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ねばりと歯ごたえ!宗谷のもずく

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ねばりと歯ごたえ!宗谷のもずく
-北海道-
ねばりと歯ごたえ!宗谷のもずく
―製品開発と販売拡大への取り組み―
団 体 名 宗谷漁協もずく研究会
発表者名 名古屋 泰憲
1.地域の概要
稚内市は、晴れた日には僅か 45 ㎞北にサハリンの島影を望む日本最北に位置し、宗谷岬
を挟み、東はオホーツク海、西は日本海に面する 92 ㎞の海岸線と、利尻礼文サロベツ国立
公園を有する豊かな自然環境が広がる人口3万7千人の漁業と観光の街である(図1)
。
2.漁業の概要
私たちの所属する宗谷漁協は、組合員 342 名で構成されており、平成 24 年の生産数量
は 35,725 トン、金額は 54 億9千万円であった(図2)
。主な漁業はホタテガイ漁業、タ
コ漁業、ナマコ漁業、秋サケ定置網漁業などの漁船漁業を中心とし、生産数量の 91%、金
額の 60%をホタテガイ漁業が占めている。
3.研究グル-プの組織と運営
平成 22 年からもずく漁業者と漁協職員を中心とした 12 名により、宗谷漁協もずく研究
会として活動が始まった。主な活動はモズクの製品開発やイベント及びスーパーでのモズ
クを中心とした販売、地元水産物のPRを行っている。
4.研究・実践活動取組課題選定の動機
宗谷漁協は、全道屈指のミズダコ生産地であり、長年に亘り特産品である酢ダコの加工販
売を行ってきたが、原料価格の高騰や、施設の老朽化と相まって加工場運営費が嵩むこと
から稼働の中止となった。このため、宗谷の特産品の一角を担ってきた、酢ダコに代わる
ものを開発する必要が出てきた。
そこで、宗谷地区の地域性があるものは何かと考えたところ、浜から「地元のモズクは強
い粘り気と独特の食感が非常に良い」という話を聞き、モズクを宗谷の特産品として取り
上げることとなった。
もずく漁業は、9月の3、4日間、漁業者約 150 名により水深1m以浅の平磯において、
手摘みにより採取され、塩蔵加工してから出荷されている。生産量は年間3トンから 18
トンで、近年は減少傾向にある(図3)
。
「宗谷産モズク」はこれまで塩蔵品でしか販売されていなかったが、塩蔵では風味と歯
応えが損なわれ、本来の特性が充分生かされた商品とは言い難く、塩抜きも難しいもので
あった。そこで、「宗谷産モズク」の良さを生かした製品を開発し、販売することを目的
として本活動に取り組んだ。
5.研究・実践活動状況及び成果
(1)製品づくり
はじめに、生の風味を活かすことを考え、コンブやノリなど海藻類の多くが乾燥加工さ
れていることから、まず、乾燥品の試作に取り組んだ。しかし、生や湯通し品を機械乾燥
したところ、色が悪く製品むらもあり、水で戻したときに風味や食感が損なわれ、手間と
製造コストが掛かることから、乾燥品の製品づくりは断念した。
新たな加工方法を考えるにあたり、
もずく漁業者から食べ方と保存方法を聞いたところ、
生のモズクや湯通ししたモズクを冷凍保管し、
その都度解凍して調理する方法を教わった。
実際に試食してみると、これが一番美味しいと実感し、本格的に冷凍加工品を作ることに
決まった。
製品作りは、採取されたらすぐに各漁家から、雑物が取り除かれたモズクを集荷するこ
とから始まった(写真1)
。品質の均一化を図るため、
「未熟、過熟」
、
「太いもの、細いも
の」は規格外とし、すべての漁業者に新しい選別方法を理解してもらい、協力を得ること
ができた。そして高い鮮度を保ったまま、その日のうちに選別・洗浄を行った。集荷後の
付着物除去は、モズクが痛まないようにすることや、僅かな雑物が残らないようにするこ
とは、非常に難しかったが、洗浄試験の結果、モズクを 500g ずつ滅菌海水を用いて、30
秒間の洗浄を3回繰り返すことでモズクの表面を傷つけずに巻貝や砂粒を除去できた。
そして、翌日1日かけてパック詰めして(写真2)真空冷凍したものや、冷凍前の生モ
ズクにお湯をかけ、鮮やかな緑色に変化させて冷凍したものを作り上げた。これにより従
来の塩蔵品とは別に、
「生冷凍品」と「湯通し冷凍品」の2種類、さらに一般家庭向けに「湯
通し冷凍品(タレ付き)100g」
(写真3)を製品化した。
製品づくりを実際に行う中で、集荷の際にモズクを 10kg 以上袋に入れたことにより、圧
迫されて熱を持ち鮮度を損なうことや、集荷量が多すぎた際の翌日までの保管方法の検討
が必要となった。冷蔵保管は保冷車2台を利用し簡易的に試みたが、短時間で充分な冷却
ができず、せっかく集荷したモズクを無駄にしてしまうこともあった。これにより、平成
25 年からは一漁家1日当たりの集荷量を5kg までとし、
全て当日処理で終えられる工程と
した。さらに製品の安全を期すため金属探知機の導入を行っている。
(2)販売促進活動
販売活動は、初めに札幌の飲食店を訪ねて「湯通し品」を試食してもらった。そこで、
サクサクとした歯応えの良さなど一定の評価を得ることができ、他の飲食店へも自信を持
って営業活動を行うことができた。
さらに、漁協で行っているネット販売を活用し、モズク単品での販売の他、
「ほたてがい」
や「たこシャブ」などのセット販売(写真4)も行うことで相乗効果を生み、宗谷地場産
品を多くの人に味わってもらえるように取り組んだ。また、
「宗谷産モズク」を取り扱って
いる飲食店の感想もネットに載せてPRを行った。
そのほかにも、
「宗谷産モズク」と一般のモズクを比較するために、水産試験場に依頼し
て成分を調べてもらった。その結果、
「宗谷産モズク」は、愛情ミネラルと言われるマンガ
ンや、鉄分、炭水化物、脂質などが多く含まれていることや、剪断強度が強いことから、
歯応えも良いことが分かった(図4)
。そして「宗谷産モズク」をより多くの人に知っても
らうために、パンフレットを作成(図5)し、イベントや漁協即売会(写真5)を中心に
配布した。パンフレットを見たお客さんのほとんどは、北海道でモズクが採られることを
知らず、是非一度食べてみたいという声もあった。
平成 24 年3月に稚内副港市場でのイベントに参加し、モズクを試食してもらった。その
とき多く聞かれた感想は「歯応えが良くおいしい」
、
「イメージしていたモズクとは全然違
う」など良い評価を得ることができ、
「宗谷産モズク」の販売に手応えを感じた。
(3)出荷状況
平成 24 年は札幌、旭川、富良野などの、飲食店8軒、卸売店8軒、小売店2軒、合計
18 軒に売り込むことができた。販売個数は「生冷凍品 100g」が 100 パック、
「生冷凍品 300g」
が 4,344 パック、
「生冷凍品1kg」が 60 パック「湯通し冷凍品(タレ付き)100g」が 4,116
パック、
「湯通し冷凍品 300g」が 520 パックで、金額にして 7,498 千円を売り上げること
ができ、利益は 1,772 千円であった(表1)
。売り上げ金額は、平成 23 年の 5,082 千円と
比較して約 1.5 倍の増収となった。
6.波及効果
「宗谷産モズク」の消費拡大を積極的に展開した結果、稚内の魅力を充分感じられる食
材として、市と観光協会を中心とした推進協議会から「稚内ブランド」の認定(図6)を
受けることができた。
地元の食堂ではラーメンにモズクを載せた「もずくラーメン」
(写真6)が独特の食感と
....
のどごしで人気となり、観光客にも「ここでしか食べられないもの」と知られるようにな
った。また、地元の小中学校でも給食に「宗谷産モズク」が使用されるようになった。
さらに、平成 25 年では販売前にもかかわらず、札幌市内の飲食店や卸売店から予約注文
が入るようになった。
7.今後の課題や計画と問題点
これまでの活動によって、
「宗谷産モズク」はある程度の知名度を上げることができた。
今後は流通販路の拡大や、売り先の確保を確実なものにしていきたい。そのためには、塩
蔵品の一部を冷凍品に回して増産していくことが必要と考えている。
また、「宗谷産モズク」の生産量は年間3~18 トンと年によってばらつきが大きく、近
年は減少傾向にある。今後はモズク資源の状況を充分に把握して漁場管理を行い、安定し
た水揚げに繋がるよう取り組んでいきたいと考えている。
稚内市
図1 位置図
図2 平成 24 年宗谷漁協生産高
図3 出荷数量と価格の推移
写真1 集荷状況
写真2 選別、洗浄、パック詰め作業
写真3 左から「生冷凍品」
、
「湯通し冷凍品(タレ付き)
」
写真4 セット販売内容
図4 もずくの剪断強度
図5 一般配布用パンフレット
写真5 漁協即売会
表1 平成 24 年産もずく加工販売収支決算書
<収 入>
項
目
売上げ
合
金額
備考
7,498 千円 見込み含む (H25.6月現在1,940.8kg販売)
計
7,498 千円
<支 出>
項
目
原料(税込み)
金額
備考
3,445 千円 2、116.6kg kg単価1,627.5円
人件費
521 千円 ホタテ加工場従業員、職員
工場使用料
406 千円 ホタテ加工場
資材・包装費
595 千円 袋、箱、シール
湯通し100gタレ
221 千円 4,365ヶ
燃油費
160 千円 湯通しボイラー
広告費
76 千円 サンプル、のぼり、PRパンフ作成
消耗品費
31 千円 前掛け、ヘアキャップ、マスク、手袋、インチラップ、フロシキ他
その他
271 千円 保冷車レンタル料 他
合
計
5,726 千円
利
益
1,772 千円
写真6 もずくラーメン
図6 稚内ブランド認定証
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