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第9回(11月18日) - C
ロマン主義の時代 ( 18世紀末から19世紀前期) ロマン主義時代のイギリス社会 ①農業国から工業国への急速な変化 産業革命(the Industrial Revolution)の進展と囲い込み (enclosure)による農業の効率化 農業労働者の都市へ流入→工場労働者へ 都市の急激な人口増加とスラムの拡大 自由放任主義(Adam Smith)→貧富の差の拡大 労働運動の激化 ②革命の時代 アメリカの独立(1775) フランス革命(1789) フランス革命に対するイギリスの世論の分裂 フランス革命の過激化、Napoleonの拡張主義 →イギリス国内世論の右傾化・反動化 ③政治改革 商工業者の富裕化 政治的な権利を求める運動が盛んになる 1832年の選挙法改正法(Reform Act)によって選挙権が 拡大される 新古典主義(Neo-Classicism)とロマン主義(Romanticism)の対 比 新古典主義 (1) 世界を神の秩序ある創造物とみなす 人間を存在の連鎖の中間に位置づける (2) 理性や良識に価値をおく (3) 客観的な真理に関する確信 (4) 人間の限界を認識→高慢、過激な思想や行動、熱狂などを 嫌う (5) 模倣を重視する→独創性に対する低い評価 (6) 古典から学んだ凝った人工的な文体 (7) 都会志向 (8) 政治的な保守性 (9) 子どもをたんなる無知で未熟な存在とみなす ロマン主義 (1) 自己生成する自然(汎神論的な自然観) (2) 感情や情緒に価値をおく (3) 主観的な真理の追求 (4) 人間の無限の想像力を信頼 (5) 独創性を重視する (6) 詩的語法からの自由、日常的な言語を用いた詩作 (7) 田舎志向や地域性の強調→都市批判やナショナリズ ム (8) 旧来の政治体制に対して批判的 (9) 子どもを文明に汚されていない純粋かつ神聖な存在 とみなす 代表的なロマン主義の作家 イギリスのロマン主義運動は圧倒的に詩の運動であった 六人の大詩人が運動の代表される文学潮流 William Blake (1757-1827) William Wordsworth (1770-1850) Samuel Taylor Coleridge (1772-1834) George Gordon Byron (1788-1824) Percy Bysshe Shelley (1792-1822) John Keats (1795-1821) 近年ロマン主義時代の女性作家たちの再評価が進んで いる Anna Laetitia Barbauld (1743-1825) Anna Seward (1747-1809) Charlotte Smith (1749-1806) Mary Robinson (1758-1800) Helen Maria Williams (1762-1827) Felicia Dorothea Hemans (1793-1835) Laetitia Elizabeth Landon (1802-38) ロマン主義の正典から除外されてきた労働者詩人たち Ann Yearsley (1752-1806) Robert Burns (1759-96) Robert Bloomfield (1766-1823) James Hogg (1770-1835) John Clare (1793-1864) William Blake (1757-1827) ロンドンで衣料品店を営む貧しい家に生まれ芸術学校に 通う スウェーデンの神秘主義思想家Emanuel Swedenborg (1688-1772) から影響を受ける 14歳で彫版工(engraver)の徒弟となる 王立美術院(Royal Academy)に入学 1782年市場向け菜園経営者の娘Catherine Boucherと結婚 1784年印刷屋を開業 ロンドンおよびロンドン近郊で生涯彫版工として暮らす 詩に絵を添えてみずから印刷した→詩と絵画の融合をめ ざした 死後しばらく忘れられていたが、19世紀後半になって詩 人SwinburneやRossettiによって再評価される WILLIAM BLAKE (1757-1827) 政治、社会、宗教、芸術におけるあらゆる権威に反抗 合理主義、古典主義、物質主義を否定 アメリカの独立やフランス革命に対する共感を示す 女性に対する抑圧にも批判的だった 人間の自由を束縛するものすべてを糾弾→一時期危険 人物として拘禁される 幻視者(visionary)とみなされた 晩年は独自の神話的な世界の創造に没入した Universal Manの分裂と再統一がテーマ 晩年の詩は疑いをかけられるのを避けるために意図的に 難解に書かれている 主要著作 Songs of Innocence (1789) 主として無垢な幼年時代を描く 道徳、抑圧、恐怖のない世界 The Marriage of Heaven and Hell (1790) 主として詩的な散文で書かれている 科学的な合理主義や伝統的な宗教を人間の自由な思考を抑圧するも のとして批判する 地獄を危険な活力のあふれる場所として、天国を静的で不毛な場所 として描く MiltonがParadise Lost (1667) で描いた悪魔への共感を示す Songs of Experience (1794) ‘The Tyger’や ‘The Sick Rose’などの著名な詩を含む 無垢の喪失をテーマとする Songs of Innocenceとタイトルが同じで内容の異なる詩がいくつか収 められている Songs of Innocenceと合わせて ‘the Two Contrary States of the Human Mind’ を描く The Book of Urizen (1794) The Four Zoas (1797) Milton (1803-8) Jerusalem (1804-20) Without Contraries is no progression. Attraction and Repulsion, Reason and Energy, Love and Hate are necessary to Human existence. From these contraries spring what the religious call Good & Evil. Good is the passive that obeys Reason. Evil is the active springing from Energy. Good is Heaven. Evil is Hell (The Marriage of Heaven and Hell, 1790-93) To see a world in a grain of sand, And a heaven in a wild flower, Hold infinity in the palm of your hand, And eternity in an hour. (‘Auguries of Innocence’, 1803) ‘The Chimney Sweeper’ Songs of InnocenceとSongs of Experienceに同名の詩が収められ ている 体の小ささゆえに仕事に適しているため子どもが煙突掃除人 として酷使されていた時代を背景に書かれた詩 一方の詩は子どもが神によって救われる可能性を描き、他方 の詩は神の無力を描く ‘London’ 都市化、商業化、工業化が人間に加える歪みを主題としてい る 初期資本主義がもたらした荒廃状況を赤裸々に描く 分裂した社会の状況を批判 William WordsworthのBlake観 ‘There was no doubt that this poor man was mad, but there is something in the madness of this man which interests me more than the sanity of Lord Byron and Walter Scott.’