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札幌市 汎用電子計算機システム 検討委員会 報告書

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札幌市 汎用電子計算機システム 検討委員会 報告書
札幌市
汎用電子計算機システム
検討委員会
報告書
平成 21 年 3 月
はじめに
札幌市において市民サービスの事務執行の中核を担う基幹系システムは、昭和37年
の「住民税・固定資産税システム」「国民健康保険システム」の稼動を皮切りに、順
次整備が進められ、平成元年にはシームレスな情報(事務)処理を目的とした「住民
記録オンラインシステム」が稼動しました。
現在7つのシステムが汎用機上で稼動していますが、これらのシステムは稼動後20
年が経過し、この間の技術変革を踏まえると、抜本的見直しを要する転換期を迎えて
いると考えられます。
また、企業や公共団体において汎用機システムを再構築する、いわゆる「オープン
化」の取り組みが、近年全国的に広がりつつあります。
これらの背景のもと、札幌市汎用電子計算機システム検討委員会(以下「委員会」
という。)は、業務やシステムの最適化関連の知識・経験を有する6人の委員により、
以下の「成果目標」と「検討の観点」を共通認識として、検討を行いました。
【成果目標】
・汎用機を中心とした基幹系システムの「あるべき姿」の提言
・将来にわたる基幹系システムの方向性の提言
【検討の観点(札幌市の課題意識)】
・市民の利便性向上
・地場企業の参入機会の確保
・随意契約を前提としない調達の実現
・事務の効率化
・基幹系システムにかかるトータルコストの削減
本報告書は、全5回にわたる委員会における議論を踏まえ、札幌市の基幹系システ
ムの「あるべき姿」「将来の方向性」について提言するものです。
今後、札幌市では、その実現に向けた基本方針の策定を進めていくことと思います
が、本報告の趣旨を踏まえ、市民がその成果を実感できる施策が実現されることを、
委員一同、強く期待するものです。
平成21年3月
札幌市汎用電子計算機システム検討委員会
委員長
ii
山
口
秀
二
もくじ
・はじめに
Ⅰ
札幌市の基幹系システムの現状と課題...............................
1
1
基幹系システムの歴史............................................
1
2
基幹系システムの現状分析........................................
3
3
基幹系システムを取り巻く「5つの課題」...........................
7
自治体を取り巻くITの動向.......................................
10
1
他自治体における「オープン化」の状況............................
10
2
IT活用の潮流..................................................
12
札幌市の基幹系システムの課題解決の方向性.........................
14
1
札幌市が目指すべき基幹系システムの将来像........................
14
2
基幹系システムの構築にあたっての手法と課題......................
20
基本方針策定にあたっての提言.....................................
24
1
総論............................................................
24
2
各委員の専門分野からの提言......................................
26
・委員名簿...........................................................
37
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
※用語解説
iii
Ⅰ
1
札幌市の基幹系システムの現状と課題
基幹系システムの歴史
札幌市の基幹系システムは、昭和 37 年に汎用電子計算機(以下「汎用機」という。
)
を導入して 46 年の歴史があり、大きく 2 つの時代に分けることができる。
まずは、昭和 37 年から始まる「定型業務の大量一括処理(バッチ処理)を中心と
する内部業務の効率化の時代」である。専用のコンピュータルームに設置された汎用
機を、専門の知識を持ったシステム部門のみが扱っていた。主に、税金や給与、会計
などの大量計算処理、住民記録台帳作成などの定型業務の大量一括処理といった内部
業務の効率化が進められた。次は、平成元年の住民記録オンラインシステムの稼動に
より始まる「オンラインを活用した業務間連携による市民負担軽減と窓口業務の効率
化の時代」である。この時代は、汎用機と区役所など端末機がネットワークで結ばれ
た環境が整備され、オンラインを活用して業務を行うことで、窓口業務の待ち時間の
短縮や手続きの簡素化などにより、市民の利便性向上と業務の効率化が進められた。
また、サーバと言われる小型で扱いやすい高性能パソコンが普及し、システム部門で
しか扱えなかったコンピュータを業務部門でも扱えるようになった。業務部門が独自
にサーバを活用したシステムを構築するようになり、事務量が少ない、あるいは規模
が小さい業務においてもシステム化が図られた。コンピュータの活用範囲が広がり基
幹系以外のシステムが飛躍的に増加した時代でもある。
札幌市の基幹系システムの歴史は、20 年を一つの単位として、技術の進化とともに
コンピュータの扱う範囲が拡大し、さらに効果が多様化することで市民への効果もよ
り直接的なものへと変革してきた。現在は、次の 20 年を迎える時期にきている。
- 1 -
表1
昭和 37 年
札幌市の基幹系システム(主要システム)のあゆみ
住民税・固定資産税システム稼動
国民健康保険料システム稼動
人事給与システム稼動
昭和 47 年
住民記録システム稼動
昭和 49 年
国民年金システム稼動
平成
元年
住民記録オンラインシステム稼動
平成
4年
印鑑登録オンラインシステム稼動
税務事務オンラインシステム(諸税系以外)稼動
平成
6年
国民健康保険オンラインシステム稼動
国民年金オンラインシステム稼動
税務事務オンラインシステム(諸税系)稼動
平成
7年
昇格昇給オンラインシステム稼動(平成 19 年廃止)
平成
8年
給与計算システム稼動
平成 11 年
保健福祉総合情報システム(介護保険資格・認定・ケアプラン)稼動
保健福祉総合情報システム(福祉共通・相談・申請)稼動
平成 12 年
保健福祉総合情報システム(介護保険賦課・給付)稼動
保健福祉総合情報システム
(福祉施設・在宅・支払・保健・手帳)稼動
平成 14 年
保健福祉総合情報システム(児童扶養手当)稼動
平成 15 年
保健福祉総合情報システム(医療助成)稼動
平成 16 年
保健福祉総合情報システム(保育所)稼動
平成 18 年
保健福祉総合情報システム(児童手当)稼動
平成 20 年
保健福祉総合情報システム(後期高齢)稼動
- 2 -
2
札幌市基幹系システムの現状分析
今回の検討対象である札幌市の基幹系システムは、主に汎用機上に構築された住
記・税・国保年金・給与などのシステムと、汎用機とサーバの併用で構築された保健
福祉のシステムからなる。
機器構成及び処理対象としている業務は「図 1 システムの概念図」のとおりである。
資産規模としては、平成 20 年 7 月時点で、汎用機上の COBOL プログラム資産が約
8,000KLOC、画面が約 600 画面、帳票が約 2,200 帳票。サーバ上の Visual Basic プロ
グラム資産が約 3,000KLOC、約 1,000 画面、約 1,100 帳票となっている。
処理形態としては大きく「オンライン処理」と「バッチ処理」がある。区役所など
に設置された端末機をネットワークで結び、転入手続きや各種証明書発行などの窓口
業務でオンラン処理を利用している。税額計算などの大量一括処理や、通知書などの
大量印刷は、バッチ処理で行われている。
経費については、平成 19 年度決算ベースで約 26 億円。内訳は、機器賃借費・機器
保守費が約 12.5 億円、運用保守費(基幹系システムの稼働監視やメンテナンス作業
といった維持管理作業にかかる経費)が約 3.2 億円、基幹系システムの開発改修費が
約 8.3 億円、用紙代やパンチ経費などのその他経費が約 2.3 億円となっている。
年度毎の推移については、機器賃借費・運用保守費は減少傾向、開発改修費は制度
改正による現行機能の維持が中心となるため制度改正の内容によって増減する傾向
がある(表 1)。保健福祉総合情報システムでサブシステムの追加が行われているが、
基幹系システム全体としてみると、既存システムの維持管理が中心になっている。
- 3 -
平成 20 年 12 月現在
汎用機
A 号機 (本番系)
住記・印鑑オンラインシステム
保健福祉総合情報システム
保健福祉宛名システム
住記関連業務
バッチシステム
住民記録・印鑑
オンラインシステム
医療助成(バッチ)
後期高齢 ・徴収
後期高齢 ・賦課
後期高齢 ・資格
介護保険 ・徴収
介護保険・賦課
介護保険・資格
検索・照会システム
印鑑システム
住民記録システム
・住居表示
・ 成人者名簿
・ 学齢簿・就学援助(※)
・ 選挙事務(※)
・ 統計
住記系小規模
バッチシステム
設置場所
14拠点
設置台数
140台
利用者数
432人
・市営住宅(※)
・幼稚園料(※)
・下水道受益者負担金
・市民アンケート
・農業調査
・人口移動動態調査
・上下水道(※) 他
福祉系小規模バッチシステム
・老人福祉
・福祉手当
・母子寡婦貸付
国民健康保険・国民年金
オンラインシステム
・健康診断(※)
・保育料(※)
税務オンラインシステム
税宛名システム
福祉宛名システム
設置台数
194台
利用者数
526人
利用者数
803人
図1
システムの概念図
- 4 -
滞納整理システム ※( )
15拠点
194台
諸税収納システム
設置場所
設置台数
収納管理システム
事業所税システム
特別土地保有税システム
法人市民税システム
軽自動車税システム
固定資産税システム
住民税システム
税証明シ ステム
年金資格システム
国保給付システム
国保滞納システム ※( )
国保収納システム
国保賦課システム
国保資格システム
13拠点
設置場所
汎用機 B 号機 (待機系)
共済組合システム(※)
組合員情報管理
レセプト 計算
臨職・非常勤
賃金報酬 計算
正規職員
給与手当計算
汎用機システムの
給与計算システム
研修・開発環境
給与系システム
・汎用機の障害発生時はホットスタンバイにより、自動で本番系から待機系に切り替わる(5分程度)
。
図1
システムの概念図
サーバ機 (保健福祉総合情報システムサーバ 本番・待機系)
保健福祉総合情報システム
保健福祉宛名システム
介護保険
介護保険・給付
介護保険・ケアプラン
介護保険・認定
設置場所
設置台数
16拠点
501台
利用者数
1,209人
福祉
精神手帳・通院医療
児童相談所
- 5 -
医療助成(オンライン)
システムの概念図
共通
)
図1
児童手当
)
児童扶養手当金
保育所 ※(
保健 ※(
知的障害者更生相談所
身体障害者更生相談所
支払管理
施設在宅サービス
障がい者 手帳
総合相談 ・申請
・(※)のシステムは、他に主となるシステムが存在することを表している。
表1
基幹系システム維持管理経費(決算額)の推移
単位:百万円
平成 17 年度
機器賃借費・保守費
平成 18 年度
平成 19 年度
1,424
1,338
1,252
運用保守費
323
344
316
開発改修費
1,030
729
828
その他経費
270
220
228
3,047
2,631
2,624
合計
- 6 -
3
札幌市基幹系システムを取り巻く「5つの課題」
現在、札幌市の基幹系システムを取り巻く課題としては、大きく次の 5 つの課題が
挙げられる。
(1) 維持費用の増加
今後は市民サービスの多様化により、新たな行政サービス形態に対応した機能の
追加や、セキュリティ強化のための機能追加も考えられる。そのため、現在の年間
約 26 億円(平成 19 年度決算)の維持費用が膨らむ可能性がある。
さらには、古い技術、古いプログラムで構成されているために対応するには時間
と経費が余計にかかる。
また、採用されているプログラム言語及び設計手法も柔軟な機能追加に対応しや
すいとは言い難く、今後の制度改正などに係る費用はさらに増加することが予想さ
れる。
維持費の累計
金額
平成19年度ベースの
維持経費
インターネットなどの
マルチチャネル対応
経費
老朽化・複雑化対策
の対応経費
金額
セキュリティ対策
の対応経費
平成19年度ベースの維持費に対
する追加経費
時間
図 2 基幹系システムの維持費の推移イメージ
- 7 -
(2) プログラムの老朽化・複雑化
主要なオンラインシステムは稼動から 20 年が経過している。その間、毎年のよ
うに制度改正に対応するため、改修を行ってシステムを維持してきた。こうした長
年の改修の繰り返しにより、プログラムが徐々に複雑化していった。より複雑化し
たプログラムをさらに改修する場合は、改修個所の特定や影響範囲の調査に多大な
時間を要する。また、改修作業の効率も悪くなってしまうことから、改修費が高止
まりする原因となっている。
また、近年の制度改正は、施行までの期間が短く、迅速な対応が必要な状況であ
るが、前述のとおり影響調査に時間を要することや、改修作業の効率が悪いことな
どから、短期間での改修が困難になっているため、制度施行までに基幹系システム
の改修が完了しないことも発生しつつある。
(3) 特定業者との随意契約の長期化
プログラムが複雑化し、その設計書なども度重なる改修により細分化しているた
め、ドキュメントによる機能詳細・プログラムの内容を把握することが困難な状況
である。加えて、汎用機の特性上、汎用機メーカーの固有技術に依存した機能もあ
る。
このため、保守管理、改修といった作業は、本市の汎用機のメーカーであり、当
初からの開発を請け負った業者との随意契約をせざるを得ない状況となっている。
この業者には、長年の経験により基幹系システムのノウハウが蓄積されているこ
とから、複雑化したプログラムであっても、ドキュメントが細分化していても、保
守管理、改修作業を実施することが可能である。
しかし、開発はもちろん、開発後の保守管理、改修作業について、特定業者との
随意契約の長期化は、調達の透明性確保がますます求められている今日では避ける
べきと考えられる。
(4) 地場企業の参入機会確保が困難
札幌市では地場経済の活性化策として、市内の中小企業の育成を進めている。こ
のような方向性にかんがみ、基幹系システムの開発、改修、運用保守などについて、
市内の中小企業に受注機会を与えたい。
しかし、現行システムの構成上、複数業者への分割発注が困難となっている。ま
た、プログラムが肥大化・複雑化しているため受注リスクが高いことから、参入機
- 8 -
会の確保が難しい状況である。
(5) 新たな行政サービス形態への対応が困難
市民ニーズの多様化や社会環境の変化により、官民連携によるサービス、さまざ
まな手段のサービス提供など、今後、行政サービスのあり方に変化が求められてく
ることが想定される。
しかし、こうした新たな行政サービス形態に対応するには、保守性や接続性が高
いシステムでなければならない。
稼動から 20 年以上のシステムが多くあり、抜本的な再構築をしていないため、
迅速かつ低廉な費用で、最新の技術による新たなサービス形態に対応することが難
しい。場合によっては技術的な制約により対応できないことも考えられる。
- 9 -
Ⅱ 自治体を取り巻くITの動向
1
他自治体における「オープン化」の状況
いわゆる「オープン化」とは、さまざまな意味・内容を抱合しており、必ずしも明
確な一つの定義があるわけではない。他の自治体、あるいは他の業種の企業などにお
いても、
「オープン化」に向けた取り組みは平成 16 年頃から始まっており、システム
を維持するためには当然に必要なことであるかのように進められている。
平成 16 年当時に見られた「オープン化」の取り組みは、大型汎用機を利用したシ
ステムを、小型のサーバを利用したシステムへ移行する「マイグレーション」を行う
ことを意味していた。
高価な大型汎用機を安価な小型サーバに置き換えることで、機器にかかるコストを
削減しようとしていたのである。いくつかの政令市において、このような方式のオー
プン化を行っているところがある。政令市におけるオープン化のパイオニアとも言え
る取り組みであったが、こうした考え方でのオープン化は、機器にかかる費用が一旦
下がるが、システムの稼働監視やメンテナンスに係る費用が高額になり、効果が相殺
されてしまう場合があるということが分かっている。次に、機器を転換するだけでは
なく、プログラムも全て作り直して、ゼロから再構築を行うという取り組みも見られ
るようになってきた。こうした方式についても、いくつかの政令市で取り組みが行わ
れているところである。
しかし、この場合は大きな構築費用が発生するため、単純な経費削減効果だけを期
待しても投資対効果は出ないことから、開発費用をできるだけ抑えることと、コスト
削減以外の効果も含んで新規システムを構築する必要がある。現在、システムの再構
築に取り組んでいる政令市においては、それぞれ狙っている効果や再構築を実施する
動機が異なっているが、狙っている効果としては以下のようなものが見られる。
①
市町村合併により複数メーカーの汎用機を運用する状況となったため、これら
を整理してコストを最適化したい。
②
システムの中身が分からなくなってきており、ブラックボックス化によるベン
ダーロックインが発生したり、処理結果に誤りがあっても修正できなかったり、
制度改正の対応が困難になったりしている状況を改善したい。
③
制度改正対応を単独の市だけで行うのは高コストになるため、パッケージソフ
- 10 -
トを利用したシステムに転換し、パッケージソフトを利用する市町村での経費
按分により低廉な費用で対応可能にしたい。
④
システムと業務の内容を掌握することが難しい現状では、制度改正に対応した
改修内容の要件定義を自治体職員が行うことは難しい。これを、パッケージソ
フトを利用することでメーカー側のノウハウで対応できるようにしたい。
⑤
電子自治体を実現するためには、古いテクノロジーでは対応できないことから、
最新のテクノロジーを利用したシステムへの転換を図りたい。
以上のように、政令市でみても、すでにオープン化を完了させているところ、現在
着手中のところがあり、その手法や狙っている効果もさまざまである。
どのような効果を狙ってシステムの再構築を行うかは、それぞれの課題認識によっ
て変わると思われるが、共通の課題認識もあると考えられるため、これらの取り組み
についても参考にしていくべきである。
「マイグレーション」を行った政令市をオープン化の第 1 グループ、再構築してい
る政令市を第 2 グループとすると、これからオープン化に取り組もうとしている札幌
市は第 3 グループということになる。第 2 グループの政令市は、第 1 グループの状況
を踏まえて新たな方法でオープン化に取り組んだと考えられる。したがって、後発の
札幌市がオープン化するとした場合には、第 1 グループ、第 2 グループの先行事例を
踏まえ、どのような効果を狙って、どのような目的で実施するのかを十分に検討すべ
きである。
- 11 -
2
IT活用の潮流
ITは限られた人が、限られた目的や範囲でコンピュータを使う時代から、多くの
人がパソコンや携帯電話などのさまざまな情報機器を利用してインターネットに接
続し、情報を取得・発信する時代へと、時間や場所、立場という範囲を超え浸透した。
現在は Web2.0 という言葉で表現されるように、インターネットを介して双方向で多
様な情報価値を創り合うコミュニケーションに不可欠な道具として発展してきてい
る。
技術がこのような方向で変遷している中で、ビジネスにおけるITの活用について
も同様に変化してきた。
例えば、銀行の窓口業務について振り返ると、以前はハイカウンター、ローカウン
ターというように接客窓口が目的別に分かれていた時代があった。定型的な手続きを
ハイカウンターで、相談など時間のかかる手続きをローカウンターでというロケーシ
ョンの切り分けを行っていたのである。これが、ITを活用したことによりATMが
普及し、ロケーションに非依存でサービスが受けられるようになったことで、ハイカ
ウンターを無くしてバックオフィスにいた行員をフロントに出し、ローカウンターに
誘導するように顧客とのコンタクトを増やした。これにより、顧客サービスを向上さ
せ、結果的に預金高を上げるといったように、窓口業務の変革を行なっている。
これは、ITが単なる業務効率化の道具から、顧客のサービス向上によるビジネス
全体での利益向上に向けた業務変革のイネーブラへと変化していることを意味する。
そうした方向にテクノロジーは発展してきているのである。
自治体においても状況は同じであり、紙での手作業を効率化するというITの使い
方から、オンライン化により窓口業務の時間短縮で、より市民に近いところでの効率
化へと変わってきており、今後は市民サービスの変革に向けたIT活用へ向かってい
くと考えられる。銀行などのサービスと同様に、インターネットを介して携帯電話や
パソコンからサービスを受けることができるなど、従来の窓口に新たなサービス提供
手段を追加し、マルチチャネル化していくことが可能になっており、ITを活用する
ということにおいては、こうした面での効果を意識する必要がある。
現在のITへの投資は、単純な効率化やコスト削減効果だけではなく、業務変革を
踏まえたビジネス全体でのプラス効果を考慮し、その投資がどのような意味を持つの
か考えた上で行っていくべきものになってきている。
札幌市がオープン化を進める上でも、こうしたIT活用の潮流を踏まえて検討して
- 12 -
いく必要がある。
- 13 -
Ⅲ 札幌市基幹系システムの課題解決の方向性
1
札幌市が目指すべき基幹系システムの将来像
基幹系システムの課題を解決する方策として「オープン化」を考えるとき、「オー
プン化の目的」を明確にしておく必要がある。
「オープン化」とは、さまざまな意味・内容を抱合しており、必ずしも明確な定義
があるわけではない。「オープン化」は手段であって、それ自体が目的ではない。
基幹系システムを取り巻く「5 つの課題」も、表層化している問題だけではなく、
これらの課題の根底にある部分を見つめる。それを改善することでもたらされる効果
を明確にし、目指すべき方向性を整理することが必要である。
また、政令市の中でも「オープン化」の検討については後発となる札幌市として、
第 1 グループ、
第 2 グループにあたる政令市の取り組みを考慮することも必要である。
したがって、本検討委員会では、基幹系システムが稼動から 20 年で一つの節目を
迎え、次の 20 年で現状の課題を抱えることとなったことを踏まえ、現時点をこれか
らの 20 年に向けた基幹系システムの転換期と捉え、札幌市が目指すべき基幹系シス
テムの将来像を検討する。
今後 20 年を見据えては、行政サービスのあるべき姿を想定し、次にそれを支える
次期基幹系システムに求められる要件などを整理する。その上で、あるべき姿へ向け
た基幹系システムの変革について方向性を検討する。
(1) 今後の行政サービスのあるべき姿
サービスの受け手である「市民」の目線で、行政サービスはどうあるべきかを
考えなければならない。望ましい行政サービスとは、受け手である「市民」にと
って有益であることが必要であり、それがサービス向上の評価の視点となる。
現在の行政サービス、とりわけ基幹系システムに関する業務については、窓口
での対面サービスが基本であり、その他は郵送によるサービスがある程度で、限
定的である。一方、銀行など、民間に見られるサービス提供手段は、携帯電話や
自宅のパソコンからインターネットを経由して提供することが当たり前となっ
ている。さまざまな料金支払も、コンビニなど身近な場所で、いつでも支払いが
できることが、今や一般的になっている。
- 14 -
このように、民間のサービスが変化し、これが一般的になってくると、市民の
生活としては利用できることが当たり前となってくる。テクノロジーの進化が行
動様式の変化をもたらしたのである。このようなサービス利用方法が定着してく
ると、行政に対しても同レベルのサービス提供手段を求められる。
さらに、さまざまな法制度に基づいた行政サービスがあることを考えると、市
民目線で、関連するサービスを業務横断的に整理すべきである。制度という境界
線を意識することはなく、サービスの類似性や関連性を意識しており、合理的な
動線で行動できることを期待しているはずである。例えば住民票も所得証明書も
同じ証明書であるのだから、一括して取得できるようにすべきである。転出・転
入の手続きについても、「住所を移動する」という市民の行動に着目すれば、各
制度の手続をまとめて一括で行えるようにすることが、利便性の面で市民ニーズ
にかなっている。
このような行政サービスを実現するためには、制度の縦割りを排除し、その上
で、関連するサービスを一括して提供できるような業務間の連携が必要である。
これらのことから、今後の行政サービスのあるべき姿を考えると、キーワード
は「マルチチャネル化」と「業務間連携」であると言うことができる。市民が自
らの状況やサービス内容によって、携帯電話、パソコン、コンビニ、電話、対面
窓口など、それぞれが利用したい手段を選択でき、関連するサービスを一括して
受けることができる、多様で利便性の高いサービス提供窓口を持つことが必要で
ある。
現状では、法制度の制約があるため、基幹系システムに関する業務では、こう
したサービス提供手段を採用することが不可能であることも少なくない。しかし
今後 20 年といった長期的視点で捉えると、これらの制約がなくなる可能性は十
分にある。
(2) 行政サービスを支える基幹系システムに求められる要件など
フロント部分のサービス提供チャネルについては、チャネル機能そのものを一
つ一つ自前で構築するのではなく、既に民間のサービスで利用されている外部の
システムまたは機能を利用することを考えるべきである。
サービスのマルチチャネル化に関する行政内部の議論では、それにかかるコス
トが市民サービスの向上に見合うかどうかという投資対効果の課題、多様で変化
- 15 -
が早い市民ニーズに対してサービス提供チャネルの開発が追従できないという
開発期間の課題、これらの二つの課題があるため実現が難しいという結論になる
ことがしばしば見られる。しかし、これはフロント部分の「マルチチャネル化」
の前提として、バックオフィスの「業務間連携」を整理し、チャネルの重複を排
除することが必要であることを考慮せず、さらに自前でサービス提供チャネルそ
のものを開発することを前提にすることで発生する課題認識であり、考え方の方
向性として適切でない可能性があることを指摘したい。バックオフィス部分の業
務を整理してチャネルをいたずらに増加させないようにした上で、フロント部分
であるサービス提供チャネル自体は外部のものを利用するという方法であれば、
投資対効果の面、開発期間の面での課題を回避することが可能なのである。
例えば、コンビニ決済について見ると、コンビニ決済が必要な業務を整理して
収納業務を統合してから決済代行業者のシステムと接続し、データ連携するとい
う方法により、業務間連携機能とインターフェース機能の開発だけで実現できる。
ただし、こうしたことを実現するためには、容易な業務機能間の連携、多様な
サービス提供チャネルへの接続及び外部機能の取り込みが可能であることが前
提となる。また、連携や接続にあたっての技術としては、インターネットで Web2.0
と呼ばれているオープンなものが採用されるであろう。
したがって、今後の行政サービスを支えるには、ネットワーク的にも機能的に
も、標準的な技術によるオープンな接続性を備える必要がある。
また、行政サービスの提供方法を市民ニーズに的確に対応したものにするとい
うことになるが、「今後起こり得る市民ニーズの変化」に対応するというところ
まで視野に入れなければならない。こうした変化により、さらなるチャネルの追
加や業務間連携が必要となることも想定されるため高いメンテナビリティを備
える必要がある。メンテナビリティが高いということは、銀行のハイカウンター
からATMへの移行のような、サービスの構造変化(業務改革)を起こしやすく
するという効果にも繋がる。
標準的な技術によるオープンな接続性、市民ニーズの変化に柔軟に対応できる
高いメンテナビリティを備えた基幹系システムとするためには、集中管理、一括
管理が可能でなければならず、「ブラックボックス」ではない中身が見える「グ
ラスボックス」でなければならない。
具体的には、システムの開発から維持管理といったライフサイクルプロセス全
般にわたるフレームワークを標準として定義し、その中で、各手順を実施する役
- 16 -
割と責任を業務主幹部門、IT部門、ITベンダーのそれぞれに課すことを明示
し、必要となる文書を標準として定め、各自の役割と責任においてしっかりと文
書化し、それを維持していくということである。
ここで必要となるフレームワークは、単純に世の中にあるものを採用するので
はなく、まずフレームワークの標準を決めることに責任を負う組織的な役割を確
立し、自らの責任で実効性のあるものを作り出し、決定することが必要である。
これによって仕様のコントロールが可能となり、コストの適正化、ベンダーロ
ックインの回避といったことまでも実現できるようになる。また、繰り返し改修
を加えることによる複雑化、保守費や改修費の増加を抑制し、将来にわたって安
定的に維持することもできるようになる。
ただし、もたらす効果が明らかでなければ、基幹系システムへの投資を評価す
ることができなくなる。そうなると、グラスボックス化されたとしても、有効な
投資であるかが判断できなくなることから、この点について予め考慮しておかな
ければ、グラスボックス化した意義が薄れてしまうことになる。つまり、効果の
明確化と投資対効果の評価は、グラスボックスにする上でも必要な要件であると
言える。
投資対効果を評価する上では、ITガバナンスの確立が不可欠である。グラス
ボックス化は、ITガバナンスの確立と同様であり、狭義のガバナンスがグラス
ボックス化、広義のガバナンスがITガバナンスの確立である。狭義のガバナン
スであるグラスボックス化では、技術仕様の標準化や基幹系システムに関する文
書の標準化といった部分でのガバナンスを確立して仕様のコントロールを可能
とするものであるのに対し、広義のガバナンスでは、そもそも行政課題に対応す
るためのIT投資とその効果を、業務改革の実施や経営リソースの配分といった
ところを含めて統治するものである。もちろん、こうしたITガバナンスの確立
には、体制の整備も含まなければならない。
また、確立されたITガバナンスの中で投資対効果を判断する前提として、基
幹系システムを運用する中でその効果をモニタリングできる仕組みを備えるこ
とも必要である。この効果は、単なるコスト削減効果ではなく、市民サービスの
向上といったもの、地場経済の活性化といったところに視点を置き、副次的な効
果としてコスト削減効果も見るといった考え方が望ましい。
さらにもう一つ、必要な要件として、セキュリティの確保がある。セキュリテ
ィ対策については、技術の変革と社会環境の変化により、短期間で急激に状況が
- 17 -
変わってきている。今後の行政サービスを支える基幹系システムを考えるとき、
セキュリティについては後付で対策するのではなく、開発標準などの定められた
手順の中に予め盛り込んでおき、開発の初期の段階から、情報資産や基幹系シス
テムに接する全ての人や組織を含めた対策が取られるようにすべきである。また、
そこで必要となるセキュリティ対策の内容については、ISMSなどの規格に定
められている内容を参考にし、対策に漏れがないようにする一方で、過剰な内容
にならないようなバランスを取ることが必要である。
以上をまとめると、行政サービスを支える基幹系システムに求められる要件は
以下のとおりである。
【要件 1】
中身の見える「グラスボックス」な基幹系システム
【要件 2】
標準的な技術によるオープンな接続性を備えること
【要件 3】
適切なセキュリティの維持
【要件 4】
機能の追加や変更に柔軟に対応できる高いメンテナビリティを備
えること
【要件 5】
確立されたⅠTガバナンス体制によるシステム開発・運用の実施
【要件 6】
効果のモニタリングを備えたシステム運用
これらの要件が満たされることによって、札幌市が認識している「5 つの課題」
も結果的に解消されることになる。
つまり、これらの要件を満たした基幹系システムではないことに、課題の真の
原因があったのである。
以上の要件を踏まえ、次項で基幹系システム構築の考え方や手法を整理してい
く。
(3) あるべき姿へ向けた基幹系システムの変革
札幌市の基幹系システムは、今後 20 年間の行政サービスを支えるシステムへ
と変革すべき転換期にあると考える。
そのあるべき姿へ向けた変革手法として、
「オープン化」を進めるべきである。
札幌市が進めるべき「オープン化」とは、基幹系システムの変革であり、単な
る汎用機の置き換えやオープン技術の採用ではない。
- 18 -
また、単に基幹系システムの変革を行うことに止まらず、行政課題に対応する
ためのIT投資や業務改革を行う仕組み、体制の変革でもある。
あるべき姿へ向けた基幹系システムの変革は、全庁のIT投資全般に対する変
革の入り口である。大規模な基幹系システムの変革、最適化を行うことで、結果
的にITガバナンスを含めたIT基盤の整備が行われることとなり、この基盤を
全庁的に展開することで、最終的には札幌市全体のITガバナンス体制が確立さ
れ、IT投資の全体最適化に繋がっていくのである。
このような先の展開を見据えた基幹系システムの変革であることを忘れては
ならない。
- 19 -
2
基幹系システムの構築にあたっての手法と課題
札幌市の基幹系システムのオープン化について、ここではもう少し具体的な内容に
ついて整理する。
(1) システム構築の考え方
札幌市が進めるべき「オープン化」は単なる汎用機の置き換えであってはなら
ない。基本的には必要な要件を備える基幹系システムへ再構築するという考え方
を取るべきである。
また、単に再構築するのみならず、再構築に合せて開発プロセスや保守プロセ
スまでを整備した強力なITガバナンス体制についても同時に整備すべきであ
る。再構築は広範な業務を対象とした大規模開発であるため、しっかりとしたI
Tガバナンス体制が前提でなければ課題解決が不可能であるばかりでなく、再構
築そのもののリスクも著しく高くなる。
再構築手法は、パッケージソフトを活用した開発と、全てスクラッチでの開発
が考えられるが、政令市の基幹系業務においてはパッケージと言ってもカスタマ
イズ比率が高く、パッケージソフトと言えるレベルではないため、どちらの手法
でも結果的には同じである(カスタマイズ率が 5%を超えるパッケージソフトは、
もはやパッケージソフトとは言えない)。
パッケージソフトを利用した開発とする場合は、著作権法上の権利関係処理に
留意し、ブラックボックス化とベンダーロックインを防止するよう留意しなけれ
ばならない。もしもこれらの要件が満たされない場合は、パッケージソフトを利
用した開発はすべきではない。
また、ITガバナンス体制の確立が前提になることから、開発に向け、事前に
業務部門、IT部門、ITベンダーの役割と責任についても定義しておく必要が
ある。基本的に、事務の整理と業務要件の定義は業務部門が行ない、業務のモデ
ル化と調達仕様書のまとめはIT部門が行うべきである。これらのドキュメント
は、基幹系システムの運用段階に入ってからも将来にわたって維持されなければ
ならない。
あくまでも、市職員が主体的になり、パッケージソフトの活用といった他の自
治体の潮流に流されず、札幌市として身の丈にあった方法を採用することが重要
- 20 -
である。
調達の考え方については、長期契約か単年度契約か、業務ごとの調達か業務全
体の調達かなど、さまざまな検討要素があるが、これについては今後の検討課題
である。
また、再構築をすることは、いわゆる汎用機の利用を排除することではない。
現存する外資系メーカーの汎用機は、最新技術に対応しており、超ハイエンドサ
ーバと言えるものであることから、札幌市の既存資産の有効活用も視野に入れつ
つ、業務要件的に大量一括バッチ処理用サーバが必要になるといった事情があれ
ば、汎用機を利用することも考慮すべきである。あくまでも業務要件に照らして
適切な技術を採用することが肝要である。
(2) 基幹系システムの構築手法
再構築にあたっては、グラスボックス化を念頭に置き、まずは全庁的なITガ
バナンス体制を築くが重要である。
その上で、組織面と技術面の、グラスボックス化を図ることになる。システム
のライフサイクル全般を管理するプロセスを、市職員が主体的に運用できるよう
な組織体制を整備する。フレームワークについて、中立でオープンな技術を取り
入れることが必要である。大まかには、要件定義、概要設計までを職員が行い、
それ以降の開発作業をITベンダーに委託して実施するという手法を取るべき
である。
以下、流れに沿って整理する。
業務部門において事務の整理を行ない、業務の流れ図を整備する。WFAでも
イベントフローでも良いが、重要なのは業務部門が作成及び維持が可能な形式で、
記述ルールを規定して標準化し、誰が作成しても均質となるようにすることであ
る。
業務の流れ図が完成したら、次に業務要件の定義を行なう。業務要件の定義に
ついても、作成される文書の記述ルールを規定して標準化し、作成者によって不
均質になることを防ぐ。要件の定義においては、業務間連携やマルチチャネル化
といった業務改革の考慮を含めて実施することから、業務部門とIT部門で作成
する。ただし、主体がどちらかになるかはプロセス定義における役割と責任の定
- 21 -
義で決めておかなければならない。
ここまでは、基本的に職員で行うことが前提である。外部のリソースを活用す
ることも考えられるが、全てのドキュメントは将来にわたって職員により維持さ
れなければならないので、内容は全て掌握することが必要である。
次に、概要設計を行なうことになるが、この工程も、専門的知識が必要となる
部分も含め、職員が主体となって行うべきである。ここはIT部門が主体となる
ものと想定される。外部リソースの活用については、前工程と同様の考え方であ
る。
以後の工程は、ITベンダーへ業務委託で実施するが、各工程での作業は、必
ず詳細にレビューを実施し、内容を掌握しなければならない。
なお、こうした流れは札幌市全体でのオープン化方針に基づくルールとして定
める必要がある。もしも、基幹系システムの一部について業務部門が個別にオー
プン化したいという状況になっても、全庁的な方針との整合性を保つようにIT
部門が積極的に関与して進めるべきである。
(3) 開発費用及び開発期間について
再構築費用については、全体の金額として大きな投資額となるが、これまでの
他都市の取り組みを参考にし、短期的に「安いこと」を追求して結果的にトータ
ルコストが高くなることを避けるべきである。例えば、他の自治体の事例を見る
と、汎用機本体の金額を下げるために単純に低廉なサーバ機に置き換えるといっ
たことをしても、システム運用に係る経費が高くなってトータルコストでは費用
が増加したということも見られる。政令市の中ではオープン化の取り組みが後発
となる札幌市においては、こうしたデメリットを考慮した対応をすべきである。
その上で、少しでも低廉な費用で実施できるようにするため、過大なリスクが
見積られることを避ける工夫が必要である。具体的には、要件定義に十分な時間
とコストを投入し、精度の高い内容にするよう留意すべきである。
開発期間が長期になることから、現在の基幹系システムもしばらくは稼動させ
なければならないことを踏まえ、短期的な効率化の取り組みなどについても同時
並行で進めることも必要であろう。
- 22 -
(4) 地場企業の活用について
再構築の調達は今後の検討課題としているが、札幌市が重視する課題の一つで
ある地場企業の活用については、十分な準備の上、参入機会を確保する必要があ
る。地場企業への発注金額を評価することも有効であると考える。
また、再構築にあたってはグラスボックス化を前提としており、技術的にオー
プンで中立なシステム基盤の上で構築することで、地場企業でも受注が可能とな
る。また、発注規模に関しても、機能や範囲を分割た調達が可能になる。同時に、
そういった調達における開発管理体制の整備も必要である。この場合、現行では
まだリスクがあると思われることから、事前に地場企業のスキルアップを促進す
る先行的な取り組みやパイロット事業としての発注などを、経済施策の一環とし
て実施することも考えられる。
一方で、それとは別にJVによる調達についても検討に入れるべきであろう。
JVの構成要件を検討するにあたっては、地場企業の体力、スキルなどの要素を
考慮した上で、実効性のあるものとするよう留意が必要である。プライム企業に
大手ITベンダーを活用するといったことも、場合によっては有効である。
さらに、札幌市の地域経済活性化という目標を踏まえた活用について検討をし
ておく必要がある。単に地場企業を一時的に参入させるのではなく、地場企業を
育成する視点で参入の継続性を考慮し、自立的な成長を促進することを目指すべ
きである。
ITの地産地消という枠組を、IT投資の効果として評価することも視野に入
れるべきである。
- 23 -
Ⅳ 基本方針策定にあたっての提言
1
総論
本章では、これまで述べてきた再構築の考え方、要件および手法などを、今後さら
に検討を継続すべき点を加味しつつ、札幌市が基本方針の作成を進めるにあたっての
提言として整理する。
①
行政サービスのあるべき姿を目指した業務改革の実施
今後 20 年間の行政サービスを支える基幹系システムへの変革の取り組みであ
るとの意識の下に、全業務において行政サービスのあるべき姿を目指した市民サ
ービスの変革などの業務改革を検討し、実施すべきである。
特に、行政サービスのマルチチャネル化、市民目線でのサービス提供チャネル
の統合に向けた業務間連携について検討すべきと考える。
②
ITガバナンスの確立
再構築が広範かつ根幹的な行政事務に影響するものであり、その投資額も非常
に大きなものになることを踏まえると、単なる業務改善での効率化やコスト削減
に止まらない多様な効果を生み出すことが必要である。
そのためにも、業務改革による効率化、市民サービスの向上、地場経済の活性
化を含めた効果の最大化により、投資対効果が確保できるようにすべきである。
これには全庁的な改革の意思決定や投資判断が必要となることから、ITガバ
ナンスを組織体制とプロセスの両面で整備し、確立するよう検討すべきと考える。
③
システムライフサイクル全般におけるプロセスとフレームワークの整備
システムの企画、設計、開発、運用といったライフサイクル全般を対象とした
プロセスを整備し、業務部門、IT部門、ITベンダーの役割と責任、プロセス
内の手順と文書を定義し、標準化するよう検討を進めるべきと考える。
また、プロセスの中では、概要設計までは職員が行うことを前提とするよう、
専門的な知識習得も含めた人材育成方針と体制整備を検討すべきと考える。
更に、システム開発基盤として、特定メーカーの技術に過度に依存しないオー
プンで中立なフレームワークを整備し、開発技術標準を札幌市主導で確立するよ
う検討を進めるべきと考える。
- 24 -
④
IT投資の効果のモニタリング手法の確立
IT投資の効果を適宜把握できるよう、モニタリング手法の確立について検討
すべきと考える。
なお、効果を測定するにあたっては、コスト削減効果を中心とすると効果を削
減する方向になるので、市民サービスの向上、地場経済の活性化を含めた多様な
効果を評価対象とすることを考慮すべきである。
⑤
セキュリティの維持
開発の初期段階からセキュリティ対策が組み込まれている必要がある。ISM
Sなどの規格を参考にしつつ、システムのライフサイクル全般に組み込まれたセ
キュリティ対策の標準化を検討すべきと考える。
なお、過剰なセキュリティ対策はコスト増加や効率低下を招き、場合によって
はリスクを増大させることになることを踏まえ、バランスの取れたセキュリティ
対策が漏れなく実施されるよう考慮すべきである。
⑥
基幹系システム再構築の体制整備
基幹系システムの再構築が広範かつ根幹的な行政事務に影響するものであり、
その規模も非常に大きなものになることを踏まえ、全庁的な開発体制の整備につ
いて検討すべきと考える。
⑦
基幹系システム再構築に係る調達手法
調達手法は、長期契約か単年度契約か、業務ごとの調達か業務全体の調達かな
ど、さまざまな要素を加味して最も安全で経済的かつ経済施策に貢献する方法に
ついて検討すべきと考える。
⑧
地場企業の活用
札幌市の地域経済活性化という目標を踏まえた地場企業の活用について検討
すべきと考える。
これは、単に地場企業を一時的に参入させるのではなく、地場企業を育成する
視点で参入の継続性を考慮し、自立的な成長を促進することを考慮すべきである。
⑨
全庁的なITガバナンス体制の確立によるIT投資の全体最適化
基幹系システムの再構築の取り組みを全庁のシステムへ展開し、札幌市全体の
ITガバナンス体制を確立し、IT投資の全体最適化に繋げていくことを検討す
べきと考える。
- 25 -
提
言
(氏名)山口
秀二
札幌市は、住民情報系基幹システムだけではなく主要な情報システムについて、政
令市の中でも比較的高いガバナンスレベルで、経費も低く抑えて運用維持してきてい
ます。しかしながら行政サービスのあり方や情報システムの利活用が大きく変化しよ
うとしている現在において、過去の延長線上で物事を考えていても良い解決策は見つ
からなくなっています。総務省が自治体における情報システムの共同アウトソーシン
グやASP・SaaSの利用の推進を進めていることは、小規模自治体だけを対象に
しているものではなく、政令市においても同様な考え方を取り入れる必要性があるこ
とを示唆しています。
【札幌市における情報システムの位置付けの再確認】
自治体では一般歳出の約1%を情報システムに投資しています。この割合は金融業
など情報システムをビジネスの中核とする業界以外では大きな数字であるといえま
す。自治体の情報システムが遅れているというのは誤解であり、情報化は進んでおり、
すでに自治体の業務は情報システムなしでは回らなくなっているというのが実態で
す。しかしながら情報システムの位置付けに関する認識はいまだに電算化のレベルに
留まっており、民間企業に大きな遅れを取っています。近年の市町村合併において最
も困難であり、経費がかかったのは情報システムの統合であり、年金制度や福祉制度
の改正に足かせになっているのも情報システムの改修というのが現実です。
行政サービスのあり方を検討して、次に電算化をするということをしていては、何
の解決策も生まれません。情報システムだからこそできる時間と距離の短縮によって、
市民にとっての行政サービスは大きく変わります。窓口に来て手続きを行っていたこ
とが24時間いつでもできるようになることで、利便性は格段にあがります。自治体
は行政サービスの全てを自ら提供するのではなく、サービスのインフラを一般に開放
することで、それを利用する市民や民間事業者が様々な利用形態を構築していきます。
札幌市の住民情報系基幹システムの再構築は市役所の窓口で行っていた行政サー
ビスを市民の側まで開放するという大きな意味を持つ可能性を秘めています。これま
で基幹系システムのオープン化を行ってきた政令市の目的や成果や経験をよく踏ま
えて、一歩前進した取組みを行っていただくことを期待します。
【新たな枠組みでの再構築の進め方】
これまでの政令市における住民情報系基幹システムの構築は大手業者一社によっ
- 26 -
て行われることが一般的でした。汎用機を使ったシステム構築では最も効率的で経費
がかからない仕組みであったといえます。しかしながら現在よりも大きな機能と性能
が要求されるようになるであろう次期の住民情報系基幹システムの再構築では、それ
では間に合わないような高い効率と経費削減が求められます。最近の銀行を始めとす
る企業の統合は、情報システムに対する投資を単独では実施できなくなっていること
の現れです。市町村合併においても、目的の一つは情報システムへの投資の効率化で
あした。政令市では合併ということはできないので、全く新しい枠組みでの投資の効
率化を行う必要があります。
札幌市は優秀なシステム技術者が多くいるということにおいて特異的な政令市で
あるといえます。単なる地元雇用対策ということではなく、積極的に地元の企業を活
用していくことが投資の効率化を進める大きな鍵となります。SOAという新しいシ
ステム開発方法は複数の小さな企業が連携して一つの大きなシステムを構築できる
という可能性を秘めています。個々の企業が開発するサブシステム(サービス)間の
連携が疎であるがゆえに、少ない設備投資や緩やかなコミュニケーションで統合が可
能となります。総務省が進める統合連携基盤や次世代地域情報プラットフォームの事
例において、北海道におけるプロジェクトが唯一成功していることも偶然ではなく、
地域特性の結果であるといえます。大手業者でしかできない役割がなくなるわけでは
なく、小規模な地元企業と連携してシステム構築できる枠組みを構築することが、成
功の鍵になると考えます。
- 27 -
提
言
(氏名)渡部
卓央
1.はじめに
札幌市において基幹系情報システムを再構築するにあたり、考慮する点が多々ある
なかで、私は地場IT企業の活用について述べます。
北海道内には、IT産業を営んでいる事業所(支社等を含む)が約800あり、そ
のほとんどが札幌市内に集中しています。また、北海道のIT産業は、平成19年度
売上高が4,152億円となっており、北海道工業出荷額において4位の産業へと成
長しています。これは、地元に根付いた優秀な技術者が数多く存在していることを意
味していると思います。しかし、地場IT企業の中には自社ブランドを築き上げ大き
く成長している企業がある一方で、首都圏の大手ITベンダー等の一次請け、二次請
け、三次請けのような階層構造の末端に位置せざるを得ない企業が多くあることも事
実です。このような企業を下請け構造から脱却させ、成長路線へと導くことは札幌市
の役割のように思います。札幌市には、この基幹系情報システムの再構築を地場IT
企業がさらに成長する重要かつ貴重な機会と捉え、このプロジェクトを進めていただ
きたいと考えております。
2.地場IT企業活用に向けて
現状の札幌市基幹系情報システムは、汎用機を用いているため、必然的に既存ベン
ダー1社に開発・改修・運用を委託する形態になっています。再構築に際して、技術
的にはオープン系を採用しても、大手ITベンダー1社に発注するスタイルでは用い
る技術が変っただけで実態はほとんど同じ状態になってしまいます。札幌市ではこの
ような事象が起こらないような調達方式を取り入れることは、もはや必須といえます。
例えば、SOAやSaaSといったアーキテクチャを採用すると、システムは小さな
サービスの集合体となり、比較的小さな地場IT企業が自分たちの得意分野を活かし
た参入が可能になります。だからといって、大手ITベンダーを排除するというもの
では決してありません。大手ITベンダーには大手ベンダーだからこそできる部分と、
地場IT企業には地場IT企業ででも十分に開発可能な部分があり、それらの相互の
協力関係を意識した調達の仕組みを取り入れることが大事だと思います。地場IT企
業にとって、このように小さく開発することは短期的には良いのですが、中長期的に
成長するには課題も残ります。
- 28 -
地場IT企業においては、大規模システムの開発経験が少ない企業が多くあります。
これは先に述べた下請け構造の弊害でもありますが、大規模システム開発の経験がな
いため下請けに甘んじなければいけない部分と、依然として下請けのままのため大規
模システム開発に参画できない部分があり、悪いスパイラルに陥ってしまい、そこか
らの抜け出し方が見つからないでいます。それらの企業がこの再構築を通じて、大規
模システムの開発手法、マネジメント手法及び開発技術等を蓄積することで、中長期
的に十分な競争力をもった企業へ成長できることが大事であり、札幌市は最初の段階
からそこまでを視野にいれた調達の仕組みを検討したほうが良いと思います。
3.おわりに
札幌市にとって基幹系情報システムの再構築は、最大規模のシステム開発になりま
す。これは、地場IT企業や大手ITベンダーの協力なくしては実現不可能です。そ
のためには、どこかの1社だけが受託するものになってはいけません。本プロジェク
トの成功は、単に基幹系情報システムが新たに完成することだけではなく、札幌市の
IT産業を1兆円規模に育てることです。ぜひ、この機会を活かし発展的な取り組み
を実施することを期待いたします。
- 29 -
提
言
(氏名)桑原
義幸
「札幌市汎用電子計算機システム検討委員会」に参加させていただき、私が感じた
ことを踏まえて以下に私からの提言事項を記させていただきます。あまり理想を追っ
ても実現可能性が低下すると思われますので次年度に向けてのアクションプラン
(案)という形で記載させていただきます。
(1)
体制の強化
同委員会の報告結果を受けて、次年度以降もオープン化に向けての検討が継続
されるべきと理解しています。その中で重要となるのが市側の体制の強化です。
オープン化事業はITコスト削減、市民の利便性の観点で、市としても最重要項
目として捉えるべきでしょう。それを実行していく上での体制強化は必須と考
えます。具体的には、市長のリーダーシップの下、CIOの任命(兼務でも可)、
更にはCIO補佐監の登用(非常勤もしくは業務委託の民間採用が望ましい)、更
にはこのトロイカ体制の下でのオープン化事業、すなわち札幌市最適化計画策
定プロジェクト(仮称)を推進するタスクフォースを設置し、具体的なアクシ
ョンプランを策定します。
このタスクフォースのみでは十分なリソースの確保は困難と思われますので、
過去中央省庁が実行した「最適化計画策定」に類似の計画策定を外部業者(コ
ンサルタント)に委託し、一気に行うことが実現可能性として高いと考えます。
参考情報として、単純に比較は出来ませんが、昨年夏から今年の3月末にかけて
佐賀県が最適化計画を策定しています。この策定作業を行う上で外部業者の調
達を行い、某企業が約5,000万円で受注しました。入札方式は総合評価落札方式
でした。もちろん、民間からのCIO補佐官の登用、札幌市最適化計画策定プロジ
ェクトにおける外部業者への委託費とコストは発生しますがオープン化による
効果を考えれば先行投資として行うべきだと考えます。内製だけでは、まず不
可能でしょう。
最適化計画策定の際には当然のことながら、対投資効果分析(これには市民サ
ービス向上も含まれる)も行い、損益分岐のポイントを最適化計画策定チーム
(前述の外部業者の作業)にて算出するのが必須です。
(2)
ITガバナンスの構築準備
オープン化に向けての札幌市最適化計画策定プロジェクトと並行して、内部統
- 30 -
制の仕組み(ITガバナンス)の構築を進めます。ガバナンスと言っても多岐に
わたります。最終的な目標はITライフサイクル全般(予算申請・取得→調達準
備→調達→開発・導入→運用・保守→評価→廃棄・刷新)にわたってガバナン
スを構築することですが、まずはこの7つのステップ単位で検討・策定します。
策定するにあたっては、参照すべき方法論は多々あります。例えば、調達方針
に関しては、政府の「調達ガイドライン」、導入に関してはPMBOKi、EVMii、運用
に関してはITILiiiと言ったグローバルスタンダードとなっているメソドロジー
を参照し、札幌市独自のITガバナンスに関する方針を文書化、定着化を図って
いきます。
この中でも今後のオープン化によるマルチベンダー化を想定し、SLAivの緻密化
等によるベンダーマネジメント手法の確立も急務であると考えます。同様のガ
バナンスを構築した例としては佐世保市があります。平成17年度から作業を
開始し、今では「佐世保市最適化指針」と称して運用され、定着化しつつあり
ます。
これらの作業主体も(1)で示した体制に関わってきます。やはりCIOを中心と
して、実作業はCIO補佐官及び前述のタスクフォースもしくは情報政策部門が責
務を負うべきだと考えます。次年度は札幌市最適化計画策定プロジェクトと並
行して、ガバナンス構築作業も本メンバーにて開始し、まずは札幌市に即した
ガバナンスのあり方とは何かを明確にし、ガバナンス完成に向けての計画作り
から着手するのが現実的であると考えます。
(3)
地場企業の参入強化(ジョイントベンチャーの検討)
オープン化による効果として参入機会の増加、門戸の拡大が挙げられます。こ
れにより地場企業の参入機会も今までよりも増加します。反面、地場企業一社
で全てを賄うとなると受託者たる地場企業のリスクも増大し、結果的に従来型
の大手企業が元請けとなり、地場企業の参入は下請け的存在となります。
本来、地場企業の参入とは、元請けとしてどれだけ参入出来たか、という評価
軸で判断すべきです。札幌市には北大発のベンチャー企業を始めとして、優秀
なIT企業が多々存在しています。これら企業の参入機会を増加させる手段とし
て共同企業体(JV:ジョイントベンチャー)の仕組みが考えられます。オープ
ン化を行うことによる分割発注を進めることにより、地場企業各社が共同事業
体を形成し、JVとして事業を請け負うことが出来る仕組みを構築します。
分割の単位は様々考えられますが、札幌地場企業の特性を鑑みて発注単位を検
- 31 -
討すれば良いと考えます。この場合、発注者としては、まさに前述のベンダー
マネジメント手法を確立した上でJVを推進すべきと考えます。
以上
i
PMBOK: Project Management Body Of Knowledge
EVM: Earned Value Management
ITIL: Information Technology Infrastructure Library
iv
SLA: Service Level Agreement
ii
iii
- 32 -
提
言
(氏名)和泉 憲明
技術のオープン化と組織標準の確立により行政サービスの持続可能性を確立すべ
きである。
1. はじめに
近年、汎用電子計算機(以下、汎用機)を中心とした情報システムが大規模化・複
雑化しているため、メンテナンス困難なシステム、すなわち、レガシーシステムとな
ってしまっている。結果として、汎用機が負の遺産の象徴となり、その維持・管理の
方法が問題となっている。
ここで、汎用機を代表とする情報システムは道具であり、目標ではない、というこ
とに注意しなければならない。我々人間は、道具を改良し、使いこなすことにより、
目的を達成してきた、という歴史をもつ。道具改良の歴史は、まさに、技術革新の歴
史であり、近年、技術革新のダイナミクスをイノベーションと呼び、社会レベルで重
要視されている。ただし、イノベーションが社会の持続可能性を実現すると考えられ
る一方で、道具への盲目的な依存は、組織を破滅させることが指摘されている。
以上から、汎用機を中心とした情報システムに、イノベーションに基づく持続可能
性を持ち込むためには、情報システムを主体的に使いこなす過程で、継続的に改善す
る、という、組織的な取り組みが求められる。
このことを言い換えると、情報システムを理解困難なものとして取り扱っていては、
持続的な改善は期待できない、ということである。逆に、主体的に道具を維持管理す
ることができれば、必要な機能が洗練されるとともに、無駄な機能が除去され、道具
によって達成されるサービスの向上も期待できる。さらには、安価で高付加価値なサ
ービスが提供可能となる。
2. 情報システムにおける組織の主体性の確立
情報システムの利活用に組織的な主体性を導入するためには、具体的には、次の項
目の確立が重要になる。
a. 情報システムにより提供されるサービス内容を具体的に議論できる組織体制、
b. 情報システムのライフサイクルのプロセスを標準化し継続的に改善する方法論。
- 33 -
2.1 組織体制の整備
まず、a.に関して、組織が主体的に取り組むためには、システムが対象とする業務
やサービス、それらの実現方式などにより、むやみに、情報システムに関する議論を
難解にしてはならない。対象や実現方式を議論するのではなく、結果としてどういう
サービスが提供できたのか、ということを評価し、改善するための組織と方法論の確
立が重要である。
次に、組織体制を整備することにより、具体的に何を検討するかを明確にしなけれ
ばならない。ここで大事なことは、単に、開発や運用にかかる経費を、他都市や前年
度などと相対的に比較することではなく、結果としてのサービス内容とそのサービス
にかかる経費を比較することである。特に、経費を厳密に評価するためには、サービ
ス内容に関する観点を明確にしておかなければならない。ここでは、盲目的なシステ
ム化に基づくコスト削減のみの観点ではなく、市民サービスという観点から、市民接
点をシステムではなく職員が担うという観点から、サービスの組織化や移管、組織の
統廃合や手作業によるシステム廃止など、サービス改善・行政改革の全庁的な手段と
してシステムが位置づけられることが重要である。
例えば、医療サービスを考えた場合、目前の診察料だけに着目してしまうと、結果
として、顕在化していない症状が悪化してしまい、将来の長期入院が必要になる可能
性を議論できない。また、安易な投薬治療は、免疫力などの低下をもたらし、深刻な
疾病のリスクを高めるかもしれない。さらに、単に、医療者と患者との関係だけでな
く、患者の家族への負担や、地域社会とのかかわりなど、サービスの価値に関して、
広く議論することが重要である。そして、サービス提供者としての医師や看護師、な
らびに、診療や検査とそのための設備だけを対象とするのではなく、受付から案内、
待合、精算など、サービス全般を議論しなければ、経費の正当な評価は得られない。
例えば、システム導入の効果は、システム開発経費の相対比較により説明されるので
はなく、結果としての待ち行列の解消などによる待合スペースの有効利用などで議論
されるべきである。ここでは、盲目的なシステム化・合理化だけでは、理想的なサー
ビスとはほど遠いことは明白である。最後に、これらの評価基準は、診療科ごとに異
なるものであってはならないし、かつ、基準そのものもある一定期間を経た後、議論
の対象となるべきである。
2.2 ライフサイクルプロセスの標準化
b.に関しては、ある種のサービス標準の確立と維持を意味するが、この標準には二
- 34 -
種類の重要な意義がある。
一つは、情報技術を専門としない職員でも、ある程度の技術レベルにて取り扱える
ようにするための標準である。これは、ファーストフード店やコンビニエンスストア
などにおけるサービスの均質化に対応する。情報システムのライフサイクル全般にわ
たる業務ノウハウが、明確な手順や方式を示すことにより、再現性の高い方法論とし
て組織に定着することにより、属人性が排除された再現性の高い方法論として確立す
るのである。
もう一つは、標準を策定することにより、一部の職員が試行錯誤で行ってきた高品
質なサービスとの差異を明らかにし、比較の結果、改善内容を新たな標準として組織
に普及・定着させるためのものである。これは、クリニカルパスに代表される医療分
野などの標準化活動に対応する。明確に提示された手順や方式は、観点の異なる職員
を同じ議論の場に集結させる。結果として、さまざまな、改善活動の基盤となるので
ある。
このような標準は、組織だけでなく、地域・社会の持続性と連結していることが望
まれる。従って、どのような企業に対しても中立的で、かつ、オープンな技術が基盤
として採用されていることが前提となる。
また、ここでの大切な観点は、道具を使いこなしたり、改善のアイディアを議論し
たりするのは、あくまで市の職員であり、実際に誰がその道具を作り込むかは重要で
はない。従って、市の職員の主体性が損なわれないような標準であることが重要であ
る。言い換えると、技術の高度化を理由に、必要以上に複雑で難解な標準を導入する
ことは、無意味である。このことは、適切な規模・価格での道具を選択する、という
観点からも重要である。
3. 行政サービスの持続可能性へむけて
以上をまとめると、a.の組織体制とb.の方法論の整備により、
A.中立的でオープンな技術基盤により、地域企業に参入機会が与えられるとともに、
B.職員の主体的な改善によりサービスレベルが維持・向上され、
C.サービス内容の具体的な議論により情報システムの持続可能性が確保される、
という行政サービスの持続可能性が期待できる。
市の職員の主体性が牽引する行政サービスの持続可能性は、オープンな基盤との相
乗効果により地域の企業に波及し、地場のIT産業を活性化するものとなる。結果とし
て、行政サービスの持続可能性は、地域社会の持続可能性へと発展することが期待で
- 35 -
きる。
情報システムの高度化と複雑さに、近年、多くの取り組みが混乱している一方で、
今回の委員会での議論を振り返ると、札幌市における専門的な課題解決とその先導性
確立の可能性が期待できる。今後、その専門的な議論に参画することにより、地域社
会の持続可能性に貢献できれば幸いである。
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提
言
(氏名)宮脇
訓晴
基幹システムの更改プロジェクトは、業務的な影響範囲・予算規模・実施期間共に
超大規模プロジェクトと位置付けられる。本プロジェクトを成功させるためには、適
切なプロジェクト管理が実現できる目標設定・体制整備等を実施する必要がある。
トップマネジメントがプロジェクト目的・目標を設定すべき
一般的に、現場を基点とするプロジェクトは、担当する業務領域を中心とした最適
化を追及する傾向にある。そのため、特定業務の改善を目的とするプロジェクトに適
している。
しかし、本プロジェクトのような地域産業の視点や全庁最適化の視点に基づくプロ
ジェクトには、現場基点ではなく、トップマネジメントによる強いイニシアティブの
基でプロジェクトを立ち上げる必要がある。また、立ち上げに当たっては、トップマ
ネジメントによって庁内に対するプロジェクトの目的・目標の表明とプロジェクトを
指揮するプロジェクトマネージャの任命を行うべきと考える。
専任のプロジェクトマネージャを任命すべき
ITプロジェクトでは、組織の責任者が、プロジェクトマネージャを兼任している例
が多い。当該措置は、プロジェクトの成否を組織の責任と位置付けていることを表明
する目的を果たしている。しかし、組織の責任者が組織運営業務に忙殺され、適切な
プロジェクト管理を行うことができないという事例も多く見られる。
そのため、当該プロジェクトの重要性・規模・範囲を考慮すると、組織の責任者が
プロジェクトマネージャを兼任するのではなく、新たに専任者を任命することが必須
と考える。
強いリーダシップを発揮できるプロジェクトマネージャを作るべき
本プロジェクトの性質を考慮すると、プロジェクトマネージャは業務担当である現
場部署や既存のITベンダー、更改を担当するITベンダー等の多くの利害関係者と交渉
を重ねながら、新システムへの更改プロジェクトを指揮する必要がある。当然、交渉
相手は庁内・庁外における責任者・役職者と想定される。その際、プロジェクトマネ
ージャと交渉相手との職位や役職の差異によって、率直な意見交換や交渉ができない
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といった非効率な状況に陥ることは避けるべきと考える。
そのため、プロジェクトマネージャが強いリーダシップを発揮し、利害関係者との
交渉に対処できるように、トップマネジメントによる任命に加えて相応の職位・役職
が必要と考える。また、本プロジェクトは、幅広い業務知識を前提とした交渉力を必
要とするため、プロジェクトマネージャには市役所職員が就くべきと考える。
プロジェクト管理チームを組成することで対応力を強化すべき
プロジェクト管理業務は、利害関係者が増えるにつれて管理項目も指数関数的に増
加する傾向にある。本プロジェクトが目指すような地元ITベンダーも含めて複数が参
加するマルチベンダープロジェクトの場合、システム全体の開発方針や技術標準、ア
ーキテクチャ、セキュリティ対策方針等の設計・維持といったプロジェクト管理業務
が膨大な量になると想定される。
ついては、プロジェクトマネージャの業務を補佐するチームを組成し、組織的にプ
ロジェクト管理業務を行うべきと考える。また、職員がプロジェクト管理業務のすべ
てを対応することに拘らず、専門性の高い領域は外部有識者を積極的に活用すること
で、品質と網羅性の高さを追及すべきと考える。
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「札幌市汎用電子計算機システム検討委員会」委員名簿
委 員 長
山口
秀二
さいたま市CIO補佐監
副委員長
渡部
卓央
日本ノーベル(株)札幌開発センター長
委
員
桑原
義幸
(株)インターフュージョンコンサルティング代表取締役社長
委
員
和泉
憲明
(独)産業技術総合研究所サービスプロセス研究チーム長
委
員
宮脇
訓晴
(株)JSOL IT コンサルティング・技術本部 IT アーキテクト
委
員
小 澤
秀 弘
札幌市市民まちづくり局情報化推進部 IT 推進課情報化調整担当係長
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
.NET
ASP
B by C(費用便益
費)
BI
CIO
CIO補佐官(監)
CISO
COBOL
解 説
Microsoft社が2000年7月に発表した、ネットワークベースのアプリケーション動
作環境を提供するシステム基盤。同社の「Windows DNA」戦略をさらに進化させた
もの。
インターネットを含むネットワーク上に散在したアプリケーションが自らの機能
を「サービス」として公開し、各種の端末から利用するための基盤となるソフト
ウェアや記述言語・プロトコルなどの規約の集合を構築することを目指してい
る。「.NET」に対応した端末はJava仮想マシンのようなソフトウェアの動作環境
が搭載され、OSの種類に関係なくサービスを受けられるようになる。
アプリケーションサービスプロバイダ(Application Service Provider)。ビジ
ネス用のアプリケーションソフトをインターネットを通じて顧客にレンタルする
事業者のこと。ユーザはWebブラウザなどを通じて、ASPの保有するサーバにイン
ストールされたアプリケーションソフトを利用する。
事業実施のために必要な費用(Cost)と、事業実施が社会全体に及ぼす便益
(Benefit)について貨幣換算したものとを対比する分析。便益の主なものとし
て、利用者の利便、行政側の事務処理効率化を通じた便益等がある。
ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)。業務システムなどから蓄
積される企業内の膨大なデータを、蓄積・分析・加工して、企業の意思決定に活
用しようとする手法。ERPパッケージやCRMソフトなどからもたらされるデータの
分析を専門家に依存せず、経営者や社員が必要な情報を自在に分析し、経営計画
や企業戦略などに活用することを目指している。
最高情報責任者(Chief Information Officer)。情報や情報技術に関する上位の
役員のこと。
経営戦略に沿った情報戦略やIT投資計画の策定などに責任を持つ。情報システム
部門の責任者を兼ねるケースも多い。職務上の報告先は最高経営責任者(CEO)で
あることが多いが、最高財務責任者(CFO)に報告することもある。また、軍組織
では指揮官に報告する。
以前は設けられることが比較的少なかった役職であったが、情報社会の進展にと
もなって、企業などで積極的に設けられるようになった。日本で設けられている
同等の役職としては、「情報担当取締役」や「情報担当理事」などがある。な
お、現在の日本では法的にCIOを定義する法律は存在せず、CEO等と同様に企業の
内部呼称でしかない。
個人情報保護法や頻発する情報漏洩事件に対して、企業における個人情報管理の
責任者として機能する。日本版SOX法に準拠した内部統制を構築・運用するうえで
も中核的な役割を担うことになる。そのため、今後は多くの設置が求められると
されている。
日本企業では、専任のCIOが置かれる企業は多くなく、財務担当役員や経営企画担
当役員などが情報担当役員を兼ねているケースが多い。情報システム部門でプロ
グラマーやシステムエンジニアを務めた経歴を持つ人物が昇格してCIOに就任する
ケースもある。
情報化統括責任者補佐官。日本政府における「電子政府構築計画」の中で、電子
政府構築を推進する推進体制の一つとして定義されている。
CIO補佐官は、府省内の業務・システム分析・評価、最適化計画の策定に当たり情
報化統括責任者および情報システム統括部門に対して支援・助言することを任務
とし、エンタープライズアーキテクチャー (EA) を基礎とした最適化手法に基づ
いて、各省庁の電子政府構築計画を支援している。また、CIO補佐官は「各府省情
報化統括責任者補佐官等連絡会議」を通じて「各府省情報化統括責任者連絡会
議」をサポートしているなど、幅広い業務を所管している。
最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security Officer)。企業内
で情報セキュリティを統括する担当役員。コンピュータシステムやネットワーク
のセキュリティ対策だけでなく、機密情報や個人情報の管理についても統括する
例が多い。近年多発している企業の個人情報流出事件を契機に、導入する企業が
増えている。
事務処理用に開発されたプログラミング言語。非理系の事務員や役人が使える言
語として設定されたため自然な英語に近い記述になるようなコマンド語彙や文法
(シンタックス)になっている。また過去に政府や企業の膨大なデータがCOBOLに
よって処理され蓄積されているため現在でもCOBOLによって電算処理が処理されて
いる情報は膨大な数にあがる。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
CPU
Cyclomatic
complexity
DATE-WRITTEN
DFD
DMM
EA
eLTAX
ERP
ER図
解 説
中央処理装置(Central Processing Unit)。コンピュータを構成する部品の一つ
で、各装置の制御やデータの計算・加工を行なう装置。メモリに記憶されたプロ
グラムを実行する装置で、入力装置や記憶装置からデータを受け取り、演算・加
工した上で、出力装置や記憶装置に出力する。
パソコンではCPUの機能を一つのチップに集積されたマイクロプロセッサ(MPU)が
利用され、Intel社のx86シリーズと各社の互換プロセッサが市場のほとんどを占
めている。
循環的複雑度。ソフトウェア測定法の一種。Thomas McCabeが開発したもので、プ
ログラムの複雑度を測るのに使われる。プログラムのソースコードから、線形的
に独立した経路の数を直接数える。
COBOLプログラムの見出し部に記述される、プログラムの作成日。
データフローダイアグラム(Data Flow Diagram)。システム間のデータの流れを
示す図。データを発生・吸収・処理・蓄積するシステムの間を、データの流れを
示す矢印で繋いで作成する。データの流れが明確になることによって、効率化し
やすい場所を容易に発見できる等のメリットがある。
機能分析表(Diamond Mandara Matrix)。分析対象とした業務の「機能」を洗い
出し、洗い出した「機能」を徐々に詳細化(分割・階層化)していくことで、そ
の業務を構成する「機能」の階層構造を明らかにするための表。
エンタープライズアーキテクチャー(Enterprise Architecture)。大企業や政府
機関などといった巨大な組織(enterprise)の業務手順や情報システムの標準化、
組織の最適化を進め、効率よい組織の運営を図るための方法論。あるいは、その
ような組織構造を実現するための設計思想・基本理念(architecture)のこと。何
らかのコンピュータシステムのアーキテクチャを示す用語ではない。
EAでは、組織を構成する「人的資源」「業務内容」「組織」「社内で有する技
術」などの要素を整理し、階層構造化することで、組織全体に対する組織の一部
分の構成要素の関係、組織の一部分同士の相互関係を明確にする。その上で、業
務プロセスや取り扱うデータの標準化を行なう。
EAを導入する事で、巨大な組織内で複数の業務システムが別個に運用されていた
ものが標準化され、導入・運用コストの削減、重複した業務内容の統合を通じて
組織の運営コストの削減が可能となる。
地方税ポータルシステム。地方税における手続きをインターネットを利用して電
子的に行うシステム。
地方税の申告、申請、納税などの手続きを、地方公共団体が共同でシステムを運
営することにより、電子的な一つの窓口からそれぞれの地方公共団体に手続きで
きるようにしたもの。運営は、地方公共団体で組織する「社団法人地方税電子化
協議会」により行われている。
企業資源計画(Enterprise Resource Planning)。企業全体を経営資源の有効活
用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のこと。こ
れを実現するための統合型(業務横断型)ソフトウェアを「ERPパッケージ」と呼
ぶ。
実体関連図(Entity-relationship Diagram)。概念的データモデルの高レベルな
記述を可能とするモデルの一種である実体関連モデルによって具体的なシステム
のデータモデルを図で表現したもの。
情報システム設計の第一段階(要求分析)でこれを使い、必要な情報を洗い出
し、それら情報をデータベースに格納する際の型を決定する。データモデリング
技術は、任意の領域についてオントロジー(すなわち、用語とその関連を分類し
概観すること)を記述するのに使用可能である。データベースを基盤とする情報
システムの設計では、概念的なデータモデルを論理設計などと呼ばれる後の工程
で関係モデルなどの論理データモデルにマッピングする。関係モデルはその後さ
らに物理的設計時に物理的モデルにマッピングされる。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
EVM(S)
FTP
GOTO(文)
IO / I/O
ISMS
ITIL
ITガバナンス
解 説
出来高管理システム(Earned Value Management System)。作業の進ちょくや達
成度を(通常は)金銭的に表現したものであるアーンドバリュー(earned
value)を統一的な尺度として、プロジェクトのパフォーマンス(コスト、スケ
ジュール)を定量的に測定・分析し、一元的な管理を行うプロジェクト管理手法
のこと。米国国防総省などで、公共調達のマネジメントシステムとして採用され
ている。
一般にWBS(作業分解図:Work Breakdown Structure)をベースに必要な工数を算
出し、ここから金銭価値で表現した計画を作成し、チェックポイントごとの達成
予定額(パフォーマンス・メジャメントベースライン:PMB)を設定する。計画で
は各作業の金銭総和がプロジェクトの総コストとなる。プロジェクト実施段階で
も達成作業量も金銭表現して達成予定額と比較することで、作業進ちょくのスケ
ジュールを定量的に把握する。同時に実出費と達成額を比較することで、コスト
面の進ちょくも測定できることになる。
スケジュール、コストの両面で、ベースラインからの乖離を常時把握してプロ
ジェクトのパフォーマンスを動的に測定し、精度の高い完了時期や完了時のコス
ト予測を可能にする。また、完了遅延や予算超過の程度も予測できるため、プロ
ジェクトオーナーにとってリスク管理の有効なツールとなる。また、PMBOKにおい
ても、進ちょく管理の基礎的ツールとして位置付けられている。
ファイル・トランスファー・プロトコル(File Transfer Protocol)。ネット
ワークでファイルの転送を行うための通信規約(プロトコル)である。日本語訳
は、ファイル転送プロトコル。
インターネット初期の頃から存在するプロトコルで、今でもインターネットでよ
く使用されるプロトコルの1つである。プロトコル上は任意のホスト間のファイル
転送を行うことが可能であるが、通常は接続したクライアントとサーバ間の転送
に利用される。
低水準言語のジャンプ命令をそのままプログラミング言語に実装したもので、プ
ログラム中の別の場所に移す制御をとる命令文。多用すると、規模が大きくなる
ほど処理の流れを把握しにくくなり、生産性の低下や記述上のミスの温床とな
る。
入出力。外部からコンピュータにデータを送ることを入力(input)、コンピュータ
が外部にデータを送ることを出力(output)という。
情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management
System)の略称。企業などの組織が情報を適切に管理し、機密を守るための包括
的な枠組み。コンピュータシステムのセキュリティ対策だけでなく、情報を扱う
際の基本的な方針(セキュリティポリシー)や、それに基づいた具体的な計画、計
画の実施・運用、一定期間ごとの方針・計画の見直しまで含めた、トータルなリ
スクマネジメント体系のことを指す。
IT Infrastructure Library。イギリス政府が策定した、コンピュータシステムの
運用・管理業務に関する体系的なガイドライン。数冊の書籍の形でまとめられて
おり、同政府機関のOGC(Office of Government Commerce)などから入手できる。
ITILでは、コンピュータシステムとその運用管理を、業務の遂行を手助けする
「ITサービス」ととらえ、サービスを要求に応じて適切に提供すること、高い投
資対効果で継続的に改善していくことを目指している。こうした視点から、運用
管理業務を、日常的にユーザが必要なサービスを利用できるようサポートする
「サービスサポート」と、サービスを高い投資効率で長期的に改善していく
「サービスデリバリー」の2つに分けて考える。そして、両者をそれぞれ5~6個の
プロセスに分割し、模範的な事例を示している。
ITへの投資・効果・リスクを継続的に最適化する為の組織的な仕組みのこと。
コーポレートガバナンスから派生した概念。
ITガバナンスの言葉自体は非常に広義にとられ、その定義も様々な説があり、い
まだ確立したものは無い状況といえる。通商産業省(現経済産業省)では「企業
が競争優位性の構築を目的としてIT戦略の策定及び実行をコントロールし、ある
べき方向へと導く組織能力」と定義しており、日本監査役協会では「リスクマネ
ジメントとパフォーマンスマネジメントを実施するにあたっての健全性確保のた
めのコンプライアンスマネジメントの確立」と定義している。また、ITガバナン
ス協会(ITGI)による「取締役会及び経営陣の責任」といった定義も存在する。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
ITコーディネータ
Java
J-SOX法
JV / ジョイントベ
ンチャー
LAN
Linux
LOC
NCSS
NDA
NEDO
ODBC
ongoing
OS
outcome
解 説
経済産業省の指揮のもと設立されたNPO法人「ITコーディネータ協会」による認定
資格。主に経営面から企業システムのIT化を進める立場に位置し、小規模なシス
テムのIT化を指揮することが期待されている。
Sun Microsystems社が開発したプログラミング言語。JavaはC言語に似た表記法を
採用しているが、C言語など、既存の言語の欠点を踏まえて一から設計された言語
であり、今までの言語にない完全なオブジェクト指向性を備えている。また、強
力なセキュリティ機構や豊富なネットワーク関連の機能が標準で搭載されてお
り、ネットワーク環境で利用されることを強く意識した仕様になっている。
SOX法の一部について経済界、監査法人などを中心に使用されている呼称。これは
金融商品取引法全体を指すのではなく、新たに義務付けられた内部統制報告書の
提出に関する部分についてのみを指すのが一般的である。内部統制報告書ないし
は内部統制システムについての詳細な基準については、内閣府令に委ねられてい
る。
共同企業体(Joint Venture)。主として土木建築業界において、一つの工事を施
工する際に複数の企業が共同で工事を受注し施工するための組織を言う。民法上
の組合に該当するとされる。
ローカル・エリア・ネットワーク(Local Area Network)。広くても一施設内程
度の規模で用いられるコンピュータネットワークのこと。一般家庭、企業のオ
フィスや研究所、工場等で広く使用されている。
1991年にフィンランドのヘルシンキ大学の大学院生(当時)Linus Torvalds氏に
よって開発された、UNIX互換のOS。その後フリーソフトウェアとして公開され、
全世界のボランティアの開発者によって改良が重ねられた。Linuxは学術機関を中
心に広く普及しており、企業のインターネットサーバとしても多く採用されてい
る。最近では携帯電話やデジタル家電など組み込み機器のOSとしても普及し始め
ている。
プログラムの規模を表す指標の一つで、ソースコードの行数のこと(Lines Of
Code)。
ソフトウェア開発の受発注の基準などで用いられるプログラムの規模の推計に用
いられるが、同じ機能のプログラムでもプログラマの力量や選択するアルゴリズ
ムなどによって記述量が大幅に異なることがあり、基準としての信頼性はあまり
高くない。また、現在利用されているプログラミング言語の多くはソースコード
の改行に関して制約が少ないため、プログラマによって改行を挿入する「流儀」
が異なることが多く、こうした点からも単純なLOCではプログラムの規模を推定す
るのは難しいとされる。
Non Comment Source Statements。コメント文を除くソース・コードの命令数のこ
と。
秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)。一般に公開されていない情報を入
手する場合に、その情報を外部に漏らさせないために交わす契約のこと。新しい
OS向けのアプリケーションソフトを開発してもらうために、開発中のOSのコード
をアプリケーションソフト開発会社に引き渡すような場合に使われる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(New Energy and Industrial Technology
Development Organization)。日本の環境保護政策と科学技術開発の一端を担う
独立行政法人。2003年10月に同名称の特殊法人より独立行政法人へと移行した。
本部は神奈川県川崎市。新エネルギー・省エネルギー・環境関連技術の研究開発
と普及、産業技術の研究開発、石炭・炭鉱関連の経過業務等の事業を行ってい
る。
Open DataBase Connectivityの略。Microsoft社によって提唱された、データベー
スにアクセスするためのソフトウェアの標準仕様。各データベースの違いはODBC
ドライバによって吸収されるため、ユーザはODBCに定められた手順に従ってプロ
グラムを書けば、接続先のデータベースがどのようなデータベース管理システム
に管理されているか意識することなくアクセスできる。
継続している、進行中の。
オペレーティングシステム(Operating System)。キーボード入力や画面出力と
いった入出力機能やディスクやメモリの管理など、多くのアプリケーションソフ
トから共通して利用される基本的な機能を提供し、コンピュータシステム全体を
管理するソフトウェア。「基本ソフトウェア」とも呼ばれる。
結果、成り行き、所産、結末。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
PMBOK
解 説
Project Management Body of Knowledge。アメリカの非営利団体PMI(Project
Management Institute)が策定した、モダンプロジェクトマネジメントの知識体
系。「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」という書籍にま
とめられており、事実上の標準として世界中で広く受け入れられている。PMBOKは
4年ごと、ちょうどオリンピックの開催年に改定されている。
PMBOKでは、プロジェクトを遂行する際に、スコープ(プロジェクトの目的と範
囲)、時間、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、リスク、調達、統合
管理の9つの観点(「知識エリア」と呼ばれている)でマネジメントを行なう必要が
あるとしている。適用分野(業界)を超えた標準知識体系を定めることによって、
プロジェクトマネジメントの共通概念・用語を設定している。
PM
プロジェクトマネージャ。プロジェクトの計画と実行に於いて総合的な責任を持
つ職能あるいは職務。プロジェクトマネージャには、系統的な経営管理能力は勿
論、透徹とした質問を発し、暗黙の前提を発見し、プロジェクト構成員の意見を
まとめ上げる能力が必須となる。
PMO
プロジェクトマネジメント・オフィス、プロジェクト管理オフィス(Project
Management Office)。
大規模な組織において、組織全体のプロジェクトマネジメント(PM)の能力と品
質を向上し、個々のプロジェクトが円滑に実施されるよう支援することを目的に
設置される専門部署。「プロジェクトオフィス」「プロジェクト支援部門」など
ともいう。
一般に、個別プロジェクトに責任を持ち、プロジェクト終了に伴って解散となる
「プロジェクトチーム」とは異なり、PMOは全社的なプロジェクトマネジメント手
法の標準化、品質管理、人材育成などに責任を持つ常設的な部署として設置され
る。
POSシステム
店舗で商品を販売するごとに商品の販売情報を記録し、集計結果を在庫管理や
マーケティング材料として用いるシステムのこと(Point Of Sales system)。
「販売時点管理」などとも訳される。
緻密な在庫・受発注管理ができるようになるほか、複数の店舗の販売動向を比較
したり、天候と売り上げを重ね合わせて傾向をつかむなど、他のデータと連携し
た分析・活用が容易になるというメリットがある。このため、特にフランチャイ
ズチェーンなどでマーケティング材料を収集するシステムとして注目されてい
る。
Pマーク
プライバシーマーク。個人情報保護に関して一定の要件を満たした事業者に対
し、財団法人日本情報処理開発協会 (JIPDEC) により使用を認められる登録商標
(サービスマーク)のこと。1998年4月より付与が開始された。取得を認定されれ
ば、このマークを自社のパンフレットやウェブサイトなど公の場で使用すること
ができ、個人情報の安全な取り扱いを社会に対してアピールできるというメリッ
トがある。
RDB / リレーショナ データ管理方式の一つ。また、その方式に基づいて設計されたデータベース。
ルデータベース
1件のデータを複数の項目(フィールド)の集合として表現し、データの集合をテー
ブルと呼ばれる表で表す方式。ID番号や名前などのキーとなるデータを利用し
て、データの結合や抽出を容易に行なうことができる。中小規模のデータベース
では最も一般的な方法。データベースの操作にはSQLと呼ばれる言語を使うのが一
般的。
RFI
情報提供依頼書(Request For Information)。企業が調達や業務委託を行う際、
自社の要求を取りまとめるための基礎資料として、外部業者に情報の提供を要請
すること。あるいはその要請をまとめた文書をいう。一般にRFPを作成するために
発行される。
最新技術の調達や普段は取り引きのない業者への発注を検討する場合、一般の公
開情報だけでは調達条件や選定条件を取りまとめることができないことがある。
こうしたときに、調達先・依頼先候補の事業者に必要情報の提供を求める文書が
RFIである。
RFP
提案依頼書(Request For Proposal)。情報システムを導入するに当たって、
ユーザが納入を希望するベンダに提供する、導入システムの概要や調達条件を記
述した文書。
必要とするハードウェアやソフトウェア、サービスなどのシステムの概要や、依
頼事項、保証用件、契約事項などが記述されており、ベンダはこれをもとに提案
書を作成する。ユーザはベンダの提案書を評価し、契約を締結、ハードウェアや
ソフトウェアや人員などを調達する。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
SaaS
SIer / SI
SLA
SOA
SOX法
SQL
Syntax
To Be
TQC
UI
UML
解 説
Software as a Service。ソフトウェアの機能のうち、ユーザが必要とするものだ
けをサービスとして配布し利用できるようにしたソフトウェアの配布形態。サー
ビス型ソフトウェアとも呼ばれる。
ユーザは必要な機能のみを必要なときに利用でき、利用する機能に応じた分だけ
の料金を支払う。必要な機能をユーザがダウンロードし、自身の端末にインス
トールする形態のものと、サーバ上で動作するソフトウェアの機能をネットワー
クを介してオンラインで利用する形態がある。近年では後者の形態が多くなって
いる。
システムインテグレーター(System Integrator)。顧客の業務内容を分析し、問
題に合わせた情報システムの企画、構築、運用などの業務を一括して請け負う業
者のこと。システムの企画・立案からプログラムの開発、必要なハードウェア・
ソフトウェアの選定・導入、完成したシステムの保守・管理までを総合的に行な
う。
Service Level Agreement。通信サービスの事業者が、利用者にサービスの品質を
保証する制度。回線の最低通信速度やネットワーク内の平均遅延時間、利用不能
時間の上限など、サービス品質の保証項目や、それらを実現できなかった場合の
利用料金の減額に関する規定などをサービス契約に含めることを指す。アメリカ
の大手通信事業者が導入した制度で、日本ではIIJが1999年6月に「サービス品質
保証制度」として導入したのが最初である。
サービス指向アーキテクチャ(Service Oriented Architecture)。大規模なシス
テムを「サービス」の集まりとして構築する設計手法。
サービスとは、外部から標準化された手順によって呼び出すことができる一まと
まりのソフトウェアの集合であり、単体で人間にとって意味のある単位の機能を
持つものを指す。アプリケーションソフト自体に他のソフトウェアとの連携機能
を持たせたものと考えても良い。
ソフトウェアを部品化して呼び出し規約を標準化し、その組み合わせでシステム
を構築していく手法は分散オブジェクト技術など従来から存在するが、部品化の
単位はより細かいプログラム上の機能であり、また、システム全体がある程度共
通の技術基盤に基づいて構築されることを前提としていることが多い。
上場企業会計改革および投資家保護法。企業会計・財務諸表の信頼性を向上させ
る目的で2002年7月に成立したアメリカ合衆国の連邦法。日本では企業改革法と意
訳されている。 内容は投資家保護のため、財務報告プロセスの厳格化と規制の法
制化を目的としたもの。
Structured Query Languageの略称。リレーショナルデータベースの操作を行なう
ための言語の一つ。IBM社が開発したもので、ANSI(アメリカ規格協会)やISO(国際
標準化機構)によって標準として規格化されている。
統語論、統辞論、構文論。
理想的な将来像・目標を表現するモデル。
トータルクオリティーコントロール(Total Quality Control)。統合的品質管
理、または、全社的品質管理のこと。QC(品質管理)は主に工場などの製造部門
に対して適用された品質管理の手法であるが、これを製造部門以外(設計部門、
購買部門、営業部門、マーケティング部門、アフターサービス部門、etc)に適用
し、体系化したものである。
TQCの最大の狙いは、ある製品を企画設計する段階から、製造販売そしてアフター
サービスまでの全プロセスで総合的に品質管理を行うことである。また、企業の
一部門だけが取り組むのではなく、企業全員(経営者、管理者、監督者、作業者
etc)が取り組むことも大きな特徴である。
QCとの大きな違いは、QCが製造現場に密接したハードウェア的な取り組みが中心
であるのに対して、間接部門への適用を狙ったTQCではソフトウェア的な取り組み
が中心である。すなわち作業プロセスや、各工程における品質への取り組みの規
定などを改善していくことに主眼を置いている。
ユーザインターフェース。ユーザに対する情報の表示様式や、ユーザのデータ入
力方式を規定する、コンピュータシステムの「操作感」。
Unified Modeling Language。オブジェクト指向のソフトウェア開発における、プ
ログラム設計図の統一表記法。Rational Software社のGrady Booch氏、James
Rumbaugh氏、Ivar Jacobson氏の3人によって開発された。従来、オブジェクト指
向設計の表記法は50以上の規格が乱立していたが、1997年11月にOMGによってUML
が標準として認定された。Microsoft社やIBM社、Oracle社、Unisys社などの大手
企業が支持を表明している。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
UNIX
VB
解 説
マルチタスク、マルチユーザー機能を有するオペレーティングシステム (OS) の
一種、またはこれから派生した一連のOSの総称。主に企業や教育機関における研
究で、または安定性や高い情報セキュリティが要求されるサーバを提供する目的
で使われる。ミニコンピュータ(ミニコン)やワークステーション用のOSとして
広く採用され、メインフレームの一部やスーパーコンピュータにも用いられてい
る。現役のOSとしては比較的長い歴史を持ち、優れたパフォーマンス、堅牢性を
持つ。
UNIXの中核を成すカーネルは大部分がC言語で記述されている。その結果、異なる
プラットフォームに対する移植性が高いこと、また、可読性が高いため、機能の
改変を行なうことが比較的容易なことで知られている。
ビジュアルベーシック(Visual Basic)。Microsoft社によって開発されたプログ
ラミング言語。アプリケーションソフトが容易に開発できるよう工夫された独特
の開発環境と共に提供されたため、これも含めた呼称として用いる場合が多い。
Web 2.0
2000年代中頃以降における、ウェブの新しい利用法を総称するマーケティング用
語である。ティム・オライリーらによって提唱された概念。
2001年のドットコムバブルの崩壊以降、ウェブの使い方が変化してきたとする。
すなわち、情報の送り手と受け手が固定され、送り手から受け手への一方的な流
れであった従来の状態が、送り手と受け手が流動化し、誰でもがウェブを通して
情報を発信できるように変化したということである。この変化を象徴する語とし
て、変化後の状態を「Web 2.0」、それに対応する形で従来の状態を「Web 1.0」
と呼んだ。
Web 2.0においては、情報そのもの、あるいは中核にある技術よりも、周辺の利用
者へのサービスが重視される。そして、利用者が増えれば増えるほど、提供され
る情報の量が増え、サービスの質が高まる傾向にあるとされる。Web 2.0の代表的
なサービスとして、ロボット型の検索エンジン、SNS、ウィキによる文書作成シス
テムなどが挙げられる。
WFA
業務流れ図。システム化を行う業務処理過程の中で、個々のデータが処理される
組織・場所・順序をわかりやすく記述したものである。政策・業務体系策定
(BA)の成果物として、機能構成図(DMM)、機能情報関連図(DFD)に続いて作
成される。
機能情報関連図(DFD)が明らかにした業務・システムが、処理を担当する組織・
場所や、処理の順序から見るとどうなるのかを明確にする役割を果たす。
WHERE句
SQL文で検索条件を指定するためのものである。
WHERE句は、SELECT文やUPDATE文、DELETE文などに指定され、それぞれ、読み込み
や更新、削除などの処理対象となる行を絞り込むことができる。WHERE句は省略可
能であり、指定されなかった場合は全ての行が処理対象となる。
Windows
マイクロソフトが開発及びライセンス販売を行うコンピュータのオペレーティン
グ環境(Windows 3.0まで)及びオペレーティングシステム(Windows 3.1以
降)。
「Windows」は、これまで同社から出荷された数多くのオペレーティング環境及び
オペレーティングシステム (OS) に付けられているシリーズ名である。「Windows
9x系」や「Windows NT系」、「Windows Embededd CE」の製品を総じて指し、それ
ぞれの間で改良・機能追加が施されている。
Winny
日本で開発されたファイル交換ソフトの一つ。高い匿名性と、独自のP2P型匿名掲
示板システムが特徴。
Winnyは中央サーバを持たない純粋型のP2Pソフトで、所持ファイルのリストなど
の情報は利用者間をバケツリレー式に転送される。ユーザIDなどはなく、どの
ファイルがどこから送受信されているのか利用者はわからないようになってい
る。ただし、自分がダウンロードを指定したファイルの受信状況だけは知ること
ができる。ユーザを指定してメッセージを送信したり、共有ファイルのリストを
見たり、ダウンロードを指定したりすることはできない。
アウトソース/ アウ 外注(がいちゅう)、外製(がいせい)ともいい、企業や行政の業務のうち専門
トソーシング
的なものについて、それをより得意とする外部の企業等に委託すること。
アカウンタビリティ 政府や公務員が政策やその執行について国民の納得できるように説明する義務を
持つこと。説明責任。
アドオン
ソフトウェアに追加される拡張機能のこと。アドオンを追加するには、ソフト
ウェア本体がアドオンの導入を前提として設計されている必要がある。Webブラウ
ザに搭載される「プラグイン」(plug-in)もアドオンの一種である。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
アプリ
解 説
「アプリケーションソフトウェア」の略称。文書の作成、数値計算など、ある特
定の目的のために設計されたソフトウェア。「応用ソフト」とも呼ばれ、どのソ
フトウェアにも共通する基本的な機能をまとめたOS(基本ソフト)に、ユーザが必
要とするものを組み込んで利用する。
イニシアティブ
物事を率先してすること。首唱。先導。主導権。
イネーブラ
何らかの機能を有効にするソフトウェアなどを指す。
イノベーション
新機軸。革新。
イベントドリブン
ユーザや他のプログラムが実行した操作(イベント)に対応して処理を行なう、プ
ログラムの実行形式。
ユーザが操作を行っていないときはプログラムは何もせず待機しているため、
ユーザはそのプログラムを待たせた状態で他の操作を行なうことができる。イベ
ントドリブンで動作するプログラムは必要以上にユーザを拘束しないため、マル
チタスクOSとの親和性が高く、グラフィカルユーザインターフェースを持ったプ
ログラムではイベントドリブン方式が広く採用されている。
インターフェース
二つのものの間に立って、情報のやり取りを仲介するもの。また、その規格。IT
関連では、「ハードウェアインターフェース」「ソフトウェアインターフェー
ス」「ユーザインターフェース」の三つに大別できる。
インテグレーション 統合、調和、融合。
インフラ
「インフラストラクチャー(infrastructure)」の略称。国民福祉の向上と国民
経済の発展に必要な公共施設を指す。公共の福祉のための施設であり、民間事業
として成立しにくいため、中央政府や公共機関が確保建設、管理を行う経済成長
のための基盤。
国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設とは、学校、病院、道路、港
湾、工業用地、公営住宅、橋梁、鉄道路線、バス路線、上水道、下水道、電気、
ガス、電話などを指し、社会的経済基盤と社会的生産基盤とを形成するものの総
称である。
通常は道路、河川、橋梁、鉄道からガス、電話など社会生活基盤と社会経済産業
基盤とを形成するものの総称としてこの語が使用されるが、学校や病院などの公
益施設も含まれ、都市計画では道路、河川、鉄道、公園、水道、ごみ・し尿処理
施設等を社会基盤施設としている。主には公共事業で整備され、社会資本として
経済、生活環境の基間設備を指す。また、情報化社会の情報網整備や新規分野の
法律整備などの意味でも使用される。
エクスキューズ
言いわけ。弁解。
エビデンス
証拠、根拠。
エンタープライズ
メインフレームを置き換えるようなオープン系のハイエンド・サーバーの総称。
サーバ
基幹系業務システムに使われるため、高い処理能力に加えて、高信頼性・高可用
性が求められる。
エンタープライズ・サーバーはメインフレーム並みの高い信頼性が求められるた
め、ハードウエアが細部にわたって多重化されており、一部の部品が故障しても
縮退運転により稼働を続けられる設計になっている。故障した部品も、予備部品
に自動的に切り替えたり、サーバーを停止させることなく交換できたりする。
データ処理においても、随所にデータの冗長性を持たせてエラー検出・訂正をし
たり、2重化した信号を照合したりして、エラーに対してリトライし信頼性を高め
る工夫を施している。
ソフトウエアの観点からは、障害が発生した場合、その原因を特定するためのデ
バッグのツールや、データ保全機能が充実している。
オーバーヘッド
間接費という意味の英単語。ITの分野では、何らかの処理を進める際に、間接
的・付加的に必要となる処理とそれにより発生する負荷の大きさのことを言う。
オンライン
コンピュータがネットワークに接続されており、ネットワークを通じてサービス
を受けられる状態をいう。
外字
文字セットに文字が登録されていない部分に、ユーザが独自に追加する文字のこ
と。システムで使用できる文字セットに存在しない文字を使用するために使われ
る。自分で字形を登録するため、どんな文字でも登録できるが、登録したコン
ピュータ以外で外字を正しく読むことはできない。
瑕疵
欠点、欠陥。
カスタマイズ
メーカーなどによって生産された商品を自分の趣味に応じて改造すること。
カバレッジ
適用[通用、保護、保障]範囲。
クライアント(端
コンピュータネットワークにおいて、サーバコンピュータの提供する機能やデー
末)
タを利用するコンピュータのこと。家庭でインターネットを利用する際のパソコ
ンなどが該当する。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
クラス図
解 説
クラス(オブジェクト指向プログラミングにおいて、データとその操作手順であ
るメソッドをまとめたオブジェクトの雛型を定義したもの)、属性、クラス間の
関係からシステムの構造を記述する静的な構造図。
広義には、システムのソースや設計書に基づいて詳細に分析できるようにするこ
グラスボックス
(化)
とであり、「ホワイトボックス化」とも呼ばれる。内部の構造や動作原理を問わ
ずに検査などをできるようにする「ブラックボックス化」と対比される用語であ
る。ホワイトボックス化との区別は、ホワイトボックス化とブラックボックス化
のアプローチをどちらも否定せず、誰もが理解できることを目指している点にあ
る。
グランドデザイン
壮大な図案・設計・着想。長期にわたって遂行される大規模な計画。
グリップ
物をしっかりと握ること。物をしっかりととらえること。また、その性能。
クリニカルパス
主に入院時に患者に手渡される病気を治すうえで必要な治療・検査やケアなどを
タテ軸に、時間軸(日付)をヨコ軸に取って作った、診療スケジュール表のこ
と。患者と医療スタッフ両者のための羅針盤の様な役割を果たす。
結合テスト
システムのテスト手法の一つで、複数のモジュール(部品)を組み合わせて行なう
テスト。個々のモジュールの単体テスト後に行なう。
主にモジュール間のインターフェース(接点)がうまく機能するかどうかに注目し
て行なわれる。
構造化プログラミン コンピュータプログラムを記述する際の基本的な技法の一つで、標準的な制御構
グ
造のみを使い、プログラム全体を段階的に細かな単位に分割して処理を記述して
いく手法。1960年代後半にオランダの情報工学者エドガー・ダイクストラ(Edsger
Wybe Dijkstra)氏らによって提唱された。現在広く普及しているプログラミング
言語や開発手法のほとんどは、その基盤の一つとして構造化プログラミングによ
る記述を前提としている。
コールセンター
顧客への電話対応業務を専門に行う事業所・部門。大手企業の問い合わせ窓口の
ような、電話回線数や対応するオペレータ人数が多い大規模な施設を「コールセ
ンター」と呼ぶことが多い。日本では104番号案内や116総合受付などの電話業務
センターに端を発する。
一般消費者向けの通信販売・サービス業・製造業を行う企業(会社)が、苦情・
各種問い合わせ・注文を受け付けるものが多い。 また、従来は受付対応(インバ
ウンド)が主業務であったが、近年は新規顧客の開拓業務やマーケティング(ア
ウトバウンド)にも利用されている。
コピー&ペースト
データの一部を複写してコンピュータ内の保存領域(クリップボード)に転送する
「コピー」操作と、それを指定した場所に出現させる「ペースト」操作を連続し
て行ない、データの複製を作ること。
コミット
トランザクション処理が成功したときに、その結果を確定させること。トランザ
クション処理の結果は「すべて成功」か「すべて失敗」のどちらかに限られるた
め、一連の処理がすべて終了するまで成功か失敗かを判断することができない。
コメント(行)
コンピュータ言語(プログラミング言語やデータ記述言語)によって書かれた
ソースコードの内、人間のために覚えとして挿入された注釈のこと。この部分
は、コンピュータが処理を行うときには、ないものとして無視されるため、自由
に文を挿入することができる。
コンサル
「コンサルタント」の略。コンサルティングを行うことを業としている人もしく
は法人のこと。
法人相手のコンサルタントは一般に、企業の抱える何かしらの課題を解決する方
策を提供している。近年、コンサルティング業界に属するコンサルタントの業務
は、導入部がどのような形であれ、最終的には、ERP、SCMなどのパッケージ、IT
システムの提案や導入業務になっている割合が多いともされる。
コンセンサス
意見の一致。合意。
コントラクター
契約人、請負業者。
コンバージョン
コンピューターで、異なる機種間でも使用できるように、プログラムやデータの
表現形式(フォーマット)を変えること。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
コンプライアンス
コンペ
サーバ
サイドエフェクト
索引(付き)編成
ファイル
サブルーチン
シーケンス図
シームレス
ジェネレータ
住基ネット
随意契約
スキーマ
スクラッチ
スタック
スタティック
ステップ数
解 説
コーポレートガバナンスの基本原理の一つで、法律や規則などのごく基本的な
ルールに従って活動を行うこと。企業におけるコンプライアンスについては、ビ
ジネスコンプライアンスという場合もある。今日ではCSR(企業の社会的責任)と
共に非常に重視されている。
近年、法令違反による信頼の失墜や、それを原因として法律の厳罰化や規制の強
化が事業の存続に大きな影響を与えた事例が繰り返されているため、特に企業活
動における法令違反を防ぐという観点からよく使われるようになった。こういっ
た経緯から、日本語ではしばしば法令遵守と訳されるが、法律や規則といった法
令を守ることだけを指すという論もあれば、法令とは別に社会的規範や企業倫理
(モラル)を守ることも「コンプライアンス」に含まれるとする論もある。ま
た、本来、「法的検査をする」といった強い実行性をもっている。
「コンペティション(competition)」の略で、競争、競技会の意味。
クライアントからの要求(リクエスト)に対して、何らかのサービスを提供する
システムのことであり、コンピュータネットワークにおける、分散処理の片側で
ある。
副作用。
データの他に、データを参照するための索引を用意したファイル。ISAMファイル
とも呼ばれる。先頭から順次アクセスするだけでなく、索引を利用して、データ
に直接アクセスすることもできる。
プログラムの実行中に他のルーチンから呼び出されて動作するルーチン。
UMLで定義されている図のうちの1つで、相互作用図の一種に位置づけられてい
る。
オブジェクト指向を用いた開発において用いられ、オブジェクト間のメッセージ
の流れを時系列的に表現することが可能である。シーケンス図中に記述される、
イベントの発生順序やオブジェクトの生存時間、メッセージ、イベントオカレン
ス、実行オカレンス、相互作用オカレンスといったシーケンス図特有の様々な要
素によって、多様な粒度に応じたシステム分析、設計を行うことができる。
継ぎ目のないこと。複数のコンピューターシステムやネットワークサービスを統
合したものに対し、それぞれの違いを意識せずに利用や管理ができること。
発生させる人[物・組織・状況]。
住民基本台帳ネットワークシステム。地方公共団体と行政機関で個々の日本国民
を特定する情報を共有・利用することを目的として構築され稼働したシステム。
市区町村の住民基本台帳に記録されている者(=日本国民)に11桁の住民票コー
ドが割り当てられる。準備期間の間に総務省によるe-Japan重点計画の一環と位置
付けられて稼働開始した。
市区町村、都道府県、全国センター、および行政機関を結ぶ形で構成される。全
国センターは指定情報機関である地方自治情報センターが運営している。
国、地方公共団体などが競争入札によらずに任意で決定した相手と契約を締結す
ること、及び締結した契約。
データベースの構造。データの管理の仕方によって、リレーショナルデータベー
スやカード型データベース、ネットワーク型データベースなどの種類がある。こ
うした基本的なデータ管理の方式は「概念スキーマ」と呼ばれることがある。さ
らに、リレーショナルデータベースでテーブルを設計する際の、各項目のデータ
型やデータの大きさ、主キーの選択、他のテーブルとの関連付けなどの仕様や、
ネットワーク型データベースのレコードの設計などもスキーマである。概念ス
キーマと区別して「内部スキーマ」と呼ばれることもある。
コンピュータソフトウェアの開発を、特定の業務パッケージ等を使用することな
く個別開発すること。
動けなくなること。立ち往生。行き詰まり。
静的な。
プログラムの規模を測るための指標となる数値。ソフトウェア開発の現場におい
て、開発の進捗管理や開発費の見積もりを出す目的などで使用されることが多
い。
ステップ数の数え方には様々な基準があるが、多くの場合、プログラムのソース
コードの行数である「LOC」(Lines Of Code)を基にした値となる。LOCをそのまま
ステップ数として用いることもあるが、LOCからプログラムとしては意味を成さな
い空行やコメントの行の数を除いて換算する場合もある。C言語では中括弧のみか
らなる行も除く、といったようにプログラミング言語によってもステップ数の数
え方の基準は様々である。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
ストレージ
解 説
外部記憶装置。コンピュータ内でデータやプログラムを記憶する装置。ハード
ディスクやフロッピーディスク、MO、CD-R、磁気テープなどがこれにあたる。
スパゲティ(プログ 処理の流れや構造を把握しにくく、修正や機能の追加が困難なプログラム。
ラム)
むやみに制御を(GOTO文などで)他の部分に飛ばしたり、変数の有効範囲を必要以
上に広げたりすると、後からプログラムのごく一部を修正したい場合でも、プロ
グラム全体を読み直さないと構造が理解できないという事態に陥る。この様子
を、麺が複雑に絡み合い、たった数本の麺を引っ張り出そうとしても全体がつい
てくる、スパゲッティに例えた言葉。
セル(生産方式)
製造における生産方式の一つ。1人、または少数の作業者チームで製品の組み立て
工程を完成(または検査)まで行う。ライン生産方式などの従来の生産方式と比
較して、作業者一人が受け持つ範囲が広いのが特徴。
作業者または作業者チームの周囲に組付工具や部品、作業台が「コ」の字型に囲
む様子を細胞に見立て、セル生産方式と呼ばれている。特に、1人の作業者で製品
を完成させる方式を、作業台を屋台に見立てて「1人屋台生産方式」とも呼ばれ
る。
ソースコード
ソフトウェア(コンピュータプログラム)の元となるテキストデータ。プログラ
ミング言語に従って書かれており、コンピュータに対する一連の指示である。単
にソースという場合も多い。その他には、コードやプログラムリストと呼ばれる
こともある。ソースコード(原始プログラム)が書かれたファイルをソースファ
イルという。
ダイナミクス
原動力。
ダイナミック
動的な。
ダウンサイジング
技術進歩に伴う高密度化・小型化によって、同じ容積・重量で従来と同機能か、
より高性能な物(工業製品)を作る事。または運用コスト削減等を目的として、
従来品よりも小型の機器を用いて対応することを呼ぶ。
同語は日本では情報処理業界を中心に、旧態化して設置場所ばかりを占める大型
コンピュータを汎用サーバに置き換えるという一連の経緯の中でこのように呼ば
れたが、後に一般化して様々な分野での小型化に際しても適用されている。
ダンプ
ファイルやメモリの内容を記録、あるいは表示すること。プログラムを開発する
ときに動作を追跡するために利用することが多く、ダンプされた内容はデバッガ
に読み込ませてプログラムの問題を分析するために用いられる。
地域情報プラット
自治体が持つ情報システムをはじめとした、地域内外のあらゆる情報システムを
フォーム
全国規模で連携させるための共通基盤。総務省主催の「地域における情報化の推
進に関する検討会」の中で提言され、2005年10月に設立された「全国地域情報化
推進協会」で標準仕様の作成・管理が行われている。
WebサービスやXMLなどの技術を活用して情報システムの基盤を共通化すること
で、異なる情報システム間でのシームレスなデータのやり取りを実現し、行政・
民間を問わず地域のさまざまなサービスを連携・統合して提供することを目的と
している。
地産地消
「地域生産地域消費」の略語。地域で生産された農産物や水産物をその地域で消
費すること。
ディペンド
頼る、依存する。
データベース
特定のテーマに沿ったデータを集めて管理し、容易に検索・抽出などの再利用を
できるようにしたもの。 狭義には、コンピュータによって実現されたものを言
う。OSが提供するファイルシステム上に直接構築されるものや、後述するデータ
ベース管理システム (DBMS) を用いて構築されるものを含む。
電子自治体
自治体がITを活用し、住民の利便性・満足度の向上、行政運営の効率化などを実
現するための取り組み。
従来、電子自治体の主目的はネットワークを介して時間や場所に関係なく住民に
サービスを提供することや、業務の効率化によって運営コストを低減することと
されてきた。しかし最近では「観光情報の発信」「地域交流」「防災」「防犯」
といったさまざまな分野でITの利用が検討・実践されており、電子自治体の役割
はより広範なものになってきている。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
道州制
解 説
文字どおりには、行政区画として道と州を置く地方行政制度。府県制、市制、町
村制などにならった用語である。
日本では、北海道以外の地域に数個の州を設置し、それらの道州に現在の都道府
県より高い地方自治権を与える将来構想上の制度を指す。州の呼称については
都・道・府とするなどの案もあるが、ほとんどの案で北海道はそのまま道として
存続するため「州制」ではなく道州制と呼ばれる。
現在、道と州を共に置く国家はないが、日本での道州制に関する議論の中で他国
の地方自治制度について言及する場合、道州制という言葉が使われることがあ
る。
トップダウン
企業経営などで、組織の上層部が意思決定をし、その実行を下部組織に指示する
管理方式。
トップマネジメント 一般的に経営層のことを指すが、特にマネジメントシステム規格においては、マ
ネジメントシステムの方針・目標を定める責任を負う人(場合によって複数)を
意味する。マネジメントシステムは、組織活動の責任と権限を明確にすることを
一つの大きな目的としており、トップマネジメントの役割を明確化することがマ
ネジメントシステムの大前提となる。
トラベルコスト法
環境経済評価の手法の一つ。訪問地までの旅行費用と訪問回数との関係をもとに
間接的に訪問地の利用価値を評価する手法。
トランザクション
関連する複数の処理を一つの処理単位としてまとめたもの。金融機関のコン
ピュータシステムにおける入出金処理のように、一連の作業を全体として一つの
処理として管理するために用いる。
トロイカ体制
1人の指導者に権限を集中せず、3人の指導者で組織を運営する集団指導体制のこ
と。名前の由来はロシアの3頭立ての馬橇(ばそり)であるトロイカ。
ニアショア
日本国内の地方拠点へのアウトソーシングのこと。
ネイティブコード
コンピュータに理解できる言語(マシン語)で記述されたプログラム。オブジェク
トコードとも呼ばれる。数値の羅列として表現されるため、そのままの形で人間
が理解するのは困難。通常は、人間がプログラミング言語を使って作成したソー
スコードを、コンパイラなどの変換ソフトウェアを使ってネイティブコードに変
換する。
バーター
物々交換。交換するものは「物」に限らずサービス・人材のこともある。
新しい技術をふんだんに採用して高機能・高性能を追求した、専門家や上級者向
ハイエンド(モデ
ル)
けの製品。ハイエンドモデルはひとつの市場をターゲットにした製品の中では最
も性能が高く、価格も高い製品になる。
ハイカウンター
接客窓口のうち、定型的な手続きを行う場所。
パイロット
試験[実験]的な、先行的な、小規模の。
バグ
コンピュータプログラムに含まれる誤りや不具合のこと。
バックアップ
データの写しを取って保存すること。コンピュータに保存されたデータやプログ
ラムを、破損やコンピュータウイルス感染などの事態に備え、別の記憶媒体に保
存すること。保存されたデータのことをバックアップと呼ぶ場合もある。
バックオフィス
企業の中で、対外的に顧客対応などを行うのではなく後方で事務や管理業務を行
う部門のこと。経理・会計、総務・人事などを典型とし、窓口業務や営業・販売
などのフロントオフィスを支援する。
パッケージ / PKG
パッケージソフトウェア。狭義には特定の業務あるいは業種で汎用的に利用する
ことのできる既製の市販ソフトウェアを指す和製英語。しかし現在では、パーソ
ナルコンピュータ(パソコン)用ワープロソフトやユーティリティソフトのよう
な、個人向けの一般市販ソフトが一般的になったため、これらを含めることが多
い。また、オンラインソフトウェアに対して、店頭で販売されているソフトウェ
アを表す場合にも用いられる。
バッチ
一定期間(もしくは一定量)データを集め、まとめて一括処理を行なう処理方式。
または、複数の手順からなる処理において、あらかじめ一連の手順を登録してお
き、自動的に連続処理を行なう処理方式。
企業における売上データや受注データの集計処理など、一定期間ごとに大量の
データを集めて処理する場合に有効な処理方式である。
ハブ
ある地方において周辺各地への様々な交通機関が集中する場所。交通結節点。
パブリックコメント 意見公募手続。公的な機関が規則あるいは命令などの類のものを制定しようとす
るときに、広く公に(=パブリック)に、意見・情報・改善案など(=コメン
ト)を求める手続をいう。公的な機関が規則などを定める前に、その影響が及ぶ
対象者などの意見を事前に聴取し、その結果を反映させることによって、よりよ
い行政を目指すものである。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
パンチ(業務)
汎用機
フィージビリティ
プライム
ブラックボックス
ブラッシュアップ
ブレイクダウン
ブレードサーバ
フレームワーク
プレゼンテーション
層、アプリケーショ
ン層、データベース
層
プロトコル
フロントエンド
ベストプラクティス
ペルソナ(・シナリ
オ)分析
ベンダー
解 説
紙媒体の入力票を元に、汎用機などに読み込ませるデータを起こす作業のこと。
この呼称は、初期のコンピュータにおいてデータ入力の媒体にパンチカードを使
用していた頃の名残りであり、現在では「データ入力業務」と呼ばれることも多
い。
企業の基幹業務などに利用される大規模なコンピュータを指す。メインフレー
ム、汎用コンピュータ、汎用大型コンピュータ、大型汎用コンピュータ、ホスト
コンピュータなどとも呼ばれる。
電源やCPU、記憶装置を始めとするほとんどのパーツが多重化されており、並列処
理による処理性能の向上と耐障害性の向上が図られている。
ネットワークを通じて端末が接続されており、利用者は端末を通じてコンピュー
タを利用する。端末は自らは処理装置や記憶装置を搭載しておらず、データの処
理や保存はすべて中央コンピュータが行なう、いわば中央集権的な構造になって
いる。
実行できること。実行(実現)の可能性。
もっとも重要な、主要な。
内部の動作原理や構造を理解していなくても、外部から見た機能や使い方のみを
知っていれば十分に得られる結果を利用する事のできる装置や機構の概念。転じ
て、内部機構を見ることができないよう密閉された機械装置を指してこう呼ぶ。
みがき上げること。学問などの再勉強や鈍った腕や技のみがき直し。また、一定
のレベルに達した状態からさらにみがきをかけること。
分類すること。細かく分析すること。
1枚の基板にコンピュータとして必要な要素を実装し、必要な枚数を接続して構成
するサーバ専用機。
ブレードサーバに装着される各「ブレード」にはメモリやハードディスク、マイ
クロプロセッサなどが配置されている。筐体側にはブレードの差込口が並び、ブ
レードへの給電・制御ユニットなどが用意されている。
ソフトウェアの世界では、アプリケーションソフトを開発する際に頻繁に必要と
される汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能する
ソフトウェアのこと。
クライアントサーバーシステムの3階層システムにおける各層の名称。クライアン
トおよびサーバの処理を複数の階層に分離して配置することで、ある階層へ変更
を加える必要が生じた際にも柔軟に対応できるようなっている。
3階層システムでは、システム全体を「プレゼンテーション層」(ユーザインター
フェース)、「アプリケーション層」(ビジネスロジック)、「データ(ベース)
層」(データベース)の3階層に分け、クライアント側にはユーザインターフェース
部分のみを残し、あとはサーバ側に実装する。クライアントはユーザからの操作
を受け付け、アプリケーション層からの処理結果を表示することのみを行う。
3階層システムの構築に当たってはWeb技術を全面的に採用することが多い。プレ
ゼンテーション層にWebブラウザやその中で動作する専用のFlashやJavaアプレッ
トなどが、アプリケーション層にはJavaアプリケーションサーバなどが、データ
ベースにはリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)などが用いられるこ
とが多い。
ネットワークを介してコンピュータ同士が通信を行なう上で、相互に決められた
約束事の集合。通信手順、通信規約などと呼ばれることもある。
プロセスの最初の工程を指す一般的用語。ソフトウェア設計におけるフロントエ
ンドは、ユーザーと直接やりとりするソフトウェアシステムの部分を指す。
ある結果を得るのに最も効率的な技法/手法/プロセス/活動などがあるとする考え
方。最善慣行、最良慣行と訳されることもある。すなわち、適切なプロセス/
チェック/検証を行えば、問題や予期しない複雑さを低減させつつ、望ましい結果
をえられると考える。ベストプラクティスはまた、仕事を行う最も効率的で最も
効果的な方法であり、多くの人々によって反復され、時間をかけて証明されてき
た手続きに基づいている。
消費者セグメント行動分析。想定される消費者セグメントを具体的な人物像に落
とし込み、その人物の消費行動を当該企業の商品、サービスを活用する生活シナ
リオとして定義する。 このシナリオに沿ってニーズ、消費者購買行動を分析し、
商品開発やカテゴリー・プランの作成、店舗、Webサイトの設計を行う。
「売り手」を意味する英語であり、製品の製造業者、供給業者を指す言葉であ
る。 特定業者の製品のみを扱うベンダーをシングルベンダー、複数業者の製品を
扱うベンダーをマルチベンダーと呼ぶ。 また、ベンダーに対する言葉としては、
エンドユーザーが挙げられる。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
解 説
ベンダーロックイン ある特定のメーカーや販売会社がユーザーを自社製品で囲い込むこと。あるベン
ダー独自仕様のシステムを採用すると、結果として後継システムや周辺システム
も同一ベンダー製を採用せざるを得なくなることがある。特定のベンダーに依存
するため製品・サービスなどの調達に競争が働かず、高値でもしぶしぶ購入せざ
るを得なくなってしまう。Linuxなどのオープンソース、オープンアーキテクチャ
のプロダクトを利用することの大きな利点の一つは、こうしたベンダーロックイ
ンによる損害を緩和できる点である。
ベンチャー企業
新技術や高度な知識を軸に、大企業では実施しにくい創造的・革新的な経営を展
開する中小企業。
ポインタ
プログラミング言語において、ある変数の内容が格納されている場所の位置情報
を保持する変数。C/C++言語におけるポインタは、メモリ空間内のアドレスをその
まま数値として保持している。
ポータル(サイト) インターネットの入り口となる巨大なWebサイト。検索エンジンやリンク集を核と
して、ニュースや株価などの情報提供サービス、ブラウザから利用できるWebメー
ルサービス、電子掲示板、チャットなど、ユーザがインターネットで必要とする
機能をすべて無料で提供して利用者数を増やし、広告や電子商取引仲介サービス
などで収入を得るサイトのことをいう。
ホスト
「汎用機」の項目を参照。
ボトムアップ
下からの意見を吸い上げて全体をまとめていく管理方式。
マージン
余裕、ゆとり、(誤りなどの)許容範囲。
マイグレーション
プログラムやデータの移行・変換作業。特に、OSなどの環境が異なるシステムへ
の移行を指すことが多い。企業の基幹システムなどを新しいプラットフォームに
交換するという意味合いも含まれる。
プログラムの場合は、例えばもともとUNIX向けに開発されたプログラムを修正
し、Windows用のプログラムを作成するような移植作業をマイグレーションとい
う。
データベースのマイグレーションの場合、新たな環境で作業を開始するためには
単にデータのコピーだけではなく、管理システムのセットアップや設定の引継ぎ
など複雑な作業を伴う場合が多い。このため、マイグレーション作業を支援する
アプリケーションや、技術者を提供するサービスを行なう会社などもある。
マクロ
プログラム中の文字列を、あらかじめ定義された規則に従って置換すること。マ
クロを展開するプロセッサ(処理系)をマクロプロセッサという。転じて、アプ
リケーションソフトウェア上の作業を自動化する機能やプログラム言語(マクロ
言語)のこともマクロと呼ぶ。
マネジメント
経営などの管理をすること。経営者。管理者。
マルチプロセッサ
1台のコンピュータに複数のマイクロプロセッサを搭載すること。どのプロセッサ
も対等で対称的なSMPと、処理装置ごとに役割分担が決まっている非対称的なASMP
の2種類がある。
ミドルウェア
OSと各種システム固有の処理を行うアプリケーションソフトウェアとの間に入
り、アプリケーションが要求する様々な処理の代換えとOSへ依頼する各種手順・
手続きを行う中間的なソフトウェアのこと。
アプリケーションプログラムが動作するにあたり、ネットワーク上の他サーバや
データベースとのやり取りなど、普遍的で面倒な手続きを要するものがある。こ
れらとのやり取りの手順や管理をその種別単位にまとめ、ひとつの機能管理パッ
ケージソフトウェアとしてまとめたものがミドルウェアである。
特に企業システムや社会インフラシステムなどのエンタープライズ領域のシステ
ム構築において、分散されたソフトウェアやアプリケーションソフトウェア間の
データのやり取りなどを司る。ミドルウェアとしては、それぞれの管理分野の専
用ソフトウェアが用いられる事が多い。
また、カスタマイズの幅も大きく、それぞれのシステム特性に合わせた最適化設
定が必要となっている。
メインフレーム
「汎用機」の項目を参照。
メソドロジー
プロジェクトの計画の立て方から、どのような順序で何をしてどのような成果物
を作るのか、その成果物をどのような基準で評価し、次のステップに進むのかな
どの定義のこと。
メンテ
「メンテナンス」の略。維持、管理。
メンテナビリティ
維持管理のしやすさ。
モニタリング
監視すること。観察し、記録すること。
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汎用電子計算機システム検討委員会 用語集
用 語
ユースケース
解 説
ソフトウェア工学やシステム工学でシステム(あるいはシステムのシステム)の
機能的要求を把握するための技法である。各ユースケースは、何らかのビジネス
目標/機能に関するシナリオでのアクター(actor)と呼ばれるユーザーとシステム
のやりとりを描いたものである。ユースケースのアクターはエンドユーザーの場
合もあるし、別のシステムの場合もある。ユースケースでは技術専門用語をなる
べく使わず、エンドユーザーやそのビジネスの専門家に分かり易い用語を用い
る。ユースケースの作成は、ビジネスアナリストとエンドユーザーが共同で行う
ことが多い。
ライセンス
ソフトウェアメーカーが購入者に対して許諾する、ソフトウェアを使用する権利
のこと。ソフトウェアは「モノ」ではないので、販売しても所有権が移動するこ
とはない。購入者はメーカーからソフトウェアのコピーとその利用権を購入して
いることになる。
ライブラリ
ある特定の機能を持ったプログラムを、他のプログラムから利用できるように部
品化し、複数のプログラム部品を一つのファイルにまとめたもの。ライブラリ自
体は単独で実行することはできず、他のプログラムの一部として動作する。
リテール
一般消費者向けの小売のこと。
リテラシー
読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能
力。応用力。
リビルド
汎用機システムをベースとせず、プログラムをオープン系言語で最初から作り直
すこと。
リプレース
取り[置き]替える。
リホスト
汎用機上のシステムを、プログラム等の修正を行わずにそのままオープン系の機
器に移行すること。
リリース
公開、公表、発表。
レガシーシステム
時代遅れとなった古いシステムのこと。主にコンピュータシステムを指して用い
られる。
技術の進歩が早いコンピュータ業界では、数年前に導入されたシステムが早くも
時代遅れとなることも珍しくない。だが、そうしたシステムが残っていることに
よって、新しく導入されたシステムの足を引っ張ることがある。例えば、社内の
各部署で異なったOSを用いているためにデータの互換性がなく、社内LANが有効に
機能しない、といったような事態である。そのため、いかにしてレガシーシステ
ムを統合しつつ、新しいシステムへ円滑に移行していくかが、システムの更新に
おける課題となっている。
レコード
ファイルを構成する単位。フィールドが集まって1レコードをつくり、そのまと
まったものがファイルになる。
レプリカ
本来の定義は「オリジナルの製作者自身によって作られたコピー」である。しか
し、現在ではこの言葉は広くコピー一般に対して用いられている。
レプリケーション
データベース管理システムが持つ負荷分散機能の一つ。あるデータベースとまっ
たく同じ内容のを複製(レプリカ)をネットワーク上に複数配置し、通信回線や1台
1台のコンピュータにかかる負荷を軽減する仕組みのこと。
ローカウンター
接客窓口のうち、相談などの時間のかかる手続きを行う場所。
ロール
役割。役目。任務。
ロジック
論理。
ワンストップ(サー 一度の手続きで、必要とする関連作業をすべて完了させられるように設計された
ビス)
サービス。
ワンテーブル(サー 特定の商品ジャンルのいろいろな競合商品を一つのテーブルに乗せ、さまざま角
ビス)
度から比較し、評価をしてくれるサービス。
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