談会で議論すべ きであるのは、将来大きく育つような企業に限らず、非上場企業であっても一定の資金調 達と株式の流通を実現できる仕組みをどのように作っていくかという点である。 非上場企業の株式の取扱いは、日本ではうまく制度化されておらず、欧米と比較して遅 れていると言える。非上場企業であっても、株式会社であれば株主が存在している。その ような株式の取引が、スムーズにできないというのは、大きな問題であると考えている。 大手証券会社からすれば、非上場企業の株式を取り扱う経済的な合理性に乏しいものの、 それを理由に非上場株式の取扱いを放棄されてしまうようであれば、この問題について市 場仲介者としてどのように考えているのか疑わざるを得ない。 ・ 制度を整備しても、それを利用しなければならないわけではないだろう。大手証券会社 が、非上場企業の株式を取り扱わないという経営判断をしても、全く問題ないのではない か。また、他に有効な資金調達の方法があるのであれば、それを利用すればよく、GS制 度の利用を促すように考える必要は全くないのではないか。制度のあるべき姿を不自然に 置き、無理にそこに近づけようとしているため、議論がやや散漫になってしまっている。 目標を再認識するべきではないか。 10 非上場企業の株式の取扱いという金商法的には問題のない行為を、証券会社が自発的に 行うことが、日本証券業協会の規則によって禁止されていることが唯一最大の問題である と考えている。非上場企業の株式の取扱いの禁止に、合理的な理由がないのであれば、取 扱いを解禁すべきだろう。しかしながら解禁により、様々な問題が発生する可能性もある ため、あらかじめ不祥事の防止の手立てを考えておく必要があるだろう。 ・ 制度のあるべき論や活性化にポイントを置いて議論を進めるのではなく、非上場企業の 株式の流通の仕組みを整備し、それを利用するかどうかは個々の考え方に委ねるというス タンスでよいのではないか。 ・ 整理の方法について提案であるが、パブリックな規制・制度として整備することで解消 すべき問題は、パブリック全般としてロスやコストが発生する構造の問題だろう。一方、 プライベートに処理できる問題について、高コストなパブリックの規制・制度により解決 を図るのは、明らかなミスマッチである。プライベートな問題は、プライベートなレベル で対処を考えた方が、コスト的にも優れており、制度的にも伸縮性があるだろう。地方の 限られた範囲において、非上場企業の株式の流通の仕組みを整備したいということであれ ば、大きなパブリックの仕組みに乗せていく必要はそもそもないし、大手証券会社が取り 扱う必要性も乏しいだろう。こうした点に留意して課題を整理すれば、GS制度の問題は 解決するのではないか。 ・ 本懇談会においてプレゼンテーションを行った今村証券とみどり証券では、そもそもタ ーゲットとしている相手が全く異なり、それぞれのビジネスモデルで業務を行っている。 どちらかを否定する必要はないと考える。例えば鉄道会社、地方銀行、大手百貨店といっ た、来年の事業計画が立つような会社については、インサイダー規制の適用を不要として もよいのか、疑問が残るところである。一方、経営者の意向に事業内容や業績が左右され るような規模の会社に、インサイダー規制を適用する必要があるのかについても、疑問で ある。こうした性格の違う問題について、一つのルールで対応しようとすれば、厳しい側 に合わせざるを得ず、この例の場合、全てにインサイダー規制を適用するということにな るだろう。そうなれば、適時開示をしたくない企業は退場し、資金調達が必要な企業は、 多大なコストをかけて適時開示を行うことになるだろう。 ・ 例えば、新たな制度では、インサイダー取引規制を一切適用しないという対応も考えら れるだろう。 ・ 例えば、ある企業の重要事実を知っている者が、その事実を告げないまま、不当な値段 で相手方に当該企業の株式を売り付ければ、詐欺に当たり、金商法 157 条(不正行為の禁 止)の適用を受けるだろう。インサイダー取引規制の適用がなくとも、相対取引等が決し 11 て野放しになっているわけではない。インサイダー取引規制は、本来は高度な流通市場に おける非常に特殊な不公正取引規制であり、高度な流通市場が存在している銘柄に対して のみ適用すべきである特殊な規制である。それをほとんど流通のないGS市場に適用して しまったことから、様々な弊害が発生したのだと考えている。適時開示制度がなければ、 詐欺が横行するという考え方は、全くの誤解ではないか。 ・ 同感である。非上場企業に対して、上場企業と同じような規制をかける必要はないので はないか。上場企業に求められるような制度・規則を、非上場企業には適用しないように するという方向性については、コンセンサスが形成されているのではないか。 ・ インサイダー取引規制に関する条文である、金商法 166 条が論点となっているが、同条 第2項には、多数の重要事実が列記されており、事実上これが適時開示の対象にもなって いる。 現在のGSの発行会社の業績を見てみると、例えば、売上高の中央値は6億円程度、経 常利益の中央値は 1,000 万円程度の規模であり、全ての会社が適時開示を全て行うのは、 困難だろう。困難である以上、適時開示は不要の仕組みを作り、それをうまく運営してい くことで、地方や中小企業の活性化に役立てていってはどうか。現在の金商法の枠組みで は、非上場企業の株式取引の市場をイメージしづらいという指摘もあった。できることと できないことがあるとは思うが、こうしたコンセプトの仕組みについて、真剣に考えてみ たいところである。 ・ そういった役割を果たしていくことを考えるのであれば、GS制度という現実的な市場 の整備ではなく、市場を支えるインフラの整備という観点で考える必要があるのではない か。非上場企業の株式が、限られた条件下において、証券会社の仲介によりある程度自由 に流通できるような制度的枠組みを、GS制度として整備するという方向性も考えられる し、GSをどこでも売買できるような巨大なコンピュータシステムを構築するという整備 も考えられるだろう。GS制度に求められている社会的な要請にもよるが、上場市場に匹 敵するような性能を発揮するようなシステムを整備するのか、それとも、経済規模に合わ せた柔軟で活発な経済活動ができる制度を整備するのか、二つに分けて議論した方がよい のかもしれない。 米国では、ベンチャーキャピタルの活動は、米国の証券取引法の規制対象とはされてい ないが、日本では、非上場の範疇での活動のみを行っているベンチャーキャピタルであっ ても、ファンドとみなされて金商法の規制を受け、思うように活動できないことがある。 GS制度にも、同じような社会的不合理が発生しているのではないかと思料する。 ・ 一般的な、広い意味での株式会社の活動をサポートするような仕組みを作るには、株式 12 への投資や流通のための市場及びその仲介業者などの活動が必要であり、それらの要素を どのように組み立てていくのかという問題があるという趣旨であると理解した。 ・ 証券取引所の市場にも、1部、2部といった本則市場と新興市場とがあるが、GS市場 とは、そういった市場への上場を目指してステップアップするための予備軍的な位置付け であるのか、それとも、将来的な上場の有無に関係なく、非上場企業のための発行市場と 流通市場を整備するという位置付けであるのか、わかりかねる。 金商法が整備された際に、みなし有価証券という概念が加わり、匿名組合、投資事業有 限責任組合等の様々なファンドが同法の規制対象となった。これによって、所謂悪質な事 業者の排除にある程度成功したのだと認識している。現在でもファンド絡みのトラブルは 尽きないが、法律上の規制として厳格に整備されていることは、やはり非常に心強い。本 懇談会における議論を伺うと、単なる誤解であればよいが、GS制度の活性化という観点 で、様々な規制を安易に撤廃する方向に傾いている印象である。GS制度以外にも様々な 資金調達の手段があり、必ずしもGS制度を利用する必要がないのであれば、GS制度の 利用を促すために様々な規制を撤廃する考え方には賛同しかねる。 ・ そういった危惧には及ばないと考えている。詐欺が横行するような市場は、あってはな らない。日本証券業協会が非上場企業の株式の流通に関する制度を整備しているのは、日 本証券業協会の管理下で制度を運営するためであると考えている。本来は、正規の登録を 受けた第一種金融商品取引業者であれば、非上場企業の株式であっても、自由に投資勧誘 することができる。しかし、日本証券業協会の自主規制規則により、一定の規制がかけら れており、仮に投資勧誘可能な範囲が拡大されても、日本証券業協会の管理下にあるとい う点に変わりはない。例えば、最近大きな問題が発生した某銘柄の場合、迅速に指定の取 消しという措置が講じられている。こういった対応が、今後も続けられていくという大前 提に基づいた議論であり、決して不正行為の横行につながるような議論は行われていない。 ・ 旧リージョナル区分の銘柄は、GS制度の対象から外れて以降、ほとんど流通していな い。発行会社が常に買い取り等に応じてくれるとは限らない以上、やはり、非上場企業株 式の流通市場は必要だろう。ある程度株価が下がったとしても、売買すらできない状況の 方が問題である。 ベンチャー企業の育成という観点では、日本において、フェイスブックのように数百億 円の資金を集めて大きなビジネスを始めるのはほぼ不可能であるし、実際の例としても、 DeNA等、極めて限られている。ベンチャー企業から、上場企業やグローバル企業は、 なかなか出てこないというのが実態である。 しかしながら、例えば地方の洋品店からグローバル企業に変化したユニクロのように、 13 旧リージョナル区分に当たるような企業であっても、ビジネスモデルがしっかりしていれ ばグローバル企業に成長する可能性もある。少しでも株式が流通するベースを整備すれば、 成長の機会が増え、日本経済の活性化に資するかもしれない。将来的な上場の有無に関係 なく、ある程度株式が流通できる市場は、日本では十分に整備されていない。こうした役 割を担うことをGS制度に期待したい。 ・ ベンチャー企業のための市場等、限定された目的を設定してしまうと、柔軟性に欠ける 仕組みになってしまう。非上場企業の株式を売買できるようにする仕組み程度の認識で制 度を整備すれば、例えばベンチャー企業が、成長の過程の選択肢の一つして利用する等、 汎用性のある仕組みとなるだろう。基本的な仕組みさえ整っていれば、仮にそれが利用さ れなくとも、特に問題ないという意見に同感である。 ・ 資料の3ページにある、流通という論点について考えるに当たっては、やはり反社会的 勢力の排除という課題を無視できないだろう。 ・ 反社会的勢力の排除については、シンプルに考えればそれほど問題ないのではないか。 反社会的勢力は、基本的に証券会社に口座を開けないし、証券会社は、反社会的勢力の口 座を発見した場合には、口座を閉ざさなければならないこととなっている。以上により、 証券会社が取引に介在するという原則が貫かれている限り、反社会的勢力が簡単に入って くることはないはずである ・ 株式の譲渡制限を外さないで、発行会社の取締役会等の承認を得た人しか株主になれな いようにするという方法も考えられるだろう。最近も証券会社を経て取引をしていたにも かかわらず、上場審査の際に反社会的勢力の株主の存在が問題になったケースを耳にした。 成長段階の企業からすると、反社会的勢力に関するリスクが少しでもあれば、大きなコス ト要因となってしまうことを御理解いただきたい。 ・ 譲渡制限の有無と非上場企業の株式の売買の可否は、関連付ける必要のないテーマでは ないか。上場審査の過程で、反社会的勢力の株主が見つかった例が挙がっていたが、仮に 譲渡制限が付されていたとしても、当該発行会社の取締役会等が反社会的勢力であるかど うかを完全に把握していない限り、誤って譲渡を決議してしまうことは考えられるだろう。 ・ 自由化の方向で、制度設計を考えるべきであると考えている。その趣旨からすれば、譲 渡制限が付されていない株式しか取引できないとするのではなく、譲渡制限が付されてい る株式であっても、取引可能とする方向で制度設計を考えるべきではないか。 ・ 賛成である。 ・ 決して反社会的勢力を擁護するわけではないが、反社会的勢力とはどこまでの範囲を指 14 すのか、海外の反社会的勢力をどのように考えるのか、また、その親族や関係者をどこま で排除する必要があるのか、難しい問題であろう。御指摘のあった取締役会等の反社会的 勢力チェック機能の不確実性に加えて、株主になってから反社会的勢力となる可能性も考 えられるため、反社会的勢力の排除は、実務的には非常に難しい。過度に厳格な規制とす るのではなく、ある程度弾力性のある運用を許容しなければ、現場の実情にそぐわない制 度になってしまうのではないか。 ・ 譲渡制限が付された株式の売却については、当該株式の発行会社の取締役会等において、 当該売買が承認される必要があるということについて、売買当事者によく認識してもらう 必要があるが、これについて、一定の対応が会社法に盛り込まれている。具体的には、譲 渡制限が付された株式であっても、既存株主の追加購入といった、ある一定の場合には取 締役会等の承認を得たものとみなせる旨のルールが置かれている譲渡制限株式の売買であ れば、排除する必要はないだろう。こういった場合でなくとも、前述した内容等を十分に 顧客に理解させたうえでの注文であれば、一律に取扱いを禁止する必要や合理性はないだ ろう。適合性の原則等のリスクを孕んでいるため、取扱いを敬遠する証券会社も当然出て くると考えられるが、一律に禁止する必要はないのではないか。 ・ 譲渡制限は、不審な者が株主になることを避けるために設定されているものだと考える。 そういった発行体の意向を完全に無視して、譲渡制限が付された株式を自由に売買させて もよいのだろうか。 ・ 譲渡制限が付された株式を譲渡する際には、当該株式の発行会社の取締役会等の承認が 必要になる。譲渡制限が付された株式の売買を認めるといっても、決してこの手続きを省 略できるという意味ではない。 ・ 発行会社としては、誰が株主になるかわからないことは、非常に不安である。過去にG HQが譲渡制限の付与を禁止したにもかかわらず、現在では、ほぼ 100 パーセントの非上 場企業の株式に譲渡制限が付されているのは、譲渡制限の付与に経済的合理性があるから だろう。また、反社会的勢力を発行会社のみで 100 パーセント排除しようとしても、まず 無理だろう。しかし、例えば大手の証券会社であれば、きちんとした反社会的勢力のデー タベースを持っているため、反社会的勢力の排除を支援するビジネスが成立するかもしれ ない。譲渡制限の無い株式に加えて、譲渡制限のある株式も取引可能とすることによって、 大きな可能性が広がるのではないかと考える。 ※ なお、次回会合は、平成 24 年3月 14 日(水)に開催予定である。 以 15 上